ガス分解複合体およびその製造方法
【課題】 小型で高い分解効率および低圧力損失を備え、衝撃・振動に対する耐久性が高い、ガス分解複合体、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 ガス分解複合体10は、ガス分解複合体の基体をなす多孔質金属1と、多孔質金属の表面に位置する、複数の粉粒が接続した反応部20とを備え、反応部20は、電気化学反応のための、カソード、電解質およびアノードを構成する材料を含み、多孔質金属が、等方的に連続する気孔を有する立体網状の金属体からなることを特徴とする。
【解決手段】 ガス分解複合体10は、ガス分解複合体の基体をなす多孔質金属1と、多孔質金属の表面に位置する、複数の粉粒が接続した反応部20とを備え、反応部20は、電気化学反応のための、カソード、電解質およびアノードを構成する材料を含み、多孔質金属が、等方的に連続する気孔を有する立体網状の金属体からなることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス分解複合体およびその製造方法であって、より具体的には、ガスを効率よく分解することができ、耐久性の高いガス分解複合体およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車では、ディーゼルエンジン搭載の自動車が増加する傾向にあるが、廃ガス規制をクリアする必要があり、ディーゼルエンジンの排出ガスを低減する各種の触媒装置が開発されている。それらの触媒装置のなかで、尿素選択還元システムはNOxを、エンジンスピードが低い温度域で効率よく窒素および水へと還元浄化するものとして推奨されている(非特許文献1)。これらの排気ガス浄化装置は、自動車エンジンの排気経路に取り付けられ、排気ガスを浄化する。このために、排気経路の温度やNOx濃度を測定して、尿素の排気経路への噴射量の制御を行う。たとえば、尿素噴射の後段にNOxセンサを設け、NOとNO2とを化学量論的に個別に割り出し、最適な尿素の噴射量を制御する装置が提案されている(特許文献1)。また、排気経路に、酸化触媒と、その後段に尿素選択還元装置とを配置して、尿素選択還元装置の前段で、酸化触媒の前後に配置した2つのNOxセンサを用いて、NOx分解を行う方法の提案もある(特許文献2)。
また、金属ハニカムの表面に、NOx還元触媒と、炭化水素の酸化触媒と、イオン導電性の固体電解質と、を混合して分散配置して、電気化学的にNOxを分解する方法の提案がなされている(特許文献3)。この発明では、金属ハニカムとして、波状加工されたステンレス鋼と、ステンレス鋼平板との重ね合わせにより得られるハニカム構造(特許文献4)が挙げられている。
また、アンモニアの除害については、エネルギーや薬品等の投入なしに、安価なランニングコストを得るために、水素酸素燃料電池型分解方式を用いた、半導体製造装置の排気ガス処理の提案がされている(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−100699号公報
【特許文献2】特開2007−100508号公報
【特許文献3】特開2001−070755号公報
【特許文献4】特開平05−301048号公報
【特許文献5】特開2003−45472号公報
【0004】
【非特許文献1】平田公信ら,「大型車ディーゼルの尿素選択還元システム」,自動車技術,Vol.60,No.9,2006,pp28-33
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
NOxを分解する尿素選択還元装置については、自動車にとって大掛かりな尿素選択還元装置を排気系統に配置するものであり、重量増をもたらす。自動車用では、当然のことながら小型で軽量であることが強く要求される。
また、金属ハニカムの表面に、NOx還元触媒等を分散配置した方法では、金属ハニカムは薄くて、圧力損失がある程度低くなる利点はあるものの、電気化学反応箇所の密度はそれほど向上せず、また圧力損失の低減も十分ではない。すなわち、小型化と分解効率の両方を推進する点で、不十分である。
アンモニアについては、水素酸素燃料電池型分解方式を用いた排気ガス処理は、メンテナンス経費を抑えて有害成分を分解することはできる。しかし、たとえば10ppm以下の極低濃度にまで効率よく分解する点で不十分である。
上記の問題に加えて、振動や衝撃を頻繁に受けるので、複雑な機構の装置や、固体電化質のセラミックスシート等の脆弱部分を含む装置の場合、支持機構に相当の衝撃対策が必要である。自動車に限らず一般的な用途においても、衝撃等に対する耐久性はなおざりにできないが、自動車ではとくに重要である。
上記の問題は次のように要約される。
1.小型化と、高い除害効率および低圧力損失との両立
2.衝撃・振動に対する高耐久性
上記のような課題1.および2.は、アンモニアおよびNOxに限定されず、悪臭ガス成分のメタン、エタン等のVOC(Volatile Organic Compounds)の分解についても、同様のことがいえる。
【0006】
本発明は、小型で高い分解効率および低圧力損失を備え、衝撃・振動に対する耐久性が高い、ガス分解複合体、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のガス分解複合体は、ガス成分を電気化学反応によって分解する。このガス分解複合体は、ガス分解複合体の基体をなす多孔質金属と、多孔質金属の表面に位置する、複数の粉粒が接続した反応部とを備え、反応部は、電気化学反応のための、カソード、電解質およびアノードを構成する材料を含み、多孔質金属が、等方的に連続する気孔を有する立体網状の金属体からなることを特徴とする。
【0008】
上記の構成によれば、立体網状の金属体の表面に高い密度で反応部を備えることができる。また、立体網状の金属体は、ガス成分を含む気体の流れを乱流化するので、反応部との接触を反応促進に有利な形態にすることができる。このため、小型で高い分解効率を実現することが可能である。また、等方的に連続する気孔を有する立体網状の金属を基体とするので、風通しが良く、圧力損失を抑制することが容易である。また、複数の粒状の反応部が無数に立体網状の金属体に固定され、脆弱部がないので、衝撃・振動に対して高い耐久性を有する。さらに上記の電気化学反応は、外から電圧を印可することなく、電気化学反応が自然に進行する方向になるように反応部を構成する材料を選択するので、電圧印可は不要である。
ここで粉粒は、径が1nm〜10μm程度の範囲の粉体である。小さい粉体が大きい粉体に結合している形態、すなわち大きい粉体が小さい粉体を担持している形態であってもよい。
【0009】
立体網状の金属体を、すべて、めっき法で形成されているものとすることができる。これにより、気孔部の比率を大きく、立体網状の金属めっき部を小さくできるので、気孔率の大きい範囲を選んで広くとれる。この結果、圧力損失を低減することが容易となる。なお、立体網状の金属体が、すべて、めっき法で形成されているか否かの判定は、光学顕微鏡を用いた断面組織の観察、および、各種固体スペクトロスコピーを用いた微量成分の組成分析等により、遂行できる。とくに、機械加工による塑性流れが生じる粉体の圧縮焼結によらないこと、温度勾配が避けられない鋳造によらないこと、等との区別は非常に容易である。
【0010】
立体網状の金属体が、めっき骨格部と、その骨格部に接して位置するめっき表層部とで形成され、反応部は該めっき表層部を接続層として、めっき骨格部上に位置している構造をとることができる。これによって、複合めっきまたは分散めっき法などを用いて、めっき骨格部に粉粒が接続した反応部を能率よく形成することができる。とくに、めっき骨格部はめっきにより形成されるので、めっき骨格部の最終のめっき工程に連続してめっき表層部を形成する分散めっき処理等を配置することで、製造能率を飛躍的に向上させることができる。
めっき骨格部とめっき表層部との識別は、たとえ同じNi等を主体とする金属めっきであっても、粉粒の存在、その他の成分組成の相違、があるので、精密機器分析装置を用いた固体スペクトロスコピーにより確実に行うことができる。
なお、めっき骨格部を単に骨格部または骨格体と呼ぶ場合がある。
【0011】
反応部は、焼成によって立体網状の金属体に接続されている構造とすることができる。これによれば、固体電解質および金属の粉粒を、樹脂を溶解した有機溶媒等に分散させたペーストを塗布し、またはペーストに浸漬させ、次いで焼成することで、立体網状の金属体に配置させることができる。樹脂を溶解した有機溶媒等は、焼成によって蒸散する。このため、手軽に、ガス分解複合体を製造することができる。
【0012】
立体網状の金属体またはめっき骨格部における気孔率が、0.6以上0.98以下とすることができる。これによって、圧力損失を低減しながら、小型で反応効率の高いガス分解複合体を得ることができる。
【0013】
立体網状の金属体またはめっき骨格部を、樹脂中に無数の泡を形成する発泡処理と、その泡を連続化させて開口する連続開口処理とを経て形成された当該樹脂に、めっきすることで形成されたものとすることができる。これによって、ウレタンやメラミン等の樹脂を用いて、簡単に、立体網状の金属体またはめっき骨格部を能率よく得ることができる。
【0014】
立体網状の金属体の製造で、樹脂にウレタンを用いた場合において、立体網状の金属体またはめっき骨格部の、孔径をx(mm)、比表面積をy(m2/m3)とするとき、400≦(x−0.3)y、を満たすことができる。これによって、圧力損失を低減した上で、反応部の密度を高くすることができる。反応部の高密度配置によって、小型化した上で高い分解効率を得ることができる。
【0015】
立体網状の金属体を、すべて、Niを主成分とする金属めっきで形成して、立体網状の金属体が、電気化学反応のカソード電極を兼ねることができる。これによって、分解対象のガス成分によっては、立体網状の金属体自身が、分解を促進する触媒作用を有する。このため、電気化学反応における電子電導経路と、カソード電極とを兼ねることができる。また、めっきしやすく、かつ大気中で比較的安定した(さびにくい)金属であるNiを用いて、立体網状の金属体を、安価に、かつ能率よく得ることができる。
【0016】
反応部は、固体電解質のセラミックス粉、および少なくとも1種類の金属粉を含むことができる。これによって、基体表面に、高密度の反応部を簡単に設けることができる。
【0017】
本発明のガス分解複合体の製造方法は、ガス成分を電気化学反応によって分解するためのガス分解複合体を製造する。この製造方法は、等方的に連続する気孔を有する立体網状の金属の骨格体を準備する工程と、電気化学反応のための、固体電解質粉および1種類または2種類以上の金属粉を準備する工程と、骨格体にめっきするための金属めっき液を調合して、固体電解質粉および1種類または2種類以上の金属粉を、該金属めっき液に混合して撹拌する工程と、混合撹拌された金属めっき液に骨格体を浸漬して、金属めっき液の金属と、固体電解質粉および1種類または2種類以上の金属粉と、からなるめっき層を、該骨格体に形成する工程とを備えることを特徴とする。
【0018】
これによって、分散めっき法により、比較的、容易に、高密度の反応部を立体網状の金属体に配置することができる。とくに、骨格体の最終のめっき工程に連続してめっき層を形成する分散めっき処理等を配置することで、製造能率を飛躍的に向上させることができる。ここで、めっき層は、上述のめっき表層部のことであり、骨格体は、めっき骨格部である。
【0019】
固体電解質粉および1種類または2種類以上の金属粉を準備する工程において、焼成によって、該固体電解質に該1種類または2種類以上の金属粉を担持させることができる。これによって、固体電解質粉と各電極を構成する金属粉や触媒との接続を、分散めっき処理の前段階で、確実に得ることができる。この結果、確実に機能する反応部を高密度で、基体上に配置することができる。
【0020】
本発明の別のガス分解複合体の製造方法は、ガス成分を電気化学反応によって分解するためのガス分解複合体を製造する。この製造方法は、等方的に連続する気孔を有する立体網状の金属体を準備する工程と、電気化学反応のための、固体電解質粉、および1種類または2種類以上の金属粉、を製造する工程と、塗布用の溶媒を調合して、固体電解質粉および1種類または2種類以上の金属粉を、該塗布用の溶媒に混合して撹拌して塗布溶液を製造する工程と、塗布溶液を立体網状の金属体に、塗布または含浸させて、次いで、焼成する工程を備えることを特徴とする。
【0021】
上記の方法によれば、固体電解質および金属の粉粒を、樹脂を溶解した有機溶媒等に分散させてペーストを製造することができる。このペーストを立体網状の金属体に塗布し、またはその金属体をペーストに浸漬させ、次いで焼成することで、立体網状の金属体に、固体電解質粉と金属粉とで形成される反応部を容易に形成することができる。樹脂を溶解した有機溶媒等は、焼成によって蒸散する。このため、手軽に、ガス分解複合体を製造することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明のガス分解複合体およびその製造方法によれば、小型で高い分解効率および低圧力損失を備え、かつ衝撃・振動に対して高い耐久性を備えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態1におけるガス分解複合体を示し、(a)は全体の外観形状、(b)は立体網状金属体と、無数の反応部、を示す図である。
【図2】図1(b)の反応部における電気化学反応を模式的に示す図である。
【図3】立体網状金属体の表面を示し、(a)は、SEM像、また(b)は(a)の模式図である。
【図4】図3におけるA部の拡大図であり、(a)は析出部についてのSEM像、(b)は(a)の模式図である。
【図5】図4の点在する白色の粒についてESCAにより組成分析を行った結果を示す図である。
【図6】図4の点在する白色の粒以外の部分についてESCAにより組成分析を行った結果を示す図である。
【図7】実施の形態1のガス分解複合体の製造方法のフローチャートである。
【図8】めっき骨格部または立体網状金属体の製造方法のフローチャートである。
【図9】図8の製造方法で製造した立体網状金属体または骨格部の孔径と比表面積との関係を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態2のガス分解複合体を示す図である。
【図11】実施の形態2のガス分解複合体の反応部を模式的に示す図である。
【図12】実施の形態2のガス分解複合体の製造方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1におけるガス分解複合体10を示す図である。このガス分解複合体10は、図1(a)に示すように、全体の外観形状はシート状であるが、シートを形成する材料は、立体網状金属体1である。この立体網状金属体1は、金属部分はすべて金属めっきによって形成されている。金属めっきは何でもよいが、Niを主材料とするNiめっきがとくに好適に用いられる。その理由は、あとで説明する。図1(a)では、外観のシート状であることを強調する部分と、立体網状金属体1を強調する部分とを、区分けして示しているが、実際は、ガス分解複合体10は、すべて、より目の細かい立体網状金属体1で形成されていることは言うまでもない。
立体網状金属体1(1a)の表面には、図1(b)に示すように、無数の反応部20が粒状に設けられている。めっきにより形成された立体網状金属体1の特徴の一つは、立体網状金属体の空隙である気孔1sの比率が高いことである。製造方法については、後で詳説するが、気孔1sの平均サイズおよび気孔率を、大きな範囲領域において、容易に制御して変えることができる。このため、分解対象のガス成分を含む気体、およびそのガス成分と電気化学反応において対をなす気体、を両方ともに、(1)圧力損失を小さくし、(2)両方の気体をともに立体網状金属体1(1a)の中で、乱流を生じさせて、反応部20と反応にとって好ましい接触形態を実現することができる。平面上に位置する反応部の場合、その平面に沿って流れる気体は、反応部において層流を生じ、反応部を覆って停滞する表層流れのために反応が進みにくい。本実施の形態では、電気化学反応の効率を高めるために、層流を乱して、表層の気体が絶えず剥離されて入れ替わる乱流を促進する立体網状金属体を用いる。立体網状金属体1(1a)中を流れる気体は、自ずと乱流となり、反応は活発に生じる。
【0025】
低い圧力損失という点で、上記の立体網状金属体1は、他の追随を許さない。たとえば図2において、電気化学反応前のNOxおよび相手方の気体と、反応した後の気体とは、ほぼ同じ方向に流れる。このため、反応前の気体と、反応後の気体とが逆方向の速度成分をもって干渉することが生じにくい。一方、ある程度広い平板上に固定された反応部では、気体を反応部に吹き付けると、反応後の気体(および未反応の気体)は、元の方向と逆方向の速度成分をもって跳ね返る。この結果、干渉が生じて圧力損失を増大させる。本実施の形態における立体網状金属体1では、乱流を生じる抵抗は持つが、気体に逆方向の速度成分を持たせる程度が非常に低く、図2に示すように、反応前の気体および反応後の気体は、ほぼ同じ方向に流れる。
【0026】
立体網状金属体1の表面は、反応部20を分散めっき法で形成する場合は、めっきにより形成された骨格部の表面に、反応部20とともにめっき層1aが形成される。このため、立体網状金属体1は、骨格部とめっき表層1aとで形成される。また、実施の形態2で説明する金属粉等を含むペースト焼成により反応部20が配置される場合は、骨格部がそのまま立体網状金属体1となる。どちらの方法で反応部20を設けた場合でも、立体網状金属体1の記号を用いる。立体網状金属体1(1a)とした場合は、立体網状金属体1に、分散めっき法によって反応部20が設けられ、付随してめっき層1aが形成されていることを示している。
【0027】
図2は、反応部20における電気化学反応を模式的に示す図である。本実施の形態においては、分解対象のガス成分と、そのガス成分と電気化学反応において対をなす相手方の気体とは、一緒に、立体網状金属体1に導入される。図2では、分解対象のガス成分はNOxであり、相手方の気体は、CH4、H2、COなどである。カソード21は、Niを主成分とする立体網状金属体1(1a)が兼ねる。すなわち、カソードとなる粉体をとくに設けず(設けてもよいことは言うまでもない)、立体網状金属1(1a)の部分がカソード21の作用をする。固体電解質粉22は、イオン透過性であるが、導電性はない。また、銀粒子23がアノードの役割を演ずる。
図2の中央部および左側の反応部20では、酸素イオンの発生部であるカソード21の側と、電子の発生部であるアノードの銀粒子23の側とを区別して強調するために、SSZ(スカンジウム安定化ジルコニア)22に担持された銀粒子の分布を一方(電子発生側、かつ酸素イオン受け入れ側)に偏在させている。しかし、実際は、SSZ22の表面に一様に分布しており、SSZ22の銀粒子が位置する局所的な小さな部分で、電子の授受、および酸素イオンの授受が行われる。
【0028】
図2における電気化学反応は、カソード21の電位がアノード23の電位よりも所定値以上高いので、電子は立体網状金属体1(1a)を通ってカソードに引き寄せられ、自ずと進行する。カソード21と固体電解質22とアノード23とは相互に接触している。カソード21と固体電解質22との界面では、2NO+4e−1→N2+2O2−、または2NO2+8e−1→N2+4O2−、のカソード反応が生じる。また、相手方の気体がCH4の場合は、アノードでは、CH4+4O2−→2H2O+CO2+8e−1、の反応が生じる。固体電解質22の中を酸素イオンがカソードからアノードへと通る。NOxの相手方の気体は、CH4に限定されず、COでもよいし、H2でもよい。Niを主成分とする金属を触媒として、NOおよびNO2の還元電位は、それぞれ、およそ1.5Vおよび1.4Vである。また、アノード23の銀粒子において、CO2/C、H+/H2、およびCO2/CO、の酸化電位は、それぞれ、およそ0.2V、0V、および−0.1Vである。このため、カソード21においてNOxが反応する部分の電位は、アノード23において相手方の気体が酸化される部分の電位よりも相当高くなる。このため、上記相手方の気体がCH4の場合に限らず、相手方気体がH2やCOの場合にも、NOxの分解反応が自ずと進行する。
【0029】
また、アンモニアを分解対象のガス成分として、相手方の気体を酸素または空気とする場合は、図示していないが、次の電気化学反応による。このアンモニア分解の電気化学反応もカソード電位はアノード電位よりも所定値以上高いので、外部から駆動力(電圧)を加えなくても自発的に進行する。固体電解質22を通るイオンは酸素イオンである。
(カソード反応):O2+2e−1→O2−
(アノード反応):2NH3+3O2−→N2+3H2O+6e−1
上記の分解対象のガス成分(NOx、アンモニア)と、相手方の気体との組み合わせでは、上記の電子の移動に伴って、酸素イオンがカソード21からアノード23へと移動する。気体の組み合わせによっては、酸素イオンではなくプロトンH+が固体電解質22を移動する。その他、リン酸イオンが移動する組み合わせもある。
【0030】
上記の電気化学反応を効率よく進行させるためには、反応部20を高温に加熱することが好ましい。高温においては、イオンが固体電解質22を通過する時間を短縮することができ、また、アノード23/固体電解質22、カソード21/固体電解質22、の各界面での各反応を促進することができる。NOx分解反応の場合は、250℃〜650℃に加熱することが好ましい。また、アンモニア分解の場合には、700℃〜950℃に加熱することが好ましい。実際のガス分解装置では、上記のガス分解複合体10の全体をヒーター等により加熱する。NOx分解等のように、自動車に搭載する場合には、内燃機関等で発生する熱を、補助または主体に、利用して加熱するのがよい。
【0031】
図3は、立体網状金属体の表面を示す図である。(a)は、SEM(Scanning Electron Microscopy)像を示し、また(b)は(a)の模式図である。立体網状金属体1(1a)の表面に、無数の微細な粒状部が取り付いている。この粒状部が反応部20である。立体網状金属体1の網糸(骨格)の径または幅は、300μm程度であることが分かる。
図4は、図3におけるA部の拡大図である。(a)は析出部についてのSEM像であり、(b)は(a)の模式図である。灰色の比較的大きな塊状のものが固体電解質22のSSZである。灰色の塊状の物の上に白色の粒が点在するが、この点在する白色の粒が銀粒子のアノード23である。カソード21は、立体網状金属体1のNiが分担する。図4(a),(b)から、固体電解質22のSSZは、差し渡し0.2μm〜1μm程度であり、アノード23を分担する銀粒子は差し渡し0.005μm〜0.05μm程度である。銀粒子23は、まず最初にSSZ22に担持され、次いで、銀粒子23を担持したSSZ22を立体網状金属体1に分散めっき処理したように見える。後で製造方法を説明するが、実際、Niめっき液中に銀粒子23を担持したSSZ22を分散させ、そのNiめっき液を用いて、立体網状骨格にNiめっきすることで、反応部20を金属1の表面に固定している。
【0032】
図5は、点在する白色の粒についてESCA(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)により組成分析を行った結果を示す。下地のSSZの組成であるジルコニウム(Zr)やめっき地のニッケル(Ni)と共に、銀(Ag)由来の3nm付近の特性X線の大きなピークが認められる。一方、図6は点在する白色の粒以外の場所(灰色部分)のESCA分析結果を示す。図6では、Ag由来の3nm付近の強いピークはなく、Zr由来のピーク、およびNi由来のピークが強く現れている。
【0033】
図7は、本実施の形態のガス分解複合体10を製造する方法を示す図である。まず、立体網状の金属体(骨格部)を準備する。立体網状金属体の骨格部の製造方法については、このあとすぐに説明する。また、立体網状金属体は市販品を購入してもよく、たとえば住友電気工業株式会社製セルメット(登録商標)を用いることができる。気孔径および気孔率または比表面積が区分けされていて、その区分け番号を指定して購入することができる。通常、所定厚みのシート状で市販されている。
立体網状金属体の骨格部に対して、めっきに良好な表面状態を得るために、(1)陰極電解脱脂を行い、次いで(2)酸活性を行う。陰極電解脱脂処理は、アルカリ脱脂剤(例えばエースクリーンA220)を用い、電流密度5A/dm2、温度50℃、脱脂時間30秒、スターラ撹拌速度300rpm、の条件で行う。酸活性は、活性剤コケイサンRP180g/Lの濃度の溶液を55℃に保って、その中に陰極電解脱脂を終えた立体網状金属体の骨格部を浸漬することで行う。
上記の骨格部の表面処理と並行して、金属粉を担持した固体電解質粉を形成する。本実施の形態では、金属粉として銀粒子を、また固体電解質粉としてはSSZ(スカンジウム安定化ジルコニア)を用いる。銀粒子を担持したSSZの形成のために、銀水溶液を準備し、この銀水溶液にSSZ粉末を調合する。例えば、銀水溶液2cc、SSZ粉末0.4gを調合するのがよい。ホットプレートにて200℃×1時間の熱処理を行って、水分を除去することで、銀粒子を担持したSSZ粉末を得ることができる。固体電解質には、上記のSSZの他に、YSZ(イットリウム安定化ジルコニア)、SDC(サマリウム安定化セリア)、LSGM(ランタンストロンチウムガリウムマンガナイト(ランタンガレート))、GDC(ガドリア安定化セリア)、CsH2PO4などを用いることができる。
このあと銀粒子担持SSZ粉末を、カチオン界面活性剤(たとえばコンディショナー231の水溶液に混合して5分間撹拌するのがよい。次いで、Niめっき液に銀粒子担持SSZ粉末を含むカチオン界面活性剤の水溶液を混合して5分間ほど撹拌する。Niめっき液は、硫酸300g/L、塩化ニッケル45g/L、ホウ酸45g/L、UPS(3−[(アミノ−イミノメチル)−チオ]−1−プロパンスルホン酸)1cc/L、を調合して作製する。このNiめっき液480ccに対して、上記カチオン界面活性剤の水溶液20cc程度の割合とするのがよい。以後の説明では、カチオン界面活性剤の水溶液を含むNiめっき液を、単にNiめっき液と呼ぶ。
図7において、表面処理した骨格部を、上記のNiめっき液に浸漬して分散(複合)Niめっき処理を行う。条件は、電流密度5A/dm2、めっき時間5分間、めっき浴温度50℃、スターラ撹拌速度300rpm、とする。これによって、骨格部の表層にNiめっき層1aを有する、立体網状金属体1が形成される。この後、50℃×30分間、の乾燥処理を行うことで、ガス分解複合体が作製される。立体網状金属体1の表面には、図3および図4に示すように、銀粒子23を担持したSSZ粉末22が固定される。銀粒子23をアノードとし、立体網状金属体1のNiをカソードとして、SSZ22を固体電解質とした、反応部20が形成される。
【0034】
次に、金属めっきにより形成された、立体網状金属体またはその骨格部(とくに断らない限り、単に骨格部と記す)の製造方法の一例について説明する。図8は、骨格部の製造方法の一例を示す図である。図8において、まずウレタン等の樹脂に発泡処理を施し発泡させたものを準備する。次いで、発泡した気孔を連続する気孔連続化処理を行う。気孔連続化処理は、除膜処理を主内容とする。孔の上に出来た薄膜を爆発処理等の加圧処理もしくは化学処理により除膜することで連続気孔化する。このあと、気孔内壁に、導電性炭素膜を付着させるか、または無電解めっき等により導電薄膜を形成する。次いで、電気めっきによって、金属めっき層を導電性炭素膜または導電薄膜上に形成する。この金属めっき層が立体網状金属体の骨格部となる。金属めっきはニッケルイオンを含むめっき液を用い、Niめっき層を形成する。Niは、比較的高い耐高温酸化性を有し、かつめっき層の形成が容易である。次いで、熱処理によって樹脂を消散させて、金属めっき層のみを残して、立体網状Ni体もしくはNi骨格部、またはNiめっき多孔体とする。
立体網状Ni体またはNi骨格部が、より強い酸化性雰囲気にさらされ、あるいは、より高温で使用される場合には、耐酸化性能を一層向上させるために、Ni骨格部に対して合金化処理を施す。この合金化処理は、Cr、Al、その他の金属を外から表層に拡散導入することにより行われる。合金化を表層のみに止めて、合金化表層付きめっき多孔体とするのが普通であるが、中まで合金化する場合もある。
また、図8には示していないが、めっき液にニッケルイオンおよび他の金属イオンを溶解させて、めっき体をニッケル合金とすることができる。そのように、直接、合金めっき層を形成することで、ニッケル合金の骨格を形成してもよい。
【0035】
Ni骨格部の合金化は、AlまたはCr添加処理によって行う。Al添加は、アルミナイジング(Aluminizing)によって行う。アルミナイジングでは、Ni骨格部を、Fe−Al合金粉およびNH4Cl粉よりなる調合剤とともに鋼製ケース内に埋め込む。次いで、ケースを密封して、その密封したケースを炉内に装入し、900℃〜1050℃に加熱する。これによってAl拡散浸透層を得ることができ、耐高温酸化性、耐摩耗性等を向上することができる。また、Cr添加はクロマイジング(Chromizing)によって行う。クロマイジングでは、Ni骨格部を、Cr粉、Al2O3粉およびNH4Cl粉よりなる調合剤とともに、ケース内に埋め込む。ケース内にH2ガスまたはArガスを通しながら、炉内にて900℃〜1100℃に加熱することで、Cr拡散浸透層を得ることができる。このCr拡散浸透層も耐高温酸化性能を高めることができる。なお、アルミナイジングおよびクロマイジングともに、粉末法のみを説明したが、気体法、溶融塩法など、既存の任意の方法を用いて、AlまたはCrを拡散浸透することができる。
【0036】
図8に示す方法で製造したNi骨格部または立体網状Ni体の、比表面積(y:m2/m3)と孔径(x:mm)との関係を図9に示す。図9の小黒丸が実測値である。孔径0.05mm〜3.2mmにわたって、上記の方法で製造することができる。実測値は、ウレタンを用いた場合は、(x−0.3)y=400または600の双曲線に比して、同じ孔径において大きな比表面積を持つ。ここで双曲線の孔径の最小極限値(漸近線)の0.3mmは、ウレタンを用いた場合のものである。(x−0.3)yの値が大きいと、ガス分解複合体10に導入される両方の気体と接触して、気体を乱流状態にして反応部20が常に新しい気体と接触して反応できる機能を保持しながら、圧力損失を低くできる効果を生み出す。このため、400≦(x−0.3)y、とするのがよい。より好ましくは、600≦(x−0.3)y、とするのがよい。孔径をあまり大きくすると、分解対象の成分ガスの素通りなどが生じるおそれがあるので、上限は3000程度、より好ましくは2000程度とするのがよい。
なお、ウレタンの代わりにメラミンを用いた場合には、孔径の最小極限値は0.05mmとなる。メラミンを用いて製作した骨格部については、孔径と比表面積との積の表式は示さないが、気孔率が0.6以上0.98以下の範囲に入れば、メラミンを用いて製作した金属多孔体も本発明の範囲に入る。
金属粉焼結体の場合、孔径は0.05mm〜0.3mmの範囲、より好ましくは0.10〜0.2mmの範囲にある。また、比表面積は、ウレタンの樹脂多孔体鋳型を用いて製作した図9に示す関係(x−0.3)y=400よりも、かなり小さい範囲にある。気孔率は、骨格の形状にも影響を受けるが、一般的に気孔率が高いものほど比表面積は大きい。したがって、図8に示す方法で作製したNi骨格部は、同じ導電性、同じ乱流生成作用を得ながら、金属粉焼結体よりも圧力損失を低下することができる。
【0037】
(実施の形態2)
図10は、本発明の実施の形態2におけるガス分解複合体10を示す図である。このガス分解複合体10は、マクロ的な外観は筒状体すなわちチューブ状であるが、材料は、実施の形態1と同じ立体網状金属体1で形成されている。図10では、外観のチューブ状であることを強調する部分と、立体網状金属体1を強調する部分とを、区分けして示しているが、実際は、ガス分解複合体10は、すべて、より目の細かい立体網状金属体1で形成されていることは、実施の形態1の場合と同じである。立体網状金属体1または立体網状Ni体1の表面には、無数の反応部20が固定されていることは、実施の形態1の図1(b)と同じである。
本実施の形態では、反応部20の固定にめっき法を用いないので、立体網状Ni体は、反応部20の固定の前後で変わらず、表面にめっき層1aは形成されない。また、反応部20を構成する粉体材料の種類も少し異なる。反応部20を構成する粉体材料の種類は、製造方法によらず、実施の形態1の分散めっき法によっても作製することができる。ただし、分解対象のガス成分の電気化学反応などは、図2に示すものと同じである。
【0038】
図11は、本実施の形態のガス分解複合体10の反応部20を模式的に示す図である。実施の形態1の図2と同様に、分解対象のガス成分はNOxであり、相手方の気体は、CH4、H2、COなどである。カソード21は、Ni粒連鎖体21aの表層を酸化することで形成された酸化層21bをもつNi粒連鎖体21である。Niめっきにより形成された立体網状Ni体もカソード21に含まれるとみることもできる。アノード23は、炭酸バリウム23bと銀粒子23aとで形成される。炭酸バリウム23bに銀粒子23aを担持させてもよい。固体電解質粉22は、YSZとするが、SSZ、SDC、LSCM、GDC、などであってもよい。
実施の形態1の反応部との相違は、次の点にある。
(1)カソード21に、酸化層21bと、Ni粒連鎖体21aとから形成されるNi粒連鎖体21を用いる。Ni粒連鎖体21aだけでもNOx分解反応の触媒として機能するが、Ni酸化層21bは、触媒作用が強く、NOx分解のカソード反応を大きく促進する。
さらに、Ni粒連鎖体21aは電子伝導性が高いので、電子伝導がネックになり、全体の電気化学反応を遅らせるような場合には、促進効果が非常に顕著に発揮される。
酸化層付きNi粒連鎖体の製造方法については、このあと、説明する。
(2)アノード23は、銀粒子だけでなく、炭酸バリウムを備える。炭酸バリウム、とくにバリウムはNOxを吸着する力があり、近接して位置するカソード21へとNOxを放出して、NOx分解反応の促進に寄与することができる。図11では、アノード23とカソード21とを間隙を大きくあけて描いているが、実際は、カソード21とアノード23とは非常に近接して位置する場合が多く、炭酸バリウムによるNOx分解促進への寄与が得られる。
また、アンモニアを分解対象のガス成分として、相手方の気体を酸素または空気とする場合は、図示していないが、実施の形態1と同様に、アンモニア分解も可能である。
【0039】
図12は、本実施の形態におけるガス分解複合体の製造方法を説明するためのフローチャートである。まず、立体網状金属体または立体網状Ni体を準備する。通常、立体網状Ni体1は、所定の厚みを有するシートとして市販されているので、チューブ状に成形加工する。成形加工は、パイプ等を被覆するように沿わせて、端の部分を点状に仮溶接する。点溶接の機械的な強度、用途等によっては、点溶接だけで、用いてもよい。点溶接だけでは不可の場合は、電子ビーム溶接、レーザービーム溶接、TIG溶接などで端部をシーム溶接して筒状体を形成する。
これと並行して、反応部20を構成する各部材料の粉末を用意する。1種類または複数種類の金属粉M1〜Mk、1種類または複数種類の固体電解質粉S1〜Slを準備する。本実施の形態では、金属粉として、Ni粉、炭酸バリウム粉、および銀(Ag)粉を準備する。Ag粉の平均径は、10nm〜100nmとするのがよい。Ni粉は、径が100nm未満のものがよい。この理由は、ペースト焼成の工程中に、Ni粉を凝集させてNi粒連鎖体を形成して、Ni粒連鎖体を用いるためである。Ni粒連鎖体は電気化学反応を促進するために表面を酸化させて酸化層付きNi粒連鎖体とするのがよい。
固体電解質粉には、SSZ、YSZ、SDC、LSGM、GDCなどを用いることができる。YSZ、GDC、SDC、LSGMなどから1種類または複数種類を選ぶことができる。これら固体電解質はセラミックスなので乳鉢等ですりつぶすのがよい。固体電解質粉の平均径は0.5μm〜50μm程度とするのがよい。
表面酸化されたNi粒連鎖体21と、SSZ22との配合比は、mol比で0.1〜10の範囲を目安とする。
有機溶媒は樹脂と溶媒とで構成されるが、立体網状金属体1の中に、容易に侵入させるために、粘度は10〜100Pa・Sの範囲にあるものがよい。また、400℃程度の加熱によって簡単に消散するものが好ましい。この目的のために、例えば溶質エチルセルロース(日新化成株式会社製のECビヒクル)を用いるのがよい。混合比は、重量比で、金属粉:固体電解質粉:有機溶媒=20:20:60を目安とするのがよい。上記の混合物を撹拌混合することで、金属粉および固体電解質粉が均一に分散されたペーストを得ることができる。
次に、上記の成形加工された立体網状Ni体に、ペーストを含浸させる。次いで、400℃で2時間保持の仮焼成を行ったあと、1100℃で2時間保持の本焼成を行うことで、反応部20を立体網状Ni体の表面に固定することができる。含浸および焼成を1セットとして、含浸および焼成を数セット繰り返してもよい。チューブ状の物の焼成では、チューブの一端を回転駆動部に軸心を共通にして固定し、回転しながら移動式加熱炉または反射型ヒーターによって、チューブ長手方向に沿って部分的に焼成しながら、その移動式加熱炉を移動させて全体を焼成してもよい。また、チューブ全体を大きな加熱炉に収納してバッチ式に加熱して焼成してもよい。焼成の際の、加熱および冷却の温度変化は5℃/分程度とするのがよい。
上記のペースト焼成の際に、Ni粒が凝集して酸化しながら、酸化層付きNi粒連鎖体21が形成される。Ni粒の凝集が進まない場合、単粒になるが、それでも、酸化層付きNi粒(単粒)は、電子伝導性の効果が減少するが、上述の作用を保持することができる。このため、Ni粒の単粒、または酸化層付きNi粒(単粒)であってもよい。
上記のNi粉を混合してペーストを形成し、ペーストの焼成の際に酸化層付きNi粒連鎖体とする代わりに、最初から、別途、準備した、酸化層付きNi粒連鎖体、またはNi粒連鎖体をペーストに混入してもよい。別途、準備することで、Ni粒連鎖体を確実に、ペーストに含ませることができる。ペースト焼成の際、酸化層付きNi粒連鎖体はそのままの形態を維持し、またNi粒連鎖体は表層に酸化層が形成される。
【0040】
次に、別途、準備する場合の、酸化層付きNi粒連鎖体、およびNi粒連鎖体について説明する。Ni粒連鎖体21は、Niを主成分とし、鉄(Fe)を少し含むものであってもよい。さらに好ましくはTiを2〜10000ppm程度の微量含むものである。上述のように、Ni自体、NOx、アンモニア等の分解を促進する触媒作用を有する。また、FeやTiを微量含むことでさらに触媒作用を高めることができる。さらに、このNiを酸化させて形成されたニッケル酸化物は、金属単味の促進作用をさらに大きく高めることができる。
アノード反応では、自由な電子e−が生じ、カソード21へと供給される。電子e−がカソード21に供給され、カソード反応に与らないと、全体の電気化学反応が妨げられる。Ni粒連鎖体21は、ひも状に細長く、酸化層21bで被覆された中身21aは良導体の金属(Ni)である。電子e−は、ひも状のNi粒連鎖体21aの長手方向に、スムースに流れる。このため、電子e−がカソード内をスムースに移動して、電子の移動が電気化学反応のネックになることはない。
【0041】
別途準備する場合のNi粒連鎖体21の製造方法について説明する。Ni粒連鎖体21は、還元析出法によって製造するのがよい。Ni粒連鎖体21の還元析出法については、特開2004−332047号公報などに詳述されている。ここで紹介されている還元析出法は、還元剤として3価チタン(Ti)イオンを用いる方法であり、析出する金属粒(Ni粒など)は微量のTiを含む。このため、Ti含有量を定量分析することで、3価チタンイオンによる還元析出法で製造されたものと特定することができる。3価チタンイオンとともに存在する金属イオンを変えることで、所望の金属の粒を得ることができる。Niの場合はNiイオンを共存させる。Feイオンを微量加えると、微量Feを含むNi粒連鎖体が形成される。
また、連鎖体を形成するには、金属が強磁性金属であり、かつ所定のサイズ以上であることを要する。NiもFeも強磁性金属なので、金属粒連鎖体を容易に形成することができる。サイズについての要件は、強磁性金属が磁区を形成して、相互に磁力で結合し、その結合状態のまま金属の析出→金属層の成長が生じて、金属体として全体が一体になる過程で、必要である。所定サイズ以上の金属粒が磁力で結合した後も、金属の析出は続き、たとえば結合した金属粒の境界のネックは、金属粒の他の部分とともに、太く成長する。カソード21を形成するNi粒連鎖体21の平均直径Dは5nm以上、500nm以下の範囲とするのがよい。また、平均長さLは0.5μm以上、1000μm以下の範囲とするのがよい。また、上記平均長さLと平均径Dとの比は3以上とするのがよい。ただし、これら範囲外の寸法を持つものであってもよい。
【0042】
Ni粒連鎖体の表面酸化処理は、(i)気相法による熱処理酸化、(ii)電解酸化、(iii)化学酸化の3種類が好適な手法である。(ii)および(iii)は、ペーストに混ぜる前に、酸化層付きNi粒連鎖体とする場合に用いられる。(i)は大気中で500〜700℃にて1〜30分処理するのがよいが、とくに表面酸化処理をしないで、ペーストの焼成の際に形成される酸化層を表面酸化層21bとすることもできる。
(ii)では標準水素電極基準で3V程度に電位を印加し、陽極酸化することにより表面酸化を行うが、表面積に応じ電気量により酸化膜厚を制御できる特徴がある。しかし、大面積化した場合、均一に酸化膜をつけることは難しい手法である。(iii)では硝酸などの酸化剤を溶解した溶液に1〜5分程度浸漬することで表面酸化する。酸化膜厚は時間と温度、酸化剤の種類でコントロールできるが薬品の洗浄が手間となる。いずれの手法も好適であるが、(i)または(iii)によるのが好ましい。
【0043】
ガス分解複合体10の製品において、Ni粒連鎖体の望ましい酸化層の厚みは、1nm〜100nmであり、より好ましくは10nm〜50nmの範囲とする。ただし、この範囲外であってもかまわない。酸化層が薄すぎると触媒機能が不十分となる。また、わずかな還元雰囲気でもメタライズされてしまう恐れがある。逆に酸化層が厚すぎると触媒性は充分保たれるが、反面、界面での電子伝導性が損なわれ、発電性能が低下する。
【0044】
本実施の形態におけるガス分解複合体10は、実施の形態1のガス分解複合体と同じように用いて、同じような作用効果を得ることができる。さらに、筒状体であることを生かして、たとえば筒の内面側に分解対象のガス成分を流し、筒の外側に電気化学反応の相手方の気体を流すことができる。ただし、チューブは、立体網状金属体で形成されているので、両者はチューブに沿って進むにつれて混合することになる。混合することになっても、形式的にチューブの出口において、チューブ内面側を通ってきた気体と、チューブ外面側を通ってきた気体とを区別できる。これによって、チューブ出口での両側の気体の組成等を知ることにより、この後の、処理に有益である場合がある。
【0045】
(その他の実施の形態)
1.実施の形態では、NOxおよびアンモニアを分解することを主に説明したが、これらに限定する必要はない。相手方の気体との組み合わせにより、自発的に電気化学反応が進行する限り、アセトアルデヒドなどを分解対象にすることができる。また、分解対象のガス成分が複数あってもよい。
これに応じて、固体電解質を移動するイオンは、酸素イオンに限定されず、プロトン、リン酸イオンなど何でもよい。
2.電極(アノード、カソード)および触媒の材料には、ニッケル(Ni)、酸化層をもつNi粒連鎖体、銀粒子、および炭酸バリウム(BaCO3)、を用いる場合を例示したが、これらに限定されない。白金、パラジウムなどを用いてもよい。
3.製造方法については、分散めっき法または複合めっき法と、ペースト焼成法とを例示したが、これに限定されず、気相法を用いて製造してもよい。
4.加熱装置については図示しなかったが、本発明のガス分解複合体を効率よく稼働させる上で、加熱は非常に有益である。電気ヒーターに限らず、自動車の内燃機関の排熱なども有効に活用することができる。
【0046】
上記において、本発明の実施の形態について説明を行ったが、上記に開示された本発明の実施の形態は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれら発明の実施の形態に限定されない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明によれば、大掛かりな装置を用いずに、小型で高い分解効率および低圧力損失を備え、衝撃・振動に対する耐久性が高い、ガス分解複合体を得ることができる。とくに低い圧力損失で高能率の分解反応を遂行できる点で、他の追随を許さない。また、製造方法も多岐にわたり、経済性および要求される性能を考慮して適切な方法を採用することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 立体網状の金属体、1a 表面めっき層、1s 気孔、10 ガス分解複合体、20 反応部、21 カソード、21a Ni粒連鎖体、21b 酸化層、22 固体電解質、23 アノードまたは銀粒子、23a 銀粒子、23b 炭酸バリウム。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス分解複合体およびその製造方法であって、より具体的には、ガスを効率よく分解することができ、耐久性の高いガス分解複合体およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車では、ディーゼルエンジン搭載の自動車が増加する傾向にあるが、廃ガス規制をクリアする必要があり、ディーゼルエンジンの排出ガスを低減する各種の触媒装置が開発されている。それらの触媒装置のなかで、尿素選択還元システムはNOxを、エンジンスピードが低い温度域で効率よく窒素および水へと還元浄化するものとして推奨されている(非特許文献1)。これらの排気ガス浄化装置は、自動車エンジンの排気経路に取り付けられ、排気ガスを浄化する。このために、排気経路の温度やNOx濃度を測定して、尿素の排気経路への噴射量の制御を行う。たとえば、尿素噴射の後段にNOxセンサを設け、NOとNO2とを化学量論的に個別に割り出し、最適な尿素の噴射量を制御する装置が提案されている(特許文献1)。また、排気経路に、酸化触媒と、その後段に尿素選択還元装置とを配置して、尿素選択還元装置の前段で、酸化触媒の前後に配置した2つのNOxセンサを用いて、NOx分解を行う方法の提案もある(特許文献2)。
また、金属ハニカムの表面に、NOx還元触媒と、炭化水素の酸化触媒と、イオン導電性の固体電解質と、を混合して分散配置して、電気化学的にNOxを分解する方法の提案がなされている(特許文献3)。この発明では、金属ハニカムとして、波状加工されたステンレス鋼と、ステンレス鋼平板との重ね合わせにより得られるハニカム構造(特許文献4)が挙げられている。
また、アンモニアの除害については、エネルギーや薬品等の投入なしに、安価なランニングコストを得るために、水素酸素燃料電池型分解方式を用いた、半導体製造装置の排気ガス処理の提案がされている(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−100699号公報
【特許文献2】特開2007−100508号公報
【特許文献3】特開2001−070755号公報
【特許文献4】特開平05−301048号公報
【特許文献5】特開2003−45472号公報
【0004】
【非特許文献1】平田公信ら,「大型車ディーゼルの尿素選択還元システム」,自動車技術,Vol.60,No.9,2006,pp28-33
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
NOxを分解する尿素選択還元装置については、自動車にとって大掛かりな尿素選択還元装置を排気系統に配置するものであり、重量増をもたらす。自動車用では、当然のことながら小型で軽量であることが強く要求される。
また、金属ハニカムの表面に、NOx還元触媒等を分散配置した方法では、金属ハニカムは薄くて、圧力損失がある程度低くなる利点はあるものの、電気化学反応箇所の密度はそれほど向上せず、また圧力損失の低減も十分ではない。すなわち、小型化と分解効率の両方を推進する点で、不十分である。
アンモニアについては、水素酸素燃料電池型分解方式を用いた排気ガス処理は、メンテナンス経費を抑えて有害成分を分解することはできる。しかし、たとえば10ppm以下の極低濃度にまで効率よく分解する点で不十分である。
上記の問題に加えて、振動や衝撃を頻繁に受けるので、複雑な機構の装置や、固体電化質のセラミックスシート等の脆弱部分を含む装置の場合、支持機構に相当の衝撃対策が必要である。自動車に限らず一般的な用途においても、衝撃等に対する耐久性はなおざりにできないが、自動車ではとくに重要である。
上記の問題は次のように要約される。
1.小型化と、高い除害効率および低圧力損失との両立
2.衝撃・振動に対する高耐久性
上記のような課題1.および2.は、アンモニアおよびNOxに限定されず、悪臭ガス成分のメタン、エタン等のVOC(Volatile Organic Compounds)の分解についても、同様のことがいえる。
【0006】
本発明は、小型で高い分解効率および低圧力損失を備え、衝撃・振動に対する耐久性が高い、ガス分解複合体、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のガス分解複合体は、ガス成分を電気化学反応によって分解する。このガス分解複合体は、ガス分解複合体の基体をなす多孔質金属と、多孔質金属の表面に位置する、複数の粉粒が接続した反応部とを備え、反応部は、電気化学反応のための、カソード、電解質およびアノードを構成する材料を含み、多孔質金属が、等方的に連続する気孔を有する立体網状の金属体からなることを特徴とする。
【0008】
上記の構成によれば、立体網状の金属体の表面に高い密度で反応部を備えることができる。また、立体網状の金属体は、ガス成分を含む気体の流れを乱流化するので、反応部との接触を反応促進に有利な形態にすることができる。このため、小型で高い分解効率を実現することが可能である。また、等方的に連続する気孔を有する立体網状の金属を基体とするので、風通しが良く、圧力損失を抑制することが容易である。また、複数の粒状の反応部が無数に立体網状の金属体に固定され、脆弱部がないので、衝撃・振動に対して高い耐久性を有する。さらに上記の電気化学反応は、外から電圧を印可することなく、電気化学反応が自然に進行する方向になるように反応部を構成する材料を選択するので、電圧印可は不要である。
ここで粉粒は、径が1nm〜10μm程度の範囲の粉体である。小さい粉体が大きい粉体に結合している形態、すなわち大きい粉体が小さい粉体を担持している形態であってもよい。
【0009】
立体網状の金属体を、すべて、めっき法で形成されているものとすることができる。これにより、気孔部の比率を大きく、立体網状の金属めっき部を小さくできるので、気孔率の大きい範囲を選んで広くとれる。この結果、圧力損失を低減することが容易となる。なお、立体網状の金属体が、すべて、めっき法で形成されているか否かの判定は、光学顕微鏡を用いた断面組織の観察、および、各種固体スペクトロスコピーを用いた微量成分の組成分析等により、遂行できる。とくに、機械加工による塑性流れが生じる粉体の圧縮焼結によらないこと、温度勾配が避けられない鋳造によらないこと、等との区別は非常に容易である。
【0010】
立体網状の金属体が、めっき骨格部と、その骨格部に接して位置するめっき表層部とで形成され、反応部は該めっき表層部を接続層として、めっき骨格部上に位置している構造をとることができる。これによって、複合めっきまたは分散めっき法などを用いて、めっき骨格部に粉粒が接続した反応部を能率よく形成することができる。とくに、めっき骨格部はめっきにより形成されるので、めっき骨格部の最終のめっき工程に連続してめっき表層部を形成する分散めっき処理等を配置することで、製造能率を飛躍的に向上させることができる。
めっき骨格部とめっき表層部との識別は、たとえ同じNi等を主体とする金属めっきであっても、粉粒の存在、その他の成分組成の相違、があるので、精密機器分析装置を用いた固体スペクトロスコピーにより確実に行うことができる。
なお、めっき骨格部を単に骨格部または骨格体と呼ぶ場合がある。
【0011】
反応部は、焼成によって立体網状の金属体に接続されている構造とすることができる。これによれば、固体電解質および金属の粉粒を、樹脂を溶解した有機溶媒等に分散させたペーストを塗布し、またはペーストに浸漬させ、次いで焼成することで、立体網状の金属体に配置させることができる。樹脂を溶解した有機溶媒等は、焼成によって蒸散する。このため、手軽に、ガス分解複合体を製造することができる。
【0012】
立体網状の金属体またはめっき骨格部における気孔率が、0.6以上0.98以下とすることができる。これによって、圧力損失を低減しながら、小型で反応効率の高いガス分解複合体を得ることができる。
【0013】
立体網状の金属体またはめっき骨格部を、樹脂中に無数の泡を形成する発泡処理と、その泡を連続化させて開口する連続開口処理とを経て形成された当該樹脂に、めっきすることで形成されたものとすることができる。これによって、ウレタンやメラミン等の樹脂を用いて、簡単に、立体網状の金属体またはめっき骨格部を能率よく得ることができる。
【0014】
立体網状の金属体の製造で、樹脂にウレタンを用いた場合において、立体網状の金属体またはめっき骨格部の、孔径をx(mm)、比表面積をy(m2/m3)とするとき、400≦(x−0.3)y、を満たすことができる。これによって、圧力損失を低減した上で、反応部の密度を高くすることができる。反応部の高密度配置によって、小型化した上で高い分解効率を得ることができる。
【0015】
立体網状の金属体を、すべて、Niを主成分とする金属めっきで形成して、立体網状の金属体が、電気化学反応のカソード電極を兼ねることができる。これによって、分解対象のガス成分によっては、立体網状の金属体自身が、分解を促進する触媒作用を有する。このため、電気化学反応における電子電導経路と、カソード電極とを兼ねることができる。また、めっきしやすく、かつ大気中で比較的安定した(さびにくい)金属であるNiを用いて、立体網状の金属体を、安価に、かつ能率よく得ることができる。
【0016】
反応部は、固体電解質のセラミックス粉、および少なくとも1種類の金属粉を含むことができる。これによって、基体表面に、高密度の反応部を簡単に設けることができる。
【0017】
本発明のガス分解複合体の製造方法は、ガス成分を電気化学反応によって分解するためのガス分解複合体を製造する。この製造方法は、等方的に連続する気孔を有する立体網状の金属の骨格体を準備する工程と、電気化学反応のための、固体電解質粉および1種類または2種類以上の金属粉を準備する工程と、骨格体にめっきするための金属めっき液を調合して、固体電解質粉および1種類または2種類以上の金属粉を、該金属めっき液に混合して撹拌する工程と、混合撹拌された金属めっき液に骨格体を浸漬して、金属めっき液の金属と、固体電解質粉および1種類または2種類以上の金属粉と、からなるめっき層を、該骨格体に形成する工程とを備えることを特徴とする。
【0018】
これによって、分散めっき法により、比較的、容易に、高密度の反応部を立体網状の金属体に配置することができる。とくに、骨格体の最終のめっき工程に連続してめっき層を形成する分散めっき処理等を配置することで、製造能率を飛躍的に向上させることができる。ここで、めっき層は、上述のめっき表層部のことであり、骨格体は、めっき骨格部である。
【0019】
固体電解質粉および1種類または2種類以上の金属粉を準備する工程において、焼成によって、該固体電解質に該1種類または2種類以上の金属粉を担持させることができる。これによって、固体電解質粉と各電極を構成する金属粉や触媒との接続を、分散めっき処理の前段階で、確実に得ることができる。この結果、確実に機能する反応部を高密度で、基体上に配置することができる。
【0020】
本発明の別のガス分解複合体の製造方法は、ガス成分を電気化学反応によって分解するためのガス分解複合体を製造する。この製造方法は、等方的に連続する気孔を有する立体網状の金属体を準備する工程と、電気化学反応のための、固体電解質粉、および1種類または2種類以上の金属粉、を製造する工程と、塗布用の溶媒を調合して、固体電解質粉および1種類または2種類以上の金属粉を、該塗布用の溶媒に混合して撹拌して塗布溶液を製造する工程と、塗布溶液を立体網状の金属体に、塗布または含浸させて、次いで、焼成する工程を備えることを特徴とする。
【0021】
上記の方法によれば、固体電解質および金属の粉粒を、樹脂を溶解した有機溶媒等に分散させてペーストを製造することができる。このペーストを立体網状の金属体に塗布し、またはその金属体をペーストに浸漬させ、次いで焼成することで、立体網状の金属体に、固体電解質粉と金属粉とで形成される反応部を容易に形成することができる。樹脂を溶解した有機溶媒等は、焼成によって蒸散する。このため、手軽に、ガス分解複合体を製造することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明のガス分解複合体およびその製造方法によれば、小型で高い分解効率および低圧力損失を備え、かつ衝撃・振動に対して高い耐久性を備えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態1におけるガス分解複合体を示し、(a)は全体の外観形状、(b)は立体網状金属体と、無数の反応部、を示す図である。
【図2】図1(b)の反応部における電気化学反応を模式的に示す図である。
【図3】立体網状金属体の表面を示し、(a)は、SEM像、また(b)は(a)の模式図である。
【図4】図3におけるA部の拡大図であり、(a)は析出部についてのSEM像、(b)は(a)の模式図である。
【図5】図4の点在する白色の粒についてESCAにより組成分析を行った結果を示す図である。
【図6】図4の点在する白色の粒以外の部分についてESCAにより組成分析を行った結果を示す図である。
【図7】実施の形態1のガス分解複合体の製造方法のフローチャートである。
【図8】めっき骨格部または立体網状金属体の製造方法のフローチャートである。
【図9】図8の製造方法で製造した立体網状金属体または骨格部の孔径と比表面積との関係を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態2のガス分解複合体を示す図である。
【図11】実施の形態2のガス分解複合体の反応部を模式的に示す図である。
【図12】実施の形態2のガス分解複合体の製造方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1におけるガス分解複合体10を示す図である。このガス分解複合体10は、図1(a)に示すように、全体の外観形状はシート状であるが、シートを形成する材料は、立体網状金属体1である。この立体網状金属体1は、金属部分はすべて金属めっきによって形成されている。金属めっきは何でもよいが、Niを主材料とするNiめっきがとくに好適に用いられる。その理由は、あとで説明する。図1(a)では、外観のシート状であることを強調する部分と、立体網状金属体1を強調する部分とを、区分けして示しているが、実際は、ガス分解複合体10は、すべて、より目の細かい立体網状金属体1で形成されていることは言うまでもない。
立体網状金属体1(1a)の表面には、図1(b)に示すように、無数の反応部20が粒状に設けられている。めっきにより形成された立体網状金属体1の特徴の一つは、立体網状金属体の空隙である気孔1sの比率が高いことである。製造方法については、後で詳説するが、気孔1sの平均サイズおよび気孔率を、大きな範囲領域において、容易に制御して変えることができる。このため、分解対象のガス成分を含む気体、およびそのガス成分と電気化学反応において対をなす気体、を両方ともに、(1)圧力損失を小さくし、(2)両方の気体をともに立体網状金属体1(1a)の中で、乱流を生じさせて、反応部20と反応にとって好ましい接触形態を実現することができる。平面上に位置する反応部の場合、その平面に沿って流れる気体は、反応部において層流を生じ、反応部を覆って停滞する表層流れのために反応が進みにくい。本実施の形態では、電気化学反応の効率を高めるために、層流を乱して、表層の気体が絶えず剥離されて入れ替わる乱流を促進する立体網状金属体を用いる。立体網状金属体1(1a)中を流れる気体は、自ずと乱流となり、反応は活発に生じる。
【0025】
低い圧力損失という点で、上記の立体網状金属体1は、他の追随を許さない。たとえば図2において、電気化学反応前のNOxおよび相手方の気体と、反応した後の気体とは、ほぼ同じ方向に流れる。このため、反応前の気体と、反応後の気体とが逆方向の速度成分をもって干渉することが生じにくい。一方、ある程度広い平板上に固定された反応部では、気体を反応部に吹き付けると、反応後の気体(および未反応の気体)は、元の方向と逆方向の速度成分をもって跳ね返る。この結果、干渉が生じて圧力損失を増大させる。本実施の形態における立体網状金属体1では、乱流を生じる抵抗は持つが、気体に逆方向の速度成分を持たせる程度が非常に低く、図2に示すように、反応前の気体および反応後の気体は、ほぼ同じ方向に流れる。
【0026】
立体網状金属体1の表面は、反応部20を分散めっき法で形成する場合は、めっきにより形成された骨格部の表面に、反応部20とともにめっき層1aが形成される。このため、立体網状金属体1は、骨格部とめっき表層1aとで形成される。また、実施の形態2で説明する金属粉等を含むペースト焼成により反応部20が配置される場合は、骨格部がそのまま立体網状金属体1となる。どちらの方法で反応部20を設けた場合でも、立体網状金属体1の記号を用いる。立体網状金属体1(1a)とした場合は、立体網状金属体1に、分散めっき法によって反応部20が設けられ、付随してめっき層1aが形成されていることを示している。
【0027】
図2は、反応部20における電気化学反応を模式的に示す図である。本実施の形態においては、分解対象のガス成分と、そのガス成分と電気化学反応において対をなす相手方の気体とは、一緒に、立体網状金属体1に導入される。図2では、分解対象のガス成分はNOxであり、相手方の気体は、CH4、H2、COなどである。カソード21は、Niを主成分とする立体網状金属体1(1a)が兼ねる。すなわち、カソードとなる粉体をとくに設けず(設けてもよいことは言うまでもない)、立体網状金属1(1a)の部分がカソード21の作用をする。固体電解質粉22は、イオン透過性であるが、導電性はない。また、銀粒子23がアノードの役割を演ずる。
図2の中央部および左側の反応部20では、酸素イオンの発生部であるカソード21の側と、電子の発生部であるアノードの銀粒子23の側とを区別して強調するために、SSZ(スカンジウム安定化ジルコニア)22に担持された銀粒子の分布を一方(電子発生側、かつ酸素イオン受け入れ側)に偏在させている。しかし、実際は、SSZ22の表面に一様に分布しており、SSZ22の銀粒子が位置する局所的な小さな部分で、電子の授受、および酸素イオンの授受が行われる。
【0028】
図2における電気化学反応は、カソード21の電位がアノード23の電位よりも所定値以上高いので、電子は立体網状金属体1(1a)を通ってカソードに引き寄せられ、自ずと進行する。カソード21と固体電解質22とアノード23とは相互に接触している。カソード21と固体電解質22との界面では、2NO+4e−1→N2+2O2−、または2NO2+8e−1→N2+4O2−、のカソード反応が生じる。また、相手方の気体がCH4の場合は、アノードでは、CH4+4O2−→2H2O+CO2+8e−1、の反応が生じる。固体電解質22の中を酸素イオンがカソードからアノードへと通る。NOxの相手方の気体は、CH4に限定されず、COでもよいし、H2でもよい。Niを主成分とする金属を触媒として、NOおよびNO2の還元電位は、それぞれ、およそ1.5Vおよび1.4Vである。また、アノード23の銀粒子において、CO2/C、H+/H2、およびCO2/CO、の酸化電位は、それぞれ、およそ0.2V、0V、および−0.1Vである。このため、カソード21においてNOxが反応する部分の電位は、アノード23において相手方の気体が酸化される部分の電位よりも相当高くなる。このため、上記相手方の気体がCH4の場合に限らず、相手方気体がH2やCOの場合にも、NOxの分解反応が自ずと進行する。
【0029】
また、アンモニアを分解対象のガス成分として、相手方の気体を酸素または空気とする場合は、図示していないが、次の電気化学反応による。このアンモニア分解の電気化学反応もカソード電位はアノード電位よりも所定値以上高いので、外部から駆動力(電圧)を加えなくても自発的に進行する。固体電解質22を通るイオンは酸素イオンである。
(カソード反応):O2+2e−1→O2−
(アノード反応):2NH3+3O2−→N2+3H2O+6e−1
上記の分解対象のガス成分(NOx、アンモニア)と、相手方の気体との組み合わせでは、上記の電子の移動に伴って、酸素イオンがカソード21からアノード23へと移動する。気体の組み合わせによっては、酸素イオンではなくプロトンH+が固体電解質22を移動する。その他、リン酸イオンが移動する組み合わせもある。
【0030】
上記の電気化学反応を効率よく進行させるためには、反応部20を高温に加熱することが好ましい。高温においては、イオンが固体電解質22を通過する時間を短縮することができ、また、アノード23/固体電解質22、カソード21/固体電解質22、の各界面での各反応を促進することができる。NOx分解反応の場合は、250℃〜650℃に加熱することが好ましい。また、アンモニア分解の場合には、700℃〜950℃に加熱することが好ましい。実際のガス分解装置では、上記のガス分解複合体10の全体をヒーター等により加熱する。NOx分解等のように、自動車に搭載する場合には、内燃機関等で発生する熱を、補助または主体に、利用して加熱するのがよい。
【0031】
図3は、立体網状金属体の表面を示す図である。(a)は、SEM(Scanning Electron Microscopy)像を示し、また(b)は(a)の模式図である。立体網状金属体1(1a)の表面に、無数の微細な粒状部が取り付いている。この粒状部が反応部20である。立体網状金属体1の網糸(骨格)の径または幅は、300μm程度であることが分かる。
図4は、図3におけるA部の拡大図である。(a)は析出部についてのSEM像であり、(b)は(a)の模式図である。灰色の比較的大きな塊状のものが固体電解質22のSSZである。灰色の塊状の物の上に白色の粒が点在するが、この点在する白色の粒が銀粒子のアノード23である。カソード21は、立体網状金属体1のNiが分担する。図4(a),(b)から、固体電解質22のSSZは、差し渡し0.2μm〜1μm程度であり、アノード23を分担する銀粒子は差し渡し0.005μm〜0.05μm程度である。銀粒子23は、まず最初にSSZ22に担持され、次いで、銀粒子23を担持したSSZ22を立体網状金属体1に分散めっき処理したように見える。後で製造方法を説明するが、実際、Niめっき液中に銀粒子23を担持したSSZ22を分散させ、そのNiめっき液を用いて、立体網状骨格にNiめっきすることで、反応部20を金属1の表面に固定している。
【0032】
図5は、点在する白色の粒についてESCA(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)により組成分析を行った結果を示す。下地のSSZの組成であるジルコニウム(Zr)やめっき地のニッケル(Ni)と共に、銀(Ag)由来の3nm付近の特性X線の大きなピークが認められる。一方、図6は点在する白色の粒以外の場所(灰色部分)のESCA分析結果を示す。図6では、Ag由来の3nm付近の強いピークはなく、Zr由来のピーク、およびNi由来のピークが強く現れている。
【0033】
図7は、本実施の形態のガス分解複合体10を製造する方法を示す図である。まず、立体網状の金属体(骨格部)を準備する。立体網状金属体の骨格部の製造方法については、このあとすぐに説明する。また、立体網状金属体は市販品を購入してもよく、たとえば住友電気工業株式会社製セルメット(登録商標)を用いることができる。気孔径および気孔率または比表面積が区分けされていて、その区分け番号を指定して購入することができる。通常、所定厚みのシート状で市販されている。
立体網状金属体の骨格部に対して、めっきに良好な表面状態を得るために、(1)陰極電解脱脂を行い、次いで(2)酸活性を行う。陰極電解脱脂処理は、アルカリ脱脂剤(例えばエースクリーンA220)を用い、電流密度5A/dm2、温度50℃、脱脂時間30秒、スターラ撹拌速度300rpm、の条件で行う。酸活性は、活性剤コケイサンRP180g/Lの濃度の溶液を55℃に保って、その中に陰極電解脱脂を終えた立体網状金属体の骨格部を浸漬することで行う。
上記の骨格部の表面処理と並行して、金属粉を担持した固体電解質粉を形成する。本実施の形態では、金属粉として銀粒子を、また固体電解質粉としてはSSZ(スカンジウム安定化ジルコニア)を用いる。銀粒子を担持したSSZの形成のために、銀水溶液を準備し、この銀水溶液にSSZ粉末を調合する。例えば、銀水溶液2cc、SSZ粉末0.4gを調合するのがよい。ホットプレートにて200℃×1時間の熱処理を行って、水分を除去することで、銀粒子を担持したSSZ粉末を得ることができる。固体電解質には、上記のSSZの他に、YSZ(イットリウム安定化ジルコニア)、SDC(サマリウム安定化セリア)、LSGM(ランタンストロンチウムガリウムマンガナイト(ランタンガレート))、GDC(ガドリア安定化セリア)、CsH2PO4などを用いることができる。
このあと銀粒子担持SSZ粉末を、カチオン界面活性剤(たとえばコンディショナー231の水溶液に混合して5分間撹拌するのがよい。次いで、Niめっき液に銀粒子担持SSZ粉末を含むカチオン界面活性剤の水溶液を混合して5分間ほど撹拌する。Niめっき液は、硫酸300g/L、塩化ニッケル45g/L、ホウ酸45g/L、UPS(3−[(アミノ−イミノメチル)−チオ]−1−プロパンスルホン酸)1cc/L、を調合して作製する。このNiめっき液480ccに対して、上記カチオン界面活性剤の水溶液20cc程度の割合とするのがよい。以後の説明では、カチオン界面活性剤の水溶液を含むNiめっき液を、単にNiめっき液と呼ぶ。
図7において、表面処理した骨格部を、上記のNiめっき液に浸漬して分散(複合)Niめっき処理を行う。条件は、電流密度5A/dm2、めっき時間5分間、めっき浴温度50℃、スターラ撹拌速度300rpm、とする。これによって、骨格部の表層にNiめっき層1aを有する、立体網状金属体1が形成される。この後、50℃×30分間、の乾燥処理を行うことで、ガス分解複合体が作製される。立体網状金属体1の表面には、図3および図4に示すように、銀粒子23を担持したSSZ粉末22が固定される。銀粒子23をアノードとし、立体網状金属体1のNiをカソードとして、SSZ22を固体電解質とした、反応部20が形成される。
【0034】
次に、金属めっきにより形成された、立体網状金属体またはその骨格部(とくに断らない限り、単に骨格部と記す)の製造方法の一例について説明する。図8は、骨格部の製造方法の一例を示す図である。図8において、まずウレタン等の樹脂に発泡処理を施し発泡させたものを準備する。次いで、発泡した気孔を連続する気孔連続化処理を行う。気孔連続化処理は、除膜処理を主内容とする。孔の上に出来た薄膜を爆発処理等の加圧処理もしくは化学処理により除膜することで連続気孔化する。このあと、気孔内壁に、導電性炭素膜を付着させるか、または無電解めっき等により導電薄膜を形成する。次いで、電気めっきによって、金属めっき層を導電性炭素膜または導電薄膜上に形成する。この金属めっき層が立体網状金属体の骨格部となる。金属めっきはニッケルイオンを含むめっき液を用い、Niめっき層を形成する。Niは、比較的高い耐高温酸化性を有し、かつめっき層の形成が容易である。次いで、熱処理によって樹脂を消散させて、金属めっき層のみを残して、立体網状Ni体もしくはNi骨格部、またはNiめっき多孔体とする。
立体網状Ni体またはNi骨格部が、より強い酸化性雰囲気にさらされ、あるいは、より高温で使用される場合には、耐酸化性能を一層向上させるために、Ni骨格部に対して合金化処理を施す。この合金化処理は、Cr、Al、その他の金属を外から表層に拡散導入することにより行われる。合金化を表層のみに止めて、合金化表層付きめっき多孔体とするのが普通であるが、中まで合金化する場合もある。
また、図8には示していないが、めっき液にニッケルイオンおよび他の金属イオンを溶解させて、めっき体をニッケル合金とすることができる。そのように、直接、合金めっき層を形成することで、ニッケル合金の骨格を形成してもよい。
【0035】
Ni骨格部の合金化は、AlまたはCr添加処理によって行う。Al添加は、アルミナイジング(Aluminizing)によって行う。アルミナイジングでは、Ni骨格部を、Fe−Al合金粉およびNH4Cl粉よりなる調合剤とともに鋼製ケース内に埋め込む。次いで、ケースを密封して、その密封したケースを炉内に装入し、900℃〜1050℃に加熱する。これによってAl拡散浸透層を得ることができ、耐高温酸化性、耐摩耗性等を向上することができる。また、Cr添加はクロマイジング(Chromizing)によって行う。クロマイジングでは、Ni骨格部を、Cr粉、Al2O3粉およびNH4Cl粉よりなる調合剤とともに、ケース内に埋め込む。ケース内にH2ガスまたはArガスを通しながら、炉内にて900℃〜1100℃に加熱することで、Cr拡散浸透層を得ることができる。このCr拡散浸透層も耐高温酸化性能を高めることができる。なお、アルミナイジングおよびクロマイジングともに、粉末法のみを説明したが、気体法、溶融塩法など、既存の任意の方法を用いて、AlまたはCrを拡散浸透することができる。
【0036】
図8に示す方法で製造したNi骨格部または立体網状Ni体の、比表面積(y:m2/m3)と孔径(x:mm)との関係を図9に示す。図9の小黒丸が実測値である。孔径0.05mm〜3.2mmにわたって、上記の方法で製造することができる。実測値は、ウレタンを用いた場合は、(x−0.3)y=400または600の双曲線に比して、同じ孔径において大きな比表面積を持つ。ここで双曲線の孔径の最小極限値(漸近線)の0.3mmは、ウレタンを用いた場合のものである。(x−0.3)yの値が大きいと、ガス分解複合体10に導入される両方の気体と接触して、気体を乱流状態にして反応部20が常に新しい気体と接触して反応できる機能を保持しながら、圧力損失を低くできる効果を生み出す。このため、400≦(x−0.3)y、とするのがよい。より好ましくは、600≦(x−0.3)y、とするのがよい。孔径をあまり大きくすると、分解対象の成分ガスの素通りなどが生じるおそれがあるので、上限は3000程度、より好ましくは2000程度とするのがよい。
なお、ウレタンの代わりにメラミンを用いた場合には、孔径の最小極限値は0.05mmとなる。メラミンを用いて製作した骨格部については、孔径と比表面積との積の表式は示さないが、気孔率が0.6以上0.98以下の範囲に入れば、メラミンを用いて製作した金属多孔体も本発明の範囲に入る。
金属粉焼結体の場合、孔径は0.05mm〜0.3mmの範囲、より好ましくは0.10〜0.2mmの範囲にある。また、比表面積は、ウレタンの樹脂多孔体鋳型を用いて製作した図9に示す関係(x−0.3)y=400よりも、かなり小さい範囲にある。気孔率は、骨格の形状にも影響を受けるが、一般的に気孔率が高いものほど比表面積は大きい。したがって、図8に示す方法で作製したNi骨格部は、同じ導電性、同じ乱流生成作用を得ながら、金属粉焼結体よりも圧力損失を低下することができる。
【0037】
(実施の形態2)
図10は、本発明の実施の形態2におけるガス分解複合体10を示す図である。このガス分解複合体10は、マクロ的な外観は筒状体すなわちチューブ状であるが、材料は、実施の形態1と同じ立体網状金属体1で形成されている。図10では、外観のチューブ状であることを強調する部分と、立体網状金属体1を強調する部分とを、区分けして示しているが、実際は、ガス分解複合体10は、すべて、より目の細かい立体網状金属体1で形成されていることは、実施の形態1の場合と同じである。立体網状金属体1または立体網状Ni体1の表面には、無数の反応部20が固定されていることは、実施の形態1の図1(b)と同じである。
本実施の形態では、反応部20の固定にめっき法を用いないので、立体網状Ni体は、反応部20の固定の前後で変わらず、表面にめっき層1aは形成されない。また、反応部20を構成する粉体材料の種類も少し異なる。反応部20を構成する粉体材料の種類は、製造方法によらず、実施の形態1の分散めっき法によっても作製することができる。ただし、分解対象のガス成分の電気化学反応などは、図2に示すものと同じである。
【0038】
図11は、本実施の形態のガス分解複合体10の反応部20を模式的に示す図である。実施の形態1の図2と同様に、分解対象のガス成分はNOxであり、相手方の気体は、CH4、H2、COなどである。カソード21は、Ni粒連鎖体21aの表層を酸化することで形成された酸化層21bをもつNi粒連鎖体21である。Niめっきにより形成された立体網状Ni体もカソード21に含まれるとみることもできる。アノード23は、炭酸バリウム23bと銀粒子23aとで形成される。炭酸バリウム23bに銀粒子23aを担持させてもよい。固体電解質粉22は、YSZとするが、SSZ、SDC、LSCM、GDC、などであってもよい。
実施の形態1の反応部との相違は、次の点にある。
(1)カソード21に、酸化層21bと、Ni粒連鎖体21aとから形成されるNi粒連鎖体21を用いる。Ni粒連鎖体21aだけでもNOx分解反応の触媒として機能するが、Ni酸化層21bは、触媒作用が強く、NOx分解のカソード反応を大きく促進する。
さらに、Ni粒連鎖体21aは電子伝導性が高いので、電子伝導がネックになり、全体の電気化学反応を遅らせるような場合には、促進効果が非常に顕著に発揮される。
酸化層付きNi粒連鎖体の製造方法については、このあと、説明する。
(2)アノード23は、銀粒子だけでなく、炭酸バリウムを備える。炭酸バリウム、とくにバリウムはNOxを吸着する力があり、近接して位置するカソード21へとNOxを放出して、NOx分解反応の促進に寄与することができる。図11では、アノード23とカソード21とを間隙を大きくあけて描いているが、実際は、カソード21とアノード23とは非常に近接して位置する場合が多く、炭酸バリウムによるNOx分解促進への寄与が得られる。
また、アンモニアを分解対象のガス成分として、相手方の気体を酸素または空気とする場合は、図示していないが、実施の形態1と同様に、アンモニア分解も可能である。
【0039】
図12は、本実施の形態におけるガス分解複合体の製造方法を説明するためのフローチャートである。まず、立体網状金属体または立体網状Ni体を準備する。通常、立体網状Ni体1は、所定の厚みを有するシートとして市販されているので、チューブ状に成形加工する。成形加工は、パイプ等を被覆するように沿わせて、端の部分を点状に仮溶接する。点溶接の機械的な強度、用途等によっては、点溶接だけで、用いてもよい。点溶接だけでは不可の場合は、電子ビーム溶接、レーザービーム溶接、TIG溶接などで端部をシーム溶接して筒状体を形成する。
これと並行して、反応部20を構成する各部材料の粉末を用意する。1種類または複数種類の金属粉M1〜Mk、1種類または複数種類の固体電解質粉S1〜Slを準備する。本実施の形態では、金属粉として、Ni粉、炭酸バリウム粉、および銀(Ag)粉を準備する。Ag粉の平均径は、10nm〜100nmとするのがよい。Ni粉は、径が100nm未満のものがよい。この理由は、ペースト焼成の工程中に、Ni粉を凝集させてNi粒連鎖体を形成して、Ni粒連鎖体を用いるためである。Ni粒連鎖体は電気化学反応を促進するために表面を酸化させて酸化層付きNi粒連鎖体とするのがよい。
固体電解質粉には、SSZ、YSZ、SDC、LSGM、GDCなどを用いることができる。YSZ、GDC、SDC、LSGMなどから1種類または複数種類を選ぶことができる。これら固体電解質はセラミックスなので乳鉢等ですりつぶすのがよい。固体電解質粉の平均径は0.5μm〜50μm程度とするのがよい。
表面酸化されたNi粒連鎖体21と、SSZ22との配合比は、mol比で0.1〜10の範囲を目安とする。
有機溶媒は樹脂と溶媒とで構成されるが、立体網状金属体1の中に、容易に侵入させるために、粘度は10〜100Pa・Sの範囲にあるものがよい。また、400℃程度の加熱によって簡単に消散するものが好ましい。この目的のために、例えば溶質エチルセルロース(日新化成株式会社製のECビヒクル)を用いるのがよい。混合比は、重量比で、金属粉:固体電解質粉:有機溶媒=20:20:60を目安とするのがよい。上記の混合物を撹拌混合することで、金属粉および固体電解質粉が均一に分散されたペーストを得ることができる。
次に、上記の成形加工された立体網状Ni体に、ペーストを含浸させる。次いで、400℃で2時間保持の仮焼成を行ったあと、1100℃で2時間保持の本焼成を行うことで、反応部20を立体網状Ni体の表面に固定することができる。含浸および焼成を1セットとして、含浸および焼成を数セット繰り返してもよい。チューブ状の物の焼成では、チューブの一端を回転駆動部に軸心を共通にして固定し、回転しながら移動式加熱炉または反射型ヒーターによって、チューブ長手方向に沿って部分的に焼成しながら、その移動式加熱炉を移動させて全体を焼成してもよい。また、チューブ全体を大きな加熱炉に収納してバッチ式に加熱して焼成してもよい。焼成の際の、加熱および冷却の温度変化は5℃/分程度とするのがよい。
上記のペースト焼成の際に、Ni粒が凝集して酸化しながら、酸化層付きNi粒連鎖体21が形成される。Ni粒の凝集が進まない場合、単粒になるが、それでも、酸化層付きNi粒(単粒)は、電子伝導性の効果が減少するが、上述の作用を保持することができる。このため、Ni粒の単粒、または酸化層付きNi粒(単粒)であってもよい。
上記のNi粉を混合してペーストを形成し、ペーストの焼成の際に酸化層付きNi粒連鎖体とする代わりに、最初から、別途、準備した、酸化層付きNi粒連鎖体、またはNi粒連鎖体をペーストに混入してもよい。別途、準備することで、Ni粒連鎖体を確実に、ペーストに含ませることができる。ペースト焼成の際、酸化層付きNi粒連鎖体はそのままの形態を維持し、またNi粒連鎖体は表層に酸化層が形成される。
【0040】
次に、別途、準備する場合の、酸化層付きNi粒連鎖体、およびNi粒連鎖体について説明する。Ni粒連鎖体21は、Niを主成分とし、鉄(Fe)を少し含むものであってもよい。さらに好ましくはTiを2〜10000ppm程度の微量含むものである。上述のように、Ni自体、NOx、アンモニア等の分解を促進する触媒作用を有する。また、FeやTiを微量含むことでさらに触媒作用を高めることができる。さらに、このNiを酸化させて形成されたニッケル酸化物は、金属単味の促進作用をさらに大きく高めることができる。
アノード反応では、自由な電子e−が生じ、カソード21へと供給される。電子e−がカソード21に供給され、カソード反応に与らないと、全体の電気化学反応が妨げられる。Ni粒連鎖体21は、ひも状に細長く、酸化層21bで被覆された中身21aは良導体の金属(Ni)である。電子e−は、ひも状のNi粒連鎖体21aの長手方向に、スムースに流れる。このため、電子e−がカソード内をスムースに移動して、電子の移動が電気化学反応のネックになることはない。
【0041】
別途準備する場合のNi粒連鎖体21の製造方法について説明する。Ni粒連鎖体21は、還元析出法によって製造するのがよい。Ni粒連鎖体21の還元析出法については、特開2004−332047号公報などに詳述されている。ここで紹介されている還元析出法は、還元剤として3価チタン(Ti)イオンを用いる方法であり、析出する金属粒(Ni粒など)は微量のTiを含む。このため、Ti含有量を定量分析することで、3価チタンイオンによる還元析出法で製造されたものと特定することができる。3価チタンイオンとともに存在する金属イオンを変えることで、所望の金属の粒を得ることができる。Niの場合はNiイオンを共存させる。Feイオンを微量加えると、微量Feを含むNi粒連鎖体が形成される。
また、連鎖体を形成するには、金属が強磁性金属であり、かつ所定のサイズ以上であることを要する。NiもFeも強磁性金属なので、金属粒連鎖体を容易に形成することができる。サイズについての要件は、強磁性金属が磁区を形成して、相互に磁力で結合し、その結合状態のまま金属の析出→金属層の成長が生じて、金属体として全体が一体になる過程で、必要である。所定サイズ以上の金属粒が磁力で結合した後も、金属の析出は続き、たとえば結合した金属粒の境界のネックは、金属粒の他の部分とともに、太く成長する。カソード21を形成するNi粒連鎖体21の平均直径Dは5nm以上、500nm以下の範囲とするのがよい。また、平均長さLは0.5μm以上、1000μm以下の範囲とするのがよい。また、上記平均長さLと平均径Dとの比は3以上とするのがよい。ただし、これら範囲外の寸法を持つものであってもよい。
【0042】
Ni粒連鎖体の表面酸化処理は、(i)気相法による熱処理酸化、(ii)電解酸化、(iii)化学酸化の3種類が好適な手法である。(ii)および(iii)は、ペーストに混ぜる前に、酸化層付きNi粒連鎖体とする場合に用いられる。(i)は大気中で500〜700℃にて1〜30分処理するのがよいが、とくに表面酸化処理をしないで、ペーストの焼成の際に形成される酸化層を表面酸化層21bとすることもできる。
(ii)では標準水素電極基準で3V程度に電位を印加し、陽極酸化することにより表面酸化を行うが、表面積に応じ電気量により酸化膜厚を制御できる特徴がある。しかし、大面積化した場合、均一に酸化膜をつけることは難しい手法である。(iii)では硝酸などの酸化剤を溶解した溶液に1〜5分程度浸漬することで表面酸化する。酸化膜厚は時間と温度、酸化剤の種類でコントロールできるが薬品の洗浄が手間となる。いずれの手法も好適であるが、(i)または(iii)によるのが好ましい。
【0043】
ガス分解複合体10の製品において、Ni粒連鎖体の望ましい酸化層の厚みは、1nm〜100nmであり、より好ましくは10nm〜50nmの範囲とする。ただし、この範囲外であってもかまわない。酸化層が薄すぎると触媒機能が不十分となる。また、わずかな還元雰囲気でもメタライズされてしまう恐れがある。逆に酸化層が厚すぎると触媒性は充分保たれるが、反面、界面での電子伝導性が損なわれ、発電性能が低下する。
【0044】
本実施の形態におけるガス分解複合体10は、実施の形態1のガス分解複合体と同じように用いて、同じような作用効果を得ることができる。さらに、筒状体であることを生かして、たとえば筒の内面側に分解対象のガス成分を流し、筒の外側に電気化学反応の相手方の気体を流すことができる。ただし、チューブは、立体網状金属体で形成されているので、両者はチューブに沿って進むにつれて混合することになる。混合することになっても、形式的にチューブの出口において、チューブ内面側を通ってきた気体と、チューブ外面側を通ってきた気体とを区別できる。これによって、チューブ出口での両側の気体の組成等を知ることにより、この後の、処理に有益である場合がある。
【0045】
(その他の実施の形態)
1.実施の形態では、NOxおよびアンモニアを分解することを主に説明したが、これらに限定する必要はない。相手方の気体との組み合わせにより、自発的に電気化学反応が進行する限り、アセトアルデヒドなどを分解対象にすることができる。また、分解対象のガス成分が複数あってもよい。
これに応じて、固体電解質を移動するイオンは、酸素イオンに限定されず、プロトン、リン酸イオンなど何でもよい。
2.電極(アノード、カソード)および触媒の材料には、ニッケル(Ni)、酸化層をもつNi粒連鎖体、銀粒子、および炭酸バリウム(BaCO3)、を用いる場合を例示したが、これらに限定されない。白金、パラジウムなどを用いてもよい。
3.製造方法については、分散めっき法または複合めっき法と、ペースト焼成法とを例示したが、これに限定されず、気相法を用いて製造してもよい。
4.加熱装置については図示しなかったが、本発明のガス分解複合体を効率よく稼働させる上で、加熱は非常に有益である。電気ヒーターに限らず、自動車の内燃機関の排熱なども有効に活用することができる。
【0046】
上記において、本発明の実施の形態について説明を行ったが、上記に開示された本発明の実施の形態は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれら発明の実施の形態に限定されない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明によれば、大掛かりな装置を用いずに、小型で高い分解効率および低圧力損失を備え、衝撃・振動に対する耐久性が高い、ガス分解複合体を得ることができる。とくに低い圧力損失で高能率の分解反応を遂行できる点で、他の追随を許さない。また、製造方法も多岐にわたり、経済性および要求される性能を考慮して適切な方法を採用することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 立体網状の金属体、1a 表面めっき層、1s 気孔、10 ガス分解複合体、20 反応部、21 カソード、21a Ni粒連鎖体、21b 酸化層、22 固体電解質、23 アノードまたは銀粒子、23a 銀粒子、23b 炭酸バリウム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス成分を電気化学反応によって分解するためのガス分解複合体であって、
前記ガス分解複合体の基体をなす多孔質金属と、
前記多孔質金属の表面に位置する、複数の粒が接続した反応部とを備え、
前記反応部は、前記電気化学反応のための、カソード、電解質およびアノードを構成する材料を含み、
前記多孔質金属が、等方的に連続する気孔を有する立体網状の金属体からなることを特徴とする、ガス分解複合体。
【請求項2】
前記立体網状の金属体が、すべて、めっき法で形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のガス分解複合体。
【請求項3】
前記立体網状の金属体が、めっき骨格部と、その骨格部に接して位置するめっき表層部とで形成され、前記反応部は該めっき表層部を接続層として、前記めっき骨格部上に位置していることを特徴とする、請求項1または2に記載のガス分解複合体。
【請求項4】
前記反応部は、焼成によって前記立体網状の金属体に接続されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のガス分解複合体。
【請求項5】
前記立体網状の金属体または前記めっき骨格部における気孔率が、0.6以上0.98以下であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のガス分解複合体。
【請求項6】
前記立体網状の金属体または前記めっき骨格部が、樹脂中に無数の泡を形成する発泡処理と、その泡を連続化させて開口する連続開口処理とを経て形成された当該樹脂に、めっきすることで形成されたものであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のガス分解複合体。
【請求項7】
前記樹脂にウレタンを用いた場合において、前記立体網状の金属体または前記めっき骨格部の、孔径をx(mm)、比表面積をy(m2/m3)とするとき、400≦(x−0.3)y、を満たすことを特徴とする、請求項6に記載のガス分解複合体。
【請求項8】
前記立体網状の金属体が、すべて、Niを主成分とする金属めっきで形成され、前記立体網状の金属体が、前記電気化学反応のカソード電極を兼ねることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載のガス分解複合体。
【請求項9】
前記反応部は、固体電解質のセラミックス粉、および少なくとも1種類の金属粉を含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載のガス分解複合体。
【請求項10】
ガス成分を電気化学反応によって分解するためのガス分解複合体を製造する方法であって、
等方的に連続する気孔を有する立体網状の金属の骨格体を準備する工程と、
前記電気化学反応のための、固体電解質粉および1種類または2種類以上の金属粉を準備する工程と、
前記骨格体にめっきするための金属めっき液を調合して、前記固体電解質粉および1種類または2種類以上の金属粉を、該金属めっき液に混合して撹拌する工程と、
前記混合撹拌された金属めっき液に前記骨格体を浸漬して、前記金属めっき液の金属と、前記固体電解質粉および1種類または2種類以上の金属粉と、からなるめっき層を、該骨格体に形成する工程とを備えることを特徴とする、ガス分解複合体の製造方法。
【請求項11】
前記固体電解質粉および1種類または2種類以上の金属粉を準備する工程において、焼成によって、該固体電解質に該1種類または2種類以上の金属粉を担持させることを特徴とする、請求項10に記載のガス分解複合体の製造方法。
【請求項12】
ガス成分を電気化学反応によって分解するためのガス分解複合体を製造する方法であって、
等方的に連続する気孔を有する立体網状の金属体を準備する工程と、
前記電気化学反応のための、固体電解質粉、および1種類または2種類以上の金属粉、を製造する工程と、
塗布用の溶媒を調合して、前記固体電解質粉および1種類または2種類以上の金属粉を、該塗布用の溶媒に混合して撹拌して塗布溶液を製造する工程と、
前記塗布溶液を前記立体網状の金属体に、塗布または含浸させて、次いで、焼成する工程を備えることを特徴とする、ガス分解複合体の製造方法。
【請求項1】
ガス成分を電気化学反応によって分解するためのガス分解複合体であって、
前記ガス分解複合体の基体をなす多孔質金属と、
前記多孔質金属の表面に位置する、複数の粒が接続した反応部とを備え、
前記反応部は、前記電気化学反応のための、カソード、電解質およびアノードを構成する材料を含み、
前記多孔質金属が、等方的に連続する気孔を有する立体網状の金属体からなることを特徴とする、ガス分解複合体。
【請求項2】
前記立体網状の金属体が、すべて、めっき法で形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のガス分解複合体。
【請求項3】
前記立体網状の金属体が、めっき骨格部と、その骨格部に接して位置するめっき表層部とで形成され、前記反応部は該めっき表層部を接続層として、前記めっき骨格部上に位置していることを特徴とする、請求項1または2に記載のガス分解複合体。
【請求項4】
前記反応部は、焼成によって前記立体網状の金属体に接続されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のガス分解複合体。
【請求項5】
前記立体網状の金属体または前記めっき骨格部における気孔率が、0.6以上0.98以下であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のガス分解複合体。
【請求項6】
前記立体網状の金属体または前記めっき骨格部が、樹脂中に無数の泡を形成する発泡処理と、その泡を連続化させて開口する連続開口処理とを経て形成された当該樹脂に、めっきすることで形成されたものであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のガス分解複合体。
【請求項7】
前記樹脂にウレタンを用いた場合において、前記立体網状の金属体または前記めっき骨格部の、孔径をx(mm)、比表面積をy(m2/m3)とするとき、400≦(x−0.3)y、を満たすことを特徴とする、請求項6に記載のガス分解複合体。
【請求項8】
前記立体網状の金属体が、すべて、Niを主成分とする金属めっきで形成され、前記立体網状の金属体が、前記電気化学反応のカソード電極を兼ねることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載のガス分解複合体。
【請求項9】
前記反応部は、固体電解質のセラミックス粉、および少なくとも1種類の金属粉を含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載のガス分解複合体。
【請求項10】
ガス成分を電気化学反応によって分解するためのガス分解複合体を製造する方法であって、
等方的に連続する気孔を有する立体網状の金属の骨格体を準備する工程と、
前記電気化学反応のための、固体電解質粉および1種類または2種類以上の金属粉を準備する工程と、
前記骨格体にめっきするための金属めっき液を調合して、前記固体電解質粉および1種類または2種類以上の金属粉を、該金属めっき液に混合して撹拌する工程と、
前記混合撹拌された金属めっき液に前記骨格体を浸漬して、前記金属めっき液の金属と、前記固体電解質粉および1種類または2種類以上の金属粉と、からなるめっき層を、該骨格体に形成する工程とを備えることを特徴とする、ガス分解複合体の製造方法。
【請求項11】
前記固体電解質粉および1種類または2種類以上の金属粉を準備する工程において、焼成によって、該固体電解質に該1種類または2種類以上の金属粉を担持させることを特徴とする、請求項10に記載のガス分解複合体の製造方法。
【請求項12】
ガス成分を電気化学反応によって分解するためのガス分解複合体を製造する方法であって、
等方的に連続する気孔を有する立体網状の金属体を準備する工程と、
前記電気化学反応のための、固体電解質粉、および1種類または2種類以上の金属粉、を製造する工程と、
塗布用の溶媒を調合して、前記固体電解質粉および1種類または2種類以上の金属粉を、該塗布用の溶媒に混合して撹拌して塗布溶液を製造する工程と、
前記塗布溶液を前記立体網状の金属体に、塗布または含浸させて、次いで、焼成する工程を備えることを特徴とする、ガス分解複合体の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−240568(P2010−240568A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−91554(P2009−91554)
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
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