説明

ガイドローラおよび線条体の製造方法

【課題】被覆部の変形がなく高品質な線条体を得ることができるガイドローラおよび線条体の製造方法を提供する。
【解決手段】光ファイバガラスを芯材とした光ファイバ素線31の外周を覆う被覆部32を設けた光ファイバ30を案内する下流側ガイドローラ16であって、光ファイバ30に当接する周溝21に、光ファイバ30の外形に相似する凹面状にして光ファイバ30に面接触する湾曲部24を設けた下流側ガイドローラ16および光ファイバ30の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線条体の外側に被覆部を設けた後、該線条体を案内するガイドローラおよび線条体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
線条体の一例として光ファイバが挙げられるが、光ファイバ用ガイドローラとしては、例えば特許文献1に記したガイドローラの周面に断面V字の周溝を設けたもの、及びこのガイドローラを用いた光ファイバの製造方法が知られている。
【0003】
【特許文献1】実開平5−27027号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示されたガイドローラおよび光ファイバの製造方法においては、光ファイバが、ガイドローラのV字の周溝に2点で当接するため、例えば、光ファイバガラスに被覆を被せた光ファイバ素線の外周に形成される被覆部が厚くなっている場合、その際の応力集中によって光ファイバの被覆部が変形する虞があった。
なお、既存の市販ローラの周溝形状は通常V溝や平溝であり、光ファイバの外形に合わせた周溝形状のものは存在せず、光ファイバの外形に合うガイドローラを使い分けるようなことはしていなかった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、被覆部の変形がなく高品質な線条体を得ることができるガイドローラおよび線条体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決することのできる本発明に係るガイドローラは、線条体の外側に被覆部を設けた該線条体を案内するガイドローラであって、前記線条体に当接する周溝に、該線条体の外形に相似する凹面状で前記線条体に面接触する湾曲部を設けたことを特徴としている。
【0007】
上記構成のガイドローラによれば、例えば光ファイバ等の線条体は、周溝に線条体の外形に相似する凹面状にされた湾曲部を設けたガイドローラに面接触される。これにより、ガイドローラのV字の周溝の2点で線条体に当接するものと比べて、応力集中がなくなるため、被覆部が変形せずに、成形時の真円形状を維持されて搬出されることとなって、高品質な線条体を得ることができる。
【0008】
前記課題を解決することのできる本発明に係る線条体の製造方法は、線条体の外側に被覆部を設ける該線条体の製造方法であって、前記被覆部を設けた後の前記線条体に、該線条体の外形に相似する凹面状の湾曲部を有するガイドローラを面接触させることを特徴としている。
【0009】
上記構成の線条体の製造方法によれば、被覆部を設けた後の線条体が、線条体の外形に相似する凹面状の湾曲部を有するガイドローラに面接触されることで、応力集中がなく、被覆部が変形せずに、成形時の真円形状を維持されて搬出されることで、高品質な線条体を製造することができる。
【0010】
また、本発明に係る線条体の製造方法において、前記ガイドローラを面接触させた後に、前記線条体の被覆部上の凹凸検知を行うことが好ましい。
【0011】
前記構成の線条体の製造方法によれば、ガイドローラを面接触させた下流側で線条体の被覆部上の凹凸検知を行うことで、成形時の真円形状を維持されて搬出される線条体のさらなる品質向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るガイドローラおよび線条体の製造方法によれば、被覆部の変形がなく高品質な線条体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図を参照して本発明の好適な実施形態を説明する。
【0014】
図1〜図3は本発明に係るガイドローラおよび線条体の製造方法の一実施形態を示すもので、図1は本発明の一実施形態に係るガイドローラおよび線条体の製造方法を適用した光ファイバ製造工程の模式図、図2は図1の下流側ガイドローラの拡大図、図3は図1のガイドローラの一部破断縦断面図である。
【0015】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係るガイドローラおよび線条体の製造方法を適用した光ファイバ製造工程10は、上流から下流側に向けて、繰り出しボビン11、サプライダンサー12、上流側ガイドローラ13、樹脂塗布部14、硬化部15、下流側ガイドローラ16、凹凸検知器17、キャプスタン18、巻取りダンサー19、巻き取りボビン20とを備えている。
【0016】
繰り出しボビン11は、線引き工程で作成された、例えば250μmの外径を有する光ファイバガラスに被覆を被せた光ファイバ素線31が巻回されており、その光ファイバ素線31を下流側に向けて繰り出す。
【0017】
サプライダンサー12は、繰り出しボビン11から繰り出された光ファイバ素線31の弛みを吸収して光ファイバ素線31のテンションを調節するもので、固定ローラと上下方向に移動可能な移動ローラとから構成されている。
【0018】
上流側ガイドローラ13は、樹脂塗布部14の上流側に配置され、光ファイバ素線31を樹脂塗布部14の方向に変更させて搬送させる。
【0019】
樹脂塗布部14は、上流側ガイドローラ13の下流側に配置され、モノマー、オリゴマー、光開始剤と添加剤で構成された高分子材料のUV樹脂材を光ファイバ素線31の外周に、例えば500μmの外径になるように塗布する。
【0020】
硬化部15は、樹脂塗布部14の下流側に配置され、搬送中に紫外線を照射させることでUV樹脂材を硬化させる紫外線硬化炉である。これにより、紫外線硬化型樹脂層である被覆部32(図3参照)が光ファイバ素線31の外周に形成される。
【0021】
下流側ガイドローラ16は、樹脂塗布部14及び硬化部15の下流側に配置され、周溝21を介して搬送されてきた光ファイバ30の方向を変更させて凹凸検知器17へ搬送させる(図2参照)。
【0022】
凹凸検知器17は、非接触のレーザセンサであり、搬送されてきた光ファイバ30に一方のレーザ光発光部22からレーザ光を照射し、そのレーザ光を他方のレーザ光受光部23で受光することで、光ファイバ30の外面、すなわち被覆部32の表面の凹凸状態を検知する。
【0023】
キャプスタン18は、凹凸検知器17での検査に合格した光ファイバ30を巻き取りボビン20に引き取るための引取り装置である。
【0024】
巻取りダンサー19は、キャプスタン18で引き取られた光ファイバ30の弛みを吸収して巻き取りボビン20で巻き取られるように、光ファイバ30のテンションを調節するもので、固定ローラと上下方向に移動可能な移動ローラとから構成されている。
【0025】
巻き取りボビン20は、凹凸検知器17の検査で合格してキャプスタン18で引き取られた光ファイバ30を巻回するもので、出荷工程へ搬出される。
【0026】
図2及び図3に示すように、光ファイバ30は、光ファイバガラスを芯材とした光ファイバ素線31の外周に紫外線硬化型樹脂層である被覆部32が形成されている。
【0027】
下流側ガイドローラ16は、Y字の断面形状であり、内側の周溝21の底部に、光ファイバ30の外形に相似する凹面状の湾曲部24が形成されている。この下流側ガイドローラ16は、湾曲部24が搬送されてきた光ファイバ30の略半周に面接触している。
【0028】
すなわち、下流側ガイドローラ16は、従来のようにV字の周溝の2点で光ファイバに当接することがなく、光ファイバ30の外形に相似する湾曲部24が当接するため、その際の応力集中がなくなり、光ファイバ30の被覆部32を変形させずに搬送することができる。
【0029】
(実施例)
以下、本発明に係るガイドローラおよび線条体の製造方法の作用効果を確認するために行った実施例について説明する。
【0030】
比較例として、従来のV字の周溝の2点で光ファイバに当接するものを用意し、凹凸および変形の発生の有無を調べた。なお、対象とする光ファイバは、光ファイバガラスの外径が250μmであって、紫外線硬化型の樹脂材をオーバーコートした被覆部の外径が500μmのものを使用した。
【0031】
【表1】

【0032】
表1により明らかなように、比較例は、1000kmの長さを製造した際の凹凸・変形発生頻度が50回であるのに対し、実施例では、その凹凸・変形発生頻度が0回になった。これは、ガイドローラ16に、光ファイバ30の外形に相似する湾曲部24を形成したことで、湾曲部24が光ファイバ30に面接触し、応力が分散されることにより、光ファイバ30の外形変形を防げたものと推定される。
【0033】
以上説明したように、本実施形態の下流側ガイドローラ16によれば、光ファイバ30は、周溝21に光ファイバ30の外形に相似する凹面状にされた湾曲部24を設けた下流側ガイドローラ16に面接触される。これにより、従来のV字の周溝の2点で光ファイバに当接するものと比べて応力集中がなくなるため、被覆部32が変形せずに、成形時の真円形状を維持されて搬出されることになり、高品質な光ファイバ30を得ることができる。
【0034】
また、本実施形態の光ファイバの製造方法によれば、被覆部32を設けた後の光ファイバ30が、光ファイバ30の外形に相似する凹面状の湾曲部24を有する下流側ガイドローラ16に面接触される。これにより、応力集中がなく、被覆部32が変形せずに、成形時の真円形状が維持されて搬出されることになり、高品質な光ファイバ30を製造することができる。
【0035】
また、本実施形態の光ファイバの製造方法によれば、下流側ガイドローラ16を面接触させた下流側で凹凸検知を行うことで、成形時の真円形状が維持された状態で凹凸検知を行うことができる。
【0036】
被覆硬化直後の光ファイバ30の温度は高く、被覆部32は柔らかいため、下流側ガイドローラ16が湾曲部24を備えない場合、被覆部32が一時的に変形し、凹凸検知器17はこの被覆部32の一時的な変形を凹凸として誤検知してしまう。凹凸を検知した場合は、その部位を取り除くために巻取りを一旦停止して、光ファイバ30を切断して当該箇所を除去する必要がある。これにより、設備稼働率が下がる原因となるが、本実施形態の場合、凹凸検知器17前の下流側ガイドローラ16が光ファイバ30と面接触するため、光ファイバ30は変形し難く、凹凸検知器17の誤検知原因を排除することができる。
【0037】
なお、本発明に係るガイドローラおよび線条体の製造方法は、前述した各実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形や改良等が可能である。
【0038】
例えば、光ファイバの積層される被覆部の厚さは、一例であって何ら限定されることはなく、光ファイバガラスの線径に応じて適宜選択設定されることは言うまでもない。また、硬化部は、紫外線硬化炉の他に熱硬化炉であっても良い。また、光ファイバ以外に細径ケーブルにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施形態に係るガイドローラおよび線条体の製造方法を適用した光ファイバ製造工程の模式図である。
【図2】図1の下流側ガイドローラの拡大図である。
【図3】図1の下流側ガイドローラの一部破断縦断面図である。
【符号の説明】
【0040】
10 光ファイバの製造工程
16 下流側ガイドローラ
17 凹凸検知器
21 周溝
24 湾曲部
30 光ファイバ(線条体)
31 光ファイバ素線(ガラス部+被覆部)
32 被覆部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線条体の外側に被覆部を設けた該線条体を案内するガイドローラであって、
前記線条体に当接する周溝に、該線条体の外形に相似する凹面状で前記線条体に面接触する湾曲部を設けたことを特徴とするガイドローラ。
【請求項2】
線条体の外側に被覆部を設けた該線条体の製造方法であって、
前記被覆部を設けた後の前記線条体に、該線条体の外形に相似する凹面状の湾曲部を有するガイドローラを面接触させることを特徴とする線条体の製造方法。
【請求項3】
前記ガイドローラを面接触させた後に、前記線条体の被覆部上の凹凸検知を行うことを特徴とする請求項2に記載した線条体の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−190804(P2009−190804A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−30359(P2008−30359)
【出願日】平成20年2月12日(2008.2.12)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】