説明

ガスハイドレート冷却装置

【課題】 ペレット状のガスハイドレートを容易に冷却する。
【解決手段】水とハイドレート形成ガスとで生成されたペレット状のガスハイドレートPを所定の温度に冷却するガスハイドレート冷却装置10であって、前記所定の温度に冷却された冷媒液Eを供給する冷媒液供給ラインが繋がるスプレイノズル16からなる冷媒液供給口と、ペレット状の前記ガスハイドレートが供給されるガスハイドレート供給口14と、供給された前記ガスハイドレートが排出されるガスハイドレート排出口22と、を有する冷却槽12を備えることを特徴とするガスハイドレート冷却装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水とハイドレート形成ガスとで生成されたペレット状のガスハイドレートを所定の温度に冷却するガスハイドレート冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水分子の作るクラスター(かご構造)の中に天然ガスの分子(ゲスト)が取り込まれた包接水和物であるガスハイドレートは、水と天然ガスとを槽内に投入し、所定温度下、及び所定圧力下で攪拌して生成される。
【0003】
ガスハイドレートは常温常圧環境に置くと比較的早く分解してしまう。例えば、大気圧下で分解を完全に止めるにはマイナス80℃程度にまで温度を下げなくてはならない。しかし、本来であれば分解してしまう環境(非平衡領域)でも、ある条件ではその分解が非常にゆっくりとなる現象が確認されている。これは自己保存効果と呼ばれ、ガスハイドレートでは、大気圧下マイナス20℃で、その効果が最も大きく現れる。よって、大気圧下でも分解が非常にゆっくりとなるように、生成されたガスハイドレートを冷却している。
【0004】
従来、このような冷却は、パウダー状のガスハイドレートをジャケット中で攪拌し、ジャケット面から除熱し、冷却していた。(例えば、特許文献1参照)
しかし、このような方法では、パウダーを造粒したペレット状のガスハイドレートを冷却することは困難であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題を解決すべく成されたもので、ペレット状のガスハイドレートを容易に冷却することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載のガスハイドレート冷却装置は、水とハイドレート形成ガスとで生成されたペレット状のガスハイドレートを所定の温度に冷却するガスハイドレート冷却装置であって、前記所定の温度に冷却された冷媒液を供給する冷媒液供給ラインが繋がる冷媒液供給口と、ペレット状の前記ガスハイドレートが供給されるガスハイドレート供給口と、供給された前記ガスハイドレートが排出されるガスハイドレート排出口と、を有する冷却槽を備えることを特徴としている。
【0007】
請求項1に記載のガスハイドレート冷却装置は、所定の温度に冷却された冷媒液が冷媒液供給口から冷却槽に供給される。また、水とハイドレート形成ガスとで生成されたペレット状のガスハイドレートも、冷却槽のガスハイドレート供給口から供給される。供給されたガスハイドレートは、ガスハイドレート排出口から排出される間に冷媒液に浸され、所定の温度となって排出される。
【0008】
このようにペレット状のガスハイドレートが冷媒液に直接接触して冷却されるので、容易に効率良く短時間で冷却される。
【0009】
請求項2に記載のガスハイドレート冷却装置は、請求項1に記載の構成において、前記ガスハイドレートが、前記ガスハイドレート供給口から供給されて前記ガスハイドレート排出口から排出される間の前記冷媒液に滞留する滞留時間を調整手段で調整し、該ガスハイドレートの冷却温度を調整することを特徴としている。
【0010】
請求項2に記載のガスハイドレート冷却装置は、ガスハイドレート供給口から供給されたガスハイドレートがガスハイドレート排出口から排出される間の冷媒液に滞留する滞留時間を、調整手段で調整し、ガスハイドレートの冷却温度を調整している。
【0011】
したがって、例えば、冷却槽に供給する冷媒液の温度調整等を厳密に行わなくても、ガスハイドレートの冷却温度を容易に所定の温度に調整できる。
【0012】
請求項3に記載のガスハイドレートの冷却装置は、請求項2に記載の構成において、前記ガスハイドレート供給口は前記冷却槽の上部に、前記ガスハイドレート排出口は該冷却槽の下部に設けられ、前記調整手段は、前記冷媒槽内の前記冷媒液の液面を調整する液面調整手段であることを特徴としている。
【0013】
請求項3に記載のガスハイドレートの冷却装置は、ガスハイドレートが冷却槽の上部のガスハイドレート供給口から供給され、冷却槽の下部のガスハイドレート排出口から排出される。ガスハイドレートが冷媒液に滞留する滞留時間は冷媒液の液面の高さによる。つまり、冷媒液の液面が高いと滞留時間が長くなり、液面が低いと滞留時間が短くなる。
【0014】
よって、液面調整手段が、冷媒槽内の冷媒液の液面を調整することで、滞留時間を調整し、ガスハイドレートの冷却温度を調整している。したがって、ガスハイドレートの冷却温度を容易に所定の温度に調整できる。
【0015】
請求項4に記載のガスハイドレート冷却装置は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の構成において、上方から平面視すると前記ガスハイドレート排出口を覆い、下方に開いた傘状の傘部材が、前記冷却槽の内部に配設されていることを特徴としている。
【0016】
請求項4に記載のガスハイドレート冷却装置は、下方に開いた傘状の部材が、上方から平面視するとガスハイドレート排出口を覆っている。よって、ガスハイドレート排出口にかかるガスハイドレートの上方からの圧力が軽減する。したがって、ガスハイドレート排出口からガスハイドレートがスムーズに排出する。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように本発明によれば、ペレット状のガスハイドレートを容易に冷却できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の第一の実施形態のガスハイドレート冷却装置について説明する。
【0019】
まず、ペレット状のガスハイドレートPの生成についての一例を、図1を用いて簡単に説明する。
【0020】
メタン,エタン,プロパンなどの天然ガスと水とを槽内に投入し、所定温度下、及び所定圧力下で攪拌する。水と天然ガスとからなるスラリー(懸濁液)状のガスハイドレートを脱水する。脱水後にペレット成形し、ペレット状のガスハイドレートPを生成する。
【0021】
通常、ペレット状に生成されたガスハイドレートPは0℃以上である。よって、大気圧下でも自己保存効果によって、ゆっくりと分解させるため、図1に示す、ガスハイドレート冷却装置10で、ペレット状のガスハイドレートを約−5℃〜−約30℃に冷却する。
【0022】
図1に示すように、ガスハイドレート冷却装置10は、冷却槽12を備えている。冷却槽12の上部には、冷却前のペレット状のガスハイドレートPが供給されるガスハイドレート供給口14を備えている。冷却槽12の底面部12Aは、下方が頂点となる円錐形をしている。底面部12Aの円錐の頂点部には、冷却されたガスハイドレートPが排出されるガスハイドレート排出口22が設けられている。ガスハイドレート排出口22にはロータリーバルブ(図示略)が取り付けられ、一定量のガスハイドレートPを排出可能となっている。なお、ガスハイドレート供給口14とガスハイドレート排出口22とは、同じ垂直線上に位置する。また、判りやすくする為、冷却槽12の内部に堆積しているガスハイドレートPは、上部と下部のみ描いている。
【0023】
冷却槽12の内部の上部には、冷媒液Eを噴霧するスプレーノズル16が備えられている。スプレーノズル16は、左右に移動可能となっている。(図中の点線で描いたスプレーノズル16と矢印Xを参照)。
【0024】
冷却槽12の内部の下方には、冷媒液排出部材18が配設されている。冷媒液排出部材18の先端部には、スリット状の孔が形成されているスクリーン20が取り付けられている。そして、このスクリーン20のスリット状の孔から冷媒液Eを冷媒液排出部材18に取り込む。なお、スリット状の孔は非常に小さいので、ペレット状のガスハイドレートPが小片やパウダー状となっても、ガスハイドレートPは取り込まれず冷媒液Eだけが取り込まれる。
【0025】
冷媒液排出部材18は冷却槽12外に延出し、循環ライン50と繋がっている。循環ライン50は、温度によって流量を自動的に調整する温度調節弁24を介して、冷媒液タンク26に繋がっている。更に、冷媒液タンク26から、循環ポンプ28と冷媒液を−30℃に冷却する冷却装置30とを介して、前述した冷却槽12の上部に設けられたスプレーノズル16に繋がっている。
【0026】
冷媒液タンク26から循環ポンプ28によって送られ、スプレーノズル16から噴出する冷媒液量は一定である。よって、温度調節弁24で冷媒液タンク26に送る冷媒液量を調整することで、冷却槽12の冷媒液Eの液面Yを調整可能となっている。
【0027】
つまり、温度調節弁24が冷媒液タンク26に送る量を多くすると冷却槽12の冷媒液Eの液面Yが下がる。温度調節弁24が冷媒液タンク26に送る量を少なくすると冷却槽12の冷媒液Eの液面Yが上がる。
【0028】
ペレット状のガスハイドレートPは、ガスハイドレート供給口14から供給され、ガスハイドレート排出口22から排出される間に冷媒液Eに浸され冷却する。よって、冷却槽12の冷媒液Eの液面Yを上下させることで、冷媒液E中に滞留する滞留時間を調整することができる。排出されるガスハイドレートPの冷却温度は滞留時間による。したがって、温度調節弁24で液面Yを調整することで、排出されるガスハイドレートPの温度を所定の冷却温度、本実施形態では−5℃から−30℃の間に調整できる。
【0029】
循環ライン50の冷却装置30の下流側には、分岐弁32が設けられ、分岐弁32から分岐ライン60が繋がっている。分岐ライン60は、噴出用ポンプ34を介して、冷却槽12の底面部12Aに設けられた噴出ノズル36に繋がっている。噴出ノズル36はガスハイドレート排出口22の近傍に設けられ、斜め上方に開口している。よって、分岐弁32から分岐ライン60に分岐した冷媒液Eが噴出用ポンプ34によって加圧され、噴出ノズル36から斜め上方に向かって噴出する。このため、ガスハイドレート排出口22の近傍のガスハイドレートPが攪拌されるとともに、冷媒液Eの濃度が上昇する。よって、ガスハイドレート排出口22からガスハイドレートPの排出がスムーズになる。
【0030】
また、冷却槽12の内部には、冷媒液排出部材18の先端部のスクリーン20とガスハイドレート排出口22との上方に、下方に開いた傘状の傘部材24が配設されている。よって、矢印Zで示すようにガスハイドレートPが流れるので、冷媒液排出部材18のスクリーン20とガスハイドレート排出口22とにかかるガスハイドレートPの圧力が減少する。したがって、スクリーン20とガスハイドレート排出口22とにガスハイドレートPが詰まらない。また、ガスハイドレート排出口22からガスハイドレートPがスムーズに排出される。
【0031】
ガスハイドレート排出口22から排出したガスハイドレートPのペレットスラリーは、排出ライン70によって、温度測定装置40で温度測定された後、分離槽38に送られ、冷媒液Eが分離される。
【0032】
なお、冷媒液Eとしては、コストが安く安全なものが良く、更に以下の性質のものが望ましい。
【0033】
冷却槽12の中で冷媒液EにガスハイドレートPが浮かないように、冷媒液Eの比重はガスハイドレートPより小さいものである必要がある。ただし、冷媒液EとガスハイドレートPとの比重の差が大きいと、冷媒液Eとペレット状のガスハイドレートPとがスラリー(懸濁液)状になりにくいので、冷媒液Eの比重はガスハイドレートPに近いものが良い。
【0034】
また、蒸気圧が低く蒸発しにくく、−30℃に冷却するので凝固点が低いものが良い。更に、熱容量が大きいほうが冷却効率は良いので、比熱が大きなものが望ましい。
【0035】
更に、ガスハイドレートPは包接水和物水であるので、冷媒液Eは、水となじまない,水に溶けない、更に水と反応しないものである必要がある。
【0036】
また、冷却後に分離槽38で、ガスハイドレートPから冷媒液Eを容易に分離できるように、ガスハイドレートPの表面、及び表面の小さいな孔への付着量が少ないものが良い。
【0037】
以上の性質を持つものとしては、具体的には、ヘキサン、ヘプタンなどがある。
【0038】
つぎに、本実施形態の作用について説明する。
【0039】
図1に示すように、ガスハイドレート供給口14から供給されたペレット状のガスハイドレートPが落下して堆積し、そして、ガスハイドレート排出口22から排出される。
【0040】
スプレーノズル16を左右に移動しながら、−30℃の冷媒液EをガスハイドレートPに噴霧してガスハイドレートPを冷却すると共に、ガスハイドレート供給口14から供給されたガスハイドレートPがガスハイドレート排出口22から排出される間に冷媒液Eに浸されることで、ペレット状のガスハイドレートPを冷却している。つまり、ペレット状のガスハイドレートPに冷媒液Eを直接接触させることで、短時間に効率良く、冷却している。
【0041】
また、温度調節弁24によって、冷却槽12の冷媒液Eの液面Yを上下させることで、ガスハイドレートPが冷媒液E中に滞留する滞留時間を調整し、排出されるガスハイドレートPの温度を−5℃から−30℃の間となるように調整できる。したがって、例えば、冷却槽12に供給する冷媒液E自体の温度調整等を厳密に行わなくても、ガスハイドレートPの冷却温度を容易に所定の温度に調整できる。
【0042】
なお、温度調節弁24は、温度測定装置40で測定される、ガスハイドレート排出口22から排出したガスハイドレートPのペレットスラリーの温度に基づいて流量を調整している。つまり、ガスハイドレート排出口22から排出したガスハイドレートPのペレットスラリーの温度を低くする場合は温度調節弁24は流量を下げ冷却槽12の冷媒液Eの液面Yを上げ、温度を高くする場合は流量を上げ液面Yを下げる。
【0043】
つぎに、本発明の第二の実施形態のガスハイドレート冷却装置について説明する。なお、第一の実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0044】
図2に示すように、ガスハイドレート冷却装置110は、循環ライン50にペレット状のガスハイドレートPを供給するガスハイドレート供給部114が設けられている。
【0045】
また、スプレーノズル16(図1参照)とガスハイドレート供給口14(図1参照)はなく、替わりにペレットスラリー供給口180が設けられている。
【0046】
そして、ペレットスラリー供給口180から、ガスハイドレートPと冷媒液Eとのスラリーが冷却槽112に供給される。
【0047】
つぎに、本実施形態の作用について説明する。
【0048】
循環ライン50にペレット状のガスハイドレートPを供給するガスハイドレート供給部114を設けたので、冷却槽112の上部から供給する場合と比較し、低い位置でガスハイドレートPが供給可能であるので、ガスハイドレート冷却装置110の上流側の機器の設置位置を低くできる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の第一の実施形態にかかるガスハイドレート冷却装置の概要図である。
【図2】本発明の第二の実施形態にかかるガスハイドレート冷却装置の概要図である。
【符号の説明】
【0050】
10 ガスハイドレート冷却装置
12 冷却槽
14 ガスハイドレート供給口
16 スプレーノズル(冷媒液供給口)
20 スクリーン
22 ガスハイドレート排出口
24 温度調節弁(液面調整手段)
24 傘部材
26 冷媒液タンク(液面調整手段)
28 循環ポンプ
30 冷却装置
36 噴出ノズル
50 循環ライン
110 ガスハイドレート冷却装置
112 冷却槽
180 ペレットスラリー供給口(冷媒液供給口)
E 冷媒液
P ガスハイドレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水とハイドレート形成ガスとで生成されたペレット状のガスハイドレートを所定の温度に冷却するガスハイドレート冷却装置であって、
前記所定の温度に冷却された冷媒液を供給する冷媒液供給ラインが繋がる冷媒液供給口と、
ペレット状の前記ガスハイドレートが供給されるガスハイドレート供給口と、
供給された前記ガスハイドレートが排出されるガスハイドレート排出口と、
を有する冷却槽を備えることを特徴とするガスハイドレート冷却装置。
【請求項2】
前記ガスハイドレートが、前記ガスハイドレート供給口から供給されて前記ガスハイドレート排出口から排出される間の前記冷媒液に滞留する滞留時間を調整手段で調整し、該ガスハイドレートの冷却温度を調整することを特徴とする請求項1に記載のガスハイドレート冷却装置。
【請求項3】
前記ガスハイドレート供給口は前記冷却槽の上部に、前記ガスハイドレート排出口は該冷却槽の下部に設けられ、
前記調整手段は、前記冷媒槽内の前記冷媒液の液面を調整する液面調整手段であることを特徴とする請求項2に記載のガスハイドレート冷却装置。
【請求項4】
上方から平面視すると前記ガスハイドレート排出口を覆い、下方に開いた傘状の傘部材が、前記冷却槽の内部に配設されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のガスハイドレート冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−112738(P2006−112738A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−302095(P2004−302095)
【出願日】平成16年10月15日(2004.10.15)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】