説明

ガスハイドレート層からのガス回収システム

【課題】エネルギー効率が高く、かつ、大量の水を汲み上げる必要がなく、商業的にも充分採算の合うガスハイドレート層からのガス回収システムを提供する。
【解決手段】 ガスハイドレート層の内部または近傍に熱エネルギー発生装置を配置し、この熱エネルギー発生装置で発生した熱エネルギーによってガスハイドレートを分解してガスを回収するガスハイドレート層からのガス回収システムであって、上記熱エネルギー発生装置を、水を加熱して蒸気を発生する蒸気発生装置と、この蒸気発生装置で発生した蒸気を更に加熱して過熱蒸気にする過熱蒸気生成装置と、この過熱蒸気生成装置で生成された過熱蒸気を高速の気流としてガスハイドレート層に噴出する噴出管と、この過熱蒸気の熱エネルギーで溶融したガスハイドレートを高速の気流で循環させて循環流とし、その一部を蒸気発生装置に還流する吸入管とを有するように構成することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海面下,地下または寒冷地の地表近くに層状になって存在するガスハイドレート層からメタンガスなどの可燃性ガスを回収するガスハイドレート層からのガス回収システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
天然ガスは、地盤内に存在するガス層に気体状態で存在する場合が多く、このガス層から掘削されて利用されるのが普通である。天然ガスは、地盤内のガス層に気体状態で存在しているので、比較的容易に回収でき、商業的に広く利用されている。
【0003】
このような在来型の天然ガスに対して、回収の方法が確立されていない。或いは、生産性が低い。などの理由で商業的に利用されていなかった非在来型の天然ガスが存在する。この非在来型の天然ガスの中で最も資源量が多いとされているのが、ガスハイドレートである。ガスハイドレートは、包接化合物の一種であり、複数の水分子(HO)により形成された立体かご型の包接格子の中に、天然ガスの成分であるメタン(CH)、エタン(C)等の分子が入り込み、包接された結晶構造となっている。
【0004】
このガスハイドレートは、その内部に天然ガス(メタンガスやエタンガス)が高密度で充填された状態となっているので、理論上は、ガスハイドレート1m中に、標準状態における気体に換算して約170mの天然ガスが含まれていることになり、次世代のエネルギー源として多大な注目を集めている。
【0005】
また、ガスハイドレートは、低温・高圧の条件の下で一旦形成されると、その特定の条件の下では安定して存在することができるので、自然界でも、こうした条件に合致する地盤内に層をなして存在している。このようなガスハイドレートの層を、「ガスハイドレート層」または単に「ハイドレート層」と称している。
【0006】
この「ガスハイドレート層」は、低温・高圧の条件下で存在するので、実際には、海底の地層やシベリアなどの寒冷地の地中深く、または稀には地表近くにも存在しており、日本周辺でも、四国沖などの海底深くに広く存在していることが確認されており、新しいエネルギー源として期待されている。
【0007】
ガスハイドレートは、前述したように、低温・高圧の条件下で形成されるので、温度を上昇させるか、圧力を低下させることによって、ガスハイドレートが分解してガスと水に分離する。このため、ガスハイドレートからガスを回収する代表的な方法として、海底や地中の地盤内に存在するガスハイドレート層に熱エネルギーとして熱水等を注入し、地盤内でガスハイドレートをガスと水に分離して、このガスを気体の状態で地表まで回収する方法が知られている。
【0008】
しかしながら、ガスハイドレートを分解してガスを回収するためには、同じ圧力の下では、数10℃の温度上昇を必要とする。更に、氷を溶解させるための潜熱も考慮に入れると、例えば特許文献1に示すように、多くの熱エネルギーを必要とする。しかも、この熱水を、通常ガスハイドレート層の存在する数百mの深さの海底に供給しなければならないので、ガスハイドレート層に到達する前に冷却されて、かなりの熱エネルギーを失ってしまうことになる。
【0009】
しかも、大量の熱水を地盤内に存在するガスハイドレート層に供給するので、供給した熱水と同量の水を数百mの深さの海底からガスと共に回収しなければならず、この水を汲み上げるためにもかなりの動力を必要としていた。
【0010】
また、加熱するための熱源として電力を使用するときには、数百mの深さの海底まで電力を供給しなければならないので、電圧降下が大きくなり、電力を使用してもエネルギー効率を高くすることは困難であった。
【0011】
このため、特許文献2には、一対または複数の水平坑井をガスハイドレート層内に掘削して、ペアになった水平坑井の間を熱水または水蒸気を循環させてガスハイドレートを分解させる方法が開示されている。しかし、この方法では、ペアになった水平坑井の間のガスハイドレートを分解させて流動化させると、この流動化した部分の方がハイドレートの部分より熱水や水蒸気が通りやすくなるので、もっぱら流動化した部分を熱水や水蒸気が通ることになり、ハイドレートの部分を分解させて流動化させる範囲を周囲に拡大するのが遅くならざるを得ない。
【0012】
【特許文献1】特開2003−262083号公報
【特許文献2】特開2005−60957号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解消して、エネルギー効率が高く、かつ、大量の水を汲み上げる必要がなく、商業的にも充分採算の合うガスハイドレート層からのガス回収システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明に係るガスハイドレート層からのガス回収システムは、ガスハイドレート層の内部または近傍に熱エネルギー発生装置を配置し、この熱エネルギー発生装置で発生した熱エネルギーによってガスハイドレートを分解して、発生したガスを回収するガスハイドレート層からのガス回収システムであって、前記熱エネルギー発生装置を、水を加熱して蒸気を発生する蒸気発生装置と、この蒸気発生装置で発生した蒸気を更に加熱して過熱蒸気にする過熱蒸気生成装置と、この過熱蒸気生成装置で生成された過熱蒸気を高速の気流として前記ガスハイドレート層に向けて噴出する噴出管と、前記過熱蒸気の熱エネルギーで溶融したガスハイドレートを前記高速の気流で循環させて循環流とし、その一部を前記蒸気発生装置に還流する吸入管とを有する構成としたことを特徴とする。
【0015】
ここで、前記蒸気発生装置で蒸気となる水は、ガス回収管に併設された給水管によって供給されることが好ましく、更に、前記過熱蒸気生成装置が、前記噴出管の周囲に配置され、高周波電磁波で加熱する高周波加熱装置であることが好ましい。また、前記蒸気発生装置からの蒸気供給口が、前記ガス回収管に併設され、両端がガスハイドレート層に傾斜して開口している循環路のほぼ中央に配置されており、前記循環路の後半部が噴出管を形成して、この噴出管に沿って配置された前記高周波加熱装置で加熱された過熱蒸気を噴出することが好ましい。
【0016】
また、本発明に係るガスハイドレート層からのガス回収システムは、前記各装置に加えて、前記ガス回収管に併設され、可燃ガスと空気とをそれぞれ独立して供給する燃焼ガス供給管と、前記可燃ガスと空気とを混合して燃焼室で燃焼させ、この燃焼ガスでタービンを回転させて発電する発電装置とを有し、この発電装置で発電した電力で前記蒸気発生装置と過熱蒸気生成装置とを駆動するものであることを特徴とする。
【0017】
ここで、前記可燃ガスと空気とが、前記ガス回収管に併設された管路によってそれぞれ独立して供給され、前記燃焼室が前記発電装置のタービンに接近して配置されていることが好ましく、更に、前記蒸気発生装置,過熱蒸気生成装置,噴出管,循環路および発電装置により1つの処理ユニットを構成し、この処理ユニットを複数組、前記ガス回収管に沿って接続可能に構成することが好ましい。また、前記処理ユニットの内部における燃焼ガス供給管ならびに給水管が、処理ユニットごとに独立に使用可能な円周分割形状に構成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明のガスハイドレート層からのガス回収システムは、以上のように構成されており、ガスハイドレート層の内部または近傍に熱エネルギー発生装置を配置し、この熱エネルギー発生装置で発生した熱エネルギーによってガスハイドレートを加熱して、ガスハイドレートを分解してガスのみを回収するので、外部から供給する熱水がガスハイドレート層に到達する前に冷却されて、熱エネルギーのロスを大幅に軽減することができる。
【0019】
また、ガスハイドレート層の内部または近傍に熱エネルギー発生装置を配置することによって、発生した熱エネルギーの殆んど全部をガスハイドレート層に供給することができるので、エネルギーの使用効率の高いガスハイドレート層からのガス回収システムを実現することができる。
【0020】
更に、外部から供給するのは、熱源として供給される可燃ガスと空気、および、ガスハイドレートを加熱させる媒体としての過熱水蒸気の原料となる水のみであり、いずれも流動性の高い流体なので、遠距離になったとしても、供給することに格別の困難性がない。また、主として加熱するための熱源として使用する電力は、ガスハイドレート層の内部または近傍において発電して使用するので、電圧降下などの問題がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、本発明の一実施形態に係るガスハイドレート層からのガス回収システムについて、詳細に説明する。図1は本実施形態に係るガスハイドレート層からのガス回収システムの概略構成図を示し、図2は図1に示したシステムの要部であるハイドレート分解装置の詳細を示す側断面図である。
【0022】
図1に示すように、本実施形態に係るガスハイドレート層からのガス回収システム10は、海面下、地下または寒冷地の地表近くに層状になって存在するガスハイドレート層まで到達する多重管状の構造を有している。ここでは、ガスハイドレートの存在位置として最も一般的な形態である海面下数百mの深さの海底にガスハイドレート層が層状になって存在する場合を例にして説明する。
【0023】
このガス回システム10は、外筒12と内筒14との2重構造になっており、内筒14の内側が、ガスハイドレートを分解して生成したガス(メタンガスやエタンガス)を回収して搬送するガス回収管16となっており、外筒12と内筒14との間が、外部から熱源として分離して供給される可燃ガスと空気、および、ガスハイドレートを加熱させる媒体としての過熱水蒸気となる水を供給する供給管18および信号を送受する信号線20の導通経路22となっている。
【0024】
そして、ガス回収システム10の上端は、海水面24上(または陸上)に構築された構造物26に接続されており、この構造物26の内部に配置された可燃ガス供給装置28、空気供給装置30および水の供給装置32から供給管18を通して可燃ガス、空気および水を供給し、制御手段34からの制御信号が信号線20を通して送られて、掘削や可燃ガスの燃焼を制御するようになっている。
【0025】
ガス回収管16の上端は、ガスタンク36に接続されており、ガスと共に回収された水分や泥土、砂礫などを分離して清浄化し、清浄になったガスは、そのままパイプラインで搬出され、或いは所望の運搬用のタンクに充填して、または再びハイドレート化されて運搬される。
【0026】
ガス回収システム10の下端(先端)には掘削装置38が設けられており、この掘削装置38で上側の地層40を掘削して貫通し、上側の地層40、下側の地層42の間に存在するガスハイドレート層44の内部に、ガス回収システム10の先端部に形成された、詳細を後述するハイドレート分解装置46を挿入している。
【0027】
ここで、ハイドレート分解装置46は、図1に示すように一体化されたものに限定されるわけではなく、後述するような接続・分割が容易に実行できるユニット構成にして、これを必要に応じて所定数配置することが好ましい。
【0028】
ハイドレート分解装置46は、図2に示すように、ガス回収システム10の多重管内部に、熱エネルギー発生装置48と火力発電装置50とが設けられており、熱エネルギー発生装置48で発生した熱エネルギーは、過熱蒸気となって循環路52の噴出管54からハイドレート層に噴出し、周囲のハイドレート(図示されていない)を加熱して、ガスハイドレートを分解してガスと水に分離する。もちろん、熱エネルギー発生装置48および火力発電装置50は、必ずしもハイドレート層の内部に配置される必要はなく、ハイドレート層の近傍にあって、後述する循環路52がハイドレート層の内部に配置されていても支障はない。
【0029】
熱エネルギー発生装置48は、例えばガス回収システム10の多重管内部に併設された供給管18の一部をなす給水管56によって供給された水を加熱して蒸気を発生する蒸気発生装置58と、この蒸気発生装置58で発生した蒸気を更に加熱して過熱蒸気にする過熱蒸気生成装置60と、前述した循環路52とその一部をなす噴出管54からなっており、蒸気発生装置58は、給水管56によって供給された水をヒータ62で加熱して蒸気を発生して、傾斜して配置された蒸気供給口64から循環路52内に噴出する。
【0030】
循環路52は、ガス回収システム10の多重管内部に併設されており、蒸気発生装置58からの蒸気供給口64が、両端がガスハイドレート層に向かって傾斜して開口している循環路52のほぼ中央に、噴出管54(循環路52の後半部)の方向に傾斜して開口している。この循環路52は、後半部が噴出管54となっていて、この噴出管54の外周に沿って、蒸気発生装置58で発生した蒸気を更に加熱して過熱蒸気にする過熱蒸気生成装置60が配置されている。この過熱蒸気生成装置60は、噴出管54の周囲に配置され、高周波電磁波で蒸気を更に加熱する高周波加熱装置66であることが望ましい。
【0031】
熱エネルギー発生装置48は、このように構成されているので、蒸気発生装置58で発生して噴出管54の方向に傾斜して噴出した蒸気は、高周波加熱装置66によって更に加熱されて高温高圧の過熱蒸気となり、噴出した蒸気の流れが更に加速されて高速の気流となって循環路52の内部を噴出管54に沿って移動し、噴出管54の開口部からガスハイドレート層の内部に向かって、加熱された過熱蒸気となって噴出する。なお、ここでの駆動力は、土砂や砂礫などの異物が混入しにくいエゼクターポンプによるのがよい。
【0032】
この過熱蒸気の熱エネルギーによって加熱され、溶融して流動するようになったガスハイドレートは、噴出管54の開口部から噴出する高速の気流によってハイドレート層の内部を循環する循環流となり、ガス回収口68から回収されて、ガス回収管16を通ってガスタンク36に搬送される。このとき、ガス回収口68から土砂や砂礫などの異物が混入しないように、ガス回収口68の開口部に適宜のストレーナやフィルタを設けることが望ましい。
【0033】
更に、本発明に係るガス回収システムにおいては、地上または海上と前記ガスハイドレート層との間に、前記ガス回収管16を含むガス回収路内の回収ガス圧の調整を行うための、少なくとも1つの圧力調整手段を有することが好ましい。
【0034】
また、前記ガス回収管16を含むガス回収路内においては、地上または海上と前記ガスハイドレート層との間に、回収したガスを転換させるための少なくとも1つの転換手段を有することが好ましい。ここで、ガスの転換とは、例えば、メタンハイドレートを熱分解した結果得られるメタンガス(実際は、メタンを主成分とする混合ガスであるが)中の不純物を除去する工程、あるいは、水分を除去する工程、更には、触媒を用いて酸素を添加することによりメタンガスをメタノールに変える工程等が好適に用い得るが、これらに限られるものではない。
【0035】
また、噴出管54の開口部から噴出する高速の気流によって生じた循環流の一部は、吸入管(循環路52の前半部)に還流する流れとなって、蒸気発生装置58のヒータ62で加熱して蒸気となって蒸気供給口64から循環路52に噴出する蒸気と共に、再び、高周波加熱装置66によって加熱されて過熱蒸気の高速の気流となり、噴出管54の開口部からガスハイドレート層の内部に向かって噴出する。
【0036】
発電装置50は、ガス回収システム10内に併設され、可燃ガスと空気とをそれぞれ独立して供給する燃焼ガス供給管を構成する可燃ガス供給管70と空気供給管72とによって外部から供給され、この可燃ガスと空気とを燃焼室74に設けられたバーナー76で混合して燃焼させ、この燃焼ガスでタービン78を回転させて発電するものであって、この発電装置50のロータ80とステ−タ82は、燃焼室74の左側に配置されており、図示しない軸受装置で回転可能に支持された回転軸84によってタービン78の回転ブレードと発電機のロータ80が連結されている。
【0037】
燃焼室74で燃焼した燃焼ガスは、排気管86を通って外部に排気されるが、本実施例では、その途中で廃熱タービンとして再びタービン78を回転させて、発電効率を高めることに努めている。また、排気管86は、ガス回収システム10の外周部を戻すことによって、周囲のガスハイドレート層を加熱し、或いは、給水管56の外側を還流して、給水管56内の水の凍結を防止することが熱を有効に使用する上で望ましい。
【0038】
そして、この発電装置50で発電した電力によって、蒸気発生装置58のヒータ62による蒸気発生のための加熱と過熱蒸気生成装置60の高周波加熱装置66による蒸気を更に加熱する高周波電磁波の発生のための電力源となっており、あるいは各種の制御装置の電力源となっている。更に、この発電装置50は、発電効率が多少悪くなっても、その熱は周囲のガスハイドレート層を加熱することに使用されるので、廃熱として廃棄される熱量は存在しない。
【0039】
ここで、上記発電装置50で用いられる可燃ガスは、当初は、外部から供給する必要があるが、ガスハイドレートからのガス回収が軌道に乗った後には、これにより回収したガスの一部を用いるように変更することも可能である。
【0040】
また、ここで用いる高周波電磁波としては、周波数が数百メガヘルツ〜数十テラヘルツ程度のものが好適に用い得る。特に、ガスハイドレートの分解作用に用いる周波数(概ね、数百〜数千メガヘルツ)の電磁波と、ガスハイドレートの内部に奥深くまで浸透し、ガスハイドレートの分解作用を促進する作用があるテラヘルツ級の周波数の電磁波とを適宜組み合わせて用いることも有効である。
【0041】
ところで、前述のような循環流を用いるガスハイドレートの分解によるガス回収を効率的に行うためには、ガスハイドレート層にひび割れを発生させることが効果的である。このような、ガスハイドレート層にひび割れを発生させる方法としては、ガスハイドレート層を局部的に加熱・膨張させて、歪を発生させることが有効であるが、それに加えて、衝撃を与えることにより、機械的にひび割れを発生させることも有効である。衝撃を与える方法は特に限定されないが、一般には、機械的振動を用いる方法ではなく、衝撃波等を発生させてこれをガスハイドレート層に作用させてひび割れを発生させる、非接触に行える方法が利用しやすく、また、効果的である。
【0042】
ここで用い得る衝撃波の発生装置としては、スパーク放電方式,ピエゾ効果方式,電磁変換方式,電気水圧方式等の各種の公知の方式によるものが存在するが、衝撃波の繰り返し発生が可能な条件が得られるものであれば、いずれの方式によっても構わない。
なお、実際に衝撃波を作用させる際には、ハイドレート層に超音波やマイクロ波を照射しつつ、ここに更に衝撃波を作用させるのが好ましい。
【0043】
要するに、本実施形態に係るガス回収システムにおいては、衝撃波を作用させることによって、ハイドレート層にひび割れを発生させ、そのひび割れをハイドレートの分解の拠点として機能させることにより、ハイドレートの分解効率を向上させることを目的としているものであり、この目的が達成される範囲内において、任意の方式により発生させた衝撃波を任意の方式(連続、または間欠等)で適用することができる。
【0044】
このように構成されたハイドレート分解装置46は、蒸気発生装置58、過熱蒸気生成装置60および循環路52からなる熱エネルギー発生装置48と、燃焼室74,タービン78,回転軸84およびロータ80とステ−タ82とを有する発電機とからなる発電装置50とが組になっており、このハイドレート分解装置46を適宜間隔で複数組、ガス回収システム10に沿って併設されていることが望ましい。このように複数個設けることによって、1個のガス回収システム10で複数個所のガス回収が行われることになり、より大量のガス回収を効率的に行うことができる。
【0045】
この際、上記熱エネルギー発生装置48と発電装置50とにより1つのユニットを構成し、このユニットの内部における燃焼ガス供給管ならびに給水管を、ユニットごとに独立に使用可能な、多層構成と円周分割構成を組み合わせた円周分割形状(図3に示す例を参照)に構成することが好ましい。
【0046】
なお、図3中におけるエリアAは上述の熱エネルギー発生装置48や発電装置50を収容する装置収容エリア、その周囲の細分されたエリアB11〜B14,B21〜B24,…はこれも上述の燃焼ガス供給管ならびに給水管、更には制御用の電源を供給するケーブル類の挿通孔にもなる挿通エリアを示している。
【0047】
ここで、ユニットの上記各種挿通エリアB11〜B14,B21〜B24,…の符号の意味を説明しておく。上記符号B21〜B24,…の最初の2桁B1,B2,…は、各種の用途に応じた挿通エリアが、それぞれユニット1,ユニット2,…(ここでは、円周方向に配列されている)に対応するように分離・独立した形に構成されていることを示している。
【0048】
また、上記符号の3桁目の1〜4は、ここでは、例えば水,可燃ガス,空気,ケーブル挿通用に独立(ここでは、縦すなわち半径方向)における位置を表わすために用いられている。このように構成することにより、本実施形態に係るガス回収システムをユニット構成とした場合におけるユニットの接続・分離等に際しての配管の接続・分離が容易にできるようになる。
【0049】
なお、上記実施形態はいずれも本発明の一例を示したものであり、本発明の趣旨を変更しない範囲内において、適宜の変更・改良を行ってもよいことはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施形態に係るガスハイドレート層からのガス回収システムの概略構成図である。
【図2】図1に示したシステムの要部であるハイドレート分解装置の詳細を示す側断面図である。
【図3】実施形態に係るガス回収システムをユニット構成にする場合の挿通エリアの構成例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0051】
10 ガス回収システム
12 外管
14 内管
16 ガス回収管
18 供給管
20 信号線
22 導通経路
24 海水面
26 構造物
28 可燃ガス供給装置
30 空気供給装置
32 水の供給装置
34 制御手段
36 ガスタンク
38 掘削装置
40,42 地層
44 ガスハイドレート層
46 ハイドレート分解装置
48 熱エネルギー発生装置
50 火力発電装置
52 循環路
54 噴出管
56 給水管
58 蒸気発生装置
60 過熱蒸気生成装置
62 ヒータ
64 蒸気供給口
66 高周波加熱装置
68 ガス回収口
70 可燃ガス供給管
72 空気供給管
74 燃焼室
76 バーナー
78 タービン
80 ロータ
82 ステ−タ
84 回転軸
86 排気管
A 装置収容エリア
B11〜B14、B21〜B24,… 挿通エリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスハイドレート層の内部または近傍に熱エネルギー発生装置を配置し、この熱エネルギー発生装置で発生した熱エネルギーによってガスハイドレートを分解して、発生したガスを回収するガスハイドレート層からのガス回収システムであって、
前記熱エネルギー発生装置を、
水を加熱して蒸気を発生する蒸気発生装置と、
この蒸気発生装置で発生した蒸気を更に加熱して過熱蒸気にする過熱蒸気生成装置と、
この過熱蒸気生成装置で生成された過熱蒸気を高速の気流として前記ガスハイドレート層に向けて噴出する噴出管と、
前記過熱蒸気の熱エネルギーで溶融したガスハイドレートを前記高速の気流で循環させて循環流とし、その一部を前記蒸気発生装置に還流する吸入管と
を有する構成としたことを特徴とするガスハイドレート層からのガス回収システム。
【請求項2】
前記蒸気発生装置で蒸気となる水を、ガス回収管に併設された給水管によって供給することを特徴とする請求項1に記載のガスハイドレート層からのガス回収システム。
【請求項3】
前記過熱蒸気生成装置が、前記噴出管の周囲に配置され、高周波電磁波で加熱する高周波加熱装置であることを特徴とする請求項1に記載のガスハイドレート層からのガス回収システム。
【請求項4】
前記蒸気発生装置からの蒸気供給口が、前記ガス回収管に併設され、両端がガスハイドレート層に傾斜して開口している循環路のほぼ中央に配置されており、前記循環路の後半部が噴出管を形成して、この噴出管に沿って配置された前記高周波加熱装置で加熱された過熱蒸気を噴出することを特徴とする請求項1に記載のガスハイドレート層からのガス回収システム。
【請求項5】
前記各装置に加えて、
ガス回収管に併設され、可燃ガスと空気とをそれぞれ独立して供給する燃焼ガス供給管と、
前記可燃ガスと空気とを混合して燃焼室で燃焼させ、この燃焼ガスでタービンを回転させて発電する発電装置とを有し、
この発電装置で発電した電力で前記蒸気発生装置と過熱蒸気生成装置とを駆動することを特徴とする請求項1に記載のガスハイドレート層からのガス回収システム。
【請求項6】
前記可燃ガスと空気とが、前記ガス回収管に併設された管路によってそれぞれ独立して供給され、前記燃焼室が前記発電装置のタービンに接近して配置されていることを特徴とする請求項5に記載のガスハイドレート層からのガス回収システム。
【請求項7】
前記蒸気発生装置,過熱蒸気生成装置,噴出管,循環路および発電装置により1つのユニットを構成し、このユニットを複数組、前記ガス回収管に沿って接続することを特徴とする請求項1または5に記載のガスハイドレート層からのガス回収システム。
【請求項8】
前記ユニットの内部における燃焼ガス供給管ならびに給水管が、ユニットごとに独立に使用可能な円周分割形状に構成されていることを特徴とする請求項7に記載のガスハイドレート層からのガス回収システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−51508(P2007−51508A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−238783(P2005−238783)
【出願日】平成17年8月19日(2005.8.19)
【出願人】(504275351)
【出願人】(596030494)有限会社アトラス (3)
【Fターム(参考)】