説明

ガススプリング

【課題】ガススプリングにおけるロック機構を構成するストッパ部材を同じくガススプリングを構成するカバー体の先端部に位置ズレなく連設させる。
【解決手段】シリンダ体1内に基端側を出没可能に挿通させるロッド体2がシリンダ体1内に封入のガス圧によってシリンダ体1内から突出する方向に附勢されると共に円筒体からなりながら内側にロッド体2を挿通させるカバー体3を有し、このカバー体3における基端部3aがロッド体2におけるシリンダ体1外への突出端部たる先端部に枢着されると共に先端部が内側にシリンダ体1におけるヘッド端部1cを臨在させるストッパ部材4を有し、このストッパ部材4がカバー体3と軸線方向を同一にするほぼ筒状に形成されながらシリンダ体1におけるボトム端部に対向する端面にストッパ部材4の軸線方向に沿って部分的に変形させた変形部4eを有してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ガススプリングに関し、特に、たとえば、車両における後部扉用とされるロック機構付きのガススプリングの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
車両における後部扉用とされるロック機構付きのガススプリングとしては、これまでに種々の提案があるが、たとえば、特許文献1に開示の提案にあっては、シリンダ体内に基端側を出没可能に挿通させるロッド体がシリンダ体内に封入のガス圧によってシリンダ体内から突出する方向に附勢されると共に円筒体からなりながら内側にロッド体を挿通させるカバー体を有している。
【0003】
そして、この提案にあって、カバー体における基端部がロッド体におけるシリンダ体外への突出端部たる先端部に枢着されると共に先端部が内側にシリンダ体におけるヘッド端部を臨在させるストッパ部材を有している。
【0004】
そしてまた、この提案にあっては、カバー体がロッド体に枢着する基端部を中心にして先端部を揺動させるから、このカバー体の先端部に保持されるストッパ部材がシリンダ体の直径方向に対して揺動可能、すなわち、往復動可能とされる。
【0005】
それゆえ、この提案にあっては、たとえば、ストッパ部材がいわゆる静止状態におかれてカバー体における軸線がロッド体における軸線と一致するときに、シリンダ体に対するロッド体の出没が可能とされ、ストッパ部材が往動されてカバー体における軸線がロッド体における軸線に対して傾斜するときに、ストッパ部材がロッド体のシリンダ体内への没入を阻止する。
【0006】
その結果、この特許文献1に開示のガススプリングにあっては、ストッパ部材のシリンダ体に対する往復動位置を選択することで、いわゆるロック状態を具現化でき、たとえば、風などの予測しない外力が作用しても、伸長状態から収縮状態にならず、開放状態にある後部扉が突然閉まるなどの不具合を招来させない。
【特許文献1】特開2007‐64281号公報(要約、図1、図2、図3参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記した特許文献1に開示のガススプリングにあっては、ロック機構を有すること自体に何等問題はないが、このロック機構付きのガススプリングを製作するのにあって、些か不具合があると指摘される可能性がある。
【0008】
すなわち、上記のガススプリングにあって、ロック機構を構成するストッパ部材は、カバー体の先端部に言わば固定状態に保持されるが、そのとき、回転方向に位置ズレが発現されると所定の機能を発揮し得なくなる。
【0009】
なぜなら、このロック機構を構成するストッパ部材は、カバー体の先端部に軽圧入などで連設されるが、手動操作による外力作用でディテント構造の利用下にシリンダ体の直径方向への往復動を可能にしながらその往復動位置での停止を可能にしている。
【0010】
そして、ディテント構造は、ストッパ部材の往復動方向が、たとえば、前後方向とされるとき、上記のシリンダ体を上下方向から挟む一対の突起を有し、相対的に看て、この一対の突起間をシリンダ体が通過することで、上記した往復動が可能とされ、また、上記した往復動位置での停止が可能とされている。
【0011】
したがって、ストッパ部材をカバー体の先端部に連設する際には、ストッパ部材においてディテント構造を形成する一対の突起が言わば上下に位置決められた態勢になることが必須とされ、そのため、このストッパ部材をカバー体の先端部に連設するのにあって、作業に手間を要し、生産性を向上できない不具合がある。
【0012】
この発明は、上記した事情を鑑みて創案されたものであって、その目的とするところは、ロック機構を構成するストッパ部材をカバー体の先端部に位置ズレすることなく連設でき、その生産性の向上を期待するのに最適となるロック機構付きのガススプリングを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記した目的を達成するために、この発明によるガススプリングの構成を、基本的には、シリンダ体内に基端側を出没可能に挿通させるロッド体がシリンダ体内に封入のガス圧によってシリンダ体内から突出する方向に附勢されると共に円筒体からなりながら内側にロッド体を挿通させるカバー体を有し、このカバー体における基端部がロッド体におけるシリンダ体外への突出端部たる先端部に枢着されると共に先端部が内側にシリンダ体におけるヘッド端部を臨在させるストッパ部材を有し、カバー体における軸線がロッド体における軸線と一致するときにシリンダ体に対するロッド体の出没が可能とされ、カバー体における軸線がロッド体における軸線に対して傾斜するときにストッパ部材がロッド体のシリンダ体内への没入を阻止してなるガススプリングにおいて、ストッパ部材がカバー体と軸線方向を同一にするほぼ筒状に形成されながらシリンダ体におけるボトム端部に対向する端面にストッパ部材の軸線方向に沿って部分的に変形させた変形部を有してなるとする。
【発明の効果】
【0014】
それゆえ、この発明にあっては、ロック機構を構成するストッパ部材が変形部を有するから、この変形部を基準にすることで、方向が特定されたカバー体に対するストッパ部材の回転方向の位置決めを可能にし得る。
【0015】
そして、変形部は、ストッパ部材にあって、シリンダ体におけるボトム端部に対向する端面に形成されるから、たとえば、治具を利用する機械組みの際に、この変形部に治具を連繋させるなどが可能になり、方向が特定されたカバー体にストッパ部材を連設する作業を容易にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、図示した実施形態に基づいて、この発明を説明するが、この発明によるガススプリングは、図1に示すように、凡そこの種ガススプリングがそうであるように、シリンダ体1内に図中で上端側となる基端側を出没可能に挿通させるロッド体2がシリンダ体1内に封入のガス圧によってシリンダ体1内から突出する方向に、すなわち、伸長方向に附勢されている。
【0017】
そして、このガススプリングにあって、ロッド体2におけるシリンダ体1内からの突出端部たる図中で下端部となる先端部2aにボールジョイントを構成するソケット2bを一体に有し、シリンダ体1における図中で上端部となるボトム端部1aに同じくボールジョイントを構成するソケット1bを一体に有している。
【0018】
また、このガススプリングにあっては、いわゆるロック機構付きとされ、そのため、円筒体からなるカバー体3を有し、このカバー体3における図中で下端部となる基端部3aがロッド体2のシリンダ体1外への突出端部たる先端部2aに連結されながら図中で上端部となる先端部3bがシリンダ体1のヘッド端部1cに近隣している。
【0019】
カバー体3は、図示するところでは、その基端部3aがロッド体2の先端部2aにピン21の利用下に枢着されていて、先端部3bが図中に矢印aで示す両方向に、すなわち、図中で右側に傾斜する往動およびこの傾斜状態から反転して旧状に復する復動の両方向に揺動可能とされている。
【0020】
また、図示するところでは、カバー体3の先端部3bにはストッパ部材4が保持され、このストッパ部材4は、カバー体3と同軸となるほぼ筒状に形成されながら内側にシリンダ体1におけるヘッド端部1cを臨在させている。
【0021】
ちなみに、ストッパ部材4は、シリンダ体1に対するメタルタッチを回避でき、また、ガススプリングにおける全体重量の軽減化に寄与し、さらには、ガススプリングにおける製品コストの高騰化を回避する上で、合成樹脂材からなる。
【0022】
ところで、このストッパ部材4は、上記したようにカバー体3が往復動を可能にするから、手動操作による外力作用でシリンダ体1の直径方向への往復動を可能にし、また、その往復動位置での停止を可能にしている。
【0023】
すなわち、まず、ストッパ部材4に手動操作による外力を作用しない場合には、図1および図2(A)に示すように、カバー体3の軸線がロッド体2の軸線と一致する状態に維持される。
【0024】
それゆえ、図3(A)にも示すように、ストッパ部材4にあっては、係止部4aがシリンダ体1のヘッド端部1cに対向せず、したがって、シリンダ体1に対するロッド体2の出没たるガススプリングにおける伸縮作動を許容する。
【0025】
つぎに、手動操作でストッパ部材4をシリンダ体1の直径方向に往動させる場合には、図2(B)に示すように、カバー体3の軸線がロッド体2の軸線に対して傾斜する。
【0026】
それゆえ、図3(B)にも示すように、ストッパ部材4にあっては、係止部4aがシリンダ体1のヘッド端部1cに対向し、したがって、シリンダ体1内へのロッド2体の没入たるガススプリングの収縮作動を阻止する。
【0027】
ところで、上記したストッパ部材4にあっては、前記したように、シリンダ体1に対する往復動を可能にするが、さらには、その往復動位置での停止を可能にしている。
【0028】
具体的には、図3に示すように、ストッパ部材4において、内側にシリンダ体1におけるヘッド端部1cを臨在させる本体部4bの内周にディテント構造を構成する突起4cを有している。
【0029】
この突起4cは、詳しくは図示しないが、本体部4bの軸線方向の長さにほぼ等しい長さを有するリブからなり、しかも、シリンダ体1を直径方向から挟む一対とされている。
【0030】
この突起4cがリブからなるのは、この突起4cが点状に形成される場合に比較して、耐久性、すなわち、耐磨耗性で有利になるからであり、したがって、いたずらに耐磨耗性が劣らない限りにおいて、リブではなくピン状あるいはドット状に形成されても良い。
【0031】
そして、一対となる突起4cの先端間寸法は、シリンダ体1におけるヘッド端部1cの直径より僅かに小さく設定され、したがって、シリンダ体1におけるヘッド端部1cがここを通過するとき、大きい外力作用が必要になり、逆に言えば、大きい外力作用がない限りにおいて、シリンダ体1におけるヘッド端部1cがストッパ部材4における本体部4bの内側で自由移動できない。
【0032】
その結果、このストッパ部材4にあっては、手動操作による外力作用でシリンダ体1の直径方向への往復動を可能にし、また、その往復動位置での停止を可能にする。
【0033】
一方、この発明のガススプリングにあっては、ストッパ部材4がカバー体3と軸線方向を同一にするほぼ筒状に形成されるのは前述した通りであるが、このストッパ部材4は、図4にも示すように、シリンダ体1におけるボトム端部1aに対向する端面4dにストッパ部材4の軸線方向に沿って部分的に変形させた変形部を有している。
【0034】
そして、この変形部は、図示するところでは、ストッパ部材4における上記の端面4dから突出する突出部4eとされていて、また、シリンダ体1におけるヘッド端部1cをいわゆる上下から挟む一対とされている。
【0035】
すなわち、変形部は、シリンダ体1に対するストッパ部材4における往復動方向(図1中の両方向矢印a参照)に沿う両面部のシリンダ体1におけるボトム端部1cに対向する端面4dに形成されている。
【0036】
それゆえ、この発明にあっては、ロック機構を構成するストッパ部材4が変形部たる突出部4eを有するから、この突出部4eを基準にすることで、方向が特定されたカバー体3に対するストッパ部材4の回転方向の位置決めを可能にし得る。
【0037】
そして、突出部4eは、ストッパ部材4にあって、シリンダ体1におけるボトム端部1cに対向する端面4dに形成されるから、たとえば、このガススプリングの治具を利用する機械組みの際に、この突出部4eに治具を連繋させるなどが可能になり、方向が特定されたカバー体3にストッパ部材4を連設する作業を容易にする。
【0038】
以上からすれば、上記した変形部は、凡そ位置決めの基準となり、治具の連繋を可能にする限りには、突出部4eではなく、図示しないが、凹陥部とされるとしても良く、また、一対とされず、単一とされても良い。
【0039】
ただ、この発明のガススプリングにあっては、ストッパ部材4がディテント構造を形成する突起4cを有するから、このことを鑑みると、変形部が凹陥部からなるよりも突出部4eからなり、しかも、一対とされる方が突起4cの形成を保障し易くなる点からは好ましい。
【0040】
また、ストッパ部材4がシリンダ体1におけるボトム端部1aに対向する端面4dに位置合せなどに利用できる変形部たる突出部4eを有することを鑑みると、突出部4eを連設することでストッパ部材4におけるいわゆる面積が大きくなり、したがって、このストッパ部材4を手動操作で往復動させるときに、このストッパ部材4に手指を添え易くなり、したがって、ストッパ部材4に対する外力作用を容易に行え、操作性が向上される利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】この発明の一実施形態によるガススプリングを一部破断して示す全体図である。
【図2】ストッパ部材の作動状態を示す図である。
【図3】図2中のX−X線位置で示すストッパ部材の作動状態を示す図である。
【図4】ストッパ部材が変形部を有しているガススプリングを一部破断して示す全体図である。
【符号の説明】
【0042】
1 シリンダ体
1c ヘッド端部
1a ボトム端部
2 ロッド体
2a 突出端部たる先端部
3 カバー体
3a 基端部
3b 先端部
4 ストッパ部材
4a 係止部
4b 本体部
4c ディテント構造を形成する突起
4d 端面
4e 変形部たる突出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ体内に基端側を出没可能に挿通させるロッド体がシリンダ体内に封入のガス圧によってシリンダ体内から突出する方向に附勢されると共に円筒体からなりながら内側にロッド体を挿通させるカバー体を有し、このカバー体における基端部がロッド体におけるシリンダ体外への突出端部たる先端部に枢着されると共に先端部が内側にシリンダ体におけるヘッド端部を臨在させるストッパ部材を有し、カバー体における軸線がロッド体における軸線と一致するときにシリンダ体に対するロッド体の出没が可能とされ、カバー体における軸線がロッド体における軸線に対して傾斜するときにストッパ部材がロッド体のシリンダ体内への没入を阻止してなるガススプリングにおいて、ストッパ部材がカバー体と軸線方向を同一にするほぼ筒状に形成されながらシリンダ体におけるボトム端部に対向する端面にストッパ部材の軸線方向に沿って部分的に変形させた変形部を有してなることを特徴とするガススプリング。
【請求項2】
変形部がストッパ部材におけるシリンダ体のボトム端部に対向する端面から突出する突出部とされてなる請求項1に記載のガススプリング。
【請求項3】
変形部がシリンダ体に対するストッパ部材における往復動方向に沿う一面部あるいは両面部のシリンダ体におけるボトム端部に対向する端面に形成されてなる請求項1または請求項2に記載のガススプリング。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−97548(P2009−97548A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−267317(P2007−267317)
【出願日】平成19年10月15日(2007.10.15)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【出願人】(000155609)株式会社柳沢精機製作所 (18)
【Fターム(参考)】