説明

ガスケットのシール構造

【課題】相手部材の寸法バラツキや表面のうねりを吸収することができる締め代を確保し、かつ、ガスケットの反力を抑制して相手部材に変形を生じることがない安定したシール性を維持できるガスケットのシール構造を提供する。
【解決手段】中空シール部の頂部にシールリブと、中空シール部の下部には内周側に倒れ防止部を備えた中空シール部とを備え、さらにシールリブは、該中空シール部の中心線近傍に形成されたシールリブ先端部と内周側の円弧状側壁部とを滑らかに連結した斜辺と、該シールリブ先端部から中心線に略並行に延びて中空シール部に連結するシールリブ連結部から形成され、該第2取付溝部は、該第1部材と該第2部材が密着した状態では圧縮変形された該中空シール部の全体を収容可能に形成されていることを特徴とする

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二つの部材の間にガスケットを介在させて、両部材を気密的、水密的に封止する、特に、樹脂製の容器やカバーなどに用いられるガスケットのシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年ガスケットを装着するハウジング又はケースなどの装着部材において、その材質を金属から樹脂へと変更して軽量化を図ることがなされるようになってきている。
【0003】
しかしながら、このように装着部材を樹脂製とした場合には、ガスケットの高さのバラツキやヘタリ、あるいは、樹脂製部材の寸法のバラツキ(例えば溝公差)や表面のうねり、クリープ変形などが比較的大きいことから、実質的な締め代が減少して締め代に余裕がなくなってしまう部位が生じることがある。このため、全周に亘って必要な締め代を確保するにはガスケットの高さ寸法を大きく形成しなければならない。
【0004】
しかし、例えば、図2に示すような従来のガスケットのシール構造100では、装着部材62に装着されたガスケット60の反力が高いために相手部材である樹脂カバー64を変形させて、周方向で隙間を生じることがある。そこで、変形抑止のために樹脂カバー64を金属リテーナで補強すると高価な仕様になってしまう。また、設定される潰し代Dがその最大値において大きくなりすぎて、ガスケット60が装着部材間で倒れやすくなるという不都合が生じる。一方、装着時に発生する反力を小さく抑えるべくガスケットのゴム材料を低硬度の仕様とすれば、なおさら倒れやすくなるので、ガスケットの姿勢安定性と更なる低荷重・高締め代を達成できるガスケットのシール構造が望まれている。
【0005】
この改善策として、特許文献1は先端にリップ状のシールを形成したガスケットを開示し、特許文献2はガスケットの一部を中空としたガスケットを開示している。
【0006】
特許文献1に開示されたガスケット70は、図3に示すように、一方の部材72の装着溝71に挿入される本体部74と、本体部74から他方の部材73に向かって突出する突起部76とを有し、突起部76が二つの部材が密接する方向に対して交差する方向にのびるように設けられている。このため、他方の部材73が密接すると、傾斜角αが拡がる方向にのみ突起部76が倒れる。つまり、このガスケット70は、二つの部材が密接した時の装着溝71内での変形方向が一定となっている。この結果周方向位置によって倒れる方向が変化することによるシール性の低下が抑えられる。
【0007】
また、特許文献2に開示されたガスケット80は弾性体よりなり、図4に示されるように、樹脂製の被取付部材81の取付溝82に装着されている。このガスケット80は、ガスケット80が圧縮される方向(図4(a)の上下方向で、Y矢印方向)に沿う断面形状が圧縮方向に長い長円形をなしており、この長円形の断面形状が周方向に連続する無端の環状体となっている。そして、ガスケット80は、長円形断面の中央に周方向に連続する円形断面の中空部83を有している。
【0008】
このようなガスケット80に被取付部材81の相手部材84が圧接されて締め付け荷重が作用すると、図4(b)に示されるように、ガスケット80は中空部83がつぶれる方向に圧縮されて、長円形断面の長軸長さが短くなる。この時、圧縮分の反力がガスケット80の内部に発生するが、この反力は中空部83が設けられている分だけ小さくなる。このため、被取付部材81及び相手部材84間で圧縮されたガスケット80の反力による、樹脂製の被取付部材81などのクリープ変形を押さえることができる。また、中空部83内に封じ込められた空気によって復元力が得られるので、ガスケット80のへたりを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−257459号公報
【特許文献2】特開2002−349711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に開示のガスケット70では、圧縮されて反力を生じる本体部74は、装着溝71内に埋設されており、突起部76のみが装着溝71から突出して他方の部材73に圧接するようになっている。従って、他方の部材73やガスケット70の寸法バラツキに対して余裕度をもった締め代を確保することができない。
【0011】
また、特許文献2に開示のガスケット80では、圧縮方向における半分以上の部分が取付溝82内に配置された状態で取付溝82に保持されている。そして、被取付部材81の相手部材84からの締め付け荷重がガスケット80に作用していない無荷重状態では、中空部83の大部分が取付溝82内に存在しており、実質的に中実部分のみが取付溝82の外に存在している。
【0012】
このため、例えば、樹脂製の被取付部材81や相手部材84の寸法のバラツキ(例えば溝公差)や表面のうねりなどにより、締め付け荷重付与状態では取付溝82の外に存在するガスケット80の中実部分がねじれるように変形して歪んだり、あるいは傾いて倒れたりすることが考えられる。そうすると、取付溝82および相手部材84間で圧縮されるガスケット80の中実部分の圧縮度合いが減少することで、シール面圧が低下して安定的なシール性を確保することができない。
【0013】
本発明は上記の実状に鑑みてなされたものであり、相手部材の寸法バラツキや表面のうねりを吸収できる締め代を確保し、かつ、ガスケットの反力を抑制して相手部材に変形を生じることがない安価で安定したシール性を維持できるガスケットのシール構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を達成するため、本発明に係るガスケットのシール構造は、第1部材に形成された環状の取付溝部に保持され、第1部材の相手部材である第2部材の下面が第1部材に圧接されることにより両部材間に挟持されてシールするガスケットとよりなり、取付溝部は、第1取付溝部と、第1取付溝部よりも幅広の第2取付溝部とが段形状に形成されており、ガスケットは、第1取付溝部内に配置されて第1取付溝部に保持される中実シール部と、中実シール部の上部に一体に形成され、中実シール部が第1取付溝部に保持された状態にあるときに第1取付溝部の外に位置し、周方向に連続する密閉中空部を区画する円弧状側壁部とからなる中空シール部と、中空シール部はその頂部にシールリブと、その下部であって中実シール部と隣接する内周側の位置に倒れ防止部を備え、シールリブは、中空シール部の中心線近傍に形成されたシールリブ先端部と内周側の円弧状側壁部とを滑らかに連結した斜辺と、シールリブ先端部から中心線に略並行に延びて該中空シール部に連結するシールリブ連結部から形成され、第2取付溝部は、シールリブ先端部が第2部材の下面に接触した状態で、円弧状側壁部の一部を収容し、第1部材と第2部材が密着した状態では圧縮変形された中空シール部の全体を収容可能に形成されていることを特徴とするものである。
【0015】
このガスケットのシール構造において、ガスケットはその中実シール部が第1取付溝部に保持された状態にあるときに、その中空シール部が第1取付溝部の外に位置するように構成されている。中実シール部は、第1取付溝部内に配置されて、この第1取付溝部に保持される。したがって、このガスケットのうち、中実シール部のみが第1取付溝部に保持されるのであり、取付溝に対してガスケットを確実に保持させることができ、ガスケットの姿勢安定性を向上させることができる。
【0016】
中空シール部は、シールリブと周方向に連続する密閉中空部とを有しているため、ガスケットに締め付け荷重を付与した場合には、中実シール部は圧縮変形されることなく、主としてこの中空シール部が圧縮変形される。このため、本発明のガスケットでは、中空シール部の存在により低反発力となり、相手部材である第2部材のクリープ変形を良好に抑制することができる。
【0017】
中空シール部は、中空シール部の中心線近傍に形成されたシールリブ先端部と内周側の円弧状側壁部とを滑らかに連結した斜辺と、シールリブ先端部から中心線に略並行に延びて円弧状側壁部に連結するシールリブ連結部から形成されたシールリブを備えているので、ガスケットに締め付け荷重を付与した場合には、中空シール部の変形方向が一定となり、周方向位置によってガスケットの倒れる方向が変化することがなく、シール性が安定する。また、各部材のバラツキや変形などにより圧縮量が低下してしまった場合でも、中空シール部の下部に形成された倒れ防止部が内周側の円弧状側壁部を支持することにより、シールリブが有効に追随して良好なシール性を確保することができる。
【0018】
以上のように、締め付け荷重を付与されて変形するのは、主として第1取付溝部から突出した中空シール部であり、圧縮変形後の反力が小さい中空シール部を備える本発明のガスケットのシール構造においては、従来よりも大きな締め代を設定することが可能となる。
【0019】
本発明のガスケットのシール構造の好適な態様において、周方向に対する直角断面におけるシールリブ連結部の位置は、密閉中空部の幅寸法をwとしたときに、中心線から0.15w内周側の位置から、中心線から0.25w外周側の位置までの範囲に形成されていることが好ましい。
【0020】
シールリブをこのように形成することにより、ガスケットに締め付け荷重を付与した場合には、シールリブはスムースに傾動するとともに中空シール部を圧縮変形させながら埋没していくことができ、シール性をより一層確実なものとすることができる。
【発明の効果】
【0021】
よって、本発明のガスケットのシール構造によれば、相手部材の寸法バラツキや表面のうねりを吸収できる高締め代を有し、かつ、ガスケットの反力を抑制して相手部材に変形を生じることがない、長期にわたって良好なシール性を確保することができるガスケットのシール構造を提供することができる。また、このガスケットのシール構造によれば、相手部材の変形を抑止するための金属リテーナは不要となり、安価なガスケットのシール構造となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施形態に係るシール構造の締め付け荷重付与前の状態を示す断面図である。
【図2】従来のガスケットの締め付け荷重付与前の状態を示す断面図である。
【図3】他の従来のガスケットの締め付け荷重付与前の状態を示す断面図である。
【図4】他の従来のガスケットに係り、(a)は締め付け荷重付与前の状態を示す断面図であり、(b)は締め付け荷重付与後の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図1を参照しつつ詳細に説明する。
【0024】
本実施形態のガスケットのシール構造1は、ハイブリッド車や電気自動車などの電池パックを収納するケースに装着されて、電池パックへの水分の侵入を防止するガスケットのシール構造である。電池パック収納ケースは、PP(ポリプロピレン)+GF(グラスファイバー)や、PA66(ポリアミド66)等の樹脂材料から射出成形等により略矩形の箱状に形成されてなるアッパケース(第2部材)20とロアケース(第1部材)10とからなる。ロアケース10の外周縁端部には環状の取付溝11が凹設されている。取付溝11は二段構成になっており、下段に第1取付溝部12が形成され、上段には収容部である第2取付溝部13が形成されている。
【0025】
アッパケース20の下面と取付溝11との間には、第1取付溝部12の底面12aとアッパケース20の下面によって挟み込まれるようにガスケット30が配設されている。図1は本実施形態に係るガスケット30を、対向するアッパケース20と取付溝11との間に配設した状態を示す部分断面図であって、環状に延びる周方向に対して直交する断面で、ガスケット30に締め付け荷重が作用していない締め付け荷重付与前の状態を示している。
【0026】
ガスケット30は中実に形成された中実シール部32と、頂部に上側シールリブ34を備えるとともに周方向に連続する密閉中空部38を内部に有している中空シール部36とが一体に形成された環状のゴム状弾性体である。ここで、ガスケット30を構成するゴム状弾性体としては、熱可塑性エラストマーなどの弾性材料、例えばEPDM(エチレンプロピレンゴム)、ACM(アクリルゴム)、NBR(ニトリルゴム)やFVMQ(フルオロシリコン)等を挙げることができるが、ガスケットとしてのシール性を確保できるものであれば特に限定されるものではなく、従来のものを用いることができる。また、ガスケット30は環状に延びる周方向に対して直交する断面形状において、ガスケットが圧縮される圧縮方向(図1の上下方向)に延びる中心線Lに関して、上側シールリブ34及び倒れ防止部33を除いて左右対称の形状を有している。
【0027】
ガスケット30の中実シール部32は、略矩形断面を有しその全体が第1取付溝部12内に圧入状態で保持されている。図1では中実シール部32の外側面と第1取付溝部12の側壁面12cから第1取付溝部12の内部に向かって突出する突出部が周方向の適宜の位置に対向して設けられており、中実シール部32はこれらの突出部に圧縮されて挟持されている。このように中実シール部32が第1取付溝部12の突出部に圧縮されて挟持されていれば、取付溝11に対する中実シール部32の姿勢安定性を高めることができ、ガスケット30を安定した姿勢で保持することができる。また、中実シール部32はその底部に第1取付溝部12の底面12aに当接する下側シールリブ37を備えており、取付溝11におけるシール性を一層確かなものとしている。なお、側壁面12cから突出する突出部がない場合もあり、この場合には第1取付溝部12の加工が容易となる。
【0028】
ガスケット30の中空シール部36は上記の中実シール部32と一体に形成されており、内部に有している周方向に連続する密閉中空部38とともに略円形断面に形成されて、中実シール部が第1取付溝部12に保持された状態にあるときにはその全体が第1取付溝部12の外に位置している。また、中空シール部36の下部であって中実シール部32と隣接する位置には、第2取付溝部13の底面13aに当接する倒れ防止部33を備えており、取付溝11におけるシール性を一層確かなものとしている。
【0029】
また、本実施形態のガスケット30において、ガスケット30が環状に延びる周方向に対して直交する断面において、中実シール部32の幅w1よりも中空シール部36の幅w2の方が大きくされている。中空シール部36は略均一厚さで円弧状に延びる円弧状側壁部361を有しており、円弧状側壁部361は密閉中空部38を区画している。密閉中空部38は、半円弧形状の上端部から下方に向かって直線部が形成され、直線部の下端から下方に向かい先細りのテーパー形状となっている。このため、先細りのテーパー形状に対応する下側中空シール部362の肉厚は、円弧状側壁部361の一般部分よりも厚肉となっている。中空シール部36の下端部内周側には中実シール部32に隣接する部位に倒れ防止部33が形成されており、取付溝11におけるシール性を一層確かなものとしている。また、中空シール部36の頂上近傍には上側シールリブ34が形成されており、上側シールリブ34の形状は中心線Lの近傍にシールリブ先端部341が形成され、シールリブ先端部341から内周側の円弧状側壁部361に滑らかな斜辺を形成した三角リブ状をなしている。
【0030】
以上のように構成される本実施形態のガスケットのシール構造1において、ロアケース10にアッパケース20が取付けられることにより、上側シールリブ34が折畳まれるようにして、中空シール部36と密閉中空部38とともに潰される方向に圧縮され、ロアケース10にアッパケース20が密着すると中空シール部36は第2取付溝部13内に収容される。第2取付溝部13は変形後の円弧状側壁部361が第2取付溝部13の側壁面13cに接触する溝幅とされているので、締め付け荷重付与中の中空シール部36は、第2取付溝部13の側壁面13cによって規制されることなく圧縮変形することができる。このため、このガスケット30では中空シール部36の密閉中空部38の存在により、圧縮量が多い高圧縮部位においても低反発力となり、相手部材であるアッパケース20のクリープ変形を良好に抑えることができる。なお、第2取付溝部13は必ずしも変形後の円弧状側壁部361が第2取付溝部13の側壁面13cに当接するように形成されることはなく、各部材の寸法精度や部材同士の位置ズレなどを考慮して、さらに溝幅の広い第2取付溝部13としてもよい。
【0031】
中空シール部36は、環状のガスケット30の内周側から外周側に向かって傾斜辺を有し、中空シール部36の中心線Lの近傍にシールリブ先端部341を有する三角リブ状の上側シールリブ34を備えている。また、中空シール部36の下部であって中実シール部32と隣接する位置には、第2取付溝部13の底面13aに当接する倒れ防止部33を備えている。上側シールリブ34は、中空シール部36の圧縮量が少ない低圧縮部位においても、中空シール部36の中心線Lの近傍に形成されたシールリブ先端部341がアッパケース20の下面に当接しているため、寸法バラツキなどによる周方向における圧縮量の変化に追随して良好なシール性を保持することができる。また、上側シールリブ34がアッパケース20の下面から圧縮を受けると、上側シールリブ34自体はシールリブ先端部341から中心線Lに沿うように延びて円弧状側壁部361の頂部に連結する上側シールリブ連結部342の部分が中空シール部36に沈み込みつつ、上側シールリブ34が内周側から外周側に向けて傾動しながら、中空シール部36全体を圧縮していく。この一連の変形において、中空シール部36全体の姿勢を安定させて、内周側に傾動しないように、倒れ防止部33が第2取付溝部13の底面13aに当接して支持している。
【0032】
上側シールリブ34は、内周側から外周側に向けた斜辺と上側シールリブ連結部342との協働により、全周一律に内周側から外周側に傾動する。また上側シールリブ34と倒れ防止部33の協働により、中空シール部全体も全周一律に内周側から外周側に傾動する。このように、倒れる方向が変化することなく、全周に亘ってシール性が安定する。上側シールリブ34の傾動変形は、シールリブ先端部341から中空シール部36の内周側の円弧状側壁部361に滑らかに連結する斜辺と、上側シールリブ連結部342が中空シール部34の頂部を凹ませて変形する三角リブ状の形状によるものである。したがって、上側シールリブ連結部342の位置は、密閉中空部38の幅寸法をw3としたときに、中心線Lから0.15×w3内周側の位置から、中心線Lから0.25×w3外周側の位置までの範囲が好ましい。さらに好ましくは、中心線Lの位置から、中心線Lから0.2×w3外周側の位置までの範囲である。上側シールリブ連結部342の位置がこの範囲であれば、圧縮時における中空シール部34の頂部が低荷重で変形し、上側シールリブ34がスムースに傾動することができ、良好なシール性を保持することができる。
【0033】
以上のように構成される本実施形態のガスケットのシール構造1においては、締め代Cは上側シールリブ34のシールリブ先端部341がアッパケース20の下面に接触した状態から、ガスケット30に締め付け荷重を付与してロアケース10にアッパケース20が密着するまでのガスケット30の圧縮量である。したがって、中空シール部36の寸法Aと第2取付溝部13の深さBとを適宜に調整することで、ロアケース10及びアッパケース20の寸法バラツキや表面のうねり、あるいはガスケット30の寸法バラツキなどを吸収できる余裕度のある締め代Cを設定すればよい。
【0034】
本実施形態において、締め付け荷重を付与されて変形するのは、主として第1取付溝部12から突出している中空シール部36であり、上側シールリブ34が圧縮され始める時点においても中空シール部36の変形に拠っている。締め代Cを従来よりも大きな値としても、中空シール部36の圧縮変形後の反力は小さなものとなる。例えば、従来のシール構造100(図2)において、締め代Dを1.5mmとしてガスケット60に圧縮荷重を付与すると、その反力は213N/100mmであった。これに対して、本実施形態のガスケット30に締め代Cを6.2mmとして圧縮荷重を付与すると、その反力は68N/100mmであった。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明のガスケットのシール構造は、ハイブリッド車や電気自動車の電源装置である電池パックを収容する樹脂製の大型ケースに好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0036】
1 ガスケットのシール構造
10 ロアケース(第1部材)
11 取付溝
12 第1取付溝部
12a 第1取付溝部の底面
12c 第1取付溝部の側壁面
13 第2取付溝部(収容部)
13a 第2取付溝部の底面
13c 第2取付溝部の側壁面
20 アッパケース(第2部材)
30 ガスケット
32 中実シール部
33 倒れ防止部
34 上側シールリブ
341 シールリブ先端部
342 上側シールリブ連結部
36 中空シール部
361 円弧状側壁部
362 下側中空シール部
37 下側シール部
38 密閉中空部
60 ガスケット
62 装着部材
64 樹脂カバー
70 ガスケット
71 装着溝
72 一方の部材
73 他方の部材
74 本体部
76 突起部
80 ガスケット
81 被取付部材
82 取付溝
83 中空部
84 相手部材
100 従来のガスケットのシール構造
L 中心線
w1 中実シール部の幅
w2 中空シール部の幅
w3 密閉中空部の幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材に形成された環状の取付溝部に保持され、第1部材の相手部材である第2部材の下面が第1部材に圧接されることにより両該部材間に挟持されてシールするガスケットとよりなり、
前記取付溝部は、第1取付溝部と、該第1取付溝部よりも幅広の第2取付溝部とが段形状に形成されており、
前記ガスケットは、該第1取付溝部内に配置されて該第1取付溝部に保持される中実シール部と、該中実シール部の上部に一体に形成され、該中実シール部が該第1取付溝部に保持された状態にあるときに該第1取付溝部の外に位置し、周方向に連続する密閉中空部を区画する円弧状側壁部とからなる中空シール部と、該中空シール部はその頂部にシールリブと、その下部であって該中実シール部と隣接する内周側の位置に倒れ防止部を備え、
該シールリブは、該中空シール部の中心線近傍に形成されたシールリブ先端部と内周側の該円弧状側壁部とを滑らかに連結した斜辺と、該シールリブ先端部から該中心線に略並行に延びて該円弧状側壁部に連結するシールリブ連結部から形成され、
該第2取付溝部は、該シールリブ先端部が該第2部材の下面に接触した状態で、該円弧状側壁部の一部を収容し、該第1部材と該第2部材が密着した状態では圧縮変形された該中空シール部の全体を収容可能に形成されていることを特徴とするガスケットのシール構造。
【請求項2】
周方向に対する直角断面において、前記シールリブ連結部の位置は、前記密閉中空部の幅寸法をwとしたときに、前記中心線から0.15×w内周側の位置から、中心線から0.25×w外周側の位置までの範囲に形成されている請求項1に記載のガスケットのシール構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−92893(P2012−92893A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−240296(P2010−240296)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】