説明

ガスケット材

【課題】モノマーおよび他の反応性の高い化合物に対する耐性の強化とともに、硬直性、加工の容易さ、およびPTFEの相対的な経済性を有するガスケット材を提供する。
【解決手段】ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)およびPTFEの融点より低い融点を有する熱可塑性ポリマーを含むガスケット材。好ましい熱可塑性ポリマーは、フッ素化熱可塑性ポリマーを含み、最も好ましいフッ素化熱可塑性ポリマーは、フッ化エチレンプロピレンおよびペルフルオロアルコキシ共重合体を含む。PTFE成分は好ましくは、最高密度PTFEを含み、充填材料が任意に添加される。PTFE成分は、ガスケット材の総重量に基づき、ガスケット材中に約50%以上100%未満の量で存在し、熱可塑性ポリマーはガスケット材の総重量に基づき、0%より多く約20%以下の量で存在する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、35U.S.C.第119(e)条に基づき、「Gasketing Material for Monomer Applications」のタイトルで2004年4月7日に出願された米国仮特許出願第60/560,068に基づく優先権を主張するものであり、その開示は引用により本明細書に組み入れられる。
【0002】
本発明の技術分野
本発明は、広くガスケット材に関連し、詳細には、モノマーの適用に特に適した非反応性のガスケット材に関する。
【背景技術】
【0003】
例えば、塩化ビニルやスチレンモノマープロセシングを含むモノマーの適用は、反応性の高いモノマーが、パイプ、バルブ、ガスケット等を含む周囲の環境と反応することを防ぐために、特殊な取り扱いを必要とする。
【0004】
様々なガスケット用途のための好ましいガスケット材は、その高い耐食性からポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である。PTFEガスケット材はしばしば、PTFEと充填剤との混合によって、または金属メッシュシートもしくは金属箔の裏打ちの提供によって、望ましい強度特性を加え、PTFEに関連したクリープおよびコールドフローの問題を減少させるために強化される。
【0005】
しかし、PTFE製の素材から作製されたガスケットは、モノマーの適用には適さないことが示された。PTFEの高い耐食性にも関わらず、モノマーはガスケット材と反応し、シールの早期破損を引き起こす。モノマー適用の際の使用されるPTFEガスケット材の破損は、「ポップコーン化」によって引き起こされると考えられる。個々のモノマー単位がPTFE構造中の微小空洞内に浸透し重合する際に「ポップコーン化」が起こる。個々のモノマー単位は微小空洞より小さく、従って、それらはPTFE構造の周囲や間を通過し、これらの空間内に入ることができる。複数のモノマー単位が微小空洞内に移行した場合、それらは重合しうる。重合構造はしばしば、高度に組織化された重合のため、個々のモノマー単位の合計より大きい。PTFE微小空洞内に新たに形成された重合体の、このサイズの増加は、微小空洞の内壁に力を加えて外側に押すので、更なるモノマーが入り、重合し、新たな重合体が微小空洞内で拡張する。この拡張がついには、微小空洞の破裂および周囲のPTFE構造の伸長、損傷、または断裂を引き起こす。これがPTFE構造全体で持続するにつれて、ガスケット材は弱くなり、より破壊されやすくなる。
【0006】
いくつかの異なる種類のPTFEガスケット材があり、修飾PTFE、充填剤無添加のPTFE、充填剤が添加されたPTFE、および被覆PTFEシステムを含む。モノマーの適用において使用される場合、これらすべてのPTFEガスケット材は上述の「ポップコーン化」作用を示すことが知られている。
【0007】
PTFE製のガスケットにおいて見られる「ポップコーン化」を克服するために、フッ化エチレンプロピレン(FEP)またはペルフルオロアルコキシ共重合体(PFA)ガスケット材がしばしば推奨される。これらの素材は、PTFEにおいて見られる微小空洞を示さず、従って、モノマーがガスケットの表面に浸透し重合する余地がない。しかし、PFAおよびFEPなどのフッ素化熱可塑性ポリマーのガスケット材は、PTFEガスケットで見られる構造的硬直性を与えず、同様にコールドフロー/クリープを起こしやすい。更にこれらの素材は、購入コストがより高く、充填剤との混合がより困難で、より高価な加工手段および機械装置を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、モノマーおよび他の反応性の高い化合物に対する耐性の強化とともに、硬直性、加工の容易さ、およびPTFEの相対的な経済性を有するガスケット材を提供することが望ましい。本発明の対象は、認識されているこれらの必要性に対して向けられている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の概要
本発明の第一の側面において、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)およびPTFEの融点より低い融点を有する熱可塑性ポリマーを含むガスケット材が提供される。本発明の1つの実施形態では、熱可塑性ポリマーはフッ素化熱可塑性ポリマーを含む。本発明の好ましい実施形態では、フッ素化熱可塑性ポリマーはフッ化エチレンプロピレンを含む。本発明の別の好ましい実施形態では、フッ素化熱可塑性ポリマーはペルフルオロアルコキシ共重合体を含む。本発明の最も好ましい実施形態では、PTFEは最高密度PTFE(full density PTFE)を含む。本発明の更なる実施形態では、ガスケット材は更に充填材料を含む。
【0010】
本発明の更なる実施形態では、PTFEは、ガスケット材の総重量に基づき、ガスケット材中に約50%以上100%未満の量で存在する。本発明の別の実施形態では、熱可塑性ポリマーは、ガスケット材の総重量に基づき、0%より多く約20%以下の量で存在する。本発明の好ましい実施形態では、熱可塑性ポリマーは、ガスケット材の総重量に基づき、少なくとも5%以上で約15%以下の量で存在する。
【0011】
本発明の第二の側面において、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)およびPTFEの融点より低い融点を有する少なくとも1つの熱可塑性ポリマーから基本的に構成されるガスケット材が提供される。本発明の1つの実施形態では、ガスケット材は2種以上の熱可塑性ポリマーの混合物を含む。本発明の更なる実施形態では、ガスケット材は更に充填材料を含む。本発明の好ましい実施形態では、熱可塑性ポリマーはフッ素化熱可塑性ポリマーを含む。本発明の1つの最も好ましい実施形態では、フッ素化熱可塑性ポリマーはフッ化エチレンプロピレンを含む。本発明の別の最も好ましい実施形態では、フッ素化熱可塑性ポリマーはペルフルオロアルコキシ共重合体を含む。
【0012】
本発明の更なる実施形態では、熱可塑性ポリマーは、ガスケット材の総重量に基づき、5%より多く約20%以下の量で存在する。
【0013】
本発明の更なる態様において、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)およびPTFEの融点より低い融点を有するフッ素化熱可塑性ポリマーを溶媒とともに混合してスラリーを形成すること、スラリーを真空装置内に充填すること、スラリーに減圧を適用して溶媒の大部分を除去すること、残りのスラリーを枠に入れ、スラリーを圧縮してケーキを形成すること、ケーキをカレンダー加工してシートを形成すること、温度を上げて混合物を乾燥させ残りのすべての溶媒を除去すること、PTFEと熱可塑性ポリマーの両成分の融点以上にシートを加熱すること、およびシートを制御下で冷却することを含む、ガスケット材の製造方法が提供され、ここでは、熱可塑性ポリマーがPTFE構造中のあらゆる(any)空洞に流入してこれを満たし、その結果、空隙率の低い完成ガスケット材が形成される。
【0014】
本発明の更なる実施形態では、両成分の融点以上にシートを加熱する工程とシートを制御下で冷却する工程は更に、圧力を加えながら加熱および冷却する工程の実施を含む。本発明のまた更なる実施形態では、冷却工程は加熱工程の圧力より低い圧力で行われる。本発明の代替の実施形態では、冷却工程は圧力を加えずに行われる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の特徴および利点は、PTFE製のガスケットにおいて一般的に観察されるポップコーン化作用を受けにくい、モノマーや他の反応性の高い用途のためのPTFE製のガスケット材であることにある。
【0016】
本発明の更なる利点は、PTFEガスケット材中のフッ素化熱可塑性ポリマーの存在により、ガスケット材の溶接性が高められていることである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
当業者によって認識されるであろうが、本発明に従ったガスケット材の多くの異なる実施形態が可能である。本発明の更なる用途、目的、利点、および新たな特徴は、以下に続く詳細な説明に記述され、以下の検討において、または本発明の実施によって、当業者にとってより明白になるであろう。
【0018】
従って、以下に続く詳細な説明がよりよく理解されうるように、および、当技術分野への本貢献がより正しく認識されうるように、本発明のより重要な特徴は、やや広範に概説されている。後述するように、本明細書に添付の請求項に記載された発明の対象を形成する本発明の更なる特徴が存在することも明らかである。この点において、本発明のいくつかの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その詳細および構成、ならびに、以下の説明に記載される成分の配合について、それらの適用に限定されないことが理解されるべきである。本発明は、他の実施形態が可能であり、様々な方法で実施、実行されることが可能である。
【0019】
また、本明細書の語法および用語は説明のためであり、いかなる点においても限定と見なされるべきでないことも理解されるべきである。当業者は、本開示が基づく概念、ならびに、この開発のいくつかの目的を実施するために他の構成、方法およびシステムを設計するための基礎として容易に利用されうる概念を認識するであろう。それらが本発明の趣旨および範囲から逸脱しない限り、請求の範囲はこのような均等な構成を含むと見なされることが重要である。
【0020】
本発明の上述の特徴、利点および目的、ならびにより明白になるであろうその他の事柄が得られ、詳しく理解され得るように、上記に簡潔に要約された本発明のより詳細な説明は、添付の図面において説明されるその実施形態を参照することによって理解され、その図面は本明細書の一部を形成し、いくつかの図面において同等の部分は同じ符号で示されている。しかし、同じように効果的な更なる実施形態を本発明に認めうるように、添付された図面は、本発明の好ましい選択可能な実施形態を図解するだけであり、従って、その範囲を制限するものとは見なされないことに注意すべきである。
【0021】
発明の詳細な説明
本発明は、PTFEおよびフッ素化熱可塑性ポリマーの混合物を含み、モノマーの適用に特に適した、モノマーの微小吸収やガスケット材のポップコーン化を受けにくいガスケット材を提供するものである。本発明の1つの目的は、モノマーの適用において使用されるガスケット材を提供することであるが、このガスケット材はまた、反応性の高い環境における他の用途を有することが認識されるであろう。
【0022】
本発明の好ましい実施形態では、その中に含まれる標準的な微小空洞を最小にするために、PTFE成分は最高密度PTFEホモポリマーを含む。本発明の別の実施形態では、PTFE成分は、修飾された最高密度PTFE共重合体、その他の既知のPTFE変形物などの代替PTFE素材を含む。
【0023】
フッ素化熱可塑性ポリマーは、好ましくは低反応性で、PTFE成分の融点より低い融点を有するポリマーである。本発明の更なる実施形態では、フッ素化熱可塑性ポリマーの組合せがPTFEとともに用いられる。フッ素化熱可塑性ポリマーの組合せは、完成した材料に更なる望ましい特性を与えるために使用されうる。
【0024】
本発明の好ましい実施形態では、フッ素化熱可塑性ポリマー成分は、FEP(フッ化エチレンプロピレン)およびPFA(ペルフルオロアルコキシ共重合体)からなる群より選択される。本発明に使用される最も好ましいフッ素化熱可塑性ポリマーはPFAである。好ましいFEPおよびPFAに加えて、他の溶融加工可能なフッ素化熱可塑性ポリマー、または溶融加工可能なフッ素化熱可塑性ポリマーの組合せも、本発明に使用されうる。
【0025】
好ましいわけではないが、非フッ素化熱可塑性ポリマーを使用することも本発明の範囲に含まれる。フッ素化熱可塑性ポリマーは、PTFE構造内の空洞に流入した後、周辺のPTFEと結合することから好ましい。他の溶融加工可能なポリマーは、PTFE構造の空洞に流入して満たしうるが、それらは通常PTFEと結合しない。このため、本発明での使用に適した更なる熱可塑性ポリマーとしては、PTFEと相溶(compatible)し、本発明の加工範囲内で使用可能な温度を有するものを含む。
【0026】
PTFEおよび熱可塑性ポリマー成分の相対量は、作製されるガスケット材の個々の用途によって異なる。本発明の1つの実施形態では、PTFE成分は、ガスケット材の最終重量に基づき、重量で約50%以上100%未満を占める。本発明の好ましい実施形態では、PTFE成分は、重量で約70%以上100%未満を占める。本発明の好ましい実施形態では、熱可塑性ポリマー成分は、5%より多く約20%以下の量で存在する。本発明の最も好ましい実施形態では、熱可塑性ポリマー成分は、完成したガスケット材の総重量に基づき、約10%〜約15%を占める。
【0027】
一般的に、PTFEおよびフッ素化熱可塑性ポリマー自体は、両方とも高いコールドフローまたはクリープを示すため、あまり良いガスケット材ではない。当技術分野において知られている通り、他の充填剤の混合によって、ガスケット材の耐クリープ性は著しく改善される。本発明の1つの実施形態では、PTFEは、現在PTFEの充填に使用されている様々な微粒子充填剤により充填されることができる。微粒子充填剤は、金属、半金属、金属酸化物、ガラス、雲母、シリカ、二酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム等からなる種類より選択される無機物を使用できる。微粒子充填剤はまた、活性炭、カーボンブラック、様々な種類の色素、およびポリマー樹脂からなる種類より選択される有機物であってもよい。
【0028】
本発明の第二の側面において、ガスケット材は、粒状および/または微粉末状のPTFEを粉末のフッ素化熱可塑性ポリマーと組み合わせ、その組み合わせたものを、ガスケット材のシートを作製するために当技術分野において知られているような工程を用いて加工することによって作製される。
【0029】
このような工程の典型的な実施形態では、乾燥したPTFEおよびPFA粉末を計量し、石油ナフサなどの溶媒を加えてスラリーを形成する。スラリーを混合し、真空装置に入れて、溶媒の大部分を除去する。その後、残りのPTFE/PFA/溶媒混合物を枠に入れ、高圧下で圧縮してケーキを形成する。その後、ケーキをカレンダー加工し、得られるシートをオーブンで乾燥させて、余分な溶媒を除去する。その後シートを、PTFEおよびPFA両成分の融点以上に加熱し、続いて制御下で冷却する。
【0030】
この工程および製品の利点として現在理解されているのは、純粋なPTFEは約621°F(327℃)で凝固するが、PFAは約582°F(306℃)で凝固する点である。焼結工程の後、PTFE/PFAシートは冷却される。PTFEの凝固点はPFAの凝固点より高いため、シートが冷却されるとき、PFAは液体のままであって、PTFE構造中に形成される微小空洞内に流入する。PFAは微小空洞を満たして密閉する。完成品における微小空洞をなくすことによって、ポップコーン化作用、およびその結果生じるモノマーの適用におけるPTFEガスケットの破損は解消される。
【0031】
好ましい実施形態では、複数の材料を組み合わせて、ガスケット材のシートに形成し、その後、特定の用途のために望ましい形にダイス切断することができる。本発明の代替実施形態では、材料の組合せは、シート形式よりもむしろ、個々のガスケットを作製するための注型加工または押し出し加工に用いられる。本発明の更なる代替実施形態では、ガスケット材はビレットおよび切削(skive)加工用に形成され、そこでガスケット材は円筒形ビレットに形成され、その後、旋盤に通され、素材シートを望ましい厚さに切削する。当業者は、モノマーの適用のための非反応性バリアを提供するために本発明のガスケット材を利用する様々な方法を認識するであろう。
【0032】
本発明の更なる実施形態では、更に細孔のサイズを減少させ、素材の空洞の充填を促進するために、ガスケット材を加圧下で加熱および冷却する任意の加工方法を使用できる。乾燥させたPTFE/PFAシートを上述のようにオーブンから取り出したら、シートを加熱したプレートの間で圧迫する。アルミホイルのシートをPTFE/PFAシートに隣接させて使用し、鋼板をアルミホイルシートの反対側に置いて、多層のサンドイッチを形成する。鋼板は、素材の滑らかな表面の維持を促し、アルミホイルはPTFE素材の鋼板への付着を防ぐ。PTFE/PFAガスケット材の鋼板からの剥離を可能にするために、シリコーンベースの剥離スプレーまたは他の適切な離型剤が任意に、アルミホイルの代わりに使用されうる。
【0033】
本発明の更なる実施形態では、事前にオーブンで焼結したシートと同様に、未焼結のガスケットシートを乾燥させるために、加圧加熱および冷却を含む任意の加工方法を使用することができる。例えば、焼結したシートについては、PTFEの空洞内で熱可塑性ポリマーを融解させるために必要な程度と時間をかけて熱を加える際に、サンドイッチ全体をプレス機ボディまたは支持テーブルの一部に固定し、プレス機を閉じて圧力をかけ、アセンブリを適切な位置に維持する。例えば、いくつかの一般的な材料組成における好ましい初期圧力は、約100psi(689kPa)〜150psi(1034 kPa)のレベルであり、好ましいプレス温度は約650°F(343℃)〜700°F(371℃)、すなわちPTFE成分の融点のすぐ上である。焼結した成分の温度が上昇するので、それらは膨張し、プレス機内の圧力は通常、約400psi(2756kPa)〜500psi(3445kPa)のレベルに増加する。標準的な1/8インチ(0.32cm)の厚さの構成材と予熱したプレス機を用いる場合、この構成材を加熱するためのプレス機内での全時間は約3分である。より薄い構成材はより迅速に加熱されるが、より厚いものはより長いプレス時間を必要とするであろう。
【0034】
加熱工程終了後、得られたアセンブリを冷却する。冷却は、好ましくは圧力下で行われるが、任意に大気圧下で行うこともできる。好ましくは、アセンブリを迅速に、加熱したプレス機から冷却したプレス機に移し、その後、プレス機を閉じ、冷却工程の間、加熱工程での初期圧力より低い圧力を加えて維持する。通常、約5psi(34kPa)〜30psi(207kPa)の圧力で充分であろう。加熱および冷却工程の双方は、必要または要望に応じて同一のプレス機で実施することができる。
【0035】
上述のような圧力下でのガスケット材の加工は、更にPTFEの空隙率を減少させるので、残りの空洞を充填するために必要とされる熱可塑性ポリマーの量は、より少ないものとなるであろう。更に、空隙率の減少は、ガスケット材の密閉能力の改善をもたらす。その結果、緻密化が改善されたより良いガスケット材が得られ、これはモノマーへの暴露に対してより高い耐性を有する。
【0036】
本発明のガスケット材の1つの更なる特性および利点は、フッ素化熱可塑性ポリマーを添加することによる、素材の溶接性の向上である。参照により本明細書に組み入れられるPitolajの米国特許第4,990,296号に記載されるように、充填および/または焼結されたPTFE構成材を結合することは、多少の困難を伴う。このような構成材の溶接のための1つのアプローチは、PTFE構成材間の接着を補強するために、FEPのようなフッ素化熱可塑性ポリマーの中間層を用いることである。本発明のガスケット材の利点は、PTFE構造内に既に組み込まれたフッ素化熱可塑性ポリマーが存在することにある。これが、更なる中間接着層を設けることなくガスケット材片を結合することを可能にする。本発明の素材に用いられる特定の溶接法は、米国特許第4,990,296号に記載された方法、または他の既知のPTFE溶接法を含む。
【0037】
本発明は、特定の実施形態を参照して記載されているが、これらの実施形態は単に本発明の原理の一例にすぎないことが認識されるべきである。当業者は、本発明の装置および方法が他の方法および実施形態で構成され、実施されうることを理解するであろう。従って、本明細書の説明は、本発明を限定するものとして読まれるべきではなく、他の実施形態もまた本発明の範囲に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)およびPTFEの融点より低い融点を有する熱可塑性ポリマーを含むガスケット材。
【請求項2】
熱可塑性ポリマーがフッ素化熱可塑性ポリマーを含む、請求項1に記載のガスケット材。
【請求項3】
フッ素化熱可塑性ポリマーがフッ化エチレンプロピレンを含む、請求項2に記載のガスケット材。
【請求項4】
フッ素化熱可塑性ポリマーがペルフルオロアルコキシ共重合体を含む、請求項2に記載のガスケット材。
【請求項5】
更に充填材料を含む、請求項1に記載のガスケット材。
【請求項6】
PTFEが最高密度PTFEを含む、請求項1に記載のガスケット材。
【請求項7】
PTFEがガスケット材の総重量に基づき、ガスケット材中に約50%以上100%未満の量で存在する、請求項1に記載のガスケット材。
【請求項8】
熱可塑性ポリマーがガスケット材の総重量に基づき、0%より多く約20%以下の量で存在する、請求項1に記載のガスケット材。
【請求項9】
熱可塑性ポリマーがガスケット材の総重量に基づき、少なくとも5%〜約15%の量で存在する、請求項8に記載のガスケット材。
【請求項10】
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)と、PTFEの融点より低い融点を有する少なくとも1つの熱可塑性ポリマーとから基本的に構成されるガスケット材。
【請求項11】
2種以上の熱可塑性ポリマーの混合物を含む、請求項10に記載のガスケット材。
【請求項12】
更に充填材料を含む、請求項10に記載のガスケット材。
【請求項13】
熱可塑性ポリマーがフッ素化熱可塑性ポリマーを含む、請求項10に記載のガスケット材。
【請求項14】
フッ素化熱可塑性ポリマーがフッ化エチレンプロピレンを含む、請求項13に記載のガスケット材。
【請求項15】
フッ素化熱可塑性ポリマーがペルフルオロアルコキシ共重合体を含む、請求項13に記載のガスケット材。
【請求項16】
熱可塑性ポリマーがガスケット材の総重量に基づき、5%より多く約20%以下の量で存在する、請求項10に記載のガスケット材。
【請求項17】
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)およびPTFEの融点より低い融点を有するフッ素化熱可塑性ポリマーを溶媒とともに混合して、スラリーを形成すること、
スラリーを真空装置内に充填すること、
スラリーに減圧を適用して溶媒の大部分を除去すること、
残りのスラリーを枠に入れ、圧縮してケーキを形成すること、
ケーキをカレンダー加工してシートを形成すること、
温度を上昇させることにより混合物を乾燥させて、残りのすべての溶媒を除去すること、
PTFEと熱可塑性ポリマーの両成分の融点以上にシートを加熱すること、および
シートを制御下で冷却すること、
を含むガスケット材の製造方法であって、熱可塑性ポリマーがPTFE構造中のあらゆる空洞に流入してそれらを満たすことにより空隙率の低い完成ガスケット材を形成する、ガスケット材の製造方法。
【請求項18】
両成分の融点以上にシートを加熱する工程およびシートを制御下で冷却する工程が、更に、圧力を加えながら加熱および冷却する工程の実施を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
冷却工程が加熱工程の圧力より低い圧力で行われる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
冷却工程が圧力を加えずに行われる、請求項18に記載の方法。

【公開番号】特開2012−237450(P2012−237450A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−160538(P2012−160538)
【出願日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【分割の表示】特願2007−523544(P2007−523544)の分割
【原出願日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(502430378)ガーロック・シーリング・テクノロジーズ・エルエルシー (9)
【Fターム(参考)】