ガス拡散層及びその製造方法、並びに燃料電池
【課題】一方の主面にガス流路が形成されたガス拡散層において、発電性能の一層向上させることができるガス拡散層を提供することにある。
【解決手段】本発明の燃料電池用ガス拡散層は、一方の主面にガス流路を有する第1拡散層と、第1拡散層の他方の主面側に配置される第2拡散層と、を有する複数構造で構成され、第1拡散層及び第2拡散層は導電性粒子及び高分子樹脂を主成分とした多孔質部材で構成され、第1拡散層の多孔度は第2拡散層の多孔度より低く構成される。
【解決手段】本発明の燃料電池用ガス拡散層は、一方の主面にガス流路を有する第1拡散層と、第1拡散層の他方の主面側に配置される第2拡散層と、を有する複数構造で構成され、第1拡散層及び第2拡散層は導電性粒子及び高分子樹脂を主成分とした多孔質部材で構成され、第1拡散層の多孔度は第2拡散層の多孔度より低く構成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料ガスとして、純水素、メタノールなどの液体燃料、あるいは、化石燃料などからの改質水素などの還元剤を用い、酸化剤ガスとして、空気(酸素)などを用いる燃料電池に関し、より詳しくは、当該燃料電池が備えるガス拡散層及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池、例えば高分子電解質形燃料電池は、水素を含有する燃料ガスと、空気などの酸素を含有する酸化剤ガスとを、白金などの触媒層を有するガス拡散層で電気化学的に反応させることにより、電力と熱とを同時に発生させる装置である。
【0003】
図8は、従来の高分子電解質形燃料電池の基本構成を示す模式図である。高分子電解質形燃料電池の単電池(セルともいう)100は、膜電極接合体110(以下、MEA:Membrane-Electrode-Assemblyという)と、MEA110の両面に配置された一対の板状の導電性のセパレータ120とを有している。
【0004】
MEA110は、水素イオンを選択的に輸送する高分子電解質膜(イオン交換樹脂膜)111と、当該高分子電解質膜111の両面に形成された一対の電極層112とを備えている。一対の電極層112は、高分子電解質膜111の両面に形成され、白金属触媒を坦持したカーボン粉末を主成分とする触媒層113と、当該触媒層113上に形成され、集電作用とガス透過性と撥水性とを併せ持つガス拡散層114とを有している。ガス拡散層114は、炭素繊維からなる多孔質な基材115と、カーボンと撥水材からなるコーティング層(撥水カーボン層)116とで構成されている。
【0005】
前記一対のセパレータ120には、ガス拡散層114と当接する主面に、燃料ガスを流すための燃料ガス流路121と、酸化剤ガスを流すための酸化剤ガス流路122とが設けられている。また、前記一対のセパレータ120には、冷却水などが通る冷却水流路123が設けられている。当該各ガス流路121,122を通じて前記一対の電極層112にそれぞれ燃料ガス及び酸化剤ガスが供給されることで、電気化学反応が起こり、電力と熱とが発生する。
【0006】
前記のように構成されるセル100は、図8に示すように1つ以上積層され、互いに隣接するセル100を電気的に直列に接続されて使用されるのが一般的である。なお、このとき、互いに積層されたセル100は、反応ガスである燃料ガス及び酸化剤ガスがリークしないように且つ接触抵抗を減らすために、ボルトなどの締結部材130により所定の締結圧にて加圧締結される。従って、MEA110とセパレータ120とは所定の圧力で面接触することになる。このとき、セパレータ120は、互いに隣接するMEA110,110同士を電気的に直列に接続するための集電性を有する。また、電気化学反応に必要なガスが外部に漏れるのを防ぐために、一対のセパレータ120,120の間には、触媒層113とガス拡散層114の側面を覆うようにシール材(ガスケット)117が配置されている。
【0007】
近年、燃料電池の分野においては、より一層の低コスト化が求められており、各構成部材の単価の低減、部品点数の削減などの観点から、様々な低コスト化の技術が提案されている。その1つとして、ガス流路を、セパレータに設けるのではなく、ガス拡散層に設ける技術が提案されている。
【0008】
図8に示す従来の燃料電池においては、セパレータにガス流路を設けている。この構成を実現する方法としては、例えば、セパレータの材料としてカーボンと樹脂とを用い、これらを、ガス流路の形状に対応する凹凸を有する金型を用いて射出成形する方法がある。しかしながら、この場合、製造コストが高いという課題がある。また、前記構成を実現する別の方法として、セパレータの材料として金属を用い、ガス流路の形状に対応する凹凸を有する金型を用いて当該金属を圧延する方法がある。しかしながら、この場合、前記射出成形法に比べて低コスト化を実現することができる一方で、セパレータが腐食しやすく、燃料電池としての発電性能が低下するという課題がある。
【0009】
一方、ガス拡散層は、ガス拡散性を備えるようにするために、多孔質部材で構成される。このため、ガス流路をガス拡散層に形成することの方がセパレータに形成することに比べて容易であり、低コスト化及び高発電性能化を図るのに有利である。このような構成を有するガス拡散層としては、例えば、特許文献1〜3に記載されたものがある。
【0010】
特許文献1には、直方体状に伸長された複数の流路型を備えた成型治具を用いて炭素繊維を基材とした多孔質部材を抄紙法によって成型し、当該成型後に前記成型治具を抜き取ることによって、ガス拡散層の内部にガス流路を形成する技術が記載されている。
【0011】
特許文献2には、ガス流路を形成する樹脂又は金属からなる隔壁をセパレータ上にパターン形成した後、当該隔壁を覆うように炭素繊維を基材とした多孔質部材を形成することによって、ガス拡散層にガス流路を形成する技術が記載されている。
【0012】
特許文献3には、炭素繊維を基材とした多孔質部材と平板状のセパレータとの間に、打ち抜きなどによりガス流路構造を形成したカーボンペーパーよりなる流路構成部材を配設することにより、ガス拡散層にガス流路を形成する技術が記載されている。
【0013】
また、ガス拡散層は、前記特許文献1〜3のように炭素繊維を基材とした多孔質部材で構成されるのが一般的である。しかしながら、炭素繊維を基材とした多孔質部材は、製造工程が複雑であり製造コストがかかるため、高価である。そこで、炭素繊維を基材とした多孔質部材を用いずにガス拡散層を構成することで、燃料電池の低コスト化を図る技術が提案されている。このような構成を有するガス拡散層としては、例えば、特許文献4に記載されたものがある。
【0014】
特許文献4には、炭素繊維を基材として用いずに、グラファイトとカーボンブラックと未焼成PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)と焼成PTFEとを混合してガス拡散層を構成する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2006−339089号公報
【特許文献2】特開2005−294121号公報
【特許文献3】特開2000−123850号公報
【特許文献4】特開2003−187809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
前記特許文献1〜3のように炭素繊維を基材とした多孔質部材でガス拡散層を構成した場合、その多孔度は通常80%以上と高くなる。このため、このガス拡散層にガス流路を形成した場合、互いに隣接するガス流路を隔てるリブ部の内部を反応ガスが透過(ショートカット)してしまうおそれがある。すなわち、燃料ガス又は酸化剤ガスが、ガス流路の上流部から下流部までガス流路の形状に沿って流れずにガス拡散性が低下し、それにより発電性能が低下するおそれがある。
【0017】
また、特許文献2の構成によれば、前記隔壁により、反応ガスがリブ部の内部を透過することを抑えられる。しかしながら、前記隔壁を樹脂で形成した場合には、導電性が低下することとなり、それによりIR損失が増大する。一方、前記隔壁を金属で形成した場合には、副反応が起こり易くなって高分子電解質膜の耐久性が低下する。すなわち、結果として、発電性能が低下するおそれがある。
【0018】
一方、特許文献4のように炭素繊維を基材として用いずにガス拡散層を構成した場合、その多孔度は80%より低くすることができる。従って、反応ガスがリブ部の内部を透過することを抑えることができる。しかしながら、炭素繊維を基材として用いずに構成したガス拡散層(以下、基材レスガス拡散層という)は、強度が弱いという課題がある。このため、基材レスガス拡散層に圧延などによりガス流路を形成した場合、例えば、セルの組立時に加わる圧力などにより、互いに隣接するガス流路を隔てるリブ部が変形して、ガス流路の断面積が過剰に小さくなってしまうおそれがある。
【0019】
基材レスガス拡散層の強度を強くするには、低多孔度化(高密度化)すればよい。しかしながら、この場合、ガス拡散性が阻害されて、特にリブ部の鉛直下方の触媒層に反応ガスが届かず、面内発電分布にバラツキが生じ、電圧が低下する。すなわち、結果として発電性能が低下することとなる。
【0020】
従って、本発明の目的は、前記課題を解決することにあって、一方の主面にガス流路が形成されたガス拡散層において、発電性能を一層向上させることができるガス拡散層及びその製造方法、並びに当該ガス拡散層を備えた燃料電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
前記目的を達成するために、本発明は以下のように構成する。
本発明の第1態様によれば、燃料電池に用いるガス拡散層において、
前記ガス拡散層は、
一方の主面にガス流路が形成された第1拡散層と、
前記第1拡散層の他方の主面上に積層された第2拡散層と、
を有する複層構造で構成され、
前記第1及び第2拡散層は、導電性粒子と高分子樹脂とを主成分とした多孔質部材で構成され、
前記第1拡散層の多孔度は、前記第2拡散層の多孔度よりも低い、
燃料電池用ガス拡散層を提供する。
【0022】
ここで、「導電性粒子と高分子樹脂とを主成分とした多孔質部材」とは、炭素繊維を基材として使用することなく、導電性粒子と高分子樹脂とで支持される構造(いわゆる自己支持体構造)を持つ多孔質部材を意味する。導電性粒子と高分子樹脂とで多孔質部材を構成する場合、例えば、後述するように界面活性剤と分散溶媒とを用いる。この場合、製造工程中に、焼成により界面活性剤と分散溶媒とを除去するが、十分に除去できずにそれらが多孔質部材中に残留することが有り得る。従って、炭素繊維を基材として使用しない自己支持体構造である限り、そのようにして残留した界面活性剤と分散溶媒が多孔質部材に含まれてもよいことを意味する。また、炭素繊維を基材として使用しない自己支持体構造である限り、他の材料が多孔質部材に含まれても良いことも意味する。
【0023】
本発明の第2態様によれば、前記第1及び第2拡散層は、導電性粒子と高分子樹脂とを主成分とし、前記高分子樹脂よりも少ない重量の炭素繊維が添加された多孔質部材で構成されている、第1態様に記載の燃料電池用ガス拡散層を提供する。
【0024】
本発明の第3態様によれば、前記炭素繊維は、気相成長法炭素繊維、ミルドファイバー、チョップファイバーのうちのいずれか1つである、第2態様に記載の燃料電池用ガス拡散層を提供する。
【0025】
本発明の第4態様によれば、前記第2拡散層よりも前記第1拡散層の方が、前記炭素繊維の組成比率が高い、第2又は3態様に記載の燃料電池用ガス拡散層を提供する。
【0026】
本発明の第5態様によれば、前記第1拡散層に含まれる前記導電性粒子は、平均粒子径が異なる2種類以上のカーボン材料で構成されている、第1〜4態様のいずれか1つに記載の燃料電池用ガス拡散層を提供する。
【0027】
本発明の第6態様によれば、前記第2拡散層よりも前記第1拡散層の方が、前記高分子樹脂の組成比率が低い、第1〜5態様のいずれか1つに記載の燃料電池用ガス拡散層を提供する。
【0028】
本発明の第7態様によれば、前記第1拡散層の多孔度は、20%以上50%未満である、第1〜6態様のいずれか1つに記載の燃料電池用ガス拡散層を提供する。
【0029】
本発明の第8態様によれば、前記第2拡散層の多孔度は、65%以上80%未満である、第1〜7態様のいずれか1つに記載の燃料電池用ガス拡散層を提供する。
【0030】
本発明の第9態様によれば、高分子電解質膜と、
前記高分子電解質膜を挟んで互いに対向する一対の触媒層と、
前記高分子電解質膜及び前記一対の触媒層を挟んで互いに対向する一対のガス拡散層と、
前記高分子電解質膜、前記一対の触媒層、及び一対のガス拡散層を挟んで互いに対向する一対の集電板と、
を備える燃料電池において、
前記一対のガス拡散層の少なくとも一方は、第1〜8態様のいずれか1つに記載のガス拡散層であり、
前記第1拡散層が前記集電板に接し、前記第2拡散層が前記触媒層に接している、
燃料電池を提供する。
【0031】
本発明の第10態様によれば、高分子電解質膜と、
前記高分子電解質膜の一方の主面上に形成されたアノード触媒層と、
前記アノード触媒層上に積層されたアノードガス拡散層と、
前記アノードガス拡散層上に積層され、前記アノードガス拡散層に接する主面にガス流路が形成されたセパレータと、
前記高分子電解質膜の他方の主面上に形成されたカソード触媒層と、
前記カソード触媒層上に積層されたカソードガス拡散層と、
前記カソードガス拡散層上に積層された集電板と、
を備え、
前記カソードガス拡散層は、第1〜8態様のいずれか1つに記載のガス拡散層であり、
前記第1拡散層が前記集電板に接し、前記第2拡散層が前記触媒層に接している、
燃料電池を提供する。
【0032】
本発明の第11態様によれば、燃料電池に用いるガス拡散層の製造方法において、
多孔度が異なる2つのシート状の多孔質部材をそれぞれ作製し、
前記作製した2つの多孔質部材のうち多孔度が低い多孔質部材を、ガス流路の形状に対応する突起部を有する金型内に配置した後、圧延して、当該多孔度が低い多孔質部材の一方の主面にガス流路を形成し、
前記ガス流路を形成した多孔度が低い多孔質部材の他方の主面に、前記多孔度が高い多孔質部材を積層して貼り合わせる、
ことを含む、燃料電池用ガス拡散層の製造方法を提供する。
【0033】
本発明の第12態様によれば、燃料電池に用いるガス拡散層の製造方法において、
多孔度が異なる2つのシート状の多孔質部材をそれぞれ作製し、
前記作製した2つの多孔質部材を積層し、
前記積層した2つの多孔質部材を、ガス流路の形状に対応する突起部を有する金型内に、多孔度が低い多孔質部材側が前記突起部に対向するように配置した後、圧延して、当該多孔度が低い多孔質部材の一方の主面にガス流路を形成する、
ことを含む、燃料電池用ガス拡散層の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0034】
本発明の燃料電池用ガス拡散層によれば、ガス拡散層を第1拡散層と第2拡散層とを有する複層構造とし、ガス流路が形成された第1拡散層の多孔度を第2拡散層より低くしている。すなわち、第1拡散層の強度を第2拡散層より高くしている。これにより、複数のセルを積層して加圧締結する際などに加わる圧力により、互いに隣接するガス流路を隔てるリブ部が変形して、ガス流路が閉塞してしまうことを抑えることができる。また、反応ガスがリブ部の内部を透過することを抑えることができ、ガス流路の上流部から下流部までガス流路の形状に沿って反応ガスが一定の流速で流れることができる。また、第2拡散層の多孔度は第1拡散層よりも高いので、第2拡散層のガス拡散性によりリブ部の鉛直下方にも反応ガスが拡散されることになり、面内発電分布のバラツキを抑えることができる。従って、発電性能を一層向上させることができる。また、第1及び第2拡散層は、導電性粒子と高分子樹脂とを主成分とした多孔質部材で構成されているので、低コスト化を図ることができるとともに、複雑な形状のガス流路も容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施形態にかかる燃料電池の基本構成を示す模式断面図である。
【図2】本発明の実施形態にかかるガス拡散層単体の構成を示す模式断面図である。
【図3】本発明の実施形態にかかるガス拡散層の製造方法を示すフローチャートである。
【図4A】本発明の実施形態にかかるガス拡散層の製造方法を示す模式説明図である。
【図4B】図4Aに続く工程を示す模式説明図である。
【図4C】図4Bに続く工程を示す模式説明図である。
【図5】本発明の実施形態にかかるガス拡散層の別の製造方法を示すフローチャートである。
【図6A】本発明の実施形態にかかるガス拡散層の別の製造方法を示す模式説明図である。
【図6B】図6Aに続く工程を示す模式説明図である。
【図6C】図6Bに続く工程を示す模式説明図である。
【図7】本発明の実施形態にかかる燃料電池の基本構成の変形例を示す模式断面図である。
【図8】図8は、従来の燃料電池の構成を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の全ての図において、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0037】
《実施形態》
図1は、本発明の実施形態にかかる燃料電池の基本構成を示す模式断面図である。本実施形態にかかる燃料電池は、水素を含有する燃料ガスと、空気などの酸素を含有する酸化剤ガスとを電気化学的に反応させることにより、電力と熱とを同時に発生させる高分子電解質形燃料電池である。なお、本発明は高分子電解質形燃料電池に限定されるものではなく、種々の燃料電池に適用可能である。
【0038】
図1において、本実施形態にかかる燃料電池は、膜電極接合体10(以下、MEAという)と、MEA10の両面に配置された導電性を有する一対の平板状の集電板20A,20Cとを有するセル(単電池)1を備えている。なお、本実施形態にかかる燃料電池は、このセル1を複数個積層して構成されてもよい。この場合、互いに積層されたセル1は、燃料ガス及び酸化剤ガスがリークしないように且つ接触抵抗を減らすために、ボルトなどの締結部材(図示せず)により所定の締結圧にて加圧締結されることが好ましい。
【0039】
MEA10は、水素イオンを選択的に輸送する高分子電解質膜11と、当該高分子電解質膜11の両面に形成された一対の電極層とを備えている。一対の電極層の一方はアノード電極(燃料極ともいう)12Aであり、他方はカソード電極(空気極ともいう)12Cである。アノード電極12Aは、高分子電解質膜11の一方の面上に形成され、白金属触媒を坦持したカーボン粉末を主成分とする一対のアノード触媒層13Aと、このアノード触媒層13A上に形成され、集電作用とガス透過性と撥水性とを併せ持つアノードガス拡散層14Aとを有している。カソード電極12Cは、高分子電解質膜11の他方の面上に形成され、白金属触媒を坦持したカーボン粉末を主成分とする一対のカソード触媒層13Cと、このカソード触媒層13C上に形成され、集電作用とガス透過性と撥水性とを併せ持つカソードガス拡散層14Cとを有している。
【0040】
アノードガス拡散層14Aは、第1拡散層の一例である第1アノード拡散層15Aと第2拡散層の一例である第2アノード拡散層16Aとを有する複層構造で構成されている。第1及び第2アノード拡散層15A,16Aは、炭素繊維を基材として用いない基材レスガス拡散層で構成されている。具体的には、第1及び第2アノード拡散層15A,16Aは、導電性粒子と高分子樹脂とを主成分とした多孔質部材で構成されている。第1アノード拡散層15Aの一方の主面には、燃料ガスを流すための燃料ガス流路21Aが設けられている。互いに隣接する燃料ガス流路21A,21Aを隔てるリブ部22Aの先端は、所定の圧力で集電板20Aに接している。これにより、燃料ガス流路21A外に燃料ガスが流れること(外部リーク)が防止されている。第1アノード拡散層15Aの他方の主面は第2アノード拡散層16Aと接している。第1アノード拡散層15Aは、第2アノード拡散層16Aよりも多孔度が低く構成されている。第2アノード拡散層16Aはアノード触媒層13Aと接している。
【0041】
カソードガス拡散層14Cは、第1拡散層の一例である第1カソード拡散層15Cと第2拡散層の一例である第2カソード拡散層16Cとを有する複層構造で構成されている。第1及び第2カソード拡散層15C,16Cは、炭素繊維を基材として用いない基材レスガス拡散層で構成されている。具体的には、第1及び第2カソード拡散層15C,16Cは、導電性粒子と高分子樹脂とを主成分とした多孔質部材で構成されている。第1カソード拡散層15Cの一方の主面には、酸化剤ガスを流すための酸化剤ガス流路21Cが設けられている。互いに隣接する酸化剤ガス流路21C,21Cを隔てるリブ部22Cの先端は、所定の圧力で集電板20Cに接している。これにより、酸化剤ガス流路21C外に酸化剤ガスが流れること(外部リーク)が防止されている。第1カソード拡散層15Cの他方の主面は第2カソード拡散層16Cと接している。第1カソード拡散層15Cは、第2カソード拡散層16Cよりも多孔度が低く構成されている。第2カソード拡散層16Cはカソード触媒層13Cと接している。
【0042】
燃料ガス流路21Aを通じてアノード電極12Aに燃料ガスが供給されるとともに、酸化剤ガス流路21Cを通じてカソード電極12Cに酸化剤ガスが供給されることで、電気化学反応が起こり、電力と熱とが発生する。
【0043】
なお、反応ガスがリークしないように且つ接触抵抗を減らすために、ボルトなどの締結部材(図示せず)によりセル1を加圧締結するとき、締結圧は、2〜10kgf/cm2であることが好ましい。締結圧が10kgf/cm2より大きい場合には、リブ部22A,22Cが変形し易くなる。一方、締結圧が2kgf/cm2でより小さい場合には、部材間の接触抵抗が急増したり、燃料ガス流路21A又は酸化剤ガス流路21Cに沿って燃料ガス又は酸化剤ガスが流れ難くなる。
【0044】
集電板20A,20Cは、ガス透過性が低い金属などの材料で構成されている。好ましくは、集電板20A,20Cは、耐食性、導電性、ガス不透過性、平坦性に優れたカーボン、金属などの材料で構成される。なお、集電板20A,20Cには、冷却水などが通る冷却水流路(図示せず)が設けられていてもよい。
【0045】
集電板20Aと高分子電解質膜11との間には、燃料ガスが外部に漏れるのを防ぐために、アノード触媒層13A及びアノードガス拡散層14Aの側面を覆うようにシール材としてアノードガスケット17Aが配置されている。また、集電板20Cと高分子電解質膜11との間には、酸化剤ガスが外部に漏れることを防ぐために、カソード触媒層13C及びカソードガス拡散層14Cの側面を覆うようにシール材としてカソードガスケット17Cが配置されている。
【0046】
アノードガスケット17A及びカソードガスケット17Cの材料としては、一般的な熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などを用いることができる。例えば、アノードガスケット17A及びカソードガスケット17Cの材料として、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリイミド系樹脂、アクリル樹脂、ABS樹脂、ポリプロピレン、液晶性ポリマー、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリスルホン、ガラス繊維強化樹脂などを用いることができる。
【0047】
なお、アノードガスケット17A及びカソードガスケット17Cは、それらの一部がアノードガス拡散層14A又はカソードガス拡散層14Cの周縁部に含浸しているほうが好ましい。これにより、発電耐久性及び強度を向上させることができる。
【0048】
また、アノードガスケット17A及びカソードガスケット17Cに代えて、集電板20Aと集電板20Cとの間に、高分子電解質膜11、アノード電極12A、及びカソード電極12Cの側面を覆うように、ガスケットを配置してもよい。これにより、高分子電解質膜11の劣化を抑制し、MEA10のハンドリング性、量産時の作業性を向上させることができる。
【0049】
次に、本実施形態にかかるアノードガス拡散層14A及びカソードガス拡散層14Cの構成についてさらに詳細に説明する。ここで、アノードガス拡散層14Aとカソードガス拡散層14Cとは、特に断りが無い限り同じ構成を有している。このため、これらに共通する事項について説明する場合には、これらを単にガス拡散層14という。また、第1アノード拡散層15A及び第1カソード拡散層15Cは、第1拡散層15といい、第2アノード拡散層16A及び第2カソード拡散層16Cは、第2拡散層16という。さらに、燃料ガス流路21A及び酸化剤ガス流路21Cはガス流路21といい、リブ部22A,22Cはリブ部22という。図2は、ガス拡散層単体の構成を示す模式断面図である。
【0050】
ガス拡散層14は、以下の3つの機能を有している。1つ目は、ガス流路21から流れる反応ガスをガス流路21の鉛直下方だけでなく、リブ部22の鉛直下方にまで拡散させるガス拡散性機能である。2つ目は、触媒層内を適度に湿潤させつつ、過剰水を排出する水マネジメント機能である。3つ目は、電子移動パスを形成する集電性機能である。
【0051】
ガス拡散層14は、第1拡散層15と第2拡散層16との2層構造で構成されている。第1及び第2拡散層15,16は、それぞれ、導電性粒子と高分子樹脂とを主成分としたシート状で且つゴム状の多孔質部材で構成されている。第1拡散層15の多孔度は、第2拡散層16の多孔度より低く設定されている。第1及び第2拡散層15,16の多孔度は、後述するように、使用する材料の組成、製造時に加える圧延力、圧延回数などを異ならせることにより変化させることができる。
【0052】
第1拡散層15の多孔度は、20%以上50%未満であることが好ましい。第1拡散層15の多孔度が20%未満である場合には、ガス透過性が低下して、リブ部22の鉛直下方だけでなくガス流路21の鉛直下方にも反応ガスが到達しなくなり、発電性能が著しく低下する。一方、第1拡散層15の多孔度が50%以上である場合には、強度が低下して、リブ部22が変形し易くなる。
【0053】
第2拡散層16の多孔度は、65%以上80%未満であることが好ましい。第2拡散層16の多孔度が65%未満である場合には、ガス透過性が低下して、厚み方向に反応ガスが流れにくくなり、リブ部22の鉛直下方での発電が困難になる。一方、炭素繊維を基材として用いずにガス拡散層の多孔度を80%以上とすることは、製造プロセス上、困難である。仮に、多孔度80%以上のガス拡散層を製造することができたとしても、強度が著しく低下し、ガス拡散層としての機能を果すことができない。
【0054】
第1及び第2拡散層15,16を構成する導電性粒子の材料としては、例えば、グラファイト、カーボンブラック、活性炭などのカーボン材料が挙げられる。カーボンブラックとしては、アセチレンブラック(AB)、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、バルカンなどが挙げられる。なお、それらの中でもカーボンブラックの主成分としてアセチレンブラックが用いられることが、不純物含有量が少なく、電気伝導性が高いという観点から好ましい。また、グラファイトの主成分としては、天然黒鉛、人造黒鉛などが挙げられる。これらの中でもグラファイトの主成分として人造黒鉛が用いられることが、不純物量が少ないという観点から好ましい。また、カーボン材料の原料形態としては、例えば、粉末状、繊維状、粒状などが挙げられる。それらの中でも粉末状がカーボン材料の原料形態として採用されることが、分散性、取り扱い性の観点から好ましい。
【0055】
第1拡散層15に含まれる導電性粒子は、平均粒子径が異なる2種類のカーボン材料を混合して構成されることが好ましい。これにより、平均粒子径が大きな粒子同士の隙間に平均粒子径が小さな粒子が入り込むことができるので、第1拡散層15の全体の多孔度を低多孔度化(例えば、60%以下に)することが容易になる。一方のカーボン材料としてアセチレンブラックを用いた場合において、充填構造を作成し易い他方のカーボン材料としては、人造黒鉛が挙げられる。なお、アセチレンブラックの平均粒子径D50(相対粒子量が50%の時の粒子径:メディアン径ともいう)は、D50=5μmであり、人造黒鉛の平均粒子径D50は、D50=15〜20μmである(レーザ回折式粒度測定装置マイクロトラックHRAを使用して測定)。
【0056】
なお、前記導電性粒子を3種類以上のカーボン材料を混合して構成した場合にも、充填構造を構成することが容易である。しかしながら、この場合、分散、混錬、圧延条件などの材料の取り扱い(最適化)が複雑化するので、前記導電性粒子は2種類のカーボン材料を混合して構成されることがより好ましい。
【0057】
また、前記導電性粒子をアセチレンブラックと人造黒鉛を混合して構成した場合、それらの配合比率(重量比)は、アセチレンブラックが1に対して人造黒鉛は0.3以上であることが好ましい。人造黒鉛の配合比率を0.3以上とすることで、多孔度を効果的に低くすることができる。
【0058】
第2拡散層16は、第1拡散層15とは逆に、多孔度を高くする必要があるので、第2拡散層16に含まれる導電性粒子は、1種類のカーボン材料で構成されることが好ましい。また、当該1種類のカーボン材料は、粒子径のバラツキが少ないことが好ましい。また、第2拡散層16に含まれる導電性粒子は、第1拡散層15と同様に、平均粒子径が異なる2種類以上のカーボン材料で構成されてもよい。しかしながら、この場合、充填構造が形成されないように、各カーボン材料の配合比率を調整することが好ましい。例えば、前記導電性粒子をアセチレンブラックと人造黒鉛を混合して構成した場合、それらの配合比率(重量比)は、アセチレンブラックが1に対して人造黒鉛は0.3未満であることが好ましい。
【0059】
第1及び第2拡散層15,16を構成する高分子樹脂は、前記導電性粒子同士を結着するバインダーとしての機能を有する。また、前記高分子樹脂は、撥水性を有するため、燃料電池の内部にて水を系内に閉じ込める機能(保水性)も有する。前記高分子樹脂の組成比率が低くなる程、ガス拡散層自体の親水性が高くなる。ガス流路21近傍の親水性が高いと、結露水を系外に排出し易くなる。このため、第2拡散層16よりも第1拡散層15の方が、前記高分子樹脂の配合比率が低いことが好ましい。また、高分子樹脂は非導電性であるので、第1拡散層15の高分子樹脂の配合比率を低くすることで、リブ部22と集電板20A,20Cとの接触抵抗を低減することができる。
【0060】
前記高分子樹脂の材料としては、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、FEP(テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体)、PVDF(ポリビニリデンフルオライド)、ETFE(テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体)、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)などが挙げられる。これらの中でも前記高分子樹脂の材料としてPTFEが使用されることが、耐熱性、撥水性、耐薬品性の観点から好ましい。PTFEの原料形態としては、ディスパージョン、粉末状などがあげられる。それらの中でもディスパージョンがPTFEの原料形態として採用されることが、作業性の観点から好ましい。
【0061】
第1拡散層15に形成されるガス流路21の形状(パターン)は、特に限定されるものではなく、従来のセパレータに形成されていたガス流路の形状と同様に形成することができる。このようなガス流路の形状としては、例えばストレート型、サーペンタイン型等が挙げられる。
【0062】
ガス流路21の幅は、電極面積、ガス流量、電流密度、加湿条件、セル温度などにより最適値は大きく異なるが、0.1mm〜3.0mmの範囲内、特に0.2mm〜1.5mmの範囲内であることが好ましい。ガス流路21の幅が0.1mm未満である場合には、燃料電池において通常流される反応ガスの量に対してガス流路21の幅が十分でない可能性がある。一方、ガス流路21の幅が3.0mmより大きい場合には、反応ガスがガス流路21の全体に流れなくなり、反応ガスの滞留が生じてフラッディングが起こる可能性がある。
【0063】
ガス流路21の深さは、電極面積、ガス流量、電流密度、加湿条件、セル温度などにより大きく異なるが、0.015mm〜2.0mmの範囲内、特に0.03mm〜0.8mmの範囲内であることが好ましい。ガス流路21の深さが0.015mm未満である場合には、燃料電池において通常流される反応ガスの量に対してガス流路21の深さが十分でない可能性がある。一方、ガス流路21の深さが2,0mmより大きい場合には、反応ガスがガス流路21の全体に流れなくなり、反応ガスの滞留が生じてフラッディングが起こる可能性がある。
【0064】
第1拡散層15に形成されるリブ部22の幅は、0.1mm〜3.0mmの範囲内、特に0.2mm〜2.0mmの範囲内であることが好ましい。リブ部22の幅が0.1mm未満である場合は、強度が低下してガス流路21が変形し易くなる。一方、リブ部22の幅が2.0mmより大きい場合には、リブ部22の鉛直下方の面積が大きくなるため、反応ガスが第1拡散層15内で均一に拡散されず、面内発電分布にバラツキが生じるおそれがある。
【0065】
第2拡散層16の厚さは、ガス利用率、電流密度、加湿条件、セル温度などにより最適値は大きく異なるが、0.05mm〜1.0mmの範囲内、特に0.1mm〜0.4mmの範囲内であることが好ましい。
【0066】
第1拡散層15に対する第2拡散層16の厚さの比は、0.3〜2.0の範囲内であることが好ましい。第1拡散層15に対する第2拡散層16の厚さの比が0.3未満である場合には、厚み方向のガス拡散性が低下して、リブ部22の鉛直下方に反応ガスが到達しなくなる。これにより、面内発電分布にバラツキが生じ、発電性能が低下することになる。一方、第1拡散層15に対する第2拡散層16の厚さの比が2.0よりも大きい場合には、ガス拡散層14全体の厚さが厚くなり過ぎるため、反応ガスが触媒層13A,13Cに到達しなくなるとともに電気抵抗が増加して、発電性能が低下することになる。
【0067】
なお、第1及び第2拡散層15,16は、炭素繊維を基材として用いることなく、導電性粒子と高分子樹脂とで支持される構造(いわゆる自己支持体構造)であればよい。従って、第1及び第2拡散層15,16には、導電性粒子及び高分子樹脂以外に、ガス拡散層の製造時に使用する界面活性剤及び分散溶媒などが微量含まれていてもよい。分散溶媒としては、例えば、水、メタノール、及びエタノールなどのアルコール類、エチレングリコールなどのグリコール類が挙げられる。界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルなどのノニオン系、アルキルアミンオキシドなどの両性イオン系が挙げられる。製造時に使用する分散溶媒の量及び界面活性剤の量は、導電性粒子の種類、高分子樹脂の種類、それらの配合比率などに応じて適宜設定すればよい。なお、一般的には、分散溶媒の量及び界面活性剤の量が多いほど、導電性粒子と高分子樹脂とが均一に分散しやすい傾向がある一方で、流動性が高くなり、ガス拡散層のシート化が難しくなる傾向がある。
【0068】
また、第1及び第2拡散層15,16には、基材としては成立しない重量(例えば、導電性粒子及び高分子樹脂よりも少ない重量)の炭素繊維が含まれていてもよい。炭素繊維には、補強効果があるので、炭素繊維の配合比率を高くすることによって、強度の高いガス拡散層を製造することができる。また、リブ部22の変形を抑えるため、第2拡散層16よりも第1拡散層15の方が高い強度が必要である。このため、第2拡散層16よりも第1拡散層15の方が炭素繊維の配合比率が高いことが好ましい。第1拡散層15の炭素繊維の配合比率を高くすることで、第1拡散層15は高導電性になるので、リブ部22と集電板20A,20Cとの接触抵抗を低減することもできる。
【0069】
前記炭素繊維の材料としては、例えば、気相成長法炭素繊維(以下、VGCFという)、ミルドファイバー、カットファイバー、チョップファイバーなどが挙げられる。前記炭素繊維としてVGCFを使用する場合、例えば、繊維径0.15μm、繊維長15μmのものを使用すればよい。また、前記炭素繊維としてミルドファイバー、カットファイバー、又はチョップファイバーを使用する場合、例えば、繊維径5〜20μm、繊維長20μm〜100μmであるものを使用すればよい。
【0070】
前記ミルドファイバー、カットファイバー、又はチョップファイバーの原料は、PAN系、ピッチ系、レイヨン系のいずれでもよい。また、前記ファイバーは、原糸(長繊維フィラメント又は短繊維ステーブル)を切断、裁断することにより作製された短繊維の束を分散させて使用することが好ましい。
【0071】
前記炭素繊維の配合量は、高分子樹脂よりも少ない重量であることが好ましい。基材レスガス拡散層の高強度化には炭素繊維を少量配合することでも十分に効果がある。前記炭素繊維の配合量を高分子樹脂よりも多くすると、炭素繊維が膜を突き刺し、膜劣化が生じて性能低下する懸念が生じやすくなる。また、コストが高くなる要因になる。また、第1及び第2拡散層15,16は、炭素繊維を基材として用いなければよく、導電性粒子と高分子樹脂と炭素繊維とで支持される自己支持体構造であってもよい。
【0072】
アノードガス拡散層14Aの第2アノードガス拡散層16Aの多孔度は、カソードガス拡散層14Cの第2カソードガス拡散層16Cの多孔度より低いことが好ましい。これにより、第2アノードガス拡散層16Aの保水性を第2カソードガス拡散層16Cの保水性に比べて高くすることができる。また、第2カソードガス拡散層16Cのガス拡散性を第2アノードガス拡散層16Aのガス拡散性に比べて高くすることができる。
【0073】
次に、図3、図4A〜図4Cを参照しつつ、本発明の実施形態にかかるガス拡散層14の製造方法の一例について説明する。図3は、本発明の実施形態にかかるガス拡散層の製造方法を示すフローチャートである。図4A〜図4Cは、その模式説明図である。
【0074】
まず、ステップS1では、多孔度の異なる2つのシート状の多孔質部材を作製する。
シート状の多孔質部材は、例えば、以下のようにして作製することができる。
【0075】
まず、導電性粒子と界面活性剤と分散溶媒とを混錬機に投入し混錬した後、それらの混錬物の中に高分子樹脂材料を添加して分散させる。なお、カーボン材料と高分子樹脂材料とを別々に混錬機に投入せず、全ての材料を同時に混錬機に投入してもよい。次いで、混錬して得た混錬物をロールプレス機又は平板プレス機などで圧延してシート状に成形する。次いで、シート状に成形した混錬物を焼成して、前記混錬物中から界面活性剤と分散溶媒とを除去する。ここで、焼成温度及び焼成時間は、界面活性剤と分散溶媒とが蒸発又は分解する温度及び時間とすることが好ましい。次いで、界面活性剤と分散溶媒とを除去した混錬物を再圧延して厚さを調整する。これにより、シート状の多孔質部材を作製することができる。
【0076】
多孔度の異なる2つのシート状の多孔質部材は、前記作製工程において、使用する導電性粒子、プレス機による圧延力、圧延回数などを変えることで製造することができる。例えば、多孔度の高い多孔質部材を作製する場合には、1種類のカーボン材料を用い、多孔度の低い多孔質部材を作製する場合には、平均粒子径が異なる2種類のカーボン材料を用いればよい。これにより、多孔度の異なる2つの多孔質部材を得ることができる。また、多孔度の低い多孔質部材を作製する際、多孔度の高い多孔質部材の作製する際よりも、プレス機による圧延力又は圧延回数を多くすることで、2つの多孔質部材の多孔度の差を大きくすることができる。このようにして作製した2つのシート状の多孔質部材のうち、多孔度の低い多孔質部材にガス流路21を形成したものが第1拡散層15となり、多孔度の高い多孔質部材が第2拡散層16となる。ここでは、ガス流路21の形成前の多孔質部材を、多孔質部材15aという。
【0077】
なお、前記では、前記混錬物をロールプレス機又は平板プレス機などで圧延してシート状の多孔質部材を作製したが、本発明はこれに限定されない。例えば、前記混錬物を押し出し機に投入し、押し出し機のダイヘッドから連続的にシート成形して、シート状の多孔質部材を作製することもできる。また、押し出し機が備えるスクリューの形状を工夫して、当該スクリューに混練機能を持たせることにより、前記混練機を使用せずに前記混錬物を得ることができる。すなわち、前記各カーボン材料の攪拌、混練、シート成形を一台の機械で一体的に行うことができる。
【0078】
次いで、ステップS2では、図4A及び図4Bに示すように、多孔度の低い多孔質部材15aをガス流路21の形状に対応する突起部31aを有する一組の金型31,32内に配置した後、圧延機械にて金型31,32を型閉じして圧延する。これにより、図4Cに示すように、多孔度の低い多孔質部材15aにガス流路21が形成され、第1拡散層15を得ることができる。
【0079】
なお、金型31,32は、圧延機械と一体に構成されていても良いが、圧延機械に着脱可能に構成されている方が取り扱いやすい。また、圧延機械としては、ロールプレス機又は平板プレス機を用いることができる。これらのうち圧延機械として、面精度が高いロールプレス機を用いる方が、第1拡散層15の厚さバラツキを低減することができるので好ましい。このとき、一般的なグラビアロール機と同様に、ロールの表面に直接、突起部31aを有する金型31,32が形成されていることが好ましい。
【0080】
また、圧延機械による圧延時には、適宜、多孔度の低い多孔質部材15aを加温するようにしても良い。この場合、加温温度は、250℃以下であることが好ましい。加温温度が250℃以下であるとき、多孔度の低い多孔質部材15aが軟化して、ガス流路21の形成が容易になる。一方、加温温度が250℃より高くなると、多孔度の低い多孔質部材15aが劣化するおそれがある。圧延機械の圧延力は、500kgf/cm2未満であることが好ましい。圧延機械の圧延力は、高いほど、ガス流路21の形成が容易になるが、多孔度の低い多孔質部材15aに500kgf/cm2以上の圧延力が加わると、割れや材料破壊が生じるおそれがある。
【0081】
また、圧延機械による圧延後に金型31,32と多孔度の低い多孔質部材15aとが密着することを防止するために、離型剤をあらかじめ塗布しておいても良い。この離型剤としては、燃料電池の発電性能に影響を及ぼさない範囲で適宜選択可能であるが、蒸留水又は界面活性剤希釈蒸留水を用いることが好ましい。また、離型剤に代えて、PTFE樹脂製のシートを使用しても良い。金型31,32の材質は、ステンレス鋼、ニッケルクロムモリブデン鋼、超硬合金鋼、SKD11、SKD12、Ni−P硬化クロムなどの工具鋼、セラミックス、ガラス繊維強化プラスチックなどから選択可能である。さらに、金型31,32の表面には、耐食性及び離型性を高めるために、硬質Crメッキ、PVD皮膜、TiC皮膜、TD処理、Zr溶射処理、PTFEコーティングなどの表面処理を施してもよい。前記ロールの表面に直接、突起部31aを有する金型31,32が形成されている場合も同様である。
【0082】
次いで、ステップS3では、図4Cに示すように、前記のようにして作製した第1拡散層15と第2拡散層16とを積層して、平板プレス機33にて貼り合わせる。このとき、第2拡散層16は、第1拡散層15のガス流路形成面とは反対側の主面に貼り合わせる。これにより、図2に示すガス拡散層14を得ることができる。
【0083】
前記のように、第1拡散層15と第2拡散層16との貼り合わせに平板プレス機33を使用することにより、ガス拡散層14が厚み方向に反る(波打ちする)ことを防止することができる。
【0084】
なお、平板プレス機33による貼り合わせは、2kg/cm2以下の面圧で行うことが好ましい。面圧が2kg/cm2より大きい場合には、リブ部22が変形してガス流路21が狭くなるおそれがある。
【0085】
また、第1拡散層15と第2拡散層16との貼り合わせは、導電フィラーとバインダーを主成分とする導電性接着剤を用いて行っても良い。また、第1拡散層15と第2拡散層16との貼り合わせは、高分子電解質膜11と類似成分を含む分散溶液(例えば、デュポン社製ナフィオン:登録商標)、又は少量の蒸留水を用いて行ってもよい。
【0086】
なお、本実施形態においては、前記ステップS1〜S3を行うことによりガス拡散層14を製造したが、本発明はこれに限定されない。例えば、各ステップの間に適宜、他の作業が含まれていても良い。
【0087】
また、前記ステップS3においては、第1拡散層15と第2拡散層16とを積層して、平板プレス機33にて貼り合わせるとしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、ステップS3において、第1拡散層15と金型32との間に第2拡散層16を配置し、圧延機械にて金型31,32を型閉じして貼り合わせてもよい。具体的には、前記ステップS2において、圧延機械にて金型31,32を型閉じして圧延し、第1拡散層15を得る。次いで、ステップS3において、第1拡散層15のガス流路形成面とは反対側の主面と金型32との間に、第2拡散層16を配置し、第1拡散層15と第2拡散層16とを積層して、圧延機械にて金型31,32を型閉じして貼り合わせればよい。
【0088】
前記のように、第1拡散層15と第2拡散層16との貼り合わせに金型31,32を使用することにより、前記ステップ2の後に金型31から第1拡散層15を取り外す工程を省略することができる。
【0089】
また、ガス拡散層14の別の製造方法としては、図5、図6A〜図6Cに示すような方法がある。図5は、ガス拡散層の別の製造方法を示すフローチャートである。図6A〜図6Cは、その模式説明図である。
【0090】
まず、ステップS11では、前記ステップS1と同様にして、多孔度の異なる2つのシート状の多孔質部材を作製する。
【0091】
次いで、ステップS12では、図6Aに示すように、多孔度の低い多孔質部材15aと、多孔度の高い多孔質部材である第2拡散層16とを積層する。
【0092】
なお、後続のステップS13にて、多孔度の低い多孔質部材15aと第2拡散層16との積層体を加圧するので、ステップS12では、多孔度の低い多孔質部材15aと第2拡散層16とを、単に積層するだけでよい。また、もちろん、前述したような平板プレス機33、導電性接着剤、分散溶媒、蒸留水などを用いて、多孔度の低い多孔質部材15aと第2拡散層16とをあらかじめ貼り合わせてもよい。
【0093】
次いで、ステップS13では、図6B及び図6Cに示すように、前記貼り合わせた多孔度の低い多孔質部材15aと第2拡散層16とを金型31,32内に配置する。このとき、多孔度の低い多孔質部材15aが突起部31aを設けた金型31と対向するように配置する。この後、金型31,32内に配置した多孔度の低い多孔質部材15aと第2拡散層16とを、圧延機械にて金型31,32を型閉じして圧延する。これにより、図2に示すガス拡散層14を得ることができる。なお、ガス拡散層14に厚み方向に反り(波打ち)が生じている場合には、例えば、平板プレス機33を用いて、2kg/cm2以下の面圧でガス拡散層14を加圧するようにすればよい。
【0094】
以上、本発明の実施形態にかかる燃料電池によれば、ガス拡散層14を第1拡散層15と第2拡散層16とを有する2層構造とし、ガス流路21が形成された第1拡散層15の多孔度を第2拡散層16より低くしている。すなわち、第1拡散層15の強度を第2拡散層16より高くしている。これにより、複数のセル1を積層して加圧締結する際などに加わる圧力により、互いに隣接するガス流路21を隔てるリブ部22が変形して、ガス流路21が閉塞してしまうことを抑えることができる。また、反応ガスがリブ部22の内部を透過することを抑えることができ、ガス流路21の上流部から下流部までガス流路21の形状に沿って反応ガスが一定の流速で流れることができる。また、第2拡散層16の多孔度は第1拡散層15よりも高いので、第2拡散層16のガス拡散性によりリブ部22の鉛直下方にも反応ガスが拡散されることになり、面内発電分布のバラツキを抑えることができる。従って、発電性能を一層向上させることができる。また、第1及び第2拡散層15,16は、導電性粒子と高分子樹脂とを主成分とした多孔質部材で構成されているので、低コスト化を図ることができるとともに、複雑な形状のガス流路も容易に形成することができる。
【0095】
なお、本発明において、多孔度は、次のようにして測定することができる。
まず、ガス拡散層を構成する各材料の真密度と組成比率から、製造したガス拡散層の見かけ真密度を算出する。
次いで、製造したガス拡散層の重量、厚さ、縦横寸法を測定して、製造したガス拡散層の密度を算出する。
次いで、多孔度=(ガス拡散層の密度)/(見かけ真密度)×100の式に、前記算出したガス拡散層の密度及び見かけ真密度を代入し、多孔度を算出する。
以上のようにして、製造したガス拡散層の多孔度を測定することができる。
なお、製造したガス拡散層の細孔径分布を、水銀ポロシメータを用いて測定したところ、累積細孔量から算出できる多孔度と、前記のようにして算出した多孔度とが一致していることを確認している。
【0096】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施できる。例えば、前記では、アノード側及びカソード側の両方に、本発明にかかる2層構造のガス拡散層14を配置したが、本発明はこれに限定されない。アノード側及びカソード側の少なくとも一方に、本発明にかかる2層構造のガス拡散層14を配置した構造としてもよい。
【0097】
カソード電極(空気極)の酸化剤ガス流路は、アノード電極(燃料極)の燃料ガス流路に比べて複雑な形状である方が、燃料電池の発電性能は高くなりやすい。しかしながら、金属、あるいはカーボンと樹脂とで構成された従来のセパレータに複雑な形状のガス流路を設けることは困難である。これに対して、本発明にかかる第1拡散層は、基材レスガス拡散層で構成されているので、ガス流路の形成が容易である。従って、例えば、図7に示すように、アノード側には、通常の単層構造のアノードガス拡散層214Aと、燃料ガス流路221Aを設けた通常のセパレータ220Aとを配置し、カソード側にのみ、酸化剤ガス流路21Cを有する2層構造のカソードガス拡散層14Cと集電板21Cとを配置するようにしてもよい。このような構成によっても、従来の構成に比べて、燃料電池の発電性能を一層向上させることができる。
【0098】
この場合、アノードガス拡散層214Aの多孔度は、カソードガス拡散層14Cの第2カソードガス拡散層16Cの多孔度より低いことが好ましい。これにより、アノードガス拡散層214Aの保水性を第2カソードガス拡散層16Cの保水性に比べて高くすることができる。また、第2カソードガス拡散層16Cのガス拡散性をアノードガス拡散層214Aのガス拡散性に比べて高くすることができる。
【0099】
なお、前記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明にかかる燃料電池用ガス拡散層及びその製造方法、並びに燃料電池は、一方の主面にガス流路が形成されたガス拡散層において、発電性能を一層向上させることができるので、例えば、自動車などの移動体、分散発電システム、家庭用のコージェネレーションシステムなどの駆動源として使用される燃料電池に有用である。
【0101】
本発明は、添付図面を参照しながら好ましい実施の形態に関連して充分に記載されているが、この技術に熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した請求の範囲による本発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料ガスとして、純水素、メタノールなどの液体燃料、あるいは、化石燃料などからの改質水素などの還元剤を用い、酸化剤ガスとして、空気(酸素)などを用いる燃料電池に関し、より詳しくは、当該燃料電池が備えるガス拡散層及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池、例えば高分子電解質形燃料電池は、水素を含有する燃料ガスと、空気などの酸素を含有する酸化剤ガスとを、白金などの触媒層を有するガス拡散層で電気化学的に反応させることにより、電力と熱とを同時に発生させる装置である。
【0003】
図8は、従来の高分子電解質形燃料電池の基本構成を示す模式図である。高分子電解質形燃料電池の単電池(セルともいう)100は、膜電極接合体110(以下、MEA:Membrane-Electrode-Assemblyという)と、MEA110の両面に配置された一対の板状の導電性のセパレータ120とを有している。
【0004】
MEA110は、水素イオンを選択的に輸送する高分子電解質膜(イオン交換樹脂膜)111と、当該高分子電解質膜111の両面に形成された一対の電極層112とを備えている。一対の電極層112は、高分子電解質膜111の両面に形成され、白金属触媒を坦持したカーボン粉末を主成分とする触媒層113と、当該触媒層113上に形成され、集電作用とガス透過性と撥水性とを併せ持つガス拡散層114とを有している。ガス拡散層114は、炭素繊維からなる多孔質な基材115と、カーボンと撥水材からなるコーティング層(撥水カーボン層)116とで構成されている。
【0005】
前記一対のセパレータ120には、ガス拡散層114と当接する主面に、燃料ガスを流すための燃料ガス流路121と、酸化剤ガスを流すための酸化剤ガス流路122とが設けられている。また、前記一対のセパレータ120には、冷却水などが通る冷却水流路123が設けられている。当該各ガス流路121,122を通じて前記一対の電極層112にそれぞれ燃料ガス及び酸化剤ガスが供給されることで、電気化学反応が起こり、電力と熱とが発生する。
【0006】
前記のように構成されるセル100は、図8に示すように1つ以上積層され、互いに隣接するセル100を電気的に直列に接続されて使用されるのが一般的である。なお、このとき、互いに積層されたセル100は、反応ガスである燃料ガス及び酸化剤ガスがリークしないように且つ接触抵抗を減らすために、ボルトなどの締結部材130により所定の締結圧にて加圧締結される。従って、MEA110とセパレータ120とは所定の圧力で面接触することになる。このとき、セパレータ120は、互いに隣接するMEA110,110同士を電気的に直列に接続するための集電性を有する。また、電気化学反応に必要なガスが外部に漏れるのを防ぐために、一対のセパレータ120,120の間には、触媒層113とガス拡散層114の側面を覆うようにシール材(ガスケット)117が配置されている。
【0007】
近年、燃料電池の分野においては、より一層の低コスト化が求められており、各構成部材の単価の低減、部品点数の削減などの観点から、様々な低コスト化の技術が提案されている。その1つとして、ガス流路を、セパレータに設けるのではなく、ガス拡散層に設ける技術が提案されている。
【0008】
図8に示す従来の燃料電池においては、セパレータにガス流路を設けている。この構成を実現する方法としては、例えば、セパレータの材料としてカーボンと樹脂とを用い、これらを、ガス流路の形状に対応する凹凸を有する金型を用いて射出成形する方法がある。しかしながら、この場合、製造コストが高いという課題がある。また、前記構成を実現する別の方法として、セパレータの材料として金属を用い、ガス流路の形状に対応する凹凸を有する金型を用いて当該金属を圧延する方法がある。しかしながら、この場合、前記射出成形法に比べて低コスト化を実現することができる一方で、セパレータが腐食しやすく、燃料電池としての発電性能が低下するという課題がある。
【0009】
一方、ガス拡散層は、ガス拡散性を備えるようにするために、多孔質部材で構成される。このため、ガス流路をガス拡散層に形成することの方がセパレータに形成することに比べて容易であり、低コスト化及び高発電性能化を図るのに有利である。このような構成を有するガス拡散層としては、例えば、特許文献1〜3に記載されたものがある。
【0010】
特許文献1には、直方体状に伸長された複数の流路型を備えた成型治具を用いて炭素繊維を基材とした多孔質部材を抄紙法によって成型し、当該成型後に前記成型治具を抜き取ることによって、ガス拡散層の内部にガス流路を形成する技術が記載されている。
【0011】
特許文献2には、ガス流路を形成する樹脂又は金属からなる隔壁をセパレータ上にパターン形成した後、当該隔壁を覆うように炭素繊維を基材とした多孔質部材を形成することによって、ガス拡散層にガス流路を形成する技術が記載されている。
【0012】
特許文献3には、炭素繊維を基材とした多孔質部材と平板状のセパレータとの間に、打ち抜きなどによりガス流路構造を形成したカーボンペーパーよりなる流路構成部材を配設することにより、ガス拡散層にガス流路を形成する技術が記載されている。
【0013】
また、ガス拡散層は、前記特許文献1〜3のように炭素繊維を基材とした多孔質部材で構成されるのが一般的である。しかしながら、炭素繊維を基材とした多孔質部材は、製造工程が複雑であり製造コストがかかるため、高価である。そこで、炭素繊維を基材とした多孔質部材を用いずにガス拡散層を構成することで、燃料電池の低コスト化を図る技術が提案されている。このような構成を有するガス拡散層としては、例えば、特許文献4に記載されたものがある。
【0014】
特許文献4には、炭素繊維を基材として用いずに、グラファイトとカーボンブラックと未焼成PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)と焼成PTFEとを混合してガス拡散層を構成する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2006−339089号公報
【特許文献2】特開2005−294121号公報
【特許文献3】特開2000−123850号公報
【特許文献4】特開2003−187809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
前記特許文献1〜3のように炭素繊維を基材とした多孔質部材でガス拡散層を構成した場合、その多孔度は通常80%以上と高くなる。このため、このガス拡散層にガス流路を形成した場合、互いに隣接するガス流路を隔てるリブ部の内部を反応ガスが透過(ショートカット)してしまうおそれがある。すなわち、燃料ガス又は酸化剤ガスが、ガス流路の上流部から下流部までガス流路の形状に沿って流れずにガス拡散性が低下し、それにより発電性能が低下するおそれがある。
【0017】
また、特許文献2の構成によれば、前記隔壁により、反応ガスがリブ部の内部を透過することを抑えられる。しかしながら、前記隔壁を樹脂で形成した場合には、導電性が低下することとなり、それによりIR損失が増大する。一方、前記隔壁を金属で形成した場合には、副反応が起こり易くなって高分子電解質膜の耐久性が低下する。すなわち、結果として、発電性能が低下するおそれがある。
【0018】
一方、特許文献4のように炭素繊維を基材として用いずにガス拡散層を構成した場合、その多孔度は80%より低くすることができる。従って、反応ガスがリブ部の内部を透過することを抑えることができる。しかしながら、炭素繊維を基材として用いずに構成したガス拡散層(以下、基材レスガス拡散層という)は、強度が弱いという課題がある。このため、基材レスガス拡散層に圧延などによりガス流路を形成した場合、例えば、セルの組立時に加わる圧力などにより、互いに隣接するガス流路を隔てるリブ部が変形して、ガス流路の断面積が過剰に小さくなってしまうおそれがある。
【0019】
基材レスガス拡散層の強度を強くするには、低多孔度化(高密度化)すればよい。しかしながら、この場合、ガス拡散性が阻害されて、特にリブ部の鉛直下方の触媒層に反応ガスが届かず、面内発電分布にバラツキが生じ、電圧が低下する。すなわち、結果として発電性能が低下することとなる。
【0020】
従って、本発明の目的は、前記課題を解決することにあって、一方の主面にガス流路が形成されたガス拡散層において、発電性能を一層向上させることができるガス拡散層及びその製造方法、並びに当該ガス拡散層を備えた燃料電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
前記目的を達成するために、本発明は以下のように構成する。
本発明の第1態様によれば、燃料電池に用いるガス拡散層において、
前記ガス拡散層は、
一方の主面にガス流路が形成された第1拡散層と、
前記第1拡散層の他方の主面上に積層された第2拡散層と、
を有する複層構造で構成され、
前記第1及び第2拡散層は、導電性粒子と高分子樹脂とを主成分とした多孔質部材で構成され、
前記第1拡散層の多孔度は、前記第2拡散層の多孔度よりも低い、
燃料電池用ガス拡散層を提供する。
【0022】
ここで、「導電性粒子と高分子樹脂とを主成分とした多孔質部材」とは、炭素繊維を基材として使用することなく、導電性粒子と高分子樹脂とで支持される構造(いわゆる自己支持体構造)を持つ多孔質部材を意味する。導電性粒子と高分子樹脂とで多孔質部材を構成する場合、例えば、後述するように界面活性剤と分散溶媒とを用いる。この場合、製造工程中に、焼成により界面活性剤と分散溶媒とを除去するが、十分に除去できずにそれらが多孔質部材中に残留することが有り得る。従って、炭素繊維を基材として使用しない自己支持体構造である限り、そのようにして残留した界面活性剤と分散溶媒が多孔質部材に含まれてもよいことを意味する。また、炭素繊維を基材として使用しない自己支持体構造である限り、他の材料が多孔質部材に含まれても良いことも意味する。
【0023】
本発明の第2態様によれば、前記第1及び第2拡散層は、導電性粒子と高分子樹脂とを主成分とし、前記高分子樹脂よりも少ない重量の炭素繊維が添加された多孔質部材で構成されている、第1態様に記載の燃料電池用ガス拡散層を提供する。
【0024】
本発明の第3態様によれば、前記炭素繊維は、気相成長法炭素繊維、ミルドファイバー、チョップファイバーのうちのいずれか1つである、第2態様に記載の燃料電池用ガス拡散層を提供する。
【0025】
本発明の第4態様によれば、前記第2拡散層よりも前記第1拡散層の方が、前記炭素繊維の組成比率が高い、第2又は3態様に記載の燃料電池用ガス拡散層を提供する。
【0026】
本発明の第5態様によれば、前記第1拡散層に含まれる前記導電性粒子は、平均粒子径が異なる2種類以上のカーボン材料で構成されている、第1〜4態様のいずれか1つに記載の燃料電池用ガス拡散層を提供する。
【0027】
本発明の第6態様によれば、前記第2拡散層よりも前記第1拡散層の方が、前記高分子樹脂の組成比率が低い、第1〜5態様のいずれか1つに記載の燃料電池用ガス拡散層を提供する。
【0028】
本発明の第7態様によれば、前記第1拡散層の多孔度は、20%以上50%未満である、第1〜6態様のいずれか1つに記載の燃料電池用ガス拡散層を提供する。
【0029】
本発明の第8態様によれば、前記第2拡散層の多孔度は、65%以上80%未満である、第1〜7態様のいずれか1つに記載の燃料電池用ガス拡散層を提供する。
【0030】
本発明の第9態様によれば、高分子電解質膜と、
前記高分子電解質膜を挟んで互いに対向する一対の触媒層と、
前記高分子電解質膜及び前記一対の触媒層を挟んで互いに対向する一対のガス拡散層と、
前記高分子電解質膜、前記一対の触媒層、及び一対のガス拡散層を挟んで互いに対向する一対の集電板と、
を備える燃料電池において、
前記一対のガス拡散層の少なくとも一方は、第1〜8態様のいずれか1つに記載のガス拡散層であり、
前記第1拡散層が前記集電板に接し、前記第2拡散層が前記触媒層に接している、
燃料電池を提供する。
【0031】
本発明の第10態様によれば、高分子電解質膜と、
前記高分子電解質膜の一方の主面上に形成されたアノード触媒層と、
前記アノード触媒層上に積層されたアノードガス拡散層と、
前記アノードガス拡散層上に積層され、前記アノードガス拡散層に接する主面にガス流路が形成されたセパレータと、
前記高分子電解質膜の他方の主面上に形成されたカソード触媒層と、
前記カソード触媒層上に積層されたカソードガス拡散層と、
前記カソードガス拡散層上に積層された集電板と、
を備え、
前記カソードガス拡散層は、第1〜8態様のいずれか1つに記載のガス拡散層であり、
前記第1拡散層が前記集電板に接し、前記第2拡散層が前記触媒層に接している、
燃料電池を提供する。
【0032】
本発明の第11態様によれば、燃料電池に用いるガス拡散層の製造方法において、
多孔度が異なる2つのシート状の多孔質部材をそれぞれ作製し、
前記作製した2つの多孔質部材のうち多孔度が低い多孔質部材を、ガス流路の形状に対応する突起部を有する金型内に配置した後、圧延して、当該多孔度が低い多孔質部材の一方の主面にガス流路を形成し、
前記ガス流路を形成した多孔度が低い多孔質部材の他方の主面に、前記多孔度が高い多孔質部材を積層して貼り合わせる、
ことを含む、燃料電池用ガス拡散層の製造方法を提供する。
【0033】
本発明の第12態様によれば、燃料電池に用いるガス拡散層の製造方法において、
多孔度が異なる2つのシート状の多孔質部材をそれぞれ作製し、
前記作製した2つの多孔質部材を積層し、
前記積層した2つの多孔質部材を、ガス流路の形状に対応する突起部を有する金型内に、多孔度が低い多孔質部材側が前記突起部に対向するように配置した後、圧延して、当該多孔度が低い多孔質部材の一方の主面にガス流路を形成する、
ことを含む、燃料電池用ガス拡散層の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0034】
本発明の燃料電池用ガス拡散層によれば、ガス拡散層を第1拡散層と第2拡散層とを有する複層構造とし、ガス流路が形成された第1拡散層の多孔度を第2拡散層より低くしている。すなわち、第1拡散層の強度を第2拡散層より高くしている。これにより、複数のセルを積層して加圧締結する際などに加わる圧力により、互いに隣接するガス流路を隔てるリブ部が変形して、ガス流路が閉塞してしまうことを抑えることができる。また、反応ガスがリブ部の内部を透過することを抑えることができ、ガス流路の上流部から下流部までガス流路の形状に沿って反応ガスが一定の流速で流れることができる。また、第2拡散層の多孔度は第1拡散層よりも高いので、第2拡散層のガス拡散性によりリブ部の鉛直下方にも反応ガスが拡散されることになり、面内発電分布のバラツキを抑えることができる。従って、発電性能を一層向上させることができる。また、第1及び第2拡散層は、導電性粒子と高分子樹脂とを主成分とした多孔質部材で構成されているので、低コスト化を図ることができるとともに、複雑な形状のガス流路も容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施形態にかかる燃料電池の基本構成を示す模式断面図である。
【図2】本発明の実施形態にかかるガス拡散層単体の構成を示す模式断面図である。
【図3】本発明の実施形態にかかるガス拡散層の製造方法を示すフローチャートである。
【図4A】本発明の実施形態にかかるガス拡散層の製造方法を示す模式説明図である。
【図4B】図4Aに続く工程を示す模式説明図である。
【図4C】図4Bに続く工程を示す模式説明図である。
【図5】本発明の実施形態にかかるガス拡散層の別の製造方法を示すフローチャートである。
【図6A】本発明の実施形態にかかるガス拡散層の別の製造方法を示す模式説明図である。
【図6B】図6Aに続く工程を示す模式説明図である。
【図6C】図6Bに続く工程を示す模式説明図である。
【図7】本発明の実施形態にかかる燃料電池の基本構成の変形例を示す模式断面図である。
【図8】図8は、従来の燃料電池の構成を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の全ての図において、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0037】
《実施形態》
図1は、本発明の実施形態にかかる燃料電池の基本構成を示す模式断面図である。本実施形態にかかる燃料電池は、水素を含有する燃料ガスと、空気などの酸素を含有する酸化剤ガスとを電気化学的に反応させることにより、電力と熱とを同時に発生させる高分子電解質形燃料電池である。なお、本発明は高分子電解質形燃料電池に限定されるものではなく、種々の燃料電池に適用可能である。
【0038】
図1において、本実施形態にかかる燃料電池は、膜電極接合体10(以下、MEAという)と、MEA10の両面に配置された導電性を有する一対の平板状の集電板20A,20Cとを有するセル(単電池)1を備えている。なお、本実施形態にかかる燃料電池は、このセル1を複数個積層して構成されてもよい。この場合、互いに積層されたセル1は、燃料ガス及び酸化剤ガスがリークしないように且つ接触抵抗を減らすために、ボルトなどの締結部材(図示せず)により所定の締結圧にて加圧締結されることが好ましい。
【0039】
MEA10は、水素イオンを選択的に輸送する高分子電解質膜11と、当該高分子電解質膜11の両面に形成された一対の電極層とを備えている。一対の電極層の一方はアノード電極(燃料極ともいう)12Aであり、他方はカソード電極(空気極ともいう)12Cである。アノード電極12Aは、高分子電解質膜11の一方の面上に形成され、白金属触媒を坦持したカーボン粉末を主成分とする一対のアノード触媒層13Aと、このアノード触媒層13A上に形成され、集電作用とガス透過性と撥水性とを併せ持つアノードガス拡散層14Aとを有している。カソード電極12Cは、高分子電解質膜11の他方の面上に形成され、白金属触媒を坦持したカーボン粉末を主成分とする一対のカソード触媒層13Cと、このカソード触媒層13C上に形成され、集電作用とガス透過性と撥水性とを併せ持つカソードガス拡散層14Cとを有している。
【0040】
アノードガス拡散層14Aは、第1拡散層の一例である第1アノード拡散層15Aと第2拡散層の一例である第2アノード拡散層16Aとを有する複層構造で構成されている。第1及び第2アノード拡散層15A,16Aは、炭素繊維を基材として用いない基材レスガス拡散層で構成されている。具体的には、第1及び第2アノード拡散層15A,16Aは、導電性粒子と高分子樹脂とを主成分とした多孔質部材で構成されている。第1アノード拡散層15Aの一方の主面には、燃料ガスを流すための燃料ガス流路21Aが設けられている。互いに隣接する燃料ガス流路21A,21Aを隔てるリブ部22Aの先端は、所定の圧力で集電板20Aに接している。これにより、燃料ガス流路21A外に燃料ガスが流れること(外部リーク)が防止されている。第1アノード拡散層15Aの他方の主面は第2アノード拡散層16Aと接している。第1アノード拡散層15Aは、第2アノード拡散層16Aよりも多孔度が低く構成されている。第2アノード拡散層16Aはアノード触媒層13Aと接している。
【0041】
カソードガス拡散層14Cは、第1拡散層の一例である第1カソード拡散層15Cと第2拡散層の一例である第2カソード拡散層16Cとを有する複層構造で構成されている。第1及び第2カソード拡散層15C,16Cは、炭素繊維を基材として用いない基材レスガス拡散層で構成されている。具体的には、第1及び第2カソード拡散層15C,16Cは、導電性粒子と高分子樹脂とを主成分とした多孔質部材で構成されている。第1カソード拡散層15Cの一方の主面には、酸化剤ガスを流すための酸化剤ガス流路21Cが設けられている。互いに隣接する酸化剤ガス流路21C,21Cを隔てるリブ部22Cの先端は、所定の圧力で集電板20Cに接している。これにより、酸化剤ガス流路21C外に酸化剤ガスが流れること(外部リーク)が防止されている。第1カソード拡散層15Cの他方の主面は第2カソード拡散層16Cと接している。第1カソード拡散層15Cは、第2カソード拡散層16Cよりも多孔度が低く構成されている。第2カソード拡散層16Cはカソード触媒層13Cと接している。
【0042】
燃料ガス流路21Aを通じてアノード電極12Aに燃料ガスが供給されるとともに、酸化剤ガス流路21Cを通じてカソード電極12Cに酸化剤ガスが供給されることで、電気化学反応が起こり、電力と熱とが発生する。
【0043】
なお、反応ガスがリークしないように且つ接触抵抗を減らすために、ボルトなどの締結部材(図示せず)によりセル1を加圧締結するとき、締結圧は、2〜10kgf/cm2であることが好ましい。締結圧が10kgf/cm2より大きい場合には、リブ部22A,22Cが変形し易くなる。一方、締結圧が2kgf/cm2でより小さい場合には、部材間の接触抵抗が急増したり、燃料ガス流路21A又は酸化剤ガス流路21Cに沿って燃料ガス又は酸化剤ガスが流れ難くなる。
【0044】
集電板20A,20Cは、ガス透過性が低い金属などの材料で構成されている。好ましくは、集電板20A,20Cは、耐食性、導電性、ガス不透過性、平坦性に優れたカーボン、金属などの材料で構成される。なお、集電板20A,20Cには、冷却水などが通る冷却水流路(図示せず)が設けられていてもよい。
【0045】
集電板20Aと高分子電解質膜11との間には、燃料ガスが外部に漏れるのを防ぐために、アノード触媒層13A及びアノードガス拡散層14Aの側面を覆うようにシール材としてアノードガスケット17Aが配置されている。また、集電板20Cと高分子電解質膜11との間には、酸化剤ガスが外部に漏れることを防ぐために、カソード触媒層13C及びカソードガス拡散層14Cの側面を覆うようにシール材としてカソードガスケット17Cが配置されている。
【0046】
アノードガスケット17A及びカソードガスケット17Cの材料としては、一般的な熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などを用いることができる。例えば、アノードガスケット17A及びカソードガスケット17Cの材料として、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリイミド系樹脂、アクリル樹脂、ABS樹脂、ポリプロピレン、液晶性ポリマー、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリスルホン、ガラス繊維強化樹脂などを用いることができる。
【0047】
なお、アノードガスケット17A及びカソードガスケット17Cは、それらの一部がアノードガス拡散層14A又はカソードガス拡散層14Cの周縁部に含浸しているほうが好ましい。これにより、発電耐久性及び強度を向上させることができる。
【0048】
また、アノードガスケット17A及びカソードガスケット17Cに代えて、集電板20Aと集電板20Cとの間に、高分子電解質膜11、アノード電極12A、及びカソード電極12Cの側面を覆うように、ガスケットを配置してもよい。これにより、高分子電解質膜11の劣化を抑制し、MEA10のハンドリング性、量産時の作業性を向上させることができる。
【0049】
次に、本実施形態にかかるアノードガス拡散層14A及びカソードガス拡散層14Cの構成についてさらに詳細に説明する。ここで、アノードガス拡散層14Aとカソードガス拡散層14Cとは、特に断りが無い限り同じ構成を有している。このため、これらに共通する事項について説明する場合には、これらを単にガス拡散層14という。また、第1アノード拡散層15A及び第1カソード拡散層15Cは、第1拡散層15といい、第2アノード拡散層16A及び第2カソード拡散層16Cは、第2拡散層16という。さらに、燃料ガス流路21A及び酸化剤ガス流路21Cはガス流路21といい、リブ部22A,22Cはリブ部22という。図2は、ガス拡散層単体の構成を示す模式断面図である。
【0050】
ガス拡散層14は、以下の3つの機能を有している。1つ目は、ガス流路21から流れる反応ガスをガス流路21の鉛直下方だけでなく、リブ部22の鉛直下方にまで拡散させるガス拡散性機能である。2つ目は、触媒層内を適度に湿潤させつつ、過剰水を排出する水マネジメント機能である。3つ目は、電子移動パスを形成する集電性機能である。
【0051】
ガス拡散層14は、第1拡散層15と第2拡散層16との2層構造で構成されている。第1及び第2拡散層15,16は、それぞれ、導電性粒子と高分子樹脂とを主成分としたシート状で且つゴム状の多孔質部材で構成されている。第1拡散層15の多孔度は、第2拡散層16の多孔度より低く設定されている。第1及び第2拡散層15,16の多孔度は、後述するように、使用する材料の組成、製造時に加える圧延力、圧延回数などを異ならせることにより変化させることができる。
【0052】
第1拡散層15の多孔度は、20%以上50%未満であることが好ましい。第1拡散層15の多孔度が20%未満である場合には、ガス透過性が低下して、リブ部22の鉛直下方だけでなくガス流路21の鉛直下方にも反応ガスが到達しなくなり、発電性能が著しく低下する。一方、第1拡散層15の多孔度が50%以上である場合には、強度が低下して、リブ部22が変形し易くなる。
【0053】
第2拡散層16の多孔度は、65%以上80%未満であることが好ましい。第2拡散層16の多孔度が65%未満である場合には、ガス透過性が低下して、厚み方向に反応ガスが流れにくくなり、リブ部22の鉛直下方での発電が困難になる。一方、炭素繊維を基材として用いずにガス拡散層の多孔度を80%以上とすることは、製造プロセス上、困難である。仮に、多孔度80%以上のガス拡散層を製造することができたとしても、強度が著しく低下し、ガス拡散層としての機能を果すことができない。
【0054】
第1及び第2拡散層15,16を構成する導電性粒子の材料としては、例えば、グラファイト、カーボンブラック、活性炭などのカーボン材料が挙げられる。カーボンブラックとしては、アセチレンブラック(AB)、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、バルカンなどが挙げられる。なお、それらの中でもカーボンブラックの主成分としてアセチレンブラックが用いられることが、不純物含有量が少なく、電気伝導性が高いという観点から好ましい。また、グラファイトの主成分としては、天然黒鉛、人造黒鉛などが挙げられる。これらの中でもグラファイトの主成分として人造黒鉛が用いられることが、不純物量が少ないという観点から好ましい。また、カーボン材料の原料形態としては、例えば、粉末状、繊維状、粒状などが挙げられる。それらの中でも粉末状がカーボン材料の原料形態として採用されることが、分散性、取り扱い性の観点から好ましい。
【0055】
第1拡散層15に含まれる導電性粒子は、平均粒子径が異なる2種類のカーボン材料を混合して構成されることが好ましい。これにより、平均粒子径が大きな粒子同士の隙間に平均粒子径が小さな粒子が入り込むことができるので、第1拡散層15の全体の多孔度を低多孔度化(例えば、60%以下に)することが容易になる。一方のカーボン材料としてアセチレンブラックを用いた場合において、充填構造を作成し易い他方のカーボン材料としては、人造黒鉛が挙げられる。なお、アセチレンブラックの平均粒子径D50(相対粒子量が50%の時の粒子径:メディアン径ともいう)は、D50=5μmであり、人造黒鉛の平均粒子径D50は、D50=15〜20μmである(レーザ回折式粒度測定装置マイクロトラックHRAを使用して測定)。
【0056】
なお、前記導電性粒子を3種類以上のカーボン材料を混合して構成した場合にも、充填構造を構成することが容易である。しかしながら、この場合、分散、混錬、圧延条件などの材料の取り扱い(最適化)が複雑化するので、前記導電性粒子は2種類のカーボン材料を混合して構成されることがより好ましい。
【0057】
また、前記導電性粒子をアセチレンブラックと人造黒鉛を混合して構成した場合、それらの配合比率(重量比)は、アセチレンブラックが1に対して人造黒鉛は0.3以上であることが好ましい。人造黒鉛の配合比率を0.3以上とすることで、多孔度を効果的に低くすることができる。
【0058】
第2拡散層16は、第1拡散層15とは逆に、多孔度を高くする必要があるので、第2拡散層16に含まれる導電性粒子は、1種類のカーボン材料で構成されることが好ましい。また、当該1種類のカーボン材料は、粒子径のバラツキが少ないことが好ましい。また、第2拡散層16に含まれる導電性粒子は、第1拡散層15と同様に、平均粒子径が異なる2種類以上のカーボン材料で構成されてもよい。しかしながら、この場合、充填構造が形成されないように、各カーボン材料の配合比率を調整することが好ましい。例えば、前記導電性粒子をアセチレンブラックと人造黒鉛を混合して構成した場合、それらの配合比率(重量比)は、アセチレンブラックが1に対して人造黒鉛は0.3未満であることが好ましい。
【0059】
第1及び第2拡散層15,16を構成する高分子樹脂は、前記導電性粒子同士を結着するバインダーとしての機能を有する。また、前記高分子樹脂は、撥水性を有するため、燃料電池の内部にて水を系内に閉じ込める機能(保水性)も有する。前記高分子樹脂の組成比率が低くなる程、ガス拡散層自体の親水性が高くなる。ガス流路21近傍の親水性が高いと、結露水を系外に排出し易くなる。このため、第2拡散層16よりも第1拡散層15の方が、前記高分子樹脂の配合比率が低いことが好ましい。また、高分子樹脂は非導電性であるので、第1拡散層15の高分子樹脂の配合比率を低くすることで、リブ部22と集電板20A,20Cとの接触抵抗を低減することができる。
【0060】
前記高分子樹脂の材料としては、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、FEP(テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体)、PVDF(ポリビニリデンフルオライド)、ETFE(テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体)、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)などが挙げられる。これらの中でも前記高分子樹脂の材料としてPTFEが使用されることが、耐熱性、撥水性、耐薬品性の観点から好ましい。PTFEの原料形態としては、ディスパージョン、粉末状などがあげられる。それらの中でもディスパージョンがPTFEの原料形態として採用されることが、作業性の観点から好ましい。
【0061】
第1拡散層15に形成されるガス流路21の形状(パターン)は、特に限定されるものではなく、従来のセパレータに形成されていたガス流路の形状と同様に形成することができる。このようなガス流路の形状としては、例えばストレート型、サーペンタイン型等が挙げられる。
【0062】
ガス流路21の幅は、電極面積、ガス流量、電流密度、加湿条件、セル温度などにより最適値は大きく異なるが、0.1mm〜3.0mmの範囲内、特に0.2mm〜1.5mmの範囲内であることが好ましい。ガス流路21の幅が0.1mm未満である場合には、燃料電池において通常流される反応ガスの量に対してガス流路21の幅が十分でない可能性がある。一方、ガス流路21の幅が3.0mmより大きい場合には、反応ガスがガス流路21の全体に流れなくなり、反応ガスの滞留が生じてフラッディングが起こる可能性がある。
【0063】
ガス流路21の深さは、電極面積、ガス流量、電流密度、加湿条件、セル温度などにより大きく異なるが、0.015mm〜2.0mmの範囲内、特に0.03mm〜0.8mmの範囲内であることが好ましい。ガス流路21の深さが0.015mm未満である場合には、燃料電池において通常流される反応ガスの量に対してガス流路21の深さが十分でない可能性がある。一方、ガス流路21の深さが2,0mmより大きい場合には、反応ガスがガス流路21の全体に流れなくなり、反応ガスの滞留が生じてフラッディングが起こる可能性がある。
【0064】
第1拡散層15に形成されるリブ部22の幅は、0.1mm〜3.0mmの範囲内、特に0.2mm〜2.0mmの範囲内であることが好ましい。リブ部22の幅が0.1mm未満である場合は、強度が低下してガス流路21が変形し易くなる。一方、リブ部22の幅が2.0mmより大きい場合には、リブ部22の鉛直下方の面積が大きくなるため、反応ガスが第1拡散層15内で均一に拡散されず、面内発電分布にバラツキが生じるおそれがある。
【0065】
第2拡散層16の厚さは、ガス利用率、電流密度、加湿条件、セル温度などにより最適値は大きく異なるが、0.05mm〜1.0mmの範囲内、特に0.1mm〜0.4mmの範囲内であることが好ましい。
【0066】
第1拡散層15に対する第2拡散層16の厚さの比は、0.3〜2.0の範囲内であることが好ましい。第1拡散層15に対する第2拡散層16の厚さの比が0.3未満である場合には、厚み方向のガス拡散性が低下して、リブ部22の鉛直下方に反応ガスが到達しなくなる。これにより、面内発電分布にバラツキが生じ、発電性能が低下することになる。一方、第1拡散層15に対する第2拡散層16の厚さの比が2.0よりも大きい場合には、ガス拡散層14全体の厚さが厚くなり過ぎるため、反応ガスが触媒層13A,13Cに到達しなくなるとともに電気抵抗が増加して、発電性能が低下することになる。
【0067】
なお、第1及び第2拡散層15,16は、炭素繊維を基材として用いることなく、導電性粒子と高分子樹脂とで支持される構造(いわゆる自己支持体構造)であればよい。従って、第1及び第2拡散層15,16には、導電性粒子及び高分子樹脂以外に、ガス拡散層の製造時に使用する界面活性剤及び分散溶媒などが微量含まれていてもよい。分散溶媒としては、例えば、水、メタノール、及びエタノールなどのアルコール類、エチレングリコールなどのグリコール類が挙げられる。界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルなどのノニオン系、アルキルアミンオキシドなどの両性イオン系が挙げられる。製造時に使用する分散溶媒の量及び界面活性剤の量は、導電性粒子の種類、高分子樹脂の種類、それらの配合比率などに応じて適宜設定すればよい。なお、一般的には、分散溶媒の量及び界面活性剤の量が多いほど、導電性粒子と高分子樹脂とが均一に分散しやすい傾向がある一方で、流動性が高くなり、ガス拡散層のシート化が難しくなる傾向がある。
【0068】
また、第1及び第2拡散層15,16には、基材としては成立しない重量(例えば、導電性粒子及び高分子樹脂よりも少ない重量)の炭素繊維が含まれていてもよい。炭素繊維には、補強効果があるので、炭素繊維の配合比率を高くすることによって、強度の高いガス拡散層を製造することができる。また、リブ部22の変形を抑えるため、第2拡散層16よりも第1拡散層15の方が高い強度が必要である。このため、第2拡散層16よりも第1拡散層15の方が炭素繊維の配合比率が高いことが好ましい。第1拡散層15の炭素繊維の配合比率を高くすることで、第1拡散層15は高導電性になるので、リブ部22と集電板20A,20Cとの接触抵抗を低減することもできる。
【0069】
前記炭素繊維の材料としては、例えば、気相成長法炭素繊維(以下、VGCFという)、ミルドファイバー、カットファイバー、チョップファイバーなどが挙げられる。前記炭素繊維としてVGCFを使用する場合、例えば、繊維径0.15μm、繊維長15μmのものを使用すればよい。また、前記炭素繊維としてミルドファイバー、カットファイバー、又はチョップファイバーを使用する場合、例えば、繊維径5〜20μm、繊維長20μm〜100μmであるものを使用すればよい。
【0070】
前記ミルドファイバー、カットファイバー、又はチョップファイバーの原料は、PAN系、ピッチ系、レイヨン系のいずれでもよい。また、前記ファイバーは、原糸(長繊維フィラメント又は短繊維ステーブル)を切断、裁断することにより作製された短繊維の束を分散させて使用することが好ましい。
【0071】
前記炭素繊維の配合量は、高分子樹脂よりも少ない重量であることが好ましい。基材レスガス拡散層の高強度化には炭素繊維を少量配合することでも十分に効果がある。前記炭素繊維の配合量を高分子樹脂よりも多くすると、炭素繊維が膜を突き刺し、膜劣化が生じて性能低下する懸念が生じやすくなる。また、コストが高くなる要因になる。また、第1及び第2拡散層15,16は、炭素繊維を基材として用いなければよく、導電性粒子と高分子樹脂と炭素繊維とで支持される自己支持体構造であってもよい。
【0072】
アノードガス拡散層14Aの第2アノードガス拡散層16Aの多孔度は、カソードガス拡散層14Cの第2カソードガス拡散層16Cの多孔度より低いことが好ましい。これにより、第2アノードガス拡散層16Aの保水性を第2カソードガス拡散層16Cの保水性に比べて高くすることができる。また、第2カソードガス拡散層16Cのガス拡散性を第2アノードガス拡散層16Aのガス拡散性に比べて高くすることができる。
【0073】
次に、図3、図4A〜図4Cを参照しつつ、本発明の実施形態にかかるガス拡散層14の製造方法の一例について説明する。図3は、本発明の実施形態にかかるガス拡散層の製造方法を示すフローチャートである。図4A〜図4Cは、その模式説明図である。
【0074】
まず、ステップS1では、多孔度の異なる2つのシート状の多孔質部材を作製する。
シート状の多孔質部材は、例えば、以下のようにして作製することができる。
【0075】
まず、導電性粒子と界面活性剤と分散溶媒とを混錬機に投入し混錬した後、それらの混錬物の中に高分子樹脂材料を添加して分散させる。なお、カーボン材料と高分子樹脂材料とを別々に混錬機に投入せず、全ての材料を同時に混錬機に投入してもよい。次いで、混錬して得た混錬物をロールプレス機又は平板プレス機などで圧延してシート状に成形する。次いで、シート状に成形した混錬物を焼成して、前記混錬物中から界面活性剤と分散溶媒とを除去する。ここで、焼成温度及び焼成時間は、界面活性剤と分散溶媒とが蒸発又は分解する温度及び時間とすることが好ましい。次いで、界面活性剤と分散溶媒とを除去した混錬物を再圧延して厚さを調整する。これにより、シート状の多孔質部材を作製することができる。
【0076】
多孔度の異なる2つのシート状の多孔質部材は、前記作製工程において、使用する導電性粒子、プレス機による圧延力、圧延回数などを変えることで製造することができる。例えば、多孔度の高い多孔質部材を作製する場合には、1種類のカーボン材料を用い、多孔度の低い多孔質部材を作製する場合には、平均粒子径が異なる2種類のカーボン材料を用いればよい。これにより、多孔度の異なる2つの多孔質部材を得ることができる。また、多孔度の低い多孔質部材を作製する際、多孔度の高い多孔質部材の作製する際よりも、プレス機による圧延力又は圧延回数を多くすることで、2つの多孔質部材の多孔度の差を大きくすることができる。このようにして作製した2つのシート状の多孔質部材のうち、多孔度の低い多孔質部材にガス流路21を形成したものが第1拡散層15となり、多孔度の高い多孔質部材が第2拡散層16となる。ここでは、ガス流路21の形成前の多孔質部材を、多孔質部材15aという。
【0077】
なお、前記では、前記混錬物をロールプレス機又は平板プレス機などで圧延してシート状の多孔質部材を作製したが、本発明はこれに限定されない。例えば、前記混錬物を押し出し機に投入し、押し出し機のダイヘッドから連続的にシート成形して、シート状の多孔質部材を作製することもできる。また、押し出し機が備えるスクリューの形状を工夫して、当該スクリューに混練機能を持たせることにより、前記混練機を使用せずに前記混錬物を得ることができる。すなわち、前記各カーボン材料の攪拌、混練、シート成形を一台の機械で一体的に行うことができる。
【0078】
次いで、ステップS2では、図4A及び図4Bに示すように、多孔度の低い多孔質部材15aをガス流路21の形状に対応する突起部31aを有する一組の金型31,32内に配置した後、圧延機械にて金型31,32を型閉じして圧延する。これにより、図4Cに示すように、多孔度の低い多孔質部材15aにガス流路21が形成され、第1拡散層15を得ることができる。
【0079】
なお、金型31,32は、圧延機械と一体に構成されていても良いが、圧延機械に着脱可能に構成されている方が取り扱いやすい。また、圧延機械としては、ロールプレス機又は平板プレス機を用いることができる。これらのうち圧延機械として、面精度が高いロールプレス機を用いる方が、第1拡散層15の厚さバラツキを低減することができるので好ましい。このとき、一般的なグラビアロール機と同様に、ロールの表面に直接、突起部31aを有する金型31,32が形成されていることが好ましい。
【0080】
また、圧延機械による圧延時には、適宜、多孔度の低い多孔質部材15aを加温するようにしても良い。この場合、加温温度は、250℃以下であることが好ましい。加温温度が250℃以下であるとき、多孔度の低い多孔質部材15aが軟化して、ガス流路21の形成が容易になる。一方、加温温度が250℃より高くなると、多孔度の低い多孔質部材15aが劣化するおそれがある。圧延機械の圧延力は、500kgf/cm2未満であることが好ましい。圧延機械の圧延力は、高いほど、ガス流路21の形成が容易になるが、多孔度の低い多孔質部材15aに500kgf/cm2以上の圧延力が加わると、割れや材料破壊が生じるおそれがある。
【0081】
また、圧延機械による圧延後に金型31,32と多孔度の低い多孔質部材15aとが密着することを防止するために、離型剤をあらかじめ塗布しておいても良い。この離型剤としては、燃料電池の発電性能に影響を及ぼさない範囲で適宜選択可能であるが、蒸留水又は界面活性剤希釈蒸留水を用いることが好ましい。また、離型剤に代えて、PTFE樹脂製のシートを使用しても良い。金型31,32の材質は、ステンレス鋼、ニッケルクロムモリブデン鋼、超硬合金鋼、SKD11、SKD12、Ni−P硬化クロムなどの工具鋼、セラミックス、ガラス繊維強化プラスチックなどから選択可能である。さらに、金型31,32の表面には、耐食性及び離型性を高めるために、硬質Crメッキ、PVD皮膜、TiC皮膜、TD処理、Zr溶射処理、PTFEコーティングなどの表面処理を施してもよい。前記ロールの表面に直接、突起部31aを有する金型31,32が形成されている場合も同様である。
【0082】
次いで、ステップS3では、図4Cに示すように、前記のようにして作製した第1拡散層15と第2拡散層16とを積層して、平板プレス機33にて貼り合わせる。このとき、第2拡散層16は、第1拡散層15のガス流路形成面とは反対側の主面に貼り合わせる。これにより、図2に示すガス拡散層14を得ることができる。
【0083】
前記のように、第1拡散層15と第2拡散層16との貼り合わせに平板プレス機33を使用することにより、ガス拡散層14が厚み方向に反る(波打ちする)ことを防止することができる。
【0084】
なお、平板プレス機33による貼り合わせは、2kg/cm2以下の面圧で行うことが好ましい。面圧が2kg/cm2より大きい場合には、リブ部22が変形してガス流路21が狭くなるおそれがある。
【0085】
また、第1拡散層15と第2拡散層16との貼り合わせは、導電フィラーとバインダーを主成分とする導電性接着剤を用いて行っても良い。また、第1拡散層15と第2拡散層16との貼り合わせは、高分子電解質膜11と類似成分を含む分散溶液(例えば、デュポン社製ナフィオン:登録商標)、又は少量の蒸留水を用いて行ってもよい。
【0086】
なお、本実施形態においては、前記ステップS1〜S3を行うことによりガス拡散層14を製造したが、本発明はこれに限定されない。例えば、各ステップの間に適宜、他の作業が含まれていても良い。
【0087】
また、前記ステップS3においては、第1拡散層15と第2拡散層16とを積層して、平板プレス機33にて貼り合わせるとしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、ステップS3において、第1拡散層15と金型32との間に第2拡散層16を配置し、圧延機械にて金型31,32を型閉じして貼り合わせてもよい。具体的には、前記ステップS2において、圧延機械にて金型31,32を型閉じして圧延し、第1拡散層15を得る。次いで、ステップS3において、第1拡散層15のガス流路形成面とは反対側の主面と金型32との間に、第2拡散層16を配置し、第1拡散層15と第2拡散層16とを積層して、圧延機械にて金型31,32を型閉じして貼り合わせればよい。
【0088】
前記のように、第1拡散層15と第2拡散層16との貼り合わせに金型31,32を使用することにより、前記ステップ2の後に金型31から第1拡散層15を取り外す工程を省略することができる。
【0089】
また、ガス拡散層14の別の製造方法としては、図5、図6A〜図6Cに示すような方法がある。図5は、ガス拡散層の別の製造方法を示すフローチャートである。図6A〜図6Cは、その模式説明図である。
【0090】
まず、ステップS11では、前記ステップS1と同様にして、多孔度の異なる2つのシート状の多孔質部材を作製する。
【0091】
次いで、ステップS12では、図6Aに示すように、多孔度の低い多孔質部材15aと、多孔度の高い多孔質部材である第2拡散層16とを積層する。
【0092】
なお、後続のステップS13にて、多孔度の低い多孔質部材15aと第2拡散層16との積層体を加圧するので、ステップS12では、多孔度の低い多孔質部材15aと第2拡散層16とを、単に積層するだけでよい。また、もちろん、前述したような平板プレス機33、導電性接着剤、分散溶媒、蒸留水などを用いて、多孔度の低い多孔質部材15aと第2拡散層16とをあらかじめ貼り合わせてもよい。
【0093】
次いで、ステップS13では、図6B及び図6Cに示すように、前記貼り合わせた多孔度の低い多孔質部材15aと第2拡散層16とを金型31,32内に配置する。このとき、多孔度の低い多孔質部材15aが突起部31aを設けた金型31と対向するように配置する。この後、金型31,32内に配置した多孔度の低い多孔質部材15aと第2拡散層16とを、圧延機械にて金型31,32を型閉じして圧延する。これにより、図2に示すガス拡散層14を得ることができる。なお、ガス拡散層14に厚み方向に反り(波打ち)が生じている場合には、例えば、平板プレス機33を用いて、2kg/cm2以下の面圧でガス拡散層14を加圧するようにすればよい。
【0094】
以上、本発明の実施形態にかかる燃料電池によれば、ガス拡散層14を第1拡散層15と第2拡散層16とを有する2層構造とし、ガス流路21が形成された第1拡散層15の多孔度を第2拡散層16より低くしている。すなわち、第1拡散層15の強度を第2拡散層16より高くしている。これにより、複数のセル1を積層して加圧締結する際などに加わる圧力により、互いに隣接するガス流路21を隔てるリブ部22が変形して、ガス流路21が閉塞してしまうことを抑えることができる。また、反応ガスがリブ部22の内部を透過することを抑えることができ、ガス流路21の上流部から下流部までガス流路21の形状に沿って反応ガスが一定の流速で流れることができる。また、第2拡散層16の多孔度は第1拡散層15よりも高いので、第2拡散層16のガス拡散性によりリブ部22の鉛直下方にも反応ガスが拡散されることになり、面内発電分布のバラツキを抑えることができる。従って、発電性能を一層向上させることができる。また、第1及び第2拡散層15,16は、導電性粒子と高分子樹脂とを主成分とした多孔質部材で構成されているので、低コスト化を図ることができるとともに、複雑な形状のガス流路も容易に形成することができる。
【0095】
なお、本発明において、多孔度は、次のようにして測定することができる。
まず、ガス拡散層を構成する各材料の真密度と組成比率から、製造したガス拡散層の見かけ真密度を算出する。
次いで、製造したガス拡散層の重量、厚さ、縦横寸法を測定して、製造したガス拡散層の密度を算出する。
次いで、多孔度=(ガス拡散層の密度)/(見かけ真密度)×100の式に、前記算出したガス拡散層の密度及び見かけ真密度を代入し、多孔度を算出する。
以上のようにして、製造したガス拡散層の多孔度を測定することができる。
なお、製造したガス拡散層の細孔径分布を、水銀ポロシメータを用いて測定したところ、累積細孔量から算出できる多孔度と、前記のようにして算出した多孔度とが一致していることを確認している。
【0096】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施できる。例えば、前記では、アノード側及びカソード側の両方に、本発明にかかる2層構造のガス拡散層14を配置したが、本発明はこれに限定されない。アノード側及びカソード側の少なくとも一方に、本発明にかかる2層構造のガス拡散層14を配置した構造としてもよい。
【0097】
カソード電極(空気極)の酸化剤ガス流路は、アノード電極(燃料極)の燃料ガス流路に比べて複雑な形状である方が、燃料電池の発電性能は高くなりやすい。しかしながら、金属、あるいはカーボンと樹脂とで構成された従来のセパレータに複雑な形状のガス流路を設けることは困難である。これに対して、本発明にかかる第1拡散層は、基材レスガス拡散層で構成されているので、ガス流路の形成が容易である。従って、例えば、図7に示すように、アノード側には、通常の単層構造のアノードガス拡散層214Aと、燃料ガス流路221Aを設けた通常のセパレータ220Aとを配置し、カソード側にのみ、酸化剤ガス流路21Cを有する2層構造のカソードガス拡散層14Cと集電板21Cとを配置するようにしてもよい。このような構成によっても、従来の構成に比べて、燃料電池の発電性能を一層向上させることができる。
【0098】
この場合、アノードガス拡散層214Aの多孔度は、カソードガス拡散層14Cの第2カソードガス拡散層16Cの多孔度より低いことが好ましい。これにより、アノードガス拡散層214Aの保水性を第2カソードガス拡散層16Cの保水性に比べて高くすることができる。また、第2カソードガス拡散層16Cのガス拡散性をアノードガス拡散層214Aのガス拡散性に比べて高くすることができる。
【0099】
なお、前記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明にかかる燃料電池用ガス拡散層及びその製造方法、並びに燃料電池は、一方の主面にガス流路が形成されたガス拡散層において、発電性能を一層向上させることができるので、例えば、自動車などの移動体、分散発電システム、家庭用のコージェネレーションシステムなどの駆動源として使用される燃料電池に有用である。
【0101】
本発明は、添付図面を参照しながら好ましい実施の形態に関連して充分に記載されているが、この技術に熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した請求の範囲による本発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池に用いるガス拡散層において、
前記ガス拡散層は、
一方の主面にガス流路が形成された第1拡散層と、
前記第1拡散層の他方の主面上に積層された第2拡散層と、
を有する複層構造で構成され、
前記第1及び第2拡散層は、導電性粒子と高分子樹脂とを主成分とした多孔質部材で構成され、
前記第1拡散層の多孔度は、前記第2拡散層の多孔度よりも低い、
燃料電池用ガス拡散層。
【請求項2】
前記第1及び第2拡散層は、導電性粒子と高分子樹脂とを主成分とし、前記高分子樹脂よりも少ない重量の炭素繊維が添加された多孔質部材で構成されている、請求項1に記載の燃料電池用ガス拡散層。
【請求項3】
前記炭素繊維は、気相成長法炭素繊維、ミルドファイバー、チョップファイバーのうちのいずれか1つである、請求項2に記載の燃料電池用ガス拡散層。
【請求項4】
前記第2拡散層よりも前記第1拡散層の方が、前記炭素繊維の組成比率が高い、請求項2又は3に記載の燃料電池用ガス拡散層。
【請求項5】
前記第1拡散層に含まれる前記導電性粒子は、平均粒子径が異なる2種類以上のカーボン材料で構成されている、請求項1〜4のいずれか1つに記載の燃料電池用ガス拡散層。
【請求項6】
前記第2拡散層よりも前記第1拡散層の方が、前記高分子樹脂の組成比率が低い、請求項1〜5のいずれか1つに記載の燃料電池用ガス拡散層。
【請求項7】
前記第1拡散層の多孔度は、20%以上50%未満である、請求項1〜6のいずれか1つに記載の燃料電池用ガス拡散層。
【請求項8】
前記第2拡散層の多孔度は、65%以上80%未満である、請求項1〜7のいずれか1つに記載の燃料電池用ガス拡散層。
【請求項9】
高分子電解質膜と、
前記高分子電解質膜を挟んで互いに対向する一対の触媒層と、
前記高分子電解質膜及び前記一対の触媒層を挟んで互いに対向する一対のガス拡散層と、
前記高分子電解質膜、前記一対の触媒層、及び一対のガス拡散層を挟んで互いに対向する一対の集電板と、
を備える燃料電池において、
前記一対のガス拡散層の少なくとも一方は、請求項1〜8のいずれか1つに記載のガス拡散層であり、
前記第1拡散層が前記集電板に接し、前記第2拡散層が前記触媒層に接している、
燃料電池。
【請求項10】
高分子電解質膜と、
前記高分子電解質膜の一方の主面上に形成されたアノード触媒層と、
前記アノード触媒層上に積層されたアノードガス拡散層と、
前記アノードガス拡散層上に積層され、前記アノードガス拡散層に接する主面にガス流路が形成されたセパレータと、
前記高分子電解質膜の他方の主面上に形成されたカソード触媒層と、
前記カソード触媒層上に積層されたカソードガス拡散層と、
前記カソードガス拡散層上に積層された集電板と、
を備え、
前記カソードガス拡散層は、請求項1〜8のいずれか1つに記載のガス拡散層であり、
前記第1拡散層が前記集電板に接し、前記第2拡散層が前記触媒層に接している、
燃料電池。
【請求項11】
燃料電池に用いるガス拡散層の製造方法において、
多孔度が異なる2つのシート状の多孔質部材をそれぞれ作製し、
前記作製した2つの多孔質部材のうち多孔度が低い多孔質部材を、ガス流路の形状に対応する突起部を有する金型内に配置した後、圧延して、当該多孔度が低い多孔質部材の一方の主面にガス流路を形成し、
前記ガス流路を形成した多孔度が低い多孔質部材の他方の主面に、前記多孔度が高い多孔質部材を積層して貼り合わせる、
ことを含む、燃料電池用ガス拡散層の製造方法。
【請求項12】
燃料電池に用いるガス拡散層の製造方法において、
多孔度が異なる2つのシート状の多孔質部材をそれぞれ作製し、
前記作製した2つの多孔質部材を積層し、
前記積層した2つの多孔質部材を、ガス流路の形状に対応する突起部を有する金型内に、多孔度が低い多孔質部材側が前記突起部に対向するように配置した後、圧延して、当該多孔度が低い多孔質部材の一方の主面にガス流路を形成する、
ことを含む、燃料電池用ガス拡散層の製造方法。
【請求項1】
燃料電池に用いるガス拡散層において、
前記ガス拡散層は、
一方の主面にガス流路が形成された第1拡散層と、
前記第1拡散層の他方の主面上に積層された第2拡散層と、
を有する複層構造で構成され、
前記第1及び第2拡散層は、導電性粒子と高分子樹脂とを主成分とした多孔質部材で構成され、
前記第1拡散層の多孔度は、前記第2拡散層の多孔度よりも低い、
燃料電池用ガス拡散層。
【請求項2】
前記第1及び第2拡散層は、導電性粒子と高分子樹脂とを主成分とし、前記高分子樹脂よりも少ない重量の炭素繊維が添加された多孔質部材で構成されている、請求項1に記載の燃料電池用ガス拡散層。
【請求項3】
前記炭素繊維は、気相成長法炭素繊維、ミルドファイバー、チョップファイバーのうちのいずれか1つである、請求項2に記載の燃料電池用ガス拡散層。
【請求項4】
前記第2拡散層よりも前記第1拡散層の方が、前記炭素繊維の組成比率が高い、請求項2又は3に記載の燃料電池用ガス拡散層。
【請求項5】
前記第1拡散層に含まれる前記導電性粒子は、平均粒子径が異なる2種類以上のカーボン材料で構成されている、請求項1〜4のいずれか1つに記載の燃料電池用ガス拡散層。
【請求項6】
前記第2拡散層よりも前記第1拡散層の方が、前記高分子樹脂の組成比率が低い、請求項1〜5のいずれか1つに記載の燃料電池用ガス拡散層。
【請求項7】
前記第1拡散層の多孔度は、20%以上50%未満である、請求項1〜6のいずれか1つに記載の燃料電池用ガス拡散層。
【請求項8】
前記第2拡散層の多孔度は、65%以上80%未満である、請求項1〜7のいずれか1つに記載の燃料電池用ガス拡散層。
【請求項9】
高分子電解質膜と、
前記高分子電解質膜を挟んで互いに対向する一対の触媒層と、
前記高分子電解質膜及び前記一対の触媒層を挟んで互いに対向する一対のガス拡散層と、
前記高分子電解質膜、前記一対の触媒層、及び一対のガス拡散層を挟んで互いに対向する一対の集電板と、
を備える燃料電池において、
前記一対のガス拡散層の少なくとも一方は、請求項1〜8のいずれか1つに記載のガス拡散層であり、
前記第1拡散層が前記集電板に接し、前記第2拡散層が前記触媒層に接している、
燃料電池。
【請求項10】
高分子電解質膜と、
前記高分子電解質膜の一方の主面上に形成されたアノード触媒層と、
前記アノード触媒層上に積層されたアノードガス拡散層と、
前記アノードガス拡散層上に積層され、前記アノードガス拡散層に接する主面にガス流路が形成されたセパレータと、
前記高分子電解質膜の他方の主面上に形成されたカソード触媒層と、
前記カソード触媒層上に積層されたカソードガス拡散層と、
前記カソードガス拡散層上に積層された集電板と、
を備え、
前記カソードガス拡散層は、請求項1〜8のいずれか1つに記載のガス拡散層であり、
前記第1拡散層が前記集電板に接し、前記第2拡散層が前記触媒層に接している、
燃料電池。
【請求項11】
燃料電池に用いるガス拡散層の製造方法において、
多孔度が異なる2つのシート状の多孔質部材をそれぞれ作製し、
前記作製した2つの多孔質部材のうち多孔度が低い多孔質部材を、ガス流路の形状に対応する突起部を有する金型内に配置した後、圧延して、当該多孔度が低い多孔質部材の一方の主面にガス流路を形成し、
前記ガス流路を形成した多孔度が低い多孔質部材の他方の主面に、前記多孔度が高い多孔質部材を積層して貼り合わせる、
ことを含む、燃料電池用ガス拡散層の製造方法。
【請求項12】
燃料電池に用いるガス拡散層の製造方法において、
多孔度が異なる2つのシート状の多孔質部材をそれぞれ作製し、
前記作製した2つの多孔質部材を積層し、
前記積層した2つの多孔質部材を、ガス流路の形状に対応する突起部を有する金型内に、多孔度が低い多孔質部材側が前記突起部に対向するように配置した後、圧延して、当該多孔度が低い多孔質部材の一方の主面にガス流路を形成する、
ことを含む、燃料電池用ガス拡散層の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2011−233537(P2011−233537A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156245(P2011−156245)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【分割の表示】特願2011−516599(P2011−516599)の分割
【原出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に関わる特許出願(平成20年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「固体高分子形燃料電池実用化戦略的技術開発事業/要素技術開発/定置用燃料電池システムの低コスト化・高性能化のための電池スタック主要部材に関する基盤研究開発(電池スタック主要部材の高信頼化・高ロバスト化に関する研究開発)」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【分割の表示】特願2011−516599(P2011−516599)の分割
【原出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に関わる特許出願(平成20年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「固体高分子形燃料電池実用化戦略的技術開発事業/要素技術開発/定置用燃料電池システムの低コスト化・高性能化のための電池スタック主要部材に関する基盤研究開発(電池スタック主要部材の高信頼化・高ロバスト化に関する研究開発)」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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