説明

ガスバリア性積層フィルム

【課題】 本発明の目的は、各種食品や医薬品、工業製品の包装用途、高いガスバリア性、耐久性が求められる太陽電池、電子ペーパー、有機EL素子、半導体素子、等の工業用途に用いることができる、優れたガスバリア性を有するガスバリア性フィルムを提供することにある。
【解決手段】 プラスチックフィルム基材の少なくとも片面に、無機化合物薄膜が形成されてなるフィルムであって、その化合物の構成元素の電気陰性度差(ΔD)が2.1〜2.5である化合物を少なくとも10%以上含み、水の接触角が40°以上である、透明ガスバリア性フィルムであり、無機化合物薄膜のヘリウム透過係数が4×10−11[ml(STP)cm/cm・sec・cmHg]以下である透明ガスバリア性フィルムであり、無機化合物薄膜は周期表の2族、3族、4族および5族の元素からなる群から選ばれた少なくとも1種の元素の酸化物、窒化物、もしくはこれらの混合物によって形成された請求項1に記載の透明ガスバリア性フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品、医薬品、電子部品等の包装分野や、太陽電池、電子ペーパー、フィルム液晶など水蒸気バリア性を要求される電子機器などに用いられるガスバリア性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
食品、医薬品等に用いられる包装材料は、長期間保存可能にするために、酸化など変質を促進する大気中の酸素、水蒸気などのガスを遮断する性質、すなわちガスバリア性を備えることが求められている。また、太陽電池や、有機ELなどの電子デバイスや、電子部品などで使用されるバリア性材料は、食品包装以上に高いバリア性を必要とする。
【0003】
従来からポリビニルアルコール(PVA)、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン樹脂(PVDC)、或いはポリアクリロニトリル(PAN)など一般にガスバリア性が比較的高いと言われる高分子樹脂組成物を積層したフィルムが包装材料として使用されてきた。
【0004】
ところが、上述のPVA、EVOH系の高分子樹脂組成物を用いてなるガスバリア性積層フィルムは、温度依存性及び湿度依存性が大きいため、高温又は高湿下においてガスバリア性の低下が見られる。またPVDCやPANは、廃棄・焼却の際に有害物質が発生する危険性が高い点が問題である。
【0005】
また、より高いバリア性能を要求される包装材料については、プラスチックフィルムにAlなどの金属を蒸着したものが用いられてきた。しかし、金属薄膜は不透明であるために内容物を識別できず、金属探知機による内容物検査や、電子レンジでの加熱処理が出来ない。
【0006】
かかる問題を解決する為、プラスチックフィルム上に酸化アルミニウム薄膜を設け、高いガスバリア性のフィルムが提案されている(例えば、特許文献1等参照)。
【0007】
しかしながら、上記方法では、酸素に対しては高いバリア性を有するものの、水蒸気に対しては、それほどバリア性は高くなく、内容物によっては、十分な水蒸気バリア性を持たないという欠点がある。
【0008】
さらに、バリア性を高める為に、酸化・窒化アルミニウム、珪素を用いた例も報告されている。(例えば、特許文献2参照。)
【0009】
しかしながら、これらの方法は高い酸素バリア性は得ることは出来るものの、水蒸気バリア性については、まだ要求性能に達していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−82400号公報
【特許文献2】特開2002−361778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、かかる従来技術の課題を背景になされたものである。すなわち、本発明の目的は、各種食品や医薬品、工業製品の包装用途、高いガスバリア性、耐久性が求められる太陽電池、電子ペーパー、有機EL素子、半導体素子、等の工業用途に用いることができる、優れたガスバリア性を有するガスバリア性フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは鋭意検討した結果、以下に示す手段により、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、以下の構成からなる。
【0013】
プラスチックフィルム基材の少なくとも片面に、無機化合物薄膜が形成されてなるフィルムであって、その化合物の構成元素の電気陰性度差(ΔD)が2.1〜2.5である化合物を少なくとも10%以上含み、水の接触角が40°以上である、透明ガスバリア性フィルム。
【0014】
さらに、無機化合物薄膜のヘリウム透過係数が4×10−11[ml(STP)cm/cm・sec・cmHg]以下である透明ガスバリア性フィルム。
【0015】
さらに、無機化合物薄膜は周期表の2族、3族、4族および5族の元素からなる群から選ばれた少なくとも1種の元素の酸化物、窒化物、もしくはこれらの混合物によって形成される透明ガスバリア性フィルムである。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、透明でかつ優れたガスバリア性を備えた、各種用途に適した実用性の高いガスバリア性積層フィルムを得ることができる。また、生産コストが比較的安価で、生産安定性に優れ、均質の特性が得られやすいガスバリア性積層フィルムとなる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を詳述する。
【0018】
〔基材フィルム〕
本発明で用いる基材フィルムは、有機高分子樹脂からなり、溶融押出し後、必要に応じ、長手方向及び/又は幅方向に延伸、冷却、熱固定を施したフィルムである。前記有機高分子樹脂としては、ナイロン4・6、ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン12などで代表されるポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートなどで代表されるポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテンなどで代表されるポリオレフィンの他、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリスチレン、ポリ乳酸、テトラフルオロエチレン、1塩化3弗化エチレンなどを挙げることができる。
また本発明における基材層は、積層型フィルムであってもよい。積層型フィルムとする場合の積層体の種類、積層数、積層方法等は特に限定されず、目的に応じて公知の方法から任意に選択することができる。
また基材フィルムにはシリカなどの滑剤を添加したり、他の有機重合体を少量共重合したり、ブレンドしたりしてもよい。基材層の製造方法については、共押出し法、キャスト法など、既存の方法を使用することができる。
【0019】
これらの中でも、好ましいポリアミドの具体例としては、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリ‐ε‐アミノへプタン酸(ナイロン7)、ポリ‐ε‐アミノノナン酸(ナイロン9)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリラウリンラクタム(ナイロン12)、ポリエチレンジアミンアジパミド(ナイロン2・6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン4・6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン6・6)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン6・10)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン6・12)、ポリオクタメチレンドデカミド(ナイロン6・12)、ポリオクタメチレンアジパミド(ナイロン8・6)、ポリデカメチレンアジパミド(ナイロン10・6)、ポリデカメチレンセバカミド(ナイロン10・10)、ポリドデカメチレンドデカミド(ナイロン12・12)、メタキシレンジアミン‐6ナイロン(MXD6)などを挙げることができ、これらを主成分とする共重合体であってもよく、その例としては、カプロラクタム/ラウリンラクタム共重合体、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体、ラウリンラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体、ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体、エチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体などを挙げることができる。これらのポリアミドには、フィルムの柔軟性改質成分として、芳香族スルホンアミド類、p‐ヒドロキシ安息香酸、エステル類などの可塑剤や低弾性率のエラストマー成分やラクタム類を配合することも有効である。
【0020】
また、好ましいポリエステルの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン‐2,6‐ナフタレートなどが用いられるが、これらを主成分とする共重合体であっても良く、ポリエステル共重合体を用いる場合、そのジカルボン酸成分の主成分がテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸又は2,6‐ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、トリメリロット酸及びピロメリロット酸などの多官能カルボン酸の他にアジピン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸などが用いられる。また、グリコール成分の主成分がエチレングリコール又は1,4‐ブタンジオールである他ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族グリコール、p‐キシリレングリコールなどの芳香族グリコール、1,4‐シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族グリコール、平均分子量が150〜20000のポリエチレングリコールなどが用いられる。これらの有機高分子は、さらに他の有機高分子を少量共重合したり、ブレンドしても良い。
【0021】
さらに上記の有機高分子には、公知の添加物,例えば、紫外線吸収剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、着色剤、などを添加されてもよく、フィルムとしての透明度は特に限定するものではないが、透明性を有する包装材料積層体として使用する場合には、50%以上の透過率をもつものが望ましい。本発明におけるプラスチックフィルムは、本発明の目的を損なわないかぎりにおいて、薄膜層を積層するに先行して、前記プラスチックフィルムをコロナ放電処理、グロー放電、火炎処理、表面粗面化処理等の表面処理を施しても良く、また、公知のアンカーコート処理、印刷、装飾が施されても良い。本発明におけるプラスチックフィルムは、その厚さとして1〜300μmの範囲が望ましく、さらに好ましくは3〜100μmの範囲で、最も好ましくは9〜50μmである。
【0022】
〔無機薄膜〕
本発明でいう無機化合物薄膜は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの物理蒸着法、あるいはCVD法(化学蒸着法)などにより形成される。例えば真空蒸着法を採用する場合は、抵抗加熱、高周波誘導加熱、電子ビーム加熱法などがある、また、金属材料を蒸発させて、反応ガスとして酸素、窒素、水素、アルゴン、炭酸ガス、水蒸気などを導入したり、オゾン添加、イオンアシストなどの手段を用いた反応性蒸着を採用することも可能である。さらに、プラスチックフィルムにバイアスを印加したり、プラスチックフィルムを加熱したり冷却するなどの形成方法を使ってもよい。上記反応ガス、基板バイアス、加熱・冷却などは、スパッタリング法やCVD法などを採用する場合にも同様に変更可能である。本発明において、無機化合物薄膜の膜厚は特に指定するものではないが、通常5〜500nmであり、さらに好ましくは10〜200nmである。一般に膜厚が5nm未満ではガスバリア性が十分でなくまた、500nmを超えて過度に厚くしても、それに相当するガスバリア性の向上の効果は得られず、耐屈曲性や製造コストの点でかえって不利となる。
【0023】
真空蒸着法で成膜する場合、圧力は3.0×10−1Pa以下が好ましい。圧力が3.0×10−1Paよりも大きくなると蒸着粒子のエネルギーが減少し密度の小さな膜となってしまう。
【0024】
本発明では、プラスチックフィルム上に形成される無機化合物薄膜は、周期表の2族、3族、4族および5族の元素からなる群から選ばれた少なくとも1種の元素の酸化物、窒化物、もしくはこれらの混合物である。例えば、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化スカンジウム、酸化イットリウム、酸化ランタン、酸化セリウム、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、三二酸化バナジウム、酸化タンタル等の酸化物、窒化マグネシウム、窒化カルシウム、窒化ランタン、窒化チタン、窒化ハフニウム、等の窒化物、さらにこれらの混合物質である、たとえば、酸化アルミニウム・酸化マグネシウム混合物(単純な混合物だけでなくこれらの化合物も含む)
【0025】
本発明でいう化合物の構成元素の電気陰性度差(ΔD)とは無機化合物薄膜層の構成原子のポーリング氏による電気陰性度のうち最も差がある原子間の差をいう。
以下に例を持って説明する。MgOにより無機化合物薄膜層ができている場合。Mgのポーリングの電気陰性度(DMg)は1.2、Oの電気陰性度(D)は3.5である。つまり、この場合のΔDは、
ΔD=D−DMg
=3.5−1.2
=2.3
となる。

また、別の例としてMgTiOを挙げる。Mgのポーリングの電気陰性度(DMg)は1.2、Tiの電気陰性度(DTi)は1.5、Oのポーリングの電気陰性度(D)は3.5はである。ここで、差の大きい元素を用いてΔDを計算するため、
ΔD=D−DMg
=3.5−1.2
=2.3
となる。

また本発明でいう化合物を少なくとも10%以上含むとは該記載の電気陰性度差が大きな組み合わせの化合物の重量含有率が10%以上であるということである。MgTiOの場合では、MgOとTiOの合計量に対して、MgOが10%以上含まれるということである。
【0026】
本発明でいう水の接触角とはJIS 2396 9.12.1で記載がある接触角測定装置による角度である。
【0027】
本発明でいうヘリウム透過係数とはJIS K7126−1で規定されている差圧法により求めたヘリウムの気体透過係数である。高圧側の圧力は1013hPaで温度は25℃時の値である。
【0028】
電気陰性度差ΔDが大きいと無機化合物薄膜の構成原子間の引き合う力が強いと考えられより緻密な膜ができることでガスバリア性が向上すると考えられる。
また、接触角が多きことで水との親和性が小さく水蒸気等の溶け込みが少なく透過が少なくなると考える。
【実施例】
【0029】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。なお、各実施例で得られたフィルム特性は以下の方法により測定、評価した。
【0030】
1)酸素透過率
JIS K7126 B法に準じて、酸素透過率測定装置(OX−TRAN 2/21
MOCON社製)を用い、23℃、65%RHの条件下で測定した。酸素(透過)ガス側を無機薄膜面とした。
【0031】
2)水蒸気透過率
JIS K7129 B法に準じて、水蒸気透過度測定装置(PERMATRAN−W
3/31 MOCON社製)を用い、40℃、90%RHの条件下で測定した。水蒸気(透過ガス)側を無機薄膜面とした。
【0032】
3)組成・膜厚
蛍光X線分析装置(ZSX100e(株)リガク製)を用いて測定を行った。膜厚に関しては正確に測定することが難しい。そこで薄膜での密度をバルクでの0.8として個々の成分分の膜厚の合計が薄膜の厚みとして付着量より計算した。
たとえば酸化ケイ素と酸化マグネシウムとの混合物では単位面積あたりの付着量Ms(g/cm)、バルクの密度をρs(2.65g/cc)とし、酸化マグネシアの付着量Mm、バルクの密度をρm(3.65g/cc)とすると膜厚t(nm)は下記式(1)で計算できる。

t=(Ma/ρa+Mm/ρm)×10/0.8 ・・・・式(1)

蛍光X線によりまとめた組成は、重量%で、蛍光X線法で測定した組成とICPで測定した組成とは一致した。励起X線の発生はロジウム管球を用い、50kV、70mAで行った。
膜厚はTEM等で観察した膜厚とほぼ一致した。
【0033】
4)気体透過係数
以下に本発明で用いたヘリウムの気体透過係数(P)の測定方法について説明するが、ここに記載の方法に限定されない。
測定は、差圧法による。試料フィルムの片面を低圧に保ち、他方の面に一定のガス圧を加え、その差圧により、試料フィルムを透過してくるガスによる低圧側の圧力上昇を検出し、透過度を知る方法である。圧力検出は、高精度バラトロン圧力変換器6を用いた。
図1に装置の略図を示す。透過セルはサンプルフィルムによって上部セル1(セル高圧側)と下部セル2(セル低圧側)に仕切られ、それぞれ真空ポンプ5によって排気される。低圧セル2にはバラトロン圧力変換器6が接続されている。
測定手順は、まずサンプルフィルムを所定の大きさφ30の大きさにカットし、セルにそのサンプルををセットする。その後一旦セルをポンプ5で空気を排気する。
続いて、測定するヘリウムをガスボンベ3からガス留めタンク4に導入する。上部セル1(セル高圧側)を1013hPaにして測定を行った。また、下部セル2(セル低圧側)は1Pa以下まで真空引きした後測定を行った。試験温度は25℃に設定した。
測定を開始するために上部セル1(セル高圧側)にヘリウムを導入する。ヘリウムを導入した時点から経過時間で下部セル2(セル低圧側)の圧力変化を測定し、圧力上昇率が一定になるまで測定を行う。定常状態に達した時点で測定を停止する。式(2)により気体透過度(Q)、式(2)により気体透過係数(P)を算出した。
Q=(V/A)・{273/(273+T)}・(1/p)・(1/dt) ・・・式(2)
Q:気体透過度(ml(STP)/m・hr・atm)
V:下部セル2(セル低圧側)の容積(mL)
A:サンプルフィルムの透過面積(m
T:試験温度(K)
p:試料両面の差圧(Pa)
dt:セル低圧側圧力上昇133.3Pa生ずるのに要する時間(hr)

P=L×Q/(P・A・t) ・・・式(2)
L:サンプルフィルムの厚み(m)
【0034】
5)水の接触角
被膜表面に水滴をのせ、滴下一分後の水滴と表面の接触角を測定した。測定には協和界面科学(株)製の接触角計を用い、25±3℃、65±3%RHで実施した。
【0035】
〔実施例1〕
蒸着源として、3〜30mm程度の粒状のCaO(純度99%以上)を用いて、電子ビーム蒸着法で、Φ120の50μm厚のPETフィルム(東洋紡績(株):A4100)上に酸化カルシウムのガスバリア層の形成を行った。電子銃JEBG−203を備えた小型蒸着機を用いて、加速電圧6kVで蒸着を行った。電子銃のエミッション電流を30mAとし、蒸着時の圧力は、2.0×10−2Paであった。
【0036】
〔実施例2〕
蒸着源として、3〜7mm程度の粒状SiOと3〜30mm程度の粒状CaOを混合せずに2つに区切って入れ、1台の電子銃でビームを走査し、時分割することにより、計算上エミッション電流を30mAと40mAとして蒸着した。蒸着時の圧力は4.2×10−2Paであった。
【0037】
〔実施例3〕
蒸着源として、2〜6mm程度の粒状のMgO(純度99.9%以上)と3〜7mm程度の粒状SiOを混合させたものと、3〜10mm程度の粒子状AlN(純度99%)とを混合せずに2つに区切って入れ、電子銃のエミッション電流を計算上30mAと180mAとして蒸着した。蒸着時の圧力は2.5×10−2Paであった。
【0038】
〔比較例1〕
蒸着源として、10mm程度の塊状のWO(純度99.9%以上)を用いて、電子銃のエミッション電流を30mAとした。蒸着時の圧力は1.4×10−3Paであった。
【0039】
〔比較例2〕
蒸着源として、3〜7mm程度の粒状SiOを用いて、電子銃のエミッション電流を30mAとして蒸着した。蒸着時の圧力を4.2×10−3Paであった。
【0040】
表1に実施例1〜3、比較例1〜2の結果を示す。
【0041】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明により、酸素、水蒸気などに対する高いガスバリア性を持ったガスバリア性積層フィルムが得られる。本発明のガスバリア性フィルムは、各種食品や医薬品、工業製品の包装用途、高いガスバリア性、耐久性が求められる太陽電池、電子ペーパー、有機EL素子、半導体素子、等の工業用途にも広く用いることができることからも、産業界に大きく寄与することが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】気体透過係数測定装置の略図である。
【符号の説明】
【0044】
1:上部セル
2:下部セル
3:ガスボンベ
4:ガス溜めタンク
5:真空ポンプ
6:高精度バラトロン圧力変換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックフィルム基材の少なくとも片面に、無機化合物薄膜が形成されてなるフィルムであって、その化合物の構成元素の電気陰性度差(ΔD)が2.1〜2.5である化合物を少なくとも10%以上含み、水の接触角が40°以上である、透明ガスバリア性フィルム。
【請求項2】
無機化合物薄膜のヘリウム透過係数が4×10−11[ml(STP)cm/cm・sec・cmHg]以下である、請求項1に記載の透明ガスバリア性フィルム。
【請求項3】
無機化合物薄膜は周期表の2族、3族、4族および5族の元素からなる群から選ばれた少なくとも1種の元素の酸化物、窒化物、もしくはこれらの混合物によって形成された請求項1に記載の透明ガスバリア性フィルム。

【図1】
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【公開番号】特開2013−63642(P2013−63642A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−180970(P2012−180970)
【出願日】平成24年8月17日(2012.8.17)
【出願人】(000003160)東洋紡株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】