説明

ガスタービン吸気フィルタハウス用の前置濾過バイパス

【課題】タービンエンジン(100)で使用する吸気フィルタハウス(102)を提供する。
【解決手段】本吸気フィルタハウスは、作動位置(320)及びバイパス位置(322)間で選択的に位置決め可能なフィルタ組立体を備えた吸気フード(200)と、フィルタ組立体に結合されて、該フィルタ組立体を選択的に位置決めするアクチュエーティング組立体(400)と、少なくとも1つの運転パラメータを検出するように構成されたセンサ(436)と、センサに結合されて、少なくとも1つの運転パラメータに基づいてアクチュエーティング組立体を動作させる制御装置(438)とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、総括的にはタービンエンジンに関し、より具体的には、タービンエンジンで使用する濾過システムに関する。
【背景技術】
【0002】
少なくとも一部の公知のタービンエンジンは、吸気フィルタハウスを含み、この吸気フィルタハウスは、タービンエンジン、より具体的には圧縮機に送られる空気から水分並びにダスト及び/又はデブリのような粒状物質を除去するフィルタ組立体を含む。通常運転時には、最少の空気途絶及び/又は圧力降下の状態で吸気フィルタハウスを通して空気を送るのが望ましい。しかしながら、少なくとも一部の公知のフィルタ組立体内に過剰なダスト及び/又はデブリが捕捉されると、空気流が、途絶する可能性がありかつ/又は圧力が、タービンエンジンの性能に悪影響を及ぼすレベルに降下する可能性がある。さらに、少なくとも一部の気候では、水分もまた、空気流を途絶させかつ/又は少なくとも一部のフィルタ要素において圧力降下を増大させる可能性がある。例えば、水分は、フィルタ組立体上の汚染物質を膨大させる可能性がありかつ/又は水分は、フィルタ組立体上における氷形成を促進する可能性がある。タービンエンジン性能への悪影響に加えて、そのような過度の負荷作用はまた、公知のフィルタ組立体の有効寿命を低下させる可能性がある。
【0003】
さらに、時間の経過と共に、公知のフィルタ組立体における圧力降下は、圧縮機への空気流量を大幅に減少させるレベルに増大する可能性がある。少なくとも一部の実施例では、空気流量の減少は、圧縮機に損傷を与えるおそれがある圧縮機サージを引き起こす可能性がある。圧縮機サージを防止するために、少なくとも一部の公知のフィルタ組立体は、時間がかかりかつ厄介な仕事となる可能性があるタスクとして定期的に実働使用から取外されかつ清浄にされる。さらに、そのような取外しプロセスは、3日〜4日又はそれ以上の標準的な時間にわたってタービンエンジンの運転停止を必要とする可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7297173号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態では、タービンエンジンで使用する吸気フィルタハウスを組立てる方法を提供する。本方法は、タービンエンジンの入口内に吸気フードを結合するステップを含む。吸気フードは、作動位置及びバイパス位置間で選択的に位置決め可能であるフィルタ組立体を含む。アクチュエーティング組立体が、フィルタ組立体に結合されて該フィルタ組立体を選択的に位置決めする。少なくとも1つのセンサが、タービンエンジン内の少なくとも1つの運転パラメータを検出するように結合される。制御装置が、センサに結合されて少なくとも1つの運転パラメータに基づいてアクチュエーティング組立体を選択的に動作させる。
【0006】
別の実施形態では、タービンエンジンで使用する吸気フィルタハウスを提供する。本吸気フィルタハウスは、作動位置及びバイパス位置間で選択的に位置決め可能なフィルタ組立体を備えた吸気フードを含む。アクチュエーティング組立体が、フィルタ組立体に結合されて該フィルタ組立体を選択的に位置決めする。センサが、少なくとも1つの運転パラメータを検出するように構成される。制御装置が、センサに結合されて少なくとも1つの運転パラメータに基づいてアクチュエーティング組立体を動作させる。
【0007】
さらに別の実施形態では、タービンエンジンを提供する。本タービンエンジンは、吸気ダクトと吸気ダクトに結合された吸気フィルタハウスとを含む。吸気フィルタハウスは、作動位置及びバイパス位置間で選択的に位置決め可能なフィルタ組立体を含む。アクチュエーティング組立体が、フィルタ組立体に結合されて該フィルタ組立体を選択的に位置決めする。センサが、少なくとも1つの運転パラメータを検出するように構成される。制御装置が、センサに結合されて少なくとも1つの運転パラメータに基づいてアクチュエーティング組立体を動作させる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】例示的なガスタービンエンジンシステムの概略図。
【図2】図1に示すタービンエンジンで使用することができる例示的な吸気フィルタハウスの断面図。
【図3】図2に示す吸気フィルタハウスで使用することができる例示的な前置フィルタ組立体及び動作システムの概略図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書で説明する例示的な方法及びシステムは、周囲条件に基づいて作動可能である前置濾過バイパスシステムを設けることによって公知の吸気フィルタハウスの欠点を克服する。より具体的には、本明細書で説明する実施形態では、所定の運転期間の間にフィルタ組立体を選択的にバイパスさせることが可能であって、タービンエンジンの運転効率を増大させることが可能になる。さらに、本明細書で説明する例示的な実施形態では、フィルタ組立体が実働使用から手動で取外されることなしに該フィルタ組立体を選択的にバイパスさせることが可能になる。
【0010】
本明細書で説明する方法及びシステムの例示的な技術的作用は、(a)少なくとも1つのパラメータを検出すること、(b)少なくとも1つのパラメータを伝達すること、(c)少なくとも1つのパラメータに基づいてフィルタ組立体の位置を決定すること、(d)作動コマンドを伝達してフィルタ組立体を移動させること、及び(e)少なくとも1つのパラメータに基づいた複数のフットプリントを含むパラメータマトリックスを維持することの少なくとも1つを含む。
【0011】
図1は、例示的なガスタービンエンジンシステム100の概略図である。この例示的な実施形態では、ガスタービンエンジンシステム100は、直列流れ構成として結合された状態で、吸気フィルタハウス102と、圧縮機104と、燃焼器組立体106と、ロータシャフト110を介して圧縮機104に回転可能に結合されたタービン108とを含む。
【0012】
この例示的な実施形態では、運転時に、周囲空気が吸気フィルタハウス102内に流れ、吸気フィルタハウス内において、周囲空気が濾過される。この例示的な実施形態では、濾過空気は、空気入口(図示せず)を通って圧縮機4に向けて送られ、圧縮機4において、濾過空気は加圧された後に、燃焼器組立体106に向けて吐出される。この例示的な実施形態では、加圧空気は燃料と混合され、得られた燃料−空気混合気は、燃焼器組立体106内で点火燃焼されて燃焼ガスを発生し、この燃焼ガスは、タービン108に向けて流れる。この例示的な実施形態では、タービン108は、燃焼ガスから回転エネルギーを取出しかつロータシャフト110を回転させて圧縮機104を駆動する。さらに、この例示的な実施形態では、ガスタービンエンジンシステム100は、ロータシャフト110に結合された発電機のような負荷112を駆動する。
【0013】
図2は、吸気フィルタハウス102の断面図である。この例示的な実施形態では、吸気フィルタハウス102は、下記でより詳細に説明する複数の垂直方向に間隔を置いて配置された吸気フード200を含む。より具体的には、この例示的な実施形態では、吸気フード200は、空気フィルタエンクロージャ204の外壁に結合されて、該空気フィルタエンクロージャが吸気フード200を介して周囲空気と流体連通する。
【0014】
この例示的な実施形態では、空気フィルタエンクロージャ204は、フィルタグリッド管板206を含み、フィルタグリッド管板206は、空気フィルタエンクロージャ204の内部に、該管板206の上流に位置する空気フィルタチャンバ208と該管板206の下流に位置するクリーン空気チャンバ210とを形成する。この例示的な実施形態では、管板206は、それを貫通して延びる複数のアパーチャ212を含み、アパーチャ212は、空気フィルタチャンバ208をクリーン空気チャンバ210と流体連通して結合する。
【0015】
この例示的な実施形態では、複数のフィルタカートリッジ214が、空気フィルタチャンバ208内で管板206の上流側に結合される。より具体的には、この例示的な実施形態では、各アパーチャ212は、対応するフィルタカートリッジ214を受けるような寸法、形状及び配向にされて、空気フィルタチャンバ208が該フィルタカートリッジ214を介してクリーン空気チャンバ210と流体連通して結合される。この例示的な実施形態では、各フィルタカートリッジ214は、円筒形部分216及び該円筒形部分216から延びる円錐形部分218を含む。それに代えて、フィルタカートリッジ214は、単一のフィルタ要素とすることができかつ/又はフィルタハウス102が本明細書で説明するように機能するのを可能にするあらゆる形状を有することができる。さらに、この例示的な実施形態では、フィルタカートリッジ214は、全て同一である。それに代えて、フィルタハウス102が本明細書で説明するように機能するのを可能にするフィルタカートリッジ214のあらゆる数、形状又は配向を使用することができる。
【0016】
この例示的な実施形態では、複数の加圧空気パルスクリーナ220が、クリーン空気チャンバ210内において管板206の下流側に結合される。より具体的には、この例示的な実施形態では、各加圧空気パルスクリーナ220は、対応するアパーチャ212及び/又はフィルタカートリッジ214を通して噴出空気を導くように配向される。例えば、フィルタカートリッジ214の清掃時には、加圧空気パルスクリーナ220は、アパーチャ212を通る空気の流れに脈動を与えて、フィルタカートリッジ214からダスト及び/又はデブリのような粒状物質を除去するのを可能にする衝撃波を発生させる。この例示的な実施形態では、空気フィルタチャンバ208に対して収集ホッパ222を結合して、空気フィルタチャンバ208内に沈下したダスト及び/又はデブリを収集しかつ/或いは取除く。
【0017】
この例示的な実施形態では、運転時に、周囲空気は、吸気フード200を通して空気フィルタエンクロージャ204に送られる。この例示的な実施形態では、空気フィルタエンクロージャ204に流入する空気に同伴した少なくとも幾らかのダスト及び/又はデブリは、重力により収集ホッパ222内に落下する。さらに、この例示的な実施形態では、フィルタカートリッジ214が、空気フィルタチャンバ208を通して送られた空気に担持された少なくとも幾らかのダスト及び/又はデブリを除去する。この例示的な実施形態では、濾過空気は次に、アパーチャ212を通して下流方向にかつクリーン空気チャンバ210内に送られた後に、圧縮機104(図1に示す)に送られる。この例示的な実施形態では、フィルタカートリッジ214からダスト及び/又はデブリを取除くのを可能にするために、加圧空気パルスクリーナ220が、アパーチャ212及び/又はフィルタカートリッジ214を通る噴出空気の流れに脈動を与える。フィルタカートリッジ214から取除かれたダスト及び/又はデブリは、収集ホッパ222内に落下する。
【0018】
図3は、吸気フード200の概略図である。この例示的な実施形態では、吸気フード200は、空気フィルタエンクロージャ204の外壁202から外向きに延びる下部フード部材302を備えて、入口304が該下部フード部材302によって形成される。この例示的な実施形態では、上部フード部材306は、ベース部材302の外側部分308から空気フィルタエンクロージャ204に向けて斜めに延びて、吸気フード200の外側部分308によって空気流通路が形成される。それに代えて、吸気フード200は、該吸気フード200が本明細書で説明するように機能するのを可能にするあらゆる構成を有することができる。
【0019】
この例示的な実施形態では、前置フィルタ組立体310が、入口304を通して吸気フード200内に送られる空気流を濾過する。この例示的な実施形態では、前置フィルタ組立体310は、該前置フィルタ組立体310を横切って流れる周囲空気から水分を分離する水分分離器312と、周囲空気に同伴した水分並びにダスト及び/又はデブリのような粒状物質を捕捉しかつ/或いは除去するフィルタ媒体つまり合体パッド314と、前置フィルタ組立体310内での氷の形成を防止するのを可能にする電気的外部加熱回路316とを含む。この例示的な実施形態では、外部加熱回路316は、前置フィルタ組立体310及び下部フード部材302間に配線される。特に、前置フィルタ組立体310は、水分分離器312、合体パッド314及び/又は外部加熱回路316のあらゆる組合せとすることができる。
【0020】
この例示的な実施形態では、前置フィルタ組立体310は、ヒンジ318において吸気フード200に対してピボット動可能に結合されて、該前置フィルタ組立体310が、入口304を実質的に覆う。より具体的には、この例示的な実施形態では、前置フィルタ組立体310は、吸気フード200の内部で第1のつまり作動位置320、第2のつまりバイパス位置322及び/又は作動位置320とバイパス位置322との間のあらゆる中間位置間で選択的に移動可能である。作動位置320では、前置フィルタ組立体310は、入口304を実質的に覆って、吸気フード200に流入する周囲空気が該前置フィルタ組立体310を通して送られる。これと対照的に、バイパス位置322では、前置フィルタ組立体310は、入口304を部分的にのみ覆って、周囲空気が該前置フィルタ組立体310の少なくとも一部分を通して送られない状態で吸気フード200に流入することができる。バイパス322位置では、前置フィルタ組立体310は、上部フード部材306に隣接しかつ近接近して該上部フード部材306の付近に配置される。
【0021】
この例示的な実施形態では、前置フィルタ組立体310に対して、アクチュエーティング組立体400が結合される。この例示的な実施形態では、アクチュエーティング組立体400は、作動位置320及びバイパス位置322間で前置フィルタ組立体310を選択的に位置決めするように構成された機械的組立体である。この例示的な実施形態では、アクチュエーティング組立体400は、アクチュエータロッド402、レバー組立体404、少なくとも1つの案内スリーブ406及びアクチュエータ408を含む。
【0022】
この例示的な実施形態では、アクチュエータ408は、ねじ付きバー412に結合された駆動モータ410を含み、ねじ付きバー412は、アクチュエータロッド402の端部416に隣接して配置された第1の端部414と駆動モータ410に結合された第2の端部418とを含む。それに代えて、アクチュエータロッド402は、駆動モータ410と作動係合することができる。この例示的な実施形態では、駆動モータ410は、ねじ付きバー412の相対的位置を制御する。この例示的な実施形態では、運転時に、駆動モータ410は、その長手方向軸線の周りでねじ付きバー412を回転させて、該ねじ付きバー412、従って前置フィルタ組立体310を移動させる。それに代えて、アクチュエータ組立体400及び/又は前置フィルタ組立体310は、例えば空圧、油圧及び/又は電気システムを含むその他の動作システムを使用して移動させることができる。
【0023】
この例示的な実施形態では、案内スリーブ406は、アクチュエータロッド402が案内スリーブ406を貫通して延びて該アクチュエータロッド402がその長手方向軸線に沿って摺動可能になるようにすることができるような寸法にされた内径(図示せず)を有する。この例示的な実施形態では、駆動モータ410は、アクチュエーティング組立体400を動作させてアクチュエータロッド402をその長手方向軸線に沿って平行移動させる。より具体的には、この例示的な実施形態では、駆動モータ410は、ねじ付きバー412を回転させて、該駆動モータ410の上方におけるねじ付きバー412の高さ420を調整するようにする。例えば、駆動モータ410が、ねじ付きバー412を第1の方向に回転させると、ねじ付きバー412は下降しかつ高さ420が減少して、その長手方向軸線に沿ってアクチュエータロッド402を下向きに平行移動させる。これと対照的に、駆動モータ410が、第1の方向とは逆の第2の方向に回転すると、ねじ付きバー412は上昇しかつ高さ420が増大して、その長手方向軸線に沿ってアクチュエータロッド402を上向きに平行移動させる。この例示的な実施形態では、アクチュエータロッド402及びねじ付きバー412は、ほぼ同軸に整列している。
【0024】
この例示的な実施形態では、レバー組立体404が、第1の端部422においてアクチュエータロッド402に結合され、また第2の端部424において前置フィルタ組立体310に結合される。より具体的には、この例示的な実施形態では、レバー組立体404は、アクチュエータロッド402に結合された第1のフランジ426と、前置フィルタ組立体310に結合された第2のフランジ428と、それぞれの第1のヒンジ432及び第2のヒンジ434を介して第1のフランジ426及び第2のフランジ428に結合されたレバー本体430とを含む。この例示的な実施形態では、第1のヒンジ432及び第2のヒンジ434は、アクチュエータロッド402及び/又はねじ付きバー412に対してほぼ垂直である軸線の周りで回転可能である。この例示的な実施形態では、レバー組立体404の動作は、前置フィルタ組立体310を選択的に位置決めしかつ/又は位置決めし直すのを可能にする。より具体的には、この例示的な実施形態では、アクチュエータロッド402が、その長手方向軸線に沿って下向きに平行移動すると、レバー組立体404は、前置フィルタ組立体310を作動位置320に向けて移動させる。それと対照的に、アクチュエータロッド402が、その長手方向軸線に沿って上向きに平行移動すると、レバー組立体404は、前置フィルタ組立体310をバイパス位置322に向けて移動させる。
【0025】
この例示的な実施形態では、少なくとも1つのセンサ436が、吸気フード200及び/又は前置フィルタ組立体310に結合される。この例示的な実施形態では、センサ436は、少なくとも1つの運転パラメータを検出することによってガスタービンエンジンシステム100の運転を監視する。より具体的には、この例示的な実施形態では、センサ436は、前置フィルタ組立体310に結合されて周囲空気の湿度、周囲空気の温度、前置フィルタ組立体310を横切る空気流の圧力降下、周囲空気中及び/又は前置フィルタ組立体310内の粒子数、並びに前置フィルタ組立体310における空気速度の少なくとも1つを検知するようにする。例えば、圧力センサ(図示せず)を使用して周囲空気圧力を検出することができ、また温度センサ(図示せず)を使用して吸気フィルタハウスにおける及び/又はあらゆる他の好適な位置における周囲空気温度を検出することができる。本明細書で使用する場合に、「パラメータ」という用語は、湿度、温度、圧力、粒子数及び/又は設定位置における空気速度のような値を使用して、ガスタービンエンジンシステム100の運転状態を定めることができる物理的特性を意味している。
【0026】
この例示的な実施形態では、ハードウェア及び/又はソフトウェアで実行することができる制御装置438は、通信リンク440を介してセンサ436に結合される。この例示的な実施形態では、通信リンク440は、好適な有線及び/又は無線通信プロトコルにより、制御装置438にまた該制御装置438からデータ信号を遠隔的に伝達する。例えば、そのようなデータ信号には、制御装置438に送信されるセンサ436の運転状態パラメータを表す信号、及び/又は制御装置438によってセンサ436に伝達される様々な運転コマンド信号を含むことができる。
【0027】
この例示的な実施形態では、制御装置438は、少なくとも1つのプロセッサ442及び該プロセッサ442に結合されたメモリ444を含む。例えば、制御装置438は、コンピュータシステムとすることができる。制御装置438はまた、それに限定されないがその他のセンサ、オペレータインタフェースと関連するコンピュータ周辺装置、コントロール装置、オペレータインタフェースモニタ及び/又はディスプレイ装置を含むことができる入力チャネル並びに/或いは出力チャネルを含むことができる。
【0028】
本明細書で使用する場合に、「プロセッサ」という用語は、当技術分野ではコンピュータと呼ばれる集積回路に限定されるものではなく、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロコンピュータ、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)、用途特定集積回路及びその他のプログラマブル回路を広く意味しており、かつこれらの用語は本明細書では同義的に使用される。本明細書で説明するプロセッサは、それに限定されないがセンサ、アクチュエータ、圧縮機、制御システム及び/又は監視装置を含むことができる複数の電気及び電子装置から送信される情報を処理する。そのようなプロセッサには、例えば制御システム、センサ、監視装置、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、PLCキャビネット及び/又は分散型制御システム(DCS)キャビネット内に物理的に設置することができる。
【0029】
さらに、本明細書で説明する実施形態において、「メモリ」という用語は、それに限定されないが、ランダムアクセスメモリ(RAM)のようなコンピュータ可読媒体、及びフラッシュメモリのようなコンピュータ可読不揮発性媒体を含むことができる。それに代えて、フロッピディスク、コンパクトディスクリードオンリメモリ(CD−ROM)、磁気光学ディスク(MOD)及び/又はデジタル汎用ディスク(DVD)もまた、使用することができる。RAM及び記憶装置は、1つ又は複数のプロセッサによって実行される情報及び命令を記憶しかつ送信する。RAM及び記憶装置はまた、1つ又は複数のプロセッサによる命令の実行時に、一時的数値変数、スタティック(つまり、ノンチェンジング)情報及び命令、又は他の中間情報をプロセッサに記憶しかつそれらを該プロセッサに与えるように使用することもできる。実行される命令には、それに限定されないが、空気流制御コマンドを含むことができる。命令のシーケンスの実行は、ハードウェア回路及びソフトウェア命令のあらゆる特定の組合せに限定されるものではない。
【0030】
この例示的な実施形態では、制御装置438は、センサ入力及び/又はオペレータによる命令に基づいてガスタービンエンジンシステム100の運転の制御を可能にするプログラムを実行する。例えば、制御装置438が実行するプログラムには、例えば前置フィルタ組立体310の構成を決定するために使用するプログラムを含むことができる。この例示的な実施形態では、制御装置438が発生したコマンドにより、センサ436に周囲環境の少なくとも1つのパラメータを監視させかつ/又はガスタービンエンジンシステム100上でその他の制御設定値を起動させることができることができる。
【0031】
この例示的な実施形態では、制御装置438は、アクチュエーティング組立体400を動作させて前置フィルタ組立体310を選択的に位置決めする。より具体的には、この例示的な実施形態では、制御装置438は、駆動モータ410を動作させてセンサ436が検出した少なくとも1つのパラメータに基づいてアクチュエータロッド402をその長手方向軸線に沿って移動させることによって前置フィルタ組立体310を選択的に位置決めするように構成される。
【0032】
この例示的な実施形態では、運転時に、吸気フード200は、空気フィルタチャンバ208内に周囲空気を導く。より具体的には、この例示的な実施形態では、周囲空気は、入口304を通して送られ、かつ前置フィルタ組立体310が作動位置320にある時に、空気は、前置フィルタ組立体を通して送られる。この例示的な実施形態では、前置フィルタ組立体310により、吸気フード200に流入する空気内に同伴した少なくとも幾らかの水分及び/又はデブリを除去することが可能になる。より具体的には、この例示的な実施形態では、周囲空気が前置フィルタ組立体310を通って流れると、水分分離器312は、慣性分離を使用して水滴を除去し、また合体パッド314は、周囲空気中に含有された水分をより大きな水滴に合体させる。この例示的な実施形態では、合体パッド314による合体した水滴は、周囲空気により送られる前に水分分離器312内に重力で送給される。
【0033】
この例示的な実施形態では、捕捉されたデブリ、ダスト及び/又は水分の量に応じて、前置フィルタ組立体310は、吸気フード200を通る空気流を制限し、それによって大きな空気圧力の損失を生じる可能性がある。より具体的には、この例示的な実施形態では、大きな空気圧力の損失は、前置フィルタ組立体310上へのダスト及び/又はデブリの蓄積並びに/或いは前置フィルタ組立体310上への雪及び/又は氷の形成によって引き起こされる可能性がある。この例示的な実施形態では、センサ436は、吸気フード200、より具体的には前置フィルタ組立体310の内部における又はそれらに隣接した位置における湿度、温度、圧力、粒子数及び/又は空気速度を含むあらゆる好適なパラメータを監視する。
【0034】
この例示的な実施形態では、センサ436が所定の閾値になった値を有するパラメータを検出すると、該センサ436は、制御装置438に信号を送信する。この例示的な実施形態では、所定の閾値は、例えば所定の周囲空気湿度、所定の周囲空気温度、前置フィルタ組立体310を横切る所定の圧力降下、吸気フード200及び/又は前置フィルタ組立体310における所定の粒子数、並びに/或いは所定の空気流速度のあらゆる組合せを含むあらゆる運転パラメータの組合せに基づくことができる。
【0035】
例えば、センサ436が、夏期、雨期、又は霧の多いシーズン時に頻繁に起る可能性があるような温暖周囲空気及び/又は湿潤周囲空気を検出すると、センサ436は第1の信号を制御装置438に送信する。より具体的には、この例示的な実施形態では、センサ436が、周囲空気において約40°F又はそれ以上の第1の温度、約90%又はそれ以上の第1の相対湿度、約1.5インチの水柱(WC)以下の第1の圧力降下、立法メートル当たり約10.0ミリグラム(mg)以下の粒子数を検出すると、センサ436は、第1の信号を制御装置438に送信する。これと対照的に、センサ436が、冬期、乾期、又は風の多いシーズン時に頻繁に起る可能性があるような凍結状態、砂あらし及び/又はダストストームを検出すると、センサ436は、第2の信号を制御装置438に送信する。より具体的には、この例示的な実施形態では、センサ436が、周囲空気において約40°F以下の第2の温度、約90%以下の第2の相対湿度、約1.5インチのWC又はそれ以上の第2の圧力降下、並びに/或いは立法メートル当たり約10.0mg又はそれ以上の粒子数を検出すると、センサ436は、第2の信号を制御装置438に送信する。
【0036】
この例示的な実施形態では、制御装置438は、センサ436が検出したパラメータ及びセンサ436によって送信された1つ又は複数の信号に基づいて、アクチュエーティング組立体400を動作させて前置フィルタ組立体310を移動させる。例えば、制御装置438が、センサ436から第1の信号を受信すると、制御装置438は、アクチュエーティング組立体400のための第1のコマンドを決定し、また制御装置438が、センサ436から第2の信号を受信すると、制御装置438は、アクチュエーティング組立体400のための第2のコマンドを決定する。この例示的な実施形態では、第1のコマンドは、アクチュエーティング組立体400が前置フィルタ組立体310を作動位置320に向けて移動させる命令を含み、また第2のコマンドは、アクチュエーティング組立体400が前置フィルタ組立体310をバイパス位置322に向けて移動させる命令を含む。この例示的な実施形態では、制御装置438は、決定したコマンドをアクチュエーティング組立体400に送信して前置フィルタ組立体310を作動位置320又はバイパス位置322に向けて移動させる。
【0037】
この例示的な実施形態では、アクチュエーティング組立体400が第1のコマンドを受信すると、駆動モータ410が、ねじ付きバー412をその長手方向軸線の周りで回転させて該ねじ付きバー412の高さ420を減少させ、従ってアクチュエータロッド402をその長手方向軸線に沿って下向きに平行移動させて、前置フィルタ組立体310が作動位置320に向けて移動するようにする。これとは対照的に、アクチュエーティング組立体400が第2のコマンドを受信すると、駆動モータ410が、ねじ付きバー412をその長手方向軸線の周りで回転させて該ねじ付きバー412の高さ420を増大させ、従ってアクチュエータロッド402をその長手方向軸線に沿って上向きに平行移動させて、前置フィルタ組立体310がバイパス位置に向けて移動するようにする。さらに、この例示的な実施形態では、バイパス位置322において、使用者は、タービンエンジンシステム100を運転状態に維持しながら、前置フィルタ組立体310にアクセスして該前置フィルタ組立体310を清掃し、取外しかつ/又は交換するようにすることができる。使用者が前置フィルタ組立体310を清浄化した後に、制御装置438は、使用者入力装置(図示せず)から第2の信号を受信して前置フィルタ組立体310を作動位置320に選択的に戻すことができる。
【0038】
この例示的な実施形態では、制御装置438は、メモリ444内にパラメータマトリックスを記録しかつ/又は維持する。この例示的な実施形態では、パラメータマトリックスは、検出したパラメータに少なくとも部分的に基づいた複数のフットプリントを含むことができる。この例示的な実施形態では、パラメータマトリックスは、複数のフットプリントに少なくとも部分的に基づいてアクチュエーティング組立体400の作動コマンドを決定するのを可能にすることができる。例えば、制御装置438は、少なくとも検出したパラメータに基づいてガスタービンエンジンシステム100の運転コマンドを自動的に較正及び/又は調整することができる。従って、この例示的な実施形態では、制御装置438は、湿度、温度、圧力、粒子数及び空気速度のような特定のパラメータにおける季節的パターンに基づいてアクチュエーティング組立体400を作動させることができる。
【0039】
本明細書で説明する例示的な方法及びシステムは、周囲条件に基づいて作動可能である前置濾過バイパスシステムを提供する。より具体的には、本明細書で説明する例示的な前置濾過バイパスシステムにより、運転時間時にフィルタ組立体を選択的にバイパスさせてタービンエンジンの運転効率を高めることが可能になる。さらに、公知の濾過器組立体とは極めて対照的に、本明細書で説明する例示的な実施形態は、関連するタービンエンジンの運転停止の必要なしにフィルタ組立体を選択的にバイパスさせることが可能になる。従って、この例示的な前置濾過バイパスシステムにより、ガスタービンエンジンシステム、より具体的にはガスタービンエンジン吸気システムを維持するコストを低減することが可能になる。
【0040】
前置濾過バイパスシステムのためのシステム及び方法の例示的な実施形態を詳細に上述している。この例示的なシステム及び方法は、本明細書で説明する特定の実施形態に限定されるものでなく、むしろ、本システムの構成要素及び/又は本方法のステップは、本明細書で説明するその他の構成要素及び/又はステップとは独立してかつ別個に利用することができる。例えば、例示的な実施形態は、他のシステム及び方法と組合せて使用することができ、かつ本明細書で説明するようなガスタービンエンジンシステムのみで実施することに限定されるものではない。むしろ、この例示的な実施形態は、多くの他の燃焼システム用途と関連させて実施しかつ利用することができる。
【0041】
本発明の様々な実施形態の特定の要素をその他の図面においてではなく幾つかの図面において示すことができるが、これは専ら、便利さのためである。本発明の原理によると、図面のあらゆる特徴は、あらゆる他の図面のあらゆる特徴と組合せて引用しかつ/又は特許請求することができる。
【0042】
本明細書は最良の形態を含む実施例を使用して、本発明を開示し、また当業者が、あらゆる装置又はシステムを製作しかつ使用しまたあらゆる組込み方法を実行することを含む本発明の実施を行なうことを可能にもする。本発明の特許性がある技術的範囲は、特許請求の範囲により定まり、また当業者が想到するその他の実施例を含むことができる。そのようなその他の実施例は、それらが特許請求の範囲の文言と相違しない構造的要素を有するか又はそれらが特許請求の範囲の文言と本質的でない相違を有する均等な構造的要素を含む場合には、特許請求の範囲の技術的範囲内に属することになることを意図している。
【符号の説明】
【0043】
100 ガスタービンエンジンシステム
102 吸気フィルタハウス
104 圧縮機
106 燃焼器組立体
108 タービン
110 ロータシャフト
112 負荷
200 吸気フード
202 外壁
204 空気フィルタエンクロージャ
206 管板
208 空気フィルタチャンバ
210 クリーン空気チャンバ
212 アパーチャ
214 複数のフィルタカートリッジ
216 円筒形部分
218 円錐形部分
220 空気パルスクリーナ
222 収集ホッパ
302 下部フード部材
304 入口
306 上部フード部材
308 外側部分
310 前置フィルタ組立体
312 水分分離器
314 媒体つまり合体パッド
316 電気外部加熱回路
318 ヒンジ
320 作動位置
322 バイパス位置
400 アクチュエーティング組立体
402 アクチュエータロッド
404 レバー組立体
406 案内スリーブ
408 アクチュエータ
410 駆動モータ
412 ねじ付きバー
414 第1の端部
416 端部
418 第2の端部
420 高さ
422 第1の端部
424 第2の端部
426 第1のフランジ
428 第2のフランジ
430 レバー本体
432 第1のヒンジ
434 第2のヒンジ
436 センサ
438 制御装置
440 通信リンク
442 プロセッサ
444 メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンエンジン(100)で使用する吸気フィルタハウス(102)であって、
作動位置(320)及びバイパス位置(322)間で選択的に位置決め可能なフィルタ組立体を備えた吸気フード(200)と、
前記フィルタ組立体に結合されて、該フィルタ組立体を選択的に位置決めするアクチュエーティング組立体(400)と、
少なくとも1つの運転パラメータを検出するように構成されたセンサ(436)と、
前記センサに結合されて、前記少なくとも1つの運転パラメータに基づいて前記アクチュエーティング組立体を動作させる制御装置(438)と
を備える吸気フィルタハウス(102)。
【請求項2】
前記制御装置(438)が、メモリ領域及び該メモリ領域に結合されたプロセッサ(442)を含んでおり、前記プロセッサが、前記制御装置に、
前記センサ(436)から前記少なくとも1つの運転パラメータを受信させ、
前記センサから受信した前記少なくとも1つの運転パラメータに基づいて前記フィルタ組立体の所望の位置を決定させ、かつ
前記アクチュエーティング組立体(400)に信号を送信して、前記制御装置によって決定された前記位置に向けて前記フィルタ組立体を移動させる
ようにプログラミングされている、請求項1記載の吸気フィルタハウス(102)。
【請求項3】
前記プロセッサ(442)が、前記制御装置(438)に、前記少なくとも1つの運転パラメータに少なくとも部分的に基づいた、複数のフットプリントを含むパラメータマトリックスを維持させるようにさらにプログラミングされる、請求項2記載の吸気フィルタハウス(102)。
【請求項4】
前記アクチュエーティング組立体(400)が、少なくとも1つの案内スリーブ(406)及び該少なくとも1つの案内スリーブを貫通して延びるアクチュエータロッド(402)を含んでおり、前記アクチュエータロッドが、前記フィルタ組立体に結合される、請求項1記載の吸気フィルタハウス(102)。
【請求項5】
前記アクチュエーティング組立体(400)がアクチュエータ(408)をさらに含んでおり、前記制御装置(438)が、前記アクチュエータを動作させて前記案内スリーブ(406)を通して前記アクチュエータロッド(402)を平行移動させるように構成される、請求項4記載の吸気フィルタハウス(102)。
【請求項6】
前記フィルタ組立体が、水分分離器(312)、フィルタ媒体及び外部加熱回路を含む、請求項1記載の吸気フィルタハウス(102)。
【請求項7】
前記少なくとも1つの運転パラメータが、湿度、温度、圧力、粒子数及び空気速度の少なくとも1つを含む、請求項1記載の吸気フィルタハウス(102)。
【請求項8】
タービンエンジン(100)であって、
吸気ダクトと、
前記吸気ダクトに結合されかつ作動位置(320)及びバイパス位置(322)間で選択的に位置決め可能なフィルタ組立体を備えた吸気フィルタハウス(102)と、
前記フィルタ組立体に結合されて、該フィルタ組立体を選択的に位置決めするアクチュエーティング組立体(400)と、
少なくとも1つの運転パラメータを検出するように構成されたセンサ(436)と、
前記センサに結合されて、前記少なくとも1つの運転パラメータに基づいて前記アクチュエーティング組立体を動作させる制御装置(438)と
を備えるタービンエンジン(100)。
【請求項9】
前記制御装置(438)が、メモリ領域及び該メモリ領域に結合されたプロセッサ(442)を含んでおり、前記プロセッサが、前記制御装置に、
前記センサ(436)から前記少なくとも1つの運転パラメータを受信させ、
前記センサから受信した前記少なくとも1つの運転パラメータに基づいて前記フィルタ組立体の所望の位置を決定させ、かつ
前記アクチュエーティング組立体(400)に信号を送信して、前記制御装置によって決定された前記位置に向けて前記フィルタ組立体を移動させる
ようにプログラミングされている、請求項8記載のタービンエンジン(100)。
【請求項10】
前記プロセッサ(442)が、前記制御装置(438)に、前記少なくとも1つの運転パラメータに少なくとも部分的に基づいた、複数のフットプリントを含むパラメータマトリックスを維持させるようにさらにプログラミングされる、請求項9記載のタービンエンジン(100)。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate