説明

ガスタービン装置

【課題】システムの小型化、簡略化と信頼性向上及び設備コストの削減を図る。
【解決手段】本発明は、潤滑油冷却器29を有するガスタービン21と被動機23,24とをエンクロージャ25内に収納し、エンクロージャ内に冷却空気を流通させることにより、前記潤滑油冷却器と前記ガスタービンと前記被動機の冷却を行うガスタービン装置20において、エンクロージャ25内に構成した冷却空気の流路を経て潤滑油冷却器とガスタービンと被動機を冷却した後の冷却空気の全量を、機関燃焼空気として前記エンクロージャ25内で前記ガスタービンに供給するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガスタービン装置に関し、特にガスタービンの放熱と被動機の放熱に用いた換気用空気の全量をガスタービンの燃焼用給気として利用する構成とすることにより、システム単純化による信頼性の向上と、装置の小型化及び換気排気工事の廃止を実現したものである。なお、本発明で言う被動機とはガスタービンの回転駆動軸に軸結して回転駆動されるもの、例えば減速機や、発電機などの動力を受けて回転し、所定の仕事を行う装置一般を言う。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンは、圧縮機と、圧縮機に軸結したタービン及び燃焼器とを備え、燃焼器内で前記圧縮機で加圧した空気と燃料とを混合・燃焼して高温・高圧のガスを発生し、このガスの膨張過程でタービンを回転駆動し、その一部を圧縮機の駆動動力とすると同時に、残部を回転動力として取出し、この出力軸に軸結した発電機、その他の被動機を駆動し、残ガスを排気口を通じて外部に排出するようになっている。
【0003】
図4に示すように、従来のガスタービン1は、防音用のエンクロージャ2の内部に被動機3とともにパッケージまたはユニット化された状態に収装されたガスタービン装置として構成されている。
【0004】
そして、ガスタービン1の燃焼用空気と、主として潤滑油冷却器5のための冷却用空気と、被動機(例えば発電機)3の冷却用空気の合計の所要空気量を共通の給気ファン4が取入れ、矢印の流れで示すように、ガスタービン1は自身の圧縮機で所要空気量を吸い込み、潤滑油冷却器5は直前に配置された冷却ファン8で必要量を吸い込み、被動機3の冷却用空気は例えば発電機に内蔵されたファンで所要空気量を流すこととなる。
【0005】
ガスタービン1からの排気は排気ダクト6から排気され、またこれとは別系統の排気として、各部の冷却を終えた空気はエンクロージャ2の下流側に設けた排気ダクト7を通じて排気ファン9により外部に排出される。
【0006】
以上、冷却のための換気手段である冷却ファン8及び排気ファン9は、従来では外部電源により駆動される構成とされていた。
【0007】
しかし、これら冷却ファン8及び排気ファン9は動力として外部電源を用いることから、外部電源信号取合いミス、操作ミス、外部機器故障などによりガスタービン1そのものが健全であっても運転を継続できなくなることがあった。
【0008】
また、このような構成であると、冷却空気を排出するために換気排気ダクト工事が必要となり、それに応じたコスト及び工事期間が必要となった。なお、ガスタービンの排気系ドラフトにより換気排気を引いて合流させ、一緒に排出するシステム(ドラフト式)があり、この場合には排気換気系統のダクトは不要となるが、排出ガス量が削減できるものではなく、排気ガス系統は従来と同様の大容量であるため、前述の従来例と同様に工事コストが増大する点では同様の問題がある。さらに上記ドラフト式は排気系統が長く、排圧の高くなるシステムには適用できない。
【0009】
さらには、給気系としては、ガスタービン1の燃焼用の給気と、潤滑油冷却用の給気と、被動機3の冷却用の給気の3系統の吸気を別個に必要としていたため、装置全体としての所要吸気量が多くなり、装置自体並びに周縁機器も大型化するなどの不都合があった。
【0010】
これに対し、下記特許文献1、2では、タービン放熱の換気空気の一部をガスタービンの燃焼用給気に混入させることが記載されている。
【0011】
また、下記特許文献3では、ガスタービン停止減速時に燃焼用空気が不足した際に冷却用空気通路内の空気をガスタービン吸気側に連通させることが記載されている。
【0012】
さらに下記特許文献4では、吸気を加温し、冷却も可能とすることが記載されている。
【特許文献1】実用新案公開平5−89848号公報
【特許文献2】特許公開2005−140068号公報
【特許文献3】特許公開2002−242701号公報
【特許文献4】特許公開平9−317496号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、以上の各特許文献記載の技術は、必要換気量の利用のみにとどまるものであった。すなわち、ガスタービンは、本質的に吸気温度が低い方が出力が高くとれるとされていることから、各特許文献記載の技術では必要以上の換気を取込み、吸気温度が必要以上に上がらないように、換気量調節する機能を備えた構成となっていた。
【0014】
例えば、特許文献1に記載の技術では、ガスタービン給気の結氷を解決するためにガスタービン放熱の換気空気の一部をガスタービンの燃焼用給気の一部に混入させて温度上昇させるものであり、換気及びその調整システムを有することから、換気装置、電源などが必要であり、またこれに伴う工事も必要であることには変りがない。
【0015】
また特許文献2の技術では、ガスタービンの給気温度が低いとき、ガスタービン放熱の換気空気を用いてガスタービン燃焼給気に混入し、吸気温度を上昇させて発電効率を向上させることが目的であり、運転時に常時適用されるものでなく、あくまでも吸気温度が低いときのみに限定して運用されるものである。
【0016】
さらに特許文献3の技術では、あくまでもガスタービン停止減速時に燃焼用空気量が不足した場合に機能するもので、運転時に常時適用されるものではない。
【0017】
さらに特許文献4の技術では、過熱と冷却を選択して性能改善しようとするものであり、換気システムは従前通り存在する。そして、熱の利用は熱交換器であり、システム的には複雑なものとなる。
【0018】
本発明は以上の課題を解決するものであり、その目的は、ガスタービン、被動機の放熱に用いた空気の全量を直接ガスタービンの燃焼用吸気として取込むことで、システムの小型化、簡略化と信頼性向上を図ると同時に換気排気工事を不要とし、設備コストの削減を図るものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記目的を達成するため、本発明は、潤滑油冷却器を有するガスタービンと被動機とをエンクロージャ内に収納し、前記エンクロージャ内に冷却空気を流通させることにより、前記潤滑油冷却器と前記ガスタービンと前記被動機の冷却を行うガスタービン装置において、前記エンクロージャ内に構成した冷却空気の流路を経て前記潤滑油冷却器と前記ガスタービンと前記被動機を冷却した後の冷却空気を、機関燃焼空気として前記エンクロージャ内で前記ガスタービンに供給することを特徴としている。
【0020】
請求項2の発明は、前記請求項1において、前記エンクロージャ内に構成された空気流路が、前記潤滑油冷却器を経過した後に前記ガスタービンに至る第1の流路と、前記被動機を経過した後に前記ガスタービンに至る第2の流路とを有していることを特徴としている。
【0021】
請求項3の発明は、前記請求項2において、前記第1の流路と前記第2の流路を流れる空気の流量の合計が、前記ガスタービンの機関燃焼空気量よりも小さく設定されており、前記ガスタービンによる空気の吸引により前記エンクロージャ内に生じる負圧の増大が、前記第1の流路と前記第2の流路を流れる空気の流量を増大させて前記ガスタービンの許容空気量を満足することを特徴としている。
【0022】
請求項4の発明は、前記請求項2において、前記エンクロージャ内に構成された空気流路として、前記エンクロージャの外から前記ガスタービンに至る第3の流路をさらに有し、前記空気流路を流れる空気の流量が前記ガスタービンの機関燃焼空気量と略同一となるように前記第3の流路における流量を設定したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0023】
請求項1の発明によれば、冷却用の換気を全量ガスタービン装置の燃焼用空気に用いることができるため、換気用排気と、燃焼用の排気を一本化でき、換気排気ダクトの工事を削減でき、また、燃焼用の吸気動作によって換気空気が強制的に流通するため、外部動力で駆動されるファンが不要である一方、吸気の全量を削減できるため、装置が簡素でコンパクト化する。
【0024】
なお、ガスタービンは、本質的に吸気温度が低い方が出力が高くとれるとされているが、換気排気空気のような高い温度の空気をガスタービンが吸込んでも要求する出力発生が可能なように、適切なサイクル効率を得られる設計をすることにより、許容性能を満足するガスタービンとなる。但し、ガスタービン単体としては寸法が若干大きくなる場合もあるが、装置全体とすると前記所要吸気量の削減や、換気排気系統の廃止などにより全体寸法や、コストの削減を図る上で有利となる。
【0025】
請求項2の発明によれば、請求項1の作用・効果に加え、エンクロージャ内における効率的な冷却とその後の吸気動作がなされる。
【0026】
請求項3の発明によれば、請求項2の作用・効果に加え、ガスタービンの吸気能力の余裕分がエンクロージャ内に負圧を発生させて第1及び第2の流路を流れる空気の流量を増大させてガスタービンの許容空気量を満足させるので、空気量が不足することはなく必要な換気全量をガスタービンの吸入口に供給できる。
【0027】
請求項4の発明によれば、請求項2の作用・効果に加え、第3の流路における空気の流量設定により、確実に必要な換気全量をガスタービンの吸入口に供給できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の最良の形態につき、添付図面を参照して説明する。
図1は本発明に係るガスタービン装置の第1実施形態を示す模式的断面図である。図において、ガスタービン装置20は、ガスタービン21と、ガスタービン21の出力軸22に減速機23を介して軸結された発電機24及びこれらを収納したエンクロージャ25を備えている。
【0029】
ガスタービン21は、圧縮機26と、圧縮機26に同軸配置されたタービン27と、燃焼器28を備えているほか、圧縮機26及びタービン27の各可動部に循環供給される潤滑油を冷却するための潤滑油冷却器29をエンクロージャ25内に備えている。
【0030】
エンクロージャ25の上流側には空気取入口30が開口し、この空気取入口30から導入された空気は、仕切壁31によって、前記潤滑油冷却器29を通過する第1の流路(1)と、発電機24の内外を通過する第2の流路(2)とに分岐されてエンクロージャ25内の下流側に向けてそれぞれ流通する。
【0031】
そして、それぞれの部分に接しつつ熱交換を終えた換気空気は、いずれも矢印に示す方向に沿って流動して圧縮機26の吸気ポート26aを通じてその内部に燃焼用空気として全量取入れられ、燃焼器28内で燃料と混合して高温高圧のガスを発生し、このガスによりタービン27を回転駆動する。
【0032】
本例では、各流路(1)、(2)の合計の開口面積により、換気空気量が定ると同時に、換気量全量がガスタービン21の吸入口に向けて供給されるものとなる。ここで、2つの流路(1)、(2)による空気の流量の合計は、前記ガスタービン21の機関燃焼空気量よりも小さく設定されているが、ガスタービン21による空気の吸引により前記エンクロージャ25内には負圧の増大が生じ、この負圧の増大が第1及び第2の流路(1)、(2)を流れる空気の流量を増大させて結局前記ガスタービンの許容空気量を満足するようになっている。
【0033】
すなわち、本例では、冷却用の空気の全量(すなわち流路(1)と(2)からの空気量)を用いても、ガスタービン21の燃焼空気量には不足するような設定とされているが、実際にはガスタービン21は機関吸気能力に余裕分があるような機種選定となっており、その余裕分が前記エンクロージャ25内に負圧の増大を発生させ、これが結果として流路(1)と(2)からの空気量を増大させるので、その合算の空気量がガスタービン21の許容空気量であれば支障なく機関の運転は支障なく行われる。
【0034】
仕事を終えた排ガスはタービン27のガス排気ポート27aからエンクロージャ25の下流側隔壁を貫通して設けられた排気ダクト33を通じて外部に排出される。
【0035】
この際従来の場合には、必要空気量は、換気に必要な空気量と、燃焼に必要な空気量の合計値であったのに対し、本例では、換気に必要な空気量をそのまま燃焼に必要な空気量とすることができ、不足分は、ガスタービン21の機関吸気の余裕分によってエンクロージャ25内に負圧の増大を発生させ、これにより換気用の空気量を増大させることで賄うので、結果として合計の吸気量は従来より削減でき、その分装置規模を縮小できるものとなる。
【0036】
また、換気用空気の取込みにあたっては、従来が外部電源によるファン駆動によっているのに対し、本発明では圧縮機26の吸引慣性により換気用空気の取込みが行えるため、システム・構造共に簡単で、信頼性も向上する。
【0037】
さらに、前記ガスタービン装置の工事コスト内訳の一例では、従来では図2に示すごとく、管理・経費を除いて換気ダクト工事費が25%と高い割合を占有するのに対し、本発明では、これら工事を省略することができるため、工事費用も安価となる。
【0038】
図3は本発明に係るガスタービン装置の第2実施形態を示す模式的断面図である。本例においては、第1実施形態と構成乃至機能上同一と見なせる部分については図1と同一の符号を付し、第1実施形態の説明を援用して説明を省略する。
【0039】
エンクロージャ25の上流側には空気取入口30が開口し、この空気取入口30から導入された空気は、仕切壁31によって、前記潤滑油冷却器29を通過する第1の流路(1)と、発電機24の内外を通過する第2の流路(2)と、これらを経由せずに直接ガスタービン21の周囲に接しつつ流通する第3の流路(3)に分岐されてエンクロージャ25内の下流側に向けてそれぞれ流通する。
【0040】
なお、第3の流路(3)からエンクロージャ内部に流入される空気は、直接圧縮機26内に流入するのを避けるために、吸気ポート26aとの間に邪魔板32を配置し、ガスタービン21を構成する各部外周に接して流動した後、吸気ポート26a内に流入されるようにすることが好ましい。
【0041】
また、各流路(1)〜(3)の合計の開口面積により、換気空気量が定ると同時に、換気量全量がガスタービン21の吸入口に向けて供給されるものとなる。加えて、前記潤滑油冷却器29を通過する第1の流路(1)と、発電機24の内外を通過する第2の流路(2)の開口面積はそれぞれに応じて定るため、第3の流路(3)の面積を調整することにより、ガスタービン21の駆動に必要な全空気量を導くことができる。
【0042】
すなわち、本例では、冷却用の空気の全量(すなわち流路(1)と(2)からの空気量)を用いても、ガスタービン21の燃焼空気量には不足するものとされており、その不足量を補うために前記第3の流路(3)における流量を適宜に調整するものである。さらに、発電機24は同一の出力であってもメーカーによって必要な冷却空気量が異なるが、この第3の流路(3)における空気量でかかる差異を調整、吸収する設定とすることもできる。従って、本発明に適用するガスタービンの燃焼空気量(作動空気量)は、必ず冷却空気量以上の容量のガスタービンとする必要がある。
なお、第1実施形態で説明したように、ガスタービン性能を許容できるエンクロージャ内圧の範囲では、第3の流路を閉止もしくは設けないシステムとすることも可能であることはもちろんである。
【0043】
従来の場合には、必要空気量は、換気に必要な空気量と、燃焼に必要な空気量の合計値であったのに対し、本例では、換気に必要な空気量をそのまま燃焼に必要な空気量に出来、不足分を第3の流路(3)からの流通量で補うだけで良いため、吸気量は従来より削減でき、その分装置規模を縮小できるものとなる他、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係るガスタービン装置の第1実施形態を示す模式的断面図である。
【図2】従来のガスタービン装置の工事コスト内訳を示す棒グラフである。
【図3】本発明に係るガスタービン装置の第2実施形態を示す模式的断面図である。
【図4】従来のタービン装置の換気用空気及び燃焼用空気の流れを示す説明図である。
【符号の説明】
【0045】
(1) 第1の流路
(2) 第2の流路
(3) 第3の流路
20 タービン装置
21 ガスタービン
23,24 被動機(23 減速機、24発電機)
25 エンクロージャ
26 圧縮機
27 タービン
28 燃焼器
29 潤滑油冷却器
30 空気取入れ用開口
31 第1、第2、第3の流路(1)、(2)、(3)を仕切る仕切壁
33 排気ダクト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑油冷却器を有するガスタービンと被動機とをエンクロージャ内に収納し、前記エンクロージャ内に冷却空気を流通させることにより、前記潤滑油冷却器と前記ガスタービンと前記被動機の冷却を行うガスタービン装置において、
前記エンクロージャ内に構成した冷却空気の流路を経て前記潤滑油冷却器と前記ガスタービンと前記被動機を冷却した後の冷却空気を、機関燃焼空気として前記エンクロージャ内で前記ガスタービンに供給することを特徴とするガスタービン装置。
【請求項2】
前記エンクロージャ内に構成された空気流路が、前記潤滑油冷却器を経過した後に前記ガスタービンに至る第1の流路と、前記被動機を経過した後に前記ガスタービンに至る第2の流路とを有していることを特徴とする請求項1記載のガスタービン装置。
【請求項3】
前記第1の流路と前記第2の流路を流れる空気の流量の合計が、前記ガスタービンの機関燃焼空気量よりも小さく設定されており、
前記ガスタービンによる空気の吸引により前記エンクロージャ内に生じる負圧の増大が、前記第1の流路と前記第2の流路を流れる空気の流量を増大させて前記ガスタービンの許容空気量を満足することを特徴とする請求項2記載のガスタービン装置。
【請求項4】
前記エンクロージャ内に構成された空気流路として、前記エンクロージャの外から前記ガスタービンに至る第3の流路をさらに有し、前記空気流路を流れる空気の流量が前記ガスタービンの機関燃焼空気量と略同一となるように前記第3の流路における流量を設定したことを特徴とする請求項2記載のガスタービン装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−309225(P2007−309225A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−139216(P2006−139216)
【出願日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(503116899)新潟原動機株式会社 (61)