説明

ガスインジケータ付き容器

【課題】プラスチック容器のピンホール、シール不良などの不具合の有無を、簡易な構成により、容易に判断することのできるガスインジケータ付き容器を提供すること。
【解決手段】本発明のガスインジケータ付き容器1は、融着部2で区画される収容部3を備える。容器1を形成する2枚の多層フィルムは、最内層としての、炭酸ガスの透過を許容する樹脂からなるシール層と、シール層より外層側に配置される、炭酸ガスの透過を阻止する樹脂からなるガスバリア層とを備えており、一方の多層フィルムにおいて、シール層とガスバリア層との間に、ガスインジケータ5を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスインジケータ付き容器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、重炭酸リンゲル液、人工脳脊髄液、眼灌流液などの重炭酸塩含有薬液は、開放系で炭酸ガスを放出し、pHが上昇することによって、実際の使用に適さなくなる。このため、重炭酸塩含有薬液は、炭酸ガスが透過しにくいプラスチックからなる容器に収容、保存される。
また、例えば、脂肪乳剤、アミノ酸含有液、抗生物質含有液、ビタミン類含有液などの易酸化性薬液は、酸素との接触により容易に酸化し、変質することから、酸素が透過しにくいプラスチックからなる容器に収容、保存される。
【0003】
しかし、これらプラスチック容器におけるピンホールや、シール不良などの不具合は、目視観察によって見つけることが困難である。このため、上記不具合に起因して炭酸ガスや酸素の漏出、侵入が生じ、重炭酸塩含有薬液や易酸化性薬液が変質していたとしても、そのことに気づかないまま、実際に使用されるおそれがある。
そこで、プラスチック容器における上記の不具合に起因した炭酸ガスや酸素の漏出、侵入を容易に検知するため、特許文献1には、ガス置換包装のピンホール、シール不良によるガス雰囲気の変化を簡単に確認し得る炭酸ガスインジケータと、この炭酸ガスインジケータを、容器と、この容器を包装する炭酸ガス不透過性の外装体内に配置した包装体が記載されている。
【0004】
特許文献2には、酸素で変質しやすい医薬または食品を収容したガス透過性容器を、ガス非透過性包装材にて包装してなる包装体であって、この包装体のガス雰囲気変化を色調変化で検知する酸素検知部を、ガス透過性容器の外面に印刷によって備えている酸素インジケータ付き包装体が記載されている。
【特許文献1】国際出願公開WO01/044385号パンフレット
【特許文献2】特開2003−335380号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかるに、特許文献1および2に記載の包装体によれば、ピンホール、シール不良などの不具合の発生を、炭酸ガスインジケータの表示により、容易に認識できる。
しかしながら、特許文献1および2に記載の包装体は、いずれも外装袋の使用や、外装袋内の雰囲気の特定のガスによる置換が必須の要件となるため、包装体を構成する部材の増加や、包装体を製造するための処理の複雑化により、コストが増加する。
【0006】
そこで、本発明の目的は、プラスチック容器のピンホール、シール不良などの不具合の有無を、簡易な構成により、容易に判断することのできるガスインジケータ付き容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明のガスインジケータ付き容器は、多層フィルムの一方側の表面同士を融着した融着部で区画される収容部を備え、前記多層フィルムが、前記一方側に配置される、特定のガスの透過を許容する樹脂からなるシール層と、前記シール層より他方側に配置される、前記特定のガスの透過を阻止する樹脂からなるガスバリア層と、を備え、前記多層フィルムの前記シール層と前記ガスバリア層との間に、前記特定のガスを検知するガスインジケータが介在されていることを特徴としている。
【0008】
本発明のガスインジケータ付き容器において、シール層は、特定ガスの透過を許容する樹脂からなるため、収容部内にあらかじめ特定ガスが含まれている場合や、収容部内に特定ガスが侵入した場合には、ガスインジケータによって特定ガスが検知される。また、ガスバリア層は、特定ガスの透過を阻止する樹脂からなるため、特定ガスの容器からの漏出や、容器内への侵入が防止される。
【0009】
それゆえ、多層フィルムにピンホールやシール不良が生じたときには、容器からの特定ガスの漏出によって収容部内の特定ガスの濃度が低下し、ガスインジケータが特定ガスを検知しなくなるか、または、容器内への特定ガスの侵入によって収容部内の特定ガスの濃度が上昇し、ガスインジケータが特定ガスを検知するようになる。このため、特定ガスが漏出する場合と、侵入する場合とのいずれの場合においても、特定ガスの漏出または侵入の前後において、ガスインジケータの表示が変化する。
【0010】
すなわち、上記のガスインジケータ付き容器によれば、ピンホール、シール不良などの不具合の有無を、外装袋などの別部材を用いることなく、簡易な構成により、しかも容易に判断することができる。
本発明のガスインジケータ付き容器は、前記収容部に対し前記融着部を挟んで隣接配置される、前記融着部で区画された縁部を備え、前記ガスインジケータが、前記融着部または前記縁部において、前記シール層と前記ガスバリア層との間に介在されていることが好適である。
【0011】
上記融着部は、ガスインジケータ付き容器を形成する多層フィルムの一方側表面同士の融着により形成される。また、上記縁部は、上記収容部に対し上記融着部を挟んで隣接配置され、上記融着部で区画されている。すなわち、上記縁部は、上記収容部の周縁において、上記融着部を挟んで上記収容部に対向配置されており、さらに、この縁部の周囲に、上記融着部を備えている。
【0012】
それゆえ、これら融着部および縁部において、多層フィルムのシール層は、収容部に収容される内容物と、容器外部の雰囲気とのいずれとも、直接に接触しない。それゆえ、これら融着部および縁部におけるシール層とガスバリア層との間にガスインジケータを形成することで、ガスインジケータを形成する成分がシール層を浸透することによる内容物の汚染を防止しつつ、収容部内での特定ガスの検知をすることができる。
【0013】
本発明のガスインジケータ付き容器において、前記特定のガスとしては、炭酸ガスが挙げられる。この場合において、容器を形成する多層フィルムのシール層は、炭酸ガスの透過を許容する樹脂からなり、ガスバリア層は、炭酸ガスの透過を阻止する樹脂からなる。また、このシール層とガスバリア層との間には、炭酸ガスを検知する炭酸ガスインジケータが介在される。
【0014】
上記のガスインジケータ付き容器によれば、例えば、収容部に収容される内容物が、炭酸ガスを放出するものや、炭酸ガスにより置換された雰囲気中で収容されるものであるときに、上記不具合に伴う収容部からの炭酸ガスの漏出の有無を、容易に判断できる。
また、特定ガスが炭酸ガスである場合には、前記ガスインジケータが、前記収容部内の炭酸ガスの濃度変化により色調に変化が生じる指示薬と、結合剤とを含む塗膜からなることが好ましい。
【0015】
この場合、上記内容物から放出される炭酸ガスの容器からの漏出の有無を、ガスインジケータの指示薬による色調変化によって、容易に判断することができる。
また、上記の場合において、上記ガスインジケータ付き容器の収容部に収容される内容物としては、重炭酸塩含有薬液が挙げられる。
上記ガスインジケータ付き容器によれば、収容部からの炭酸ガスの漏出を、容易に判断できることから、重炭酸塩含有薬液から放出された炭酸ガスが、収容部から容器の外部へと漏出した場合に、炭酸ガスの漏出に伴う重炭酸塩含有薬液の変質を容易に判断することができる。
【0016】
本発明のガスインジケータ付き容器において、前記特定のガスとしては、酸素が挙げられる。この場合において、容器を形成する多層フィルムのシール層は、酸素の透過を許容する樹脂からなり、ガスバリア層は、酸素の透過を阻止する樹脂からなる。また、このシール層とガスバリア層との間には、酸素を検知する酸素インジケータが介在される。
上記のガスインジケータ付き容器によれば、例えば、収容部に収容される内容物が、酸素以外のガスにより置換された雰囲気下で収容されるものであるときに、上記不具合に伴う収容部内への酸素の侵入の有無を、容易に判断できる。
【0017】
また、特定ガスが酸素である場合には、前記収容部に収容される内容物が、酸化しやすい内容物であり、前記ガスインジケータが、前記収容部内の酸素の濃度変化により色調に変化が生じる指示薬と、結合剤とを含む塗膜からなることが好ましい。
この場合、上記内容物が収容される収容部への酸素の侵入の有無を、ガスインジケータの指示薬による色調変化によって、容易に判断することができる。
【0018】
また、上記の場合において、上記ガスインジケータ付き容器の収容部に収容される、酸化しやすい内容物としては、脂肪乳剤が挙げられる。
上記ガスインジケータ付き容器によれば、収容部からの酸素の漏出を、容易に判断できることから、上記薬液を収容する収容部内へと酸素が侵入した場合に、酸素の侵入に伴う薬液の変質を容易に判断することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のガスインジケータ付き容器によれば、ガスバリア層によって、容器からの特定ガスの漏出や、容器内への特定ガスの侵入が防止されることから、このガスインジケータ付き容器をさらにガスバリア包装するための包装体が不要となる。
また、ピンホール、シール不良などの不具合に起因した容器からの特定ガスの漏出や、容器内への特定ガスの侵入の有無は、ガスインジケータ付き容器を形成する多層フィルム内のガスインジケータによって判断できる。すなわち、プラスチック容器のピンホール、シール不良などの不具合の有無を、簡易な構成により、容易に判断することができる。
【0020】
それゆえ、本発明のガスインジケータ付き容器によれば、ピンホール、シール不良などの不具合に起因して、容器からの特定ガスの漏出や、容器内への特定ガスの侵入が生じた場合に、変質した内容物が誤ってそのまま使用されることを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は、本発明のガスインジケータ付き容器の一実施形態を示す正面図である。図2および図3は、いずれも、ガスインジケータ付き容器を形成する多層フィルムの層構成の一例を示す断面図であって、図1のA−A断面を示している。
以下、図1〜3を参照しつつ、本発明のガスインジケータ付き容器について説明する。なお、以下の説明において、複数の実施形態を通じて同一または同種の部分には、同一の符号を示し、その説明を省略することがある。
【0022】
図1を参照して、ガスインジケータ付き容器1は、後述する2枚の多層フィルムの一方側の表面同士を融着した融着部2と、この融着部2で区画される収容部3と、収容部3に対し、融着部2を挟んで隣接配置され、かつ融着部2で区画される縁部4と、縁部4において、多層フィルムのシール層とガスバリア層との間に介在されているガスインジケータ5と、を備えている。
【0023】
融着部2は、収容部3内の内容物の流出や、収容部3内への薬液などの流入に用いられる筒部材6を備えている。また、筒部材6と対向する位置に、融着部2を刳り貫いて形成される貫通孔7を備えている。
収容部3は、ガスインジケータ付き容器の内容物を収容する部位であって、上記のとおり、2枚の多層フィルムの一方側の表面同士を融着した融着部2によって区画されている。
【0024】
縁部4は、2枚の多層フィルム8,9の一方側表面同士を融着していない部分であって、収容部3に対し、融着部2を挟んで隣接配置されている。また、この縁部4は、その周囲に、融着部2を備えており、縁部4全体が融着部2に取り囲まれている。
図2を参照して、ガスインジケータ付き容器1を形成する2枚の多層フィルム8,9は、各多層フィルム8,9の一方側に配置される最内層としてのシール層10と、各シール層10の他方側(外表面側)に積層されるガスバリア層11と、このガスバリア層11の他方側に積層される最外層としての外側表面層12と、を備えている。
【0025】
また、2枚の多層フィルム8,9のうち、一方の多層フィルム8は、ガスバリア層11のシール層10と重ね合わされる側の表面に、ガスインジケータ5を備えている。これにより、ガスインジケータ5は、縁部4において、一方の多層フィルム8のシール層10とガスバリア層11との間に介在されている。
シール層10は、各多層フィルム8,9の一方側に配置され、最内層を形成する。
【0026】
また、シール層10は、その表面(各多層フィルム8,9の一方側表面)同士を融着して、融着部2を形成する。
シール層10の形成材料としては、特定ガスの透過を許容し、かつシール層10同士の融着により、融着部2を形成し得る樹脂が挙げられる。
また、シール層10の形成材料としては、これに限定されないが、収容部3に収容される内容物との接触により、変質を生じない樹脂であることが求められる。例えば、収容部3に収容される内容物が、薬液である場合には、シール層10には、この薬液との接触が医薬的に許容される樹脂であることが求められる。
【0027】
ガスバリア層11は、各多層フィルム8,9におけるシール層10の他方側(外表面側)に配置される。
ガスバリア層11は、特定ガスの透過を阻止する層であって、ベース層13の表面に無機酸化物の蒸着層14を備える蒸着フィルム15を、互いの蒸着層14同士が向かい合うように接着した2層構造の積層体により形成される。
【0028】
外側表面層12は、各多層フィルム8,9におけるガスバリア層11の他方側に配置され、最外層を形成する。
外側表面層12の形成材料としては、特に限定されないが、好ましくは、ガスバリア層11との接着性に優れた樹脂が挙げられる。
以上の説明では、ガスバリア層11を形成する蒸着フィルム15を、ベース層13の一方側表面にのみ蒸着層14を備えるものとして説明したが、蒸着フィルムはこれに限定されず、例えば、ベース層13の両側表面に、それぞれ蒸着層を備えていてもよい。
【0029】
また、以上の説明では、ガスバリア層11として、ベース層13の表面に無機酸化物の蒸着層14を備える蒸着フィルム15の積層体を例に挙げて説明したが、ガスバリア層を含む多層フィルムは、これに限定されず、例えば、図3に示す層構成のものであってもよい。
図3を参照して、ガスインジケータ付き容器1を形成する2枚の多層フィルム16,17は、各多層フィルム16,17の一方側に配置される最内層としてのシール層10と、各シール層10の他方側(外表面側)に積層されるガスバリア層18と、このガスバリア層18の他方側に積層される最外層としての外側表面層12と、を備えている。
【0030】
また、2枚の多層フィルム16,17のうち、一方の多層フィルム16は、ガスバリア層18のシール層10と重ね合わされる側の表面に、ガスインジケータ5を備えている。これにより、ガスインジケータ5は、縁部4において、一方の多層フィルム16のシール層10とガスバリア層18との間に介在されている。
シール層10は、図2に示す多層フィルム8,9のシール層10と同様である。
【0031】
ガスバリア層18は、特定ガスの透過を阻止する層であって、各多層フィルム16,17におけるシール層10の他方側(外表面側)に配置される。
ガスバリア層18の形成材料としては、特定ガスに対するバリア性を有する樹脂が挙げられる。
外側表面層12は、図2に示す多層フィルム8,9の外側表面層12と同様である。
【0032】
以上の説明では、ガスバリア層18を単層構造のものとして説明したが、このガスバリア層18は、例えば、上記例示の形成材料からなる同種または異種の2以上のフィルムの積層体であってもよい。
さらに、ガスインジケータ付き容器1を形成するための多層フィルムは、図2に示す多層フィルム8,9や、図3に示す多層フィルム16,17に限定されず、本発明の作用効果が損なわれない範囲において、適宜設計変更を加えることができる。
【0033】
例えば、多層フィルムのシール層10と、ガスバリア層(11,18)との間には、中間層を設けてもよい。この場合において、ガスインジケータ5は、特定ガスの濃度変化に対する応答性の低下を防止する観点より、シール層10と中間層との間に設けることが好ましい。
ガスインジケータ付き容器1を形成するための多層フィルムの総厚みは、特に限定されず、ガスインジケータ付き容器1の用途、容量などに合わせて、適宜増減することができる。
【0034】
これに限定されないが、例えば、ガスインジケータ付き容器1を、収容部3の容積が100〜2000mL程度の容器とする場合において、多層フィルムの総厚みは、好ましくは、100〜300μmであり、より好ましくは、160〜220μmである。
多層フィルムを形成する各層の厚みは、特に限定されず、各層の目的に合わせて、適宜設定すればよい。例えば、シール層10については、融着部2に十分な強度を付与することのできる厚みに設定すればよく、ガスバリア層11については、十分なガスバリア性を付与すること(炭酸ガス透過度を低下させること)のできる厚みに設定すればよい。
【0035】
ガスバリア性容器1は、例えば、多層フィルム2枚を、互いの一方側表面(最内層側の表面)同士を重ね合わせた後、ヒートシールなどの融着手段により融着させて、融着部2を形成することにより製造される。
融着部2を形成するためのシール方法としては、特に限定されず、例えば、熱シール法、超音波シール法などの各種のシール方法が挙げられる。
【0036】
また、融着部2の形成条件は、特に限定されず、融着手段に合わせて、公知の形成条件から適宜設定することができる。例えば、融着部2をヒートシールにより形成する場合のヒートシール条件は、常法に従い、例えば、110〜160℃、2〜4秒間の範囲に設定することが好ましい。
収容部3内の収容物の排出口となる筒部材6は、融着部2の形成時に、2枚の多層フィルムの間に配置される。
【0037】
以上の説明では、ガスインジケータ付き容器1を形成するために、2枚の多層フィルムを使用し、各多層フィルムの一方側表面同士を互いに重ね合わせて融着部2を形成するものとして説明したが、例えば、多層フィルムが、インフレーション法により作製されたものである場合には、インフレーションフィルムの一対の開口端を、それぞれヒートシールなどの融着手段により融着させて、融着部2を形成することにより、ガスインジケータ付き容器1を製造することができる。
【0038】
また、ガスバリア性容器1は、収容部3内に易剥離シール(イージーピールシール)部を設けた、いわゆる複室容器であってもよい。
次に、ガスインジケータ付き容器の一実施形態を、図1および図2を参照しつつ、特定ガスが炭酸ガスである場合を例に挙げて説明する。
この場合において、シール層10は、炭酸ガスの透過を許容する樹脂からなり、ガスバリア層11は、炭酸ガスの透過を阻止する樹脂からなる。また、ガスインジケータ5は、炭酸ガスを検知するための炭酸ガスインジケータである。
【0039】
シール層10の炭酸ガス透過度(COGTR)は、炭酸ガスの濃度変化に対するガスインジケータ5の応答性の低下(応答の遅れまたは無応答)を防止し、2枚の多層フィルム8,9にピンホール、シール不良などの不具合が発生しているか否かについての判断の誤りや遅れを防止するという観点より、好ましくは、500cm/(m・24h・atm)以上、さらに好ましくは、1000cm/(m・24h・atm)以上、特に好ましくは、10000〜100000cm/(m・24h・atm)である。
【0040】
炭酸ガス透過度(COGTR)は、JIS K 7126−1:2006「プラスチック−フィルム及びシート−ガス透過度試験方法−第1部:差圧法」に記載の方法に準じて測定される。
シール層10の形成材料の具体例としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンが挙げられる。これらポリオレフィンは、単独で、または2種以上を混合して用いられる。また、ポリオレフィンとしては、特に限定されないが、シール層10の熱シール性を向上させる観点より、好ましくは、低密度ポリエチレン、未延伸ポリプロピレンが挙げられる。
【0041】
ポリオレフィンは、薬液と直接に接触する用途での使用が医薬的に許容されている樹脂材料である。このため、収容部3に収容される内容物が、例えば、重炭酸リンゲル液、人工脳脊髄液、眼灌流液などの重炭酸塩含有薬液である場合において、シール層10の形成材料として好適である。
ガスバリア層11の炭酸ガス透過度(COGTR)は、収容部3から容器1外部への炭酸ガスの漏出を防止するという観点より、好ましくは、50cm/(m・24h・atm)以下、さらに好ましくは、5cm/(m・24h・atm)以下、特に好ましくは、0.1〜3cm/(m・24h・atm)である。
【0042】
ガスバリア層11は、ベース層13の一方側表面に無機酸化物の蒸着層14を備える蒸着フィルム15の積層体により形成されている。
ベース層13は、蒸着層14を形成する基材となる層である。
ベース層13の形成材料は、特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド(ナイロン)などが挙げられる。
【0043】
蒸着層14は、ベース層13の表面に蒸着により形成され、蒸着フィルム15にガスバリア性を付与する層である。
蒸着層14を形成する無機酸化物としては、これに限定されないが、例えば、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化ケイ素(シリカ)などが挙げられる。
蒸着層の形成方法としては、特に限定されず、例えば、化学的気相蒸着法(CVD)、スパッタリング法、真空蒸着法などの、各種の方法が挙げられる。
【0044】
ガスバリア層11は、2枚の蒸着フィルム15の各蒸着層14が互いに重なり合うようにして、積層されている。2枚の蒸着フィルム15の積層は、例えば、接着性樹脂などの接着剤が用いられる。
接着性樹脂としては、例えば、ポリウレタン樹脂などが挙げられ、具体的には、例えは、三井化学ポリウレタン(株)製のポリウレタン樹脂(商品名「タケラック(登録商標)」シリーズ、商品名「タケネート(登録商標)」シリーズ)などが挙げられる。
【0045】
なお、ガスバリア層11に代えて、図3に示すガスバリア層18を採用する場合において、ガスバリア層18の形成材料としては、例えば、ポリエステル、ポリアミド(ナイロン)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリビニルアルコール(PVOH)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVOH)などの樹脂が挙げられる。これらは、単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0046】
ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)などが挙げられる。ポリアミドとしては、例えば、ナイロン−6、ナイロン−66、ナイロン−612などが挙げられる。
外側表面層12は、ガスバリア層11に対し、シール層10とは反対側の表面に積層される。
【0047】
外側表面層12の形成材料としては、特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)などポリエステル、例えば、ナイロン−6、ナイロン−66、ナイロン−612などのポリアミド、例えば、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリビニルアルコール(PVOH)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVOH)などが挙げられる。
【0048】
ガスインジケータ5は、例えば、ガスバリア層11の表面に、具体的には、ガスバリア層11を形成する2枚の蒸着フィルム15のうち、シール層10と重ね合わせられる側のベース層13の表面に、炭酸ガス検知用インキを塗布することにより形成される。
炭酸ガス検知用インキは、炭酸ガスの濃度変化により色調に変化を生じる指示薬と、結合剤と、溶媒とを含んでいる。
【0049】
炭酸ガスの濃度変化により色調に変化を生じる指示薬としては、例えば、pH指示薬などが挙げられる。
pH指示薬としては、炭酸ガスの濃度変化に応じたpHの変動によって色調変化を伴うものが挙げられる。
炭酸ガス検知用インキに好適なpH指示薬と、その呈色範囲を以下に示す。
【0050】
ブロモクレゾールグリーン:pH3.8(黄)〜pH5.4(青)
メチルレッド:pH4.2(赤)〜pH6.3(黄)
クロロフェノールレッド:pH5.0(黄)〜pH6.6(赤)
ブロモクレゾールパープル:pH5.2(黄)〜pH6.8(紫)
ブロモチモールブルー:pH6.0(黄)〜pH7.6(青)
ニュートラルレッド:pH6.8(赤)〜pH8.0(黄)
フェノールレッド:pH6.8(黄)〜pH8.4(赤)
クレゾールレッド:pH7.2(黄)〜pH8.8(赤)
α−ナフトールフタレイン:pH7.3(桃)〜pH8.7(緑)
クルクミン:pH7.4(黄)〜pH8.6(赤みのある褐色)
メタクレゾールパープル:pH7.4(黄)〜pH9.0(青みのある紫)
エチルビス(2,4−ジニトロフェニル)アセテート:pH7.5(無色)〜pH9.1(青)
チモールブルー:pH8.0(黄)〜pH9.6(青)
p−キシレノールブルー:pH8.0(無色)〜pH9.6(青)
フェノールフタレイン:pH8.3(無色)〜pH10.0(赤)
上記例示のpH指示薬のなかでも特に、メタクレゾールパープルは、炭酸ガス検知用インキを調製する際の取扱いが容易で、pH変動に伴う色調変化を視認しやすいことなどから、上記炭酸ガス検知用インキでの使用に好適である。
【0051】
溶媒としては、pH指示薬と、後述する結合剤と、炭酸ガス検知用インキに配合されるその他の成分とを、均一にかつ安定に溶解または分散することができるものであればよく、例えば、水、アルコール類、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、エステル類などが挙げられる。なかでも、好ましくは、水、アルコールが挙げられる。これら溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0052】
結合剤は、pH指示薬を塗膜中に分散させるための成分であって、例えば、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、酢酸ビニルの部分ケン化物などのバインダ樹脂が挙げられる。これら結合剤は、単独で、または、2種以上を混合して用いることができる。また、結合剤は、上記溶媒への溶解性または分散性に応じて、適宜選択することができる。
【0053】
炭酸ガス検知用インキに任意に配合される成分としては、例えば、アルカリ性物質、吸水・保湿剤、グリセリン、着色剤などが挙げられる。
炭酸ガス検知用インキにアルカリ性物質が配合されているときは、炭酸ガス濃度の変化に伴うpH指示薬の色調の変化を、より明確に示すことができる。アルカリ性物質としては、例えば、水酸化アルカリ、炭酸アルカリ、炭酸水素アルカリなどが挙げられ、アルカリとしては、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属元素、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属元素が挙げられる。
【0054】
炭酸ガス検知用インキに吸水剤または保湿剤が配合されているときは、塗膜中に水などの溶媒を保持して、炭酸ガスの吸収を容易にさせることができる。このため、炭酸ガス濃度の変化に伴うpH指示薬の色調変化の発現を促進させることができる。
吸水剤としては、水などの溶媒を含んだときに極端な酸性または塩基性を示さないものが挙げられ、好ましくは、白色度または透明度の高い物質が挙げられる。具体的には、例えば、でんぷん、カオリン、合成シリカ、ガラス、微結晶セルロース、イオン交換セルロース、ケイ酸アルミニウムなどが挙げられる。
【0055】
保湿剤としては、例えば、グリセリンが挙げられる。
ガスインジケータ5の色調変化は、pH指示薬そのものの色調変化により判断するだけでなく、pH指示薬と顔料との混色による色調の変化により判断することもできる。例えば、pH指示薬の色調の変化が視覚的に判断しにくいものであるときや、pH指示薬の色調がデザイン上、好ましい色調ではないときにおいて、着色剤を添加し、pH指示薬と混色させることにより、視覚的に判断しやすい色調や、デザイン上所望の色調を得ることができる。
【0056】
このような目的で炭酸ガス検知用インキに配合される着色剤としては、例えば、食用赤色2号(アマランス)、食用赤色3号(エリスロシン)、食用赤色40号(アルラレッドAC)、食用赤色102号(ニューコクシン)、食用赤色104号(フロキシン)、食用赤色106号(アシッドレッド)、天然系コチニール色素などの赤色着色剤、例えば、食用黄色4号(タートラジン)、食用黄色5号(サンセットイエローFCF)、天然系紅花黄色素などの黄色着色剤、例えば、食用青色1号(ブリリアントブルーFCF)、食用青色2号(インジゴカルミン)などの青色着色剤が挙げられる。
【0057】
炭酸ガス検知用インキには、さらに、その発色に影響を与えない範囲で、各種薬剤、例えば、界面活性剤、ニスなどを配合することができる。
ガスインジケータ5の形成方法としては、例えば、印刷法、コーティング法などが挙げられる。また、印刷法としては、例えば、スクリーン印刷法、凹版印刷法、グラビア印刷法などが挙げられ、コーティング法としては、例えば、ロールコーティング法、スプレーコーティング法、ディップコーティング法などが挙げられる。
【0058】
ガスインジケータ5は、炭酸ガスの濃度変化に対する応答性を確保するため、炭酸ガス検知用インキからなる塗膜がある程度の厚みをもつように形成されている必要がある。それゆえ、炭酸ガス検知用インキの塗布量を比較的多くする必要があることから、印刷法、好ましくは、スクリーン印刷法によって形成することが好ましい。
ガスインジケータ5の大きさ、形状、厚み、個数などは、ガスインジケータ付き容器1の用途、容量などに合わせて適宜設定され、特に限定されないが、通常、径を1〜2cm程度、厚みを0.5〜5μm程度とし、ガスインジケータ付き容器1つにつき、1箇所、または数箇所程度設ければよい。
【0059】
ガスインジケータ5の形成部位は、例えば、図2に示す部位のほか、シール層10とガスバリア層11との間に、両者のいずれかの表面に形成されること以外は、特に限定されず、ガスインジケータ付き容器1の任意の部位に形成することができる。
なかでも、好ましくは、ガスインジケータ5の形成部位は、ガスインジケータ付き容器1の融着部2または縁部4、さらに好ましくは、縁部4における、シール層10とガスバリア層11との間である。
【0060】
融着部2および縁部4では、シール層10と、収容部3に収容されている水溶液とが接触しないことから、ガスインジケータ5を形成する炭酸ガス検知用インキの成分がシール層10を透過し、収容部3に収容されている液体中に染み出すという現象を防止することができる。
さらに、融着部2に、ガスインジケータ付き容器1を吊り下げて保持するための貫通孔7が備えられている場合(図1参照)には、ガスインジケータ5を、融着部2におけるシール層10とガスバリア層11との間で、かつ、貫通孔7の近傍に形成することが好ましい。ガスインジケータ付き容器1を実際に使用する際に、貫通孔7が上側となるように吊り下げられるため、収容部3内の炭酸ガスは上方に偏って、すなわち、貫通孔7に近接して存在することになる。このため、貫通孔7の近傍にガスインジケータ5を配置することで、炭酸ガスの濃度変化に対する応答性を向上させることができる。
【0061】
なお、ガスインジケータ5は、例えば、筒部材6の近傍(例えば、図1中に、5aで示す部位など)に設けてもよい。
また、ガスインジケータ5は、融着部2の中でも特に、一対の多層フィルム8,9が直接シールされていない縁部4に設けることが好ましい。この場合、溶着部2形成時の加熱により、ガスインジケータ5に熱劣化が生じることを防止できる。
【0062】
なお、ガスインジケータ5の周辺に、炭酸ガスが十分に存在している状態では、ガスインジケータ5周辺のpHが低くなり、そのpH値に対応する色調を示す。一方、ピンホール、シール不良などの不具合が生じて、収容部3から容器1外部への炭酸ガスの漏出が生じたときには、ガスインジケータ5の炭酸ガス濃度が低下し、炭酸ガスインジケータ周辺のpH値が上昇する。このため、ガスインジケータ5の色調が、pH値がアルカリ側に偏ったことを示す色調へと変化する。それゆえ、上記ガスインジケータ付き容器によれば、ガスインジケータ5の色調変化が観察されたときに、多層フィルムにピンホール、シール不良などの不具合が発生していると判断することができる。
【0063】
多層フィルム8,9は、例えば、シール層10と、ガスバリア層11と、外側表面層12とを、接着性樹脂(接着剤)で貼り合わせること(例えば、ドライラミネーション)により作製することができる。ガスインジケータ5は、シール層10とガスバリア層11との貼り合わせの前に、あらかじめシール層10またはガスバリア層11の表面に形成すればよい。
【0064】
接着性樹脂(接着剤)としては、例えば、ポリウレタン樹脂などが挙げられ、具体的には、例えは、三井化学ポリウレタン(株)製のポリウレタン樹脂(商品名「タケラック(登録商標)」シリーズ、商品名「タケネート(登録商標)」シリーズ)などが挙げられる。
また、多層フィルム8,9(ガスインジケータ5を備えていないもの)は、シール層10、ガスバリア層11および外側表面層12を、例えば、水冷式または空冷式共押出しインフレーション法、共押出しTダイ法などの方法で形成することにより、または、押出しラミネーション法などの方法でラミネートするにより、形成することもできる。
【0065】
次に、ガスインジケータ付き容器の一実施形態を、図1および図2を参照しつつ、特定ガスが酸素ガスである場合を例に挙げて説明する。
この場合において、シール層10は、酸素の透過を許容する樹脂からなり、ガスバリア層11は、酸素の透過を阻止する樹脂からなる。また、ガスインジケータ5は、炭酸ガスを検知するための酸素インジケータである。
【0066】
シール層10の酸素透過度(OGTR)は、酸素の濃度変化に対するガスインジケータ5の応答性の低下(応答の遅れまたは無応答)を防止し、2枚の多層フィルム8,9にピンホール、シール不良などの不具合が発生しているか否かについての判断の誤りや遅れを防止するという観点より、好ましくは、500cm/(m・24h・atm)以上、さらに好ましくは、1000cm/(m・24h・atm)以上、特に好ましくは、10000〜100000cm/(m・24h・atm)である。
【0067】
酸素透過度(OGTR)は、JIS K 7126−1:2006「プラスチック−フィルム及びシート−ガス透過度試験方法−第1部:差圧法」に記載の方法に準じて測定される。
シール層10の形成材料の具体例としては、特定ガスが炭酸ガスである場合と同様のポリオレフィンが挙げられる。
【0068】
ポリオレフィンは、薬液と直接に接触する用途での使用が医薬的に許容されている樹脂材料である。このため、収容部3に収容される内容物が、例えば、脂肪乳剤、アミノ酸含有液、抗生物質含有液、ビタミン類含有液などの易酸化性薬液である場合において、シール層10の形成材料として好適である。
ガスバリア層11の酸素透過度(OGTR)は、収容部3から容器1外部への酸素の漏出を防止するという観点より、好ましくは、50cm/(m・24h・atm)以下、さらに好ましくは、5cm/(m・24h・atm)以下、特に好ましくは、0.1〜3cm/(m・24h・atm)である。
【0069】
ガスバリア層11の具体例としては、特定ガスが炭酸ガスである場合と同様のものが挙げられる。
外側表面層12としては、特定ガスが炭酸ガスである場合と同様のものが挙げられる。
ガスインジケータ5は、例えば、ガスバリア層11の表面に、具体的には、ガスバリア層11を形成する2枚の蒸着フィルム15のうち、シール層10と重ね合わせられる側のベース層13の表面に、酸素検知用インキを塗布することにより形成される。
【0070】
酸素検知用インキは、酸素の濃度変化により色調に変化を生じる指示薬と、還元剤と、結合剤と、溶媒とを含んでいる。
酸素の濃度変化により色調に変化を生じる指示薬としては、例えば、酸化還元指示薬などが挙げられる。
還元剤としては、特に限定されないが、好ましくは、例えば、還元性アミノ酸類、還元性ビタミン類、還元糖類などが挙げられる。
【0071】
還元性アミノ酸類としては、例えば、システイン類、シスチン類などが挙げられる。これらシステイン類またはシスチン類は、L−体、DL−体、およびD−体のいずれであってもよく、また、これらの塩類、エステル、N−アシル誘導体であってもよい。
システイン類またはシスチン類の塩類としては、例えば、塩酸塩が挙げられる。
システイン類またはシスチン類のエステルとしては、例えば、メチルエステル、エチルエステルなどのアルキルエステルなどが挙げられる。
【0072】
システイン類またはシスチン類のN−アシル誘導体としては、例えば、アセチル誘導体、ベンゾイル誘導体などが挙げられる。
システイン類、およびシスチン類の具体例としては、例えば、L−システイン、L−システイン塩酸塩、DL−システイン、DL−システイン塩酸塩、D−システイン、D−システイン塩酸塩、塩酸L−エチルシステイン、塩酸、L−メチルシステイン、アセチルシステイン、S−カルボキシメチル−L−システイン、L−シスチンなどが挙げられる。これらは、単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0073】
還元性ビタミン類としては、例えば、ビタミンE、ビタミンA、ビタミンCなどが挙げられる。
還元糖類としては、例えば、ブドウ糖、フルクトース、ガラクトース、キシロース、マンノースなどの単糖類、例えば、マルトース、ラクトース、セロビオースなどの二糖類、例えば、マルトトリオース、セロトリオース、マンニノトリオースなどの三糖類などが挙げられる。また、例えば、ブドウ糖に異性化酵素を作用させて得られる異性化糖、澱粉を酸や酵素で加水分解して得られる水あめなどの混合物なども挙げられる。
【0074】
還元剤としては、上記例示のなかでも特に、システイン類またはシスチン類が好適である。システイン類またはシスチン類は熱、光に対して安定であることに加え、強い還元性を有することから、後述する酸化還元指示薬の配合比を高めることが可能となる。
酸素検知用インキにおける還元性剤の濃度は、特に限定されないが、例えば、好ましくは、100〜100000ppmである。
【0075】
酸化還元指示薬は、酸素が存在している状態の色調と、酸素が存在していない状態の色調とが互いに変化する色素である。この酸化還元指示薬としては、各種のものが挙げられ、具体的には、メチレンブルー、ニューメチレンブルー、ニュートラルレッド、インジゴカルミン、アシッドレッド、サフラニンT、フェノサフラニン、カプリブルー、ナイルブルー、ジフェニルアミン、キシレンシアノール、ニトロジフェニルアミン、フェロイン、N−フェニルアントラニル酸などが挙げられる。
【0076】
溶媒としては、還元剤と、酸化還元指示薬と、後述する結合剤と、酸素検知用インキに配合されるその他の成分とを、均一にかつ安定に溶解または分散することができるものであればよい。具体的には、これに限定されないが、例えば、水、アルコール類、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、エステル類などが挙げられる。なかでも、好ましくは、水、アルコールが挙げられる。これら溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0077】
結合剤は、色素を塗膜中に分散させるための成分であって、例えば、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、酢酸ビニルの部分ケン化物などのバインダ樹脂が挙げられる。これら結合剤は、単独で、または、2種以上を混合して用いることができる。また、結合剤は、上記溶媒への溶解性または分散性に応じて、適宜選択することができる。
【0078】
その他、酸素検知用インキには、炭酸ガス検知用インキにおいて任意に配合される成分と同様の成分を配合することができる。
また、ガスインジケータ5の形成方法、ガスインジケータ5の大きさ、形状、厚み、個数、ガスインジケータ5の形成部位などについては、上述した炭酸ガス検知用インキによるガスインジケータの作製と同様である。
【0079】
本発明のガスインジケータ付き容器は、例えば、収容部内を特定のガス雰囲気下に維持したい場合や、収容部内への特定ガスの侵入を防止したい場合において、特定ガスの収容部からの漏出や収容部への侵入の有無を容易に検知したい用途に好適である。
特定ガスが炭酸ガスである場合に、本発明のガスインジケータ付き容器(炭酸ガスインジケータ付き容器)は、例えば、重炭酸塩含有薬液を収容する容器として好適である。
【0080】
また、特定ガスが酸素である場合に、本発明のガスインジケータ付き容器(酸素ガスインジケータ付き容器)は、例えば、脂肪乳剤、アミノ酸含有液、抗生物質含有液、ビタミン類含有液などの易酸化性薬液を収容する容器として好適である。
【実施例】
【0081】
次に、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではない。
実施例1
(1) 炭酸ガス検知用インキの調製
メタクレゾールパープル1重量部と、ポリビニルアセタール7重量部と、水92重量部と、イソプロピルアルコール21重量部と、水酸化ナトリウム4重量部と、グリセリン5重量部とを配合し、ペイントコンディショナーで攪拌、混合した。こうして、ポリビニルアセタール中にメタクレゾールパープルが分散された炭酸ガス検知用インキを得た。
【0082】
(2) 多層フィルムの作製
以下に示すようにして、図2に示す層構成を備える2枚の多層フィルム8,9を作製した。
シール層10には、厚さ60μmのポリエチレン(PE)フィルムを使用した。
ガスバリア層11には、ベース層13としてのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの一方側表面に、アルミナの蒸着層14を備える総厚み12μmの蒸着フィルム15を、互いの蒸着層14同士が向かい合うように2枚重ね合わせ、タケラックA315(ポリウレタン樹脂、三井化学ポリウレタン(株)の登録商標)で接着したものを使用した。
【0083】
また、外側表面層12には、厚さ12μmのPETフィルムを使用した。
シール層10と、ガスバリア層11と、外側表面層12とは、タケラックA315(ポリウレタン樹脂、三井化学ポリウレタン(株)の登録商標)で接着した。
なお、一方の多層フィルム8については、シール層10と、ガスバリア層11との接着前に、ガスバリア層11の表面にガスインジケータ5を形成した。
【0084】
ガスインジケータ5には、上記(1)で得られた炭酸ガス検知用インキを、一方側表面にアルミナの蒸着層を備えるポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ12μm)の他方側表面に、スクリーン印刷により印刷し、乾燥、硬化させて形成した。ガスインジケータ5は、炭酸ガスインジケータであって、直径約15mmの略円形であり、厚さが約1μmであった。
【0085】
(3) ガスインジケータ付き容器の製造
ガスインジケータ5(炭酸ガスインジケータ)を備える多層フィルム8と、ガスインジケータ5を備えていない多層フィルム9とを、互いのシール層10同士を重ね合わせ、熱シールにより融着部2を形成することで、図1に示すガスインジケータ付き容器1を形成した。
【0086】
なお、ガスインジケータ付き容器1の筒部材6には、内側層がポリエチレン、外側層がナイロンと、エチレン−ビニルアルコール共重合体と、接着性ポリオレフィン(三井化学(株)製の商品名「アドマー」)との積層体で形成されたポートを使用し、このポートを、厚さ6.5mmのイソプレンゴムからなるゴム栓で封鎖した。また、上記ポートのゴム栓には、外側表面から順に、アルミナ蒸着PETフィルムと、ナイロンフィルムと、アルミナ蒸着PETフィルムと、ポリプロピレンフィルムとからなる積層体で形成されたピールシールフィルム19を設けた。
【0087】
次いで、ガスインジケータ(炭酸ガスインジケータ)付き容器1の収容部3内に、重炭酸リンゲル液250mLを充填し、密封した。収容部3のヘッドスペースの容積は、約50mLとし、密封前に、炭酸ガスで置換した。
(4) 性能評価
上記ガスインジケータ付き容器1を、貫通孔7で吊り下げつつ、室温で放置して、炭酸ガスインジケータの色彩変化を観察した。
【0088】
ガスバリア性容器の製造直後において、炭酸ガスインジケータの色は、紫色であった。
ガスバリア性容器に、重炭酸含有薬液を充填、密閉し、1日経過後、炭酸ガスインジケータの色を観察したところ、黄色であった。この色の変化は、ヘッドスペースに充填される炭酸ガスや、重炭酸リンゲル液から発生する炭酸ガスによって、炭酸ガスインジケータ周辺のpHが低下したことによると考えられる。
【0089】
次いで、多層フィルムに、収容部3内の炭酸ガスが漏出し得る程度のピンホールを形成し、その後のガスインジケータ5の色変化を観察した結果、炭酸ガスインジケータの色は、紫色に変化した。すなわち、収容部3内の炭酸ガスが容器1外部へ漏出したことを、ガスインジケータ5の色変化によって視認することができた。
なお、上記の結果は、炭酸ガスインジケータを、貫通孔7の近傍ではなく、筒部材6の近傍(図1中に符号5aで示す部位)に設けた場合においても、同様であった。
【0090】
実施例2
(1) 酸素ガス検知用インキの調製
L−システイン塩酸塩6.0重量部と、メチレンブルー4.0重量部と、ピンクインキ1.0重量部と、イソプロピルアルコール33.0重量部と、水100.0重量部とを配合し、ペイントコンディショナーで攪拌、混合した。次いで、得られた溶液1重量部と、ポリビニルアルコール50重量部とを配合し、サンドミルで1時間混練することにより、ポリビニルアルコール中にメチレンブルーが分散された酸素ガス検知用インキを得た。
【0091】
(2) 多層フィルムの作製
ガスインジケータ5を形成するインキとして、炭酸ガス検知用インキに代えて、上記(1)で得られた酸素ガス検知用インキを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、図2に示す層構成を備える2枚の多層フィルム8,9を作製した。なお、多層フィルム8のガスインジケータ5は、酸素ガスインジケータである。
【0092】
(3) 多層フィルムの作製
上記(2)で得られたガスインジケータ5(酸素ガスインジケータ)を備える多層フィルム8と、ガスインジケータ5を備えていない多層フィルム9とを、互いのシール層10同士を重ね合わせ、熱シールにより融着部2を形成することで、図1に示すガスインジケータ付き容器1を形成した。
【0093】
次いで、ガスインジケータ(酸素ガスインジケータ)付き容器1の収容部3内に、脂肪乳剤(大塚製薬工場製、商品名「イントラリポス」20%)250mLを充填し、密封した。収容部3のヘッドスペースの容積は約10mLとし、窒素ガスで置換した。
(4) 性能評価
上記ガスインジケータ付き容器1を、貫通孔7で吊り下げつつ、室温で放置して、酸素ガスインジケータの色彩変化を観察した。
【0094】
ガスバリア性容器の製造直後において、酸素ガスインジケータの色は、紫色であった。
ガスバリア性容器に、脂肪乳剤を充填、密閉し、1日経過後、酸素ガスインジケータの色を観察したところ、ピンク色であった。この色の変化は、ヘッドスペースを窒素ガスで置換することによって、酸素ガスインジケータ周辺の酸素濃度が低減したことによると考えられる。
【0095】
次いで、酸素ガスインジケータ付きガスバリア性容器1を形成する多層フィルム9に、収容部3外の酸素ガスが侵入し得る程度のピンホールを形成し、その後のガスインジケータ5の色変化を観察した結果、ガスインジケータ5の色は、紫色に変化した。すなわち、収容部3外の酸素ガスが容器1内部へ侵入したことを、ガスインジケータ5の色変化によって視認することができた。
【0096】
なお、上記の結果は、酸素ガスインジケータを、貫通孔7の近傍ではなく、筒部材6の近傍(図1中に符号5aで示す部位)に設けた場合においても、同様であった。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明のガスインジケータ付き容器の一実施形態を示す正面図である。
【図2】ガスインジケータ付き容器を形成する多層フィルムの一例を示す断面図である。
【図3】ガスインジケータ付き容器を形成する多層フィルムの他の例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0098】
1:ガスインジケータ付き容器、 2:融着部、 3:収容部、 4:縁部、 5:ガスインジケータ、 8:多層フィルム、 9:多層フィルム、 10:シール層、 11:ガスバリア層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層フィルムの一方側の表面同士を融着した融着部で区画される収容部を備え、
前記多層フィルムが、前記一方側に配置される、特定のガスの透過を許容する樹脂からなるシール層と、前記シール層より他方側に配置される、前記特定のガスの透過を阻止する樹脂からなるガスバリア層と、を備え、
前記多層フィルムの前記シール層と前記ガスバリア層との間に、前記特定のガスを検知するガスインジケータが介在されていることを特徴とする、ガスインジケータ付き容器。
【請求項2】
前記収容部に対し前記融着部を挟んで隣接配置される、前記融着部で区画された縁部を備え、
前記ガスインジケータが、前記融着部または前記縁部において、前記シール層と前記ガスバリア層との間に介在されていることを特徴とする、請求項1に記載のガスインジケータ付き容器。
【請求項3】
前記特定のガスが、炭酸ガスであることを特徴とする、請求項1または2に記載のガスインジケータ付き容器。
【請求項4】
前記ガスインジケータが、前記収容部内の炭酸ガスの濃度変化により色調に変化を生じる指示薬と、結合剤とを含む塗膜からなることを特徴とする、請求項3に記載のガスインジケータ付き容器。
【請求項5】
前記収容部に収容される内容物が、重炭酸塩含有薬液であることを特徴とする、請求項3または4に記載のガスインジケータ付き容器。
【請求項6】
前記特定のガスが、酸素であることを特徴とする、請求項1または2に記載のガスインジケータ付き容器。
【請求項7】
前記ガスインジケータが、前記収容部内の酸素の濃度変化により色調に変化を生じる指示薬と、結合剤とを含む塗膜からなることを特徴とする、請求項6に記載のガスインジケータ付き容器。
【請求項8】
前記収容部に収容される内容物が、脂肪乳剤、またはアミノ酸含有液であることを特徴とする、請求項6または7に記載のガスインジケータ付き容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−239216(P2008−239216A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−84556(P2007−84556)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000149435)株式会社大塚製薬工場 (154)
【Fターム(参考)】