説明

ガスセンサの評価方法、及び、ガスセンサの評価装置

【課題】 環境試験器を用いて耐久試験を適切に行うことが可能なガスセンサの評価方法、及び、このような耐久試験を行うことが可能なガスセンサの耐久試験装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 感ガス膜243を有するガスセンサ200の評価方法は、ガスセンサ200を恒温恒湿槽110の収容室111内に配置して、収容室111の室内気体SAにより収容室111内を所定温度環境とすると共に、ガスセンサ200の感ガス膜243を、室内気体SAを含まない評価用気体GAであって、第2所定温度とされた評価用気体GAに曝した状態で当該ガスセンサ200を評価する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感ガス部を有するガスセンサの評価方法、及び、このような評価を行うためのガスセンサの評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば特定ガスの濃度変化に応じて電気抵抗値が変化する感ガス部を備えるガスセンサが知られている。そして、このようなガスセンサに対し、センサ自身の特性の安定化や出力特性検査などを目的として、特定ガスを含むセンサ処理用ガスを感ガス部に供給してセンサ処理(エージング処理やセンサ特性検査処理)を行うことが知られている。例えば、特許文献1にこのようなセンサ処理方法が具体的に開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2004−53463号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガスセンサを開発したり製造するにあたっては、上記のセンサ処理方法の他に、例えば、ガスセンサを所定の環境(例えば高温多湿環境)に置いて感ガス部の耐久性を評価する耐久試験などのガスセンサの評価を行うことが考えられる。このようなガスセンサの評価は、ガスセンサを例えば恒温槽などの環境試験器の収容室内に配置し、収容室内を所定環境に維持して行う。
【0005】
ところで、環境試験器の収容室をなす扉や壁材、扉と壁材との隙間などをシールするシール材、更には、収容室内に以前に置いた被検物から飛散し壁材等に付着した物質などから、ガス成分が放出され、このガス成分が収容室内の室内気体に含まれる場合がある。しかるに、含まれるガス成分によっては、ガスセンサの感ガス部への特性や耐久性等に影響を及ぼす場合がある。一般的に収容室のシール材にはシリコンゴムが利用されているが、シリコンゴムからはシリコンが揮発することがあり、感ガス部に酸化物半導体を用いている場合には、シリコン被毒によってその特性が劣化することがある。このような場合には、ガスセンサの耐久試験等を適切に行うことができない。耐久試験等でガスセンサに劣化が認められた場合に、それが耐久試験等によるものなのか、それともシリコン被毒によるものなのかを正確に区別できないからである。このように一般的な環境試験器を用いた耐久試験などのガスセンサの評価方法では、ガスセンサの評価を適切に行うことができない場合があった。
【0006】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、環境試験器を用いてガスセンサの評価を適切に行うことが可能なガスセンサの評価方法、及び、このようなガスセンサの評価を行うことが可能なガスセンサの評価装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
その解決手段は、感ガス部を有するガスセンサの評価方法であって、前記ガスセンサを環境試験器の収容室内に配置して、前記収容室内の室内気体により前記収容室内を第1所定温度環境とすると共に、前記ガスセンサのうち少なくとも前記感ガス部を、前記室内気体を含まない評価用気体であって、第2所定温度とした評価用気体に曝した状態で当該ガスセンサを評価するガスセンサの評価方法である。
【0008】
前述のように、一般的な環境試験器を用いてガスセンサの評価を行うと、その収容室内の室内気体に含まれるガス成分がガスセンサの感ガス部に影響を及ぼし、ガスセンサの評価を適切に行えない場合がある。
これに対し、本発明の評価方法では、収容室の室内気体を含まない評価用気体をガスセンサの感ガス部に曝した状態でガスセンサの評価を行うので、感ガス部に影響を及ぼすガス成分が含まれている可能性がある室内気体の影響を受けることなく、適切にガスセンサを評価できる。しかも、評価用気体の温度を第2所定温度としているので、ガスセンサの感ガス部を、所望の第2所定温度とした評価用気体に曝した状態で、ガスセンサの評価を行うことができる。
【0009】
なお、「評価用気体」としては、所定の容器に包囲され、ガスセンサの感ガス部とは接触するが、室内気体とは混合しないように封止された気体であって、静置或いは循環可能とされた気体や環境試験器外から導入した外気などが挙げられる。
「環境試験器」としては、収容室内にガスセンサを収容でき、このガスセンサを収容室の室内気体により収容室内を所定温度環境とすることができる機能を有するものであればよく、いわゆる恒温槽(恒温器)、恒温恒湿槽、低温恒温器(ヒートサイクル試験器)、冷熱衝撃試験器などが挙げられる。
【0010】
評価用気体の温度を第2所定温度とする方法としては、例えば、評価用気体を包囲する評価用気体包囲体の一部を加熱して評価用気体を間接的に加熱するヒータ、評価用気体包囲体の一部を冷却して評価用気体を間接的に冷却する冷却器などの温度調整手段を用いて、評価用気体の温度を調整する方法が挙げられる。
【0011】
ガスセンサの「評価方法」としては、室内気体または評価用気体、或いはこの両者を高温として、この環境下にガスセンサを放置する高温放置試験、室内気体または評価用気体、或いはこの両者を低温として、この環境下にガスセンサを放置する低温放置試験、室内気体または評価用気体、或いはこの両者を、高温から低温、更に高温へと徐々にかつ繰り返し変化させて、この環境下にガスセンサを放置する熱サイクル試験、室内気体または評価用気体、或いはこの両者を、高温から低温または低温から高温へと急激に変化させたり、或いはこの変化を繰り返して、この環境下にガスセンサを放置する熱衝撃試験などが挙げられる。更に、室内気体または評価用気体、或いはこの両者を所定温度でかつ高湿度状態とした環境下にガスセンサを放置する湿中試験、室内気体または評価用気体、或いはこの両者を所定温度でかつ高湿度状態とした環境下で、ガスセンサを駆動状態に維持し続ける湿中負荷試験、更には高気圧下で行う、高温放置試験、高温負荷試験、湿中負荷試験なども挙げられる。
【0012】
更に、上記のガスセンサの評価方法であって、前記評価用気体の前記第2所定温度を、前記室内気体の前記第1所定温度と同温度とするガスセンサの評価方法とすると良い。
【0013】
本発明では、評価用気体の温度(第2所定温度)を室内気体の温度(第1所定温度)と同じにしているので、評価用気体と室内気体の温度が異なることで生じる熱応力、結露等、室内気体にガスセンサ全体を曝した場合とは異なる熱的現象が生じるのを防止できる。
【0014】
評価用気体の温度を室内気体と同温度とする方法としては、例えば、評価用気体を包囲する評価用気体包囲体の一部を加熱して評価用気体を間接的に加熱するヒータ、評価用気体包囲体の一部を冷却して評価用気体を間接的に冷却する冷却器などの温度調整手段を用いて、評価用気体の温度を調整する方法が挙げられる。また、評価用気体包囲体の一部を、長い筒状(例えば直線状や螺旋状など)、ラジエター形状など、広い面積に亘り評価用気体と室内気体とが熱交換壁を介して隣り合う形態の熱交換構造とし、室内気体との熱交換により、評価用気体の温度を室内気体と同温度とする方法も挙げられる。更には、上述のヒータや冷却器などの温度調節手段により、評価用気体の温度を室内気体の温度と同程度とし、その後、評価用気体包囲体のうち熱交換器構造とした熱交換部により、評価用気体の温度を室内気体と同温度とするなど、これらを組み合わせることもできる。
【0015】
また、解決手段は、感ガス部を有するガスセンサの評価方法であって、前記ガスセンサを環境試験器の収容室内に配置して、前記収容室内の室内気体により前記収容室内を所定温度環境とすると共に、前記ガスセンサのうち少なくとも前記感ガス部を、前記室内気体を含まない評価用気体であって、前記室内気体と同温度とされた評価用気体に曝した状態で当該ガスセンサを評価するガスセンサの評価方法である。
【0016】
前述のように、一般的な環境試験器を用いてガスセンサの評価を行うと、その収容室内の室内気体に含まれるガス成分がガスセンサの感ガス部に影響を及ぼし、ガスセンサの評価を適切に行えない場合がある。
これに対し、本発明の評価方法では、収容室の室内気体を含まない評価用気体をガスセンサの感ガス部に曝した状態でガスセンサの評価を行うので、感ガス部に影響を及ぼすガス成分が含まれている可能性がある室内気体の影響を受けることなく、適切にガスセンサを評価できる。しかも、評価用気体の温度を室内気体の温度と同じにしているので、評価用気体と室内気体の温度が異なることで生じる熱応力、結露等、室内気体にガスセンサ全体を曝した場合とは異なる熱的現象が生じるのを防止できる。
【0017】
更に、上記のガスセンサの評価方法であって、前記評価用気体を、前記室内気体との熱交換により、前記室内気体と同温度とするガスセンサの評価方法とすると良い。
【0018】
本発明の評価方法では、室内気体との熱交換により評価用気体を室内気体と同温度とするので、環境試験器自体の有する温度調節機能を用いることで、容易に評価用気体を室内気体と同温度とすることができる。また、評価用気体及び室内気体の温度を変更する場合にも、両者を同温度に保ったまま容易に温度を変更できる。
【0019】
なお、室内気体との熱交換により評価用気体を室内気体と同温度とする方法としては、前述したように、評価用気体包囲体の一部を、広い面積に亘り評価用気体と室内気体とが熱交換壁を介して隣り合う形態の熱交換構造として、室内気体との熱交換により、評価用気体の温度を室内気体と同温度とする方法が挙げられる。なお、室内気体との熱交換により評価用気体を室内気体と同温度とするにあたり、予め、ヒータや冷却器などの温度調節手段により、評価用気体の温度を室内気体の温度と同程度としておくこともできる。
【0020】
更に、上記のいずれかに記載のガスセンサの評価方法であって、前記ガスセンサを駆動状態に維持し続けるガスセンサの評価方法とすると良い。
【0021】
ガスセンサの感ガス部は、ガスセンサを駆動状態としている場合に、特に、被毒など、特定ガス成分の影響を受けやすい。
これに対し、本発明の評価方法では、前述したように、感ガス部が室内気体の影響を受けないので、ガスセンサを駆動状態に維持し続けるいわゆる負荷試験においても、被毒などの影響を受けることなく、適切にガスセンサを評価できる。
【0022】
更に、上記にいずれかに記載のガスセンサの評価方法であって、前記ガスセンサの前記感ガス部は、酸化物半導体からなる感ガス膜を含み、前記環境試験器は、前記室内気体にシリコンが混入する材質からなる部材を有するガスセンサの評価方法とすると良い。
【0023】
環境試験器がその収容室の室内気体にシリコンが混入する材質からなる部材を有する場合には、ガスセンサの評価中の室内気体にもシリコンが含まれることになる。一方、ガスセンサの感ガス部が酸化物半導体からなる感ガス膜を有する場合には、シリコンによって被毒し、その特性が劣化し易い。従って、この環境試験器の収容室内にこのガスセンサを配置して感ガス膜に室内気体が触れるようにしたのでは、シリコン被毒による耐性劣化とガスセンサの評価方法による特性変化とを区別できず、ガスセンサの評価を適切に行うことができない。
これに対し、本発明の評価方法では、環境試験器として室内気体にシリコンが混入する材質からなる部材を有するものを用いながらも、評価用気体には室内気体を含まないため、即ち、評価用気体にはシリコンを含まないため、酸化物半導体からなる感ガス膜がシリコン被毒によって特性劣化することがない。このため、シリコン被毒による影響を受けることなく、温度や湿度などの環境因子による感ガス膜の特性劣化など、ガスセンサの状態を適切に評価することができる。
【0024】
更に、上記のいずれかに記載のガスセンサの評価方法であって、前記評価用気体に、1または複数の特定ガス成分を所定の濃度パターンで含ませて行うガスセンサの評価方法とすると良い。
【0025】
本発明では、評価用気体に特定ガス成分を所定の濃度パターンで含ませて評価試験を行うので、例えば、実際の使用環境に近いガス条件でガスセンサを評価できるなど、所望のガス環境下でガスセンサをより適切に評価できる。
なお、「特定ガス成分」としては、感ガス部が検知可能な検知ガス成分や、感ガス部が被毒し得る被毒ガス成分などが挙げられる。
また、特定ガス成分を含ませる所定の「濃度パターン」としては、特定ガス成分の濃度を一定に保つ他、特定ガス成分の濃度を時間と共に一方向に或いは繰り返し変化させるものが挙げられる。濃度変化のパターンとしては、更に具体的には、ガス濃度の高い状態と低い状態とを矩形波状に繰り返すパターンや、ガス濃度の上昇と低下を三角波状に繰り返すパターンなどが挙げられる。また、特定ガス成分を所定の濃度パターンで含ませて行う態様としては、評価試験の全期間において、特定ガス成分を所定の濃度パターンで含ませる態様と、評価試験の一部の期間においてのみ、特定ガス成分を所定の濃度パターンで含ませる態様が挙げられる。
【0026】
また、他の解決手段は、感ガス部を有するガスセンサの評価装置であって、前記ガスセンサを収容可能な収容室を有し、この収容室内の室内気体によりこの収容室内を第1所定温度環境に保持可能な環境試験器と、少なくとも一部が前記収容室内に配置されてなり、前記室内気体を含まない評価用気体を包囲すると共に、前記収容室に対し気密とされた評価用気体包囲体であって、前記感ガス部への前記評価用気体の接触を可能とする気体曝露部を有する評価用気体包囲体と、前記評価用気体のうち少なくとも前記気体曝露部に流通させる評価用気体の温度を、第2所定温度とする評価用気体第2温度化手段と、を備えるガスセンサの評価装置である。
【0027】
本発明の評価装置は上述の構成を有しているので、この評価装置を用いてガスセンサの評価を行えば、その間、ガスセンサの感ガス部は、収容室の室内気体を含まない評価用気体に曝されることとなり、室内気体には曝されない。このため、例えば、この環境試験器にシリコンゴムからなるシール材を用いるなど、シリコン、その他の感ガス部の特性や耐久性に影響を与えるガス成分を発生する部材を、このようなガス成分が室内気体に含まれる形態で使用しても、ガスセンサの評価を適切に行うことができる。従って、評価装置、特に、環境試験器を構成する各部材の材質選択が容易である。しかも、評価用気体第2温度化手段を備えるので、評価用気体のうち少なくとも気体曝露部に流通させる評価用気体の温度を第2所定温度とすることができる。このため、ガスセンサの感ガス部を、所望の第2所定温度とした評価用気体に曝した状態で、ガスセンサの評価を行うことができる。
【0028】
「評価用気体第2温度化手段」としては、評価用気体のうち少なくとも気体曝露部に流通させる評価用気体の温度を第2所定温度とすることができるものであればよく、例えば、評価用気体包囲体の一部を加熱して評価用気体を間接的に加熱するヒータや、評価用気体包囲体の一部を冷却して評価用気体を間接的に冷却する冷却器などの、評価用気体の温度を調節する評価用気体温度調節手段が挙げられる。なお、評価用気体第2温度化手段は、その一部または全体が評価用気体包囲体に含まれるものでもよいし、評価用気体包囲体には含まれずに独立して存在するものでもよい。
【0029】
更に、上記のガスセンサの評価装置であって、前記評価用気体第2温度化手段は、前記評価用気体の前記第2所定温度を、前記室内気体の前記第1所定温度と同温度とする評価用気体同温度化手段であるガスセンサの評価装置とすると良い。
【0030】
本発明では、評価用気体同温度化手段により、評価用気体の温度(第2所定温度)を室内気体の温度(第1所定温度)と同温度にできるので、評価用気体の温度が室内温度と異なることで生じる熱応力、結露等、室内気体にガスセンサ全体を曝した場合とは異なる熱的現象が生じるのを防止し、ガスセンサについて適切な評価を行うことができる。
【0031】
「評価用気体同温化手段」としては、評価用気体のうち少なくとも気体曝露部(気体供給部)に流通させる評価用気体の温度を室内気体と同温度とすることができるものであればよく、例えば、評価用気体包囲体の一部を加熱して評価用気体を間接的に加熱するヒータや、評価用気体包囲体の一部を冷却して評価用気体を間接的に冷却する冷却器などの、評価用気体の温度を調節する評価用気体温度調節手段が挙げられる。また、評価用気体包囲体の一部を、長い筒状(例えば直線状や螺旋状など)やラジエター形状など、広い面積に亘り評価用気体と室内気体とが熱交換壁を介して隣り合う形態の熱交換器構造とし、この熱交換部を評価用気体同温化手段とすることができる。これによれば、室内気体との熱交換により評価用気体の温度を室内気体と同温度とすることができる。更には、上述の評価用気体温度調節手段により評価用気体の温度を室内気体の温度に近づけておいて、その後、評価用気体包囲体のうち熱交換器構造とした熱交換部により、評価用気体の温度を室内気体と同温度とするなど、これらを組み合わせたものを評価用気体同温化手段とすることができる。
【0032】
また、感ガス部を有するガスセンサの評価装置であって、前記ガスセンサを収容可能な収容室を有し、この収容室内の室内気体によりこの収容室内を所定温度環境に保持可能な環境試験器と、少なくとも一部が前記収容室内に配置されてなり、前記室内気体を含まない評価用気体を包囲すると共に、前記収容室に対し気密とされた評価用気体包囲体であって、前記評価用気体を流通させて前記感ガス部への接触を可能とする気体供給部を有する評価用気体包囲体と、前記評価用気体のうち少なくとも前記気体供給部に流通させる評価用気体の温度を、前記室内気体と同温度とする評価用気体同温度化手段と、を備えるガスセンサの評価装置とするのが好ましい。
【0033】
この評価装置は上述の構成を有しているので、この評価装置を用いてガスセンサの評価を行えば、その間、ガスセンサの感ガス部は、収容室の室内気体を含まない評価用気体に曝されることとなり、室内気体には曝されない。このため、例えば、この環境試験器にシリコンゴムからなるシール材を用いるなど、シリコン、その他の感ガス部の特性や耐久性に影響を与えるガス成分を発生する部材を、このようなガス成分が室内気体に含まれる形態で使用しても、ガスセンサの評価を適切に行うことができる。従って、評価装置、特に、環境試験器を構成する各部材の材質選択が容易である。しかも、評価用気体同温化手段を備えるので、評価用気体のうち少なくとも気体供給部に流通させる評価用気体の温度を室内気体と同温度とすることができる。このため、評価用気体の温度が異なることで生じる熱応力、結露等、室内気体にガスセンサ全体を曝した場合とは異なる熱的現象が生じるのを防止し、ガスセンサについて適切な評価を行うことができる。
【0034】
更に、上記のガスセンサの評価装置であって、前記評価用気体包囲体は、前記評価用気体と前記室内気体との熱交換を行わせる熱交換部を有し、前記評価用気体同温度化手段は、この熱交換部を含むガスセンサの評価装置とすると良い。
【0035】
本発明の評価装置は、評価用気体同温化手段に、熱交換部(例えば、前述した長い筒状やラジエター形状などの熱交換器構造とした熱交換部)を含むので、環境試験器自身の有する室内気体の温度調節機能を用いて、容易に、評価用気体を室内気体と同温度とすることができる。また、評価用気体及び室内気体の温度を変更する場合にも、両者を同温度に保ったまま容易に温度を変更できる。
【0036】
更に、上記のいずれかに記載のガスセンサの評価装置であって、前記評価用気体包囲体は、前記環境試験器外で外部に開放されてなり、前記環境試験器外の外気を前記評価用気体として導入する外気導入手段を備え、前記評価用気体第2温度化手段は、前記環境試験器外に、前記評価用気体包囲体内に導入された前記評価用気体を、前記第2所定温度に近づけるまたは前記第2所定温度とする評価用気体温度調整手段を有するガスセンサの評価装置とすると良い。
【0037】
評価用気体が静止或いは循環しているだけで、外気が導入されない形態の評価用気体包囲体等を用いた場合には、時間の経過と共に評価用気体包囲体、ガスセンサ等の各部(例えば高温に曝された部分)から発生するガス成分が次第に蓄積し、その影響でガスセンサの特性や耐久性に影響が生じるおそれがある。
同様に、環境試験器の室内気体についても、収容室の壁材や扉、扉と壁材との隙間を埋めるシール材など、或いは壁材等に付着した物質などから発生するガス成分が次第に蓄積する場合がある。しかるに、環境試験器の室内気体として、環境試験器外の外気を大量に導入し続けることは、室内温度によっては、環境試験器のヒータや冷却器の能力を超えるために困難となる。また、所定温度環境を維持するためのエネルギーロスも大きい。
【0038】
これに対し、本発明の評価装置では、環境試験器外の外気を評価用気体包囲体内に導入するので、ガスセンサの評価中、ガスセンサの感ガス部に新鮮な外気を供給できる。このため、評価用気体包囲体等でたとえ何らかのガス成分が発生したとしても、それが蓄積しないので、ガスセンサの特性や耐久性に及ぼす影響を無くす、或いはごく少なくすることができる。また、評価用気体として外気を導入するので、この外気(評価用気体)を加熱或いは冷却するエネルギーが、環境試験器の室内気体として外気を導入し続ける場合よりも少なくて済む。
【0039】
更に、上記のいずれかに記載のガスセンサの評価装置であって、前記環境試験器は、前記室内気体にシリコンが混入する材質からなる部材を有し、前記評価用気体包囲体は、前記評価用気体にシリコンが混入しない材質からなるガスセンサの評価装置とすると良い。
【0040】
環境試験器がその収容室内の室内気体にシリコンが混入する材質からなる部材を有する場合には、ガスセンサの評価中の室内気体にもシリコンが含まれることになる。ところで、ガスセンサの感ガス部が酸化物半導体からなる感ガス膜を有する場合には、シリコンによって被毒し、その特性が劣化し易い。従って、この環境試験器の収容室内にガスセンサを配置し感ガス膜に室内気体が触れる状態としたのでは、シリコン被毒の影響が加わるので、適切にガスセンサを評価することができない。
【0041】
これに対し、本発明の評価装置は、環境試験器には室内気体にシリコンが混入する材質からなる部材を用いている。しかし、評価用気体に接触する評価用気体包囲体は、評価用気体にシリコンが混入しない材質からなる。従って、感ガス膜が酸化物半導体からなるガスセンサの評価に本発明の評価装置を用いた場合でも、シリコンが混入した室内気体によって感ガス膜がシリコン被毒し特性劣化することを防止できる。このため、この評価装置では、シリコン被毒による影響を受けることなく、温度や湿度などの環境因子による感ガス膜の特性劣化など、ガスセンサの状態を適切に評価することができる。
【0042】
更に、上記のいずれかに記載のガスセンサの評価装置であって、前記評価用気体に、1または複数の特定ガス成分を有する特定気体を加える特定気体添加手段を備えるガスセンサの評価装置とすると良い。
【0043】
本発明の評価装置は、特定気体添加手段により、評価用気体に特定ガス成分を有する特定気体を加えることができるので、例えば、特定ガス成分の濃度の増減を繰り返すことにより、実際の使用環境に近いガス条件でガスセンサを評価できるなど、所望のガス環境下でガスセンサをより適切に評価できる。
なお、「特定ガス成分」としては、感ガス部が検知可能な検知ガス成分や、感ガス部が被毒し得る被毒ガス成分などが挙げられる。また、特定気体中における特定ガス成分の濃度は、適宜変更できる。
【0044】
更に、上記のガスセンサの評価装置であって、前記気体曝露部は、前記評価用気体が導入される気体導入部を有し、前記特定気体添加手段を、前記評価用気体包囲体のうち、前記気体導入部またはその近傍に接続してなるガスセンサの評価装置とすると良い。
【0045】
例えば、ガスセンサの応答性を評価するにあたり、評価試験中に、評価用気体に特定気体を含ませる場合と、評価用気体に特定気体を含ませない場合とを、急激に(ステップ状に)切り替えたい(濃度を変化させたい)場合がある。また、評価試験中に、評価用気体に第1の特定気体を含ませる場合と、評価用気体に第1の特定気体とは異なる第2の特定気体を含ませる場合とを、急激に(ステップ状に)切り替えたい場合もある。このように特定気体の有無や種類を切り替えて、応答性などの評価試験を行う場合には、ガスセンサをより適切に評価するために、評価用気体に特定気体を加えてから、ガスセンサの感ガス部に届くまでの流路及び時間をできる限り短くしたい。また、評価用気体への特定気体の添加を止めてから、特定ガス成分が無い評価用気体が感ガス部に届くまでの時間をできる限り短くしたい。特定ガス成分の濃度が急激に変化した評価用気体が、ガスセンサに届くようにしたいからである。
なお、特定気体の濃度を徐々に変化させる場合も、変化の度合いを(変化率)をコントロールしたい点で同様である。
【0046】
本発明の評価装置では、特定気体添加手段が、評価用気体包囲体のうち、気体導入部またはその近傍に接続されているので、気体導入部またはその近傍で、評価用気体に特定気体を加えることができる。このため、特定気体を評価用気体に含ませてから、この評価用気体がガスセンサの感ガス部に達するまでの流路及び時間が短くなる。従って、感ガス部における特定気体の濃度を急激に(ステップ状に)変化させるなど、評価用気体中の特定ガス成分の濃度を適切に変化させることができる。よって、ガスセンサの応答性等の特性をより適切に評価することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
(実施形態1)
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。図1に本実施形態1に係るガスセンサの耐久試験装置(ガスセンサの評価装置)100(以下、単に耐久試験装置100とも言う。)の概略構成を示す。また、図2にこの耐久試験装置100のうち、ガスセンサ200を取り付けた状態における気体供給部(気体曝露部)140を示す。
図1に示すように、耐久試験装置100は、収容室111を有する恒温恒湿槽(環境試験器)110と、気体供給部140を含む評価用気体包囲体120と、熱交換部131等を含む評価用気体同温化手段(評価用気体第2温度化手段)170と、コンプレッサを有する外気導入手段190とを備える。
【0048】
このうち、恒温恒湿槽110は、図示しないヒータ、冷却機、加湿機などにより、収容室111内に存在する室内気体SAの温度及び湿度を調整する温度・湿度調節機能を有しており、例えば、湿中負荷試験などの耐久試験中、収容室111内を所定温度(第1所定温度)・湿度環境に保持、或いは所定パターンに変化させることができる。収容室111を構成する扉113と壁材114との隙間には、シリコンを有するシリコンゴムからなるシール部材115が介在されている。このシール部材115からはごく僅かながらシリコンが徐々に放出されるので、室内気体SAにはシリコンが混入する。
【0049】
一方、この耐久試験装置100で耐久試験(耐久性の評価)が施される、後述するガスセンサ200のセンサ素子240は、酸化物半導体からなる感ガス膜(感ガス部)243を有する(図4参照)。このため、シリコンを含む室内気体SA中にガスセンサ200を配置し、室内気体SAを感ガス膜243に接触させると、感ガス膜243がシリコン被毒し、ガスセンサ200の特性が徐々に劣化する。従って、この恒温恒湿槽110の収容室111に単にガスセンサ200を配置しただけでは、ガスセンサ200の耐久試験を適切に行うことができない。この耐久試験においてたとえガスセンサ200に特性劣化が認められた場合でも、それが温度や湿度によるセンサの劣化であるのか、それともシリコン被毒によるものであるのかを的確に区別できないからである。
【0050】
次に、評価用気体包囲体120について説明する。評価用気体包囲体120は、一部が恒温恒湿槽110の収容室111の内部に配置され、一部が恒温恒湿槽110の外部に配置されて外部に開放されている。評価用気体包囲体120は、室内気体SAを含まない恒温恒湿槽110外の外気を評価用気体GAとして包囲すると共に、恒温恒湿槽110の収容室111に対して気密に構成されている。
評価用気体包囲体120は、恒温恒湿槽110の外部に配置される室外メイン配管121と、同じく恒温恒湿槽110の外部に配置される室外サブ配管123と、同じく恒温恒湿槽110の外部に配置され、評価用気体GAに所定の湿度を付与するための湿度付与水槽125と、同じく恒温恒湿槽110の外部に配置され、外気を評価用気体GAとして導入する外気導入手段190とを有する。また、評価用気体包囲体120は、恒温恒湿槽110の収容室111の内部に配置される室内配管131と、同じく収容室111の内部に配置され、ガスセンサ200の感ガス膜243に評価用気体GAを供給する気体供給部140とを有する。
【0051】
このうち、室外メイン配管121は、テフロン(登録商標)からなり、その一端が外気導入手段190に気密に接続され、他端が室内配管131に気密に接続されている。また、外気導入手段190は、コンプレッサを有し、新鮮な外気を評価用気体GAとして、この室外メイン配管121に導入することができる。
室外サブ配管123も、テフロン(登録商標)からなり、その両端は室外メイン配管121の所定位置に気密に接続されている。また、その中間に湿度付与水槽125が気密に接続されている。この湿度付与水槽125には純水JSが入れられ、この純水JS内に評価用気体GAを通過させることにより、評価用気体GAに所定の湿度を付与できる。具体的には、室外メイン配管121に流通させる評価用気体GAの流量と、室外サブ配管123に流通させる評価用気体GAの流量とを調整することにより、評価用気体GAに付与する湿度を所定の値に調整することができる。なお、これら室外メイン配管121、室外サブ配管123、湿度付与水槽125及び外気導入手段190は、いずれもシリコンを含まない材質からなるので、これらの部材から評価用気体GAにシリコンが混入することはない。
【0052】
室内配管131は、テフロン(登録商標)からなり、中央部分が螺旋状とされ、全長12m程度の長さを有し、その一端が上述したように室外メイン配管121に気密に接続され、他端が気体供給部140の気体導入部142に気密に接続されている。この室内配管131は、上記のように全長が長く、広い面積に亘り評価用気体GAと室内気体SAとが熱交換壁(配管)を介して隣り合う形態をなす熱交換部でもある。従って、耐久試験中、評価用気体GAと室内気体SAと間で熱交換が行われ、評価用気体GAは室内気体SAと同温度とされる。この室内配管131も、シリコンを含まない材質からなるので、ここから評価用気体GAにシリコンが混入することもない。また、室内配管131は、収容室111(室内気体SA)とは気密にされ、評価用気体GAに室内気体SAが混入することはないので、評価用気体GAに室内気体SAを通じてシリコンが混入することもない。
【0053】
気体供給部140は、図2に示すように、評価用気体GAを流通させて、これに取り付けたガスセンサ200の感ガス膜243(図4参照)に評価用気体GAを接触させることができる。
気体供給部140は、アルミ合金またはステンレス合金からなるガスチャンバ141を10個有する。1つのガスチャンバ141には、2つのガスセンサ200がそれぞれ取り付けられるので、この気体供給部140には、20個のガスセンサ200が同時に取り付けられる。各々のガスチャンバ141は、テフロン(登録商標)からなる供給部配管143を介して直列に接続されている。具体的には、ガスチャンバ141は5個ずつ供給部配管143を介して直線状に接続され、更にこれらは供給部配管143を介して2列に並べられている。
【0054】
また、気体供給部140は、ガスセンサ200をガスチャンバ141に取り付ける際に、ガスセンサ200を載置する板状の載置台145と、ガスセンサ200に当接し、ガスチャンバ141との間でガスセンサ200を挟持して固定する板状のセンサ挟持部147とを備える。各々のセンサ挟持部147は、一列に並べられた5個のガスチャンバ141に取り付けられる10個のガスセンサ200のうち、各ガスチャンバ141に対して同じ方向に取り付けられる5個のガスセンサ200を、同時に保持できる形態とされている。
【0055】
次に、ガスチャンバ141について具体的に説明する。図3(a)にガスチャンバ141の斜視図を示し、図3(b)にガスチャンバ141の図3(a)の上方から見た平面図を示し、図3(c)にガスチャンバ141の図3(b)のc−c断面における断面図を示す。ガスチャンバ141は、外形円柱状をなしており、その内部に評価用気体GAを充填可能なガス室151が構成されている。また、ガスチャンバ141には、ガス室151に繋がるガス挿入口153,153が対向して二カ所に形成されている。このガス挿入口153,153には、供給部配管143が接続され(図2参照)、一方のガス挿入口153を通じて評価用気体GAがガス室151に取り入れられ、他方のガス挿入口153を通じて評価用気体GAがガス室151から排出される。
【0056】
更に、ガスチャンバ141には、ガスセンサ200を取り付けた際に、ガスセンサ200に評価用気体GAを供給するため、ガス室151に繋がるセンサ挿通口155,155が対向して二カ所に形成されている。そして、このセンサ挿通孔155,155を取り囲むガスチャンバ141の外表面には、図3(c)に示すように、ガスチャンバ141とガスセンサ200との密着性を向上させるための フッ素ゴムからなるリング状のパッキン157,157が配置されている。なお、上記のように気体供給部140を構成する各部材も、シリコンを含まない材質からなるので、この気体供給部140で評価用気体GAにシリコンが混入することもない。
【0057】
このような評価用気体包囲体120により、耐久試験中、ガスセンサ200の感ガス膜243は、収容室111の室内気体SAには曝されずに、室内気体SAを含まない評価用気体GAにのみ曝されることとなる。このため、室内気体SAに含まれるシリコン成分などの影響を受けることなく、ガスセンサ200の耐久試験を適切に行うことができる。
また、外気導入手段190により、恒温恒湿槽110外の外気を評価用気体GAとして評価用気体包囲体120内に導入できるので、耐久試験中は、ガスセンサ200の感ガス膜243に新鮮な評価用気体GAを供給し続けることができる。このため、評価用気体包囲体120からたとえ何らかのガス成分が発生したとしても、それが蓄積しないので、耐久試験中においてガスセンサ200の特性や耐久性に及ぼす影響を無くす、或いはごく少なくすることができる。また、評価用気体GAとして少量の外気を導入すれば足りるので、評価用気体包囲体120が無く恒温恒湿槽110で発生するガス成分の影響を抑えるべく、恒温恒湿槽110の室内気体SAとして大量の外気を導入し続ける場合に比べ、外気(評価用気体GA)を加熱するエネルギーが少なくて済む。
【0058】
次に、図1に戻り、耐久試験装置100のその他の部分について説明する。
評価用気体同温化手段170は、熱交換部でもある前述の室内配管131と、室外メイン配管用ヒータ171と、湿度付与水槽用ヒータ173とを有する。このうち、室外メイン配管用ヒータ171及び湿度付与水槽用ヒータ173が本発明の評価用気体温度調節手段に相当する。室外メイン配管用ヒータ171は、恒温恒湿槽110の外部において、前述の室外メイン配管121に取り付けられ、この室外メイン配管121内を流通する評価用気体GAを加熱することができる。また、湿度付与水槽用ヒータ173は、恒温恒湿槽110の外部において、前述の湿度付与水槽125に取り付けられ、内部の純水JSを加熱する。これにより、この湿度付与水槽125を通る評価用気体GAの温度及び湿度(含ませる水蒸気量)を調整することができる。
【0059】
耐久試験中は、評価用気体同温化手段170のうち、評価用気体温度調節手段(室外メイン配管用ヒータ171及び湿度付与水槽用ヒータ173)により、評価用気体GAの温度及び湿度を室内気体SAの温度及び湿度に近づけ、更に、熱交換部(室内配管)131により、評価用気体GAの温度(第2所定温度)を室内気体SAの温度(第1所定温度)と同温度とすることができる。従って、ガスセンサ200が取り付けられる気体供給部140には、室内気体SAと同温度とした評価用気体GAを流通させることができる。このため、耐久試験中に、評価用気体GAの温度が異なることで生じる熱応力等、室内気体SAにガスセンサ200全体を曝した場合とは異なる熱的現象が生じるのを防止し、ガスセンサ200について適切な耐久試験を行うことができる。また、評価用気体同温化手段170に熱交換部(室内配管)131を有するので、恒温恒湿槽110自身の有する室内気体SAの温度調節機能を用いて、容易に、評価用気体GAを室内気体SAと同温度とすることができる。
【0060】
次いで、この耐久試験装置100を用いて耐久試験を行うガスセンサ200について説明する。図4にこのガスセンサ200の分解斜視図を示す。
図4に示すように、ガスセンサ200は、センサユニット201とケーシング210とからなる。このうちセンサユニット201は、配線基板203と、この配線基板203に組み付けられたセンサ素子モジュール205と、配線基板203に組み付けられ、センサ素子モジュール205からの出力信号を処理するセンサ出力処理回路部207とを有する。このうちセンサ素子モジュール205は、被検知ガスを取り入れるガス取入口205bが形成されたプラスチック製のキャップ205cの内部に、排気ガス成分(NOxなどの酸化性ガス成分やCO,HCなどの還元性ガス成分)の吸着により電気抵抗値を変化させる感ガス膜243,243を有するセンサ素子240が組み込まれることにより構成されている。
【0061】
センサ素子240は、絶縁基板247を有し、この絶縁基板247の表面の所定位置には、感ガス膜243,243が2つ設けられている。この感ガス膜243,243は、CO等の還元性ガスの濃度変化に応じて電気抵抗値が変化するSnO2 を主体とした第1感ガス膜と、NO2 等の酸化性ガスの濃度変化に応じて電気抵抗値が変化するWO3 を主体とした第2感ガス膜とからなる。また、絶縁基板247のうち、感ガス膜243,243が形成された表面には、感ガス膜243,243を活性温度に加熱するためのヒータ245が設けられている。
上述のように、センサ素子240は酸化物半導体からなる感ガス膜243を有しているので、このガスセンサ200は、測定気体中にシリコンが含まれていると、感ガス膜243がシリコンによって被毒し、その特性が劣化する性質を有している。
【0062】
次に、ケーシング210について説明する。ケーシング210は、本体部材211と蓋213を有する。
蓋213は、被検知ガスを内部(センサ素子モジュール205内)に取り込むための平面視円形状のガス入口孔221を有する。このガス入口孔221は、ポリテトラフルオロエチレンの多孔質繊維構造体の撥水性高分子材料からなり、薄いシート状をなす通気性及び撥水性を兼ね備えたフィルタ223により閉塞されている。
【0063】
本体部材211には、底壁227及び側壁229により凹状のガス収容部231が構成されている。また、側壁229の外面からは、筒状のコネクタ外装部233が突出しており、その内側には、センサユニット201のセンサ出力処理回路部207からの信号を外部に取り出すための金属端子(図示せず)が突出している。また、側壁229の外面からは、自動車のフロントグリル後部等に形成された図示しない取付部に、このガスセンサ200を取り付けるためのセンサ取付部235が延出している。
【0064】
次いで、このような耐久試験装置100及びガスセンサ200を用いたガスセンサの耐久試験方法(ガスセンサの評価方法)について説明する。
まず、ガスセンサ200を耐久試験装置100のうち恒温恒湿槽110内の気体供給部140に装着する。具体的には、ガスセンサ200の蓋213がガスチャンバ141のパッキン157に当接するようにして、ガスセンサ200を載置台145上に配置する(図2及び図3参照)。この際、蓋213のガス入口孔221がガスチャンバ141のセンサ挿通口155と対向するように配置する。また、1つのガスチャンバ141に対向して取り付けられる2つのガスセンサ200のコネクタ外装部233は、同一方向(図2中、紙面表向き)を向くようにして配置する。
【0065】
そして、複数のガスセンサ200を載置台145上に配置した状態で、ガスセンサ200の本体部211に対してセンサ挟持部147を当接させ、更にはセンサ挟持部147をガスチャンバ141側に押圧しつつ、載置台145に対してセンサ挟持部147を係止させることで、ガスセンサ200をガスチャンバ141とセンサ挟持部147とにより挟持する。この際、ガスチャンバ141のパッキン157,157が弾性変形するので、ガス室151の評価用気体GAがガスチャンバ141の外部に漏れること、及び、室内気体SAがガスチャンバ141内に混入することを防止できる。そして、各々のガスセンサ200のコネクタ外装部233に、外部回路に繋がる雌コネクタ部149を接続する。
【0066】
次に、外気導入手段190を制御して、評価用気体包囲体120に外気を評価用気体GAとして導入する。評価用気体包囲体120に導入された評価用気体GAは、室外メイン配管121を通り、また、室外サブ配管123及び湿度付与水槽125を通り、更に、室内配管131を通って、気体供給部140に供給される。そして、評価用気体GAは、気体供給部140内を流通して、気体供給部140のうちの各ガスチャンバ141から、そこに装着したガスセンサ200のセンサ素子240(感ガス膜243)に供給される。
【0067】
前述したように、評価用気体包囲体120は、恒温恒湿槽110の収容室111に対して気密にされているので、外気導入手段190によって導入された新鮮な外気(評価用気体GA)に、収容室111の室内気体SAが混ざることはない。従って、ガスセンサ200の感ガス膜243は、室内気体SA、従ってシリコンを含まない評価用気体GAに曝される。
【0068】
また、外気導入手段190と共に、評価用気体同温化手段(評価用気体第2温度化手段)170のうち、評価用気体温度調節手段(室外メイン配管用ヒータ171及び湿度付与水槽用ヒータ173)も制御して、室外メイン配管121内を流通する評価用気体GAを加熱すると共に、湿度付与水槽125内の純水JSを加熱する。これにより、室内配管131に導入される評価用気体GAが加熱及び加湿される。本実施形態1では、評価用気体温度調節手段170より、評価用気体GAが温度約80℃、相対湿度90%RHまで加熱・加湿される。
【0069】
次に、恒温恒湿槽110を操作して、その収容室111内の室内気体SAの温度及び湿度を所定の値(本実施形態1では85℃(第1所定温度)、90%RH)とする。
室内配管131に導入された評価用気体GAは、12mに亘るこの室内配管(熱交換部)131によって、収容室111内の室内気体SAとの熱交換が行われる。これにより、評価用気体GAの温度(第2所定温度)は、室内気体SAと同温度(本実施形態1では85℃)となる。従って、ガスセンサ200の感ガス膜243は、室内気体SAと同温度及び同湿度とされた評価用気体GAに曝される。
なお、本実施形態1では、ガスセンサ200に供給される評価用気体GAは、温度(第2所定温度)を85℃、相対湿度を90%RH、流速を1分あたり1リットルとしている。
【0070】
恒温恒湿槽110の収容室111内が85℃、90%RHに保持され、評価用気体GAが85℃、90%RHまで加熱・加湿されたら、ガスセンサ200に通電を開始し放置する。この耐久試験中、各ガスセンサ200のセンサ素子240の感ガス膜243,243が活性化状態となるように、センサ素子240に形成されたヒータ245を通電状態とし、2つの感ガス膜243,243を加熱して、ガスセンサ200を駆動状態に維持し続ける。そして、この状態で800時間放置することにより、ガスセンサ200の耐久試験(高温湿中負荷試験)を行う。
この耐久試験が終了した後は、ガスセンサ200を気体供給部140から取り外し、恒温恒湿槽110の収容室111から取り出す。
【0071】
この耐久試験方法(評価方法)では、収容室111の室内気体SAを含まない評価用気体GAをガスセンサ200の感ガス膜243に曝した状態で行うので、シリコンなど感ガス膜243に影響を及ぼすガス成分が含まれている可能性がある室内気体SAの影響を受けることなく、適切に耐久試験を行うことができる。しかも、評価用気体GAの温度及び湿度を室内気体SAの温度及び湿度と同じにしているので、評価用気体GAと室内気体SAの温度及び湿度が異なることで生じる熱応力等、室内気体SAにガスセンサ200全体を曝した場合とは異なる熱的現象が生じるのを防止できる。
【0072】
特に本実施形態1では、恒温恒湿槽110の収容室111にシリコンゴムからなるシール部材151が用いられているため、室内気体SAにシリコンが混入するおそれがあり、一方で、ガスセンサ200を構成するセンサ素子240が酸化物半導体からなる感ガス膜243,243を有するため、測定ガス中にシリコンが存在すると被毒し、その特性が劣化する。
これに対し、本実施形態1では、前述のように、評価用気体GAが室内気体SAを含まないため、即ち、評価用気体GAがシリコンを含まないため、酸化物半導体からなる感ガス膜243,243がシリコン被毒によって特性劣化することがない。このため、シリコン被毒による影響を受けることなく、温度及び湿度の環境因子による感ガス膜243,243の劣化について、ガスセンサ200の耐久性を適切に試験し評価することができる。
【0073】
更に、本実施形態1では、室内気体SAとの熱交換により評価用気体GAを室内気体SAと同温度としているので、恒温恒湿槽110自体の有する温度調節機能を用いて、容易に評価用気体GAを室内気体SAと同温度とすることができる。
また、本実施形態1では、ガスセンサ200を駆動状態として耐久試験を行っているため、ガスセンサ200の感ガス膜243は被毒し易いところ、前述したように、感ガス膜243は室内気体SAの影響を受けない。従って、ガスセンサ200を駆動状態に維持し続けても、被毒の影響を受けることなく、適切な試験結果を得ることができる。
【0074】
(実施形態2)
次いで、第2の実施の形態について説明する。なお、上記実施形態1と同様な部分の説明は、省略または簡略化する。図5に本実施形態2に係るガスセンサの耐久試験装置(ガスセンサの評価装置)300(以下、単に耐久試験装置300とも言う。)の概略構成を示す。上記実施形態1では、外気導入手段190により導入した外気を評価用気体GAとしている。これに対し、本実施形態2では、外気導入手段190で導入した外気に、特定気体添加手段310により2種類の特定気体TA1,TA2を加えた気体を、評価用気体GAとする点が異なる。それ以外は、基本的に上記実施形態1と同様である。
【0075】
図5に示すように、耐久試験装置300は、恒温恒湿槽(環境試験器)110、評価用気体包囲体120、評価用気体同温化手段(評価用気体第2温度化手段)170、外気導入手段190、特定気体添加手段310等を備える。このうち、恒温恒湿槽110、評価用気体包囲体120、評価用気体同温化手段170及び外気導入手段190は、上記実施形態1(図1参照)と同様なものである。
【0076】
特定気体添加手段310は、酸化性ガス供給部311と、還元性ガス供給部312と、酸化性ガス供給部311に接続する酸化性ガス配管313と、還元性ガス供給部312に接続する還元性ガス配管314と、一端で酸化性ガス配管313及び還元性ガス配管314に接続すると共に、他端で室内配管131に接続する特定ガス配管325とを有する。また、酸化性ガス配管313の途中には、マスフローコントローラ315及び電磁弁317が設けられ、還元性ガス配管314の途中には、マスフローコントローラ316及び電磁弁318が設けられている。
【0077】
酸化性ガス供給部311は、恒温恒湿槽110の外部に配置され、ガスセンサ200の一方の感ガス膜243(図4参照)で検知可能な酸化性ガスを供給する。具体的には、N2 ガス中に、特定ガス成分(検知ガス成分)として500ppmのNO2 ガスを含ませた第1特定気体TA1を供給する。この酸化ガス供給部311から供給された第1特定気体TA1は、酸化性ガス配管313を介して、マスフローコントローラ315、更には、電磁弁317に流れる。この電磁弁317は、3方電磁弁であり、第1特定気体TA1を評価用気体GAに添加するために、第1特定気体TA1を特定ガス配管325に向けて流す場合と、第1特定気体TA1を外部に排出するために、第1特定気体TA1を酸化性ガス排出管321に流す場合とを切り替えることができる。
【0078】
一方、還元性ガス供給部312は、恒温恒湿槽110の外部に配置され、ガスセンサ200の他方の感ガス膜243(図4参照)で検知可能な還元性ガスを供給する。具体的には、N2 ガス中に、特定ガス成分(検知ガス成分)として2%のCOガスを含ませた第2特定気体TA2を供給する。この還元性ガス供給部312から供給された第2特定気体TA2は、還元性ガス配管314を介して、マスフローコントローラ316、更には、電磁弁318に流れる。この電磁弁318も、3方電磁弁であり、第2特定気体TA2を評価用気体GAに添加するために、第2特定気体TA2を特定ガス配管325に向けて流す場合と、第2特定気体TA2を外部に排出するために、第2特定気体TA2を還元性ガス排出管322に流す場合とを切り替えることができる。
【0079】
特定ガス配管325は、特定気体TA1,TA2を評価用気体GAに添加するために、評価用気体GAが流通する評価用気体包囲体120の室内配管131のうち、気体供給部140の気体導入部142の近傍に且つ気密に接続している。具体的には、特定ガス配管325は、全長12m程度の室内配管131のうち、気体供給部140(気体導入部142)から1m以内(具体的には10cm)の部位に接続している。
【0080】
本実施形態2では、このような特定気体添加手段310を備えることにより、評価用気体GAに、特定ガス成分(NO2 ガスまたはCOガス)を有する特定気体TA1,TA2を含ませることができる。従って、特定ガス成分を含む所望のガス環境下で耐久試験を行うことができ、ガスセンサ200を実使用に近いガス環境下でより適切に評価できる。
また、特定気体添加手段310は、評価用気体包囲体120のうち、気体供給部140の気体導入部142の近傍に接続されているので、ガスセンサ200に評価用気体GAを供給する直前で、評価用気体GAに特定気体TA1,TA2を加えることができる。こうすることにより、特定気体TA1,TA2を加えた、或いは、特定ガス気体TA1,TA2の添加を止めた評価用気体GAが、ガスセンサ200の感ガス膜243に達するまでの時間を短時間に抑えることができ、感ガス膜243における特定気体TA1,TA2の濃度を急激に(ステップ状に)変化させるなど、評価用気体GA中の特定気体TA1,TA2の濃度を適切に変化させることができる。
【0081】
なお、この特定気体添加手段310は、シリコンを含まない部材からなるので、これらの部材から特定気体TA1,TA2にシリコンが混入することはない。従って、耐久試験中、ガスセンサ200の感ガス膜243は、収容室111の室内気体SAには曝されずに、室内気体SAを含まず、シリコンを含まない評価用気体GAにのみ曝されることとなる。このため、室内気体SAに含まれるシリコン成分などの影響を受けることなく、ガスセンサ200の耐久試験を適切に行うことができる。
【0082】
次いで、この耐久試験装置300を用いたガスセンサ300の耐久試験方法(ガスセンサの評価方法)について説明する。
まず、上記実施形態1と同様に、ガスセンサ200を耐久試験装置300のうち恒温恒湿槽110内の気体供給部140に装着する。次に、外気導入手段190を制御して、評価用気体包囲体120に外気(評価用気体GA)を導入する。評価用気体包囲体120に導入された外気は、室外メイン配管121を通り、また、室外サブ配管123及び湿度付与水槽125を通り、更に、室内配管131を通って、気体供給部140に供給される。そして、この外気は、気体供給部140内を流通して、気体供給部140のうちの各ガスチャンバ141から、そこに装着したガスセンサ200のセンサ素子240(感ガス膜243)に供給される。
【0083】
また、上記実施形態1と同様に、評価用気体同温化手段(評価用気体第2温度化手段)170のうち、評価用気体温度調節手段(室外メイン配管用ヒータ171及び湿度付与水槽用ヒータ173)も制御して、室外メイン配管121内を流通する評価用気体GAを加熱すると共に、湿度付与水槽125内の純水JSを加熱する。これにより、室内配管131に導入される評価用気体GAが加熱及び加湿される。本実施形態2では、評価用気体温度調節手段170より、評価用気体GAが温度約30℃、相対湿度50%RHまで加熱・加湿される。
【0084】
また、上記実施形態1と同様に、恒温恒湿槽110を操作して、その収容室111内の室内気体SAの温度及び湿度を所定の値(本実施形態2では30℃(第1所定温度)、50%RH)とする。室内配管131に導入された評価用気体GAは、12mに亘るこの室内配管(熱交換部)131によって、収容室111内の室内気体SAとの熱交換が行われる。これにより、評価用気体GAの温度(第2所定温度)は、室内気体SAと同温度(本実施形態2では85℃)となる。従って、ガスセンサ200の感ガス膜243は、室内気体SAと同温度及び同湿度とされた評価用気体GAに曝される。
【0085】
次に、恒温恒湿槽110の収容室111内が30℃、50%RHに保持され、評価用気体GAが30℃、50%RHまで加熱・加湿されたら、ガスセンサ200に通電を開始し放置する。この耐久試験中、各ガスセンサ200のセンサ素子240の感ガス膜243,243が活性化状態となるように、センサ素子240に形成されたヒータ245を通電状態とし、2つの感ガス膜243,243を加熱して、ガスセンサ200を駆動状態に維持し続ける。
【0086】
一方で、特定気体添加手段310のマスフローコントローラ315及び電磁弁317を制御して、酸化性ガス供給部311から、N2 ガス中に500ppmのNO2 ガスを含ませた第1特定気体TA1を供給させる。なお、マスフローコントローラ315を流れる第1特定気体TA1の流量が安定するまでは、第1特定気体TA1を酸化性ガス排出管321を通じて外部に排出するように、電磁弁317を制御する。第1特定気体TA1の流量が安定したら、電磁弁317を制御して、第1特定気体TA1を特定ガス配管325に流し、評価用気体包囲体120を流通する外気に添加する。これにより、評価用気体GA中の特定ガス成分(NO2 ガス)の濃度が急激に立ち上がって短時間のうちに2ppmとなる。
【0087】
評価用気体包囲体120及び特定気体添加手段310は、恒温恒湿槽110の収容室111に対して気密にされているので、特定ガス成分を含む評価用気体GAに、収容室111の室内気体SAが混ざることはない。従って、この試験中、ガスセンサ200の感ガス膜243は、室内気体SA、従ってシリコンを含まない評価用気体GAに曝すことができる。
【0088】
第1特定気体TA1を特定ガス配管325に供給してから20秒経過後、特定気体添加手段310を制御して、酸化性ガス供給部311からの第1特定気体TA1の供給を止める。これにより、評価用気体GA中の特定ガス成分(NO2 ガス)の濃度が急激に立ち下がって短時間のうちに特定ガス成分を含まない外気のみとなる。そして、この状態で5分間放置する。
【0089】
次に、特定気体添加手段310のマスフローコントローラ316及び電磁弁318を制御して、還元性ガス供給部312から、N2 ガス中に2%のCOガスを含ませた第2特定気体TA2を供給させる。なお、マスフローコントローラ316を流れる第2特定気体TA2の流量が安定するまでは、第2特定気体TA2を還元性ガス排出管322を通じて外部に排出するように、電磁弁318を制御する。第2特定気体TA2の流量が安定したら、再び電磁弁318を制御して、第2特定気体TA2を特定ガス配管325に流し、評価用気体包囲体120を流通する外気に添加する。これにより、評価用気体GA中の特定ガス成分(COガス)の濃度が急激に立ち上がって短時間のうちに100ppmとなる。
【0090】
第2特定気体TA2を特定ガス配管325に供給してから20秒経過後、特定気体添加手段310を制御して、還元性ガス供給部311からの第2特定気体TA2の供給を止める。これにより、評価用気体GA中の特定ガス成分(COガス)の濃度が急激に立ち下がって短時間のうちに再び特定ガス成分を含まない外気のみとなる。そして、この状態で5分間放置する。
【0091】
その後は、上述した(1)評価用気体GAがNO2 ガスを含む状態と、(2)評価用気体GAが外気のみからなる状態と、(3)評価用気体GAがCOガスを含む状態と、(4)評価用気体GAが外気のみからなる状態と、を繰り返し、この環境下でガスセンサ200を駆動状態に維持し続けて、ガスセンサ200の耐久試験を行う。なお、耐久試験は、全体で2000時間行う。
【0092】
この耐久試験方法(評価方法)では、収容室111の室内気体SAを含まない評価用気体GAをガスセンサ200の感ガス膜243に曝した状態で行うので、シリコンなど感ガス膜243に影響を及ぼすガス成分が含まれている可能性がある室内気体SAの影響を受けることなく、適切に耐久試験を行うことができる。しかも、評価用気体GAの温度及び湿度を室内気体SAの温度及び湿度と同じにしているので、評価用気体GAと室内気体SAの温度及び湿度が異なることで生じる熱応力等、室内気体SAにガスセンサ200全体を曝した場合とは異なる熱的現象が生じるのを防止できる。
【0093】
更に、本実施形態2では、感ガス膜243,243が検知可能な検知ガス成分(NO2 ガス,COガス)を有する特定気体TA1,TA2を評価用気体GAに加えるので、実際の使用環境に近いガス条件とすることができる。
その他、上記実施形態1と同様な部分は、上記実施形態1と同様な作用効果を奏する。
【0094】
以上において、本発明を実施形態1,2に即して説明したが、本発明は上述の実施形態1,2に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
例えば、実施形態1,2では、気体供給部140に同時に装着可能なガスセンサ200の個数を20個としているが、これに限ることなく、装着可能な個数は適宜変更できる。
また、実施形態1,2では、ガスセンサ200の耐久試験として、温度と相対湿度を所定の値に定めて実施したが、試験条件はこれに限られず、温度−40℃〜125℃、相対湿度0%RH〜95%RHの範囲内で実施することができる。また、室内気体SAの温度及び湿度と、評価用気体GAの温度及び湿度とを異ならせることもできる。なお、室内気体SAの温度や評価用気体GAの温度を常温以下に設定する場合には、室外メイン配管121や恒温恒湿層110に評価用気体GA、室内気体SAを冷却するための冷却手段を付設して実施すればよい。
更に、上記の実施形態1,2では、室外メイン配管121、室外サブ配管123、室内配管131をテフロン(登録商標)を用いて構成したが、材質はこれに限定されず、例えば、ステンレス合金により構成してもよい。
【0095】
また、実施形態2では、評価用気体GAに含ませる特定ガス成分として、ガスセンサ200の感ガス膜243,243で検知可能な検知ガス成分(具体的にはNO2 ガス及びCOガス)を用いた。しかし、添加する特定ガス成分はこれに限らず、目的に応じて適宜変更できる。例えば、感ガス膜243,243が被毒し得る被毒ガス成分、具体的には、ヘキサメチルジシラザンなどの有機シリコン等を特定ガス成分として用いることもできる。このように被毒ガス成分を用いる場合でも、室内気体SAの影響を受けることなく、耐久試験を行うことができるので、より適切にガスセンサ200の耐久性を評価できる。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】実施形態1に係るガスセンサの耐久試験装置の概略構成を示す説明図である。
【図2】実施形態1に係るガスセンサの耐久試験装置のうち、ガスセンサを取り付けた状態における気体供給部の構成を示す説明図である。
【図3】実施形態1に係るガスセンサの耐久試験装置のうち、(a)がガスチャンバの斜視図であり、(b)が(a)の上方から見たガスチャンバの平面図であり、(c)が(b)のc−c断面におけるガスチャンバの断面図である。
【図4】実施形態1に係るガスセンサの耐久試験装置で耐久試験が行われるガスセンサの分解斜視図である。
【図5】実施形態2に係るガスセンサの耐久試験装置の概略構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0097】
100,300 ガスセンサの耐久試験装置(ガスセンサの評価装置)
110 恒温恒湿槽(環境試験器)
111 収容室
115 シール部材
120 評価用気体包囲体
131 室内配管(熱交換部)
140 気体供給部(気体曝露部)
170 評価用気体同温化手段(評価用気体第2温度化手段)
171 室外メイン配管用ヒータ(評価用気体温度調整手段)
173 湿度付与水槽用ヒータ(評価用気体温度調整手段)
190 外気導入手段
200 ガスセンサ
243 感ガス膜
245 ヒータ
310 特定気体添加手段
GA 評価用気体
SA 室内気体
TA1 第1特定気体
TA2 第2特定気体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感ガス部を有するガスセンサの評価方法であって、
前記ガスセンサを環境試験器の収容室内に配置して、前記収容室内の室内気体により前記収容室内を第1所定温度環境とすると共に、
前記ガスセンサのうち少なくとも前記感ガス部を、前記室内気体を含まない評価用気体であって、第2所定温度とした評価用気体に曝した状態で当該ガスセンサを評価する
ガスセンサの評価方法。
【請求項2】
請求項1に記載のガスセンサの評価方法であって、
前記評価用気体の前記第2所定温度を、前記室内気体の前記第1所定温度と同温度とする
ガスセンサの評価方法。
【請求項3】
請求項2に記載のガスセンサの評価方法であって、
前記評価用気体を、前記室内気体との熱交換により、前記室内気体と同温度とする
ガスセンサの評価方法。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のガスセンサの評価方法であって、
前記ガスセンサを駆動状態に維持し続ける
ガスセンサの評価方法。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のガスセンサの評価方法であって、
前記ガスセンサの前記感ガス部は、酸化物半導体からなる感ガス膜を含み、
前記環境試験器は、前記室内気体にシリコンが混入する材質からなる部材を有する
ガスセンサの評価方法。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載のガスセンサの評価方法であって、
前記評価用気体に、1または複数の特定ガス成分を所定の濃度パターンで含ませて行う
ガスセンサの評価方法。
【請求項7】
感ガス部を有するガスセンサの評価装置であって、
前記ガスセンサを収容可能な収容室を有し、この収容室内の室内気体によりこの収容室内を第1所定温度環境に保持可能な環境試験器と、
少なくとも一部が前記収容室内に配置されてなり、前記室内気体を含まない評価用気体を包囲すると共に、前記収容室に対し気密とされた評価用気体包囲体であって、前記感ガス部への前記評価用気体の接触を可能とする気体曝露部を有する評価用気体包囲体と、
前記評価用気体のうち少なくとも前記気体曝露部に流通させる評価用気体の温度を、第2所定温度とする評価用気体第2温度化手段と、
を備えるガスセンサの評価装置。
【請求項8】
請求項7に記載のガスセンサの評価装置であって、
前記評価用気体第2温度化手段は、前記評価用気体の前記第2所定温度を、前記室内気体の前記第1所定温度と同温度とする評価用気体同温度化手段である
ガスセンサの評価装置。
【請求項9】
請求項8に記載のガスセンサの評価装置であって、
前記評価用気体包囲体は、前記評価用気体と前記室内気体との熱交換を行わせる熱交換部を有し、
前記評価用気体同温度化手段は、この熱交換部を含む
ガスセンサの評価装置。
【請求項10】
請求項7〜請求項9のいずれか一項に記載のガスセンサの評価装置であって、
前記評価用気体包囲体は、前記環境試験器外で外部に開放されてなり、
前記環境試験器外の外気を前記評価用気体として導入する外気導入手段を備え、
前記評価用気体第2温度化手段は、前記環境試験器外に、前記評価用気体包囲体内に導入された前記評価用気体を、前記第2所定温度に近づけるまたは前記第2所定温度とする評価用気体温度調整手段を有する
ガスセンサの評価装置。
【請求項11】
請求項7〜請求項10のいずれか一項に記載のガスセンサの評価装置であって、
前記環境試験器は、前記室内気体にシリコンが混入する材質からなる部材を有し、
前記評価用気体包囲体は、前記評価用気体にシリコンが混入しない材質からなる
ガスセンサの評価装置。
【請求項12】
請求項7〜請求項11のいずれか一項に記載のガスセンサの評価装置であって、
前記評価用気体に、1または複数の特定ガス成分を有する特定気体を加える特定気体添加手段を備える
ガスセンサの評価装置。
【請求項13】
請求項12に記載のガスセンサの評価装置であって、
前記気体曝露部は、前記評価用気体が導入される気体導入部を有し、
前記特定気体添加手段を、前記評価用気体包囲体のうち、前記気体導入部またはその近傍に接続してなる
ガスセンサの評価装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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