説明

ガス器具判別装置

【課題】2台のガス器具同時使用の場合でもそのことを的確に判別してマイコンメータの信頼性を向上させることができるようにする。
【解決手段】この発明のガス器具判別装置は、ガス器具の各々に固有の流量パターンを当該ガス器具に対応させて登録している流量テーブルTと、ガス器具に供給されるガス流量を検出するガス流量検出手段11と、ガス流量の今回の流量変化態様を求める流量変化態様演算手段12と、今回の流量変化態様と、流量テーブルに登録されている登録流量パターンとを比較する流量比較手段13と、その比較の結果、今回の流量変化態様が登録流量パターンの何れとも一致せず、かつ今回の流量変化態様の最終部分が、複数台のガス器具が時間間隔をもって消火された場合に相当すると見なされた場合、今回の流量変化態様に対する新ガス器具判別を保留する判別保留手段15と、を備えることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ガス供給先に配置された複数のガス器具群のうち、今回点火されたガス器具がガス器具群のうちの何れのガス器具であるか、また新器具であるか等の判別を行うガス器具判別装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、都市ガスやLPガスの供給システムにおいて、ガス供給先(各家屋)ではマイコンを中心として構成されたマイコンメータが使用され、検知したガス流量やガス圧力等に基づいて、使用開始されたガス器具を特定したり、新器具であるかを判別したり、使用状態を監視するようになっている(例えば下記の特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−148728号公報
【特許文献2】特開2008−180488号公報
【0004】
上記の新器具か否かの判別は、マイコンメータで検出された、今回点火されたガス器具のガス流量の変化を求め、そのガス流量変化と、予め登録されている登録流量パターンとを比較し、今回のガス流量変化に一致する登録流量パターンを持つ登録ガス器具が、今回使用開始されたとして、ガス器具群の中から特定するようになっている。
【0005】
ところで、ガス供給先では、2台のガス器具をほぼ同時に点火する場合もあり、このような場合のガス流量変化は、登録流量パターンと一致しないため、従来の新器具判別手法では、今回点火されたガス器具は、新ガス器具であると誤まった判別がなされていた。
【0006】
しかし、2台のガス器具同時使用を新ガス器具であるとするこのような誤判別がなされると、使用されているガス器具を特定することでその使用状態を把握し安全性を確保しようとしているマイコンメータそのものの信頼性が損なわれてしまうという問題点を有していた。
【0007】
また、ガス供給先の家庭で新ガス器具が使用されたとの判別がなされると、その情報はマイコンメータから集中監視センタへ通知され、ガス販売事業者は、通知がなされた家庭を訪問し、その新ガス器具を確認するというシステムとなっており、誤った情報のために無駄な労力がなされてしまうという問題点もあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明は上記に鑑み提案されたもので、2台のガス器具同時使用の場合でもそのことを的確に判別してマイコンメータの信頼性を向上させることができ、また誤った情報によるガス販売事業者の無駄な労力も防止することができるガス器具判別装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、ガス供給先に配置された複数のガス器具群のうち、今回点火されたガス器具がガス器具群のうちの何れのガス器具であるか、また新器具であるか等の判別を行うガス器具判別装置において、上記ガス器具の各々に固有の流量パターンを当該ガス器具に対応させて登録している流量テーブルと、上記ガス器具に供給されるガス流量を検出するガス流量検出手段と、上記ガス流量の今回の流量変化態様を求める流量変化態様演算手段と、上記今回の流量変化態様と、流量テーブルに登録されている登録流量パターンとを比較する流量比較手段と、上記流量比較手段による比較の結果、今回の流量変化態様が登録流量パターンと一致する場合、その一致する登録流量パターンを持つ登録ガス器具が、今回使用開始されたとして、ガス器具群の中から特定する器具特定手段と、上記流量比較手段による比較の結果、今回の流量変化態様が登録流量パターンの何れとも一致せず、かつ今回の流量変化態様の最終部分が、複数台のガス器具が時間間隔をもって消火された場合に相当すると見なされた場合、今回の流量変化態様に対する新ガス器具判別を保留する判別保留手段と、を備えることを特徴としている。
【0010】
請求項2に記載の発明は、上記した請求項1に記載の発明において、上記流量比較手段による比較の結果、今回の流量変化態様が登録流量パターンの何れとも一致せず、かつ今回の流量変化態様の最終部分が、1台のガス器具が消火された場合に相当すると見なされた場合、今回使用開始されたガス器具は新ガス器具であると判別する新ガス器具判別手段を備えるものである。
【0011】
また、請求項3に記載の発明は、上記した請求項1または2に記載の発明において、上記判別保留手段は、一定期間中に再度、上記判別が保留された流量変化態様に一致する流量変化態様が得られた場合、保留を解除するものである。
【発明の効果】
【0012】
この発明では、今回の流量変化態様が登録流量パターンの何れとも一致せず、かつ今回の流量変化態様の最終部分が、複数台のガス器具が時間間隔をもって消火された場合に相当すると見なされた場合、今回の流量変化態様に対する新ガス器具判別を保留するようにした。例えば2台のガス器具が同時使用された場合、そのときのガス流量変化に基づいて新ガス器具であるとの判別は直ちには行わず、一旦保留するようにしたので、新ガス器具判別をより的確に行うことができ、したがって、マイコンメータの信頼性を向上させることができる。また誤った情報によるガス販売事業者の無駄な労力も防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明が適用されるガス供給システムの構成例を概略的に示す図である。
【図2】本発明のガス器具判別装置の構成を示すブロック図である。
【図3】新ガス器具判別保留の説明図であり、(a)は同時に点火された2台のガス器具の各流量変化態様を示し、(b)は2台のガス器具が同時に点火された場合の制御部で求められた流量変化態様を示している。
【図4】新ガス器具であるとの判別を行う場合の説明図である。
【図5】流量変化態様に緩点火が見られるガス器具における新ガス器具判別保留の説明図であり、(a)は同時に点火された2台のガス器具の各流量変化態様を示し、(b)は2台のガス器具が同時に点火された場合の制御部で求められた流量変化態様を示している。
【図6】流量変化態様に緩点火が見られるガス器具を新ガス器具であると判別する場合の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下にこの発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0015】
図1はこの発明が適用されるガス供給システムの構成例を概略的に示す図である。図1において、この発明が適用されるガス供給システムは、ガス配管20と、そのガス配管20によってガスが供給されるガス供給先30と、ガス供給先30の手前でガス配管20の途中に設けられたマイコンメータ1とを備えている。ガス供給先30は、例えば一般家屋や集合住宅である。
【0016】
ガス配管20は分岐してガス供給先30で使用する種々のガス器具まで配管されている。例えば、ガス配管20は分岐して、屋外に設置されたガス給湯器31に接続され、また屋内に配置されたガスコンロ34やガスファンヒータ35に接続されている。なお、ガス給湯器31で生成された湯は、水配管を介して、屋内の浴槽給湯口32に供給され湯張りに使用される。また台所給湯栓33に供給される。
【0017】
マイコンメータ1は、検知したガス流量等に基づいてガス供給先30でのガス使用状態を管理する装置であり、制御部10、流量センサ2、遮断弁3、およびLCD表示部4を有している。
【0018】
このマイコンメータ1は、ガス供給先30毎に設けられ、その各個のマイコンメータ1は、集中監視センタ5に電話回線等で接続されており、制御部10で異常発生等の判定や、新ガス器具が使用されたとの判定がなされると、その情報が集中監視センタ5に伝達され、集中監視センタ5ではその情報に基づいてガス供給先30に対して適切な対応を行う。
【0019】
上記の制御部10はマイクロコンピュータ(マイコン)を中心に構成され、流量センサ2で検知したガス流量、また圧力センサ(図示省略)で検知したガス圧力等に基づいて、ガス供給先30でのガス使用状態を推定し、ガス供給先30において適正にガスが使用されているか否かの判定を行う。
【0020】
例えば制御部10は、流量センサ2を用いて、マイコンメータ1内のガス配管20を通過する都市ガス或いはLPG等のガスの流量を検出する。ここで、流量センサ2は、例えばマイコンメータ1を貫通するガス配管20内に設置された超音波センサからなり、超音波を送信または受信する第1送受信器と、受信または送信する第2送受信器とが流れ方向に対抗して配置され、予め定めた周期毎に上流から下流へ、又下流から上流に向かって超音波信号を送信し、制御部10は、その信号を受けて伝搬時間を計測し、第1送受信器と第2送受信器との超音波の伝搬時間差から流路の断面積や流体の流れ状態を考慮して、瞬時流量値を求め、また積算流量値を求める。
【0021】
また、制御部10は、ガス供給先30でのガス使用状態を推定し、ガス供給先30においてガス漏れ等の異常が発生していると判定した場合、遮断弁3に制御信号を出力して遮断弁3を閉じガス供給を遮断する。
【0022】
LCD表示部4は、制御部10で求められたガス流量の積算値を表示したり、制御部10でなされた各種判定結果を表示し、ガスユーザに通知する。
【0023】
本発明のガス器具判別装置は、制御部10のマイコンを中心に構成され、ROMに記憶された本発明に係るプログラムに従ってCPUが動作するソフトウェアの機能を含むものとなっている。
【0024】
図2は本発明のガス器具判別装置の構成を示すブロック図である。図2に示すように、本発明のガス器具判別装置100は、ガス供給先に配置された複数のガス器具群のうち、今回点火されたガス器具がガス器具群のうちの何れのガス器具であるか、また新器具であるか等の判別を行うものであり、ガス流量検出手段11、流量変化態様演算手段12、流量比較手段13、器具特定手段14、判別保留手段15、および流量テーブルTから構成されている。
【0025】
流量テーブルTには、複数のガス器具(31,34,35等)の各々に固有の流量パターンPtが、当該ガス器具に対応させて予め登録されている。
【0026】
ガス供給先30のガス器具が点火され使用が開始されると、ガス流量検出手段11は、流量センサ2からの信号に基づいて、そのガス器具に供給されるガスの流量を検出する。
【0027】
流量変化態様演算手段12は、今回使用開始されたガス器具に供給され、ガス流量検出手段11によって検出されたガス流量から、供給されたガスの流量変化態様を求める。
【0028】
流量比較手段13は、今回の流量変化態様と、流量テーブルTに登録されている登録流量パターンPtとを比較する。
【0029】
器具特定手段14は、流量比較手段13による比較の結果、今回の流量変化態様が登録流量パターンPtと一致する場合、その一致する登録流量パターンPtを持つ登録ガス器具が、今回使用開始されたとして、ガス器具群の中から特定する。今回の流量変化態様と登録流量パターンPtとの一致、不一致は、任意のパターンマッチング方法に従って判定することができる。
【0030】
そして、判別保留手段15は、流量比較手段13による比較の結果、今回の流量変化態様が登録流量パターンPtの何れとも一致せず、かつ今回の流量変化態様の最終部分が、複数台のガス器具が時間間隔をもって消火された場合に相当すると見なされた場合、今回の流量変化態様に対する新ガス器具判別を保留する。
【0031】
また、新ガス器具判別手段16は、流量比較手段13による比較の結果、今回の流量変化態様が登録流量パターンPtの何れとも一致せず、かつ今回の流量変化態様の最終部分が、1台のガス器具が消火された場合に相当すると見なされた場合、今回使用開始されたガス器具は新ガス器具であると判別する。以下に、上記の判別保留および新ガス器具判別について、図3〜図6を用いてより具体的に説明する。
【0032】
図3は新ガス器具判別保留の説明図であり、(a)は同時に点火された2台のガス器具の各流量変化態様を示し、(b)は2台のガス器具が同時に点火された場合の制御部で求められた流量変化態様を示している。図3(a)(b)において、横軸は点火されてからの経過時間、縦軸はガス流量である。
【0033】
図3(a)において、複数台(ここでは2台)のガス器具A,Bがほぼ同時に点火され、ガス流量が、ガス器具Aについては流量変化態様A1に沿って変化し、時刻taで消火され、ガス器具Bについては流量変化態様B1に沿って変化し、時刻tbで消火されたとする。
【0034】
このとき、マイコンメータ1では、A1とB1との合計のガス流量が検出され、制御部10では、図3(b)に示すような流量変化態様C1が得られる。
【0035】
制御部10は、通常流量変化態様A1が得られると、流量テーブルTに登録されている登録流量パターンPtと照合してこのガス器具はAであると特定し、同様に、流量変化態様B1が得られると、流量テーブルTに登録されている登録流量パターンPtと照合してこのガス器具はBであると特定する。しかし、今回の実際に得られる流量変化態様C1は、2台がほぼ同時に点火されたため、ガス流量が増大し、登録流量パターンPtの何れとも一致せず、このような場合従来は、今回使用されたガス器具は新ガス器具であるとの判別を行っていたが、本発明では、この段階ではこの判別を行わない。
【0036】
そして、制御部10はこの流量変化態様C1の最終部分R1を監視し、2台のガス器具が時間間隔をもって消火された場合に相当すると見なされた場合、今回の流量変化態様C1に対する新ガス器具判別を保留する。ここでは、流量変化態様C1の最終部分R1において、時刻taでガス流量が急減し、続いて時刻tbでガス流量が零となり、2台のガス器具A,Bが時間間隔をもって消火された場合に相当しており、このような場合は、今回の流量変化態様C1に対する新ガス器具判別を保留し、新ガス器具の登録も行わない。
【0037】
すなわち、今回の流量変化態様が登録流量パターンPtと一致しない場合、複数台が同時に使用された可能性があるため、その最終部分まで監視を続け、最終部分での消火パターンで複数台が順に消火された場合に相当していると判定した場合は、今回の流量変化態様は複数台の同時点火によるものだとして、新ガス器具判別を一旦保留にしておく。なお、この保留判定は、マイコンメータ1のLCD表示部4に表示され、または集中監視センタ5に通知される。
【0038】
その後、一定期間中、例えば1ヶ月の間に、再度、流量変化態様C1に一致する流量変化態様が得られた場合、本発明では、保留を解除し、新ガス器具であるとの判別を行うようにしている。これは、ガス器具において複数台がほぼ同時に点火され、また以前と同様の消火パターンで消火されることは、滅多に発生することではないが、1ヶ月の間にそれが再度発生したとしたら、それは複数台の同時使用によるものではなく、1台の新ガス器具使用によるものと判別するようにしたためである。
【0039】
図4は新ガス器具であるとの判別を行う場合の説明図である。図4において、制御部10が今回認識した流量変化態様D1は、流量立ち上がりから安定流量となるまでの範囲は、図3(b)の流量変化態様C1と同一であり、最終部分R2のみが異なっている。
【0040】
制御部10は、登録流量パターンPtの何れとも一致しない今回の流量変化態様D1に対して、上記したように、今回使用されたガス器具は新ガス器具であるとの従来なされていた判定を直ちには行わず、この流量変化態様D1の最終部分R2を監視する。
【0041】
そして、今回の流量変化態様D1の最終部分R2が、1台のガス器具が消火された場合に相当すると見なされた場合、今回使用開始されたガス器具は新ガス器具であると判別する。
【0042】
ここでは、流量変化態様D1の最終部分R2において、時刻tdでガス流量が急減してガス流量が一気に零となっており、1台のガス器具が消火された場合に相当しており、このような場合は、今回使用開始されたガス器具Dは新ガス器具であるとの判別を行い、流量テーブルTへの新ガス器具の登録も行い、またその旨を集中監視センタ5に通知する。
【0043】
すなわち、今回の流量変化態様が登録流量パターンPtと一致しない場合、複数台が同時に使用された可能性もあるため、その最終部分まで監視を続け、最終部分での消火パターンが1台のみの消火パターンに相当していると判定した場合は、今回の流量変化態様は新ガス器具の点火によるものだとの判定を行う。
【0044】
次に、流量変化態様に緩点火が見られるガス器具の場合について、図5、図6を用いて説明する。
【0045】
図5は流量変化態様に緩点火が見られるガス器具における新ガス器具判別保留の説明図であり、(a)は同時に点火された2台のガス器具の各流量変化態様を示し、(b)は2台のガス器具が同時に点火された場合の制御部で求められた流量変化態様を示している。図5(a)(b)において、横軸は点火されてからの経過時間、縦軸はガス流量である。
【0046】
図5(a)において、複数台(ここでは2台)のガス器具E,Fがほぼ同時に点火され、ガス流量が、ガス器具Eについては流量変化態様E1に沿って変化し、時刻teで消火され、ガス器具Fについては流量変化態様F1に沿って変化し、時刻tfで消火されたとする。ガス器具Fは例えば給湯器であり、その点火時に緩点火が行われ、流量変化態様F1中に緩点火領域Rfが存在する。ここで緩点火とは、ガス器具の爆発的な点火を防止するため、ガス流量を定格ガス流量の約40〜90%の範囲で約0.3〜10秒程度保持しながら点火を行うガス流量制御方式である。
【0047】
マイコンメータ1では、E1とF1との合計のガス流量が検出され、制御部10では、図5(b)に示すような流量変化態様G1が得られる。
【0048】
制御部10は、通常流量変化態様E1が得られると、流量テーブルTに登録されている登録流量パターンPtと照合してこのガス器具はEであると特定し、同様に、流量変化態様F1が得られると、流量テーブルTに登録されている登録流量パターンPtと照合してこのガス器具はFであると特定する。しかし、今回の実際に得られた流量変化態様G1は、2台E,Fがほぼ同時に点火されたため、ガス流量が増大し、また緩点火領域Rfも変形してRf1となっている。したがって、流量変化態様G1は、登録流量パターンPtの何れとも一致せず、このような場合従来は、今回使用されたガス器具は新ガス器具であるとの判別を行っていたが、本発明では、この段階ではこの判別を行わない。
【0049】
そして、制御部10はこの流量変化態様G1の最終部分R3を監視し、その最終部分R3において、時刻teでガス流量が急減し、続いて時刻tfでガス流量が零となり、2台のガス器具E,Fが時間間隔をもって消火された場合に相当しており、このような場合は、今回の流量変化態様G1に対する新ガス器具判別を保留し、新ガス器具の登録も行わない。なお、この保留判定は、マイコンメータ1のLCD表示部4に表示され、または集中監視センタ5に通知される。
【0050】
その後、一定期間中、例えば1ヶ月の間に、再度、流量変化態様G1に一致する流量変化態様が得られた場合、本発明では、保留を解除し、新ガス器具であるとの判別を行うようにしている。
【0051】
図6は流量変化態様に緩点火が見られるガス器具を新ガス器具であると判別する場合の説明図である。図6において、制御部10が今回認識した流量変化態様H1は、流量立ち上がりから、緩点火領域を経て安定流量となるまでの範囲は、図5(b)の流量変化態様G1と同一であり、最終部分R4のみが異なっている。
【0052】
制御部10は、登録流量パターンPtの何れとも一致しない今回の流量変化態様H1に対して、上記したように、今回使用されたガス器具は新ガス器具であるとの従来なされていた判定を直ちには行わず、この流量変化態様H1の最終部分R4を監視する。
【0053】
そして、今回の流量変化態様H1の最終部分R4において、時刻tgでガス流量が急減してガス流量が一気に零となっており、1台のガス器具が消火された場合に相当しており、このような場合は、今回使用開始されたガス器具Hは新ガス器具であるとの判別を行い、流量テーブルTへの新ガス器具の登録も行い、またその旨を集中監視センタ5に通知する。
【0054】
以上述べたように、この発明では、今回の流量変化態様が登録流量パターンの何れとも一致せず、かつ今回の流量変化態様の最終部分が、複数台のガス器具が時間間隔をもって消火された場合に相当すると見なされた場合、今回の流量変化態様に対する新ガス器具判別を保留するようにした。例えば2台のガス器具が同時使用された場合、そのときのガス流量変化に基づいて新ガス器具であるとの判別は直ちには行わず、一旦保留するようにしたので、新ガス器具判別をより的確に行うことができ、したがって、マイコンメータの信頼性を向上させることができる。また誤った情報によるガス販売事業者の無駄な労力も防止することができる。
【0055】
また、保留判定になった場合は、ガスメータ等の表示部に保留した旨を記号等で表示したり、また集中監視センタへ通報することにより、利便性を高めることができる。
【0056】
また、今回の流量変化態様の最終部分が、1台のガス器具が消火された場合に相当すると見なされた場合は、今回使用開始されたガス器具は新ガス器具であると判別するようにしたので、この点からも新ガス器具判別を的確に行うことができ、マイコンメータの信頼性を向上させることができる。
【0057】
また、一定期間中に再度、判別が保留された流量変化態様に一致する流量変化態様が得られた場合、保留を解除するようにしたので、新ガス器具であると判別すべきときに的確に判別することができ、マイコンメータの信頼性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0058】
1 マイコンメータ
2 流量センサ
3 遮断弁
4 LCD表示部
5 集中監視センタ
10 制御部
11 ガス流量検出手段
12 流量変化態様演算手段
13 流量比較手段
14 器具特定手段
15 判別保留手段
16 新ガス器具判別手段
20 ガス配管
30 ガス供給先
31 ガス給湯器
32 浴槽給湯口
33 台所給湯栓
34 ガスコンロ
35 ガスファンヒータ
100 ガス器具判別装置
Pt 登録流量パターン
A,B,D,E,F,H ガス器具
A1,B1,C1,D1,E1,F1,G1,H1 流量変化態様

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス供給先に配置された複数のガス器具群のうち、今回点火されたガス器具がガス器具群のうちの何れのガス器具であるか、また新器具であるか等の判別を行うガス器具判別装置において、
上記ガス器具の各々に固有の流量パターンを当該ガス器具に対応させて登録している流量テーブルと、
上記ガス器具に供給されるガス流量を検出するガス流量検出手段と、
上記ガス流量の今回の流量変化態様を求める流量変化態様演算手段と、
上記今回の流量変化態様と、流量テーブルに登録されている登録流量パターンとを比較する流量比較手段と、
上記流量比較手段による比較の結果、今回の流量変化態様が登録流量パターンと一致する場合、その一致する登録流量パターンを持つ登録ガス器具が、今回使用開始されたとして、ガス器具群の中から特定する器具特定手段と、
上記流量比較手段による比較の結果、今回の流量変化態様が登録流量パターンの何れとも一致せず、かつ今回の流量変化態様の最終部分が、複数台のガス器具が時間間隔をもって消火された場合に相当すると見なされた場合、今回の流量変化態様に対する新ガス器具判別を保留する判別保留手段と、
を備えることを特徴とするガス器具判別装置。
【請求項2】
上記流量比較手段による比較の結果、今回の流量変化態様が登録流量パターンの何れとも一致せず、かつ今回の流量変化態様の最終部分が、1台のガス器具が消火された場合に相当すると見なされた場合、今回使用開始されたガス器具は新ガス器具であると判別する新ガス器具判別手段を備える、請求項1に記載のガス器具判別装置。
【請求項3】
上記判別保留手段は、一定期間中に再度、上記判別が保留された流量変化態様に一致する流量変化態様が得られた場合、保留を解除する、請求項1または2に記載のガス器具判別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−169488(P2011−169488A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−32023(P2010−32023)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成21年度、経済産業省原子力安全・保安院、石油ガス供給事業安全管理技術開発等事業(集中監視による液化石油ガス燃焼器自動識別システムの開発)に関する委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受けるもの)
【出願人】(000168643)高圧ガス保安協会 (92)
【Fターム(参考)】