説明

ガスクロマトグラフ

【課題】冷媒を用いることなく3次元クロマトグラムを得ることのできるガスクロマトグラフを提供する。
【解決手段】上流側のカラム1の出口側にバルブ7等の流路スイッチ部を設け、この流路スイッチ部によってカラム1から溶出する試料成分をカラム2またはカラム3に振り分けるように構成し、前記流路スイッチ部を一定時間周期で切り換えるようにした。このような構成により、カラム1から溶出する試料成分を一定周期で切り分けた画分ごとにカラム2またはカラム3によるクロマトグラムが順次に多数得られるので、これらのクロマトグラムを時系列的に配列することにより3次元クロマトグラムを得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガスクロマトグラフに関し、特に3次元クロマトグラムを得るガスクロマトグラフに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスクロマトグラフィの分析技法の一つとして、2本の異種のカラムを用いて3次元的なクロマトグラムを得るものがある。これは、2本の異種のカラムを直列に接続し、上流側の第1カラムからの溶出成分を一定時間間隔で液体窒素により冷却トラップすることにより分画し、その各画分を下流側の第2カラムに逐次導入してさらに分離することで複数のクロマトグラムを時系列的に得るように構成したものである(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図4に、このような従来のガスクロマトグラフの流路の概略構成を示す。
同図において、キャリアガス流路に沿って上流側から順に試料導入部6、カラム1、カラム2、検出器4が配置されてガスクロマトグラフが構成され、カラム1とカラム2との中間の流路上に液体窒素等の冷媒の噴射を受けて局所的に冷却される2カ所のコールドスポット11、12が設けられている。コールドスポット11、12は一定時間Tごとに切り換えられて交互に冷却されるように構成され、冷却されていないときのコールドスポット11、12の温度は室温、またはカラム1、2が収容されているオーブン(図示しない)の温度となる。
【0004】
上記のように構成されたガスクロマトグラフによる分析は以下のように行われる。
(1)試料導入部6から試料が導入され、まずカラム1で粗く分離されてコールドスポット11、12の地点に溶出して来る。このとき例えばコールドスポット12が冷却されていると、キャリアガスはそのままコールドスポット12を通過するが、試料成分はここでトラップされる。
(2)コールドスポット12への冷媒噴射が止まり、代ってコールドスポット11が冷却されると、コールドスポット12にトラップされていた試料成分は脱離してカラム2に導入され、ここで分離され検出器4で検出されて最初のクロマトグラムが得られる。このとき、カラム1からの後続する溶出物は冷却されているコールドスポット11で止められているから、カラム2内で進行中の分離に影響を与えることはない。
(3)時間Tが経過すると、再びコールドスポット12が冷却されると共にコールドスポット11の温度が上がり、コールドスポット11で止められていた試料成分は脱離してコールドスポット12まで移動し、さらにカラム1からの後続の溶出物がこれに加わってトラップされる。
(4)さらに時間Tが経過しコールドスポット12の温度が上がると、上記(2)の状態となり、コールドスポット12にトラップされていた分画成分がカラム2に導入され、2回目のクロマトグラムが得られる。
(5)以後、上記(2)、(3)、(4)が周期的に繰り返されて、多数のクロマトグラムが順次に得られるので、これらを時系列的に配列することにより3次元クロマトグラムを得ることができる。
【0005】
【特許文献1】米国特許第6547852号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のようにして得た3次元クロマトグラムによれば、単一カラムから得られたクロマトグラムに比べてより多くの情報を得ることができるが、上記の従来構成の装置は液体窒素等の冷媒を用いる必要があるため、操作に危険を伴い、また運転コストも掛かることが問題であった。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、冷媒を用いることなく3次元クロマトグラムを得ることのできるガスクロマトグラフを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために、上流側の第1カラムの出口側にバルブ等の流路スイッチ部を設け、この流路スイッチ部によって第1カラムから溶出する試料成分を第2カラムまたは第3カラムに振り分けるように構成し、前記流路スイッチ部を一定時間周期で切り換えるようにした。
このような構成により、第1カラムから溶出する試料成分を一定周期で切り分けた画分ごとに第2カラムまたは第3カラムによるクロマトグラムが順次に多数得られるので、これらのクロマトグラムを時系列的に配列することにより3次元クロマトグラムを得ることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明は上記のように構成されているので、危険を伴いコストの掛かる液体窒素を用いることなく、適切な周期で流路スイッチ部を切り換えることで3次元クロマトグラムを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明が提供するガスクロマトグラフ装置は次のような特徴を有する。即ち、第1の特徴は上流側の第1カラムの出口側にバルブ等の流路スイッチ部を設けて第1カラムから溶出する試料成分を第2カラムまたは第3カラムに振り分けるように構成した点にあり、第2の特徴はこの流路スイッチ部を一定時間周期で切り換えるように構成した点である。
従って、最良の形態の基本的な構成はこれらの構成を具備するガスクロマトグラフ装置である。
【実施例1】
【0010】
図1に本発明の一実施例を示す流路図である。以下図示例に従って説明する。同図において、図4と同一の構成要素には同符号を付してあるので、再度の説明は省く。
本実施例が図4に示す従来例と相違する点は、上流側のカラム1の出口側にバルブ7を設けている点である。バルブ7はポートa〜dを備えた4方バルブであり、ポートaにはカラム1が、ポートbにはカラム2が、ポートcにはカラム3が接続されている。また、ポートdには抵抗管8を備えたメークアップガス流路9が接続されている。これによりカラム1からの溶出成分をカラム2またはカラム3に一定の周期で振り分けるように構成される。カラム2及びカラム3の出口側にそれぞれ検出器4及び5が配置されている。カラム2及びカラム3は同種、同サイズで、カラム1とは異種のものを用いる。
バルブ7は、図示しないバルブ駆動機構により、各ポートが図中に実線で示すように接続された状態と点線で示すように接続された状態とに交互に一定周期で切り換えられる。
なお、カラム1とほぼ同等の抵抗を持つように調整された抵抗管8は、カラム2またはカラム3のいずれか一方にキャリアガスと同種のメークアップガスを流すために設けられている。
【0011】
図2に各カラムから溶出する試料成分ピークを模式的に示す。以下、図1、図2を参照しながら本実施例装置の動作を説明する。
(1)バルブ7は、例えば実線で示すように流路が接続された状態で、試料が試料導入部6から導入され、まずカラム1で粗く分離された試料成分が溶出し、カラム2に導入されここで分離されて検出器4で検出される。
(2)時間Tが経過し、バルブ7が切り換えられ、点線で示すように流路が接続された状態になると、カラム1からの溶出成分はカラム3に導入され、ここで分離されて検出器5で検出される。
(3)こうして時間Tごとにバルブ7が切り換えられ、図2(A)に示すように、カラム1からの溶出成分が時間Tごとに切り分けられた画分が交互にカラム2、カラム3に振り分けられる。
(4)これにより、検出器4の出力として、図2(B)に示すように、奇数番目の画分が分離されたクロマトグラムが次々に得られる。
(5)同様に、検出器5の出力として、図2(C)に示すように、偶数番目の画分が分離されたクロマトグラムが次々に得られる。
(6)これらのクロマトグラムを時間順に配列し直すことにより3次元クロマトグラムを得ることができる。
【実施例2】
【0012】
図3に本発明の他の実施例を示す。
本実施例は、基本的構成は実施例1と同様であり、図1におけると同一の構成要素には同符号を付して示す。実施例1と相違する点は、カラム2とカラム3からの溶出成分を共通の1つの検出器4で検出してクロマトグラムを得るようにした点である。このように構成したことにより、カラム2、カラム3によるクロマトグラムが重ならないように分析条件設定に制約を受けることになるが、装置構成が簡単になる利点がある。
【0013】
以上、実施例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、上記実施例はバルブ7を用いて直接的に流路を切り換えるものであるが、流路の分岐点近くの圧力バランスを変えることによりガスの流れ方向を切り換える所謂Deansスイッチと呼ばれる切り換え方式を用いて流路スイッチ部を構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0014】
本発明はガスクロマトグラフに利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施例を示す図である。
【図2】本発明の動作を説明する図である。
【図3】本発明の他の実施例を示す図である。
【図4】従来の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0016】
1 カラム
2 カラム
3 カラム
4 検出器
5 検出器
6 試料導入部
7 バルブ
8 抵抗管
11 コールドスポット
12 コールドスポット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流量制御されたキャリアガスが流れるキャリアガス流路と、該キャリアガス流路に試料を導入する試料導入部と、導入された試料をその成分に分離する複数のカラムからなるカラム系と、分離された各成分を検出する検出器とを備えて成るガスクロマトグラフであって、前記カラム系が上流側の第1カラムと、その出口側に設けた流路スイッチ部と、この流路スイッチ部によって択一的に前記第1カラムの出口側に連通される第2カラムおよび第3カラムとで構成され、前記流路スイッチ部を一定時間周期で切り換える切り換え手段を設けたことを特徴とするガスクロマトグラフ。
【請求項2】
第2カラムおよび第3カラムの出口側流路が共通の1つの検出器に接続されていることを特徴とする請求項1記載のガスクロマトグラフ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−10442(P2007−10442A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−190838(P2005−190838)
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)