説明

ガス冷却装置及びガス冷却方法

【課題】廃棄物を燃焼した排ガスを急速に冷却することができ、ダイオキシン等の有害ガスの発生を発生させることのないガス冷却装置及びガス冷却方法を提供する。
【解決手段】ガス吸入口とガス排出口とを有する筒状の冷却室本体に、ガス吸入口から吸入されるガスを冷却室本体の内周方向に分散させるガス分散手段と、冷却室本体の内周に沿って螺旋状に設けられるフィンと、冷却室本体の外周に沿って設けられる冷却流体用流路によって構成される第1冷却手段と、冷却室本体外部から内部に導入され、液体を噴霧するための微細孔を有する液体導入管によって構成される第2冷却手段とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスを冷却処理する装置及び方法に関し、特に、廃棄物を焼却処理する際に排出される排ガスを冷却処理するガス冷却装置及びガス冷却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、廃棄物を燃焼した排ガスを外部に排出する際に冷却することが行われている。(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2002−54806号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、排ガスの冷却速度が遅い場合には、ダイオキシン等の有害ガスが発生するといった問題があり、排ガスの冷却効率の向上が強く望まれている。
【0004】
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、廃棄物を燃焼した排ガスを急速に冷却することができ、ダイオキシン等の有害ガスの発生を発生させることのないガス冷却装置及びガス冷却方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために請求項1記載の発明は、軸心方向に距離を存してガス吸入口とガス排出口とを有する有蓋有底の筒状の冷却室本体を備え、ガス吸入口から冷却室本体内に吸入されたガスを冷却してガス排出口から排出するガス冷却装置であって、ガス吸入口から吸入されるガスを冷却室本体の内周方向に分散させるガス分散手段と、冷却室本体の内周に沿って螺旋状に設けられるフィンと、冷却室本体の外周に沿って設けられる冷却流体用流路によって構成される第1冷却手段と、冷却室本体外部から内部に導入され、液体を噴霧または蒸気を噴出するための微細孔を有する液体導入管によって構成される第2冷却手段とを備えたことを特徴としている。
【0006】
また、請求項2記載の発明は、廃棄物を焼却処理した際に発生する排ガスを冷却するガス冷却方法であって、軸心方向に距離を存してガス吸入口とガス排出口とを有する有蓋有底の筒状の冷却室に、ガス吸入口からガスを吸入し、その吸入したガスを冷却室の内周方向に分散させ、その分散したガスを、冷却室の内周に沿って螺旋状に設けられたフィンによって、ガス排出口の方向に向けて螺旋状に流動させ、その流動しているガスを、冷却室外周に配した冷媒によって間接的に冷却すると共に、冷却室外部から内部に導入されて液体が充填されている液体導入管によって間接的に、且つ、その液体導入管が有する微細孔から液体を噴霧または蒸気を噴出して直接的に冷却することを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、冷却室本体内に吸入されたガスを、冷却室本体外部の第1冷却手段と、冷却室本体内部の第2冷却手段との2つの冷却手段によって、直接的に且つ間接的に冷却するので、ガスを効率良く急速冷却することができる。また、ガス吸入口から吸入されるガスを冷却室本体の内周方向に分散させ、冷却室の内周に沿って螺旋状に設けられたフィンによって螺旋状に流動させるので、ガスと冷却室本体内周との接触時間が長くなり、第1冷却手段による冷却を効率よく行うことができる。さらに、第2冷却手段によって噴霧される液体または噴出される蒸気(例えば、霧状の水や水蒸気)によって、冷却室本体内(特にフィン表面)に溜まる排ガス中の残留物を洗浄することができるので、メンテナンスが簡単である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0009】
図1を参照して、1は、廃棄物を焼却処理した際に排出される排ガスを冷却処理するガス冷却装置である。排ガスには、粉塵やガス(NOX、SOX、HCl、ダイオキシン等)が含まれており、この排ガスを約1000℃から約150℃まで急冷するためのものである。
【0010】
このガス冷却装置1は、軸心方向に距離を存してガス吸入口2aとガス排出口2bとを有する円筒状の冷却室本体2を備えている。ガス給入口2aは冷却室本体2の傘状蓋部2cの頂部に開口しており、このガス給入口2aに、前工程である廃棄物の焼却処理を行う焼却装置からの排気ダクト(図示せず)が接続されている。ガス排出口2bは、冷却室本体2の側周部2dの下部に開口している。
【0011】
冷却室本体2内の空間(以下、冷却室Cという。)の、ガス給入口2aに対向する位置には、傘状蓋部2cの内周面及び側周部2dの内周面から所定の間隔を存して、傘状部材3(ガス分散手段)が上に凸の状態で配置されている。この傘状部材3は、その縁部付近が線状部材3aによって傘状蓋部2cの内周面と接続されて固定されている。
【0012】
冷却室本体2の側周部2dの内周面には、その内周面の上端から前記ガス排出口2bの上側まで、大小2枚のフィン4a、4bが2重螺旋状に形成されている。大フィン4aと小フィン4bとは、互いに一定間隔おきに螺旋を形成しており、どちらのフィン4a、4bも、内方に向かって下方に傾斜している。
【0013】
冷却室本体2の底部2eの内周面はすり鉢状に形成されており、その中央には、下に突出する円筒状の突出部2fが形成されている。この突出部2fの内部空間の下面は、冷却室本体2の底部2eと同様にすり鉢状に形成されており、その下端には後述する凝縮水を排出するための凝縮水排出口2gが設けられている。
【0014】
前記冷却室本体2の傘状蓋部2c、側周部2d、底部2e及び突出部2fは、全て二重構造(冷却流体用流路)となっており、その内部に、導入口2hから冷媒たる水を導入して流通させ、排出口2iから排出するようになっている。これにより、冷却室Cの内周面及びフィン4a、4bが冷却され、間接的に冷却室C自体も冷却される。
【0015】
冷却室本体2内部には、大小2つの螺旋状の液体導入管5a、5bが配設されている。これら液体導入管5a、5bの螺旋は、前記フィン4a、4bと同方向に螺旋が回旋しており、大液体導入管5aの内部に小液体導入管5bが装入されると共に、両導入管5a、5bの軸心が冷却室本体2の軸心と一致するように配置されている。この液体導入管5a、5bは、板状部材5cによって傘状蓋部2cの内周面と接続されて固定されている大小2つの筒状部材5d、5eに巻回されている。これら筒状部材5d、5eはパンチングメタルで形成されている。両導入管5a、5bの上端には、冷却室本体2の傘状蓋部2cを貫通する液体送入管5a1、5b1が接続されていると共に、両導入管5a、5bの下端には、冷却室本体2の底部2e及び突出部2fを貫通する液体送出管5a2、5b2が接続されている。これにより、液体送入管5a1、5b1を介して冷却室本体2外部から液体導入管5a、5bに対して水が送入され、冷却室Cの冷却に使用された水は液体送出管5a2、5b2を介して冷却室本体2外に送出される。
【0016】
さらに、冷却室本体2内部には、その軸心方向に延びる5本の冷却管6a〜6eが配設されている。この冷却管6a〜6eには、液体を噴霧するための微細孔(図示せず)が多数形成されている。冷却管6aは冷却室本体2の軸心上に配置され、冷却管6b、6cは大液体導入管5aと小液体導入管5bとの間に配置され、冷却管6d、6eはフィン4aを貫通して配置されている。冷却管6a〜6eには、冷却室本体2の傘状蓋部2cを貫通する冷却管用送入管61と、その冷却管用送入管61に接続され、水平方向に延びる分岐管62とを介して冷却用の水が送られる。これにより、冷却管用送入管61及び分岐管62を介して冷却室本体2外部から冷却管6a〜6eに対して水が送入され、その微細孔から噴霧されて冷却室Cを直接的に冷却した水は、後述する凝縮水排出口2gから排出される。
【0017】
冷却室本体2内の下部であって、前記ガス排出口2bの側方には、凝縮水分離器7が配設されている。この凝縮水分離器7は、図2に示すように、円筒状の内壁部7aと、その内壁部7aよりも径が大きい円筒状に形成され一部開口している外壁部7bと、これら内壁部7a及び外壁部7bの上端を接続する屋根部7cと、内壁部7a及び外壁部7bの下端を接続する傾斜板群部7dと、前記外壁部7bの開口と前記ガス排出口2bとを接続する排出ダクト7eとを備えている。傾斜板群部7dは、円周方向に沿って同一方向に傾斜している複数の傾斜板によって構成されている。これにより、上方から流動してきた排ガスは、凝縮水分離器7の下方から分離器7内部に進入し、その流れは傾斜板群部7dによって円周方向のうちの一方向に方向付けられると共に、水との分離が行われる。また、前記冷却管6a〜6eから噴霧された水は、屋根部7cを伝って、または直接下方に落下する。下方に落下した水は、冷却室本体2の底部2eを伝って、または直接突出部2fの内部空間に集められ、凝縮水排出口2gから排出される。
【0018】
次に、上記説明したガス冷却装置1の作用について説明する。
【0019】
このガス冷却装置1で、廃棄物を焼却処理した際に排出される排ガスを冷却処理する場合、まず、排ガスをガス給入口2aから冷却室Cに吸入する。吸入された排ガスは、傘状部材3によって、冷却室2の内周方向に分散される。
【0020】
分散された排ガスは、フィン4a、4bにガイドされて冷却されながら、冷却室Cの内周に沿って螺旋状に流動しつつ、下方に導かれる。
【0021】
このとき、冷却室本体2の傘状蓋部2c、側周部2d、底部2e及び突出部2f内部に流通している冷媒により、螺旋状に流動している排ガスが間接的に冷却される。また同時に、液体導入管5a、5bにより間接冷却すると共に、冷却管6a〜6eから螺旋状に流動している排ガスに対して水を噴霧して排ガスを直接的に冷却する。さらに、フィン4aを貫通して配設されている冷却管6d、6eから噴霧される液体によって、フィン4a、4bに溜まる排ガス中の残留物等が洗浄される。
【0022】
このようにして冷却された排ガスは、冷却室本体2の底部2eによってその流動方向を下方向から上方向へと変えられ、凝縮水分離器7の下方から分離器7内部に進入する。そして、傾斜板群部7dによって円周方向のうちの一方向に方向付けられた排ガスは、排出ダクト7eから冷却室本体2外へと排出される。
【0023】
また、冷却管6a〜6eから噴霧され、排ガスの冷却に用いられた水及び燃焼により生成した水は、凝縮水分離器7によって排ガスと分離されて下方に落下し、突出部2fの内部空間に集められて凝縮水排出口2gから排出される。
【0024】
なお、上記実施形態では、液体導入管5a、5bは専ら間接的に排ガス及び冷却室Cを冷却するために用いているが、これら液体導入管5a、5bにも冷却管6a〜6eと同様の微細孔を設け、液体を噴霧するようにしても良い。これによれば、排ガス量の多寡変動に応じて冷却能力を変更することが可能となり、便利である。
【0025】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々変更することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態に係るガス冷却装置を示す断面図
【図2】凝縮水分離器を示す斜視図
【符号の説明】
【0027】
2 冷却室本体
3 傘状部材(ガス分散手段)
4a、4b フィン
5a、5b 液体導入管
6a〜6e 冷却管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸心方向に距離を存してガス吸入口とガス排出口とを有する有蓋有底の筒状の冷却室本体を備え、ガス吸入口から冷却室本体内に吸入されたガスを冷却してガス排出口から排出するガス冷却装置であって、
ガス吸入口から吸入されるガスを冷却室本体の内周方向に分散させるガス分散手段と、
冷却室本体の内周に沿って螺旋状に設けられ、内方に向かって下方に傾斜するフィンと、
冷却室本体の外周に沿って設けられる冷却流体用流路によって構成される第1冷却手段と、
冷却室本体外部から内部に導入され、液体を噴霧または蒸気を噴出するための微細孔を有する液体導入管によって構成される第2冷却手段とを備えたことを特徴とするガス冷却装置。
【請求項2】
廃棄物を焼却処理した際に発生する排ガスを冷却するガス冷却方法であって、
軸心方向に距離を存してガス吸入口とガス排出口とを有する有蓋有底の筒状の冷却室に、ガス吸入口からガスを吸入し、
その吸入したガスを冷却室の内周方向に分散させ、
その分散したガスを、冷却室の内周に沿って螺旋状に設けられた内方に向かって下方に傾斜するフィンによって、ガス排出口の方向に向けて螺旋状に流動させ、
その流動しているガスを、冷却室外周に配した冷媒によって間接的に冷却すると共に、冷却室外部から内部に導入されて液体が充填されている液体導入管によって間接的に、且つ、その液体導入管が有する微細孔から液体を噴霧または蒸気を噴出して直接的に冷却することを特徴とするガス冷却方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−266580(P2006−266580A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−84623(P2005−84623)
【出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】