説明

ガス分離および圧縮装置

ガス状混合物より反応ガスを分離するガス分離装置において、イオン膜により分けられた、吸着性の化合物もしくは溶媒が含浸された多孔質のアノードと、チャンバー内に設けられ且つ導電性の液体が含浸された多孔質のカソードと、前記アノードおよびカソードへ電力を供給する電源装置と、前記カソードに隣接するチャンバーに連通したガス状混合物の流入口と、前記流入口からのガスが前記カソードに接触するように前記チャンバーを通過させる流出口とを備え、前記反応ガスが前記ガス状混合物から前記吸着剤により吸着されて装置内に保持され、次いで前記保持されたガスは前記吸着性の化合物から脱離させられ、前記吸着もしくは脱離、あるいはその双方が前記各電極に電力を供給することにより促進されることを特徴とするガス分離装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、多孔質体におけるガス収着および離脱が電界により制御される装置に関するものである。また、この発明は、ガス分離、回収、冷却及びヒートポンプの用途に対するその装置の使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガス回収および分離技術は現代の産業界にとって不可欠なものである。酸素、窒素、希ガスアルゴン、クリプトンおよびキセノンを供給するため、世界中において数百万トンの規模で大気を低温蒸留により分離している。特定の用途において、使用時に酸素もしくは窒素を大気から分離する方が、低温で分離されたガスを輸送するより利便性が高く、かつ経済的である。上記の目的に対し、技術的に特有な二種類のシステムが開発されている。
【0003】
その方法の一つは、酸素分子を優先的に表面に吸着させることが可能な分子篩炭が収容された容器に空気を圧入する圧力スイング吸着法(PSA)である。制御放出により放出されたガスは、初期の段階では大気に比べ著しく多量に窒素を含有している。処理工程が終盤に近づくにつれ、放出されたガスは酸素を多く含むようになる。二つもしくはそれ以上のベッドを使用することにより、窒素もしくは酸素を基本的に連続的に発生させることが可能である。
【0004】
他の方法としては、窒素よりも酸素、二酸化炭素、および水蒸気に対してより高い透過性を有する微多孔膜を使用した方法がある。酸素は微細孔膜を通過し、チューブの端部からは純度の高い窒素が排出される。同様に、化石燃料発電所からの燃料ガス中にある窒素から二酸化炭素を分離させることができる。これにより、二酸化炭素を大気中に放出して人間の活動による地球温暖化を助長するよりも、地層中に貯留するために二酸化炭素の圧縮を容易にすることができる。
【0005】
その性質上吸着剤もしくは膜に依存する拡散分離法では、低温蒸留により可能となる高度な分離は達成し得ない。流量が多いほど分離の質は低下するからである。さらに、それらの方法では運転のために外部のガス圧縮に依存しているためガスを圧縮することができない。
【0006】
圧力スイング吸着法に替わる方法として、優先的に吸着される成分を除去するためにガス状混合物を吸着ベッドに通過させる温度スイング吸着法(TSA)がある。ベッドが飽和状態の場合、混合流は停止させられ、ベッドは吸着成分を脱離させるために加熱される。
【0007】
しかしながら、そのような技術は吸着剤を含有したベッドの冷却および加熱が必要であるため、エネルギー効率は比較的悪いものであった。導電性の炭素繊維複合材篩(CFCMS)のベッドが二酸化炭素を吸着させるために使用されてきた。脱離は、吸着剤を加熱するために電流を流すことにより実行され、この方法は「電気スイング吸着法」(ESA)と称される。また、圧力スイング吸着法と温度スイング吸着法を組み合わせた技術(PTSA)も開示されている。
【0008】
上述の技術は、固体にガスが吸着されて分離されることに依存している。様々な種類の市販の液体アミン混合物によるCOおよびHSの吸着は天然ガスの浄化技術として確立している。この技術は、発電所の燃料から生じるCOを除去する方法として提唱されてきた。アミンを再生利するようにアミンからCOを分離するためには大量の熱エネルギーが必要となる。アミンが強力かつ効率的にCOを吸収するほど、より多くのエネルギーがその後の分離のために必要となる。発電所の燃料ガス自体は使用可能な程度に低温加熱されるが、それによる後の劣化に伴い発電の用途には適さなくなる。更なる問題としてはガスは大気圧に近い圧力で回収されるため、貯留しやすいように圧縮しなければならないことである。すなわち、本技術にはエネルギーが必要とされるため、発電所全体としての効率が低下させられる。
【0009】
また、ガス分離技術は、潜水艦、軍事用車両、および有人宇宙船にとって重要なものである。例えば、潜水艦において、二酸化炭素は過酸化ナトリウムとの反応により除去され、同時に呼吸のためにより多くの酸素が放出される。閉鎖循環式麻酔において、二酸化炭素は再循環された呼吸ガスをソーダ石灰に通過させることにより除去される。これらの技術には、本質的に不可逆な化学反応が伴う。
【0010】
本発明により、ガス状混合物より反応ガスを分離するガス分離装置であって、イオン膜により分けられた、吸着性の化合物もしくは溶媒が含浸された多孔質のアノードと、チャンバー内に設けられ且つ導電性の液体が含浸された多孔質のカソードと、アノードおよびカソードへ電力を供給する電源装置と、前記カソードに隣接するチャンバーに連通したガス状混合物の流入口と、前記流入口からのガスが前記カソードに接触するように前記チャンバーを通過させる流出口とを備え、前記反応ガスが前記ガス状混合物から前記吸着剤により吸着されて装置内に保持され、次いで前記保持されたガスは前記吸着性の化合物から脱離させられ、前記吸着もしくは脱離、あるいはその双方が前記各電極に電力を供給することにより促進されることを特徴とするガス分離装置、が提供される。
【0011】
本発明の実施例のうちの一つにおいて、前記反応ガスは前記電極が荷電されている場合に吸着され、前記反応ガスは荷電が除かれた場合に脱離させられる。これにより、前記反応ガスを濃縮されたガス流として装置から除去することができる。
【0012】
他の実施例において、前記ガスは前記電極が荷電されていない場合に吸着され、前記ガスは前記電極が荷電されている場合に脱離させられる。これにより、前記反応ガスを濃縮されたガス流として装置から除去することができる。
【0013】
さらに他の実施例において、前記ガスは前記電極が第1の極性に荷電される場合に吸着され、前記ガスは前記電極が前記第1の極性とは逆の極性に荷電される場合に脱離させられる。これにより、前記反応ガスを濃縮されたガス流として装置から除去することができる。
【0014】
前記反応ガスは二酸化炭素もしくはアンモニアであることが好ましい。例えば、前記反応ガスは発電用プラントや発電所から排出されるような燃焼排ガスであってもよい。
【0015】
前記反応ガスが二酸化炭素の場合、吸着剤としての化合物はアミン、スルホン酸もしくはカルボン酸のうちのいずれかであることが好ましい。オリゴマーもしくはポリマーアミン、スルホン酸もしくはカルボン酸が好ましい。二官能性アミンスルホン酸もしくは二官能性アミンカルボン酸、特に2−メタンスルホン酸が使用可能である。
【0016】
前記反応ガスがアンモニアである場合、前記溶媒もしくは吸着性の化合物は、例えば塩酸もしくはその他の鉱酸のような水または酸性水溶液のいずれかであることが好ましい。
【0017】
ガス分離装置において、イオン膜はイオン性ポリマーであることが好ましい。イオン性ポリマーは、スルホン化ポリスチレン、スルホン化ポリエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルスルホン、ナフィオン(商標)およびフッ素化ポリマーのうちの何れかであることが好ましい。
【0018】
各電極は、例えば、エアロゲル、ナノチューブ、オープンセルスポンジ、もしくは織布繊維などの多孔質炭素で形成されていてもよい。電極は多孔質シートの構造を有していてもよい。あるいは、円筒状もしくはチューブ状の構成を採用してもよい。
【0019】
本願は、特にプロトン(水素イオン)をアニオン性膜に通過させて移動させることにより、もしくは水酸基イオンをカチオン膜に通過させて移動させることにより、反応ガスの可逆的吸着もしくは脱離を制御するためにスーパーキャパシタのようなシステムにおいて電界を使用し、それにより、これまで説明した技術に含まれる制限事項を克服することを目的としている。電子移動に伴う電極反応は充分に低い電位差で稼動させることにより回避可能なため、本装置においてはファラデーのプロセス以外のプロセスのみを使用することが好ましい。本装置は3つのモードのうちのいずれかにより稼動することができる。第1のモードにおいて、吸着は電界を印加することにより促進され、脱離は吸着および脱離状態における前記ガスの化学ポテンシャル差により電界が除去された場合に生じる。第2のモードにおいて、ガスは吸着状態と脱離状態とにおけるガスの化学ポテンシャル差により、電界がない状態で気相状態から吸着され、脱離は電界が印加された場合に生じる。第3のモードにおいて、ガスの吸着は一方向に電界を印加することにより向上させられ、脱離は前記電界を反転することにより向上させられる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本願は、実施例により詳細に説明されるが、添付の図面により制限されるものではない。
図1は、反応ガスを分離するために使用される本発明の装置を示す図である。
図2は、大気からアンモニアを分離するために使用される装置を示す図である。
図3は、冷却もしくは加熱のためヒートポンプ用スイングサイクルユニットを形成するために連結された二つのユニットを示す図である。
図4は、本発明の他の実施例を示す図である。
図5は、複数のユニットが並列に配置された実施例を示す図である。
図6は、複数のステージによる構成を示す図である。
図7から図9は、COを吸着するためのスイングベッドの構成を示す図である。
【0021】
図1に示す本発明の第1の実施例において、本装置は非反応性ガスから反応ガスを分離するために使用される。例えば、二酸化炭素を窒素もしくはメタンなどのような他のガスから分離することができる。二つの電極1および2は、導電性多孔質炭素シートを備えてもよい。前記シートは燃料電池およびスーパーキャパシタのようなシステムに用いられるものと同様のものであってよい。一方の電極1は水を含浸させ、他方の電極2は高分子量のアミン、好ましくはポリマーアミンを含浸させている。膜は、電場勾配の影響下において、特に水素イオンHのようなプラスに帯電したカチオンを通過させる陰性基を担持している。好ましくは、前記膜はナフィオン(商標)、スルホン化ポリスチレン、スルホン化ポリエーテルおよびエーテルケトン(例えばPEEK(商標))等のフッ素系膜を含む。このような構成により水中におけるCOの溶解性が向上する。セルから放電させることにより、すなわち前記電極から電荷を取り除くことにより、COの溶解度は低下し、それによりCOは濃度の高いガス流となってセルから脱気される。モード1において、本装置は上記に説明したように作動する。
【0022】
前記セルはコンデンサとして、厳密にはスーパーキャパシタとして機能する。コンデンサは電気エネルギーを蓄積し、また放出するため、COの吸着の間にセルを荷電するための入力エネルギーの大部分は脱離中に効率的に回収され、第2のセルの吸着動作のための電力として使用される。このような工程は、「容量スイング吸着法」(CSA)と称することができる。COの吸着および脱離を同時に行えるようにするため、並列に稼動させられる二つもしくはそれ以上のベッドにより構成されることが好ましい。
【0023】
電極反応は次式により表される。
アノード
CO(g)⇔CO(s)
CO(s)+HO⇔HCO
CO⇔HCO+H
重炭酸塩アニオン、HCOは、プラスに帯電したアノードに引きつけられる一方、水素イオンHは、アニオン性膜を通過することによりマイナスに帯電したカソードに引きつけられることができる。
カソード
+RN⇔RNH
アノードにおける平衡は、水素イオンを除去することにより保たれる。これにより、COの溶解量を向上させることができる。
【0024】
前記電極間の電位は、電極反応を生じさせるために必要な電位よりも低い。通常、前記電極に水が存在している場合、電位は約0.8から1vの範囲内にある。電極反応によりエネルギーは吸収され、不可逆的に新たな化学種を形成することになる。しかしながら、ガス分離が、電極がプロピレン・カーボネートのような非水性の溶媒により湿潤されているような、実質的に無水のシステムにおいて実行される場合、電位を約2ボルトまで、好ましくは約2.7ボルトまで上昇させることができる。
【0025】
本システムのCOを溶解する性能は、多孔質炭素からなる電極の表面積によって決まり、限界電位に達する前に電気二重層が形成される範囲にまで及ぶ。前記炭素の表面積が大きいほど、COを収容する容量も大きくなる。導電カーボンエアロゲル、カーボン・ナノチューブもしくはCFCMSのいずれかが電極の素材として好ましい。
【0026】
他の実施例において、本装置はガス状混合物からアンモニアを分離するために使用される。図2は大気からアンモニアを取り除くように構成された装置を示す。二つの多孔質電極11および12は、膜18を挟んだ両側に配置されており、それらはケーシング13内に収容されている。流入管14および流出管15によりガス状混合物が電極11に隣接するチャンバー16に供給される。第2のチャンバー17は電極12に隣接して設けられている。前記電極11および12に電位差を形成するよう導線19が設けられている。
【0027】
本装置の使用下において、ガス状混合物はセルに注入され、アンモニアは水中で溶解される。アンモニアの溶解性は、前記電極11および12の間の電位差により、水酸基イオンを前記膜18を介して移動させることにより向上されられる。前記セルがアンモニアで飽和状態にある場合、ガス状混合物の流動が止められ、電位差は解消される。この場合、水酸基イオンは、酸を含浸した電極から水を含浸した電極へ前記膜を介して還流し、気相のアンモニアを遊離させる。しかしながら、前記各電極が荷電されていない場合でも相当量のアンモニアが溶液中に残留する。溶解を促進するため、逆電位を前記セルに印加しても良い。モード3において、前記セルは基本的に上記に説明したように機能する。前記膜を介しての放散が抑制されるほど分子が大きい場合にはどのような酸を使用しても良い。オリゴマー酸、ポリマースルホン酸、及びカルボン酸が好ましい。酸としても塩基としても機能することができるタウリン(2−アミノエタンスルホン酸)のような二官能性のアミノスルホン酸及びアミノカルボン酸が特に好ましい。
【0028】
溶解中の電極反応は次式により表される。
カソード
NH(g)⇔NH(s)
NH(s)+HO⇔NH+OH
水酸基イオンはカチオン性膜を通過してアノードへ移動する。
アノード
HO+HNCHCHSOH⇔HO+HNCHCHSO
逆電位が印加された場合、以下の電極反応が生じる。
カソード
O+HNCHCHSOH⇔HO+HNCHCHSO
アノード
HO+NH⇔HO+NH(s)⇔NH(g)
【0029】
更に他の実施例として、冷却およびヒートポンプのためのスイングサイクルユニットを形成するために二つもしくはそれ以上のセルを連結してもよい。第1のセル21および第2のセル22はガス導管23により連結されている。熱が一方のセルにより吸収され、他方のセルからヒートポンプにより放熱されるよう、各電極25,26,27,28を交互に荷電し放電させる電源24が設けられている。吸着中にはCOの反応による熱が生じるため前記セルの温度が上昇する。脱離中には前記熱は吸収される。図3に示す本装置において、前記第1のセル21は加熱され、前記第2のセル22は冷却される。前記第1のセル21がCOにより飽和した場合、電力パッケージは前記第1のセル21を放電させ、前記第2のセル22を荷電する。その結果、ガス流は反転し、前記第1のセル21は熱を吸収し前記第2のセル22は放熱する。
【0030】
図4に示す更に他の実施例において、一方の電極31はアミンを含浸しており、他方の電極32はスルホン酸を含浸している。この実施例において、チャンバー35から流入および流出するガス流を制御するため、バルブ33および34が設けられている。このように構成された本装置の機能は往復型、もしくは回転翼型等の機械的な容積式コンプレッサと同様である。これは、吸着は気相状態および吸着状態におけるCOの化学的ポテンシャル差のみにより促進され、一方脱離は印加された電位により促進されるため、「電気脱離コンプレッサ」(EDC)と称することができる。以下に説明するEDCの操作ステップは、COの排出が終了した直後であって、電極間の電位が取り除かれた状態から開始される。
【0031】
ステップ1:コンプレッサ内の残留COがアミンとの反応により電極Aに吸着する。これにより、吐出用バルブを閉鎖させ、吸入用バルブを解放させる圧が減少する(これは、往復式コンプレッサの吸入ストロークの開始時と同様であると思われる)。
【0032】
ステップ2:低圧のCOが吸入用バルブを介して進入し、アミンにより吸着される。これは発熱反応である。このとき、本工程はほぼ等エントロピー的に実行され、一体化された電極膜の熱質量により温度上昇が抑制される(これは往復式コンプレッサの吸入ストロークと同様である)。
【0033】
ステップ3:吸着が完了した時点で、0.8〜1Vの電位差が各電極に印加される(Aはマイナス、Bはプラス)。水酸基イオンは膜を介して電極AからCOの吸収が生じる電極Bへ移動させられる。圧力が上昇するため、前記吸入用バルブが閉鎖され、前記吐出用バルブが解放される。それにより回路の高圧側へガスが放出される(これは、往復式コンプレッサの圧縮ストロークと同様である)。COの脱離はほぼ等エントロピー的であると考えられるため、吸着段階ですでに加熱されているEDCの熱質量により脱離の熱が供給される。
【0034】
ステップ4:各電極のエネルギーは適宜の電気回路により回収され、キャパシタ・バンクに蓄えられるか、脱離が行われている第2のEDCユニットへ送られる。COの圧力に対して本装置を荷電するために必要なエネルギーと、COの背圧が無い場合における放電中に回収されるエネルギーとの差は、本装置を稼動させるために必要になるエネルギーである。
【0035】
基本的に本装置は上述のモード2で稼動される。
【0036】
EDCは、従来の機械式の容積式コンプレッサに対して以下の利点を有する。
【0037】
バルブを除いて可動部品が無いため、摩擦などの機械的損失が無い。また、サイクル時間が0.1秒以下である往復式コンプレッサと比較して、通常、サイクル時間が0.5秒から数十秒と長いため、バルブの耐久性が高い。
【0038】
潤滑を必要としないため、回路内のその他の部品における熱交換による弊害(return problem)や悪影響が無い。
【0039】
前記EDCはオイルを使用しないため、冷却装置もしくはヒートポンプシステムの運転に特に好適である。
【0040】
形状および配置に幾何学的制限が少ないため、本装置は設置するスペースに合わせて大径の円筒状であってもよく、もしくは薄型の長方形であってもよい。また、排油を考慮する必要が無いため、装置の向きを変更することもできる。
【0041】
図5に示すように、複数のユニット41を並列に配置することも可能である。この構成の利点としては、容量を低下させるために各シリンダーをバイパスにより接続する場合、使用される前記ユニットの数を選択することにより、往復式機械における機械損失を発生させることなく、冷却ユニットの容量を変更可能なことである。また、すでに設置されている場合に、より大きな容量が必要になった場合であってもEDCコンプレッサユニットの数を増やすことが可能である。さらに、図4に示す前記ユニットの動作を調整(phased)することができ、それにより、機械式のマルチシリンダー往復式コンプレッサの動作と同様に、圧縮COのほぼ一定の供給が実現する。良好なエネルギー効率を確保するため、電力はCOを吸着しているユニットからCOを脱離しているユニットへ輸送される。
【0042】
各EDCの有する容量は、印加するポテンシャルの最大値、および/もしくは印加されるポテンシャル量を変更することにより制御することができる。前者は往復式コンプレッサのストロークを変更することに対応し、その実行は容易ではなく、また後者はその速度を変更することに対応する。
【0043】
図6に示すように、本発明に係るコンプレッサ51は単独のユニットによる圧力差よりも大きな圧力差を提供できるよう直列にして稼動させることにより、容易に多段化することができる。中間冷却を採用することにより本システムのさらなる向上が可能である。
【0044】
直列もしくは並列に接続されたコンプレッサのいずれも熱交換可能に配置することができ、それにより一つはCOを吸着によりその温度が上昇し、隣接するユニットは脱離の結果冷却される。
【0045】
本発明に係るコンプレッサの動作はほぼ等エントロピー的であり、すなわち機械式コンプレッサのものと同様である。略等温の環境下においてこのようなコンプレッサを稼動させることにより、例えば容量が増大するなどの利点が生じる。通常、冷却および空調に用いられる従来の機械式コンプレッサでは圧縮熱を除去することは非常に困難である。一方、EDCを使用することにより、これは容易に実行できる。本装置は、優れた熱交換特性を有するフィン状の平板として構成することにより、等温操作向けに設計してもよい。
【0046】
図7に示すさらに他の実施例のように、一方の電極において吸着熱を利用して隣接する電極に脱離熱を供給することにより、エネルギー効率を向上させることが出来る。外側電極A1およびA2は、例えばアミンなどを含浸した高表面積炭素である。それらはアニオン性膜M1およびM2により内側電極Bと分けられている。電極Bは、例えばスルホン酸を含浸した高表面積黒鉛であるか、もしくは多孔質炭素の電極である。電界を印加する場合において、アミンおよびスルホン酸性物質は本質的に固定されてることが望ましい。図7ないし9は燃料ガスからCOを除去するために使用される装置を示す。この装置は天然ガスから、あるいは潜水艦もしくは宇宙船内の雰囲気からCOを除去する用途、ないしはそれらと同様の用途にも使用可能である。
【0047】
電極構成体におけるポテンシャルを変化させることにより、COの吸着/脱離のためのスイングベッドとして稼動させることができる。図7において、燃料ガスからのCOは、従来のアミン洗浄プラントに使用されるような化学物質と同タイプの物質を使用して、前記電極A1におけるアミンにより燃料ガスから吸着される。同時に、水酸基イオンをアニオン性膜を介して前記電極BからA2へ移動させるため、ポテンシャルが前記電極BおよびA2間に印加される。前記電極A2において、水酸基イオンはCOを放出するために先の吸着により生じた重炭酸アニオン(HCO)にプロトンを付加する。電極B/膜/電極A2によりスーパーキャパシタを構成するものと考えられる。これは最大1ボルトまでの荷電可能である。それ以上の電圧では不可逆電極反応を生じさせるおそれがある。図8において、前記電極BおよびA2間からはポテンシャルが取り除かれている。すなわち、前記コンデンサから放電され、前記膜M2を介して前記電極A2からBへ水酸基イオンが移動させられ、電気的中性がもたらされる。図9において、ポテンシャルが前記電極BおよびA1間に印加され、それにより前記電極A1がCOを放出し前記電極A2がそれを吸着する。スーパーキャパシタである電極A1/膜M1/電極Bから放電させ、スーパーキャパシタである電極B/膜M2/電極A2に再荷電することにより、本システムは図7に示す状態へと戻される。
【0048】
本実施例はガス流からCOを除去するための既存の技術に対して顕著な利点を有する。また、一体の電極構成体において異なる電極によりCOを同時に吸着および脱離することにより、吸着熱および脱離熱を互いにバランスさせることができる。これにより、優れたエネルギー効率が得られると共に、従来のアミン吸着システムに必要であった、複数の熱交換器を設けるためのコストを抑制することができる。同様に、セルを荷電することに関連する電気エネルギーの大部分は、第2のセルの荷電をアシストするための放電用セルを使用することにより回収することができる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス状混合物より反応ガスを分離するガス分離装置において、
イオン膜により分けられた、吸着姓の化合物もしくは溶媒が含浸された多孔質のアノードと、チャンバー内に設けられ且つ導電性の液体が含浸された多孔質のカソードと、
前記アノードおよびカソードへ電力を供給する電源装置と、
前記カソードに隣接するチャンバーに連通したガス状混合物の流入口と、
前記流入口からのガスが前記カソードに接触するように前記チャンバーを通過させる流出口と、
前記反応ガスが前記ガス状混合物から前記吸着性の化合物により吸着されて前記装置内に保持され、次いで前記保持されたガスは前記吸着性の化合物から脱離させられ、
前記吸着もしくは脱離、あるいはその双方が前記各電極に電力を供給することにより促進されることを特徴とするガス分離装置。
【請求項2】
前記反応ガスは前記電極が荷電されている場合に吸着され、前記反応ガスは前記電極が放電させられている場合に脱離させられることを特徴とする請求項1に記載のガス分離装置。
【請求項3】
前記反応ガスは前記電極が荷電されていない場合に吸着され、前記反応ガスは前記電極が荷電されている場合に脱離させられることを特徴とする請求項1に記載のガス分離装置。
【請求項4】
前記反応ガスは前記電極が第1の極性に荷電される場合に吸着され、前記反応ガスは前記電極が前記第1の極性とは逆の極性に荷電される場合に脱離させられることを特徴とする請求項1に記載のガス分離装置。
【請求項5】
前記吸着性の化合物は、アミン、スルホン酸もしくはカルボン酸、およびそれらの混合物のグループから選択されること、もしくは前記溶媒は、水もしくは酸性水溶液であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のガス分離装置。
【請求項6】
前記吸着性の化合物は、オリゴマーアミンもしくはポリマーアミン、スルホン酸もしくはカルボン酸であることを特徴とする請求項5に記載のガス分離装置。
【請求項7】
前記吸着性の化合物が二官能性アミンスルホン酸もしくは二官能性アミンカルボン酸であることを特徴とする請求項5に記載のガス分離装置。
【請求項8】
前記吸収剤である化合物は、2−メタンスルホン酸であることを特徴とする請求項7に記載のガス分離装置。
【請求項9】
前記イオン膜は、イオン性ポリマーを含むことを特徴とする請求項1から8のいずかに記載のガス分離装置。
【請求項10】
前記イオン膜は、スルホン化ポリスチレン、スルホン化ポリエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルスルホン、ナフィオンおよびフッ素化ポリマーのグループから選択されることを特徴とする請求項9に記載のガス分離装置。
【請求項11】
前記反応ガスは、二酸化炭素であることを特徴とする請求項1から10に記載のガス分離装置。
【請求項12】
前記反応ガスは、燃焼煙道からの排気であることを特徴とする請求項11に記載のガス分離装置。
【請求項13】
前記反応ガスがアンモニアであることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載のガス分離装置。
【請求項14】
前記カソードに水が含浸されていることを特徴とする請求項1から13のいずれかに記載のガス分離装置。
【請求項15】
ガス吸着時の電極間の電位は、約0.8〜1Vであることを特徴とする請求項1から14に記載のガス分離装置。
【請求項16】
前記各電極は、多孔質炭素により構成されていることを特徴とする請求項1から15に記載のガス分離装置。
【請求項17】
前記各電極は、カーボンエアロゲルもしくは高表面積グラファイトにより構成されていることを特徴とする請求項16に記載のガス分離装置。
【請求項18】
請求項1から17の何れかに記載されている複数の装置をスイングサイクルをなす配列に組み合わせてなることを特徴とするガス分離装置もしくは圧縮装置。
【請求項19】
同一の化合物が含浸されたアノードを有することを特徴とする請求項18に記載のガス分離装置もしくは圧縮装置。
【請求項20】
それぞれ異なる化合物が含浸されたアノードを有することを特徴とする請求項18に記載のガス分離装置もしくは圧縮装置。
【請求項21】
第1のアノードにアミンが含浸され、第2のアノードにスルホン酸が含浸されることを特徴とする請求項20に記載のガス分離装置もしくは圧縮装置。

【公表番号】特表2008−528285(P2008−528285A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−553704(P2007−553704)
【出願日】平成18年2月3日(2006.2.3)
【国際出願番号】PCT/GB2006/000402
【国際公開番号】WO2006/082436
【国際公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(507248468)サーマル エナジー システムズ リミテッド (1)
【Fターム(参考)】