ガスタービン静翼
【課題】
翼部の内部に冷却構造を有するガスタービン静翼の翼後縁部に損傷が生じた場合、冷却性能を維持しつつ簡便に補修することを可能とする。
【解決手段】
ガスタービン静翼は、鋳造により一体成型された外周側エンドウォール9、翼部7及び内周側エンドウォール10と、ピンフィン冷却構造14が形成された翼後縁部品15とから構成され、外周側エンドウォール9に、翼後縁部品15の断面形状に相当する貫通した切欠き部分11を形成し、外周側エンドウォール9から翼後縁部品15を差し込んで外周側エンドウォールに固定する。
翼部の内部に冷却構造を有するガスタービン静翼の翼後縁部に損傷が生じた場合、冷却性能を維持しつつ簡便に補修することを可能とする。
【解決手段】
ガスタービン静翼は、鋳造により一体成型された外周側エンドウォール9、翼部7及び内周側エンドウォール10と、ピンフィン冷却構造14が形成された翼後縁部品15とから構成され、外周側エンドウォール9に、翼後縁部品15の断面形状に相当する貫通した切欠き部分11を形成し、外周側エンドウォール9から翼後縁部品15を差し込んで外周側エンドウォールに固定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービン静翼に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンの構成要素であるタービンにおける静翼は静止体であり、静翼を構成する材料を冷却すべく翼部の内部に冷却空気を流す流路を有している。これら冷却空気が流れる内表面と、作動流体と接する外表面の間には大きな温度勾配が生じやすく、熱応力の発生要因となっており、翼部の損傷の一因となる。
【0003】
通常、静翼は、外周側エンドウォール、翼部、内周側エンドウォールが鋳造により一体成型されている。このため、翼部に損傷が生じた場合には、新品の静翼に交換するか、損傷が生じた箇所を肉盛で補修したり、または、特許文献1に記載のように、静翼の一部をクーポン部材により形成し、クーポン部材が損傷した場合、クーポン部材切り離して新品のクーポン部材を取り付けて補修する例がある。
【0004】
また、静翼の構成材料として耐熱性の優れたセラミックを用いた場合、耐熱衝撃強度を補うため、特許文献2に記載のように、静翼各部をセグメントに分割した構造として、各セグメントをそれぞれ一様な温度とするように構成し、各セグメントの熱応力を軽減するようにしたものがある。そして、万一損傷が生じた場合には、損傷したセグメントのみの部分交換が可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-343280号公報
【特許文献2】特開昭61-89903号公報
【非特許文献】
【0006】
日本ガスタービン学会誌,Vol.35,No.3,142頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
静翼の翼部の後縁部(以下、翼後縁部という)には、冷却性能を高めるため、例えば、ピンフィン冷却構造が採用されることもある。ピンフィン冷却構造の代表的な例は、日本ガスタービン学会誌,Vol.35,No.3,142頁に示されている。翼後縁部は薄肉のため減肉による損傷が生じ、この損傷を補修する必要がある。しかし、ピンフィン冷却構造を維持しつつ補修を行うことは難しく、通常は、静翼を新品に交換するなどの対策が取られている。
【0008】
損傷を肉盛で補修することが考えられるが、この場合、肉盛で形状を形成後、肉盛により埋まってしまったピンフィン冷却構造の箇所に冷却のための貫通孔を形成することになる。しかし、貫通孔による冷却では補修前のピンフィン冷却構造と比較して冷却性能が劣る。また、肉盛による補修では多数の工程を要する。
【0009】
また、特許文献1では、翼内部に冷却構造を有する場合の補修について考慮されていない。また、特許文献1では、クーポン部材の箇所以外に損傷が生じた場合には対応できない。
【0010】
また、特許文献2では、静翼の構成材料として、セラミックを用いた場合の耐熱衝撃強度の問題を解決するためにセグメント分割構造としたものであり、この技術思想は、外周側エンドウォール、翼部、内周側エンドウォールが鋳造により一体成型される静翼の技術思想とは相容れないものである。また、特許文献2では、セラミックを構成材料とするものであることから、翼内部に冷却構造を有するものではないので、翼内部に冷却構造を有する静翼の翼部の補修についてには全く考慮されていない。
【0011】
本発明は、外周側エンドウォール、翼部、内周側エンドウォールが鋳造により一体成型され、翼部の内部に冷却構造を有する静翼において、翼後縁部に損傷が生じた場合、冷却性能を維持しつつ簡便に補修することが可能なガスタービン静翼を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は、外周側エンドウォール、翼部、内周側エンドウォールが一体形成され、内部に冷却構造を有するガスタービン静翼において、翼部を翼後縁部とそれ以外とに分け、翼後縁部を交換可能な構造(翼後縁部品)とし、外周側エンドウォールまたは内周側エンドウォールに、翼後縁部品の断面形状に相当する貫通した切欠き部分を形成し、外周側エンドウォール又は内周側エンドウォールから翼後縁部を差し込んで外周側エンドウォール又は内周側エンドウォールに固定するように構成したこと特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、翼後縁部に損傷が生じた場合、翼後縁部は交換可能な構造(翼後縁部品)となっているので、交換品により冷却性能を維持しつつ簡便に補修することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】ピンフィン冷却構造を有する翼後縁部の交換部品を組み込む前の本発明のガスタービン静翼を最も良く示す図である。
【図2】ピンフィン冷却構造を有する翼後縁部の交換部品を組み込んだ後の本発明のガスタービン静翼を最も良く示す図である。
【図3】一般的なガスタービンの構造例を示す図である。
【図4】ピンフィン冷却構造を有する翼後縁部の交換部品と翼部の冷却流路の接続部分が1つの流路からなる本発明の他の実施例を示す図である。
【図5】ピンフィン冷却構造を有する翼後縁部の交換部品と翼部の冷却流路の接続部分がピンフィン冷却構造を有する2つ以上の流路からなる本発明の他の実施例を示す図である。
【図6】ピンフィン冷却構造を有する翼後縁部の交換部品と翼部の冷却流路の接続部分が2つ以上の流路からなる本発明の他の実施例を示す図である。
【図7】対流冷却構造を有する翼後縁部の交換部品を組み込んだ本発明のガスタービン静翼を最も良く示す図である。
【図8】ピンフィン冷却構造を有する翼後縁部の交換部品と外周側エンドウォール間の接合方法を示す図である。
【図9】ピンフィン冷却構造を有する翼後縁部の交換部品と内周側エンドウォール間の接合方法を示す図である。
【図10】ピンフィン冷却構造を有する翼後縁部の交換部品と翼部間の接合方法を示す図である。
【図11】ピンフィン冷却構造を有する翼後縁部の交換部品を組み込んだ2枚の翼部を有する本発明のガスタービン静翼を最も良く示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
【0016】
図1および図2は、本発明の実施の形態1として本発明の特徴を最も良く表わしているタービン静翼を示す図である。
【0017】
タービン静翼は、通常、外周側エンドウォール、翼部及び内周側エンドウォールが鋳造により一体成型されている。本実施の形態では、タービン静翼の全体としての翼部は、翼後縁部(翼後縁部品15)とそれ以外(翼部7)とに分けられる。
【0018】
翼部7は、板状の外周側エンドウォール9と板状の内周側エンドウォール10に挟まれ、外周側エンドウォール9及び内周側エンドウォール10と鋳造により一体成型されている。鋳造による一体成型の際に、翼部7の内部に冷却流路8がタービンの径方向に貫通するように形成されている。
【0019】
外周側エンドウォール9には翼後縁部品15の断面形状(タービンの径方向から見た断面形状)に相当する貫通した切欠き部分11が形成されている。内周側エンドウォール10には翼後縁部品15の断面形状(タービンの径方向から見た断面形状)に相当する貫通しない切欠き部分12が形成されている。
【0020】
翼後縁部品15は、鋳造による成型の際に、内部の流路13にピンフィン冷却構造14が形成されている。流路13は翼部7側から翼後縁に貫通するように形成されている。即ち、翼部7側と翼後縁に開口部(スリット)を有する。補修の際に、交換用の翼後縁部品15を外周側エンドウォール9から差し込んで固定する(固定方法の詳細は後述する。)。
【0021】
翼部7の翼後縁部品15との連結部分には、流路16が形成されている。流路16は翼部7の翼後縁部品15側の冷却流路8(図中、最右端の冷却流路)に連通し、また、翼後縁部品15側に開口部を有している。本実施の形態では、流路16の内にピンフィン冷却構造14が形成されている。言い換えれば、ピンフィン冷却構造を有する翼後縁部を別部品とするにあたって、ピンフィン冷却構造14の一部を翼部7側に残す構造としている。
【0022】
この流路16によって、図2に示すように、翼後縁部品15を固定した際に、冷却通路8と翼後縁部品15との連結が好適に行われる。また、翼部7に形成された連結部分の冷却も好適に行われる。
【0023】
このようにピンフィン冷却構造14を有する翼後縁部品15を差し込み式の別部品とすることで、損傷が生じた場合には翼後縁部品15のみを取り外して交換することで、ピンフィン冷却構造が有する冷却性能を低下させることなく、翼の補修が可能となる。また、翼の補修も簡便なものとなる。
【0024】
図3に、本発明のガスタービン静翼が適用されるガスタービンの一般的な構造断面図を示す。ガスタービンは大きく分けて圧縮機1、燃焼器2およびタービン3から構成されている。圧縮機1は大気から吸い込んだ空気を作動流体として断熱圧縮し、燃焼器2は圧縮機1から供給された圧縮空気に燃料を混合し燃焼することで高温高圧のガスを生成し、そしてタービン3は燃焼器2から導入した燃焼ガスの膨張の際に回転動力を発生する。タービン3からの排気は大気中に放出される。タービン3は、静翼5と動翼4と交互に配置されている。静翼5は、ケーシング6の内周側に設けられた溝へ固定される構造が一般的である。
【0025】
図4は本発明の実施の形態2として、本発明の特徴を良く表わしているタービン静翼を示す図である。
【0026】
本実施の形態では、連結部分の流路16の構造を簡易なものとしたものである。その他の構造は、図1及び図2に示す実施の形態と同じであるので説明を省略する。
【0027】
本実施の形態では、流路16にはピンフィン冷却構造14が形成されていない分、連結部分での冷却は図1及び図2に示す実施の形態と比べて劣るが、翼後縁部15のピンフィン冷却構造14との位置合わせなどについて考慮する必要がないなど製造・補修作業が容易となる。その他の点では、ピンフィン冷却構造14を有する翼後縁部品15を差し込み式の別部品とすることで、図1及び図2に示す実施の形態と同様に、損傷が生じた場合には翼後縁部品15のみを取り外して交換することで、ピンフィン冷却構造が有する冷却性能を低下させることなく、翼の補修が可能となる。また、翼の補修も簡便なものとなる。
【0028】
図5は本発明の実施の形態3として、本発明の特徴を良く表わしているタービン静翼を示す図である。
【0029】
本実施の形態では、連結部分の流路16の構造を強固なものとしたものである。その他の構造は、図1及び図2に示す実施の形態と同じであるので説明を省略する。
【0030】
本実施の形態では、翼部7と交換用の翼後縁部品15の連結部分には、仕切り17により2つの流路からなる流路16とピンフィン冷却構造14を有している。仕切り17を複数とし、流路を3つ以上としても良い。
【0031】
本実施の形態では、流路16に仕切り17が形成されることにより、図1及び図2に示す実施の形態と比べて構造が複雑となるが、流路16の構造が強固となる。その他の点では、ピンフィン冷却構造14を有する翼後縁部品15を差し込み式の別部品とすることで、図1及び図2に示す実施の形態と同様に、損傷が生じた場合には翼後縁部品15のみを取り外して交換することで、ピンフィン冷却構造が有する冷却性能を低下させることなく、翼の補修が可能となる。また、翼の補修も簡便なものとなる。
【0032】
図6は本発明の実施の形態4として、本発明の特徴を良く表わしているタービン静翼を示す図である。
【0033】
本実施の形態では、図4に示す実施の形態をベースとして、図5に示す実施の形態のように、連結部分の流路16の構造を仕切り17により強固なものとしたものである。その他の構造は、図4に示す実施の形態と同じであるので説明を省略する。
【0034】
本実施の形態では、図4の構造が簡易である効果と図5の構造が強固となる効果を併せ持つ。その他の点では、ピンフィン冷却構造14を有する翼後縁部品15を差し込み式の別部品とすることで、図1及び図2に示す実施の形態と同様に、損傷が生じた場合には翼後縁部品15のみを取り外して交換することで、ピンフィン冷却構造が有する冷却性能を低下させることなく、翼の補修が可能となる。また、翼の補修も簡便なものとなる。
【0035】
図7は本発明の実施の形態5として、本発明の特徴を良く表わしているタービン静翼を示す図である。
【0036】
本実施の形態では、翼後縁部品15及び連結部分に形成する冷却構造をピンフィン冷却構造に替えて対流冷却構造18としたものである。本実施の形態では、対流冷却構造は、翼部7側から翼後縁に貫通する複数の貫通孔で構成されている。連結部分の貫通孔と翼後縁部品15の貫通孔が翼後縁部品15を固定した際に一致するように形成されている。その他の構造は、図4に示す実施の形態と同じであるので説明を省略する。
【0037】
このように対流冷却構造18を有する翼後縁部品15を差し込み式の別部品とすることでも、損傷が生じた場合には翼後縁部品15のみを取り外して交換することで、冷却性能を低下させることなく、翼の補修が可能となる。また、翼の補修も簡便なものとなる。
【0038】
なお、本実施の形態5をベースとして、図4に示す実施の形態と同様に、連結部分に冷却構造(図7の実施の形態では対流冷却構造18)を設けることなく、連結部分を単に矩形の流路16としても良い。この場合、図4の実施の形態と同様に、翼後縁部15の対流冷却構造18との位置合わせなどについて考慮する必要がないなど製造・補修作業が容易となる。
【0039】
また、本実施の形態5をベースとして、図6に示す実施の形態と同様に、連結部分に冷却構造(図7の実施の形態では対流冷却構造18)を設けることなく、連結部分を仕切り17を設けた複数の矩形の流路16としても良い。
【0040】
次に、交換用の翼後縁部品15を外周側エンドウォール9と固定する方法について図8を用いて説明する。図8では、図1及び図2に示すピンフィン冷却構造を有する交換用の翼後縁部品及び連結部分を例にして固定方法を説明している。この固定方法は他の実施の形態に示す翼後縁部品又は連結部分でも同様である。図8の(a),(b),(c),(d)及び(e)は、面Aを矢印の方向から見た図である。
【0041】
外周側エンドウォール9と交換用の翼後縁部品15の固定には、外周側エンドウォール9から開先を設けて溶接19する固定方法(a)、外周側エンドウォール9から開先を設けて溶接19するとともに内側から隅肉溶接20する固定方法(b)、外周側エンドウォール9から隅肉溶接20する固定方法(c)、外周側エンドウォール9から隅肉溶接20するとともに内側から隅肉溶接20する固定方法(d)、外周側エンドウォール9の内側から隅肉溶接20するなどの固定方法(e)がある。なお、溶接による固定方法(特に(b))が望ましいが、溶接による固定方法以外に冷やし嵌め、拡散ろう付けなどの固定方法も採用することができる。
【0042】
次に、交換用の翼後縁部品15を内周側エンドウォール10と固定する方法について図9を用いて説明する。図9では、図1及び図2に示すピンフィン冷却構造を有する交換用の翼後縁部品及び連結部分を例にして固定方法を説明している。この固定方法は他の実施の形態に示す翼後縁部品又は連結部分でも同様である。図9の(a),(b),(c)及び(d)は、面Bを矢印の方向から見た図である。
【0043】
内周側エンドウォール10と交換用の翼後縁部品15の固定には、貫通しない切欠き部分12に固定された翼後縁部品15と内周側エンドウォール10を隅肉溶接20する固定方法(a)、翼後縁部品15と内周側エンドウォール10を隅肉溶接20する固定方法(b)、翼後縁部品15を貫通しない切欠き部分12に差し込んだままの固定方法(c)がある。さらに翼後縁部品15は(d)のように固定しなくても良い。この場合、外周側エンドウォール9への固定により翼後縁部品15を静翼へ取り付けることになる。
【0044】
次に、交換用の翼後縁部品15を翼部7と固定する方法について図10を用いて説明する。図10では、図1及び図2に示すピンフィン冷却構造を有する交換用の翼後縁部品及び連結部分を例にして固定方法を説明している。この固定方法は他の実施の形態に示す翼後縁部品又は連結部分でも同様である。図10の(a)及び(b)は、面Cを矢印の方向から見た図である。
【0045】
翼部7と交換用の翼後縁部品15の固定には、翼後縁部品15と翼部を開先を設けて溶接19する固定方法(a)がある。さらに翼後縁部品15は(b)に示すように固定しなくても良い。この場合、外周側エンドウォール9及び内周側エンドウォール10への固定により翼後縁部品15を静翼へ取り付けることになる。
【0046】
翼後縁部品15に損傷が生じた場合、図8〜図10に示す溶接箇所を削り取り、翼後縁部品15を外周側エンドウォール9に設けられた貫通した切欠き部分11から抜き取る。その後、新たな翼後縁部品15を外周側エンドウォール9に設けられた貫通した切欠き部分11から差し込み、図8〜図10に示すように溶接して固定することにより補修を完了する。
【0047】
上述の実施の形態では、内周側エンドウォール10に翼後縁部品の断面形状に相当する貫通しない切欠き部分12を設けているが、貫通しない切欠き部分12は貫通する切り欠き部分に替えても良い。また、図9の(d)に示すように切欠きを設けなくても良い。
【0048】
また、上述の実施の形態では、外周側エンドウォール9へ翼後縁部品の断面形状に相当する貫通する切欠き部分を施工し、内周側エンドウォール10へ貫通しない切欠き部分を施工した例を示しているが、内周側エンドウォール10へ翼後縁部品の断面形状に相当する貫通する切欠き部分を施工し、外周側エンドウォール9へ貫通しない切欠き部分を施工して、内周側エンドウォール10に形成した貫通する切欠き部分から交換用の翼後縁部分15を差し込んで静翼に固定するようにしても良い。
【0049】
さらに,図11に示すように、外周側エンドウォール9と内周側エンドウォール10に挟まれる翼部7は,単翼でなく2連翼以上でも良い。
【0050】
また、上述の実施の形態では、翼後縁部品を内部にピンフィン冷却構造や対流冷却構造を有する冷却性能に優れた鋳造品としているが、翼後縁部品のみを耐熱性に優れたセラミックで形成することも可能である。この場合、外周側エンドウォールまたは内周側エンドウォールへの翼後縁部品の固定は、外周側エンドウォールまたは内周側エンドウォールに形成した翼後縁部品の断面形状に相当する貫通した切欠き部分から翼後縁部品を差し込んで、その後、外周側エンドウォールまたは内周側エンドウォールの貫通した切り欠き部分を塞ぐように金属の別部材を被せて別部材を外周側エンドウォールまたは内周側エンドウォールに溶接し、翼後縁部品の外周側エンドウォールまたは内周側エンドウォールへの固定を確実なものとする。このような構成により、翼後縁部品の損傷抑制し、万一損傷した場合でも簡便に補修することが可能となる。
【0051】
上述したように、本発明によれば、翼後縁部に損傷が生じた場合、翼後縁部は交換可能な構造となっているので、交換品により冷却性能を維持しつつ簡便に補修することが可能となる。
【0052】
特に、冷却性能が高いものの、冷却構造部分に損傷が生じると補修が困難なピンフィン冷却構造を有するガスタービン静翼の場合、ピンフィン冷却構造の冷却性能を低下させることなく簡便に補修することが可能となる。
【0053】
ガスタービンは、今後はさらなる高効率化、すなわち高温化が必要になることも予想され、簡便かつ低コストな補修を実現できると同時に高い冷却性能を有するガスタービン静翼が望まれるが、本発明によりそのようなガスタービン静翼が可能となる。
【符号の説明】
【0054】
1 圧縮機
2 燃焼器
3 タービン
4 動翼
5 静翼
6 ケーシング
7 翼部
8 内部冷却流路
9 外周側エンドウォール
10 内周側エンドウォール
11 貫通した切欠き部分
12 貫通しない切欠き部分
13 内部の流路
14 ピンフィン冷却構造
15 交換用の翼後縁部品
16 流路
17 仕切り
18 対流冷却構造
19 開先を設けた溶接
20 隅肉溶接
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービン静翼に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンの構成要素であるタービンにおける静翼は静止体であり、静翼を構成する材料を冷却すべく翼部の内部に冷却空気を流す流路を有している。これら冷却空気が流れる内表面と、作動流体と接する外表面の間には大きな温度勾配が生じやすく、熱応力の発生要因となっており、翼部の損傷の一因となる。
【0003】
通常、静翼は、外周側エンドウォール、翼部、内周側エンドウォールが鋳造により一体成型されている。このため、翼部に損傷が生じた場合には、新品の静翼に交換するか、損傷が生じた箇所を肉盛で補修したり、または、特許文献1に記載のように、静翼の一部をクーポン部材により形成し、クーポン部材が損傷した場合、クーポン部材切り離して新品のクーポン部材を取り付けて補修する例がある。
【0004】
また、静翼の構成材料として耐熱性の優れたセラミックを用いた場合、耐熱衝撃強度を補うため、特許文献2に記載のように、静翼各部をセグメントに分割した構造として、各セグメントをそれぞれ一様な温度とするように構成し、各セグメントの熱応力を軽減するようにしたものがある。そして、万一損傷が生じた場合には、損傷したセグメントのみの部分交換が可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-343280号公報
【特許文献2】特開昭61-89903号公報
【非特許文献】
【0006】
日本ガスタービン学会誌,Vol.35,No.3,142頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
静翼の翼部の後縁部(以下、翼後縁部という)には、冷却性能を高めるため、例えば、ピンフィン冷却構造が採用されることもある。ピンフィン冷却構造の代表的な例は、日本ガスタービン学会誌,Vol.35,No.3,142頁に示されている。翼後縁部は薄肉のため減肉による損傷が生じ、この損傷を補修する必要がある。しかし、ピンフィン冷却構造を維持しつつ補修を行うことは難しく、通常は、静翼を新品に交換するなどの対策が取られている。
【0008】
損傷を肉盛で補修することが考えられるが、この場合、肉盛で形状を形成後、肉盛により埋まってしまったピンフィン冷却構造の箇所に冷却のための貫通孔を形成することになる。しかし、貫通孔による冷却では補修前のピンフィン冷却構造と比較して冷却性能が劣る。また、肉盛による補修では多数の工程を要する。
【0009】
また、特許文献1では、翼内部に冷却構造を有する場合の補修について考慮されていない。また、特許文献1では、クーポン部材の箇所以外に損傷が生じた場合には対応できない。
【0010】
また、特許文献2では、静翼の構成材料として、セラミックを用いた場合の耐熱衝撃強度の問題を解決するためにセグメント分割構造としたものであり、この技術思想は、外周側エンドウォール、翼部、内周側エンドウォールが鋳造により一体成型される静翼の技術思想とは相容れないものである。また、特許文献2では、セラミックを構成材料とするものであることから、翼内部に冷却構造を有するものではないので、翼内部に冷却構造を有する静翼の翼部の補修についてには全く考慮されていない。
【0011】
本発明は、外周側エンドウォール、翼部、内周側エンドウォールが鋳造により一体成型され、翼部の内部に冷却構造を有する静翼において、翼後縁部に損傷が生じた場合、冷却性能を維持しつつ簡便に補修することが可能なガスタービン静翼を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は、外周側エンドウォール、翼部、内周側エンドウォールが一体形成され、内部に冷却構造を有するガスタービン静翼において、翼部を翼後縁部とそれ以外とに分け、翼後縁部を交換可能な構造(翼後縁部品)とし、外周側エンドウォールまたは内周側エンドウォールに、翼後縁部品の断面形状に相当する貫通した切欠き部分を形成し、外周側エンドウォール又は内周側エンドウォールから翼後縁部を差し込んで外周側エンドウォール又は内周側エンドウォールに固定するように構成したこと特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、翼後縁部に損傷が生じた場合、翼後縁部は交換可能な構造(翼後縁部品)となっているので、交換品により冷却性能を維持しつつ簡便に補修することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】ピンフィン冷却構造を有する翼後縁部の交換部品を組み込む前の本発明のガスタービン静翼を最も良く示す図である。
【図2】ピンフィン冷却構造を有する翼後縁部の交換部品を組み込んだ後の本発明のガスタービン静翼を最も良く示す図である。
【図3】一般的なガスタービンの構造例を示す図である。
【図4】ピンフィン冷却構造を有する翼後縁部の交換部品と翼部の冷却流路の接続部分が1つの流路からなる本発明の他の実施例を示す図である。
【図5】ピンフィン冷却構造を有する翼後縁部の交換部品と翼部の冷却流路の接続部分がピンフィン冷却構造を有する2つ以上の流路からなる本発明の他の実施例を示す図である。
【図6】ピンフィン冷却構造を有する翼後縁部の交換部品と翼部の冷却流路の接続部分が2つ以上の流路からなる本発明の他の実施例を示す図である。
【図7】対流冷却構造を有する翼後縁部の交換部品を組み込んだ本発明のガスタービン静翼を最も良く示す図である。
【図8】ピンフィン冷却構造を有する翼後縁部の交換部品と外周側エンドウォール間の接合方法を示す図である。
【図9】ピンフィン冷却構造を有する翼後縁部の交換部品と内周側エンドウォール間の接合方法を示す図である。
【図10】ピンフィン冷却構造を有する翼後縁部の交換部品と翼部間の接合方法を示す図である。
【図11】ピンフィン冷却構造を有する翼後縁部の交換部品を組み込んだ2枚の翼部を有する本発明のガスタービン静翼を最も良く示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
【0016】
図1および図2は、本発明の実施の形態1として本発明の特徴を最も良く表わしているタービン静翼を示す図である。
【0017】
タービン静翼は、通常、外周側エンドウォール、翼部及び内周側エンドウォールが鋳造により一体成型されている。本実施の形態では、タービン静翼の全体としての翼部は、翼後縁部(翼後縁部品15)とそれ以外(翼部7)とに分けられる。
【0018】
翼部7は、板状の外周側エンドウォール9と板状の内周側エンドウォール10に挟まれ、外周側エンドウォール9及び内周側エンドウォール10と鋳造により一体成型されている。鋳造による一体成型の際に、翼部7の内部に冷却流路8がタービンの径方向に貫通するように形成されている。
【0019】
外周側エンドウォール9には翼後縁部品15の断面形状(タービンの径方向から見た断面形状)に相当する貫通した切欠き部分11が形成されている。内周側エンドウォール10には翼後縁部品15の断面形状(タービンの径方向から見た断面形状)に相当する貫通しない切欠き部分12が形成されている。
【0020】
翼後縁部品15は、鋳造による成型の際に、内部の流路13にピンフィン冷却構造14が形成されている。流路13は翼部7側から翼後縁に貫通するように形成されている。即ち、翼部7側と翼後縁に開口部(スリット)を有する。補修の際に、交換用の翼後縁部品15を外周側エンドウォール9から差し込んで固定する(固定方法の詳細は後述する。)。
【0021】
翼部7の翼後縁部品15との連結部分には、流路16が形成されている。流路16は翼部7の翼後縁部品15側の冷却流路8(図中、最右端の冷却流路)に連通し、また、翼後縁部品15側に開口部を有している。本実施の形態では、流路16の内にピンフィン冷却構造14が形成されている。言い換えれば、ピンフィン冷却構造を有する翼後縁部を別部品とするにあたって、ピンフィン冷却構造14の一部を翼部7側に残す構造としている。
【0022】
この流路16によって、図2に示すように、翼後縁部品15を固定した際に、冷却通路8と翼後縁部品15との連結が好適に行われる。また、翼部7に形成された連結部分の冷却も好適に行われる。
【0023】
このようにピンフィン冷却構造14を有する翼後縁部品15を差し込み式の別部品とすることで、損傷が生じた場合には翼後縁部品15のみを取り外して交換することで、ピンフィン冷却構造が有する冷却性能を低下させることなく、翼の補修が可能となる。また、翼の補修も簡便なものとなる。
【0024】
図3に、本発明のガスタービン静翼が適用されるガスタービンの一般的な構造断面図を示す。ガスタービンは大きく分けて圧縮機1、燃焼器2およびタービン3から構成されている。圧縮機1は大気から吸い込んだ空気を作動流体として断熱圧縮し、燃焼器2は圧縮機1から供給された圧縮空気に燃料を混合し燃焼することで高温高圧のガスを生成し、そしてタービン3は燃焼器2から導入した燃焼ガスの膨張の際に回転動力を発生する。タービン3からの排気は大気中に放出される。タービン3は、静翼5と動翼4と交互に配置されている。静翼5は、ケーシング6の内周側に設けられた溝へ固定される構造が一般的である。
【0025】
図4は本発明の実施の形態2として、本発明の特徴を良く表わしているタービン静翼を示す図である。
【0026】
本実施の形態では、連結部分の流路16の構造を簡易なものとしたものである。その他の構造は、図1及び図2に示す実施の形態と同じであるので説明を省略する。
【0027】
本実施の形態では、流路16にはピンフィン冷却構造14が形成されていない分、連結部分での冷却は図1及び図2に示す実施の形態と比べて劣るが、翼後縁部15のピンフィン冷却構造14との位置合わせなどについて考慮する必要がないなど製造・補修作業が容易となる。その他の点では、ピンフィン冷却構造14を有する翼後縁部品15を差し込み式の別部品とすることで、図1及び図2に示す実施の形態と同様に、損傷が生じた場合には翼後縁部品15のみを取り外して交換することで、ピンフィン冷却構造が有する冷却性能を低下させることなく、翼の補修が可能となる。また、翼の補修も簡便なものとなる。
【0028】
図5は本発明の実施の形態3として、本発明の特徴を良く表わしているタービン静翼を示す図である。
【0029】
本実施の形態では、連結部分の流路16の構造を強固なものとしたものである。その他の構造は、図1及び図2に示す実施の形態と同じであるので説明を省略する。
【0030】
本実施の形態では、翼部7と交換用の翼後縁部品15の連結部分には、仕切り17により2つの流路からなる流路16とピンフィン冷却構造14を有している。仕切り17を複数とし、流路を3つ以上としても良い。
【0031】
本実施の形態では、流路16に仕切り17が形成されることにより、図1及び図2に示す実施の形態と比べて構造が複雑となるが、流路16の構造が強固となる。その他の点では、ピンフィン冷却構造14を有する翼後縁部品15を差し込み式の別部品とすることで、図1及び図2に示す実施の形態と同様に、損傷が生じた場合には翼後縁部品15のみを取り外して交換することで、ピンフィン冷却構造が有する冷却性能を低下させることなく、翼の補修が可能となる。また、翼の補修も簡便なものとなる。
【0032】
図6は本発明の実施の形態4として、本発明の特徴を良く表わしているタービン静翼を示す図である。
【0033】
本実施の形態では、図4に示す実施の形態をベースとして、図5に示す実施の形態のように、連結部分の流路16の構造を仕切り17により強固なものとしたものである。その他の構造は、図4に示す実施の形態と同じであるので説明を省略する。
【0034】
本実施の形態では、図4の構造が簡易である効果と図5の構造が強固となる効果を併せ持つ。その他の点では、ピンフィン冷却構造14を有する翼後縁部品15を差し込み式の別部品とすることで、図1及び図2に示す実施の形態と同様に、損傷が生じた場合には翼後縁部品15のみを取り外して交換することで、ピンフィン冷却構造が有する冷却性能を低下させることなく、翼の補修が可能となる。また、翼の補修も簡便なものとなる。
【0035】
図7は本発明の実施の形態5として、本発明の特徴を良く表わしているタービン静翼を示す図である。
【0036】
本実施の形態では、翼後縁部品15及び連結部分に形成する冷却構造をピンフィン冷却構造に替えて対流冷却構造18としたものである。本実施の形態では、対流冷却構造は、翼部7側から翼後縁に貫通する複数の貫通孔で構成されている。連結部分の貫通孔と翼後縁部品15の貫通孔が翼後縁部品15を固定した際に一致するように形成されている。その他の構造は、図4に示す実施の形態と同じであるので説明を省略する。
【0037】
このように対流冷却構造18を有する翼後縁部品15を差し込み式の別部品とすることでも、損傷が生じた場合には翼後縁部品15のみを取り外して交換することで、冷却性能を低下させることなく、翼の補修が可能となる。また、翼の補修も簡便なものとなる。
【0038】
なお、本実施の形態5をベースとして、図4に示す実施の形態と同様に、連結部分に冷却構造(図7の実施の形態では対流冷却構造18)を設けることなく、連結部分を単に矩形の流路16としても良い。この場合、図4の実施の形態と同様に、翼後縁部15の対流冷却構造18との位置合わせなどについて考慮する必要がないなど製造・補修作業が容易となる。
【0039】
また、本実施の形態5をベースとして、図6に示す実施の形態と同様に、連結部分に冷却構造(図7の実施の形態では対流冷却構造18)を設けることなく、連結部分を仕切り17を設けた複数の矩形の流路16としても良い。
【0040】
次に、交換用の翼後縁部品15を外周側エンドウォール9と固定する方法について図8を用いて説明する。図8では、図1及び図2に示すピンフィン冷却構造を有する交換用の翼後縁部品及び連結部分を例にして固定方法を説明している。この固定方法は他の実施の形態に示す翼後縁部品又は連結部分でも同様である。図8の(a),(b),(c),(d)及び(e)は、面Aを矢印の方向から見た図である。
【0041】
外周側エンドウォール9と交換用の翼後縁部品15の固定には、外周側エンドウォール9から開先を設けて溶接19する固定方法(a)、外周側エンドウォール9から開先を設けて溶接19するとともに内側から隅肉溶接20する固定方法(b)、外周側エンドウォール9から隅肉溶接20する固定方法(c)、外周側エンドウォール9から隅肉溶接20するとともに内側から隅肉溶接20する固定方法(d)、外周側エンドウォール9の内側から隅肉溶接20するなどの固定方法(e)がある。なお、溶接による固定方法(特に(b))が望ましいが、溶接による固定方法以外に冷やし嵌め、拡散ろう付けなどの固定方法も採用することができる。
【0042】
次に、交換用の翼後縁部品15を内周側エンドウォール10と固定する方法について図9を用いて説明する。図9では、図1及び図2に示すピンフィン冷却構造を有する交換用の翼後縁部品及び連結部分を例にして固定方法を説明している。この固定方法は他の実施の形態に示す翼後縁部品又は連結部分でも同様である。図9の(a),(b),(c)及び(d)は、面Bを矢印の方向から見た図である。
【0043】
内周側エンドウォール10と交換用の翼後縁部品15の固定には、貫通しない切欠き部分12に固定された翼後縁部品15と内周側エンドウォール10を隅肉溶接20する固定方法(a)、翼後縁部品15と内周側エンドウォール10を隅肉溶接20する固定方法(b)、翼後縁部品15を貫通しない切欠き部分12に差し込んだままの固定方法(c)がある。さらに翼後縁部品15は(d)のように固定しなくても良い。この場合、外周側エンドウォール9への固定により翼後縁部品15を静翼へ取り付けることになる。
【0044】
次に、交換用の翼後縁部品15を翼部7と固定する方法について図10を用いて説明する。図10では、図1及び図2に示すピンフィン冷却構造を有する交換用の翼後縁部品及び連結部分を例にして固定方法を説明している。この固定方法は他の実施の形態に示す翼後縁部品又は連結部分でも同様である。図10の(a)及び(b)は、面Cを矢印の方向から見た図である。
【0045】
翼部7と交換用の翼後縁部品15の固定には、翼後縁部品15と翼部を開先を設けて溶接19する固定方法(a)がある。さらに翼後縁部品15は(b)に示すように固定しなくても良い。この場合、外周側エンドウォール9及び内周側エンドウォール10への固定により翼後縁部品15を静翼へ取り付けることになる。
【0046】
翼後縁部品15に損傷が生じた場合、図8〜図10に示す溶接箇所を削り取り、翼後縁部品15を外周側エンドウォール9に設けられた貫通した切欠き部分11から抜き取る。その後、新たな翼後縁部品15を外周側エンドウォール9に設けられた貫通した切欠き部分11から差し込み、図8〜図10に示すように溶接して固定することにより補修を完了する。
【0047】
上述の実施の形態では、内周側エンドウォール10に翼後縁部品の断面形状に相当する貫通しない切欠き部分12を設けているが、貫通しない切欠き部分12は貫通する切り欠き部分に替えても良い。また、図9の(d)に示すように切欠きを設けなくても良い。
【0048】
また、上述の実施の形態では、外周側エンドウォール9へ翼後縁部品の断面形状に相当する貫通する切欠き部分を施工し、内周側エンドウォール10へ貫通しない切欠き部分を施工した例を示しているが、内周側エンドウォール10へ翼後縁部品の断面形状に相当する貫通する切欠き部分を施工し、外周側エンドウォール9へ貫通しない切欠き部分を施工して、内周側エンドウォール10に形成した貫通する切欠き部分から交換用の翼後縁部分15を差し込んで静翼に固定するようにしても良い。
【0049】
さらに,図11に示すように、外周側エンドウォール9と内周側エンドウォール10に挟まれる翼部7は,単翼でなく2連翼以上でも良い。
【0050】
また、上述の実施の形態では、翼後縁部品を内部にピンフィン冷却構造や対流冷却構造を有する冷却性能に優れた鋳造品としているが、翼後縁部品のみを耐熱性に優れたセラミックで形成することも可能である。この場合、外周側エンドウォールまたは内周側エンドウォールへの翼後縁部品の固定は、外周側エンドウォールまたは内周側エンドウォールに形成した翼後縁部品の断面形状に相当する貫通した切欠き部分から翼後縁部品を差し込んで、その後、外周側エンドウォールまたは内周側エンドウォールの貫通した切り欠き部分を塞ぐように金属の別部材を被せて別部材を外周側エンドウォールまたは内周側エンドウォールに溶接し、翼後縁部品の外周側エンドウォールまたは内周側エンドウォールへの固定を確実なものとする。このような構成により、翼後縁部品の損傷抑制し、万一損傷した場合でも簡便に補修することが可能となる。
【0051】
上述したように、本発明によれば、翼後縁部に損傷が生じた場合、翼後縁部は交換可能な構造となっているので、交換品により冷却性能を維持しつつ簡便に補修することが可能となる。
【0052】
特に、冷却性能が高いものの、冷却構造部分に損傷が生じると補修が困難なピンフィン冷却構造を有するガスタービン静翼の場合、ピンフィン冷却構造の冷却性能を低下させることなく簡便に補修することが可能となる。
【0053】
ガスタービンは、今後はさらなる高効率化、すなわち高温化が必要になることも予想され、簡便かつ低コストな補修を実現できると同時に高い冷却性能を有するガスタービン静翼が望まれるが、本発明によりそのようなガスタービン静翼が可能となる。
【符号の説明】
【0054】
1 圧縮機
2 燃焼器
3 タービン
4 動翼
5 静翼
6 ケーシング
7 翼部
8 内部冷却流路
9 外周側エンドウォール
10 内周側エンドウォール
11 貫通した切欠き部分
12 貫通しない切欠き部分
13 内部の流路
14 ピンフィン冷却構造
15 交換用の翼後縁部品
16 流路
17 仕切り
18 対流冷却構造
19 開先を設けた溶接
20 隅肉溶接
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一体形成された外周側エンドウォール、翼部及び内周側エンドウォールと、冷却構造が内部に形成された翼後縁部品とから構成され、
前記外周側エンドウォール又は前記内周側エンドウォールは、前記翼後縁部品の断面形状に相当する貫通した切欠き部分が形成されており、
前記翼後縁部品は、前記貫通した切欠き部分に固定されていることを特徴とするガスタービン静翼。
【請求項2】
請求項1において、
前記貫通した切欠き部分が形成された前記外周側エンドウォール又は前記内周側エンドウォールに対向する前記内周側エンドウォール又は前記外周側エンドウォールには、前記翼後縁部品の断面形状に相当する貫通しない切欠き部分が形成され、
前記翼後縁部品は、前記貫通した切欠き部分と前記貫通しない切欠き部分により固定されていることを特徴とするガスタービン静翼。
【請求項3】
請求項1において、前記翼後縁部品の内部に形成された冷却構造は、ピンフィン冷却構造であることを特徴とするガスタービン静翼。
【請求項4】
請求項1において、前記翼後縁部品の内部に形成された冷却構造は、対流冷却構造であることを特徴とするガスタービン静翼。
【請求項5】
請求項1において、
前記翼部は、
前記外周側エンドウォールから前記内周側エンドウォールへ貫通する冷却流路と、
前記翼後縁部品との連結部分に形成され、前記冷却流路と前記翼後縁部品の冷却構造とを連通する冷却構造とを有し、
前記連結部分に形成された冷却構造を、前記翼後縁部品に形成された冷却構造と同じ方式の冷却構造としたことを特徴とするガスタービン静翼。
【請求項6】
請求項1において、
前記翼部は、
前記外周側エンドウォールから前記内周側エンドウォールへ貫通する冷却流路と、
前記翼後縁部品との連結部分に形成され、前記冷却流路と前記翼後縁部品の冷却構造とを連通する流路を有することを特徴とするガスタービン静翼。
【請求項7】
請求項6において、前記連結部分に形成された流路は、1つの流路からなることを特徴とするガスタービン静翼。
【請求項8】
請求項6において、前記連結部分に形成された流路は、2つ以上の流路からなることを特徴とするガスタービン静翼。
【請求項9】
圧縮機、燃焼器およびタービンとから構成されたガスタービンであって、前記タービンのガスタービン静翼として、請求項1〜8の何れかに記載されたガスタービン静翼を用いたことを特徴とするガスタービン。
【請求項10】
ガスタービン静翼の補修方法であって、
前記ガスタービン静翼は、一体形成された外周側エンドウォール、翼部及び内周側エンドウォールと、冷却構造が内部に形成された翼後縁部品とから構成され、前記外周側エンドウォール又は前記内周側エンドウォールは、前記翼後縁部品の断面形状に相当する貫通した切欠き部分が形成されており、前記翼後縁部品は、前記貫通した切欠き部分に溶接されており、
前記翼後縁部品に損傷が生じた場合、前記翼後縁部品と前記貫通した切欠き部分の溶接を削り取り、前記翼後縁部品を前記貫通した切欠き部分から抜き取り、冷却構造が内部に形成された新たな翼後縁部品を前記貫通した切欠き部分から差し込み、前記貫通した切欠き部分に溶接して固定することを特徴とするガスタービン静翼の補修方法。
【請求項1】
一体形成された外周側エンドウォール、翼部及び内周側エンドウォールと、冷却構造が内部に形成された翼後縁部品とから構成され、
前記外周側エンドウォール又は前記内周側エンドウォールは、前記翼後縁部品の断面形状に相当する貫通した切欠き部分が形成されており、
前記翼後縁部品は、前記貫通した切欠き部分に固定されていることを特徴とするガスタービン静翼。
【請求項2】
請求項1において、
前記貫通した切欠き部分が形成された前記外周側エンドウォール又は前記内周側エンドウォールに対向する前記内周側エンドウォール又は前記外周側エンドウォールには、前記翼後縁部品の断面形状に相当する貫通しない切欠き部分が形成され、
前記翼後縁部品は、前記貫通した切欠き部分と前記貫通しない切欠き部分により固定されていることを特徴とするガスタービン静翼。
【請求項3】
請求項1において、前記翼後縁部品の内部に形成された冷却構造は、ピンフィン冷却構造であることを特徴とするガスタービン静翼。
【請求項4】
請求項1において、前記翼後縁部品の内部に形成された冷却構造は、対流冷却構造であることを特徴とするガスタービン静翼。
【請求項5】
請求項1において、
前記翼部は、
前記外周側エンドウォールから前記内周側エンドウォールへ貫通する冷却流路と、
前記翼後縁部品との連結部分に形成され、前記冷却流路と前記翼後縁部品の冷却構造とを連通する冷却構造とを有し、
前記連結部分に形成された冷却構造を、前記翼後縁部品に形成された冷却構造と同じ方式の冷却構造としたことを特徴とするガスタービン静翼。
【請求項6】
請求項1において、
前記翼部は、
前記外周側エンドウォールから前記内周側エンドウォールへ貫通する冷却流路と、
前記翼後縁部品との連結部分に形成され、前記冷却流路と前記翼後縁部品の冷却構造とを連通する流路を有することを特徴とするガスタービン静翼。
【請求項7】
請求項6において、前記連結部分に形成された流路は、1つの流路からなることを特徴とするガスタービン静翼。
【請求項8】
請求項6において、前記連結部分に形成された流路は、2つ以上の流路からなることを特徴とするガスタービン静翼。
【請求項9】
圧縮機、燃焼器およびタービンとから構成されたガスタービンであって、前記タービンのガスタービン静翼として、請求項1〜8の何れかに記載されたガスタービン静翼を用いたことを特徴とするガスタービン。
【請求項10】
ガスタービン静翼の補修方法であって、
前記ガスタービン静翼は、一体形成された外周側エンドウォール、翼部及び内周側エンドウォールと、冷却構造が内部に形成された翼後縁部品とから構成され、前記外周側エンドウォール又は前記内周側エンドウォールは、前記翼後縁部品の断面形状に相当する貫通した切欠き部分が形成されており、前記翼後縁部品は、前記貫通した切欠き部分に溶接されており、
前記翼後縁部品に損傷が生じた場合、前記翼後縁部品と前記貫通した切欠き部分の溶接を削り取り、前記翼後縁部品を前記貫通した切欠き部分から抜き取り、冷却構造が内部に形成された新たな翼後縁部品を前記貫通した切欠き部分から差し込み、前記貫通した切欠き部分に溶接して固定することを特徴とするガスタービン静翼の補修方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−237270(P2012−237270A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107880(P2011−107880)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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