説明

ガイドワイヤおよびカテーテルシステム

【課題】カテーテルを良好に誘導できるガイドワイヤを提供する。
【解決手段】ガイドワイヤ1000は、湾曲自在で中空のワイヤ本体1100の中空の内部にスライド自在に挿通されている操作ケーブル1200が遠位端で偏心して接続されており、その操作ケーブル1200の近位端部が屈曲操作機構1300によりスライド移動されてワイヤ本体1100の少なくとも遠位端部1110が屈曲される。このガイドワイヤ1000がチューブ状のカテーテル2000に挿通されてカテーテルシステム100として利用される。このカテーテルシステム100では、ガイドワイヤ1000の遠位端部1110が近位端部の屈曲操作機構1300の手動操作により自在に湾曲する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテルを血管に誘導するために利用されるガイドワイヤ、このガイドワイヤとカテーテルからなるカテーテルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種のカテーテルシステムが医療現場で利用されている。例えば、遠位端部が屈曲したガイドワイヤを利用して、複雑に分岐している血管の所望の部位にカテーテルを誘導するカテーテルシステムがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−180891号公報
【特許文献2】特開平06−218060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のようなカテーテルシステムは、ガイドワイヤを利用してカテーテルの遠位端部を屈曲させ、分岐している血管の所望の部位に誘導する。しかし、このようなカテーテルシステムでは、カテーテルの誘導がガイドワイヤの遠位端部の屈曲形状に依存することになり、その自由度が低いことになる。
【0005】
例えば、鋭角に分岐している血管にカテーテルを誘導するような場合、そこにガイドワイヤを挿通させてカテーテルを誘導することになる。しかし、ガイドワイヤの遠位端部の屈曲形状と血管の分岐形状との整合性が良好でないような場合、カテーテルの誘導が困難な場合がある。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、カテーテルを良好な自由度で誘導することができるガイドワイヤ、このガイドワイヤとカテーテルからなるカテーテルシステム、を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のガイドワイヤは、カテーテルを誘導するガイドワイヤであって、湾曲自在で中空のワイヤ本体と、ワイヤ本体の中空の内部にスライド自在に挿通されていて相互の遠位端で偏心して接続されている操作ケーブルと、操作ケーブルの近位端部をスライド移動させてワイヤ本体の遠位端部を屈曲させる屈曲操作機構と、を有する。
【0008】
従って、本発明のガイドワイヤでは、湾曲自在なワイヤ本体の中空の内部にスライド自在に挿通されている操作ケーブルが遠位端で偏心して接続されており、その操作ケーブルの近位端部が屈曲操作機構によりスライド移動されてワイヤ本体の少なくとも遠位端部が屈曲される。このガイドワイヤがチューブ状のカテーテルに挿通されてカテーテルシステムとして利用される。このカテーテルシステムでは、ガイドワイヤの遠位端部が近位端部の屈曲操作機構の操作により自在に湾曲する。
【0009】
また、上述のようなガイドワイヤにおいて、ワイヤ本体は、遠位端部の遠位から近位の方向で屈曲割合が不均等となるよう形成されていてもよい。
【0010】
また、上述のようなガイドワイヤにおいて、ワイヤ本体は、遠位端部が遠位から近位の方向で複数の屈曲自在な可曲部位に分割されており、複数の可曲部位の屈曲割合が相違してもよい。
【0011】
また、上述のようなガイドワイヤにおいて、ワイヤ本体は、巻線コイルからなり、複数の可曲部位は巻線コイルの巻回ピッチが相違してもよい。
【0012】
また、上述のようなガイドワイヤにおいて、ワイヤ本体は、遠位から近位の方向で巻回ピッチが密および粗および密の三つの可曲部位を少なくとも有してもよい。
【0013】
また、上述のようなガイドワイヤにおいて、ワイヤ本体の中空の内部に挿通されていて可曲部位の内部で遠位ほど先鋭な心材を、さらに有してもよい。
【0014】
また、上述のようなガイドワイヤにおいて、心材の外周面に形成されている凹溝に操作ケーブルがスライド自在に挿通されていてもよい。
【0015】
また、上述のようなガイドワイヤにおいて、心材の外周面に樹脂層が形成されており、この樹脂層に形成されている凹溝か貫通孔かの少なくとも一方に操作ケーブルがスライド自在に挿通されていてもよい。
【0016】
また、本発明のカテーテルシステムは、本発明のガイドワイヤと、ガイドワイヤが挿通されているチューブ状のカテーテルと、を有する。
【0017】
なお、本発明の各種の構成要素は、個々に独立した存在である必要はなく、複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等でもよい。
【0018】
また、本発明で云う屈曲割合が相違するとは、円弧状の屈曲の曲率が相違すること、円弧状の異形の屈曲の形状が相違すること、これらの組み合わせ、の少なくとも一つであることを意味している。
【発明の効果】
【0019】
本発明のガイドワイヤは、チューブ状のカテーテルに挿通されてカテーテルシステムとして利用される。このカテーテルシステムでは、ガイドワイヤの遠位端部が近位端部の屈曲操作機構の操作により自在に湾曲する。従って、複雑な構造の血管にカテーテルを誘導する操作性が良好である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態のカテーテルシステムの全体を示す側面図である。
【図2】ガイドワイヤの全体を示す側面図である。
【図3】ガイドワイヤの内部構造を示す縦断側面図である。
【図4】ガイドワイヤの内部構造を示す縦断正面図である。
【図5】屈曲操作機構の操作により複数の可曲部位が屈曲する状態を示す模式図である。
【図6】一の変形例のガイドワイヤの内部構造を示す縦断正面図である。
【図7】他の変形例のガイドワイヤの内部構造を示す縦断側面図である。
【図8】屈曲操作機構の操作により複数の可曲部位が屈曲する状態を示す模式図である。
【図9】さらに他の変形例のガイドワイヤの内部構造を示す縦断側面図である。
【図10】屈曲操作機構の操作により複数の可曲部位が屈曲する状態を示す模式図である。
【図11】ガイドワイヤの内部構造を示す縦断正面図である。
【図12】さらに他の変形例のガイドワイヤの内部構造を示す縦断側面図である。
【図13】屈曲操作機構の操作により複数の可曲部位が屈曲する状態を示す模式図である。
【図14】さらに他の変形例のガイドワイヤの内部構造を示す縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。本実施の形態のカテーテルシステム100は、図1に示すように、ガイドワイヤ1000と、ガイドワイヤ1000が挿通されているチューブ状のカテーテル2000と、を有する。
【0022】
本実施の形態のガイドワイヤ1000は、カテーテルシステム100のカテーテル2000を誘導する。このため、本実施の形態のガイドワイヤ1000は、図2および図3に示すように、湾曲自在で中空のワイヤ本体1100と、ワイヤ本体1100の中空の内部にスライド自在に挿通されていて相互の最遠位端1114,1210で偏心して溶接や接着で接続されている操作ケーブル1200と、操作ケーブル1200の近位端部1220をスライド移動させてワイヤ本体1100の少なくとも遠位端部1110を屈曲させる屈曲操作機構1300と、を有する。
【0023】
より詳細には、ワイヤ本体1100は、遠位端部1110が遠位から近位の方向で三つの可曲部位1111〜1113に分割されており、詳細には後述するが、三つの可曲部位1111〜1113の屈曲割合が相違している。
【0024】
このため、ワイヤ本体1100は、遠位から近位の方向で屈曲割合が不均等となっている。なお、本実施の形態では、三つの可曲部位1111〜1113は、例えば、線形方向で同一長さに形成されている。
【0025】
また、ワイヤ本体1100は、例えば、ステンレス、ニッケルチタン合金、鋼、チタン、等の巻線コイルからなり、三つの可曲部位1111〜1113は巻回ピッチが相違している。
【0026】
本実施の形態のガイドワイヤ1000では、三つの可曲部位1111〜1113の巻回ピッチが、遠位から近位の方向で密および粗および密となっている。なお、本実施の形態のガイドワイヤ1000では、可曲部位1111〜1113より近位の部分は最密に巻回された巻線コイルからなる。
【0027】
また、屈曲操作機構1300は、ガイドワイヤ1000の近位端部に形成されたチューブ状のハンドル部1310と、そこに前後方向にスライド自在に装着されていて操作ケーブル1200に接続されている操作ノブ1320からなる。
【0028】
また、本実施の形態のガイドワイヤ1000では、可曲部位1111〜1113の内部で遠位ほど先鋭な心材1400が、ワイヤ本体1100の中空の内部に挿通されている。この心材1400も、最遠位端1410が操作ケーブル1200の最遠位端1114に溶接や接着で接続されている。
【0029】
この心材1400は、図3および図4に示すように、外周面に凹溝1420が形成されており、そこに操作ケーブル1200がスライド自在に挿通されている。図4に示すように、心材1400は、外周面が樹脂層1430でコーティングされている。
【0030】
この樹脂層1430は、ワイヤ本体1100の内周面に心材1400が直接接触している状態より摩耗を抑制する物理特性を有している。このような樹脂層1430は、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリサルホン(PSF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニデレン(PVDF)などのフッ素系高分子材料、シリコン樹脂、等で形成されている。
【0031】
上述のような構成において、本実施の形態のガイドワイヤ1000では、図3に示すように、湾曲自在で中空のワイヤ本体1100の中空の内部に操作ケーブル1200がスライド自在に挿通されている。
【0032】
この操作ケーブル1200が最遠位端1210で偏心してワイヤ本体1100に接続されており、その操作ケーブル1200の近位端部1220が屈曲操作機構1300によりスライド移動されてワイヤ本体1100の少なくとも遠位端部1110が屈曲される。
【0033】
このガイドワイヤ1000がチューブ状のカテーテル2000に挿通されてカテーテルシステム100として利用される。このカテーテルシステム100では、ガイドワイヤ1000の遠位端部1110が近位端部1220の屈曲操作機構1300の手動操作により自在に湾曲する。従って、複雑な形態の血管にカテーテル2000を誘導する操作性が良好である。
【0034】
しかも、本実施の形態のガイドワイヤ1000では、ワイヤ本体1100の遠位端部1110が遠位から近位の方向で三つの可曲部位1111〜1113に分割されており、三つの可曲部位1111〜1113の屈曲割合が相違している。
【0035】
このため、図5(a)(b)に示すように、屈曲操作機構1300を手動操作しはじめると、ワイヤ本体1100の最遠位端1114に偏心して接続されている操作ケーブル1200に張力が発生する。
【0036】
このため、最初は最遠位の第一の可曲部位1111のみ円弧状に湾曲する。これは可曲部位1111〜1113の巻回ピッチの差異と、心材1400の直径の差異に起因する。
【0037】
つぎに、さらに屈曲操作機構1300を手動操作すると、第一の可曲部位1111が小径の円弧状に湾曲した状態で、図5(c)に示すように、第二の可曲部位1112が大径の円弧状に湾曲する。
【0038】
さらに屈曲操作機構1300を手動操作すると、第一の可曲部位1111が小径の円弧状に湾曲し、第二の可曲部位1112が大径の円弧状に湾曲した状態で、最近位の第三の可曲部位1113が小径の円弧状に湾曲する。
【0039】
これらも、可曲部位1111〜1113の巻回ピッチの差異と、心材1400の直径の差異に起因する。このため、本実施の形態のガイドワイヤ1000は、従来では困難であった複雑な構造の血管にも容易に侵入することができる。従って、従来の一般的なカテーテル2000を、複雑な構造の血管に良好に誘導することができる。
【0040】
しかも、ガイドワイヤ1000のワイヤ本体1100が巻回コイルからなり、その巻回ピッチを相違させることと、心材1400の直径を相違させることとの組み合わせにより、上述のような三つの可曲部位1111〜1113の段階的な屈曲を実現している。このため、各々所定の割合で順番に屈曲する可曲部位1111〜1113を簡単な構造で実現することができる。
【0041】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成される限りにおける種々の変形、改良等の態様も含む。例えば、上記形態では巻回コイルからなるワイヤ本体1100の巻回ピッチを相違させることと、心材1400の直径を相違させることとの組み合わせにより、三つの可曲部位1111〜1113の段階的な屈曲を実現することを例示した。
【0042】
しかし、このような可曲部位1111〜1113の段階的な屈曲を、巻回コイルからなるワイヤ本体1100の巻回ピッチを相違させることも可能である。この場合、心材の直径は均一としておき、可曲部位1111〜1113の巻回ピッチのみを段階的に変化させておいてもよい(図示せず)。
【0043】
また、可曲部位1111〜1113の段階的な屈曲を、心材1400の直径を相違させることで実現することも可能である。この場合、可曲部位1111〜1113の巻回ピッチを均一としておき、心材1400の直径を可曲部位1111〜1113の位置で段階的に先鋭に変化させておいてもよい(図示せず)。
【0044】
また、可曲部位1111〜1113で巻回の直径が相違していてもよい。さらに、ワイヤ本体1100を形成している巻回コイルの巻線の直径が可曲部位1111〜1113ごとに相違していてもよい(ともに図示せず)。
【0045】
さらに、上記形態ではワイヤ本体1100の巻回ピッチを相違させて、屈曲割合が相違する三つの可曲部位1111〜1113を形成することを例示した。しかし、このように屈曲割合が相違する可曲部位を四つ以上とすることや二つとすることもできる(図示せず)。
【0046】
また、上記形態では三つの可曲部位1111〜1113が線形方向で同一長さに形成されていることを例示した。しかし、このような可曲部位1111〜1113の線形方向での長さを相違させておいてもよい。
【0047】
例えば、第一の可曲部位1111を最短に形成するとともに第三の可曲部位1113を最長に形成しておくことや、反対に第一の可曲部位1111を最長に形成するとともに第三の可曲部位1113を最短に形成しておくことも想定できる。
【0048】
さらに、三つの可曲部位1111〜1113の長さが、54>53>55、などとなっていてもよい(何れも図示せず)。上述のように可曲部位1111〜1113の比率を設定しておくことにより、例えば、各種の形態の血管に対応することが容易となる。
【0049】
さらに、上記形態ではワイヤ本体1100が巻回コイルからなることを例示した。しかし、このようなワイヤ本体を樹脂チューブで形成することもできる。その場合、屈曲割合が相違する複数の可曲部位は、例えば、樹脂チューブの膜厚の相違で形成することができる。
【0050】
より具体的には、ワイヤ本体の遠位端部の膜厚を、遠位から近位の方向で薄膜および厚膜および薄膜とすることにより、三つの可曲部位を形成しておくことが想定できる(図示せず)。
【0051】
また、上記形態では心材1400の外周面に凹溝1420を形成しておき、その外周面に樹脂層1430を形成しておくことを例示した。しかし、図6に例示するガイドワイヤ3000のように、心材1400の表面に厚膜の樹脂層3100を形成しておき、そこに凹溝(図示せず)や貫通孔3101を形成して操作ケーブル1200をスライド自在に挿通させてもよい。
【0052】
このような樹脂層3100は、例えば、熱可塑性ポリマーで形成される。一例として、PI、PAI、PET(Polyethylene Terephthalate)のほか、ポリエチレン(PE)、ポリアミド(PA)、ナイロンエラストマー、ポリウレタン(PU)、エチレン−酢酸ビニル樹脂(EVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)またはポリプロピレン(PP)などを用いることができる。
【0053】
なお、樹脂層3100の凹溝(図示せず)や貫通孔3101は、樹脂層3100を心材1400とともに押出成形するときに、予めチューブ状に成形された中空管(図示せず)を共押出成形することで形成できる。
【0054】
このような中空管には、耐熱性、柔軟性および摺動性の高い熱可塑性のポリマー材料が好適に用いられる。具体的には、PTFE(Polytetrafluoroethylene)、PFA(perfluoro alkoxyl alkane polymer resin)もしくは四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)などのフッ素系ポリマー材料を用いることができる。
【0055】
このほか、PI、PAI、ポリサルフォン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド(PEI)もしくは液晶ポリマー(LCP)などの非フッ素系ポリマー材料を用いることもできる。
【0056】
さらに、上記形態ではガイドワイヤ1000のワイヤ本体1100の内部に操作ケーブル1200を一本のみ挿通させておき、可曲部位1111〜1113を一方向のみ屈曲させることを例示した。
【0057】
しかし、このような操作ケーブル1200を複数としておき、可曲部位1111〜1113を複数の方向に屈曲させることもできる(図示せず)。例えば、図7および図8に例示するガイドワイヤ4000のように、一対の操作ケーブル1200,4200を軸心を中心に相反する位置に配置しておくこともできる。
【0058】
この場合、図8に示すように、一対の屈曲操作機構1300,4300の手動操作により、可曲部位1111〜1113を両側に各々屈曲させることができるので、よりカテーテル2000の誘導の自由度を向上させることができる。さらに、一対の屈曲操作機構1300,4300を同時に操作することにより、可曲部位1111〜1113の屈曲度合を微妙に変化させるようなこともできる。
【0059】
さらに、ガイドワイヤ1000のワイヤ本体1100の内部に複数の操作ケーブル1200を挿通させ、その先端を可曲部位1111〜1113の各々の先端に接続しておくことも想定できる。
【0060】
例えば、図9に例示するガイドワイヤ5000のように、第一の操作ケーブル5100の先端を第一の可曲部位1111の先端に接続するとともに、軸心から同一方向で第二の操作ケーブル5200を第二の可曲部位1112の先端に接続することもできる。
【0061】
この場合、図10に示すように、第一/第二の屈曲操作機構1300,5300の選択的な手動操作により、図10(b)に示すように、ガイドワイヤ5000の第一の可曲部位1111のみを屈曲させるだけでなく、図10(c)に示すように、第一の可曲部位1111と第二の可曲部位1112を屈曲させることもでき、図10(d)に示すように、第一の可曲部位1111を屈曲させることなく第二の可曲部位1112を屈曲させることまでできる。
【0062】
なお、上述のようにワイヤ本体1100の軸心から同一方向で第一/第二の操作ケーブル5100,5200を挿通させることは、図11に示すように、前述のように心材1400の外周面に凹溝1420を形成して操作ケーブル5100を挿通させるとともに、その外周面に形成した厚膜の樹脂層3100に凹溝(図示せず)や貫通孔3101を形成して操作ケーブル5200を挿通させればよい。
【0063】
一方、図12に例示するガイドワイヤ6000のように、第一の操作ケーブル6100の先端を第一の可曲部位1111の先端に接続するとともに、軸心から反対方向で第二の操作ケーブル6200を第二の可曲部位1112の先端に接続するようなこともできる。
【0064】
この場合、図13に示すように、第一/第二の屈曲操作機構1300,6300の選択的な手動操作により、図13(b)に示すように、ガイドワイヤ6000の第一の可曲部位1111のみを屈曲させるだけでなく、図13(c)に示すように、第一の可曲部位1111を屈曲させることなく第二の可曲部位1112を屈曲させることもでき、図13(d)に示すように、第一の可曲部位1111と第二の可曲部位1112とを反対方向に屈曲させることまでできる。
【0065】
当然ながら、上述のような複数の操作ケーブル5100,5200,6100,6200の構成を組み合わせるようなこともできる。これにより、極めて複雑な形状の血管にガイドワイヤを挿通させるようなことが可能となる(図示せず)。
【0066】
さらに、上記形態ではワイヤ本体1100の内部に操作ケーブル1200を直線状に張架しておき、可曲部位1111〜1113を平面曲線として屈曲させることを例示した。
【0067】
しかし、図14に例示するガイドワイヤ7000のように、可曲部位1111〜1113で心材1400に操作ケーブル1200を螺旋状に巻回させておくことにより、可曲部位1111〜1113を螺旋状の空間曲線として屈曲させることもできる(図示せず)。これにより、ガイドワイヤ7000を近位操作で回転させなくとも、その遠位端部を旋回させることができる。
【0068】
この場合、可曲部位1111〜1113の位置で、心材1400の表面に操作ケーブル1200が挿通する凹溝1420を螺旋状に形成しておけばよい。なお、可曲部位1111〜1113より近位の部分では、不要な屈曲が発生しないように凹溝1420を直線状に形成しておくことが好適である。
【符号の説明】
【0069】
100 カテーテルシステム
1000 ガイドワイヤ
1100 ワイヤ本体
1110 遠位端部
1111 可曲部位
1112 可曲部位
1113 可曲部位
1114 最遠位端
1200 操作ケーブル
1210 最遠位端
1220 近位端部
1300 屈曲操作機構
1310 ハンドル部
1320 操作ノブ
1400 心材
1410 最遠位端
1420 凹溝
1430 樹脂層
2000 カテーテル
3000 ガイドワイヤ
3100 樹脂層
3101 貫通孔
4000 ガイドワイヤ
4200 操作ケーブル
4300 屈曲操作機構
5000 ガイドワイヤ
5100 操作ケーブル
5200 操作ケーブル
5300 屈曲操作機構
6000 ガイドワイヤ
6100 操作ケーブル
6200 操作ケーブル
6300 屈曲操作機構
7000 ガイドワイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテルを誘導するガイドワイヤであって、
湾曲自在で中空のワイヤ本体と、
前記ワイヤ本体の中空の内部にスライド自在に挿通されていて相互の遠位端で偏心して接続されている操作ケーブルと、
前記操作ケーブルの近位端部をスライド移動させて前記ワイヤ本体の遠位端部を屈曲させる屈曲操作機構と、
を有するガイドワイヤ。
【請求項2】
前記ワイヤ本体は、前記遠位端部の遠位から近位の方向で屈曲割合が不均等となるよう形成されている請求項1に記載のガイドワイヤ。
【請求項3】
前記ワイヤ本体は、前記遠位端部が遠位から近位の方向で複数の屈曲自在な可曲部位に分割されており、複数の前記可曲部位の前記屈曲割合が相違する請求項2に記載のガイドワイヤ。
【請求項4】
前記ワイヤ本体は、巻線コイルからなり、複数の前記可曲部位は前記巻線コイルの巻回ピッチが相違する請求項3に記載のガイドワイヤ。
【請求項5】
前記ワイヤ本体は、遠位から近位の方向で前記巻回ピッチが密および粗および密の三つの前記可曲部位を少なくとも有する請求項4に記載のガイドワイヤ。
【請求項6】
前記ワイヤ本体の中空の内部に挿通されていて前記可曲部位の内部で遠位ほど先鋭な心材を、さらに有する請求項1ないし5の何れか一項に記載のガイドワイヤ。
【請求項7】
前記心材の外周面に形成されている凹溝に前記操作ケーブルがスライド自在に挿通されている請求項6に記載のガイドワイヤ。
【請求項8】
前記心材の外周面に樹脂層が形成されており、この樹脂層に形成されている凹溝か貫通孔かの少なくとも一方に前記操作ケーブルがスライド自在に挿通されている請求項6に記載のガイドワイヤ。
【請求項9】
請求項1ないし8に記載のガイドワイヤと、
前記ガイドワイヤが挿通されているチューブ状のカテーテルと、
を有するカテーテルシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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