説明

ガスレーザ発振装置

【課題】 ガスレーザ発振装置を構成するウインドウの汚染を防止する。
【解決手段】 ベッセル1、ゲート弁5及びハウジング6によって構成される容器構造体が、レーザ媒質ガスとそれを励起する放電電極2a及び2bとが収容される主空洞S、並びにレーザ光Lの伝搬方向に関して、一端部を主空洞Sの内壁面に開口させた第1の開口部21とし、他端部を外部の空間に通じる第2の開口部22として構成された中間空洞Sを画定する。ウインドウ61が、第2の開口部22を閉塞している。主空洞Sの内壁面における第1の開口部21の周囲に設けられた傾斜部材25が、レーザ光Lの伝搬方向と直交する仮想平面に沿って、第1の開口部21の中心に近づくに従って、その仮想平面から主空洞S側へ持ち上がるように傾斜した傾斜面251を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスレーザ発振装置に関し、特にウインドウ等の板状体を備えたガスレーザ発振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスレーザ発振装置は、レーザ媒質ガスとそのレーザ媒質ガスをパルス放電により励起する一対の放電電極とを収容する容器、及び容器内のレーザ媒質ガスが励起されることにより発生する光を閉じ込める共振器を備える。共振器は、レーザ光の伝搬方向に向かい合うように配置される部分反射鏡及び全反射鏡によって構成される。例えば、外部ミラー型ガスレーザ発振装置では、容器の外部に部分反射鏡及び全反射鏡が配置される。この場合、容器の内部で発生した光を容器の外部に取り出すために、その光に対して透明な板状のウインドウによって容器の側壁の一部が構成される。
【0003】
放電電極間にパルス放電を起こすときに、放電電極の表面がスパッタされ、不純物としての金属粉等が生じる。また、例えばレーザ媒質ガスがハロゲンを含有する場合、ハロゲンは反応性が高いため、容器内で不純物としてのハロゲン化合物が生成されやすい。このため、ガスレーザ発振装置を長期間にわたって稼動させると、これらの不純物がウインドウの内面に付着し、ウインドウの光透過率を低下させることがある。その結果、ガスレーザ発振装置から出射するレーザ光の強度が低下する。また、ウインドウに付着した不純物がレーザ光を吸収し、ウインドウの温度を急激に上昇させる結果、ウインドウが熱応力で破損することもある。
【0004】
そこで、ガスレーザ発振装置の稼動中に、ガス浄化装置を経由した浄化されたガス(以下、浄化ガスという。)を、ウインドウの内面に向って供給するようにした技術が知られている(特許文献1参照)。この技術によれば、ウインドウの内面に向って供給される浄化ガスによって、不純物を含んだレーザ媒質ガスがウインドウの内面近傍に滞留することが抑制されるため、ウインドウの汚染を防止することができる。
【0005】
【特許文献1】特開2000−340863号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ウインドウの内面に供給する浄化ガスの流量には限界があるため、依然としてウインドウの汚染が引き起こされることがある。特に、容器の内部で放電電極の幅方向に流れるレーザ媒質ガスのガス流を形成する場合、このガス流によって運ばれる不純物がウインドウの内面に付着することがある。また、放電電極間にパルス放電を起こすときに容器内で衝撃波が発生し、この衝撃波によって運ばれる不純物がウインドウの内面に付着することもある。
【0007】
なお、ウインドウの内面に吹き付ける浄化ガスの流量を増やす程、ウインドウの汚染を抑制できると考えられる。しかし、浄化ガスの流量を増やすためには、浄化ガスを容器内に供給するためのポンプやガス浄化装置等の大型化を招くことになって、コストやスペースの点で難点が生じることになる。
【0008】
また、上述した問題は、部分反射鏡及び全反射鏡がそれぞれ容器の側壁の一部を構成する内部ミラー型ガスレーザ発振装置においても同様に生じ得る。即ち、部分反射鏡及び全反射鏡の内面に不純物が付着すると、レーザ光の出力低下や部分反射鏡及び全反射鏡の破損の問題が生じることになる。
【0009】
本発明の目的は、ウインドウ、部分反射鏡、あるいは全反射鏡等の板状体の汚染を防止することのできるガスレーザ発振装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一観点によれば、レーザ媒質ガス及び該レーザ媒質ガスを励起する励起器が収容される主空洞、並びに前記主空洞内のレーザ媒質ガスが前記励起器によって励起されることにより発生するレーザ光が通過する中間空洞であって、該レーザ光の伝搬方向に関して、一端部を前記主空洞の内壁面に開口させた第1の開口部とし、他端部を外部の空間に通じる第2の開口部として構成された中間空洞を画定する容器構造体と、前記容器構造体によって保持され、前記第2の開口部を閉塞する板状体と、前記主空洞の内壁面における前記第1の開口部の周囲に設けられ、前記レーザ光の伝搬方向と直交する仮想平面に沿って、前記第1の開口部の中心に近づくに従って、前記仮想平面から前記主空洞側へ持ち上がるように傾斜した傾斜面を有する傾斜部材とを備えたガスレーザ発振装置が提供される。
【発明の効果】
【0011】
主空洞の内壁面に沿って第1の開口部に向うガス流が形成されたとしても、そのガス流の流れの方向は、傾斜部材の傾斜面によって第1の開口部から遠ざかる方向に変更される。これにより、ガス流によって運ばれる不純物が中間空洞内に進入することが防止される。その結果、板状体の汚染を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1(a)に、実施例によるエキシマレーザ発振装置の断面図を示す。図1(a)は、このエキシマレーザ発振装置から出射されるレーザ光の光軸に垂直な断面図である。ベッセル1が、レーザ媒質ガスとそのレーザ媒質ガスを励起する放電電極2a及び2bとが収容される主空洞Sを画定している。ここで、レーザ媒質ガスとは、光を生成するとともに生成した光を増幅するための媒質となるガスのことをいい、クリプトン等の希ガスやフッ素等のハロゲンを含む。
【0013】
放電電極2a及び2bは、空間を隔てて相対向した状態で配置されている。図示しないが、主空洞S内には、放電電極2a及び2b間にパルス電圧を繰り返し印加するパルス電圧印加回路等も配置されている。パルス電圧印加回路が、放電電極2a及び2b間にパルス電圧を印加することにより、放電電極2a及び2b間にグロー放電が発生する。発生したグロー放電によって、主空洞S内のレーザ媒質ガスが励起される。
【0014】
放電電極2a及び2b間にグロー放電を起こす際に、放電電極2a及び2bの表面がスパッタされ金属粉等の微粒子状の不純物が生じる。また、レーザ媒質ガスは反応性の高いハロゲンを含むので、主空洞S内においてガス状の不純物であるハロゲン化合物ガスが生成されやすい。このため、レーザ発振装置を長期にわたって稼動させると、主空洞S内のレーザ媒質ガスが不純物を含有することとなる。
【0015】
放電電極2a及び2bの幅方向に平行な方向をX方向とし、放電電極2a及び2b同士の対向方向に平行な方向をY方向とするXYZ直交座標系を考える。ベッセル1のX方向一端部にガス流路3の一端が接続され、ベッセル1のX方向他端部にガス流路3の他端が接続されている。ガス流路3内に、ブロワ4が配置されている。ベッセル1の外部に配置されたブロワ4が、ガス流路3及びベッセル1によって構成された閉じられたガス循環経路内でレーザ媒質ガスを循環させる。これにより、主空洞S内では、X方向に流れるレーザ媒質ガスのガス流Fが形成される。
【0016】
図1(b)に、上記エキシマレーザ発振装置のX方向からみた側面図を示す。なお、図1(b)では簡略のために、上記ガス流路3及びブロワ4の図示を省略する。ベッセル1のZ方向一端部(図1中、左側の端部)に、ゲート弁5を介してハウジング6が連結され、さらにそのハウジング6に第1のミラーホルダ7が連結されている。ハウジング6が、板状体としてのウインドウ61を保持している。ウインドウ61は、弗化マグネシウムや合成石英(SiO)等の紫外光を透過させる材料からなる。第1のミラーホルダ7は、部分反射鏡71を保持している。
【0017】
一方、ベッセル1のZ方向他端部(図1中、右側の端部)にも同様に、ゲート弁5を介してハウジング6が連結され、さらにそのハウジング6に第2のミラーホルダ8が連結されている。ベッセル1のZ方向他端部に設けられたハウジング6も、ウインドウ61を保持している。第2のミラーホルダ8は、全反射鏡81を保持している。全反射鏡81は、部分反射鏡71と共に光共振器を構成する。
【0018】
放電電極2a及び2b間のグロー放電によって主空洞Sのレーザ媒質ガスが励起されることにより、紫外域の波長をもつレーザ光Lが発生する。発生されたレーザ光Lは、Z方向両端部に配置されたウインドウ61を透過し、部分反射鏡71と全反射鏡81との間を往復する。その往復の過程でレーザ光Lが増幅され、増幅されたレーザ光Lの一部が部分反射鏡71を透過して外部に出射する。
【0019】
ガスプロセッサ10、フィルタ11、及びポンプ12が、ガスライン13を介してベッセル1と接続されている。ポンプ12が、ガスプロセッサ10、フィルタ11、ガスライン13及びベッセル1によって構成されるレーザ媒質ガスの循環経路内でレーザ媒質ガスを循環させる。ガスプロセッサ10は、主空洞S内から取り出されたレーザ媒質ガスに含まれるガス状の不純物を捕獲する。フィルタ11は、ガスプロセッサ10を経たレーザ媒質ガスに含まれる微粒子状の不純物を捕獲する。
【0020】
これらガスプロセッサ10及びフィルタ11によってレーザ媒質ガスが浄化され、浄化されたレーザ媒質ガスが、ポンプ12及びガスライン13を経由してベッセル1のZ方向両端部に設けられたハウジング6を介して主空洞S内に戻される。ベッセル1のZ方向両端部の構造は概ね同様であるので、以下ベッセル1のZ方向一端部の構造について詳細に説明する。
【0021】
図2に、ベッセル1のZ方向一端部を拡大した断面図を示す。図2は、XZ平面に平行な断面図である。なお、図2では簡略のために、図1(b)に示した第1のミラーホルダ7の図示は省略する。ベッセル1の側壁に、貫通部1aが形成されている。貫通部1aは、主空洞S内のレーザ媒質ガスが放電励起されることにより発生するレーザ光Lの光軸と交差する位置に形成されている。
【0022】
ハウジング6は、中空の筒状をなしており、その内部空間が貫通部1aとつながるように、貫通部1aに対応した位置においてゲート弁5を介してベッセル1と連結されている。これにより、ハウジング6は、ベッセル1と共に、自己の内部空間及び貫通部1aによって構成される中間空洞Sを画定している。
【0023】
中間空洞Sは、レーザ光Lの伝搬方向に延在しており、その一端部を主空洞Sの内壁面に開口させた第1の開口部21とし、他端部を外部の空間に通じる第2の開口部22として構成されている。なお、中間空洞Sは、円柱状をなしており、第1及び第2の開口部21及び22の形状は、ともにZ方向からみて円形である。
【0024】
ウインドウ61が、中間空洞Sの第2の開口部22を気密に閉塞するように、Oリングを介してハウジング6に取り付けられている。ウインドウ61は、一方の主表面(以下、内面という。)を中間空洞Sと対面させ、他方の主表面を外部の空間と対面させた状態でハウジング6に取り付けられている。
【0025】
ガス供給口23a及び23bが、ハウジング6に設けられている。ガス供給口23a及び23bは、図1(b)のガスライン13と接続されており、図1(b)のガスプロセッサ10及びフィルタ11によって浄化されたレーザ媒質ガスを、中間空洞S内に供給する。ガス供給口23a及び23bは、レーザ光Lの伝搬方向に関してハウジング6の、ウインドウ61寄りの端部の位置から、中間空洞S内へ浄化されたレーザ媒質ガスを供給する。このため、ウインドウ61の内面を浄化されたレーザ媒質ガスの雰囲気中に晒すことができる。
【0026】
中間部材24a、24b、及び24cが、中間空洞S内に設けられている。中間部材24a〜24cの配置位置は、レーザ光Lの伝搬方向に関してガス供給口23a及び23bから第1の開口部21までの間である。具体的には、中間部材24a〜24cは、貫通部1aの内周面に設けられている。中間部材24a〜24cは、貫通部1aの内周面からレーザ光Lの光軸へ向って突出している。詳細には、中間部材24a〜24cの各々は、回転対称軸に平行な断面がハの字状をなした回転体によって構成されており、これら3つの中間部材24a〜24cが、各々の回転対称軸をレーザ光Lの光軸と一致させた状態で、Z方向に離散的に配置されている。
【0027】
中間部材24a〜24cの各々の、ウインドウ61側の面(以下、第1の面という。)241は、貫通部1aの内周面からレーザ光Lの光軸に近づくに従って、主空洞Sに近づくように傾斜している。また、中間部材24a〜24cの各々の、主空洞S側の面(以下、第2の面という。)242も、貫通部1aの内周面からレーザ光Lの光軸に近づくに従って、主空洞Sに近づくように傾斜している。
【0028】
傾斜部材25が、主空洞Sの内壁面における第1の開口部21の周囲に設けられている。傾斜部材25は、第1の開口部21の中心に近づくに従って、主空洞Sの内壁面からの高さが高くなるように傾斜した傾斜面251を有する。傾斜面251は、第1の開口部21の縁よりも第1の開口部21の中心側に突出している。傾斜部材25は、回転対称軸をレーザ光Lの光軸と一致させた状態で配置された回転体によって構成されており、傾斜面251は第1の開口部21の周囲を全周にわたって取り囲むように配置されている。
【0029】
傾斜部材25と放電電極2a(図1参照)及び2bとの間の距離は、放電電極2a及び2b間にパルス電圧を印加したときに、傾斜部材25と放電電極2a又は2bとの間にアーク放電が発生しないような値に設計されている。また、アーク放電の発生を防止する観点から、傾斜部材25の、放電電極2a及び2b側の端部は、鋭く尖った形状にするのではなく、滑らかに湾曲した形状に形成されている。また、傾斜部材25の素材としては、セラミックス等の絶縁体が選択される。
【0030】
第1及び第2の整流板26a及び26bが、主空洞S内に設けられている。第1の整流板26aは、主空洞S内におけるX方向一端部に設けられ、第2の整流板26bは、X方向他端部に設けられている。これら第1及び第2の整流板26a及び26bは、図1(a)のブロワ4によって循環されるレーザ媒質ガスが乱流を形成するのを防止する機能を発揮する。
【0031】
図3は、図2の貫通部1aを拡大した部分断面斜視図である。中間部材24a〜24cの各々は、図2のレーザ光Lの伝搬方向に関して、図2のウインドウ61側の端部(図3の左側の端部)に大開口243を有し、図2の主空洞S側の端部(図3の右側の端部)に大開口243よりも小さな小開口244を有し、大開口243から小開口244にわたって漏斗状に狭まった形状をなしている。なお、中間部材24a〜24cの各々の、図2のウインドウ61側の端部の外周縁が、貫通部1aの内周面と接している。
【0032】
大開口243の直径Dは、貫通部1aの内径と略等しい。小開口244の直径Dは、図2のレーザ光Lのビーム断面の直径(以下、ビーム径という。)と略等しい。具体的には、小開口244の直径Dは、図2のレーザ光Lのビーム径をDとしたとき、Dよりも大きく、D+10mm以下の値に選択される。なお、図2のレーザ光Lのビーム径は横70mm×縦100mm程度である。
【0033】
図4は、図2の傾斜部材25の拡大図である。図4(a)はZ方向からみた平面図であり、図4(b)はZ軸に垂直な断面図である。傾斜部材25は、厚さ方向に平行な断面が台形状の截頭錐体に、その上底面から下底面にわたる貫通孔252を形成して得られる形状をなしている。貫通孔252の、上記截頭錐体の上底面側の開口(以下、頂部開口という。)252aの大きさは、上記截頭錐体の上底面の大きさと略等しい。貫通孔252の、上記截頭錐体の下底面側の開口(以下、底部開口という。)252bの大きさは、頂部開口252aよりも大きい。そして、貫通孔252の内周面は、頂部開口252aから底部開口252bに向ってテーパ状に拡がっている。
【0034】
頂部開口252a及び底部開口252bの形状は、ともに平面視において円形である。頂部開口252aの直径Dは、図2のレーザ光Lのビーム径と略等しい。具体的には、頂部開口252aの直径Dは、図2のレーザ光Lのビーム径をDとしたとき、Dよりも大きく、D+10mm以下の値に選択される。一方、底部開口252bの直径Dは、図2の第1の開口部21の直径と略等しい。具体的には、底部開口252bの直径D及び図2の第1の開口部21の直径は、共に142mm程度である。
【0035】
なお、上記截頭錐体の側面に側面に相当する面によって、図2にも示した傾斜面251が構成されている。傾斜面251内に、上記截頭錐体の下底面に相当する裏面まで貫通するボルト孔253が、周方向に間隔をあけて複数形成されている。即ち、傾斜部材25はボルトによって、その裏面が図2の主空洞Sの内壁面と接するように取り付けられる。
【0036】
図5は、傾斜部材25の変形例を示す。図5(a)はZ方向からみた平面図であり、図5(b)はZ軸に垂直な断面図である。この例では、頂部開口252a及び底部開口252bの形状を長方形状としている。この傾斜部材25は、例えば頂部開口252a及び底部開口252bの形状を表す長方形の長辺が、図2のX軸と平行になる向きに取り付けられる。なお、頂部開口252aの短辺の長さは、図2のレーザ光Lのビーム径をDとしたとき、Dよりも大きく、D+10mm以下の値に選択される。また、頂部開口252aの長辺の長さは、Dよりも大きく、D+10mm以下の値に選択される。
【0037】
図2に戻って説明を続ける。上述したように、主空洞S内では、X方向に流れるガス流Fが形成される。また、放電電極2a(図1(a)参照)及び2b間の放電によって、中間空洞Sに向う衝撃波が生成される。主空洞S内には不純物が存在するため、ガス流Fや衝撃波がその不純物を運ぶ。そこで、不純物がウインドウ61の内面に付着するのを防止するためには、ガス流Fや衝撃波がウインドウ61の内面に到達するのを防止することが必要である。
【0038】
本実施例によれば、ガス供給口23a及び23bから中間空洞S内に供給されたレーザ媒質ガスが、中間空洞Sから主空洞Sに流れ出る。これにより、主空洞S内で生じた衝撃波やガス流F等の、中間空洞Sへの進入が妨げられる。このため、ガス流Fや衝撃波によって運ばれる不純物が、ウインドウ61の内面に付着することを防止できる。
【0039】
なお、中間空洞Sから主空洞Sへのレーザ媒質ガスの流出速度が速い程、ガス流Fや衝撃波等が中間空洞Sに進入する確率を低減できる。但し、図1(b)のポンプ12によるレーザ媒質ガスの送出圧力及び送出量には限界があるため、図1(b)のポンプ12の送出圧力及び送出量のみによって、中間空洞Sから主空洞Sへのレーザ媒質ガスの流出速度を速めることには限界がある。
【0040】
この点、傾斜部材25の傾斜面251を第1の開口部21の縁よりも第1の開口部21の中心側に突出させ、第1の開口部21よりも図4の頂部開口252aを小さくしたので、傾斜部材25を設けない場合に比べると、中間空洞Sから主空洞Sへのレーザ媒質ガスの流出速度を速めることができる。このため、図1(b)のポンプ12を大型化させることなく、ガス流Fや衝撃波等の中間空洞S内への進入を抑制できる。
【0041】
また、第1の整流板26aから傾斜部材25に到達したガス流Fは、まず傾斜面251に沿って傾斜面251を登るように流れる。このため、ガス流Fの進行方向が、ウインドウ61から遠ざかる方向に変更される。これにより、ガス流Fの中間空洞S内への進入が防止される。なお、ウインドウ61から遠ざかる方向に進行方向を変更されたガス流Fは、第2の整流板26bに向い、傾斜面251に沿って傾斜面251を下るように流れる。これにより、進行方向を変更されたガス流Fが乱流を形成することが防止される。
【0042】
また、Z方向に関して主空洞Sからウインドウ61へ向う仮想的なガスの流れ(以下、仮想ガス流という。)を想定したとき、中間部材24a〜24cの第2の面242が、その仮想ガス流に対して抵抗を発揮する。第2の面242は、貫通部1aの内周面からレーザ光Lの光軸に近づくに従って主空洞Sに近づくように傾斜しているため、第2の面242が仮想ガス流に対して発揮する抵抗は、レーザ光Lの光軸に垂直な平板に図3の小開口244と同じ大きさの開口を形成した孔あき円板が仮想ガス流に対して発揮する抵抗よりも大きい。また、複数の中間部材24a〜24cをZ方向に関して離散的に配置したので、その分だけ仮想ガス流に対して大きな抵抗を発揮できる。このため、仮に中間空洞S内にガス流Fや衝撃波等が進入したとしても、それらガス流Fや衝撃波等のウインドウ61内面への到達が抑止される。
【0043】
一方、中間部材24a〜24cの第1の面241は、貫通部1aの内周面からレーザ光Lの光軸に近づくに従って主空洞Sに近づくように傾斜しているので、ガス供給口24a及び24bから中間空洞S内に供給され、主空洞Sへ向うレーザ媒質ガスの流れ(以下、浄化ガス流という。)に対して発揮される抵抗を小さく抑えることができる。具体的には、第1の面241が浄化ガス流に対して発揮する抵抗は、上記孔あき円板が浄化ガス流に対して発揮する提供よりも小さい。このように中間部材25a〜25cは、図1(b)のポンプ12の送出圧力の損失を抑えつつ、ガス流Fや衝撃波等のウインドウ61内面への到達を防止するという機能を発揮している。
【0044】
以上説明したように、本実施例によれば、ガス流Fや衝撃波等の中間空洞S内への進入及びウインドウ61内面への到達が防止されるので、ウインドウ61の汚染を防止できる。このため、ウインドウ61の光透過率の低下に起因したレーザ光Lの出力の低下や、ウインドウ61に付着した不純物がレーザ光Lを吸収することに起因したウインドウ61の破損等を防止できる。
【0045】
図6に、図2の傾斜部材25の変形例を示す。この例では、傾斜部材を、第1の開口部21を挟んでX方向に対向配置される第1の傾斜部材31と、第2の傾斜部材32とに分けて構成している。第1及び第2の傾斜部材31及び32は、それぞれ図2の主空洞Sの内壁面における第1の開口部21の周囲に設けられ、第1の開口部21の中心に近づくに従って、主空洞Sの内壁面からの高さが高くなるように傾斜した第1及び第2の傾斜面311及び321を有する。
【0046】
第1の傾斜面311においてガス流Fの進行方向が、図2のウインドウ61から遠ざかるように変更される。これにより、ガス流Fの、図2の中間空洞S内への進入が防止される。第1の傾斜面311において進行方向を変更されたガス流Fは、第2傾斜面321に沿って図2の第2の整流板26bに向って流れる。これにより、進行方向を変更されたガス流Fが乱流を形成することが防止される。
【0047】
なお、第1の傾斜面311の頂上部の、図2の主空洞Sの内壁面からの高さhと、第2の傾斜面321の頂上部の、図2の主空洞Sの内壁面からの高さhとを異ならせてもよい。例えば、h>hとなるような構成としてもよい。また、第2の傾斜部材32を省略した構成としても、ガス流Fが図2の中間空洞S内へ進入することを防止する効果は得られると考えられる。
【0048】
図7に、他の実施例によるエキシマレーザ発振装置の断面図を示す。この例では、中間空洞Sを、内径がレーザ光Lのビーム径と略一致する値まで絞られた小径部S2aと、小径部S2aよりも内径の大きな大径部S2bとによって構成している。大径部S2bは、ハウジング6内におけるウインドウ61側の端部に画定されている。小径部S2aは、大径部S2bの第1の開口部21側の端部から第1の開口部21にわたって画定されている。なお、小径部S2aの内径を、レーザ光Lのビーム径と略一致する値まで絞ったため、図2の中間部材24a〜24cを省略するとともに、傾斜部材31の貫通孔311の内面は、テーパ状ではなくストレート状に形成している。
【0049】
この変形例では、ガス供給口23a及び23bから大径部S2bにレーザ媒質ガスが供給される。相対的に内径の大きな大径部S2bにレーザ媒質ガスを供給するようにしたので、小径部S2aの内径をレーザ光Lのビーム径と略一致するまで絞ったにも拘わらず、図1(b)のポンプ12にかかる負荷の増大を緩和できる。大径部S2bに供給されたレーザ媒質ガスは、小径部S2aを通って主空洞Sに流れ出る。大径部S2bと小径部S2aとの境の段差部31は滑らかに形成されているため、主空洞Sへ向う浄化ガス流の流速の低下が防止される。小径部S2aの内径をレーザ光Lのビーム径と略一致させたので、中間空洞Sから主空洞Sへ流れ出る浄化ガス流の流出速度を速めることができる。このため、主空洞S内のガス流Fや衝撃波等が中間空洞S内に進入することが防止される。その結果、ウインドウ61の汚染が防止される。
【0050】
図8に、さらに他の実施例によるエキシマレーザ発振装置の断面図を示す。この例では、中間空洞Sの、レーザ光Lの光伝搬方向に直行する断面が、第2の開口部22から第1の開口部21に近づくに従って、連続的に小さくなるような構成としている。第1の開口部21の直径は、レーザ光Lのビーム径と略一致させている。これにより、中間空洞Sから主空洞Sへの浄化ガス流の流出速度を速めることができるので、ガス流Fや衝撃波の中間空洞S内への進入を防止できる。なお、第2の開口部22から、傾斜部材31の貫通孔311の、主空洞S側の開口にわたって連続的又は段階的なテーパ面を形成してもよい。
【0051】
以上、実施例について説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、図2の傾斜部材25及び中間部材24a〜24cの形状は、回転体状でなくてもよい。中間部材24a〜24cと等価な他の中間部材をハウジング6内に設けてもよい。中間部材24a〜24cの各々の、第1の面241と第2の面242とは平行でなくてもよい。第1の面241及び第2の面242は中間部材間で平行でなくてもよい。内部ミラー型ガスレーザ発振装置について説明したが、ウインドウに代えて部分反射鏡や全反射鏡を備えた内部ミラー型ガスレーザ発振装置にも適用できる。エキシマレーザ発振装置について説明したが、COレーザ発振装置等の他のガスレーザ発振装置にも適用できる。この他、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】エキシマレーザ発振装置を示す線図であって、(a)はレーザ光の光軸に垂直な断面概略図、(b)は側面概略図である。
【図2】ベッセルのZ方向一端部を拡大して示した断面図である。
【図3】中間部材を示す部分断面斜視図である。
【図4】傾斜部材を示す線図であって、(a)は平面図、(b)は断面図である。
【図5】他の傾斜部材を示す線図であって、(a)は平面図、(b)は断面図である。
【図6】さらに他の傾斜部材を示す斜視概略図である。
【図7】他の実施例によるエキシマレーザ発振装置の断面図である。
【図8】さらに他の実施例によるエキシマレーザ発振装置の断面図である。
【符号の説明】
【0053】
1…ベッセル(容器本体)、2a,2b…放電電極(励起器)、3…ガス流路、4…ブロワ(ガス流形成手段)、5…ゲート弁、6…ハウジング(筒状体)、7…第1のミラーホルダ、8…第2のミラーホルダ、10…ガスプロセッサ、11…フィルタ、12…ポンプ、13…ガスライン、21…第1の開口部、22…第2の開口部、23a,23b…ガス供給口、24a,24b,24c…中間部材、25…傾斜部材、251…傾斜面、26a,26b…整流板、61…ウインドウ(板状体)、71…部分反射鏡、81…全反射鏡、S…主空洞、S…中間空洞、F…ガス流、L…レーザ光。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ媒質ガス及び該レーザ媒質ガスを励起する励起器が収容される主空洞、並びに前記主空洞内のレーザ媒質ガスが前記励起器によって励起されることにより発生するレーザ光が通過する中間空洞であって、該レーザ光の伝搬方向に関して、一端部を前記主空洞の内壁面に開口させた第1の開口部とし、他端部を外部の空間に通じる第2の開口部として構成された中間空洞を画定する容器構造体と、
前記容器構造体によって保持され、前記第2の開口部を閉塞する板状体と、
前記主空洞の内壁面における前記第1の開口部の周囲に設けられ、前記第1の開口部の中心に近づくに従って、前記主空洞の内壁面からの高さが高くなるように傾斜した傾斜面を有する傾斜部材と
を備えたガスレーザ発振装置。
【請求項2】
前記傾斜部材の傾斜面が、前記第1の開口部の周囲を全周にわたって取り囲むように配置されている請求項1に記載のガスレーザ発振装置。
【請求項3】
前記傾斜面が、前記第1の開口部の縁よりも該第1の開口部の中心側に突出している請求項1又は2に記載のガスレーザ発振装置。
【請求項4】
前記傾斜部材が、絶縁体によって構成されている請求項1〜3のいずれかに記載のガスレーザ発振装置。
【請求項5】
さらに、前記主空洞内に、前記レーザ光の伝搬方向と交差する方向に流れる前記レーザ媒質ガスのガス流を形成するガス流形成手段を備えた請求項1〜4のいずれかに記載のガスレーザ発振装置。
【請求項6】
さらに、前記中間洞内にガスを供給するガス供給口を備えた請求項1〜5のいずれかに記載のガスレーザ発振装置。
【請求項7】
さらに、前記中間空洞の内壁面から前記レーザ光の光軸へ向って突出した中間部材であって、前記板状体側の面が、前記中間空洞の内壁面から前記レーザ光の光軸に近づくに従って、前記主空洞に近づくように傾斜している中間部材を備えた請求項1〜5のいずれかに記載のガスレーザ発振装置。
【請求項8】
前記中間部材の前記主空洞側の面が、前記中間空洞の内壁面から前記レーザ光の光軸に近づくに従って、前記主空洞に近づくように傾斜している請求項7に記載のガスレーザ発振装置。
【請求項9】
前記中間部材が、前記レーザ光の伝搬方向に関して前記板状体側の端部に大開口を有し、前記主空洞側の端部に該大開口よりも小さな小開口を有し、前記大開口から前記小開口にわたって漏斗状に狭まった形状をなしている請求項7又は8に記載のガスレーザ発振装置。
【請求項10】
前記中間部材と同一形状の少なくとも1個の他の中間部材が、前記中間空洞内に、前記レーザ光の伝搬方向に関して相互に異なる位置に設けられている請求項7〜9のいずれかに記載のガスレーザ発振装置。
【請求項11】
さらに、前記レーザ光の伝搬方向に関して、前記板状体と前記中間部材との間の位置から、前記中間空洞内にガスを供給するガス供給口を備えた請求項7〜10のいずれかに記載のガスレーザ発振装置。
【請求項12】
前記第1の開口の大きさが、前記第2の開口の大きさよりも小さい請求項1〜11のいずれかに記載のガスレーザ発振装置。
【請求項13】
前記中間空洞の、前記レーザ光の光伝搬方向に直行する断面が、前記第2の開口部から前記第1の開口部に近づくに従って、段階的又は連続的に小さくなっている請求項12に記載のガスレーザ発振装置。
【請求項14】
前記容器構造体が、内部に前記主空洞を画定し、該主空洞と外部の空間とを連通させる貫通孔が形成された容器本体と、前記貫通孔に対応する位置において前記容器本体と連結され、該容器本体と共に前記中間空洞を画定する筒状体とを含んで構成されている請求項1〜13のいずれかに記載のガスレーザ発振装置。
【請求項15】
レーザ媒質ガス及び該レーザ媒質ガスを励起する励起器が収容される主空洞、並びに前記主空洞内のレーザ媒質ガスが前記励起器によって励起されることにより発生するレーザ光が通過する中間空洞であって、該レーザ光の伝搬方向に関して、一端部を前記主空洞の内壁面に開口させた第1の開口部とし、他端部を外部の空間に通じる第2の開口部として構成された中間空洞を画定した容器構造体と、
前記容器構造体によって保持され、前記第2の開口部を閉塞する板状体と、
前記中間空洞の内壁面から前記レーザ光の光軸へ向って突出した中間部材であって、前記板状体側の面が、前記中間空洞の内壁面から前記レーザ光の光軸に近づくに従って、前記主空洞に近づくように傾斜している中間部材と
を備えたガスレーザ発振装置。
【請求項16】
レーザ媒質ガス及び該レーザ媒質ガスを励起する励起器が収容される主空洞、並びに前記主空洞内のレーザ媒質ガスが前記励起器によって励起されることにより発生するレーザ光が通過する中間空洞であって、該レーザ光の伝搬方向に関して、一端部を前記主空洞の内壁面に開口させた第1の開口部とし、他端部を外部の空間に通じる第2の開口部として構成され、前記第1の開口の大きさが前記第2の開口の大きさよりも小さい中間空洞を画定した容器構造体と、
前記容器構造体によって保持され、前記第2の開口部を閉塞する板状体と
を備えたガスレーザ発振装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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