説明

ガイドワイヤ

【課題】最先端部が大型化せず、かつコアシャフトの先端部の機械的強度の減少を抑えつつ、該コアシャフトが最先端部から抜け出ることを防止できるガイドワイヤを提供する。
【解決手段】ガイドワイヤ1Aは、コアシャフト2と、前記コアシャフト2の少なくとも先端部に巻回されたコイル体3と、を有し、前記コイル体3の先端部と、前記コアシャフト2の先端部とが固着されて最先端部4が形成されており、前記最先端部4内において、前記コアシャフト2の先端部には、前記ガイドワイヤ1Aの長軸方向に対して垂直となる方向に屈曲した屈曲部20が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用分野で好適に用いられるガイドワイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
医療現場において血管、尿管、又は器官等へのカテーテルの挿入や、血管の動脈瘤形成部への体内留置具の挿入の際にガイドとして用いられるガイドワイヤは、既によく知られている。通常、前記ガイドワイヤは、コアシャフトと、前記コアシャフトの先端部外周に巻回されたコイル体とを備え、前記コイル体の先端部と前記コアシャフトの先端部とが接合されて最先端部が形成されている。
【0003】
さらに、コアワイヤの先端がJ型形状とされ、かかる部位が最先端部内に埋設されている構成は既に開示されている(特許文献1参照)。かかる構成は、最先端部からコアワイヤの先端が抜けにくいという利点がある。
【0004】
また、最先端部内におけるコアシャフトに段部を形成して被固定部を設けることにより、該コアシャフトが該最先端部から抜け出ることを防止したガイドワイヤも既に開示されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6217567明細書
【特許文献2】特開2003−52829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の構成は、J型形状の部位が最先端部内に収まるように該最先端部の寸法を設定すると、該最先端部におけるガイドワイヤの長軸方向に沿った長さが大きくなって全体として最先端部が大型化してしまい、血管等の分岐部での選択性が低下する問題を有していた。また、上記特許文献2の構成は、最先端部の大型化という問題は解決されるものの、被固定部を構成する段部を形成することにより前記コアシャフトの先端部の機械的強度が減少してしまうという問題がある。
【0007】
そこで本発明は、上記問題点に鑑み、最先端部が大型化せず、血管等の分岐部での選択性に優れ、かつコアシャフトの先端部の機械的強度の減少を抑えつつ、該コアシャフトが最先端部から抜け出ることを防止できるガイドワイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ガイドワイヤが、コアシャフトと、前記コアシャフトの少なくとも先端部に巻回されたコイル体と、前記コイル体の先端部と前記コアシャフトの先端部とが固着されて形成された最先端部と、を有し、前記最先端部内において、前記コアシャフトの先端部には、前記ガイドワイヤの長軸方向に対して垂直となる方向に屈曲した屈曲部が形成されていることを特徴とするガイドワイヤである。
【0009】
上記構成にあって、仮に前記最先端部から前記コアシャフトを引き抜こうとする外力が作用しても、前記屈曲部が該ガイドワイヤの長軸方向に対して垂直な方向に沿って形成されることにより、該屈曲部と該最先端部との間の摩擦抵抗が増し、これにより該コアシャフトの引き抜き抵抗が向上して該コアシャフトが該最先端部から抜け出ることを防ぐことが可能となる。また、該屈曲部は、汎用される直線形状のコアシャフトの先端部を屈曲加工するだけで形成することができ、また該屈曲部を形成した後においても該コアシャフトの機械的強度は極めて低下しにくい。また、該屈曲部の外観形状は簡素なものとなるため、該屈曲部を最先端部内に収めるように該最先端部を寸法設定した際にも該最先端部が大型化してしまうことがない。特に、該最先端部における該ガイドワイヤの長軸方向に沿った長さを短くすることができる。そして、このように最先端部が小型化することにより、血管等の分岐部での選択性が向上する。
【0010】
さらに、前記屈曲部のうち、前記ガイドワイヤの縦断面における中心線から最も遠い部位は、前記コイル体のコイル内径に対応する領域よりも前記コイル体における外周方向側に配置されていることが好ましい。
【0011】
上記構成とすると、仮に前記最先端部から前記コアシャフトを引き抜こうとする大きな外力が作用し、これにより前記屈曲部が該最先端部内で該ガイドワイヤの基端方向へ引き込まれた場合にも、補償的に、該屈曲部が前記コイル体のコイル素線に係止されることとなり、該コアシャフトが該最先端部から完全に抜け出てしまうことを防止できる。
【0012】
また、前記コアシャフトの先端部には、前記屈曲部が複数形成されていてもよい。
【0013】
上記構成とすると、屈曲部による引き抜き抵抗がより一層高まるため、該コアシャフトが該最先端部から抜け出ることをより一層確実に防止できる。
【0014】
また、前記コアシャフトにおける前記屈曲部の基端側表面と、前記コイル体におけるコイル素線の先端側表面とが接触している構成が提案される。
【0015】
上記構成にあっては、仮に前記最先端部から前記コアシャフトを引き抜こうとする外力が作用した場合にも、該コアシャフトの屈曲部を介して該コアシャフトが前記コイル体に係止されているため、該コアシャフトが該最先端部から抜け出ることを確実に防止できる。
【0016】
さらに、前記コアシャフトにおける前記屈曲部の基端側表面と、前記コイル体の先端を構成するコイル素線の先端側表面とが接触している構成が提案される。
【0017】
上記構成とすることにより、前記コアシャフトの屈曲部を介して前記コアシャフトが前記コイル体に係止されると共に、該屈曲部は、該最先端部において、コイル体の先端側に配置されることとなるため、より一層確実に、該コアシャフトが該最先端部から完全に引き抜かれることを防止できる。
【0018】
また、前記最先端部は、金を主成分とする金属ハンダで構成されていることが好ましい。
【0019】
金を主成分とする金属ハンダは剛性が高いため、該金属ハンダによって該最先端部を構成することにより、該最先端部に対するコアシャフトの抜け荷重を充分に確保することが可能となる。さらに、適正な抜け荷重を保ちつつ該最先端部の寸法を小さくすることも可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、最先端部を小型化でき、血管等の分岐部での選択性に優れ、かつコアシャフトの先端部の機械的強度の減少を抑えつつ、該コアシャフトが該最先端部から抜け出ることを確実に防止できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施例1のガイドワイヤを示す説明図
【図2】実施例2のガイドワイヤを示し、(a)は縦断面図、(b)は(a)のA−A線断面図
【図3】実施例3のガイドワイヤを示す説明図
【図4】実施例4のガイドワイヤを示す説明図
【図5】実施例5のガイドワイヤを示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明にかかるガイドワイヤの実施例1〜5を添付図面に従って説明する。
【0023】
(実施例1)
図1に示すように、医療用のガイドワイヤ1Aは、先端側が細径で基端側が太径とされている先細り形状のコアシャフト2を有している。
【0024】
また、前記コアシャフト2の少なくとも先端部には、コイル体3が固定されている。さらに詳述すると、前記コイル体3は、少なくとも先端部が疎巻きに形成された単コイルで構成されており、その先端部と前記コアシャフト2の先端部とが固着されて略半球体形の最先端部4が形成されている。また、該コイル体3の基端は、基端側固定部5を介して前記コアシャフト2に固定されている。そして、かかるガイドワイヤ1Aにあっては、縦断面における中心線L1周りに、コアシャフト2及びコイル体3が配置され、該コアシャフト2及び該コイル体3が相互に固着されている。なお、前記基端側固定部5は、公知材料を用いた公知技術(例えば、接着剤、ロウ接、又は溶接)により構成される。
【0025】
また、前記最先端部4は、前記基端側固定部5と同様に公知技術で形成することが可能であるが、金を主成分とする金属ハンダ、例えば金が80質量%以上含まれ、残部がスズである配合のものを好適に使用することができる。
【0026】
また、前記最先端部4内において、前記コアシャフト2の先端部には、前記ガイドワイヤ1Aの長軸方向に対して垂直となる方向に屈曲した屈曲部20が形成されている。そして、該屈曲部20のうち、ガイドワイヤ1Aの縦断面における中心線L1から最も遠い部位である先端20Aが、前記コイル体3のコイル内径Dに対応する領域よりも前記コイル体3における外周方向側に配置されている。
【0027】
なお、該屈曲部20は、汎用の直線形状のコアシャフト2の先端部を屈曲加工して形成することができるが、その他の手法を採用してもよく、公知技術のなかから種々選定可能である。
【0028】
上記ガイドワイヤ1Aにあっては、仮に前記最先端部4から前記コアシャフト2を引き抜こうとする外力が作用しても、前記屈曲部20が該ガイドワイヤ1Aの長軸方向に対して垂直な方向に沿って形成されているため、該屈曲部20と該最先端部4との間の摩擦抵抗が増し、これにより該コアシャフト2の引き抜き抵抗が向上して該コアシャフト2が該最先端部4から抜け出ることを防止できる。また、該屈曲部20は、公知技術である屈曲加工により形成することができ、製造コストが高騰することがなく、また、該屈曲部20を形成した後においても該コアシャフト2の機械的強度は極めて低下しにくいという利点がある。また、該屈曲部20の外観形状は簡素なものであるため、該最先端部4は大型化することがなく、特に、該ガイドワイヤ1Aの長軸方向に沿った該最先端部4の長さを短くすることができる。このように最先端部4が小型化することにより、血管等の分岐部での選択性が向上する。また、上記のように、屈曲部20の先端20Aがコイル体3のコイル内径Dに対応する領域よりも外周方向側に配置されているため、仮に該屈曲部20が該最先端部4内で該ガイドワイヤ1Aの基端方向へ引き込まれた場合にも、補償的に、該屈曲部20が前記コイル体3のコイル素線31に係止され、該コアシャフト2が該最先端部4から完全に抜け出てしまうことを防止できる。
【0029】
(実施例2)
以下、実施例2にかかるガイドワイヤ1Bを図2に従って説明するが、実施例1と共通する部分については説明を省略し、図中では同じ符号を付すこととする。
【0030】
図2a,図2bに示すように、ガイドワイヤ1Bは、前記コアシャフト2の先端部に複数の屈曲部21〜23を有している。具体的には、図2bに示すように、該コアシャフト2の先端部において、ガイドワイヤ1Bの中心線L1から遠ざかる方向に向けて第1屈曲部21が形成され、該第1屈曲部21の先端部からガイドワイヤ1Bの長軸方向に対して垂直となる方向に沿って第2屈曲部22が形成され、さらに、該第2屈曲部22の先端部から該ガイドワイヤ1Bの中心線L1に近づく方向に向けて、ガイドワイヤ1Bの長軸方向に対して垂直な第3屈曲部23が形成されている。すなわち、前記屈曲部21〜23はいずれも、ガイドワイヤ1Bの横断面において同一平面内に含まれている。
【0031】
このように複数の屈曲部21〜23を備えた構成とすることにより、該屈曲部21〜23による引き抜き抵抗が大幅に向上するため、該コアシャフト2が該最先端部4から抜け出ることをより一層確実に防止できる。なお、該屈曲部21〜23の数はこれに限定されず、4つ以上形成されていてもよい。また、前記屈曲部21〜23のうち、前記ガイドワイヤ1Bの縦断面における中心線L1から最も遠い部位は、前記コイル体3のコイル内径に対応する領域よりも前記コイル体3における外周方向側に配置されていてもよい。
【0032】
(実施例3)
以下、実施例3にかかるガイドワイヤ1Cを図3に従って説明するが、実施例1,2と共通する部分については説明を省略し、図中では同じ符号を付すこととする。
【0033】
図3に示すように、ガイドワイヤ1Cは、コアシャフト2における前記屈曲部20の基端側表面201と、前記コイル体3におけるコイル素線31の先端側表面310とが接触することにより、該コアシャフト2が該コイル体3に係止されている。
【0034】
上記構成にあっては、仮に前記最先端部4から前記コアシャフト2を引き抜こうとする外力が作用した場合にも、該コアシャフト2の屈曲部20を介して該コアシャフト2が前記コイル体3に係止されているため、該コアシャフト2が該最先端部4から抜け出ることを確実に防止できる。
【0035】
(実施例4)
以下、実施例4にかかるガイドワイヤ1Dを図4に従って説明するが、実施例1〜3と共通する部分については説明を省略し、図中では同じ符号を付すこととする。
【0036】
図4に示すように、ガイドワイヤ1Dは、前記コアシャフト2における前記屈曲部20の基端側表面201と、前記コイル体3の先端を構成するコイル素線31の先端側表面310とが接触することにより、該コアシャフト2が該コイル体3に係止されている。
【0037】
上記構成とすることにより、前記コアシャフト2が、屈曲部20を介して前記前記コイル体3に係止されると共に、該屈曲部20が前記最先端部4においてコイル体3の先端側に配置されることとなるため、より一層確実に、該コアシャフト2が該最先端部4から完全に引き抜かれることを防止できる。また、前記屈曲部20の基端側表面201がコイル体3の先端側表面310に接触した状態で該屈曲部20が最先端部4内に配置されるため、ガイドワイヤ1Dの長軸方向における該最先端部4の長さをより短くすることができ、これにより該最先端部4を小型化することができる。この結果、ガイドワイヤ1Dの血管選択性が向上する。
【0038】
(実施例5)
以下、実施例5にかかるガイドワイヤ1Eを図5に従って説明するが、実施例1〜4と共通する部分については説明を省略し、図中では同じ符号を付すこととする。
【0039】
図5に示すように、コアシャフト2は屈曲部24を有し、その先端20Aが前記コイル体3のコイル内径Dに対応する領域内に配置されているガイドワイヤ1Eも、本発明に含まれるものである。
【0040】
なお、これまでに述べた本発明は、上述の実施例1〜5に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更することは勿論可能である。なお、本発明にかかる屈曲部には、折れ曲がった形状や弓なりに湾曲した形状が含まれる。
【符号の説明】
【0041】
1A〜1E ガイドワイヤ
2 コアシャフト
3 コイル体
4 最先端部
20〜24 屈曲部
31 コイル素線
201 屈曲部の基端側表面
310 コイル素線の先端側表面
L1 中心線


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイドワイヤが、
コアシャフトと、
前記コアシャフトの少なくとも先端部に巻回されたコイル体と、
前記コイル体の先端部と前記コアシャフトの先端部とが固着されて形成された最先端部と、
を有し、
前記最先端部内において、前記コアシャフトの先端部には、前記ガイドワイヤの長軸方向に対して垂直となる方向に屈曲した屈曲部が形成されている
ことを特徴とするガイドワイヤ。
【請求項2】
前記屈曲部のうち、前記ガイドワイヤの縦断面における中心線から最も遠い部位は、前記コイル体のコイル内径に対応する領域よりも前記コイル体における外周方向側に配置されている
請求項1に記載のガイドワイヤ。
【請求項3】
前記コアシャフトの先端部には、前記屈曲部が複数形成されている
請求項1又は請求項2に記載のガイドワイヤ。
【請求項4】
前記コアシャフトにおける前記屈曲部の基端側表面と、前記コイル体におけるコイル素線の先端側表面とが接触している
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のガイドワイヤ。
【請求項5】
前記コアシャフトにおける前記屈曲部の基端側表面と、前記コイル体の先端を構成するコイル素線の先端側表面とが接触している
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のガイドワイヤ。
【請求項6】
前記最先端部は、金を主成分とする金属ハンダで構成されている
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のガイドワイヤ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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