説明

ガスセンサ装置

【課題】センサ素子のインピーダンス検出機能および異常検知の機能を維持しつつ、入力回路構成を単純化して部品点数を削減することができるガスセンサ装置を提供する。
【解決手段】センサ素子11と、センサ素子11の一方の端子に高電圧および低電圧の一方を切り替え選択して印加する入力部20と、センサ素子11の他方の端子にオフセット電圧を印加するオフセット部30と、センサ素子11の出力の値に基づいて特定ガス濃度(酸素濃度)を算出する演算部60と、が設けられ、演算部60および入力部20の間に配置された第1フィルタ部40と、演算部60およびオフセット部30の間に配置され、第1フィルタ部40よりも時定数が小さな第2フィルタ部50と、が更に設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスセンサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンやガソリンエンジンなどの内燃機関においては、消費燃料の低減を図るためや、排気ガスの浄化を図るために、燃焼室に送り込まれるガスと燃料との割合である混合比を調節する制御が一般的になっている。この混合比を制御するために、吸気ガスに含まれる特定ガス成分(例えば酸素)の割合や、排気ガスに含まれる特定ガス成分の割合を測定するために、ガスセンサが用いられている。
【0003】
ガスセンサは、測定対象であるガス中に配置される固体電解質体から構成されるセンサ素子を備え、このセンサ素子から特定ガス成分の割合である特定ガス成分の濃度(例えば酸素濃度)に関する出力値が出力される。酸素濃度を検出する酸素センサの場合、酸素濃度が所定の濃度よりも薄いか、濃いか、言い換えると酸素に対する燃料との割合が所定の割合よりも高い(Rich)か、低い(Lean)か、の出力を行うセンサであるλセンサが用いられており、より正確な酸素濃度の値を検出するためにセンサ素子の温度を安定に制御する方法等、種々の方法がこれまでに提案されている(例えば、特許文献1および2参照)。
【0004】
なお、固体電解質体のセンサ素子の温度を安定に制御する手法としては、センサ素子のインピーダンスを検出した上で、検出したインピーダンスが目標となるように、センサ素子に付設した加熱部への給電を制御する手法等が知られている。
【0005】
その一方で、酸素センサの機能に異常をきたしていると、正確な酸素濃度の値を検出することができないため、酸素センサの機能異常を検出できることも必要となる。機能異常を検出する方法としては、酸素センサ(センサ素子)のマイナス端子をオフセットさせる方法等、種々の方法がこれまでに提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−020804号公報
【特許文献2】特開2006−343306号公報
【特許文献3】特開2005−171898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、センサ素子のインピーダンス検出の機能および異常検知の機能のいずれか一方の機能を有するセンサ装置は提供されているが、両機能を有するセンサ装置を実現しようとすると、インピーダンス検出の機能を実現する回路と、異常検知の機能を実現する回路とをそれぞれ備える必要が生じる。つまり、酸素センサ装置を構成する電子部品等の部品点数が増加すると共に、回路構成が複雑になるという問題があった。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、センサ素子のインピーダンス検出の機能および異常検知の機能を維持しつつ、入力回路構成を単純化して部品点数を削減することができるガスセンサ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明のガスセンサ装置は、雰囲気中の特定ガス濃度に応じて出力の値が変化するセンサ素子と、該センサ素子の一方の端子に電気的に接続され、前記一方の端子に高電圧および低電圧の一方を切り替え選択して印加する入力部と、前記センサ素子の他方の端子に電気的に接続され、前記他方の端子に接地電圧からオフセットされた所定電圧を印加するオフセット部と、前記一方の端子および前記他方の端子と電気的に接続され、前記センサ素子の出力の値に基づいて、前記特定ガス濃度を算出する演算部と、が設けられたガスセンサ装置であって、前記演算部における前記一方の端子と電気的に接続される第1接続端、および、前記入力部の間に配置された第1フィルタ部と、前記演算部における前記他方の端子と電気的に接続される第2接続端、および、前記オフセット部の間に配置され、前記第1フィルタ部よりも時定数が小さな第2フィルタ部と、が更に設けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明のガスセンサ装置によれば、演算部の第1接続端に対しては第1フィルタ部を介して電圧信号を入力させ、演算部の第2接続端に対しては第1フィルタ部よりも時定数が小さな第2フィルタ部を介して電圧信号を入力させている。これにより、簡素な回路構成で特定ガス成分濃度の測定機能と、センサ素子のインピーダンス検出機能および異常の検知機能とを実現することができる。
【0011】
具体的には、第1接続端に第2フィルタ部よりも時定数が大きな第1フィルタ部を配置しているため、値の変動周期が比較的長いセンサ素子の出力値を第1接続端で測定でき、演算部において雰囲気に含まれる特定ガス濃度を算出することができる。その一方で、第2接続端に第1フィルタ部よりも時定数が小さな第2フィルタ部を配置しているため、値の変動周期が比較的短い、入力部により印加される電圧が変化した際のセンサ素子のインピーダンスを第2接続端にて検出することができる。さらに、センサ素子の他方の端子には、所定電圧のオフセット電圧が印加されているため、センサ素子や、ガスセンサ装置の配線において断線やショート等の異常が発生した際に、第1接続端や第2接続端で測定される電圧に変動が生じ、異常の発生を検知することができる。
【0012】
なお、演算部は第2接続端で測定するインピーダンスの変化に基づいてセンサ素子の劣化、例えば経時的なインピーダンスの変化に基づいてセンサ素子の経時的な劣化を検出してもよい。入力部における高電圧と低電圧との切り替えはスイッチング素子によって実現してもよいし、容量結合によって実現してもよく、その切り替え形式を特に限定するものではない。
【0013】
上記発明においては、給電されることにより発熱して前記センサ素子を加熱する加熱部と、前記演算部により求められた前記センサ素子のインピーダンスに基づいて前記加熱部への給電を制御する給電制御部と、が更に設けられていることが望ましい。
【0014】
このように、演算部により求められたセンサ素子のインピーダンスに基づいてヒータでの発熱量を制御することにより、センサ素子の温度を所望の温度に正確に制御することができる。具体的には、センサ素子のインピーダンスが所望の値よりも高い場合には、ヒータへの給電量を増やしてヒータの発熱量を増やす。センサ素子の温度はヒータから伝わる熱により上昇する。逆に、センサ素子のインピーダンスが所望の値よりも低い場合には、ヒータへの給電量を減らしてヒータの発熱量を減らす。ヒータから伝わる熱量よりも放熱される熱量が上回り、センサ素子の温度は下がる。
【0015】
上記発明において前記第1接続端と前記一方の端子の間には、前記センサ素子に対する、前記入力部から印加された前記高電圧または前記低電圧の影響を取り除く影響除去部がさらに設けられていることが望ましい。
【0016】
このように、影響除去部を設けることにより、入力部から、例えば高電圧をパルス状に印加した後であっても、影響除去部が設けられていない場合と比較して早いタイミングで、センサ素子から特定ガス成分濃度に応じた出力を得ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のガスセンサ装置によれば、演算部の第1接続端に対しては第1フィルタ部を介して電圧信号を入力させる一方、第2接続端に対しては第1フィルタ部よりも時定数が小さな第2フィルタ部を介して電圧信号を入力させることにより、センサ素子のインピーダンス検出の機能および異常検知の機能を実現しつつ、入力回路構成を単純化して部品点数を削減することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るガスセンサ装置の構成を説明する図である。
【図2】図1の入力部により印加される入力信号を説明する図である。
【図3】図1のガスセンサ装置における酸素濃度の測定およびセンサ素子のインピーダンス測定を説明するフローチャートである。
【図4】図1の第1入力ポートおよび第2入力ポートで測定された信号を説明するグラフである。
【図5】本発明の第2の実施形態に係るガスセンサ装置の構成を説明する図である。
【図6】図2の第1入力ポートおよび第2入力ポートで測定された信号を説明するグラフである。
【図7】本発明の第3の実施形態に係るガスセンサ装置の構成を説明する図である。
【図8】本発明の第4の実施形態に係るガスセンサ装置の構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
〔第1の実施形態〕
以下、本発明の第1の実施形態に係るガスセンサ装置1ついて図1から図4を参照して説明する。図1は、本実施形態に係るガスセンサ装置1の構成を説明する図である。本実施形態では、本発明のガスセンサ装置を内燃機関から排出される排気ガス雰囲気中、または、内燃機関に吸入される空気に含まれる吸気雰囲気中の酸素濃度(特定ガス濃度)を測定する酸素センサ、例えばλセンサを用いたガスセンサ装置1に適用して説明する。
【0020】
ガスセンサ装置1には、図1に示すように、センサ素子11およびヒータ12を有する酸素センサ10と、入力部20と、オフセット部30と、第1フィルタ部40と、第2フィルタ部50と、マイコン部(演算部)60と、が主に設けられている。
【0021】
センサ素子11は、有底筒状ないしは板状をなした酸素イオン伝導性の固体電解質体に一対の電極を形成した構成をなし、雰囲気中の酸素濃度に応じて出力する電圧が変化する素子である。なお、一対の電極の一方は固体電解質体の表面に形成されて被測定ガス(雰囲気)に晒され、他方は固体電解質体の裏面に形成されて基準ガス(大気)に晒される。このような構成のセンサ素子11の出力電圧は、一対の端子であるプラス側端子(一方の端子)OZ+と、マイナス側端子(他方の端子)OZ−の間の電圧として出力される。センサ素子11が酸素濃度を測定するセンサとして機能するためには、センサ素子11を所定の温度に加熱する必要がある。
【0022】
センサ素子11とともに酸素センサ10を構成するヒータ12は、電力を供給されることにより発熱し、センサ素子11の温度を所定の温度に保つものである。ヒータ12は、熱を発生させる抵抗であり、マイコン部60の制御信号に基づいてヒータ抵抗(加熱部)13への通電を制御するスイッチ素子である通電制御部(給電制御部)14と電気的に接続されている。なお、センサ素子11およびヒータ12としては、公知の素子および加熱手段を用いることができる。
【0023】
入力部20は、センサ素子11のインピーダンス測定(検出)に用いられる入力信号である電圧変化を印加するものである。入力部20は、センサ素子11のプラス側端子OZ+に入力信号が印加可能となるように電気的に接続されている。入力部20は、所定電圧(例えば+5V)を供給する電源部21と、マイコン部60から出力される制御信号に基づいて電源部21とプラス側端子OZ+との間の接続(ON)および遮断(OFF)を切り替え制御するスイッチ素子22と、から主に構成されている。
【0024】
本実施形態では、入力部20が印加する入力信号を、図2に示すような、複数のパルス状の電圧変化である例に適用して説明する。具体的には、電圧が+5V、パルス幅が数msから数十msに設定されたパルス状電圧が、数百msから数sの時間間隔をあけて連続して印加される入力信号である例に適用して説明する。
【0025】
なお、入力信号としては、上述のようにパルス状電圧が所定の周期で定常的に繰り返し印加されるものであってもよいし、センサ素子11のインピーダンス測定を行う場合にのみ、一つまたは複数のパルス状電圧を印加してもよい。また、入力信号の波形は、上述のようにパルス状または矩形波状の形状のように、高電圧の値および低電圧の値から形成される形状であってもよいし、正弦波のように連続して変化する形状であってもよい。さらに、入力部20がスイッチ素子22を用いて入力信号の電圧を変化させてもよいし、容量結合(キャパシタの直列結合)を用いて入力信号の電圧を変化させてもよい。
【0026】
オフセット部30は、センサ素子11およびセンサ素子11につながれた回路の異常検出に用いられるものである。具体的には、オフセット部30は、センサ素子11のマイナス側端子OZ−に所定の電圧(例えば+1V)を印加するものである。オフセット部30は、所定電圧(例えば+5V)を供給する電源部31と、電源部31およびマイナス側端子OZ−の間に配置された第1オフセット抵抗32と、マイナス側端子OZ−およびグランドの間に配置された第2オフセット抵抗33と、から主に構成されている。マイナス側端子OZ−に印加される電圧の値は、電源部31から供給される電圧と、第1オフセット抵抗32の抵抗値(例えば4kΩ)および第2オフセット抵抗33の抵抗値(例えば1kΩ)の比と、によって規定される。
【0027】
第1フィルタ部40は、センサ素子11から出力される電圧信号に含まれる酸素濃度の値に係る信号成分をマイコン部60に入力させる雰囲気検出用のフィルタである。本実施形態では、第1フィルタ部40のフィルタ定数は、第2フィルタ部50のフィルタ定数よりも大きな値に設定されている。具体的には、数十msから数sの範囲内の所定の値に設定されている。
【0028】
第1フィルタ部40は、センサ素子11のプラス側端子OZ+とマイコン部60との間をつなぐ配線のうち、入力部20とマイコン部60の間に配置されている。第1フィルタ部40は、第1フィルタ抵抗41と、第1フィルタコンデンサ42と、から主に構成されている。本実施形態では、第1フィルタ抵抗41が100kΩの抵抗であり、第1フィルタコンデンサ42が0.1μFの容量である例に適用して説明する。
【0029】
第2フィルタ部50は、センサ素子11のインピーダンスを反映した信号成分をマイコン部60に入力させるインピーダンス測定用のフィルタである。本実施形態では、第2フィルタ部50のフィルタ定数は、数μsから数百μsの範囲内の所定値に設定されている。
【0030】
第2フィルタ部50は、センサ素子11のマイナス側端子OZ−とマイコン部60とをつなぐ配線のうち、オフセット部30とマイコン部60の間に配置されている。第2フィルタ部50は、第2フィルタ抵抗51と、第2フィルタコンデンサ52と、から主に構成されている。本実施形態では、第2フィルタ抵抗51が100kΩの抵抗であり、第2フィルタコンデンサ52が0.001μFの容量である例に適用して説明する。
【0031】
マイコン部60は、センサ素子11の出力である電圧信号に基づいて、雰囲気中の酸素濃度の値を算出する演算処理部であり、同時に、センサ素子11のインピーダンスを検出(測定)し、さらにセンサ素子11のインピーダンス(換言すれば、温度)が酸素濃度の測定に適した目標のインピーダンス(換言すれば、目標温度)に維持されるようにヒータ12の発熱を制御する制御部でもある。さらに、センサ素子11、および、センサ素子11とマイコン部60の間に配置された回路における短絡などの異常発生の有無を検出する検出部でもある。
【0032】
マイコン部60は、具体的には、CPU(中央演算処理ユニット)、ROM、RAM、入出力インタフェース等を有するマイクロコンピュータであり、ROM等の記憶装置に記憶している制御プログラムを実行することにより、酸素濃度の算出や、センサ素子11のインピーダンス測定などの演算処理などを実行するものである。なお、マイコン部60における酸素濃度の算出方法や、センサ素子11のインピーダンス測定方法等は、公知の方法を用いることができ、特に限定するものではない。
【0033】
マイコン部60には、アナログ入力ポートである、センサ素子11のプラス側端子OZ+と電気的に接続される第1入力ポート(第1接続端)ADin1と、マイナス側端子OZ−と電気的に接続される第2入力ポート(第2接続端)ADin2と、が設けられている。さらにマイコン部60には、ディジタル出力である、入力部20のスイッチ素子22に制御信号を出力する第1出力ポートDout1と、通電制御部14に制御信号を出力する第2出力ポートDout2と、が設けられている。
【0034】
次に、上記の構成からなるガスセンサ装置1における酸素濃度の測定およびセンサ素子11のインピーダンス測定について図3のフローチャートを参照しながら説明する。
酸素濃度の測定およびセンサ素子11のインピーダンス測定が開始されると、マイコン部60は、各種パラメータの値を初期化する処理を実行する(S10)。例えば、入力部20からパルス状の入力信号を印加するタイミング判定に用いるタイマTの値を0にするとともに、演算により求められたセンサ素子11のインピーダンスRi(n)の値を0にするなどの処理を実行する。
【0035】
初期化処理が終わると、マイコン部60はメイン周期の判定処理を実行する(S11)。具体的には、初期化処理が終了してからの経過時間、または、後述するヒータ制御処理(S19)が実行されてからの経過時間が、10msを経過しているか否かの判定処理を実行する。上述の経過時間が10msを経過していない場合(NOの場合)には、経過時間が10msを経過するまでS11の判定処理を繰り返し実行する。
【0036】
上述の経過時間が10msを経過していると判断された場合(S11:YESの場合)には、マイコン部60は、第1入力ポートADin1からセンサ素子11の出力電圧を取得する処理を実行する(S12)。マイコン部60は第1入力ポートADin1から取得した出力電圧の値に基づいて、センサ素子11が接している雰囲気中の酸素濃度の値を算出する処理を実行する。なお、出力電圧の値から酸素濃度の値を算出する方法は、公知の方法を用いることができ、特に算出内容を限定するものではない。
【0037】
その後、マイコン部60は、タイマTの値が50を超えたか否かの判定処理を実行する(S13)。言い換えると、タイマTは、10ms経過するごとに値が1つ増えるため(S18参照)、500msが経過したか否かの判定処理が実行される。
【0038】
タイマTの値が50を超えたと判定された場合(S13:YESの場合)には、マイコン部60は、第2入力ポートADin2からセンサ素子11のインピーダンスを測定する処理を実行する(S14)。具体的には、マイコン部60は、第1出力ポートDout1から入力部20のスイッチ素子22を制御する制御信号を出力する。制御信号が入力された入力部20は、パルス状の電圧変化である入力信号をセンサ素子11に印加する。第2入力ポートADin2では、入力信号が印加されている期間でのセンサ素子11のインピーダンスを反映した電圧が測定される。
【0039】
マイコン部60は、第2入力ポートADin2で測定されたセンサ素子11のインピーダンスを反映した電圧に基づいて、現在のセンサ素子11のインピーダンスRi(n)を求める(S15)。インピーダンスRi(n)を求める方法としては、計算式に基づいてインピーダンスRi(n)を算出する方法であってもよいし、予め準備されたマップに基づいてインピーダンスRi(n)を求める方法であってもよく、特に求める方法を限定するものではない。
【0040】
インピーダンスRi(n)が算出(測定)されるとマイコン部60は、タイマTの値を0に設定(リセット)する処理を実行する(S16)。言い換えると、次回のセンサ素子11のインピーダンス測定のタイミングを設定する処理を開始する。
【0041】
その一方で、S13の判定において、タイマTの値が50を超えていないと判定された場合(S13:NOの場合)には、マイコン部60は、前回のセンサ素子11のインピーダンス測定で算出されたインピーダンスの算出値Ri(n−1)を保持する処理を実行する(S17)。つまり、図3のフローチャートに示すように、Ri(n)=Ri(n−1)とする処理を実行する。
【0042】
さらに、マイコン部60は、タイマTの値を1つ増やす処理を実行する(S18)。つまりタイマTをカウントする処理を実行する。
上述のように、タイマTの値が0に設定されると(S16)、または、タイマTの値が1つ増やされると(S18)、マイコン部60は、ヒータ12の通電を制御する処理を実行する(S19)。マイコン部60には、センサ素子11の制御目標インピーダンスである目標値Riが予め記憶されている。マイコン部60は、予め記憶された目標RiとS15にて算出したインピーダンスRi(n)との差に基づいて、ヒータ12に対してPI制御またはPID制御などの通電フィードバック制御(PWM通電制御)を実施する。これにより、ヒータ12の通電フィードバック制御を通じて、センサ素子11のインピーダンス(換言すれば、温度)が目標値Ri(換言すれば、目標温度)に維持されることになる。
【0043】
ヒータ12の通電制御が実行されると、マイコン部60は、S11のメイン周期の判定処理に戻り、上述の処理を繰り返し実行する。このような制御処理が繰り返し実行されることにより、マイコン部60の第1入力ポートADin1では、図4(a)に示すようなセンサ素子11の出力信号である電圧の変化が測定される。本実施の形態では、上述した第1フィルタ部40が設けられているため、第1入力ポートADin1には、変動周期が長い電圧信号、つまりセンサ素子11の出力である電圧信号が主に入力される。
【0044】
図4(a)における実線で示しているグラフは、センサ素子11の出力信号である。ここでは、測定の途中で酸素濃度が一時的に変化したことにより出力信号の値が+1Vから+2Vに一時的に変化した状態を示している。また、点線で示しているグラフは、入力部20から入力されたパルス状の入力信号である。第1フィルタ部40により、パルス状の入力信号を遮断しているものの、弱い信号が第1フィルタ部40を透過して第1入力ポートADin1に入力されている状態を示している。
【0045】
また、マイコン部60の第2入力ポートADin2では、図4(b)に示すようなセンサ素子11のインピーダンスに関するパルス状の電圧変化が測定される。本実施の形態では、上述した第2フィルタ部50が設けられているため、第2入力ポートADin2には、変動周期が短い電圧信号、つまり入力部20により印加されたパルス状の入力信号、言い換えるとセンサ素子11のインピーダンスを反映した電圧変化が主に入力される。
【0046】
本実施形態では、オフセット部30により+1Vのオフセット電圧がセンサ素子11に印加されているため、図4(b)にも+1Vのオフセット電圧を示す横方向に延びる実線が示されている。その一方で、センサ素子11の出力電圧は、第2フィルタ部50によって除去されているため、図4(a)に示すようなセンサ素子11の出力電圧に基づく電圧変化は現れていない。
【0047】
第2入力ポートADin2に入力されるパルス状の電圧変化の高電圧側のピーク値は、センサ素子11のインピーダンスの値に応じて変化するため、図4(b)では、パルス状電圧の高電圧側のピーク値が変化している状態が示されている。
【0048】
上記の構成によれば、簡素な回路構成で酸素濃度の測定機能と、センサ素子11のインピーダンス測定機能および異常の検知機能とを実現することができる。
具体的には、第1入力ポートADin1に第2フィルタ部50よりも時定数が大きな第1フィルタ部40を配置しているため、値の変動周期が比較的長いセンサ素子11の出力値を第1入力ポートADin1で測定でき、マイコン部60において雰囲気に含まれる酸素濃度を算出することができる。その一方で、第2入力ポートADin2に第1フィルタ部40よりも時定数が小さな第2フィルタ部50を配置しているため、値の変動周期が比較的短い、入力部20によりパルス状の電圧が印加された際のセンサ素子11のインピーダンスを第2入力ポートADin2にて測定できる。
【0049】
さらに、センサ素子11のマイナス側端子OZ−には、オフセット電圧が印加されているため、センサ素子11や、ガスセンサ装置1において断線やショート等の異常が発生した際に、第1入力ポートADin1や第2入力ポートADin2で測定される電圧に変動が生じ、異常の発生を検知することができる。
【0050】
また、マイコン部60において算出されたセンサ素子11のインピーダンスRi(n)に基づいてヒータ12での発熱量(通電量)を制御することにより、センサ素子11のインピーダンス(換言すれば、温度)を目標インピーダンスである目標Ri(換言すれば、目標温度)に維持することができる。
【0051】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態に係るガスセンサ装置101ついて図5および図6を参照して説明する。本実施形態のガスセンサ装置101の基本構成は、第1の実施形態のガスセンサ装置1がポジティブ計測の回路構成を有しているのに対して、ネガティブ計測の回路構成を有している点が異なっている。よって、本実施形態においては、図5および図6を用いて回路構成が異なる部分のみを説明し、共通する部分の説明を省略する。
【0052】
ガスセンサ装置101には、図5に示すように、センサ素子11およびヒータ12(ヒータ抵抗13)を有する酸素センサ10と、入力部120と、オフセット部130と、第1フィルタ部40と、第2フィルタ部50と、マイコン部60と、が主に設けられている。
【0053】
入力部120は、センサ素子11のインピーダンス測定に用いられるものであり、具体的にはセンサ素子11のインピーダンス測定に用いられる入力信号である電圧変化を印加するものである。入力部120は、センサ素子11のプラス側端子OZ+に入力信号が印加可能となるように電気的に接続されている。入力部120は、マイコン部60から出力される制御信号に基づいてグランドとプラス側端子OZ+との間の接続(ON)および遮断(OFF)を切り替え制御するスイッチ素子122と、から主に構成されている。
【0054】
オフセット部130は、センサ素子11およびセンサ素子11につながれた配線の異常検出に用いられるものである。具体的には、オフセット部130は、センサ素子11のマイナス側端子OZ−に所定の電圧(例えば+4V)を印加するものである。オフセット部130は、所定電圧(例えば+5V)を供給する電源部31と、電源部31およびマイナス側端子OZ−の間に配置された第1オフセット抵抗132と、マイナス側端子OZ−およびグランドの間に配置された第2オフセット抵抗133と、から主に構成されている。マイナス側端子OZ−に印加される電圧の値は、電源部31から供給される電圧と、第1オフセット抵抗132の抵抗値(例えば1kΩ)および第2オフセット抵抗133の抵抗値(例えば4kΩ)の比と、によって規定される。
【0055】
上記の構成からなるガスセンサ装置101における酸素濃度の測定およびセンサ素子11のインピーダンス測定については、第1の実施形態のガスセンサ装置1における制御と同様であるため、その説明を省略する。ここでは、第1の実施形態とは異なる点、具体的には、マイコン部60の第1入力ポートADin1および第2入力ポートADin2に入力される電圧信号についてのみ説明する。
【0056】
本実施形態のマイコン部60の第1入力ポートADin1では、図6(a)に示すようなセンサ素子11の出力信号である電圧の変化が測定される。図6(a)における実線で示しているグラフは、センサ素子11の出力信号である。ここでは、測定の途中で酸素濃度が一時的に変化したことにより出力信号の値が+4Vから+5Vに一時的に変化した状態を示している。また、点線で示しているグラフは、入力部120から入力されたパルス状の入力信号である。
【0057】
また、マイコン部60の第2入力ポートADin2では、図6(b)に示すようなセンサ素子11のインピーダンスを反映したパルス状の電圧変化が測定される。本実施形態では、オフセット部130により+4Vのオフセット電圧がセンサ素子11に印加されているため、図6(b)にも+4Vのオフセット電圧を示す横方向に延びる実線が示されている。第2入力ポートADin2に入力されるパルス状の電圧変化の低電圧側のピーク値は、センサ素子11のインピーダンスの値に応じて変化するため、図6(b)では、パルス状電圧の低電圧側のピーク値が変化している状態が示されている。
【0058】
〔第3の実施形態〕
次に、本発明の第3の実施形態に係るガスセンサ装置201ついて図7を参照して説明する。本実施形態のガスセンサ装置201の基本構成は、第1の実施形態と同様であるが、第1の実施形態とは、入力部からセンサ素子11に印加された入力信号の影響を除去する構成が付加されている点が異なっている。よって、本実施形態においては、図7を用いて影響を除去する構成についてのみを説明し、共通する部分の説明を省略する。
【0059】
本実施形態のガスセンサ装置201には、図7に示すように、センサ素子11およびヒータ12(ヒータ抵抗13)を有する酸素センサ10と、入力部20と、オフセット部30と、第1フィルタ部40と、第2フィルタ部50と、マイコン部60と、電荷抜き部(影響除去部)270と、が主に設けられている。
【0060】
電荷抜き部270は、入力部20から印加されたパルス状の電圧信号による、センサ素子11の出力信号の変動を取り除くものである。具体的には、入力部20を通じてパルス状の入力信号が印加されることによって、当該入力信号を印加して所定の期間は、センサ素子11の出力信号の値は、酸素濃度を表す値からズレた値となる。電荷抜き部270は、センサ素子11の出力信号に含まれるパルス状の入力信号の影響を取り除き、センサ素子11の出力信号の値を、酸素濃度を表す値に戻すものである。
【0061】
電荷抜き部270には、電荷抜き抵抗271と、電荷抜きスイッチ素子272と、が主に設けられている。
電荷抜き抵抗271は、センサ素子11のプラス側端子OZ+と、第1フィルタ部40との間に電気的に接続された抵抗である。本実施形態では、電荷抜き抵抗271は、1kΩ程度の値を持つ抵抗である例に適用して説明する。
【0062】
電荷抜きスイッチ素子272は、電荷抜き抵抗271とグランドとの間に配置されたスイッチ素子であり、マイコン部60の第3出力ポートDout3から出力される制御信号に基づいて、プラス側端子OZ+とグランドとの間の接続(ON)および遮断(OFF)を切り替え制御するものである。
【0063】
次に、本実施形態のガスセンサ装置201の電荷抜き部270における動作について説明する。なお、本実施形態のガスセンサ装置201における酸素濃度の測定およびセンサ素子11のインピーダンス測定については、第1の実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0064】
マイコン部60は、入力部20によるパルス状の電圧信号の印加が終了した後に、電荷抜き部270の制御処理を実行する。具体的には、マイコン部60は、第1出力ポートDout1から入力部20のスイッチ素子22を所定の期間だけONさせ、その後、スイッチ素子22をOFFさせる制御信号を出力する。マイコン部60は、続いて、第3出力ポートDout3から電荷抜き部270の電荷抜きスイッチ素子272を、所定の期間だけONさせ、その後、電荷抜きスイッチ素子272をOFFさせる制御信号を出力する。
【0065】
上述のように電荷抜きスイッチ素子272がONにされると、センサ素子11のプラス側端子OZ+が、電荷抜き部270を介してグランドに接続される。これにより、パルス状の電圧信号の印加によってセンサ素子11に蓄積された電荷は、グランドに抜けることになる。電荷抜きスイッチ素子272がOFFにされると、プラス側端子OZ+とグランドとは切り離され、センサ素子11の出力信号がマイコン部60に入力される。
【0066】
上記の構成によれば、電荷抜き部270を設けることにより、入力部20から+5Vの電圧をパルス状に印加した後であっても、電荷抜き部270が設けられていない場合と比較して早いタイミングで、センサ素子11から酸素濃度に応じた出力を得ることができる。
【0067】
〔第4の実施形態〕
次に、本発明の第4の実施形態に係るガスセンサ装置301ついて図8を参照して説明する。本実施形態のガスセンサ装置301の基本構成は、第3の実施形態のガスセンサ装置201がポジティブ計測の回路構成を有しているのに対して、ネガティブ計測の回路構成を有している点が異なっている。よって、本実施形態においては、図8を用いて回路構成が異なる部分のみを説明し、共通する部分の説明を省略する。
【0068】
本実施形態のガスセンサ装置301には、図8に示すように、センサ素子11およびヒータ12(ヒータ抵抗13)を有する酸素センサ10と、入力部20と、オフセット部30と、第1フィルタ部40と、第2フィルタ部50と、マイコン部60と、電荷抜き部(影響除去部)370と、が主に設けられている。
【0069】
電荷抜き部370は、入力部20から印加されたパルス状の電圧信号による、センサ素子11の出力信号の変動を取り除くものである。電荷抜き部370には、所定電圧(例えば+5V)を供給する電荷抜き電源371と、電荷抜きスイッチ素子372と、電荷抜き抵抗373と、が主に設けられている。
【0070】
電荷抜き抵抗373は、センサ素子11のプラス側端子OZ+と、第1フィルタ部40との間に電気的に接続された抵抗である。本実施形態では、電荷抜き抵抗373は、1kΩ程度の値を持つ抵抗である例に適用して説明する。
【0071】
電荷抜きスイッチ素子372は、電荷抜き電源371と電荷抜き抵抗373との間に配置されたスイッチ素子であり、マイコン部60の第3出力ポートDout3から出力される制御信号に基づいて、電荷抜き電源371とプラス側端子OZ+との間の接続(ON)および遮断(OFF)を切り替え制御するものである。
【0072】
なお、本実施形態のガスセンサ装置301の電荷抜き部370における動作については、第3の実施形態のガスセンサ装置201の電荷抜き部270における動作と同様であるため、その説明を省略する。
【0073】
以上において、本発明を上述した各種実施形態に即して説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。例えば、上記の実施形態では、センサ素子11として、酸素濃度を測定するものを例示したが、酸素以外の特定ガス成分濃度を測定するセンサ素子11を用いても良い。
【符号の説明】
【0074】
1,101,201,301…ガスセンサ装置、11…センサ素子、13…ヒータ抵抗(加熱部)、14…通電制御部(給電制御部)、20,120…入力部、30,130…オフセット部、40…第1フィルタ部、50…第2フィルタ部、60…マイコン部(演算部)、OZ+…プラス側端子(一方の端子)、OZ−…マイナス側端子(他方の端子)、ADin1…第1入力ポート(第1接続端)、ADin2…第2入力ポート(第2接続端)、270,370…電荷抜き部(影響除去部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雰囲気中の特定ガス濃度に応じて出力の値が変化するセンサ素子と、
該センサ素子の一方の端子に電気的に接続され、前記一方の端子に高電圧および低電圧の一方を切り替え選択して印加する入力部と、
前記センサ素子の他方の端子に電気的に接続され、前記他方の端子に接地電圧からオフセットされた所定電圧を印加するオフセット部と、
前記一方の端子および前記他方の端子と電気的に接続され、前記センサ素子の出力の値に基づいて、前記特定ガス濃度を算出する演算部と、
が設けられたガスセンサ装置であって、
前記演算部における前記一方の端子と電気的に接続される第1接続端、および、前記入力部の間に配置された第1フィルタ部と、
前記演算部における前記他方の端子と電気的に接続される第2接続端、および、前記オフセット部の間に配置され、前記第1フィルタ部よりも時定数が小さな第2フィルタ部と、
が更に設けられていることを特徴とするガスセンサ装置。
【請求項2】
給電されることにより発熱して前記センサ素子を加熱する加熱部と、
前記演算部により求められた前記センサ素子の温度に基づいて前記加熱部への給電を制御する給電制御部と、
が更に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のガスセンサ装置。
【請求項3】
前記第1接続端と前記一方の端子の間には、前記センサ素子に対する、前記入力部から印加された前記高電圧または前記低電圧の影響を取り除く影響除去部がさらに設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のガスセンサ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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