説明

ガス吸着シート

【課題】大気中のVOCを効率的かつ長期に渡り除去することが可能でかつ圧力損失の小さいガス吸着シートを提供せんとするものである。
【解決手段】2枚以上の通気性シートがその間に吸着剤粒子(A)を挟み、吸着剤粒子(A)と接する通気性シートの少なくとも一枚が、吸着剤粒子(A)と接する側の面に吸着剤粒子(B)を担持してなることを特徴とするガス吸着シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアフィルター濾材として有用なガス吸着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、揮発性有機化合物の吸入による所謂シックハウス症候群、シックビル症候群などの神経系のアレルギー症状の発生が増加している。すなわち、建材に使用されている接着剤や樹脂から揮散される揮発性有機化合物(以下、VOCと略す)が居住空間に長期間にわたり高濃度で残留するため、その空間で生活すると結果的に多量の化学物質を体内に取り込むことになり、化学物質過敏症になる場合がある。シックハウス症候群等の予防、治療には、体内に取り込むVOCの総量を減少させることが重要である。また、この問題は建物に限られず、気密性が高く、内装材の固定等に接着剤や樹脂が多用されている車両にも言えることである。
【0003】
このため、ガス吸着を目的としたフィルターが種々提案されている。これらは、濾材に固定化される吸着剤の吸着機能から分類すると、化学結合型機構によるもの、物理的吸着機構によるものおよび触媒分解機構によるものに大別される。このうち物理的吸着機構によるものは、活性炭等の多孔質体の表面上の物理的な吸着機構を利用するものである。この物理的吸着機構は化学的吸着機構に比較すると、非常に幅広いガスに対して吸着効果を示し、かつ優れた吸着速度を有する。
【0004】
物理的吸着機構によるガス吸着フィルターとして例えば、2枚の基材シート間に活性炭などの吸着剤を挟み込んだ脱臭シートが開示されている(例えば、特許文献1、2参照)。しかしながら、この方法で十分な脱臭性能(脱臭効率・寿命)を得るためには、吸着剤をたくさん挟み込む必要がある。そのため、脱臭性能を実用レベルにしようとすると圧力損失が極めて高くなり、空気が通気するフィルター用途では実用的でなくなるという問題点があった。
【0005】
また、特許文献3および4には、不織布などの基材へ吸着剤を塗工や含浸によって担持する方法が開示されている。しかしこの方法では、基材へ吸着剤を添着させているため過度の吸着剤の添着は基材の圧力損失を著しく低下させフィルター用途としては実用レベルにならない。また、圧力損失を優先させると、基材に添着出来る吸着剤量が制限されてしまい、実用レベルの脱臭性能を有するだけの吸着剤を添着出来ないという問題点があった。
【特許文献1】特開昭61−119269号公報
【特許文献2】特開2004−358389号公報
【特許文献3】特開2000−279505号公報
【特許文献4】特開2005−169382号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる従来技術の欠点を解消し、大気中のVOCを効率的かつ長期に渡り除去することが可能でかつ圧力損失の小さいガス吸着シートを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明は、2枚以上の通気性シートがその間に吸着剤粒子(A)を挟み、吸着剤粒子(A)と接する通気性シートの少なくとも一枚が、吸着剤粒子(A)と接する側の面に吸着剤粒子(B)を担持してなることを特徴とするガス吸着シートである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、大気中のVOCを効率的かつ長期に渡り除去することが可能でかつ圧力損失の小さい脱臭シートを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のガス吸着シートは、2枚以上の通気性シートがその間に吸着剤粒子(A)を挟み、吸着剤粒子(A)と接する通気性シートの少なくとも一枚が、吸着剤粒子(A)と接する側の面に吸着剤粒子(B)を担持してなることが重要である。かかる態様とすることにより、吸着剤粒子(A)の層の吸着効率と吸着剤粒子(B)を担持した通気性シートの吸着効率との理論的な計算値を越える性能を得ることができる。さらには、吸着剤粒子(B)の平均粒径が吸着剤粒子(A)の平均粒径よりも小さいことが好ましい。
【0010】
このメカニズムは、定かではないが以下のように推測される。
【0011】
吸着剤粒子(A)の層と吸着剤粒子(B)が担持された通気性シートとが接触している界面において、吸着剤粒子(B)の粒子同士の隙間を埋める形で吸着剤粒子(A)が配置されることにより吸着剤粒子が効率良く配置され、吸着対象ガスが吸着剤に確実に吸着される。また、粒径の異なる吸着剤粒子同士を単純に混ぜた場合には、面上(吸着剤層と通気性シートとの界面)で両粒子が効率良く配置することができないかまたは粒径の大きい吸着剤粒子の隙間を粒径の小さい吸着剤粒子が詰まらせて、圧力損失が上昇してしまうが、本発明においては吸着剤粒子(B)が通気性シートに担持されることで、面上(吸着剤粒子(A)の層と吸着剤粒子(B)が担持された通気性シートとが接触している界面)で吸着剤粒子(A)と吸着剤粒子(B)とが効率良く配置され、かつ、吸着剤粒子(A)の層内においては十分な隙間、ひいては十分な流量を確保することができる。
【0012】
上述した吸着剤粒子(A)と吸着剤粒子(B)との効率良い配置は、特に複雑な操作をせずとも、吸着剤粒子(B)を担持させた通気性シート上に、吸着剤粒子(A)を自然落下させることで、吸着剤粒子(A)が出来るだけ安定に落ち着こうとして、達成される。従って、かかる本発明の特徴は、生産性の点からも優れている。また、吸着剤粒子(A)と吸着剤粒子(B)とが効率良く安定して配置されるので、目付ムラも小さく、品質上も優れている。
【0013】
吸着剤粒子(A)および吸着剤粒子(B)としては、活性炭、活性炭素繊維、天然もしくは合成ゼオライト、活性アルミナ、活性白土、セピオライト、酸化鉄などの鉄系化合物、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、シリカ、シリカ−酸化亜鉛複合物、シリカ−アルミナ−酸化亜鉛複合物、複合フィロケイ酸塩、イオン交換樹脂、あるいはこれらの混合物などが挙げられる。特に、活性炭は非常に幅広いガスに対して吸着効果を示し、かつ優れた吸着速度を有することから好ましい。
【0014】
吸着剤粒子(A)および吸着剤粒子(B)は、上記に挙げた吸着剤粒子に薬品を添着処理を施したものであることも好ましい。例えば、酸性、塩基性ガスに対する吸着性能を向上させることを目的に、エタノールアミン、ポリエチレンイミン、アニリン、ヒドラジン等のアミン系薬剤や、NaOH、リン酸グアニジン等のアルカリ成分を吸着剤粒子に担持もしくは添着させることにより、アルデヒド系ガス、NO、SO、硫黄化合物、酢酸等の酸性ガスに対する吸着性能を向上させることができる。また、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸等の酸性薬剤を吸着剤粒子に担持もしくは添着させることにより、アンモニア、メチルアミン、トリメチルアミン等の塩基性ガスに対する吸着性能を向上させることができる。
【0015】
吸着剤粒子(A)の平均粒径としては、50〜700μmが好ましく、より好ましくは150〜500μmである。50μm以上とすることで、吸着剤粒子(A)が通気性シートから抜け出てきてしまうことを防ぐことが出来る。また、通気性シートの目を細かくしたり、接着剤等を多く使用したりする必要性がなくなり圧力損失の増大を防ぐことが出来る。また、700μm以下、特に500μm以下にすることで、ガス吸着シートの厚みを抑え、プリーツ状フィルター等にしたときに、濾材厚みに帰因するフィルター圧損の上昇を抑えることができる。また、プリーツ加工などの後加工性にも優れる。
【0016】
吸着剤粒子(B)の平均粒径は、0.1〜100μmが好ましく、より好ましくは5〜40μmである。100μm以下とすることで、処理エアとの接触効率を上げることができるとともに、繊維表面に均一に担持させることができる。また0.1μm以上とすることで、繊維表面への担持に使用するバインダー樹脂に吸着剤が埋没してしまうのを防ぐことができる。特に、平均粒径を5〜40μmにすることによって、プリーツ加工などのフィルター成形加工時に活性炭の脱落や集塵層との接触による破れなどの問題の発生を抑えることができる。
【0017】
本発明における平均粒径は、JIS K 1474:2007 6.4項記載の50%粒径により表す。
【0018】
さらに、低圧損、脱臭性能の有効発現性のためには、吸着剤の分布ムラを小さくすることも好ましい。
【0019】
本発明のガス吸着シートは、2枚以上の通気性シートが吸着剤粒子(A)をその間に挟んでなる。そうすることで、吸着剤粒子(A)と処理対象との接触を確保しつつ、ガス吸着シート中に吸着剤粒子(A)を保持することができる。
【0020】
通気性シートとしては、織布、不織布、各種の紙、ネット、ハニカム、フォーム、スポンジ、フェルト、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム等の樹脂フィルム、薄板、金属箔などが挙げられる。これらの内、フィルム、薄板および金属箔等の通気性に乏しいシートは、適度な大きさの穴をあけて通気性を付与または向上させも良い。中でも、坪量、通気性を制御し易く、加工性にも優れている点から、不織布が特に好ましい。
【0021】
不織布を構成する繊維としては、ポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアルキレンパラオキシベンゾエート系繊維、ポリウレタン系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリ塩化ビニリデン系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリアクリロニトリル系繊維、ポリオレフィン系繊維、フェノール系繊維などの合成繊維や、ガラス繊維、金属繊維、アルミナ繊維、活性炭素繊維などの無機繊維、木材パルプ、麻パルプ、コットンリンターパルプなどの天然繊維や、再生繊維等を挙げることができる。また、これらの繊維に親水性や難燃性などの機能を付与して用いてもよい。
【0022】
不織布の製造方法としては、目的・用途に応じて、湿式抄紙法や乾式法を用いることが出来る。特に湿式抄紙法は、乾式法にくらべ繊維を分散させてから抄紙するため、不織布の目開きのバラツキが少なくひいては効率的な脱臭が可能な不織布を製造できるので好ましい。
【0023】
通気性シートの目付けとしては、10〜500g/mが好ましく、より好ましくは30〜200g/mである。目付けを10g/m以上とすることで、吸着剤を担持するための加工に耐える十分な強度が得られ、エアを通気させた際にフィルター構造を維持するのに必要な剛性が得られる。また目付けを200g/m以下とすることで、通気性シートの内部まで吸着剤を均一に担持することができ、プリーツ形状やハニカム形状に二次加工する際の取り扱い性の面でも好ましい。
【0024】
吸着材粒子(A)の目付としては、50〜500g/mが好ましく、より好ましくは100〜300g/mである。50g/m以上とすることで脱臭性能向上の実効を得ることができる。また、500g/m以下とすることで、ガス吸着シートの厚みが過度に厚くならず、加工性が良くなりまた圧力損失を実用レベルに抑えることができる。特に、100〜300g/mにすると吸着剤がまんべんなくシート状に散布され、また吸着剤粒子(A)の厚み方向への過度の重なりも抑制されるため、ガス吸着シートの圧力損失の増大を抑えることが出来、脱臭効率も高い。
【0025】
吸着剤粒子(A)同士および吸着剤粒子(A)と通気性シートとの接着方法としては、熱融着パウダー、熱融着繊維、湿気硬化型樹脂等を接着剤として用いる方法が好ましい。
【0026】
接着剤の散布量としては、挟み込む吸着剤粒子(A)の5〜100質量%が好ましく、より好ましくは15〜50質量%である。5質量%以上にすることで、通気性シートと吸着剤粒子(A)の接着性を持たせることが出来る。また、100質量%以下とすることで、吸着剤が樹脂により被膜してしまい吸着剤の性能を落とすことを防ぐことが出来る。
【0027】
また、吸着剤粒子(B)の通気性シートへの付着量としては、吸着剤粒子(B)付着前の(または吸着剤粒子(B)を除いた)通気性シートに対し25〜150質量%が好ましく、より好ましくは40〜100質量%である。25質量%以上とすることで、薬品の反応場として実効的な表面積を得て吸着性能を向上させることができる。150質量%以下とすることで、エアフィルターとしての通気特性を阻害するのを防ぐことができる。
【0028】
吸着剤粒子(B)は、少なくとも通気性シートの吸着剤粒子(A)と接触する面に担持されていればよいが、通気性シート全体に担持されていてもかまわない。
【0029】
通気性シートに吸着剤粒子(B)を担持させる方法としては、通気性シートの原料に練り混む方法、通気性シートの湿式抄造において混抄する方法、通気性シートに塗布、印刷、含浸等する方法等、を用いることができる。中でも、塗布や含浸による方法が好ましい。
【0030】
塗布に用いる装置としては、ロールコーター、ナイフコーター、ブレードコーター、グラビアコーター等を用いることができる。
【0031】
塗布、含浸等においては、バインダーを用いることが好ましい。バインダーとしては、樹脂バインダー、無機系バインダーおよびこれらの組み合わせ等を用いることができる。樹脂バインダーとしては熱可塑性高分子エマルジョンが、吸着剤の表面を覆うことなく十分な接着性が得られる点で好ましい。熱可塑性高分子エマルジョンとしては、ポリアクリロニトリルやポリアクリル酸エステルなどのアクリル系樹脂、スチレン−アクリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、ポリプロピレン、ポリエステル、フェノキシ樹脂、フェノール樹脂、ブチラール樹脂などが挙げられる。
【0032】
また、通気性シートとして、エレクトレット不織布を用いることも好ましい。そうすることにより、サブミクロンサイズやナノサイズの微細塵を静電気力により捕集することが出来る。
【0033】
エレクトレット不織布を構成する繊維としては、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂が高い電気抵抗率を有するため好ましい。
【0034】
また、本発明のガス吸着シートをキャビンフィルター用途など難燃性が必要な用途に使用する場合、シートが難燃性を有することが重要である。
【0035】
本明細書および特許請求の範囲において難燃性を有するとは、FMVSS 302「内装材料の可燃性」の自消性レベルを達成できることを示す。
【0036】
特に、環境問題が強く謳われ始めている今日では、塩素や臭素を含有せずに難燃性を達成することが望ましい。このような難燃剤としては、リン系の難燃剤や窒素系難燃剤が広く知られている。その中でもリン酸エステル系、リン酸アンモニウム、赤燐、リン酸グアニジン、リン酸メラミン、硫酸アンモニウム、スルファミン酸グアニジンなどのグアニジン系難燃剤等が良く知られている。
【0037】
難燃剤の形態としては、非水溶性で固体のものが好ましい。キャビンフィルター用途では、雨や洗車等でフィルターに水がかかる恐れがあるため水溶性の難燃剤を使用していると難燃剤が流れ出し、難燃性の低下を引き起こす可能性がある。また、自動車室内で考えられる−40℃〜80℃の環境下において液状である難燃剤は、固化しにくいため濾材の剛難度低下をおこしプリーツ加工性を低下させる懸念があるため固体難燃剤が好ましい。この中でも、リン酸メラミンは、リンも窒素も含み且つ非水溶性で−40℃〜80℃の間で固体であるため本用途において好ましい難燃剤である。
【0038】
ガス吸着シートへの難燃性の付与方法としては、通気性シートに使用する不織布繊維に難燃繊維を使用する、不織布を構成する繊維間を結合するバインダー樹脂中に難燃剤を含有させる、不織布を作成後スプレーなどで難燃剤を付与する、通気性シートへ脱臭剤を添着する際のバインダー樹脂中に難燃剤を含有させる、挟み込む脱臭剤と一緒に加えるまたはガス吸着シートを作成後スプレーなどで難燃剤を付与する等の方法が考えられる。これら一つの方法で難燃性を達成しても構わないが、難燃剤が一箇所に固まらないようにするため組み合わせて使用することが好ましい。この中でも特に、不織布を構成する繊維間を結合するバインダー樹脂中に難燃剤を含有させる方法は、脱臭剤の細孔へ難燃剤が入りにくいことから好ましい方法である。
【0039】
難燃剤の量は、ガス吸着シートの目付の15〜40重量%程度が好ましい。難燃剤量が15%以上であると自動車用途の内装製品の難燃性規格:米国連邦自動車安全規格であるFMVSS 302「内装材料の可燃性」の自消性レベルを達成できる。また、40%以内に押さえることで濾材中の難燃剤比率が少なく押さえることができるため、濾材の空隙率を確保でき濾材の基本性能である通気抵抗などの著しい低下をおこさない。
【0040】
本発明のガス吸着シートは、エアフィルター用途に好適に用いることができる。
【0041】
本発明のエアフィルターの形状としては、そのまま平面状で使用してもよいが、プリ−ツ型やハニカム型を採用することが好ましい。プリーツ型は直行流型フィルターとしての使用において、またハニカム型は平行流型フィルターとしての使用において、処理エアの接触面積を大きくして捕集効率を向上させるとともに、低圧損化を同時に図ることができる。
【実施例】
【0042】
[測定方法]
(1)平均粒径
レーザー回折/散乱式粒度分布装置(堀場製作所社製 LA−920)を用いて測定し、JIS K 1474:2007 6.4項記載の50%粒径として表した。
【0043】
(2)トルエンの除去能力
平板状のシートを実験用のダクトに取り付け、ダクトに温度23℃、湿度50%RHの空気を0.2m/secの速度で送風した。さらに上流側から、標準ガスボンベによりトルエンを上流濃度70ppmとなるように添加し、シートの上流側と下流側とにおいてエアをサンプリングし、赤外吸光式連続モニターを使用してそれぞれのトルエン濃度を経時的に測定し、これからトルエンの脱臭効率および吸着容量を求めた。
【0044】
(3)圧力損失
平板状のシートを実験用のダクトに取り付け、ダクトに温度23℃、湿度50%RHの空気を0.2m/secの速度で送風した。その際の繊維シートの上流側と下流側との差圧をMODUS社製デジタルマノメータMA2−04Pにて測定した。
【0045】
(4)除塵性能
平板状のシートを有効間口面積0.1mの風洞の通風路にセットし、風速0.2m/sで空気を通過させ、シートの上流側および下流側の粒径0.3〜0.5μmの大気塵粉塵数をパーティクルカウンター(RION社製、型式:KC−01D)で測定し、捕集効率を次式より算出した。
捕集効率(%)={1−(下流粒子数/上流粒子数)}×100 。
【0046】
(5)プリーツ加工性
次の基準により評価した。
A:問題なし。
B:実用上軽微な問題がある。
C:実用上改善すべき問題がある。
【0047】
[実施例1]
(吸着剤粒子(A))
平均粒径380μmの粒状活性炭(クラレケミカル社製“クラレコール(R)”GG32/60)を吸着剤粒子(A)として使用した。
【0048】
(吸着剤粒子担持シート)
(吸着剤粒子(B))
平均粒径26μmの粒状活性炭(日本エンバイロケミカルズ社製“白鷺”E−25KN)を吸着剤粒子(B)として使用した。
【0049】
(基材シート)
木質パルプ12質量%、繊度3dtex・長さ10mmのポリエチレンテレフタレート短繊維6質量%、1.3dtex・5mmのポリエチレンテレフタレート短繊維8質量%、繊度17dtex・長さ12mmのビニロン短繊維30質量%、7dtex・10mmのビニロン短繊維12質量%、アクリル樹脂バインダー16質量%および難燃剤としてスルファミン酸グアニジン16質量%を材料に湿式抄紙を行い、目付46g/mの通気性シートを作製し、吸着剤粒子担持シートの基材シートとした。
【0050】
(担持処理)
上記吸着剤粒子(B)20質量%とスチレンアクリル樹脂5質量%とを均一分散させた水分散液中に上記基材シートを含浸させ、乾燥させて、シート目付96g/mの吸着剤粒子担持シートを得た。
【0051】
(エレクトレットシート)
繊度6dtexのポリプロピレン繊維からなる目付12g/mのメルトブローエレクトレット不織布(東レ・ファインケミカル社製“トレミクロン(R)”)を使用した。
【0052】
(ガス吸着シート)
上記吸着剤粒子担持シートに、上記吸着剤粒子Aを200g/mと熱接着パウダー(東京インキ社製“パウダーレジン”PR2030)を90g/m散布し、その上に上記エレクトレット不織布を重ね合わせ、120℃に加熱した2本の回転ロール間に挟んでゲージ間を0.5mmに設定することにより、厚さ1.0mmのガス吸着シートを得た。
【0053】
[実施例2]
(吸着剤粒子(A))
平均粒径700μmの粒状活性炭(クラレケミカル社製“クラレコール(R)”GG16/35)を吸着剤粒子(A)として使用した。
【0054】
(吸着剤粒子担持シート)
実施例1で用いたのと同様のものを使用した。
【0055】
(エレクトレットシート)
実施例1で用いたのと同様のものを使用した。
【0056】
(ガス吸着シート)
吸着剤粒子(A)として上記のものを用いた以外は実施例1と同様にして、厚さ1.5mmのガス吸着シートを得た。
【0057】
[実施例3]
(吸着剤粒子(A))
平均粒径60μmの粒状活性炭(日本エンバイロケミカルズ社製“白鷺”)を吸着剤粒子(A)として使用した。
【0058】
(吸着剤粒子担持シート)
実施例1で用いたのと同様のものを使用した。
【0059】
(エレクトレットシート)
実施例1で用いたのと同様のものを使用した。
【0060】
(ガス吸着シート)
吸着剤粒子(A)として上記のものを用いた以外は実施例1と同様にして、厚さ0.9mmのガス吸着シートを得た。
【0061】
[実施例4]
(吸着剤粒子(A))
実施例1で用いたのと同様のものを使用した。
【0062】
(吸着剤粒子担持シート)
(吸着剤粒子(B))
平均粒径60μmの粒状活性炭(日本エンバイロケミカルズ社製“白鷺”DO−5)を吸着剤粒子(B)として使用した。
【0063】
(基材シート)
実施例1で用いたのと同様のものを使用した。
【0064】
(担持処理)
吸着剤粒子(B)として上記のものを用いた以外は実施例1と同様にして、シート目付96g/mの吸着剤粒子担持シートを得た。
【0065】
(エレクトレットシート)
実施例1で用いたのと同様のものを使用した。
【0066】
(ガス吸着シート)
吸着剤粒子担持シートとして上記のものを用いた以外は実施例1と同様にして、厚さ1.0mmのガス吸着シートを得た。
【0067】
[実施例5]
(吸着剤粒子(A))
実施例1で用いたのと同様のものを使用した。
【0068】
(吸着剤粒子担持シート)
(吸着剤粒子(B))
実施例1で用いたのと同様のものを使用した。
【0069】
(基材シート)
繊度2.2dtex・長さ51mmのポリエチレンテレフタレート短繊維25質量%、繊度1.7dtex・長さ51mmのビニロン短繊維14質量%、繊度7.8dtex・長さ51mmのビニロン短繊維16質量%アクリル樹脂バインダー20質量%および難燃剤としてデカブロモジフェニルエーテル25重量%を材料にレジンボンド法にて、目付50g/mの通気性シートを作製し、吸着剤粒子担持シートの基材シートとした。
【0070】
(担持処理)
基材シートとして上記のものを用いた以外は実施例1と同様にして、シート目付100g/mの吸着剤粒子担持シートを得た。
【0071】
(エレクトレットシート)
実施例1で用いたのと同様のものを使用した。
【0072】
(ガス吸着シート)
吸着剤粒子担持シートとして上記のものを用いた以外は実施例1と同様にして、厚さ1.1mmのガス吸着シートを得た。
【0073】
[実施例6]
(吸着剤粒子(A))
実施例1で用いたのと同様のものを使用した。
【0074】
(基材シート)
木質パルプ12質量%、繊度3dtex・長さ10mmのポリエチレンテレフタレート短繊維6質量%、1.3dtex・5mmのポリエチレンテレフタレート短繊維8質量%、繊度17dtex・長さ12mmのビニロン短繊維30質量%、7dtex・10mmのビニロン短繊維12質量%、アクリル樹脂バインダー16質量%および難燃剤としてリン酸メラミン16質量%を材料に湿式抄紙を行い、目付46g/mの通気性シートを作製し、吸着剤粒子担持シートの基材シートとした。
【0075】
(担持処理)
上記吸着剤粒子(B)10質量%とスチレンアクリル樹脂10質量%とリン酸メラミン20重量%を均一分散させた水分散液中に上記基材シートを含浸させ、乾燥させて、シート目付120g/mの吸着剤粒子担持シートを得た。
【0076】
(エレクトレットシート)
実施例1で用いたのと同様のものを使用した。
【0077】
(ガス吸着シート)
上記吸着剤粒子担持シートに、上記吸着剤粒子Aを100g/mと熱接着パウダー(東京インキ社製“パウダーレジン”PR2030)を50g/m散布し、その上に上記エレクトレット不織布を重ね合わせ、120℃に加熱した2本の回転ロール間に挟んでゲージ間を0.5mmに設定することにより、厚さ1.0mmのガス吸着シートを得た。
【0078】
[比較例1]
(吸着剤粒子(A))
実施例1で用いたのと同様のものを使用した。
【0079】
(通気性シート)
吸着剤粒子(B)は使用せず、実施例1で用いたのと同様の基材シートをそのまま通気性シートとして使用した。
【0080】
(エレクトレットシート)
実施例1で用いたのと同様のものを使用した。
【0081】
(ガス吸着シート)
吸着剤粒子担持シートに代えて上記通気性シートを用い、上記吸着剤粒子(A)の散布量を240g/mとした以外は実施例1と同様にして、厚さ1.1mmのガス吸着シートを得た。
【0082】
[比較例2]
(吸着剤粒子(A))
実施例1で用いたのと同様のものを使用した。
【0083】
(通気性シート)
吸着剤粒子(B)は使用せず、実施例1で用いたのと同様の基材シートをそのまま通気性シートとして使用した。
【0084】
(エレクトレットシート)
実施例1で用いたのと同様のものを使用した。
【0085】
(ガス吸着シート)
吸着剤粒子担持シートに代えて上記通気性シートを用いた以外は実施例1と同様にして、厚さ1.0mmのガス吸着シートを得た。
【0086】
[比較例3]
(吸着剤粒子(A))
吸着剤粒子(A)は使用しなかった。
【0087】
(吸着剤粒子担持シート)
実施例1で用いたのと同様のものを使用した。
【0088】
(エレクトレットシート)
実施例1で用いたのと同様のものを使用した。
【0089】
(ガス吸着シート)
上記吸着剤粒子担持シートに、熱接着パウダー(東京インキ社製“パウダーレジン”PR2030)を10g/m散布し、その上に上記エレクトレット不織布を重ね合わせ、120℃に加熱した2本の回転ロール間に挟んでゲージ間を0.2mmに設定することにより、厚さ0.5mmのガス吸着シートを得た。
【0090】
[比較例4]
(吸着剤粒子(A))
吸着剤粒子(A)は使用しなかった。
【0091】
(吸着剤粒子担持シート)
(吸着剤粒子(B))
実施例1で用いたのと同様のものを使用した。
【0092】
(基材シート)
実施例1で用いたのと同様のものを使用した。
【0093】
(担持処理)
上記吸着剤(B)40質量%とスチレンアクリル樹脂10質量%とを均一分散させた水分散液中に上記基材シートを含浸させ、乾燥させて、シート目付300g/mの吸着剤粒子担持シートを得た。
【0094】
(エレクトレットシート)
実施例1で用いたのと同様のものを使用した。
【0095】
(ガス吸着シート)
上記吸着剤粒子担持シートに、熱接着パウダー(東京インキ社製“パウダーレジン”PR2030)を10g/m散布し、その上に上記エレクトレット不織布を重ね合わせ、120℃に加熱した2本の回転ロール間に挟んでゲージ間を0.2mmに設定することにより、厚さ0.5mmのガス吸着シートを得た。
【0096】
[比較例5]
(吸着剤粒子(A))
平均粒径380μmの粒状活性炭(クラレケミカル社製“クラレコール(R)”GG32/60)と平均粒径26μmの粒状活性炭(日本エンバイロケミカルズ社製“白鷺”E−25KN)を吸着剤粒子を同量混合し使用した。
【0097】
(通気性シート)
吸着剤粒子(B)は使用せず、実施例1で用いたのと同様の基材シートをそのまま通気性シートとして使用した。
【0098】
(エレクトレットシート)
実施例1で用いたのと同様のものを使用した。
【0099】
(ガス吸着シート)
吸着剤粒子(A)として上記のものを用いた以外は実施例1と同様にして、厚さ1.0mmのガス吸着シートを得た。
【0100】
【表1】

【0101】
【表2】

【0102】
実施例1〜6のガス吸着シートは圧力損失が抑えられているにも関わらず、トルエンの脱臭効率が高く吸着容量も十分ある。
【0103】
また、比較例2のガス吸着シートと比較例3のガス吸着シートとを重ね合わせたものが実施例1のガス吸着シートと同等の脱臭剤量になるが、比較例2のガス吸着シートと比較例3のガス吸着シートとを連続で並べてもその除去効率の理論的な計算値は68%(=100%−(100%―60%)×(100%−20%))であり、本発明のガス吸着シートが吸着剤粒子(A)の層と吸着剤粒子(B)を担持した通気性シートとを単に並べたものを超える性能を発現していることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明は、工場、ビル、家庭、車両等において外気を取り入れる場合に使用されるエアフィルター用濾材、特に、自動車内空間に使用されるエアフィルター濾材として有用なガス吸着シートに関するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚以上の通気性シートがその間に吸着剤粒子(A)を挟み、吸着剤粒子(A)と接する通気性シートの少なくとも一枚が、吸着剤粒子(A)と接する側の面に吸着剤粒子(B)を担持してなることを特徴とするガス吸着シート。
【請求項2】
前記吸着剤粒子(A)の平均粒径が150〜500μmである、請求項1記載のガス吸着シート。
【請求項3】
前記吸着剤粒子(B)の平均粒径が5〜40μmである、請求項1または2記載のガス吸着シート。
【請求項4】
前記吸着剤粒子(B)を担持した通気性シートが湿式不織布である、請求項1〜3のいずれか記載のガス吸着シート。
【請求項5】
前記通気性シートの少なくとも一枚がエレクトレット不織布である、請求項1〜4のいずれか記載のガス吸着シート。
【請求項6】
リン系難燃剤または窒素系難燃剤を含み、難燃性を有する請求項1〜5のいずれかに記載のガス吸着シート。
【請求項7】
エアフィルター用濾材として用いられる、請求項1〜6のいずれか記載のガス吸着シート。

【公開番号】特開2009−61445(P2009−61445A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−202674(P2008−202674)
【出願日】平成20年8月6日(2008.8.6)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】