説明

ガスレーザ発振装置

【課題】本発明は、循環ポンプを使用せず、厚板切断に優れ、メンテナンス性にも優れたガスレーザ発振装置を提供することを目的とする。
【解決手段】内部にレーザガスを配置した少なくとも2つの放電管25,26と、放電管25,26に設けた電極21〜24と、電極21〜24に放電の電力を供給する高圧電源31,32を備え、放電管25,26をレーザ光の進行方向に並列に並べ、放電管25,26の間にレーザガスを通す流路として平行平板41を設け、平行平板41の内部に冷媒を配置するとともに高圧電源31,32は放電管25,26の電極21〜24を交互に放電する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部にレーザガスを配置した放電管を備えたガスレーザ発振装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般にガスレーザ発振器を用いた板金加工装置は薄板から厚板、または板材の種類、軟鋼、アルミニウム、ステンレス等、異なるものを無段取りで切断、溶接できることが望まれている。
【0003】
図4に従来のガスレーザ発振装置の概略構成の一例として軸流型ガスレーザ装置の例を示す。
【0004】
以下、図4を参照しながら従来のガスレーザ発振装置を説明する。
【0005】
図4において、従来のガスレーザ発振装置は、ガラスなどの誘電体よりなる放電管132,143を備え、それぞれ放電管131,141の周辺には電極132,133,142,143を配置して、これらの電極132、133、142,143には数10kVの電圧を印加する高圧電源135,145を接続している。
【0006】
このように電極132,133、142,143に数10kVの高電圧を印加すると図中に斜線で示すように電極132,133,142,143間に挟まれた放電空間134,144が生成される。
【0007】
なお、本図において放電空間134,144は放電管131,141と区別するために斜線にて表わしている。このように通常は電極にはさまれた放電管が複数本あり、放電管131,141は一点鎖線で表わしたレーザ光の光軸191に沿って配置している。
【0008】
また、放電管131,141の両端、すなわち放電空間全体の両端には、全反射する終段鏡105と部分反射する出力鏡106を光軸(一点鎖線で表わしている)191上に配置して光共振器を形成している。
【0009】
なお、上述したように電極132,133,142,143には数10kVの高電圧が印加されるので、終段鏡105と出力鏡106と電極132,133,142,143との間にガラスなどの誘電体からなる無放電管151,161を設けて絶縁を行っている。
【0010】
また、図中の矢印はレーザガスの流れる方向を示していて、レーザガスは、放電管131,141にレーザガスを分配して送り込む給気配管ブロック111,112を通って放電管131,141内部に供給され、放電管131,141から流れ出るレーザガスを集める排気配管ブロック113から排出される。
【0011】
この給気配管ブロック111,112、排気配管ブロック113には10〜30kPa程度の圧力でレーザガスを冷却循環させる循環ポンプ162と、放電により温度上昇したレーザガスを冷却する熱交換器173と、循環ポンプ162の動作により圧縮されて温度上昇したレーザガスを冷却する熱交換器171,172を配置したレーザガス循環路が設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平2−267982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記のような従来のガスレーザ発振装置は、放電管部のレーザガスを冷却させるために、レーザガスを高速で循環させる循環ポンプ162と熱交換器171,172,173が必要となる。この循環ポンプ162は回転機器であり、メンテナンス時に定期的な交換が発生する。そして循環ポンプ162は高額な場合が多く、ユーザにとって負担になっていた。
【0014】
また、循環ポンプを使用しない、拡散冷却方式のガスレーザ発振装置としてスラブレーザがあるものの、その構造上、不安定型発振器になるため、低次のビームモードしか得られず、厚板の切断性能に難点があった。
【0015】
本発明は、上記のような従来の課題に鑑み、循環ポンプを使用せず、厚板切断に優れ、メンテナンス性にも優れたガスレーザ発振装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために本発明は、内部にレーザガスを配置した少なくとも2つの放電管と、前記放電管に設けた電極と、前記電極に放電の電力を供給する高圧電源を備え、前記放電管をレーザ光の進行方向に並列に並べ、前記放電管の間に前記レーザガスを通す流路を設け、前記流路に冷却部を配置するとともに前記高圧電源は前記放電管の電極を交互に放電するものである。
【0017】
この構成により、片側の放電管で放電を行うと、その熱膨張のため放電を行わない放電管方向にレーザガスが流路を通って移動する。その際、レーザガスは冷却部で冷却される。そして放電管の放電を交互に行うことにより、レーザガスが流路を交互に行き来する際に冷却されるので、従来のような循環ポンプを必要とせずにレーザ発振を続けることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によれば、循環ポンプを用いることなくレーザガスの移動を行う際に冷却することができる。また、放電空間を広くとれることから、安定型共振器を構成することが可能となり、低次から高次のビームモードを選択することができる。これにより、循環ポンプを使用しないことで、メンテナンスコストを低減し、薄板から厚板までの切断性能を確保できるレーザ発振装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態1におけるガスレーザ発振装置の概略構成図
【図2】図1のA−A矢視方向の要部断面図
【図3】本発明の実施の形態1におけるガスレーザ発振装置の放電のタイミングの相関を説明する説明図
【図4】従来のガスレーザ発振装置の概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1におけるガスレーザ発振装置の概略構成を示す図で、図2は図1のA−A矢視方向の要部断面図である。
【0021】
図に示すガスレーザ発振装置は、セラミックなどの誘電体よりなる放電管25,26を備え、その放電管25,26の周辺には電極21〜24を配置して、これらの電極21〜24には電圧を印加する高圧電源31,32を接続し、この高圧電源31,32の放電制御を制御装置33で行っている。
【0022】
このように電極21〜24に数10kVの高電圧を印加すると図中の波線部27のように電極間に挟まれた放電空間を生成できる。
【0023】
また、電極にはさまれた放電管を2本一組として持ち、放電管25,26は一点鎖線で表わしたレーザ光の光軸17(一点鎖線で表わしている)に沿って、すなわちレーザ光の進行方向に並列に並べ配置している。
【0024】
図において放電空間27は放電管25と区別するために斜線にて表わしている。
【0025】
また、放電管25,26は、内部のレーザガスが通るように流路として、金属等の熱伝導性の良い部材からなり、レーザガスとしてCOを用いる場合には間の距離を2mm以下とした平行平板41を介して接続しており、放電管25,26の両端はウィンドウ11〜14が設置され、放電管25,26と平行平板41内部は密閉空間とし内部にレーザガスを充填している。
【0026】
図中の矢印6はレーザガスの流れる方向を示している。
【0027】
この平行平板41は内部に冷媒を通す冷媒通路を設けており、この冷媒はクーラー42で順次冷却しながら循環するように構成している。
【0028】
そして、ガスレーザ発振装置の光学系としては、全反射する終段鏡3と部分反射する出力鏡2を光軸17上に配置された放電空間全体の両端に配置し、また、全反射鏡4,5でレーザ光を折り返すことで光共振器を形成している。
【0029】
以上が本実施の形態のガスレーザ発振装置の構成であり、次にその動作について説明する。
【0030】
放電管25内のレーザガスは電極21,22から放電エネルギーを得て励起され放電空間27に放電が発生する。放電空間27内のレーザガスは、放電エネルギーを受けガス温度が上昇すると共に熱膨張し、放電を行っていない放電管26に比べて放電管25内の圧力が高まり、放電管25のレーザガスが放電管26の方向に平行平板41を通って移動する。この時、平行平板41は冷媒により冷却されているのでレーザガスが冷却され、冷却されたレーザガスは片方の放電管26に流れ込む。
【0031】
次に図3に示すように予め放電管のガス温度が温度分布を崩さないように設定した時間、より好ましくは放電周期を3msec以下とするように放電管25の放電を消した後、放電管26内のレーザガスに電極23,24間で放電を行う。
【0032】
放電管26側が放電することで放電管内のレーザガスが放電エネルギーを受けガス温度が上昇すると共に熱膨張し、上述したようにレーザガスが、今度は矢印6とは反対方向に流れ、平行平板41を通過する時に冷却され、冷却されたレーザガスは放電管25に導入される。
【0033】
この片側のみの放電を繰り返すことにより、片側の放電管が放電している状態とすることができる。
【0034】
これら励起されたレーザガスは部分透過鏡2および全反射鏡3,4,5で形成される光共振器で共振状態となり、部分透過鏡2からレーザ光1が出力される。このレーザ光1は図3に示す様にいずれかの放電管が放電していることで、連続光(CW光)を生成することが可能であり、また同時に全ての放電を消灯することによりパルス光を生成することも可能である。
【0035】
また構成によっては部分透過鏡2、全反射鏡3,4,5を大気中に配置することも可能なため、メンテナンス時に行うミラークリーニングはミラーの着脱を伴わずに行うことができ、クリーニング後のミラー調整が不要となりメンテナンス時間を大幅に短縮することができる。
【0036】
なお、本実施の形態では冷媒の冷却と循環にクーラー42を用いたが、平行平板41の寸法や材質によればクーラー42を削減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明のガスレーザ発振装置は、循環ポンプを使用せず、厚板切断に優れ、メンテナンス性にも優れたガスレーザ発振装置として有用である。
【符号の説明】
【0038】
1 レーザ光
2 部分透過鏡
3,4,5 全反射鏡
11,12,13,14 ウィンドウ
21,22,23,24 電極
25,26 放電管
27 放電空間
31,32 高圧電源
33 制御装置
41 平行平板
42 クーラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にレーザガスを配置した少なくとも2つの放電管と、前記放電管に設けた電極と、前記電極に放電の電力を供給する高圧電源を備え、前記放電管をレーザ光の進行方向に並列に並べ、前記放電管の間に前記レーザガスを通す流路を設け、前記流路に冷却部を配置するとともに前記高圧電源は前記放電管の電極を交互に放電するガスレーザ発振装置。
【請求項2】
前記放電管の放電周期を3msec以下とする請求項1記載のガスレーザ発振装置。
【請求項3】
前記流路として平行平板で構成し、前記平行平板間の距離を2mm以下とした請求項1または2記載のガスレーザ発振装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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