説明

ガスケット

【課題】ガスケットに設けられたタブ部に、耐久性を有する着色を施し得るようにする。
【解決手段】ガスケット本体2の外周部に、タブ部5を一体に張出形成する。このタブ部5を、ガスケット本体2の材質を識別可能な色に着色されたゴム系被膜6によって被覆する。このゴム系被膜6を、ガスケット本体2のゴム硬度とほぼ等しいゴム硬度を有するものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ガスケット本体に設けられたタブ部に対して、耐久性を有する着色を施すようにしたガスケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、各種のプラント設備などでは、無数の配管が屋内・屋外を問わず縦横無尽に配設されている。そして、これらの配管の継目部分には、シール部材としてガスケットが用いられている。
【0003】
このようなガスケットは、配管を構成する管部材の端部に設けられたフランジ部の間に挟着保持される。そして、このようなガスケットには、配管を流れる流体の種類に応じた材質のものが使用される。
【0004】
このようなガスケットは、1つのプラント設備内で数多く使用されているため、日常的な管理や、交換時における材質の把握などを、目視によって容易に行い得るようにすることが望まれている。
【0005】
そこで、ガスケットの外周部にタブ部を一体に張出形成し、このタブ部を材質に応じた色に着色することにより、遠方からでも一見してガスケットの材質や状態などを知り得るようにすることが検討されている。
【0006】
なお、ガスケットなどのシール部材に対して着色する技術は、特許文献1、2などに開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−228325号公報
【特許文献2】特開2004−116533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記したタブ部を着色するために、アクリル樹脂やウレタン樹脂やメラミン樹脂などの低分子量の樹脂からなる通常のペンキ塗料を、ハケ塗りなどによって塗布するようにした場合、得られる塗膜の強度が低く、耐候性が悪いため、短期間のうちに簡単に塗膜が剥がれてしまい、上記した目的が果たせないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、ガスケット本体の外周部に、タブ部が一体に張出形成され、該タブ部が、ガスケット本体の材質を識別可能な色に着色されたゴム系被膜によって被覆され、該ゴム系被膜が、ガスケット本体のゴム硬度とほぼ等しいゴム硬度を有するものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、上記構成によって、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、ガスケット本体の外周部に一体に張出形成されたタブ部を、着色されたゴム系被膜で被覆することにより、タブ部の色によってガスケット本体の材質を識別することができるようになる。また、タブ部を被覆するゴム系被膜が、ガスケット本体のゴム硬度とほぼ等しいゴム硬度を有するものであることにより、ガスケット本体やタブ部の歪みまたは変形などに対して追随するため、破壊および剥離を起こし難くすることができる。なお、ゴム硬度がほぼ等しいとは、ゴム系被膜の弾性率がガスケット本体の弾性率とほぼ等しいということであり、一定の力に対する両者の伸びが同じとなるため、両者を同一の変形モードを有するものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例にかかるガスケットの全体図である。
【図2】図1のタブ部の拡大図である。
【図3】タブ部に対しゴム系被膜を形成する状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を具体化した実施例を、図面を用いて詳細に説明する。
【実施例】
【0013】
<構成>以下、構成について説明する。
【0014】
図1〜図3は、この実施例およびその変形例を示すものである。
【0015】
図1は、この実施例にかかるガスケット1の全体図である。このガスケット1は、各種のプラント設備などに設けられた配管を構成する管部材の端部に設けられたフランジ部の間に挟着保持されるものである。そして、このようなガスケット1には、配管を流れる流体の種類に応じた適正な材質のものが使用される。
【0016】
ガスケット1の材質としては、例えば、FKM、EPDM、IIR(イソブチレン・イソプレン共重合体)、NBR、SBR、ウレタンゴム、シリコーンゴムなどのゴム系素材が挙げられる。これらのゴム系素材のゴム硬度は、概ね60〜70などとされている。なお、このゴム硬度は、株式会社テクロック製デュロメータ(GS−719G(TYPE A))によって計測したものを基準としている。
【0017】
ガスケット1の本体(ガスケット本体2)は、フランジ部の外径と同じ外径の円形状をしており、その中心部には、管部材の内径とほぼ同じ内径の流通孔3が形成されている。この流通孔3は、配管を流れる流体を流通させるものである。この流通孔3の周囲には、複数のボルト孔4が形成されている。このボルト孔4は、フランジ部に形成されたボルト孔と合致する位置に、ほぼ同じ大きさで形成されている。なお、隣接する管部材は、フランジ部どうしを上記したボルト孔(ボルト孔4を含む)を通してボルトで締結することによって固定される。
【0018】
そして、以上のような基本構成に対し、この実施例のものでは、以下のような構成を備えるようにしている。
【0019】
(構成1)
ガスケット本体2の外周部に、タブ部5が一体に張出形成される。このタブ部5が、ガスケット本体2の材質を識別可能な色に着色されたゴム系被膜6によって被覆される。このゴム系被膜6が、ガスケット本体2のゴム硬度とほぼ等しいゴム硬度を有するものとされる。
【0020】
ここで、タブ部5は、上記したフランジ部からハミ出すように設けられる。即ち、タブ部5は、外部から見えるように設けられる。そして、タブ部5には、図2の拡大図に示すように、ガスケット1に関する情報を記載した情報表示部7が設けられている。この情報表示部7は、タブ部5の表面に対して一体に浮彫状に形成される。但し、情報表示部7は、凹溝状のものとしても良い。
【0021】
この場合、タブ部5は、図1に示すように、ガスケット本体2の周方向に180度離して二箇所設けられている。但し、タブ部5の設置数は、1個でも3個以上でも良い。この場合、タブ部5は、先細りの台形状をしている。但し、タブ部5の形状は、これに限るものではない。そして、二箇所のタブ部5の両面の合計四箇所に対して、それぞれ異なる情報表示部7が設けられている。この場合、各面に、例えば、メーカー名またはブランド名、材質、口径、製造ロットなどの情報がそれぞれ別々に記載されている。
【0022】
ガスケット本体2の材質を識別するための色は、任意に決めることができる。例えば、白、赤、青、黄、緑などとすることができる。或いは、夜間や暗所における視認性を考慮して、蛍光色や燐光色などとすることもできる。
【0023】
上記したように、ガスケット1のゴム硬度が、概ね60〜70なので、ゴム系被膜6のゴム硬度を、概ね50〜70とする。なお、ゴム系被膜6のゴム硬度は、ガスケット1のゴム硬度とほぼ同じであることが望ましいが、ここでは、性能が低下しないようにしつつ、ゴム系被膜6を容易に形成し得るようにするために、ガスケット1よりも若干範囲を広げている。
【0024】
(構成2)
図3に示すように、上記したゴム系被膜6を、SBR系樹脂を主成分とするゴム成分を有機溶剤に溶解させた液状の被膜形成剤8に、タブ部5を浸漬して被膜形成剤8を付着させた後、この被膜形成剤8を常温で自然乾燥させることによって形成された均質な浸漬被膜とする。
【0025】
ここで、SBR系樹脂は、有機溶剤に対する溶解度が高い、高分子量のゴム系樹脂であり、上記した通常のペンキ塗料と比べてガスケット本体2に近い材質のものである。有機溶剤は、例えば、シンナー、トルエン、ラッカー、ナフサなどを使用することができる。SBR系樹脂を主成分とするゴム成分を有機溶剤に溶解させる際には、均一に混ざるよう、ゆっくり撹拌することが必要である。また、タブ部5を浸漬する際には、表面に気泡が発生しないように、ゆっくり漬込み且つゆっくり引上げるようにすることが必要である。自然乾燥時間は、約4時間とする。
【0026】
(構成3)
液状の被膜形成剤8が、SBR系樹脂を10〜40重量%含むものとする。より具体的な物としては、例えば、米国、PDI社製の一液性常温自然乾燥式液体ゴム状コーティング剤「PROT」などが挙げられる。
【0027】
ここで、SBR系樹脂の割合は、ゴム系被膜6の粘度と膜厚とに影響するものである。
【0028】
<作用効果>この実施例によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0029】
(作用効果1)
ガスケット本体2の外周部に一体に張出形成されたタブ部5を、着色されたゴム系被膜6で被覆することにより、タブ部5の色によってガスケット本体2の材質を識別することができるようになる。これにより、遠方からでも一見してガスケット本体2の材質を知ることができるようになり、ガスケット本体2の日常的な管理や、交換時におけるガスケット本体2の材質の把握などを容易化することができる。
【0030】
また、タブ部5を被覆するゴム系被膜6が、ガスケット本体2のゴム硬度とほぼ等しいゴム硬度を有するものであることにより、ゴム系被膜6が、ガスケット本体2やタブ部5の歪みまたは変形などに対して追随するため、破壊および剥離を起こし難いものとすることができる。
【0031】
なお、ゴム硬度がほぼ等しいとは、ゴム系被膜6の弾性率がガスケット本体2の弾性率とほぼ等しいということであり、一定の力に対する両者の伸びが同じとなるため、両者を同一の変形モードを有するものとすることができる。
【0032】
また、上記により、ゴム系被膜6の劣化具合を見ることによって、ガスケット本体2のおおよその劣化の度合いを推測することも可能となる。
【0033】
(作用効果2)
SBR系樹脂は有機溶剤への溶解度が高いので、SBR系樹脂を主成分とするゴム成分を用いることにより、容易に高強度のゴム系被膜6を得ることができる。また、液状の被膜形成剤8にタブ部5を浸漬後、常温で自然乾燥して成るゴム系被膜6は、薄くてムラの少ない均質な浸漬被膜となるので、長期間の使用に耐え得る高耐久性のものとすることができる。
【0034】
(作用効果3)
液状の被膜形成剤8におけるSBR系樹脂の割合を10〜40重量%の範囲とすることにより、液状の被膜形成剤8の粘度を調整して、ゴム系被膜6を、ガスケット本体2のゴム硬度とほぼ等しいゴム硬度にすることができる。また、ゴム系被膜6が情報表示部7を塗潰さずに明確に現われるような膜厚にすることができる。
【0035】
<性能評価試験>上記ゴム系被膜6に対し、以下の4種類の性能評価を行った。
【0036】
4種類の性能評価とは、温度特性を調べるための冷熱繰返し試験、耐紫外線特性を調べるためのサンシャインウェザロ試験、水浸漬に対する特性を調べるための水圧加圧試験、外力に対する特性を調べるための実施工試験であり、結果は、以下のようなものとなった。
【0037】
1.冷熱繰返し試験(0度〜100度の使用温度を想定)
・評価設備:ギヤーオーブン
・評価条件:ゴム系被膜6に対し、常温と100度との温度変化を、それぞれ1時間ずつ、交互に50回および100回繰返し与えた。
・評価結果:繰返し加熱後のゴム系被膜6には、若干の黄変が見られたが、50回繰返後と、100回繰返後とでの大きな色差はなかった。どちらも、ゴム系被膜6の剥離破壊などがなく、特に問題は見られなかった。即ち、ガスケット本体2が膨張・収縮を繰返しても、ゴム系被膜6がこれに追随して変化するので、剥離は発生しなかった。
【0038】
2.サンシャインウェザロ試験(屋外10年使用による紫外線被害を想定)
・評価設備:スガ試験機 WELーSNーHC
・評価条件:連続照射+シャワー(18分間シャワー/120分サイクル)1千時間
光源:スーパーロングライフカーボンアーク(放射エネルギー255±45W/m2)
温度:63±3度
促進条件:約15倍の促進に相当
・評価結果:1千時間照射後のゴム系被膜6には若干の黄変とヒビ割れが発生したが、タブ部5を曲げてもゴム系被膜6は剥離しないため、特に問題は見られなかった。
【0039】
3.水圧加圧試験(最大圧力1.0MPaの水浸漬を想定)
・評価設備:フランジ短管
・評価条件:フランジ短管中にゴム系被膜6を設けたガスケット1を入れ、手動ポンプで1.0MPa×24時間加圧した
・評価結果:タブ部5およびガスケット本体2が外力(水圧)を受けて変形しても、ゴム系被膜6がこれに追随して変形するため、ゴム系被膜6の剥離はなく、特に問題は見られなかった。
【0040】
4.実施工試験(施工時の外力・応力を想定)
・評価設備:SUS製フランジ
・評価条件:ゴム系被膜6を設けたガスケット1をSUS製フランジ間に締込み24時間放置した。ボルト締付トルク:90N・m(標準ト締付ルクの3倍)
・評価結果:ガスケット本体2に過剰な圧縮力が負荷されて、その圧縮力がガスケット本体2内で外周方向に変形するように作用しても、ゴム系被膜6がこれに追随して変形するため、ゴム系被膜6の剥離、破壊はなく、特に問題は見られなかった。
【0041】
以上の4種類の試験の結果、いずれも著しい劣化などは見られず、十分な実用性が得られることが確認された。
【0042】
以上、この発明の実施例を図面により詳述してきたが、実施例はこの発明の例示にしか過ぎないものであるため、この発明は実施例の構成にのみ限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれることは勿論である。また、例えば、各実施例に複数の構成が含まれている場合には、特に記載がなくとも、これらの構成の可能な組合せが含まれることは勿論である。また、複数の実施例や変形例が示されている場合には、特に記載がなくとも、これらに跨がった構成の組合せのうちの可能なものが含まれることは勿論である。また、図面に描かれている構成については、特に記載がなくとも、含まれることは勿論である。更に、「等」の用語がある場合には、同等のものを含むという意味で用いられている。また、「ほぼ」「約」「程度」などの用語がある場合には、常識的に認められる範囲や精度のものを含むという意味で用いられている。
【符号の説明】
【0043】
1 ガスケット
2 ガスケット本体
5 タブ部
6 ゴム系被膜
8 被膜形成剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスケット本体の外周部に、タブ部が一体に張出形成され、
該タブ部が、ガスケット本体の材質を識別可能な色に着色されたゴム系被膜によって被覆され、
該ゴム系被膜が、ガスケット本体のゴム硬度とほぼ等しいゴム硬度を有することを特徴とするガスケット。
【請求項2】
前記ゴム系被膜が、SBR系樹脂を主成分とするゴム成分を有機溶剤に溶解させた液状の被膜形成剤に、前記タブ部を浸漬して被膜形成剤を付着させた後、被膜形成剤を常温で自然乾燥させることによって形成された均質な浸漬被膜であることを特徴とする請求項1記載のガスケット。
【請求項3】
前記液状の被膜形成剤が、SBR系樹脂を10〜40重量%含むものであることを特徴とする請求項2記載のガスケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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