説明

ガスタービン発電プラント

【課題】工場の操業状況により変動する副生ガスに柔軟に対応することが可能で、安定的に発電を行うことが可能なガスタービン発電プラントを提供する。
【解決手段】工場から副次的に発生する副生ガスを燃料とするガスタービン発電設備30と、ガスハイドレートを貯蔵可能なタンク102を有し、貯蔵するガスハイドレートをガス化させガスを送出するガスハイドレートガス化装置100とを備え、前記ガスハイドレートをガス化させたガスを前記ガスタービン発電設備30の増熱用燃料として使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場の操業に伴い副次的に発生する副生ガスを燃料とするガスタービン発電プラントに関し、特に工場の操業状況により変動する副生ガスに柔軟に対応することが可能で、安定的に発電を行うことが可能なガスタービン発電プラントに関する。
【背景技術】
【0002】
図3は、製鉄所の操業に伴い発生する高炉ガス等の副生ガスを燃料とする従来のガスタービン発電設備の概略的構成を示す。高炉ガス等の低圧・低発熱量燃料を使用するガスタービン発電設備1では、低発熱量ガスである高炉ガスを混合器2を介して高発熱量ガスと混合し、増熱された燃料ガスは、軸流式の燃料圧縮機3で昇圧して燃焼器4へ供給され、空気圧縮機5から送られる高圧の空気と混合、燃焼する。この燃焼ガスは、ガスタービン6の駆動源となり、ガスタービン6は、空気圧縮機5、燃料圧縮機3を駆動すると共に発電機7を駆動し、これにより発電を行う。燃焼器4の上流側には燃料遮断弁13、空気圧縮機5の吸込空気ラインにはフィルタ14を有する。高発熱量ガスとしては、転炉ガス、コークス炉ガスの他、これらガスを混合したガス、これらガスと高炉ガスとを混合した混合ガスがある。
【0003】
燃料圧縮機3に使用する軸流式圧縮機は、サージングの範囲が広く、吸込む燃料ガス流量が所定量以下になるとサージングが発生するため、これを回避する目的で、出力が低下し燃焼器4への供給量が減少しても吸込む燃料ガス量が所定の流量以下とならないように、燃料ガス戻りライン8を通じて吐出ガス(燃料ガス)の一部を循環運転している。燃料ガス戻りライン8の途中には、戻りガス(循環ガス)量を調整するための第1ガス戻量制御弁9が備えられている。また、燃料ガス戻りライン8は、大量の戻りガスを処理するためのバイパスライン10を有し、バイパスライン10には、第2ガス戻量制御弁11が設けられている。燃料圧縮機3で燃料ガスを圧縮すると、燃料ガスの温度が上昇するため、循環ガスは、燃料ガス戻りライン8に設けられたガス冷却器12で冷却され、燃料圧縮機3に返送される。
【0004】
上記ガスタービン発電設備1では、通常出力運転で燃料圧縮機3が吸込む燃料ガスの流量が所定量以上であっても燃料圧縮機3により高温・高圧となった燃料ガスの一部は、制御性を確保するためガス冷却器12で冷却し燃料圧縮機3に返送するため、エネルギが無駄に消費されているという問題がある。この問題に対して本発明者らは、膨張タービンなどを用いてエネルギを回収する発明を行い、既に特許出願を行っている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007−23976号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記ガスタービン発電設備1に関しては、上記の問題の他、次のような課題がある。ガスタービン発電設備1は、製鉄所の操業に伴い発生する高炉ガス等の副生ガスを燃料とするので、製鉄所の操業状況により発生する副生ガスの種類ごとにガス量、ガス組成、ガスの発熱量が大きく変動する。特に燃料ガス発熱量を所定の発熱量に増熱するための高発熱量ガスが不足すると、多量の高炉ガスがあっても十分な発電を行うことができない。また、ガスタービン発電設備1は、燃料ガスを昇圧する燃料圧縮機3を有するためLNG焚きガスタービンにみられる夏季の大気温度上昇による出力低下と同様に、副生ガス、特に高炉ガスの温度上昇による出力低下が、季節に関係なく高炉の操業状況により発生する。現在のところ、これら課題を解決する技術は開発されておらず、開発が待たれているところである。さらにこれら課題と上記のエネルギの無駄な消費も併せて解決できればより好ましいことは言うまでもない。
【0006】
本発明の目的は、工場の操業状況により変動する副生ガスに柔軟に対応することが可能で、安定的に発電を行うことが可能なガスタービン発電プラントを提供することである。またエネルギを有効利用する、工場から副次的に発生する副生ガスを燃料とするガスタービン発電プラントの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、工場から副次的に発生する副生ガスを燃料とするガスタービン発電設備と、ガスハイドレートを貯蔵可能なタンクを有し、貯蔵するガスハイドレートをガス化させガスを送出するガスハイドレートガス化装置とを備え、前記ガスハイドレートをガス化させたガス及び/又は前記ガスハイドレートガス化装置から送出されるボイルオフガスを前記ガスタービン発電設備の増熱用燃料として使用することを特徴とするガスタービン発電プラントである。
【0008】
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載のガスタービン発電プラントにおいて、前記副生ガスは、高炉ガス及び高炉ガスに比較し発熱量が高く高炉ガスに混合し発熱量を所定の発熱量に増加させる高発熱量ガスを含み、前記ガスハイドレートが天然ガスハイドレート及び/又はメタンハイドレートであり、天然ガス及び/又はメタンガスを前記高発熱量ガスの代替ガスとすることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の本発明は、請求項1又は請求項2に記載のガスタービン発電プラントにおいて、前記ガスタービン発電設備は、前記副生ガス、前記ガスハイドレートをガス化させたガス及び/又は前記ガスハイドレートガス化装置から送出されるボイルオフガスを昇圧可能な燃料圧縮機と、前記燃料圧縮機が圧縮した燃料ガスの一部を燃料圧縮機入口に返送する燃料ガス戻りラインと、前記燃料ガス戻りラインを流通する前記燃料圧縮機で圧縮され高温となった燃料ガスを、前記ガスハイドレートガス化装置が貯蔵するガスハイドレート及び/又はガスハイドレートをガス化させるとき発生する水の冷熱を利用して冷却する戻りガス冷却器と、を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の本発明は、請求項3に記載のガスタービン発電プラントにおいて、さらに前記燃料ガス戻りラインを流通する前記燃料圧縮機で圧縮され高温となった燃料ガスの有する熱を、前記ガスハイドレートガス化装置が貯蔵するガスハイドレートのガス化の熱源に使用することを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の本発明は、請求項3又は請求項4に記載のガスタービン発電プラントにおいて、さらに前記燃料圧縮機へ導入する副生ガスを、前記ガスハイドレートガス化装置が貯蔵するガスハイドレート及び/又はガスハイドレートをガス化させるとき発生する水の冷熱を利用して冷却する燃料冷却器を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のガスタービン発電プラントは、ガスタービン発電設備に増熱用燃料としてのガスを送出可能なガスハイドレートガス化装置を備えるので、工場から副次的に発生する副生ガスのガス組成、ガス量、ガスの発熱量が工場の操業状態により変動する場合であっても、ガスハイドレートをガス化させたガス及び/又はガスハイドレートガス化装置から送出されるボイルオフガスを増熱用燃料として補充することで、工場の操業状況により変動する副生ガスに柔軟に対応し、安定的に発電を行うことができる。さらにガスハイドレートガス化装置は、ガスハイドレートを貯蔵可能なタンクを有するので、ガスハイドレートを長期間貯蔵することが可能であり、副生ガスの変動により柔軟に対応することができる。
【0013】
また本発明によれば、工場から発生する副生ガスは、高炉ガス及び高炉ガスに比較し発熱量が高く高炉ガスに混合し発熱量を所定の発熱量に増加させる高発熱量ガスを含み、前記ガスハイドレートが天然ガスハイドレート及び/又はメタンハイドレートであり、天然ガス及び/又はメタンガスを前記高発熱量ガスの代替ガスとするので、製鉄所の操業状態により高発熱量ガスが不足しても、天然ガス及び/又はメタンガスを代替ガスとすることで柔軟に対応し、安定的に発電を行うことができる。
【0014】
また本発明によれば、前記ガスタービン発電設備は、前記副生ガス、前記ガスハイドレートをガス化させたガス及び/又は前記ガスハイドレートガス化装置から送出されるボイルオフガスを昇圧可能な燃料圧縮機を備えるので、燃料の圧力が低くても使用することが可能であり適用範囲が広がる。さらに燃料ガス戻りラインを備え、燃料ガス戻りラインを流通する前記燃料圧縮機で圧縮され高温となった燃料ガスをガスハイドレートガス化装置が貯蔵するガスハイドレート及び/又はガスハイドレートをガス化させるとき発生する水の冷熱を利用して冷却する戻りガス冷却器を備えるので、エネルギの有効利用、省エネルギにつながる。
【0015】
また本発明によれば、さらに前記燃料ガス戻りラインを流通する前記燃料圧縮機で圧縮され高温となった燃料ガスの有する熱を、前記ガスハイドレートガス化装置が貯蔵するガスハイドレートのガス化の熱源に使用するので、エネルギの有効利用、省エネルギにつながる。
【0016】
また本発明によれば、さらに前記燃料圧縮機へ導入する副生ガスを、前記ガスハイドレートガス化装置が貯蔵するガスハイドレート及び/又はガスハイドレートをガス化させるとき発生する水の冷熱を利用して冷却する燃料冷却器を備えるので、燃料である副生ガスを冷却することができる。これにより例えば高炉の操業状況により発生する高炉ガスの温度上昇による発電出力の低下を防止することができる。また副生ガスを前記ガスハイドレートガス化装置が貯蔵するガスハイドレート及び/又はガスハイドレートをガス化させるとき発生する水の冷熱を利用して冷却するので、エネルギの有効利用、省エネルギにつながる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は、本発明の第1実施形態としてのガスタービン発電プラント20の概略的構成を示すプロセスフロー図である。また図2は、ガスタービン発電プラント20の一部を構成する天然ガスハイドレートガス化装置100の概略的構成を示す。ここでは、副生ガスに製鉄所の操業に伴い発生する高炉ガス、ミックスガスを使用し、天然ガスハイドレートとしてペレット状の天然ガスハイドレートを使用する例を示す。ミックスガスは、高炉ガスを所定の発熱量に増熱するための燃料ガスであり、転炉ガスとコークス炉ガスとを混合したガスが例示される。なお、本発明が本実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【0018】
ガスタービン発電プラント20は、製鉄所で発生する副生ガスを主燃料とし発電を行うガスタービン発電設備30と、ガスタービン発電設備30に増熱用の燃料として天然ガスを送出する天然ガスハイドレートガス化装置100とを含み構成される。以下、天然ガスハイドレートをNGH、天然ガスハイドレートガス化装置をNGHガス化装置と記す。
【0019】
ガスタービン発電設備30は、低圧の燃料ガスを所定の圧力まで昇圧する燃料圧縮機32と、燃焼器34に高圧の空気を送出する空気圧縮機36、燃料圧縮機32から送られる燃料ガスと空気圧縮機36から送られる空気とを混合燃焼し、高温・高圧の燃焼ガスを発生させる燃焼器34、燃焼器34から送出される燃焼ガスで回転駆動するガスタービン38、発電機40を備える。燃焼器34の上流側には燃料遮断弁35を有する。
【0020】
燃料圧縮機32は、軸流式圧縮機であり、サージングの範囲が広く、吸込む燃料ガス流量が所定量以下になるとサージングが発生するため、これを回避する目的で、出力が低下し燃焼器34への供給量が減少しても吸込む燃料ガス量が所定の流量以下とならないように、吐出ガス(燃料ガス)の一部を燃料圧縮機32の入口部に返送するための燃料ガス戻りライン42を備える。また燃料圧縮機32で燃料ガスを圧縮すると、燃料ガスの温度が上昇するため、燃料ガス戻りライン42を流通する温度の上昇した戻りガスを冷却するための戻りガス冷却器を備える。燃料ガス戻りライン42の途中には、戻りガス(循環ガス)量を調整するための第1ガス戻量制御弁44が備えられ、大量の戻りガスを処理するための第2ガス戻量制御弁46が設けられたバイパスライン48が連結する。また第1ガス戻量制御弁44の出口部の燃料ガス戻りライン42には、燃料ガス戻りライン42を流通する温度の上昇した戻りガスを冷却するための第1戻りガス冷却器50を備える分岐ライン49設けられ、分岐ライン49は、第2戻りガス冷却器52の上流側の燃料ガス戻りライン42に合流する。
【0021】
戻りガス冷却器は、NGHガス化装置100に貯蔵するNGHペレット101の冷熱を利用して戻りガスを冷却する第1戻りガス冷却器50、海水を利用して戻りガスを冷却する第2戻りガス冷却器52からなり、分岐ライン49には入口弁54、流量制御弁56、第1戻りガス冷却器50、出口弁58が、上流側から下流側に向かって配置され、第2戻りガス冷却器52は、分岐ライン49が合流した後の燃料ガス戻りライン42の途中に取付けられている。第1戻りガス冷却器50は、間接式熱交換器であり、低温側にNGHペレット101で冷却した水(不凍液)を供給することで戻りガスを冷却する。第1戻りガス冷却器50の低温側とNGHガス化装置100内に取付けられた加熱器110との間には水(不凍液)を循環する循環ライン60が設けられ、循環ライン60に介装された循環ポンプ62を介して水(不凍液)が第1戻りガス冷却器50と加熱器110との間を循環する。
【0022】
第2戻りガス冷却器52も、間接式熱交換器であり、低温側に冷却水を供給することで戻りガスを冷却する。第2戻りガス冷却器52への冷却水供給は、ガス冷却器冷却水ポンプ64及びガス冷却水冷却器66を循環ライン途中に備える冷却水循環ライン68を通じて行われる。ガス冷却水冷却器66は海水を冷却媒体とし、海水供給ライン70に設けられた海水ポンプ72より冷却媒体である海水が供給される。海水供給ライン70は、数台の取水ポンプ74で海水を取水し復水器(図示省略)に海水を送水する海水供給ライン76の途中より分岐させている。ガス冷却水冷却器66に供給された海水は、冷却水循環ライン68を循環する冷却水を冷却し、温度が高くなった海水は、海に戻される。
【0023】
燃料圧縮機32の燃料導入ライン78には、途中にガスを混合するためのガス混合器が2基取付けられ、天然ガスを送出するNGHガス化装置100が接続する。燃料圧縮機32に近い第1混合器80には、増熱用の燃料ガスであるミックスガスが供給され、上流側の第2混合器82には、NGHガス化装置100から天然ガスが送られる。燃料ガス戻りライン42は、第1混合器80の下流側で燃料導入ライン78と合流する。また燃料導入ライン78には、NGHガス化装置100をバイパスするバイパスライン156が設けられている。
【0024】
空気圧縮機36の空気吸込ライン84には、端部にフィルタ86が取付けられていると共に、吸込空気を冷却するための空気冷却器88、空気冷却器88の入口部の空気温度を検出する温度検出器87、空気冷却器88の出口部の空気温度を検出する温度検出器89が取付けられている。空気冷却器88は、間接式熱交換器であり、低温側にNGHガス化装置100でNGHペレット101をガス化させた際に発生する冷水を供給することで吸込空気を冷却する。NGHガス化装置100でNGHペレット101をガス化させた際に発生する冷水は、NGHガス化装置100と空気冷却器88の低温側とを結ぶ冷水送水管92に介装された冷水送水ポンプ90を介して空気冷却器88に送られ、吸込空気を冷却し温度の高くなった冷水は、冷水戻管94を通じてNGHガス化装置100に返送され、NGHペレット101のガス化に使用される。冷水送水ポンプ90と空気冷却器88とを結ぶ冷水送水管92の途中には、三方弁96が取付けられ、冷水を空気冷却器88に代え、ガスタービン軸受部の潤滑油を冷却する油冷却器に冷却媒体として送水することができる。また、冷水戻管94の途中にも三方弁98が取付けられ、温度の高くなった冷水を系外に排出することもできる。
【0025】
NGHガス化装置100は、ガスタービン発電設備30に増熱用の燃料として天然ガスを送出する装置であって、NGHペレット101を貯蔵可能なタンク102を有する。タンク102の壁面は、断熱性を有し、例えば自己保存性を発現する−20℃程度のNGHペレット101を長期間貯蔵することができる。タンク102の中間部にはスクリーン104が取付けられており、NGHペレット導入管106を介して供給されるNGHペレット101は、スクリーン104上に堆積する。タンク102内の上部には、NGHペレット101を加熱しガス化させるための加熱水を噴射するスプレー管108が、スクリーン104の上方には、NGHペレット101を加熱しガス化させるための加熱器110が設けられている。スプレー管108は、冷水戻管94と接続し、吸込空気等を加熱し10℃〜30℃程度の温度となった冷水がスプレーノズル112から噴射される。一方、加熱器110には、高温の戻りガスを冷却し温度が200℃程度となった水(不凍液)が戻り、この水(不凍液)を加熱源としてNGHペレット101を加熱、ガス化する。
【0026】
タンク102の上部には、汽水分離器121を介して、NGHペレット101がガス化し発生する天然ガスを送出するガス送出管120が取付けられており、ガス送出管120の途中には、流量制御弁122が設けられている。さらにタンク102内の圧力が所定の圧力を超えた場合に、タンク102内の天然ガスを放出してタンク102の破損を防止する逃し弁124が装着されている。NGHガス化装置100は、貯蔵するNGHペレット101を積極的に冷却する冷凍設備を有していないので、NGHペレット101を積極的に加熱しない場合であっても壁面を通じての自然入熱によりNGHペレット101がガス化され、ボイルオフガス(以下BOGと記す)が発生するけれども、このBOGは、逃し弁124及び逃し弁124に接続するガス逃し管126を介して第2混合器82へ送られるので、有効に利用することができる。なお、逃し弁124の開閉は後述の圧力調節計136により行われ、異常な圧力上昇に対しては、タンク102上部に装着された安全弁123がタンク102内の天然ガスを大気に放出する。
【0027】
タンク102の下部には、多管式の冷却器114が装着されており、冷却管116はNGHペレット101をガス化した際に発生する5℃程度の冷水118が貯留された冷水プール119に浸漬する。よって冷却管116内をガスタービン発電設備30の燃料である高炉ガスを流通させることで、高炉ガスは冷水プール119で冷却される。またタンク102の下部には、冷水送水管92が連結し、冷水送水ポンプ90を介して空気冷却器88等へ冷水が送られる。またタンク102の下部には、冷水プール119の水位を調節するための水位検出器128、水位調節計130、水位制御弁132、133が装着されている。水位制御弁132は吸込口が冷却管116によりも高い位置にある排水管135に接続し、水位制御弁133は、タンク底面に吸込口を有する排水管137に接続する。冷水118を送水せず、冷却器114だけを使用するときは、冷水プール119内において温度の上昇した冷水118が上部に移動するため、吸込口を冷却管116よりも上部に設けた排水管135を通じて冷水118を系外に排出する。なお、スクリーン104から流下する温度の低い冷水118は、冷水プール119内の温度の上昇した冷水118と混ざらないように例えば複数の漏斗状の受け皿と配管とで冷水プール119下部に送り込むことが好ましい。これらにより温度上昇した冷水118を系外に排出すると共に冷水プール119の水位を調節することができる。
【0028】
この他、NGHガス化装置100には、タンク102内の圧力を検出しタンク102内の圧力を調節する圧力検出器134及び圧力調節計136、NGHペレット101のレベルを検出しNGHペレット供給弁107を調節するレベル検出器138及びレベル調節計140が設けられている。また第1戻りガス冷却器50と加熱器110とを結ぶ循環ライン60を流れる水(不凍液)の温度を検出する温度検出器142及び144、冷水送水管92内を流れる冷水の温度を検出する温度検出器146、冷水戻管94内を流れる冷水の温度を検出する温度検出器148、スプレー管108入口部の温度を検出する温度検出器150、冷却器114の入口部、出口部の燃料ガス温度を検出する温度検出器152及び154が取付けられており、これら温度データは圧力調節計136に用いられると共に、
図示を省略したガスタービン制御装置に送られ、ガスタービン制御装置は、これら温度データに基づき各種の制御を行う。
【0029】
以上のような構成からなるガスタービン発電プラント20は、所定の発熱量に調整した燃料を燃料圧縮機32で昇圧し、燃焼器34で燃料と空気とを混合、燃焼させガスタービン38を駆動する。発熱量の制御は図示を省略したガスタービン制御装置の制御指令に基づき行われる。なお高炉ガス、ミックスガス及びBOGを含む天然ガスの流量及び熱量のデータは、図示を省略した流量計及び発熱量計を介してガスタービン制御装置に送られ、ガスタービン制御装置はこれらデータに基づき発熱量の制御を行う。
【0030】
製鉄所からミックスガスが十分に送られる場合は、高発熱量ガスであるミックスガスを低発熱量ガスである高炉ガスに混合し、これを燃料とする。この場合には増熱用のガスを補充する必要がないので、NGHガス化装置100は待機状態となる。待機時間が比較的長く続いても、タンク102は、NGHペレット101を貯蔵可能で、壁面が断熱構造となっているので、NGHペレット101を長時間貯蔵することができる。長期間の待機状態に伴いBOGが発生しても、BOGは、逃し弁124の設定圧力を超えるまではタンク102内に留まり、逃し弁124の設定圧力を超えるとガス逃し管126を通じて第2混合器82に導かれ高炉ガスと混合されるので、BOGが無駄にならず有効に利用される。
【0031】
一方、冬季などで外部からの自然入熱が少なくBOGが殆ど発生しない場合には、天然ガス送出要求に即応できるように、一部NGHペレット101がガス化され、タンク102内は所定の圧力に保持される。具体的には、圧力調節計136は、圧力検出器134の圧力データに基づき、タンク102内の圧力が設定圧力、例えば0.1MPaになるように流量制御弁56に開指令を送る。流量制御弁56が開くと、高温・高圧の戻りガスの一部が第1戻りガス冷却器50を流れ、循環ポンプ62を稼働させると加熱された水(不凍液)が加熱器110に導かれ、NGHペレット101がガス化される。
【0032】
ミックスガス量が減少すると、増熱用の燃料が不足するので、図示を省略したガスタービン制御装置は、不足するミックスガスの発熱量に相当する量の天然ガスを、増熱用燃料として使用すべく流量制御弁122に開指令を出す。これによりタンク102内の天然ガス及び/又はBOGは、第2混合器82に導かれ高炉ガスと混合され、増熱用燃料として使用される。もちろんミックスガスを全く使用することなく、増熱用燃料を全て天然ガスとすることも可能である。NGHペレット101のガス化には、上記と同様に加熱器110を使用する。第1戻りガス冷却器50で高温・高圧の戻りガスを冷却することで、加熱器110の熱源が得られると共に、第2戻りガス冷却器52の負荷が減少する。これにより第2戻りガス冷却器52を冷却するに必要な海水の温度上昇が少なくなり環境負荷が低減される。また海水ポンプ72の動力も削減できる。もちろんスプレーノズル112から加熱水を噴射させ、NGHペレット101を加熱、ガス化させてもよい。
【0033】
高炉ガスの温度が上昇し、ガスタービン発電設備30の出力低下が懸念される場合は、高炉ガスを冷却器114に導き、冷水118で冷却する。スタートアップ時等で冷水プール119の水量が少ない場合であっても、タンク102内には、−20℃程度のNGHペレット101が貯蔵されているので、雰囲気温度は比較的低く、高炉ガスを冷却することができる。高炉ガスの温度調節は、冷却器114入口部のガス温度を検出する温度検出器152、冷却器114出口部のガス温度を検出する温度検出器154、燃料圧縮機32入口のガス温度を検出する温度検出器155の温度データに基づき、冷却器114入口の燃料導入ライン78に装着された流量調節ダンパー157及び冷却器114をバイパスするバイパスライン156に装着された流量調節ダンパー158により行う。これら制御は図示を省略したガスタービン制御装置が行う。高炉ガスの温度を低下させる必要のない場合は、バイパスライン156を使用すればよいことは言うまでもない。
【0034】
夏季など大気温度が高い場合は、空気冷却器88に冷水を送り空気圧縮機36の吸込空気を冷却することができる。空気冷却器88で吸込空気を冷却し温度の高くなった冷水118は、冷水戻管94、スプレー管108、スプレーノズル112を通じてNGHペレット101に噴射し、NGHペレット101をガス化させることができる。よって、要求される天然ガス量が多く、加熱器110を介して与える熱量のみではNGHペレット101をガス化させるための熱量が不足し、タンク102内の圧力低下が懸念されるときには、温度の高くなった冷水118をNGHペレット101に噴射し、NGHペレット101をガス化させる。一方、要求される天然ガス量が少なく温度の高くなった冷水をNGHペレット101に噴射させる必要のないときは、冷水戻管94に配設された三方弁98を切替え、系外に送り他の設備で利用する。これにより冷水プール119の温度を低い温度に維持することが可能であり、水も有効利用することができる。
【0035】
冬季など大気温度が低く、空気圧縮機36の吸込空気を特に冷却する必要のない場合は、冷水を油冷却器の冷却媒体とすればよい。これにより油冷却器を冷却可能であると共に、温度の高くなった冷水をNGHペレット101のガス化に使用することもできる。冷水で油冷却器を冷却することで、油冷却器を冷却する海水ポンプの動力が削減できる。また、冷水送水管92に配設される三方弁96を調節することで、空気冷却器88及び油冷却器に同時に冷水を送ることも可能である。
【0036】
上記実施形態で示すように本発明のガスタービン発電プラントは、ガスタービン発電設備に増熱用燃料としてガスを送出可能なガスハイドレートガス化装置を備えるので、工場から副次的に発生する副生ガスのガス組成、ガス量、ガスの発熱量が工場の操業状態により変動する場合であっても、ガスハイドレートをガス化させたガスを増熱用燃料として補充又は代替させることで柔軟に対応し、安定的に発電を行うことができる。またガスハイドレートガス化装置は、ガスハイドレートを貯蔵可能なタンクを有するので、ガスハイドレートを長期間貯蔵することが可能であり、副生ガスの変動に柔軟に対応することができる。増熱用燃料として天然ガスを使用する場合、天然ガス源として液化天然ガス(LNG)を使用することも考えられるけれども、LNGはNGHに比較しBOGが発生しやすいので、操業に伴い発する副生ガスが大きく変動する場合は、NGHの方が柔軟に対応することができる。
【0037】
また本発明のガスタービン発電プラントは、燃料ガス戻りラインを流通する燃料圧縮機で圧縮され高温となった燃料ガス、燃料圧縮機へ導入する副生ガス、吸込空気、ガスタービン軸受部の潤滑油を、ガスハイドレートガス化装置が貯蔵するガスハイドレート及び/又はガスハイドレートをガス化させるとき発生する水の冷熱を利用して冷却することが可能であり、さらにこれら被冷却媒体の有する熱を、ガスハイドレートのガス化の熱源として利用することもできるので、エネルギの有効利用、省エネルギにつながる。
【0038】
上記実施形態では、高炉ガスを所定の発熱量に増熱する燃料ガスとしてミックスガスを使用する例を示し、ミックスガスとして転炉ガスとコークス炉ガスとを混合したガスを例示したけれども、高炉ガスを増熱する燃料ガスはこれに限定されるものではない。高炉ガスを増熱する燃料ガスとしては、転炉ガスとコークス炉ガスとを混合したガス以外に、高炉ガスと転炉ガスとを混合したミックスガス、高炉ガスとコークス炉ガスとを混合したミックスガス、高炉ガスと転炉ガスとコークス炉ガスとを混合したミックスガス、転炉ガス、コークス炉ガスを使用することができる。
【0039】
また上記実施形態では、ガスハイドレートとして天然ガスハイドレートを使用する例を示したけれども、ガスハイドレートは特定のガスハイドレートに限定されるものではなく、メタン、エタン、プロパン又はこられ混合物からなるガスハイドレートであってもよい。またガスハイドレートの形状もペレット形状に限定されるものではない。また、上記実施形態では、製鉄所から発生する副生ガスを示したけれども、副生ガスは化学工場、石油プラント等から発生する副生ガスなどであってもよいことは言うまでもない。またガスタービン発電設備において、燃料ガス戻りラインを有する例を示したけれども燃料ガス戻りラインを有しないガスタービン発電設備に本発明を適用可能なことは言うまでもない。さらにガスハイドレートガス化装置も上記実施形態に示すものに限定されるものではない。またガスハイドレート及び/又はガス化させたときに発生する冷水の冷熱を利用して冷却する、戻りガスを冷却する戻りガス冷却器、燃料ガスを冷却する冷却器、吸込空気を冷却する空気冷却器を設ける例を示したけれども、これら冷却器は必要に応じて設ければよい。同様に油冷却器を冷却する例を示したけれどもこれも必要に応じて行えばよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第1実施形態としてのガスタービン発電プラント20の概略的構成を示すプロセスフロー図である。
【図2】図1のガスタービン発電プラント20の一部を構成する天然ガスハイドレートガス化装置100の概略的構成を示す。
【図3】高炉ガス等の副生ガスを燃料とする従来のガスタービン発電設備1の概略的構成を示す。
【符号の説明】
【0041】
20 ガスタービン発電プラント
30 ガスタービン発電設備
32 燃料圧縮機
34 燃焼器
36 空気圧縮機
38 ガスタービン
40 発電機
42 燃料ガス戻りライン
49 分岐ライン
50 第1戻りガス冷却器
52 第2戻りガス冷却器
60 循環ライン
62 循環ポンプ
78 燃料導入ライン
84 空気吸込ライン
88 空気冷却器
90 冷水送水ポンプ
92 冷水送水管
94 冷水戻管
100 天然ガスハイドレートガス化装置
101 天然ガスハイドレートペレット
102 タンク
110 加熱器
112 スプレーノズル
114 冷却器
118 冷水
119 冷水プール
120 ガス送出管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工場から副次的に発生する副生ガスを燃料とするガスタービン発電設備と、
ガスハイドレートを貯蔵可能なタンクを有し、貯蔵するガスハイドレートをガス化させガスを送出するガスハイドレートガス化装置とを備え、
前記ガスハイドレートをガス化させたガス及び/又は前記ガスハイドレートガス化装置から送出されるボイルオフガスを前記ガスタービン発電設備の増熱用燃料として使用することを特徴とするガスタービン発電プラント。
【請求項2】
前記副生ガスは、高炉ガス及び高炉ガスに比較し発熱量が高く高炉ガスに混合し発熱量を所定の発熱量に増加させる高発熱量ガスを含み、
前記ガスハイドレートが天然ガスハイドレート及び/又はメタンハイドレートであり、天然ガス及び/又はメタンガスを前記高発熱量ガスの代替ガスとすることを特徴とする請求項1に記載のガスタービン発電プラント。
【請求項3】
前記ガスタービン発電設備は、前記副生ガス、前記ガスハイドレートをガス化させたガス及び/又は前記ガスハイドレートガス化装置から送出されるボイルオフガスを昇圧可能な燃料圧縮機と、
前記燃料圧縮機が圧縮した燃料ガスの一部を燃料圧縮機入口に返送する燃料ガス戻りラインと、
前記燃料ガス戻りラインを流通する前記燃料圧縮機で圧縮され高温となった燃料ガスを、前記ガスハイドレートガス化装置が貯蔵するガスハイドレート及び/又はガスハイドレートをガス化させるとき発生する水の冷熱を利用して冷却する戻りガス冷却器と、
を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のガスタービン発電プラント。
【請求項4】
さらに前記燃料ガス戻りラインを流通する前記燃料圧縮機で圧縮され高温となった燃料ガスの有する熱を、前記ガスハイドレートガス化装置が貯蔵するガスハイドレートのガス化の熱源に使用することを特徴とする請求項3に記載のガスタービン発電プラント。
【請求項5】
さらに前記燃料圧縮機へ導入する副生ガスを、前記ガスハイドレートガス化装置が貯蔵するガスハイドレート及び/又はガスハイドレートをガス化させるとき発生する水の冷熱を利用して冷却する燃料冷却器を備えることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載のガスタービン発電プラント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−185612(P2009−185612A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−23324(P2008−23324)
【出願日】平成20年2月1日(2008.2.1)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)