説明

ガスケット

【課題】 密封性能の向上を図ったガスケットを提供する。
【解決手段】 先端が湾曲形状の突条部21に嵌め込まれ、突条部21を備えたオイルパン20と、突条部21に対向する平面部31を有するハウジング30との間の隙間を封止するガスケット10において、平面部31に密着する3本の突条シール部を備え、3本のうちの両側の2本の突条シール部12は、中央の突条シール部13よりもハウジング30側に突出するように構成され、かつ、それらの先端面は内側から外側に向かうにつれてハウジング30側に突出する傾斜面12aにより構成されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2部材間の隙間を封止するガスケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、自動車関連機器,家電機器、その他の一般産業機器において、外部からの異物を防止したり、内部からの流体等の漏れを防止したりするために、2部材間の隙間を封止するガスケットが用いられている。ガスケットの装着方法には様々なタイプのものがあり、その一つとして、突条部にガスケットを装着するものがある。
【0003】
そのようなタイプの従来例に係るガスケットについて、図8を参照して説明する。図8は従来例に係るガスケットの装着の様子を示す模式的断面図である。なお、図示の例は、オートマチックトランスミッション(以下、ATと称する)に用いられるガスケットについて示している。
【0004】
図示のガスケット100は、鉄製のオイルパン200と、AT側のアルミニウム製のハウジング300との間の隙間を封止するもので、弾性材により構成される。オイルパン200には、先端が湾曲形状の突条部201が設けられている。そして、ガスケット100は、この突条部201に嵌め込まれる嵌合溝101を備えている。また、ガスケット100は、ハウジング300の平面部301に密着する3本の突条シール部(ビード)が設けられている。3本の突条シール部のうち中央の突条シール部103は、突条部201の先端部に沿って設けられ、その両側に対称的に2本の突条シール部102が設けられている。
【0005】
ここで、通常、密封性能を高めるためには、シール面において、ピーク面圧を高くする必要がある。そのため、図8に示すガスケット100において、密封性能を高めるためには、3本の突条シール部を高くして、これらの圧縮率を高めなければならない。しかしながら、これらの突条シール部を一律に高くすると、中央の突条シール部103の圧縮率が両側の2本の突条シール部102の圧縮率よりも際立って高くなる。これは、突条シール部先端から、オイルパン200の突条部201までの距離が、中央の突条シール部103の方が、両側の突条シール部102よりも短いからである。従って、ガスケット100における中央付近の反発力が際立って大きくなり、オイルパン200などを変形させてしまい、密封性能を損なってしまうおそれがある。
【0006】
また、3本の突条シール部のうち両側の突条シール部102は、ハウジング300の平面部301によって、図中矢印Q方向に圧縮される場合に、外側に倒れたり、内側に倒れたりする(図中矢印Y)。そのため、これらの突条シール部102のハウジング300の平面部301に対する接触状態が安定せず、面圧分布も不安定になるため、密封性能が不安定になってしまうおそれがある。
【特許文献1】実開昭61−134548号公報
【特許文献2】実開昭62−022360号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、密封性能の向上を図ったガスケットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
【0009】
すなわち、先端が湾曲形状の突条部に嵌め込まれ、該突条部を備えた一方の部材と、該突条部に対向する対向面を有する他方の部材との間の隙間を封止するガスケットにおいて、
前記対向面に密着する3本の突条シール部を備え、
3本のうちの両側の2本の突条シール部は、中央の突条シール部よりも他方の部材側に突出するように構成され、かつ、それらの先端面は内側から外側に向かうにつれて他方の部材側に突出する傾斜面により構成されることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、中央の突条シール部よりも両側の2本の突条シール部の方が他方の部材側に突出しているので、反発力を大きくし過ぎることなく、ピーク面圧を高めることができる。しかも、両側の2本の突条シール部の先端面は、内側から外側に向かうにつれて他方の部材側に突出する傾斜面により構成されるため、これら2本の突条シール部は外側に撓むようにして他方の部材(の対向面)に密着する。従って、これらの突条シール部が外側に倒れたり、内側に倒れたりしてしまうことはなく、他方の部材に対する接触状態が安定する。これにより、面圧分布も安定する。
【0011】
3本のうちの両側の2本の突条シール部は、他方の部材に吸着する盤状構造を構成するとよい。
【0012】
このようにすれば、より一層、両側の2本の突条シール部の他方の部材に対する接触状態が安定する。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明によれば、密封性能の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための最良の形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【実施例1】
【0015】
図1〜図7を参照して、本発明の実施例に係るガスケットについて説明する。なお、本実施例では、オートマチックトランスミッション(以下、ATと称する)に用いられるガスケットを例にして説明する。この場合、ガスケットは、オイルパンの中に外部から泥水などが浸入するのを防止すると共に、内部からオイルが漏れるのを防止するために用いられる。
【0016】
<ガスケットの構成>
特に、図1〜図4を参照して、本発明の実施例に係るガスケット10の構成について説明する。図1は本発明の実施例に係るガスケットの平面図である。図2は本発明の実施例に係るガスケットの装着時の様子を示す模式的断面図である。なお、図2のうちガスケットについては、図1中AA断面に相当する。図3は本発明の実施例に係るガスケットの一部の拡大断面図である。図4は本発明の実施例に係るガスケットの装着時の様子を示す模式的断面図である。なお、図4のうちガスケットについては、図1中BB断面に相当する。
【0017】
本実施例に係るガスケット10は、オイルパン20とハウジング30との間の隙間を封止するもので、弾性材により構成される。なお、オイルパン20は鉄を曲げ加工すること
により作製され、AT側のハウジング30はアルミニウムを切削加工することにより作製される。オイルパン20には、先端が湾曲形状の突条部21が設けられている。そして、ガスケット10は、このオイルパン20の突条部21に沿うような形状で構成されている。また、ガスケット10は、この突条部21に嵌め込まれる嵌合溝11を備えている。この嵌合溝11は突条部21に沿うように設けられている。
【0018】
図4を参照して、ガスケット10,オイルパン20及びハウジング30の固定方法について説明する。オイルパン20とハウジング30は複数のボルト40により固定される。そして、オイルパン20とハウジング30には、ボルト40が挿通される複数の貫通孔22,32がそれぞれ設けられている。そして、ガスケット10にも、これらの貫通孔22,32に一致する位置に、複数の貫通孔14が設けられている。これら複数の貫通孔14には、それぞれ金属製のスリーブ15が嵌め込まれている。そして、オイルパン20に設けられた貫通孔22,ガスケット10に設けられた貫通孔14、及びハウジング30に設けられた貫通孔32を一致させた状態でボルト40を締結することによって、これらオイルパン20,ガスケット10及びハウジング30は固定される。なお、ボルト40による締結については、別途ナットを用いても良いし、ハウジング30に設けられた貫通孔32にめねじを形成しても良い。
【0019】
また、本実施例に係るガスケット10には、ハウジング30の平面部31(オイルパン20に備えられた突条部21に対向する対向面)に密着する3本の突条シール部(ビード)が設けられている。3本の突条シール部のうち中央の突条シール部13は、突条部21の先端部に沿って設けられ、その両側に対称的に2本の突条シール部12が設けられている。
【0020】
そして、本実施例においては、両側の2本の突条シール部12は、中央の突条シール部13よりもハウジング30側に突出するように構成されている。つまり、両側の2本の突条シール部12は、中央の突条シール部13よりも突出量が大きくなっている。また、2本の突条シール部12の先端面は、内側から外側に向かうにつれてハウジング30側に突出する傾斜面12aにより構成されている。この傾斜面の傾斜角度α(内側から外側に向かってハウジング30側に傾斜する傾斜角度)は、5〜40度が適当である(図3参照)。
【0021】
<ガスケットの装着状態>
特に、図5及び図6を参照して、本発明の実施例に係るガスケット10の装着状態について説明する。図5は本発明の実施例に係るガスケットの装着初期の状態を示す模式的断面図の一部である。図6は本発明の実施例に係るガスケットの装着完了時の状態を示す模式的断面図の一部である。
【0022】
ガスケット10,オイルパン20及びハウジング30を固定する際には、図5に示すように、ガスケット10は、ハウジング30の平面部31により図中矢印P方向に圧縮される。このとき、中央の突条シール部13よりも両側の2本の突条シール部12の方がハウジング30側に突出しているため、先に平面部31に当たる。そして、これら2本の突条シール部12の先端面は内側から外側に向かうにつれてハウジング30側に突出する傾斜面12aにより構成されているため、図中矢印Xで示すように外側に倒れる。
【0023】
そして、図6に示すように、中央の突条シール部13がハウジング30の平面部31に密着する。また、両側の2本の突条シール部12は、外側に撓むようにして、ハウジング30の平面部31に密着する。また、これら両側の2本の突条シール部12は、ハウジング30の平面部31に吸着する盤状構造を構成している。従って、これらの2本の突条シール部12はハウジング30の平面部31に吸着する。
【0024】
<本実施例に係るガスケットの優れた点>
本実施例に係るガスケット10によれば、中央の突条シール部13よりも両側の2本の突条シール部12の方がハウジング30側に突出しているので、反発力を大きくし過ぎることなく、ピーク面圧を高めることができる。この点について、図7を参照して説明する。図7は本発明の実施例に係るガスケットと従来例に係るガスケットについて面圧分布を比較したグラフである。図中実線は本実施例に係るガスケットの場合について示し、点線は従来例に係るガスケットの場合について示している。
【0025】
図から分かるように、本実施例に係るガスケット10によれば、反発力の増加を抑制しつつ、ピーク面圧を高くすることができる。つまり、中央の突条シール部13による反発力を上げることなく、両側の2本の突条シール部12のピーク面圧を高くすることができる。これは、両側の2本の突条シール部12の方が締め代を大きくしているためであり、これにより突条シール部12の圧縮率が中央の突条シール部13の圧縮率に比べて高くなることはないことによるものである。なお、両側の突条シール部12のほうが、圧縮率が低くなる理由は、両側の突条シール部12の方が中央の突条シール部13よりもオイルパン20の突条部21までの距離が長く、また、中央の突条シール部13は撓むことなく圧縮するのに対して、両側の2本の突条シール部12は撓むからである。したがって、両側の2本の突条シール部12においては、反発力はそれほど増加しないが、(言い換えれば、オイルパン20などを変形させない程度に増加するものの)、部分的にシール面圧を高くすることができる。以上のように、反発力を大きくし過ぎることなく、ピーク面圧を高めることができるので、オイルパン20を変形させてしまうことなく、密封性能を高めることができる。
【0026】
また、両側の2本の突条シール部12は外側に撓むようにしてハウジング30の平面部31に密着する。つまり、従来例の場合のように、両側の2本の突条シール部12が外側に倒れたり、内側に倒れたりしてしまうことはなく、ハウジング30の平面部31に対する接触状態が安定する。これにより、面圧分布も安定する。従って、密封状態が安定化し、密封性能が向上する。
【0027】
さらに、両側の2本の突条シール部12がハウジング30の平面部31に対して吸着する盤状構造を構成するため、より一層、これら突条シール部12のハウジング30の平面部31に対する接触状態が安定する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は本発明の実施例に係るガスケットの平面図である。
【図2】図2は本発明の実施例に係るガスケットの装着時の様子を示す模式的断面図である。
【図3】図3は本発明の実施例に係るガスケットの一部の拡大断面図である。
【図4】図4は本発明の実施例に係るガスケットの装着時の様子を示す模式的断面図である。
【図5】図5は本発明の実施例に係るガスケットの装着初期の状態を示す模式的断面図の一部である。
【図6】図6は本発明の実施例に係るガスケットの装着完了時の状態を示す模式的断面図の一部である。
【図7】図7は本発明の実施例に係るガスケットと従来例に係るガスケットについて面圧分布を比較したグラフである。
【図8】図8は従来例に係るガスケットの装着の様子を示す模式的断面図である。
【符号の説明】
【0029】
10 ガスケット
11 嵌合溝
12 突条シール部
12a 傾斜面
13 突条シール部
14 貫通孔
15 スリーブ
20 オイルパン
21 突条部
22,32 貫通孔
30 ハウジング
31 平面部
40 ボルト
α 傾斜角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端が湾曲形状の突条部に嵌め込まれ、該突条部を備えた一方の部材と、該突条部に対向する対向面を有する他方の部材との間の隙間を封止するガスケットにおいて、
前記対向面に密着する3本の突条シール部を備え、
3本のうちの両側の2本の突条シール部は、中央の突条シール部よりも他方の部材側に突出するように構成され、かつ、それらの先端面は内側から外側に向かうにつれて他方の部材側に突出する傾斜面により構成されることを特徴とするガスケット。
【請求項2】
3本のうちの両側の2本の突条シール部は、他方の部材に吸着する盤状構造を構成することを特徴とする請求項1に記載のガスケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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