説明

ガス改質装置及びガス改質方法

【課題】 被熱分解物の熱分解によって得られる熱分解ガスを低い温度で改質することが可能なガス改質装置及びガス改質方法を提供すること。
【解決手段】 ガス改質装置27は、被熱分解物としてのバイオマスの熱分解によって得られる熱分解ガスを改質するガス改質炉12を備えている。前記ガス改質炉12には、前記熱分解ガスを改質する第1改質剤及び第2改質剤を該ガス改質炉12内にそれぞれ供給する第1供給管21及び第2供給管24がそれぞれ接続され、前記ガス改質炉12内における第2供給管24内には、第2改質剤の改質機能を向上させる触媒が担持されたハニカム構造体30が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばバイオマス等の被熱分解物を熱分解することによって発生する熱分解ガスを改質するガス改質装置及びガス改質方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、木材チップ等のバイオマス(被熱分解物)を加熱してガス化し、生成されたガスを燃料ガスとして発電を行うガス化発電システムが実用化されるようになってきた。このようなガス化発電システムでは、ガス発生炉において、原料のバイオマスを低酸素下で500〜600℃程度に加熱して熱分解すると、主に一酸化炭素、水素及び炭化水素よりなる熱分解ガスが発生する。そして、この熱分解ガスを燃料ガスとしてガスタービン発電、ガスエンジン発電あるいは燃料電池等の種々の発電用設備等に供給して利用している。
【0003】
ところで、上記ガス化発電システムにおいて、バイオマスから生成される熱分解ガス中の炭化水素は、メタンやエタン等の低級炭化水素類が主成分であるが、分子内に炭素原子を6個以上有するベンゼンやナフタレン等の高級炭化水素類も含んでいる。高級炭化水素類は、約500℃以上の高温中では、ガス状で存在しているが、温度が低くなると析出し、タールと呼ばれる液状物質となる。
【0004】
そして、通常、ガスエンジン発電や燃料電池等においては、燃料ガスを常温で使用することが前提となっており、燃料ガスとして生成した熱分解ガスを常温まで下げる必要がある。この際、熱分解ガス中のタール分が析出し、配管等に付着して詰まらせたり、あるいはガスエンジン発電の場合には、タール分が点火プラグに付着して着火不良が発生したりするなどの問題があった。
【0005】
このため、従来、ガス改質炉内において、熱分解ガス中のタール分を酸素(改質剤)を加えて低級炭化水素類、一酸化炭素あるいは水素に熱分解(改質)するガス化装置が提案されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2004−51745号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1に記載のガス化装置では、熱分解ガス中のタール分を、酸素を加えて熱分解する際に、ガス改質炉内の温度を1000℃〜1200℃の高温にする必要がある。このため、高温度の熱によってガス改質炉が劣化し易くなるばかりでなく、高温度の熱を得るためのエネルギーもより多く必要となり、エネルギー効率が低下するという問題があった。さらに、高温になると熱分解ガスが大きく膨張するため、ガス改質炉の容積を大きくしなければならなかった。
【0007】
本発明は、このような課題に着目してなされたものである。その目的とするところは、被熱分解物の熱分解によって得られる熱分解ガスを低い温度で改質することが可能なガス改質装置及びガス改質方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、被熱分解物の熱分解によって得られる熱分解ガスを改質するガス改質炉を備え、該ガス改質炉には、前記熱分解ガスを改質する改質剤を前記ガス改質炉内に供給する改質剤供給管が接続されるとともに、前記ガス改質炉内における前記改質剤の改質機能を向上させる触媒を内装したことを要旨とする。
【0009】
上記構成によれば、前記改質剤の改質機能が前記触媒によって向上されるため、前記ガス改質炉内の熱分解ガスを従来よりも低い温度で改質することが可能となる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記ガス改質炉内には、前記触媒を前記熱分解ガスから保護する触媒保護部材が設けられ、該触媒保護部材は、前記熱分解ガスが前記触媒よりも前記ガス改質炉内における熱分解ガスの流動方向の上流側から前記触媒に接触することを規制するように設けられたことを要旨とする。
【0010】
上記構成によれば、前記触媒が直接的に前記熱分解ガスと接触しないので、該触媒が該熱分解ガスによって冒されて活性が失われることを抑制することが可能となる。
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記改質剤供給管は前記ガス改質炉内に先端部が挿入されると共に、その先端部内に前記触媒が配置されており、前記改質剤は前記改質剤供給管を介して前記ガス改質炉内に加圧供給されることを要旨とする。
【0011】
上記構成によれば、前記触媒により前記改質剤の改質機能を確実に向上させることが可能になるとともに、前記ガス改質炉内の圧力や前記触媒による前記改質剤供給管内の抵抗に抗して円滑に前記改質剤を前記ガス改質炉内に供給することが可能となる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記ガス改質炉内における前記改質剤供給管の先端は、前記熱分解ガスの流動方向の下流側に向かって開口していることを要旨とする。
【0013】
上記構成によれば、前記改質剤供給管により前記触媒が直接的に前記熱分解ガスと接触しないようになるため、部品点数を増やすことなく前記触媒が該熱分解ガスによって冒されて活性が失われることを抑制することが可能となる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、被熱分解物の熱分解によって得られる熱分解ガスを改質剤によって改質するガス改質方法であって、前記熱分解ガスを改質する際に、触媒によって改質剤の改質機能を向上させた後、その改質機能が向上された改質剤を前記熱分解ガスと混合することを要旨とする。
【0015】
上記構成によれば、前記改質剤の改質機能が前記触媒によって向上されるため、前記ガス改質炉内の熱分解ガスを従来よりも低い温度で改質することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、被熱分解物の熱分解によって得られる熱分解ガスを低い温度で改質することが可能なガス改質装置及びガス改質方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(第1実施形態)
以下、本発明をガス化発電システムに備えられたガス改質装置に具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1に示すように、ガス化発電システム10は、ガス発生炉11、ガス改質炉12、ガス洗浄機13、ガスエンジン14及び発電機15を備えている。前記ガス発生炉11とガス改質炉12とは第1ガス管16を介して接続され、前記ガス改質炉12とガス洗浄機13とは第2ガス管17を介して接続され、前記ガス洗浄機13とガスエンジン14とは第3ガス管18を介して接続されている。前記第2ガス管17の中間部には、第4ガス管19の一端が接続され、該第4ガス管19の他端はガス燃焼器20に接続されている。
【0019】
前記ガス発生炉11はホッパ11aを備えており、該ホッパ11aに被熱分解物としてのバイオマスを投入することで、ガス発生炉11内にバイオマスが供給されるようになっている。なお、「バイオマス」とは、再生可能な生物由来の有機性資源のうち化石資源を除いたものを意味し、具体的には、間伐材、材木端材、下水汚泥、パルプスラッジ、生ごみ、し尿、家畜の排泄物、農産物の廃材等が挙げられる。また、前記ガス発生炉11は、内部の温度が500℃〜600℃程度になるように加熱されるようになっており、ガス発生炉11内のバイオマスを熱分解して可燃性の熱分解ガスを発生させるようになっている。
【0020】
前記ガス改質炉12は、前記熱分解ガスを改質するためのものであり、内部の温度が800℃程度になるように加熱されるようになっている。なお、「改質」とは、前記熱分解ガスを、所望の燃料ガス(本実施形態では、ガスエンジン14を駆動させるために適した燃料ガス)に変換(熱分解ガス中のタールの分解除去を含む)することを意味する。
【0021】
前記ガス改質炉12には、改質剤供給管としての第1供給管21の一端が接続され、該第1供給管21の他端は第1改質剤が貯留された第1タンク22に接続されている。前記第1供給管21の中間部には、第1ポンプ23が設けられており、該第1ポンプ23の駆動により前記第1供給管21を介して前記第1改質剤が前記ガス改質炉12内に加圧供給されるようになっている。
【0022】
さらに、前記ガス改質炉12には、改質剤供給管としての第2供給管24の一端が接続され、該第2供給管24の他端は第2改質剤が貯留された第2タンク25に接続されている。前記第2供給管24の中間部には、第2ポンプ26が設けられており、該第2ポンプ26の駆動により前記第2供給管24を介して前記第2改質剤が前記ガス改質炉12内に加圧供給されるようになっている。そして、本実施形態では、前記第1供給管21、第1タンク22、第1ポンプ23、第2供給管24、第2タンク25及び第2ポンプ26により改質剤供給手段が構成されており、該改質剤供給手段と前記ガス改質炉12とによりガス改質装置27が構成されている。
【0023】
図2に示すように、前記第1供給管21及び第2供給管24は、それぞれの先端部が前記ガス改質炉12内に水平方向(図2において左右方向)から挿入され、該ガス改質炉12内において鉛直下方に向けてエルボ状に屈曲されている。前記ガス改質炉12内における第1供給管21及び第2供給管24の各先端には、前記熱分解ガスの流動方向の下流側に向かって開口する第1噴射口21a及び第2噴射口24aが設けられ、これら両噴射口21a,24aは、第2噴射口24aよりも第1噴射口21aの方が前記熱分解ガスの流動方向の上流側に位置する配置構成とされている。なお、前記第1改質剤及び第2改質剤は、それぞれ前記第1噴射口21a及び第2噴射口24aから前記ガス改質炉12内にそれぞれ霧状をなすように噴射されるようになっている。
【0024】
前記第1改質剤としては、水及び酸素(空気)のうち少なくとも一方を用いることができ、本実施形態では水のみが用いられている。前記第2改質剤には、少なくとも分子内にヒドロキシル基(水酸基)を有する化合物が用いられ、本実施形態ではメチルアルコールが用いられている。前記第2改質剤に用いるヒドロキシル基を有する化合物としては、メチルアルコールの他には、エチルアルコールやプロピルアルコール等の1価のアルコール、エチレングリコール等の2価のアルコール、グリセリン等の3価のアルコールが挙げられる。これらの他にも前記化合物としては、蟻酸や酢酸等の1価のカルボン酸、シュウ酸等の2価のカルボン酸、あるいは水酸化カリウムや水酸化ナトリウム等のアルカリ金属の水酸化物、水酸化マグネシウムや水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物が挙げられる。
【0025】
図1に示すように、前記ガス燃焼器20は、前記ガス改質炉12で改質された熱分解ガス(以下、「改質ガス」と言う)の一部を燃焼するようになっており、この燃焼によって発生した熱は、前記ガス改質炉12の加熱及び前記第1改質剤としての水を気化させるために利用されるようになっている。したがって、前記第1改質剤としての水は、前記ガス燃焼器20から第1供給管21内へ供給される熱により気化された高温の水蒸気の状態で、前記第1噴射口21aから前記ガス改質炉12内に噴霧されるようになっている。
【0026】
前記ガス洗浄機13は、内部に冷水が噴霧されるようになっており、前記改質ガスを洗浄及び冷却するようになっている。すなわち、前記ガス洗浄機13において、前記改質ガスが噴霧された冷水内を通過する(潜る)ことで、噴霧された冷水により、該改質ガス中に含まれる灰、塩化水素、窒素酸化物、粉塵等の不純物が洗い流されるとともに、熱が奪われて冷却されるようになっている。そして、前記ガスエンジン14は、前記ガス洗浄機13で洗浄及び冷却された改質ガスを燃料ガスとして駆動するようになっており、この駆動により前記発電機15が駆動されて発電が行われるようになっている。
【0027】
さて、前記ガス発生炉11内にバイオマスが供給されると、該バイオマスが熱分解されて熱分解ガス(主成分は一酸化炭素及び水素)が発生し、該熱分解ガスは第1ガス管16を介して前記ガス改質炉12内に流れ込む。このガス改質炉12内に流れ込んだ熱分解ガスは、前記第1噴射口21aから噴霧される高温の水蒸気(第1改質剤)と反応してメタンガス等に改質される。さらに、前記熱分解ガス中に含まれるタール(主成分はベンゼンやナフタレン等の芳香族炭化水素)は、前記第2噴射口24aから噴霧されるメタノール(第2改質剤)により二酸化炭素や水等に改質(分解)される。すなわち、この場合、メタノール(第2改質剤)は、前記ガス改質炉12内の熱により分解されて強力な酸化作用を有するヒドロキシラジカルを発生し、このヒドロキシラジカルの作用により前記タールが改質される。
【0028】
したがって、前記ガス発生炉11で発生した熱分解ガスは、前記ガス改質炉12内で高温の水蒸気(第1改質剤)及びメタノール(第2改質剤;ヒドロキシラジカル)と混合されて効率よく改質される。前記ガス改質炉12内で改質されたガスの一部は、前記第2ガス管17及び第4ガス管19を介して前記ガス燃焼器20に供給され、該ガス燃焼器20の燃料ガスとして利用される。
【0029】
前記ガス改質炉12内で改質された改質ガスの残り全部は、前記第2ガス管17を介して前記ガス洗浄機13内に流れ込み、洗浄及び冷却された後、第3ガス管18を介して前記ガスエンジン14に供給され、前記発電機15により発電が行われる。
【0030】
以上詳述した第1実施形態によれば次のような効果が発揮される。
(1)前記ガス改質炉12内において、前記熱分解ガスには、前記第2改質剤から発生するヒドロキシラジカルが噴霧されるため、該熱分解ガス中のタールが該ヒドロキシラジカルの強酸化作用により、従来よりも低い800℃程度の温度(従来は1000℃〜1200℃の高温)で改質(除去)することができる。このため、前記ガス改質炉12の熱による劣化を従来よりも抑制することができるとともに、該ガス改質炉12に与える熱エネルギーを従来よりも少なくすることができる。さらに、従来よりも低い温度で前記熱分解ガスを改質することができるため、該熱分解ガスの膨張量が従来よりも小さくなり、前記ガス改質炉12の容積を小さくすることができる。すなわち、前記ガス改質炉12の小型化に寄与することができる。
【0031】
また、従来よりも低い800℃程度の温度で前記熱分解ガスを改質することができるため、前記改質ガス中のメタンの量が多くなり、該改質ガスを燃料ガスとして前記ガスエンジン14を好適に駆動させることができる。因みに、従来のように前記熱分解ガスを1000℃〜1200℃の高温で改質すると、改質ガス中の水素の量が多くなり、このような水素を多く含む改質ガスを前記ガスエンジン14の燃料ガスに用いた場合、ノッキングを起こしやすくなって前記ガスエンジン14がダメージを受けてしまうおそれがある。
【0032】
(2)前記ガス改質炉12内において、前記第1噴射口21aは第2噴射口24aよりも前記熱分解ガスの流動方向の上流側に位置しているため、前記熱分解ガスが第1改質剤と反応した後、該熱分解ガス中のタールが第2改質剤により分解される。このため、前記熱分解ガスの改質を効率よく行うことができる。
【0033】
(3)前記第1改質剤及び第2改質剤は、前記第1ポンプ23及び第2ポンプ26により前記ガス改質炉12内へ加圧供給することができる。このため、ガス改質炉12内の圧力が高くなっても、前記第1改質剤及び第2改質剤をガス改質炉12内へ円滑に供給することができる。
【0034】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について前記第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
図3に示すように、この第2実施形態のガス改質装置27は、ガス改質炉12内に挿入された前記第2供給管24(触媒保護部材)の先端部内における前記第2噴射口24aの近傍に、前記熱分解ガスに対する前記第2改質剤の改質機能を向上するための触媒が担持されたハニカム構造体30が設けられている。前記触媒としては、TiO、CoO、Co(OH)、CdO、Cd(OH)、ZnO、Zn(OH)、PbO、Pb(OH)、NiO、Ni(OH)、InO、In(OH)、Pt、Pt(OH)等が用いられる。
【0035】
前記第2噴射口24aは、前記熱分解ガスの流動方向の下流側に向かって開口しており、前記第2供給管24により前記熱分解ガスの流動方向の上流側から該熱分解ガスが直接的に前記触媒(前記ハニカム構造体30)と接触することが規制されるようになっている。
【0036】
さて、前記第2ポンプ26を駆動させると、前記第2供給管24を流れる第2改質剤は、前記ハニカム構造体30を通過する際に、前記ガス改質炉12内の熱の作用と前記触媒と接触することとにより効果的に分解されて強力な酸化作用を有するヒドロキシラジカルを効率よく発生しながら前記第2噴射口24aから噴霧される。これにより、前記ガス改質炉12内を流れる熱分解ガス中に含まれる前記タールは、このヒドロキシラジカルの作用により好適に改質(分解除去)される。
【0037】
以上詳述した第2実施形態によれば上記第1実施形態の(1)〜(3)の効果に加えて次のような効果が発揮される。
(4)前記触媒によって前記第2改質剤から効率よくヒドロキシラジカルを発生させることができるため、前記第2改質剤による前記熱分解ガス中のタールの改質(分解除去)機能が向上され、前記ガス改質炉12内の熱分解ガス中のタールを前記第1実施形態よりも低い温度で改質(分解除去)することができる。
【0038】
(5)前記触媒が担持されたハニカム構造体30は、前記第2供給管24の先端部内に配設されている。このため、前記触媒により前記第2改質剤から効率よくヒドロキシラジカルを発生させることができるとともに、前記第2ポンプ26の駆動により前記ガス改質炉12内の圧力や前記ハニカム構造体30による前記第2供給管24内の抵抗に抗して前記第2改質剤を円滑に前記ガス改質炉12内に供給することができる。
【0039】
(6)前記第2供給管24の先端部管壁により前記触媒が直接的に前記熱分解ガスと接触しないようにすることができるため、部品点数を増やすことなく、前記ハニカム構造体30に前記熱分解ガス中のすす等が付着して前記触媒の活性が失われることを抑制することができる。このため、前記触媒が担持されたハニカム構造体30の交換頻度を少なくすることができる。
【0040】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について前記第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
図4に示すように、この第3実施形態のガス改質装置27は、ガス改質炉12内に挿入された前記第2供給管24の先端部内における前記第2噴射口24aの近傍に電極棒40が配設されている。前記電極棒40は、前記第2供給管24の内面と接触しないように、図示しない絶縁部材によって支持されており、電源41と電気的に接続されている。ガス改質炉12内に挿入された前記第2供給管24の先端部内面は、光触媒(TiO)42によりコーティングされている。そして、前記電源41により前記電極棒40に通電を行うと、該電極棒40から前記第2供給管24の先端部内面(光触媒42)に放電されるようになっている。
【0041】
さて、前記電極棒40に通電を行うと、該電極棒40から光触媒42に放電された状態となる。この状態で、前記第2ポンプ26を駆動させると、前記第2供給管24を流れる第2改質剤は、電極棒40を通過する際に、前記光触媒42と接触することにより効果的に分解されて強力な酸化作用を有するヒドロキシラジカルを効率よく発生しながら前記第2噴射口24aから噴霧される。これにより、前記ガス改質炉12内を流れる熱分解ガス中に含まれる前記タールは、このヒドロキシラジカルの作用により好適に改質(分解除去)される。
【0042】
以上詳述した第3実施形態によれば上記各実施形態の(1)〜(6)の効果に加えて次のような効果が発揮される。
(7)前記光触媒42は、触媒反応によって第2改質剤を分解してヒドロキシラジカルを効率よく発生させるため、光触媒42自体は劣化することがない。このため、前記光触媒42のメンテナンスを行う必要がないので、該メンテナンスの手間を省くことができる。
【0043】
(変更例)
なお、前記各実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・前記ガス改質炉12内の温度は、前記第2改質剤が分解されてヒドロキシラジカルを発生することができる温度であれば、800℃よりも低い温度に設定してもよい。
【0044】
・前記ガス改質炉12内の温度条件や第1改質剤あるいは第2改質剤等を適宜変更して、前記熱分解ガスから一酸化炭素や水素を多く発生させるようにし、水素を燃料電池に利用したり、一酸化炭素及び水素から所定の触媒を用いてメチルアルコールを製造する設備に利用したりするようにしてもよい。
【0045】
・前記第1改質剤及び第2改質剤は、必ずしも前記ガス改質炉12内へ加圧供給する必要はなく、単に重力を利用して流し込むようにしてもよい。
・前記ガス改質炉12内において、前記第1噴射口21aを前記第2噴射口24aよりも前記熱分解ガスの流動方向の下流側に位置するように構成してもよい。
【0046】
・前記各実施形態において、ガス改質炉12内へは、第2改質剤のみを供給する構成としてもよい。
・図5に示すように、前記ガス改質炉12内において、第1噴射口21a及び第2噴射口24aよりも前記熱分解ガスの流動方向の下流側に、前記熱分解ガスの流れを乱流にする複数の乱流部材50をランダムに配設してもよい。このようにすれば、前記乱流部材50が障害となって前記熱分解ガスの流れが乱流になることで、前記熱分解ガスと、第1改質剤及び第2改質剤とを好適に混ざり合わせることができるため、熱分解ガスの改質を促進させることができる。
【0047】
・また、前記乱流部材50をセラミック等の熱を保持する材料で形成してもよい。このようにすれば、前記ガス改質炉12内の熱を前記乱流部材50によって保持することができるので、前記ガス改質炉12内の温度低下を抑制することができる。
【0048】
・前記第1実施形態において、図6に示すように、前記第1供給管21を前記第2供給管24の中間部に接続し、前記第1改質剤及び第2改質剤の双方が一つの噴射口(図6では前記第2噴射口24a)から同時に前記ガス改質炉12内へ噴霧されるように構成してもよい。
【0049】
・前記第2実施形態において、図7に示すように、前記第1供給管21を前記第2供給管24の中間部に接続し、前記第1改質剤及び第2改質剤の双方が一つの噴射口(図7では前記第2噴射口24a)から同時に前記ガス改質炉12内へ噴霧されるように構成してもよい。
【0050】
・前記第2実施形態において、図8に示すような構成にしてもよい。すなわち、前記第2噴射口24aが前記ガス改質炉12の内面近傍に位置するように構成する。そして、前記触媒が担持されたハニカム構造体30を、前記第2供給管24外の前記ガス改質炉12の内面上に、前記第2噴射口24aと対向するように設ける。さらに、触媒保護部材としての隔壁部材60を、前記第2噴射口24a及びハニカム構造体30を覆うように前記ガス改質炉12の内面上に設けて、前記熱分解ガスが、その流動方向の上流側から直接的に該ハニカム構造体30に接触するのを規制するように構成してもよい。
【0051】
このようにすれば、前記触媒が担持されたハニカム構造体30が直接的に前記熱分解ガスと接触しないので、該触媒が該熱分解ガスによって冒されて活性が失われることを抑制することができる。なお、この場合、前記ハニカム構造体30の下方のみが開放されており、前記第2噴射口24aから噴霧される第2改質剤は、前記ハニカム構造体30を通過し、前記ハニカム構造体30の下方において前記熱分解ガスと合流して混合される。
【0052】
・前記第3実施形態において、図9に示すように、前記第1供給管21を前記第2供給管24の中間部に接続し、前記第1改質剤及び第2改質剤の双方が一つの噴射口(図9では前記第2噴射口24a)から同時に前記ガス改質炉12内へ噴霧されるように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】第1実施形態のガス化発電システムのブロック図。
【図2】第1実施形態のガス改質装置の断面図。
【図3】第2実施形態のガス改質装置の断面図。
【図4】第3実施形態のガス改質装置の断面図。
【図5】変更例のガス改質装置の断面図。
【図6】変更例のガス改質装置の断面図。
【図7】変更例のガス改質装置の断面図。
【図8】変更例のガス改質装置の断面図。
【図9】変更例のガス改質装置の断面図。
【符号の説明】
【0054】
12…ガス改質炉、21…改質剤供給手段及び改質剤供給管としての第1供給管、22…改質剤供給手段としての第1タンク、23…改質剤供給手段としての第1ポンプ、24…改質剤供給手段、改質剤供給管及び触媒保護部材としての第2供給管、25…改質剤供給手段としての第2タンク、26…改質剤供給手段としての第2ポンプ、27…ガス改質装置、30…触媒が担持されたハニカム構造体、50…乱流部材、60…触媒保護部材としての隔壁部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被熱分解物の熱分解によって得られる熱分解ガスを改質するガス改質炉を備え、
該ガス改質炉には、前記熱分解ガスを改質する改質剤を前記ガス改質炉内に供給する改質剤供給管が接続されるとともに、前記ガス改質炉内における前記改質剤の改質機能を向上させる触媒を内装したことを特徴とするガス改質装置。
【請求項2】
前記ガス改質炉内には、前記触媒を前記熱分解ガスから保護する触媒保護部材が設けられ、該触媒保護部材は、前記熱分解ガスが前記触媒よりも前記ガス改質炉内における熱分解ガスの流動方向の上流側から前記触媒に接触することを規制するように設けられたことを特徴とする請求項1に記載のガス改質装置。
【請求項3】
前記改質剤供給管は前記ガス改質炉内に先端部が挿入されると共に、その先端部内に前記触媒が配置されており、前記改質剤は前記改質剤供給管を介して前記ガス改質炉内に加圧供給されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のガス改質装置。
【請求項4】
前記ガス改質炉内における前記改質剤供給管の先端は、前記熱分解ガスの流動方向の下流側に向かって開口していることを特徴とする請求項3に記載のガス改質方法。
【請求項5】
被熱分解物の熱分解によって得られる熱分解ガスを改質剤によって改質するガス改質方法であって、
前記熱分解ガスを改質する際に、触媒によって改質剤の改質機能を向上させた後、その改質機能が向上された改質剤を前記熱分解ガスと混合することを特徴とするガス改質方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−348155(P2006−348155A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−175462(P2005−175462)
【出願日】平成17年6月15日(2005.6.15)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】