説明

ガスタービン燃焼器の火炎スタビライザ

【課題】燃焼器内で発生した熱流束から熱を吸収しかつ火炎の着火を持続させるのに十分な温度を維持するスタビライザを提示する。
【解決手段】二次燃料ノズル16は、燃焼室12に近接して配置されて該燃焼室12に燃料54を吐出する。スタビライザ32が、二次燃料ノズル16における燃料54が着火した時に火炎に近接近して位置するように該二次燃料ノズル16に配置される。スタビライザ32は、燃焼器10内で発生した熱流束から熱を吸収する能力を有しかつ火炎の着火を持続させるのに十分な温度を維持する材料で構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、総括的にはガスタービン燃焼器に関する。より具体的には、本発明は、ガスタービン燃焼器の燃料ノズルに配置された保炎器(火炎スタビライザ)に関し、それによって燃焼器は、より希薄な予混合燃料空気混合気で作動可能になり、より低い酸化窒素エミッションを生じることになる。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ガスタービン燃焼器は、一次及び二次燃料ノズルの両方を有する。そのような燃焼器は、一次、希薄−希薄、二次及び予混合モードである4つの作動モードを有する。一次モードは、一次ノズルのみに燃料が送給される状態で燃焼器を着火させる場合に用いられる。希薄−希薄モードでは、一次及び二次ノズルの両方に燃料が送給される状態で、二次ノズルもまた着火される。二次モードでは、燃料は二次ノズルのみに送給され、それによって一次ノズルにおける火炎を消滅させる。次に予混合モードでは、燃料は一次及び二次ノズルの両方に送給されるが、予混合燃料空気混合気が酸化窒素エミッションの低減を含む所望の性能に最適な状態で、火炎は二次ノズル領域においてのみ存在する。
【0003】
燃焼器の酸化窒素エミッションを低下させようとする際に、希薄条件下で燃焼器を作動させることが多い。しかしながら、希薄条件下で作動させることは、希薄ブローアウトの危険性を冒すことになる。希薄ブローアウトは、希薄条件下で作動しておりかつ流動障害(流れの外乱)のような変化が発生した時に発生する。ブローアウトは、燃焼器を希薄−希薄モードに戻させる又は停止さえさせる結果となり、上述のようにそれぞれ予混合モードに再び移るか又は再点火を必要とする。希薄ブローアウトを回避するために、多くの燃焼器は、濃厚条件で運転されるが、この条件では、より高い火炎温度及びより多くの酸化窒素エミッションを生じることになる。
【0004】
政府の排出ガス(エミッション)規制は、酸化窒素のようなガスタービンの汚染物質エミッションに次第に関心を持つようになってきた。
【0005】
米国特許第6026644号には、所望の火炎形状を促進する乱流プロモータを備えた凹面円錐形ノズルが開示されている。この火炎形状は、該火炎形状が流れの外乱を受け難く、それによってより希薄での作動を可能にするような、より安定しているものとして開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6026644号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
ガスタービン燃焼器を提示し、本ガスタービン燃焼器は、予混合室と燃焼室とを含む。予混合室は、空気を取込むための少なくとも1つの孔を備える。少なくとも1つの一次燃料ノズルが、予混合室内に燃料を吐出するように配置される。一次燃料ノズルから吐出された燃料は、予混合室内で取込み空気と混合して燃料空気混合気を形成する。燃焼室は、予混合室の下流に位置する。二次燃料ノズルは、燃焼室に近接して配置されて該燃焼室に燃料を吐出する。スタビライザが、二次燃料ノズルにおける燃料が着火した時に火炎に近接近して位置するように該二次燃料ノズルに配置される。スタビライザは、燃焼器内で発生した熱流束から熱を吸収する能力を有しかつ火炎の着火を持続させるのに十分な温度を維持する材料で構成される。
【0008】
ガスタービン燃焼器内で使用するための燃料ノズルもまた提示しており、ガスタービン燃焼器は、燃料ノズルと、該燃料ノズルが着火した時に火炎に近接近して位置するように該燃料ノズルに配置されたスタビライザとを含む。スタビライザは、燃焼器内で発生した熱流束から熱を吸収する能力を有しかつ火炎の着火を持続させるのに十分な温度を維持する材料で構成される。
【0009】
ガスタービン燃焼器内において火炎を安定させる方法を提示する。本方法は、ガスタービン燃焼器の燃焼室に燃料を吐出するステプと、燃焼室における燃料が着火した時に火炎に近接近してスタビライザを位置させるステップとを含む。スタビライザは、燃焼器内で発生した熱流束から熱を吸収しかつ火炎の着火を持続させるのに十分な温度を維持する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の例示的な実施形態のガスタービン燃焼器システムの簡略断面図。
【図2】図1のガスタービン燃焼器システムの火炎スタビライザの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1を参照すると、本発明の実施形態のガスタービン燃焼器は、その全体を参照符号10で示している。ガスタービン燃焼器10は一般的に、燃焼室12、一次燃料ノズル14(本図に示すような幾つかのガスタービンは、各燃焼器内で複数のノズルを使用する)、二次燃料ノズル16、環状の予混合室18、及びベンチュリ20を含む。燃焼室12は、その形状が燃焼器中心線22の周りでほぼ円筒形であり、壁24及び燃焼ライナ26によって囲まれる。ほぼ円筒形の燃焼ライナ26は、燃焼室12を形成した上部壁28及び下部壁30を含む。
【0012】
ガスタービン燃焼器10は、一次、希薄−希薄、二次及び予混合モードである4つの作動モードを有する。
【0013】
一次モードは、一次ノズル14のみに燃料54が送給される状態で燃焼器10を着火させる場合に用いられる。空気流は、入口ポート50を通して予混合室18内に供給される。図1を簡略化する目的で、一次燃料ノズル先端ベーン及び冷却回路は示してないことを理解されたい。燃料54は、燃料流量制御装置56を通して一次燃料ノズル14に供給される。燃料空気混合気は次に、スパークプラグ(図示せず)又は他の従来型の点火手段によって着火されて、一次燃料ノズル14で予混合室18内に燃焼を引き起こす。
【0014】
希薄−希薄モードでは、それぞれ一次及び二次ノズル14及び16に燃料が送給される状態で、二次ノズル16もまた着火される。燃料54の約60%が一次燃料ノズル14に供給され、また燃料54の約40%が二次燃料ノズル16に供給される。二次ノズル16は、一次ノズル14の火炎によって着火される。これには、所望の熱流束を発生させて、火炎スタビライザ(保炎器)32の細長い部材34を急激に加熱させる。
【0015】
二次モードでは、燃料54は二次ノズル16のみに送給され、それによって一次ノズルにおける火炎を消滅させる。燃焼室12内での燃焼はさらに高速で継続するが、酸化窒素エミッションは低減されなかった。
【0016】
次に予混合モードでは、燃料54は、それぞれ一次及び二次ノズル14及び16の両方に送給されるが、火炎は、二次ノズル16においてのみ存在する。この時、燃料54の約80%が一次燃料ノズル14に供給され、また燃料の約20%が二次燃料ノズル16に供給される。一次燃料ノズル14からの燃料54は、入口ポート50から引込まれた空気と予混合して、予混合室18内に燃料空気混合気を形成する。この燃料空気混合気は、未だ着火されておらず、矢印58で示すように、燃焼室12に向かって下流方向に移動する。ここでベンチュリ20の収束/発散壁60及び62は、燃料空気混合気の流れを絞る。ベンチュリ20によって導入された流れの絞りにより、収束壁60を通過する時にベルヌーイの法則に基づいて混合気の加速が生じ、それによって圧力の低下と共に速度の増加が生じる。従って、これにより、燃焼室12内に火炎を維持しながら、燃料空気混合気が燃焼室12内に加速される。燃料空気混合気は、燃焼室12内で二次燃料ノズル16の火炎によって着火される。燃焼室12内で火炎が非常に強化され、それによって熱流束の増大が発生する。
【0017】
二次燃料ノズル16には、火炎スタビライザ組立体32が取付けられる。火炎スタビライザ組立体32は、燃焼室12内で発生した熱流束を活用する。
【0018】
図2を参照すると、火炎スタビライザ組立体32が、ほぼ円筒形状を有する細長い部材34を含む。ほぼ円筒形状を図示しかつ説明したが、本発明の技術思想又は技術的範囲から逸脱することなくその他の形状(ほぼ円錐形のような)を使用いて部材34を形成することができることを理解されたい。部材34は、二次燃料ノズル16を越えかつ火炎に近接近して又は火炎内に延びるのに十分な長さを有する。部材34は、熱流束により生じる高温に加熱されかつ該高温を保持する能力を有するあらゆる適当な材料で構成される。そのような材料には、それに限定されないが、タングステン及びタングステン合金が含まれる。部材34はさらに、表面35で形成したように外向きにフレア状になったその一端部を含む。
【0019】
ほぼ円筒形のホルダ36が、該ホルダ36が二次ノズル16に固定された状態で、部材34を支持する。ホルダ36は、それを貫通した開口部38を有し、開口部の一端部はネジ付きにされ、また他端部は、表面39で形成したように内向きにテーパ状になっている。部材34は、該部材34の表面35がホルダ36の表面39と相互接触又は係合するように、該ホルダ36の開口部38内に挿入される。ネジ付き部材(例えば、ネジ又はボルト)48が、ネジ付き開口部内に螺入されて、部材34の表面35とホルダ36の表面39とを係合固定する。ホルダ36はさらに、外向きに延びるショルダ部分46を含み、このショルダ部分46は、二次燃料ノズル16に対して組立体32を支持する。
【0020】
燃焼器10は、より希薄条件下で作動して、酸化窒素エミッションをさらに低減することができる。部材34が二次燃料ノズル16から吐出される燃料に対して連続着火をもたらすことになるので、希薄ブローアウトが大幅に減少することになる。従って、そうでなければブローアウトを引き起こすおそれがある例えば流動障害のような事象が生じた場合であっても、部材34が二次燃料ノズル16から吐出する燃料に連続着火をもたらすことになるので、そのようなブローアウトは発生しないことになる。
【0021】
好ましい実施形態を図示しかつ説明してきたが、本発明の技術思想及び技術的範囲から逸脱することなく、それら実施形態に対して様々な修正及び置換を行うことができる。従って、本発明は、限定としてではなく例示として説明してきたことを理解されたい。
【符号の説明】
【0022】
10 ガスタービン燃焼器
12 燃焼室
14 一次燃料ノズル
16 二次燃料ノズル
18 予混合室
20 ベンチュリ
22 燃焼器中心線
24 壁
26 燃焼ライナ
28 上部壁
30 下部壁
32 火炎スタビライザ
34 細長い部材
35 表面
36 ホルダ
38 開口部
39 表面
46 外向きに延びるショルダ部分
48 ネジ付き部材
50 入口ポート
54 燃料
56 流量制御装置
60 収束壁
62 発散壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を取込むための少なくとも1つの孔(50)を備えた予混合室(18)と、
前記予混合室(18)内に燃料(54)を吐出するように配置されかつそれから吐出された前記燃料が該予混合室(18)内で前記取込み空気と混合して燃料空気混合気を形成するようになった少なくとも1つの一次燃料ノズル(14)と、
前記予混合室(18)の下流に位置した燃焼室(12)と、
前記燃焼室(12)に近接して配置されて該燃焼室(12)に燃料を吐出するようになった二次燃料ノズル(16)と、
前記二次燃料ノズル(16)における燃料が着火した時に火炎に近接近して位置するように該二次燃料ノズル(16)に配置されたスタビライザ(32)と、を含み、
前記スタビライザ(32)が、前記燃焼器(10)内で発生した熱流束から熱を吸収する能力を有しかつ火炎の着火を持続させるのに十分な温度を維持する材料で構成される、
ガスタービン燃焼器(10)。
【請求項2】
前記予混合室(18)と前記燃焼室(12)との間に位置したベンチュリ(20)をさらに含み、
前記ベンチュリ(20)が、前記燃焼室(12)内に火炎を維持しながら、前記予混合室(18)から該燃焼室(12)内への燃料空気混合気の流れを絞る、
請求項1記載のガスタービン燃焼器(10)。
【請求項3】
前記スタビライザ(32)が、その一端部において前記二次燃料ノズル(16)に位置しかつその他端部において前記燃焼室(12)に向かって突出する細長い部材(34)を含む、請求項1記載のガスタービン燃焼器(10)。
【請求項4】
前記細長い部材(34)が、ほぼ円筒形又はほぼ円錐形である、請求項3記載のガスタービン燃焼器(10)。
【請求項5】
前記二次燃料ノズル(16)で支持されかつ該二次燃料ノズル(16)において前記細長い部材(34)の端部に係合して該細長い部材(34)を保持するように構成されホルダ(36)をさらに含む、請求項3記載のガスタービン燃焼器(10)。
【請求項6】
前記二次燃料ノズル(16)における前記細長い部材(34)の端部が、フレア状になっており、
前記ホルダ(36)が、その一端部がテーパ状になった該ホルダ(36)を貫通する開口部(38)を有し、
前記細長い部材(34)が、該細長い部材(34)のフレア状になった端部が前記開口部(38)のテーパ状になった端部に係合するように、前記ホルダ(36)の開口部(38)を通して挿入される、
請求項5記載のガスタービン燃焼室(10)。
【請求項7】
前記ホルダ(36)の別の端部が、ネジ付き開口部(38)を有し、
前記ネジ付き開口部(38)に係合しかつ前記細長い部材(34)を前記ホルダ(36)に固定するネジ付き部材(48)をさらに含む、
請求項6記載のガスタービン燃焼器(10)。
【請求項8】
前記材料が、タングステン又はタングステン合金を含む、請求項1記載のガスタービン燃焼器(10)。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−198171(P2009−198171A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−34691(P2009−34691)
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY