説明

ガスケット及び二部材間の密封構造

【課題】箱型本体とカバーが共に小型化、薄板化された場合であっても、ガスケットに箱型本体を確実に当接させることができ、しかも二部材間をシールしているときの反発力が小さく、カバーが過剰に撓むことがなく、もって、シール漏れの発生がないガスケット、及び該ガスケットを用いた二部材間の密封構造を提供する。
【解決手段】周壁12を有するカバー1の底面11に本体31が接着し、本体31とそれより先端側に設けられているリップ部32とで段差面36を形成しているガスケット3であって、本体31の側壁34とカバー1の周壁12とで当接面35を形成し、段差面36を外側に位置させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器用、特にハードディスクドライブを収容する箱型本体とカバーとの間をシールするガスケット、および該ガスケットを用いた二部材間の密封構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器製品に使用されるハードディスクドライブを収容する箱型本体は鋳物を使用していたが、近年の電子機器製品及びそれに使用されるハードディスクドライブの小型化に伴い、箱型本体とカバーの間をシールしているガスケットの接触面およびガスケット幅は狭小化の傾向にある。
【0003】
下記特許文献には、ガスケットの断面形状を基部と突出部とからなる形状にすると共にガスケットの幅と高さの比率等の形状を特定し、箱型本体とガスケットとの密封性を確保することが提案されている。
【0004】
しかし、電子機器製品及びそれに使用されるハードディスクドライブの更なる小型化に伴い、ガスケットの設置面の省スペース化とそれによるガスケット自体の狭小化が求められているが、それだけでなく、箱型本体についても従来の鋳物から板金プレス成形による小型化、薄板化に切り替える必要が生じ、その結果、ガスケットが当接する箱型本体周壁の端面の幅が極端に制限され、上記形状のガスケットではリップ部が箱型本体に正常に当接しない虞が生じ、シール性が低下することが懸念された。
【0005】
また、カバーの薄板化により、組付け時にガスケット反発荷重により固定螺子ピッチ間でカバーに過剰な撓み変形が発生し、カバーの撓み変形が最大となった部位でガスケットと被シール面との接触不良によりシール性が低下するとの問題点があった。
【0006】
【特許文献1】特開2004−036630公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は以上の点に鑑みてなされたものであって、ハードディスクドライブの小型化に伴いそれを収容する箱型本体とカバーが共に板金プレス成形による小型化、薄板化された場合であっても、ガスケットに箱型本体を確実に当接させることができ、しかも箱型本体とカバーとの間をシールしているときの反発力が小さく、カバーが過剰に撓むことがなく、もって、シール漏れの発生がないガスケット、及び該ガスケットを用いた二部材間の密封構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1によるガスケットは、対向する二部材の隙間をシールするもので、周壁を有する一の部材の底面に本体が接着し、前記本体とそれより先端側に設けられているリップ部とで段差面を形成しているガスケットであって、前記本体の側壁と前記周壁とで当接面を形成し、前記段差面が前記周壁側に位置することを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の請求項2によるガスケットは、請求項1記載のガスケットを前記一の部材の底面に一体成形で接着させるとき、オーバーフローにより発生するバリの位置を前記一の部材の周壁に内接させたことを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の請求項3による二部材間の密封構造は、請求項1または2記載のガスケットが他の部材の周壁に当接したとき、断面における前記ガスケットのリップ部の中心位置が、断面における前記周壁の先端面の中心位置より内側に位置することを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の請求項4による二部材間の密封構造は、請求項1または2記載のガスケットが他の部材の周壁に当接したとき、断面における前記他の部材の周壁の先端面の幅Aと、前記周壁の外側端面と前記一の部材の周壁の内側端面との距離Bと、断面における前記ガスケットのリップ部の中心位置から前記一の部材の周壁の内側端面までの距離Cとが、「(A/2)+B≦C、B≧0」なる関係を有することを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の請求項5による二部材間の密封構造は、請求項3または4において、前記他の部材の周壁の先端部の内側端面が外側に傾斜したテーパー面であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、以下の効果を奏する。
【0014】
すなわち、寸法公差内でのバラツキが小さときは、他の部材の周壁の先端面が、圧縮に対して変形し易いリップ部に当接させ撓ませることで、シール面を形成させることができ、逆にバラツキが大きいときは、ガスケットが内側に撓んで傾斜した部分に他の部材の周壁の先端面を当接させてシール面を形成させることができる。したがって、板金プレス化により小型化、薄板化された他の部材の周壁の先端面が、バラツキによりガスケットのリップ部からはずれても、ガスケットに対して正常に当接させることができ、二部材間をシールすることができる。
【0015】
更に、他の部材の周壁の先端面がバラツキによりガスケットのリップ部からはずれたときは、ガスケットが内側に撓んで傾斜した部分に当接するので、低面圧でシールすることができ、ガスケットの反発荷重を小さくし、一の部材と他の部材の両方が板金プレス加工により小型化、薄板化されたものであっても一の部材の撓みを小さくし、二部材間をシールすることができる。
【0016】
更に、シール圧はガスケットが接着している一の部材の底面と周壁に作用させることができるので、シール圧を分散させ底面に作用するシール圧を小さくすることができ、これによっても一の部材の撓みを小さくし、二部材間をシールすることができる。
【0017】
したがって、両部材が共に板金プレス成形により小型化、薄板化されたものに用いられたときに、特に効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を例示して説明する。ただし、この発明の範囲は、特に限定的記載がないかぎりは、この実施の形態に記載されている内容に限定する趣旨のものではない。
【0019】
図1に示す通り、一の部材であるカバー1は、板金プレス加工で成形されたものであって、底面11の周囲に周壁12を有している。カバー1に使用される材質としては、アルミニウム板、ステンレス鋼板等の鋼材が用いられる。
【0020】
他の部材である箱型本体2は、板金プレス加工で成形されたものであって、電子機器部品が装着されている。底面21の周囲に周壁22を有し、周壁22の先端部24の内側端面23は、外側に広がるテーパー面25になっている。箱型本体2に使用される材質としては、アルミニウム板、ステンレス鋼板等の鋼材が用いられる。
【0021】
図2、図3に示す通り、ガスケット3は、カバー1の周壁12の内側端面13に周方向に沿って、無端状に全周に亙って配置されている。ガスケット3は、本体31とリップ部32とを備え、一体で成形されたものであって、本体31の底面33は、カバー1の底面11に接着し、本体31の側壁34と、カバー1の周壁12の内側端面13とで全周に亙り当接面35を形成している。リップ32部は、箱型本体2と組付けたときに、箱型本体2の周壁22の先端面26と当接するように本体31より先端側に位置し、断面幅がリップ部32の方が本体31より狭いことにより形成される段差面36がカバー1の周壁12側に配置されている。
【0022】
また、ガスケット3をカバー1に一体成形で接着させるときにオーバーフローにより発生するバリ38が、カバー1の周壁12の内側端面13に内接している。
【0023】
更に、図4に示す通り、ガスケット3が接着しているカバー1と相手部材である箱型本体2を組付けたときに、断面におけるリップ部32の中心線37は箱型本体2の周壁22の先端面26の中心線27より内側になるようになっている。
【0024】
すなわち、断面における箱型本体2の周壁22の先端面26の幅Aと、箱型本体2の周壁22の先端部24の外側端面28とカバー1の周壁12の内側端面13との距離Bと、断面におけるガスケット3のリップ部32の中心線37からカバー1の周壁12の内側端面13までの距離Cとが、「(A/2)+B≦C、B≧0」なる関係を有している。
【0025】
上記構成により、ガスケット3が接着しているカバー1と、相手部材である箱型本体2とを組付けるとき、図5に示す通り、箱型本体2の周壁22の外側端面28とカバー1の周壁12の内側端面13との距離Bが大きくなった場合でも、箱型本体2の周壁22の先端面26の中心線27がガスケット3のリップ部32の中心線37より常に外側に位置するように設けられているので、図6に示す通り、箱型本体2の周壁22の先端面26がリップ部32の先端部32Aに当接する。したがって、圧縮に対して変形し易いリップ部32が撓みシール面が形成され確実にシールすることが可能となると共に、低面圧でシールするので反発荷重を低く抑えることが可能となる。
【0026】
また、図7に示す通り、寸法公差内でのバラツキが大きく、距離Bが小さくなった場合、図8に示す通り、ガスケット3の側壁34がカバー1の周壁12に当接しているだけなので内側に傾斜し、箱型本体2の周壁22の先端面26がリップ部32の側部32Bに当接してシール面が形成され確実にシールすることが可能となると共に、低面圧でシールするので反発荷重を低く抑えることが可能となる。特に、箱型本体2の周壁22の先端部24の内側端面23が外側に傾斜したテーパー面25である場合、カバー1の周壁12をガスケット3に上手に当接することができる。
【0027】
すなわち、寸法公差内のバラツキにより箱型本体2の周壁22の先端面26がどの位置であっても、ガスケット3に当接してシール面を確保することが可能になると共に、低面圧でのシールが可能になるので、ガスケット3の反発荷重を小さくし、カバー1の撓みを小さくすることが可能となる。
【0028】
なお、箱型本体2の周壁22の先端部24がテーパー面25である場合、図9に示す通り、ガスケット3の本体31の総幅Dが0.4mm、リップ部32の先端部32Aの曲率半径Rが0.14mmであるガスケット3に当接する周壁22の先端部24の外側端面28Aからカバー1の周壁12の内側端面13までの距離Bは、0.093mmから0.107mmの範囲内であることが望ましい。
【0029】
更に、箱型本体2の周壁22の先端面26がガスケット3のリップ部32に当接したとき、図9に示す通り、ガスケットのシール圧Pはカバー1の底面11と内周面13に分散して作用するので、ガスケット3の反発荷重を小さくし、カバー1の撓みを小さくすることが可能となる。
【0030】
また、ガスケット3を一体成形でカバー1に接着させたとき、オーバーフローにより発生するバリ38の位置をカバー1の周壁12の内周面13に内接させたので、図10に示す通り、シール状態において、バリ38が箱型本体2の周壁22より外側に位置することになり、脱落したバリ38がシール内部Mへ侵入するのを防止することが可能となる。
【0031】
本実施例においては、カバー1に接着しているガスケット3に箱型本体2の周壁22を当接される場合について説明したが、箱型本体2にガスケット3が接着し、カバー1の周壁12を当接させる場合についても適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係るガスケットを用いた二部材間の組付け状態を示す断面図
【図2】本発明に係るガスケットを装着した状態を示す平面図
【図3】図1におけるガスケット部分の拡大断面図
【図4】本発明に係るガスケットと相手部材とが当接している状態を示す説明図
【図5】本発明に係るガスケットと相手部材とが当接している状態を示す説明図
【図6】本発明に係るガスケットと相手部材とが当接している状態を示す説明図
【図7】本発明に係るガスケットと相手部材とが当接している状態を示す説明図
【図8】本発明に係るガスケットと相手部材とが当接している状態を示す説明図
【図9】本発明に係るガスケットと相手部材とが当接している状態を示す説明図
【図10】本発明に係るガスケットと相手部材とが当接している状態を示す説明図
【図11】本発明に係るガスケットと相手部材とが当接している状態を示す説明図
【符号の説明】
【0033】
1 カバー(一の部材)
11,21 底面
12,22 周壁
13,23,26,28 端面
2 箱型本体(他の部材)
24 先端部
25 テーパー面
27,37 中心線
3 ガスケット
31 本体
32 リップ部
33 底面
34 側壁
35 当接面
36 段差面
38 バリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する二部材の隙間をシールするもので、周壁を有する一の部材の底面に本体が接着し、前記本体とそれより先端側に設けられているリップ部とで段差面を形成しているガスケットであって、
前記本体の側壁と前記周壁とで当接面を形成し、前記段差面が前記周壁側に位置することを特徴とするガスケット。
【請求項2】
請求項1記載のガスケットを前記一の部材の底面に一体成形で接着させるとき、オーバーフローにより発生するバリの位置を前記一の部材の周壁に内接させたことを特徴とするガスケット。
【請求項3】
請求項1または2記載のガスケットが他の部材の周壁に当接したとき、断面における前記ガスケットのリップ部の中心位置が、断面における前記周壁の先端面の中心位置より内側に位置することを特徴とする二部材間の密封構造。
【請求項4】
請求項1または2記載のガスケットが他の部材の周壁に当接したとき、断面における前記他の部材の周壁の先端面の幅Aと、前記周壁の外側端面と前記一の部材の周壁の内側端面との距離Bと、断面における前記ガスケットのリップ部の中心位置から前記一の部材の周壁の内側端面までの距離Cとが、
「(A/2)+B≦C、B≧0」なる関係を有することを特徴とする二部材間の密封構造。
【請求項5】
請求項3または4において、前記他の部材の周壁の先端部の内側端面が外側に傾斜したテーパー面であることを特徴とする二部材間の密封構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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