説明

ガス栓

【課題】弁収容部内の圧力が外気温の変化に伴って大きく変動することのないガス栓を提供する。
【解決手段】栓本体2の上端面に弁収容部の開口部を囲む包囲壁部24が形成され、ハンドルの下面に包囲壁部24が相対回動可能に挿入された挿入孔42が形成され、包囲壁部24の外周面と挿入孔42の内周面との間がシール部材9によって封止されたガス栓において、ハンドルには、弁収容部を外部に開放する空気通路10を形成する空気通路10の中途部には、第1及び第2環状空間11,12を形成するとともに、第1環状空間11と第2環状空間12との間に、それらより幅が狭く大きな毛細管現象を有する環状間隙13を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、栓本体とハンドルとの間がシール部材によって密封された密封型のガス栓に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ガス栓は、栓本体、弁体及びハンドルを有している。栓本体の内部には、一端が開口した弁収容部及びこの弁収容部の内面にそれぞれ開口するガス流入孔及びガス流出孔が形成されている。弁体は、弁収容部にその開口部の中央部を通る回動軸線を中心として閉位置と開位置との間を回動可能に設けられている。ハンドルは、弁収容部の開口部側における栓本体の外部に配置されており、弁体に回動不能に連結されている。したがって、ハンドルによって弁体を開閉操作可能であり、弁体を閉位置に回動させると、ガス流入孔とガス流出孔との間が弁体によって遮断され、ガス栓が閉状態になる。逆に、ハンドルによって弁体を開位置に回動させると、ガス流入孔とガス流出孔とが弁体に設けられた貫通孔を介して連通し、ガス栓が開状態になる。
【0003】
ハンドルは、栓本体に対して回動可能であるから、それらの間には隙間が存在し、その隙間から雨水が弁収容孔内に浸入するおそれがある。そこで、従来のガス栓においては、栓本体とハンドルとの間にOリング等のシール部材が設けられている。これにより、栓本体とハンドルとの間から雨水が弁収容部内に浸入することが防止されている。
【0004】
ところが、栓本体とハンドルとの間を密封すると、弁収容部内の圧力が外部の温度の変化に応じて大きく変動する。この結果、各種の不都合が発生することがある。例えば、弁体がテーパ状である場合には、ばねによって弁体を弁収容部のテーパ孔に押し付けているが、弁収容部内が負圧になると、弁体がばねの付勢方向と逆方向へ吸引される結果、弁体と弁収容孔との間の密封性が低下する。また、押し回しガス栓の場合には、ハンドルが吸引されて押し下げられ、ハンドルを押し下げなくても回動可能な状態になってしまう。
【0005】
このような不都合を防止するために、下記特許文献1に記載のものにおいては、ハンドルに弁収容部と外部とを連通する空気通路が形成されるとともに、この空気通路に通気部材が設けられている。通気部材は、空気の流通を許容するが、雨水の流通を阻止する。したがって、弁収容部の内部が外気温の変化に伴って変動することを防止することができる。
【0006】
【特許文献1】特開2005−195055号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、通気部材は、雨水に含まれる塵埃によって比較的簡単に通気性を失ってしまう。すると、空気通路が全く機能しなくなってしまう。このため、上記特許文献1に記載のガス栓においては、短期間のうちに弁収容部の内部が外気温の変化に伴って大きく変動するようになってしまうという問題があった
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、上記の問題を解決するために、内部に、一端部が外面に開口する弁収容部、この弁収容部の内面に開口するガス流入孔及びガス流出孔が形成された栓本体と、上記弁収容部にその開口部の中央部を通る回動軸線を中心として閉位置と開位置との間を回動可能に設けられた弁体と、上記弁収容部の一端部が開口する上記栓本体の外部に配置され、上記弁体に回動不能に連結されることにより、上記栓本体に対して上記弁体と一体に回動するハンドルとを備え、上記栓本体には上記弁収容部の一端部開口部を包囲する円環状の包囲壁部がその軸線を上記弁体の回動軸線と一致させて形成され、上記ハンドルの上記栓本体側に位置する一端部には、上記包囲壁部が挿入される挿入孔が形成され、この挿入孔の内周面と上記包囲壁部の外周面との間がシール部材によって封止されたガス栓において、上記ハンドルには、一端が上記弁収容部の一端部に臨む内面に開口し、他端が上記ハンドルの一端面に開口する空気通路が形成されており、上記空気通路が、上記弁収容孔に臨む上記ハンドルの内面から上記ハンドルの他端側に向って延びる第1通路孔と、上記ハンドルの上記一端面から上記ハンドルの他端側へ向って延びる第2通路孔と、上記ハンドルの他端側の内部に形成され、上記第1通路孔の他端部が開口する収容空間と、上記第1通路孔を囲むようにして環状に形成され、上記第1空間に連通した第1環状空間と、この第1環状空間の外側に環状に形成され、上記第1通路孔の他端部に連通した第2環状空間と、上記第1及び第2環状空間に沿って環状に延びて上記第1環状空間と第2環状空間とを全周にわたって連通させる環状間隙とを有し、上記弁体の回動軸線方向における上記環状間隙の幅が、上記第1及び第2環状空間の上記回転軸線方向及びこれと直交する方向における各寸法より狭く設定されていることを特徴としている。
この場合、上記第2通路孔が二つ形成され、この二つの第2通路孔は、上記回動軸線を水平方向に向けたとき、上記二つの第2通路孔の一方が上記第1通路孔より上側に位置し、他方の第2通路孔が上記第1通路孔より下側に位置するように配置されていることが望ましい。
上記環状間隙が、上記回動軸線方向において上記第1通路孔の他端開口部より上記ハンドルの一端側に位置するように配置されていることが望ましい。
上記第1環状空間が上記収容空間を囲むように配置され、上記第1環状空間と上記収容空間との間には、上記第1環状空間に沿って環状に延びて上記第1環状空間と上記収容空間とを全周にわたって連通させる第2環状間隙が形成され、上記回転軸線方向における上記第2環状間隙の幅が、上記第1環状空間及び上記収容空間の上記回転軸線方向及びこれと直交する方向における各寸法より狭く設定されていることが望ましい。
上記第2環状間隙が、上記回転軸線方向において上記環状間隙より上記ハンドルの他端側に位置し、かつ上記第2通路孔の他端開口部より上記ハンドルの一端側に位置するように配置されていることが望ましい。
上記収容空間を区画する壁面のうち上記ハンドルの一端側に位置する部分には、上記ハンドルの一端側から他端側へ向かって突出する突起が形成され、この突起の先端面に上記第1通路孔の他端部が開口させられていることが望ましい。
【発明の効果】
【0009】
上記特徴構成を有するこの発明によれば、ハンドルが栓本体の上側に位置し、かつ弁体の回動軸線が鉛直方向を向くようにしてガス栓を使用した場合、第2通路孔が開口するハンドルの一端面が下方を向き、第2通路孔の一端開口部が下方を向く。したがって、第2通路孔には、床面や地面等に突き当たって反射した雨水が入り込む。第2通路孔に入り込んだ雨水は、第2環状空間に流入し、そこから環状間隙を通って第1環状空間に流入しようとする。ところが、環状間隙の幅が回動軸線方向及びこれと直交する方向における第1及び第2環状空間の寸法より狭いので、第2環状空間内に流入した雨水は、毛細管現象により環状間隙全体にわたって入り込む。しかも、環状間隙内に入り込んだ雨水は、毛細管現象により第1環状空間内に入ることがなく、いわば雨水自体が第2環状空間と第1環状空間との間を遮断する蓋の機能を果たす。したがって、第2通路孔から第2環状空間に入り込んだ雨水は、環状間隙を通って第1環状空間内に入り込むことがない。よって、第1通路孔に達することもなく、弁収容部に入り込むことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、この発明を実施するための最良の形態を、図面を参照して説明する。
図1〜図19は、この発明の第1実施の形態を示す。図1〜図5に示すように、この実施の形態のガス栓1は、栓本体2、球弁(弁体)3及びハンドル4を有している。
【0011】
図4及び図5に示すように、栓本体2の内部には、弁収容部21、ガス流入孔22及びガス流出孔23が形成されている。弁収容部21の一端部(図4において上端部)は、栓本体2の外面(図4において上面)に開口している。弁収容部21が開口する栓本体2の外面には、弁収容部21の他端側から一端側へ向かう方向(図4において上方)に突出する円環状の包囲壁部24が形成されている。換言すれば、包囲壁部24の先端部に弁収容部21の一端部が開口しているのである。ガス流入孔22は、包囲壁部24の軸線と直交するように配置されている。ガス流入孔22の一端部は、栓本体2の一端面(図4において右端面)に開口しており、他端部は、弁収容部21の内面の一側部に開口している。ガス流出孔23は、ガス流入孔22と一直線上に並んで配置されている。ガス流出孔23の一端部は、栓本体2の他端面(図4において左端面)に開口しており、他端部は、弁収容部21の内面の他側部に開口している。
【0012】
弁収容部21の内部には、球弁3が収容されている。この球弁3は、弁収容部21のガス流入孔22側の側部及びガス流出孔23側の側部にそれぞれ配置された環状の弁座部材5,5により回動軸線Lを中心として回動可能に支持されている。回動軸線Lは、弁収容部21及びその開口部の中心を通り、かつガス流入孔22及びガス流出孔23の中心線と直交するように配置されている。換言すれば、回動軸線Lは、包囲壁部24の軸線と一致するように配置されている。
【0013】
球弁3は、図4に示す閉位置と、この閉位置から回動軸線Lを中心として周方向へ90°離間した開位置(図17参照)との間を回動可能である。球弁3が閉位置に回動すると、ガス流入孔22とガス流出孔23とが球弁3によって遮断される。その結果、ガス栓1が閉状態になる。球弁3が開位置に回動すると、ガス流入孔22とガス流出孔23とが球弁3に形成された貫通孔31を介して連通する。その結果、ガス栓1が開状態になる。
【0014】
ハンドル4は、栓本体2に対し図4の上側に配置されており、栓本体2に対して回動軸線Lを中心として回動可能になっている。しかも、ハンドル4は、球弁3に連結部材6を介して回動不能に連結されている。したがって、ハンドル4を回動操作することにより、球弁3を閉位置と開位置との間において回動操作することができる。
【0015】
ハンドル4は、栓本体2に対し、図4に示す係止位置と、そこから図4の下方へ所定距離だけ離間した解除位置との間を回動軸線Lに沿って移動可能になっている。しかも、ハンドル4は、それと連結部材6との間に設けられたコイルばね、その他の弾性部材からなる付勢手段8によって解除位置から係止位置に向かう方向へ付勢されており、回動操作するとき以外は係止位置に位置させられている。ハンドル4が係止位置に位置しているときには、包囲壁部24にこれを横断するようにして設けられた係止軸7が係止凹部41に相対的に入り込む。これにより、ハンドル4が包囲壁部24、ひいては栓本体2に回動不能に係止される。ハンドル4を付勢手段8の付勢力に抗して係止位置から解除位置まで移動させると、係止軸7が係止凹部41から相対的に図4の上方へ移動して係止凹部41から脱出する。この結果、ハンドル4が回動可能になり、球弁3を開閉回動操作することができるようになる。なお、係止軸7は、図8に示すように、ハンドル4の側部に設けられた孔4aから挿入される。孔4aは、係止軸7の挿入後、板材4C及びシール板4Dによって密閉される。
【0016】
ハンドル4の下端面、つまり栓本体2側の一端面4bには、断面円形の挿入孔42が形成されている。この挿入孔42には、包囲壁部24が回動軸線Lを中心として相対回動可能に挿入されている。挿入孔42の内周面と包囲壁部24の外周面との間には、Oリング等からなるシール部材9が設けられている。このシール部材9により、挿入孔42の内周面と包囲壁部24の外周面との間が封止されている。
【0017】
挿入孔42の内周面と包囲壁部24の外周面との間をシール部材9によって封止すると、それらの間から雨水が浸入して弁収容部21の内部まで入り込むことを防止することができる。しかしその反面、弁収容部21の内部の圧力が外気温の変化に伴って大きく変動するおそれがある。このような不都合を防止するために、このガス栓1においては、ハンドル4に空気通路10が設けられている。空気通路10は、一端が弁収容部21に臨むハンドル4の内面に開口し、他端が挿入孔42が開口するハンドル4の一端面4bに開口している。
【0018】
空気通路10の構成をよりよく詳細に説明するために、ハンドル4の構造を説明しながら、空気通路10の構成について説明する。ハンドル4は、その大部分を占める本体部4Aと、この本体部4Aの図4における上端部(ハンドル4の他端部)に固定された蓋部4Bとを備えている。なお、以下においては、説明の便宜上、図4の上下左右を用いて空気通路10の構成を説明するものとする。
【0019】
図8及び図10〜図15に示すように、本体部4Aの図4における上端面には、平面視長方形状をなす収容凹部43が形成されている。この収容凹部43は、その中心が回動軸線Lと一致するように配置されている。収容凹部43の底面には、空間構成凹部44が形成されている。この空間構成凹部44の平面視形状は、収容凹部43とほぼ相似形であるが、それより一回り小さく形成されている。しかも、空間構成凹部44は、その中心線が収容凹部43の中心線(回動軸線L)と一致するように配置されている。空間構成凹部44の底面の中央部には、突出部45が形成されている。突出部45の平面視形状は、空間構成凹部44とほぼ相似形であるが、空間構成凹部44より小さく形成されている。しかも、突出部45は、その中心線が空間構成凹部44の中心線(回動軸線L)と一致し、かつ長手方向が空間構成凹部44の長手方向と一致するように配置されている。したがって、突出部45の外周面と空間構成凹部44の内周面との間には、環状の延びる長方形状の間隙が形成されている。突出部45の先端面には、平面視円形をなす突起46が形成されている。この突起46は、突出部45の幅とほぼ同一の直径を有しており、その中心線を突出部45の中心線(回動軸線L)と一致させて配置されている。
【0020】
蓋部4Bは、図8及び図9に示すように、平板部47を有している。この平板部47は、収容凹部43の深さとほぼ同一の厚さを有しており、収容凹部43に挿入され、接着等の手段によって固定されている。これにより、空間構成凹部44が外部に対して密閉されている。平板部47の下面には、隆起部48が形成されている。この隆起部48は、平面視略長方形をなしており、その中心線が回動軸線Lと一致するように配置されている。隆起部48の先端面(下面)には、大凹部49が形成されている。この大凹部49は、その中心線が回動軸線Lと一致するように配置されている。この大凹部49が形成されることにより、隆起部48が長方形の環状になっている。大凹部49の底面には、小凹部50が形成されている。この小凹部50は、その中心線が回動軸線Lと一致するように配置されている。
【0021】
大凹部49の平面視形状は、突出部45の平面視形状とほぼ相似形であり、突出部45より大きくなっている。したがって、大凹部49の内周面と突出部45の外周面との間には、回動軸線Lを中心として環状に延びる略長方形状の空間が形成されている。この空間が第1環状空間11である(図5〜図7参照)。
【0022】
隆起部48の平面視における形状は、空間構成凹部44と略相似形であり、空間構成凹部44より小さくなっている。したがって、隆起部48の外周面と空間構成凹部44の内周面との間には、回動軸線Lを中心として環状に延びる略長方形の空間が形成されている。この空間が第2環状空間12である(図5〜図7参照)。
【0023】
隆起部48の高さ、つまり平板部47の下面からの隆起部48の突出量は、空間構成凹部44の深さより僅かに小さく設定されている。したがって、隆起部48の先端面(下面)と空間構成凹部44の底面との間には、上下方向の幅が狭い間隙が隆起部48の外周部に沿って環状に形成されている。この間隙が、環状間隙13である。この環状間隙13の幅(回動軸線L方向の幅)は、第2環状空間12内に雨水が入り込んだとき、その雨水が環状間隙13を通って第1環状空間11内に直ちに入り込むことなく、その前に毛細管現象により、雨水がまず環状間隙13全体を満たすように、その大きさが設定されている。そのために、環状間隙13の幅は、第1及び第2環状空間11,12の回動軸線L方向及びこれと直交する各方向における寸法より大幅に狭く、例えば1/3以下に設定されている。環状間隙13の幅は、本体部4A及び蓋部4Bを構成する材質に基づいて実験的に定められるが、例えば0.2mm〜0.5mm程度に設定される。
【0024】
小凹部50の図5における左右方向の長さは、突出部45の同方向の長さより短く設定され、図5における紙面と直交する方向の幅は、突出部45の同方向の幅と同等か僅かに狭く設定されている。したがって、小凹部50の内部と突出部45の先端面(上面)とによって空間が区画されている。この空間が収容空間14である。
【0025】
ハンドル4の他端側に位置する内面、つまり小凹部50の底面は、突起46の先端面に対して上方に離間している。突起46の先端面には、回動軸線L上を下方に向かって延びて、弁収容部21の他端部(上端部)に臨むハンドル4の内面(下面)に開口する孔が形成されている。この孔が第1通路孔15である。この第1通路孔15により、弁収容部21と収容空間14とが連通させられている。突起46の先端面は、第1、第2環状空間11,12及び環状間隙13より上方に位置している。したがって、第1通路孔15の上端開口部も、第1、第2環状空間11,12及び環状間隙13より上方に位置している。
【0026】
大凹部49の底面、つまり小凹部50が形成された部分を除く大凹部49の底面は、突出部45の先端面に対し上方(ハンドル4の一端側から他端側へ向かう方向)へ所定の微小距離だけ離間しており、大凹部49の底面と突出部45の先端面との間には、それらの周縁部に沿って環状に延びる略長方形の間隙が形成されている。この間隙が、第2環状間隙16である。第2環状間隙16は、第1環状空間11の上端部と収容空間14の下端部とを全周にわたって連通させている。第2環状間隙16の回動軸線L方向における幅は、環状間隙13の同方向における幅とほぼ同一に設定されている。したがって、仮に第1環状空間11内に雨水が溜まったとしても、その雨水が直ちに収容空間14内に入ることがなく、その前に毛細管現象により第2環状間隙16全体にわたって雨水が入り込むことになる。なお、第2環状間隙16は、大凹部49の底面と突出部45の先端面との間に形成されているので、上下方向において第1環状空間11の上端部及び収容空間14の下端部と同一位置に位置しており、第1通路孔15の上端開口部より下側に位置している。
【0027】
本体部4Aには、二つの第2通路孔17,18が形成されている。第2通路孔17,18は、回動軸線Lと平行に延びており、それぞれの一端部はハンドル4の一端面4bに開口している。一方の第2通路17の他端部は、第2環状空間12の長手方向の一端部の側面に開口している。他方の第2通路18の他端部は、第2環状空間12の長手方向の他端部の側面に開口している。この結果、弁収容部21が、第1通路孔15、収容空間14、第2環状間隙16、第1環状空間11、環状間隙13、第2環状空間12及び第2通路孔17,18を介して外部に開放されている。つまり、第1通路孔15、収容空間14、第2環状間隙16、第1環状空間11、環状間隙13、第2環状空間12及び第2通路孔17,18によって空気通路10が構成されている。
【0028】
二つの第2通路孔17,18は、次の条件を満たすように配置されている。ただし、この条件は必ずしも満たす必要はない。図6及び図7に示すように、第2通路孔17,18は、回動軸線Lを中心として互いに180°離れている。また、回動軸線Lを水平方向に向け、かつハンドル4を閉位置に回動させたときには、一方の第2通路17が第1通路孔15により上側に位置し、他方の第2通路孔18が第1通路孔15より下側に位置する。さらに、回動軸線を水平方向に向け、かつハンドル4を開位置に回動させたときには、図18及び図19に示すように、一方の第2通路孔17が第1通路孔15より上側に位置し、他方の第2通路孔18が第1通路孔15より下側に位置する。
【0029】
上記構成のガス栓1においては、栓本体2の包囲壁部24の外周面とハンドル4の挿入孔42の内周面との間がシール部材9によって封止されているので、それらの間から雨水が弁収容部21内に入り込むことを防止する。また、弁収容部21が空気通路10を介して外部に開放されているから、弁収容部21内の圧力が外気温の変化に伴って大きく変動することを防止することができる。
【0030】
また、ガス栓1は、図1、図2及び図4に示すように、回動軸線Lを上下方向に向け、かつハンドル4を栓本体2の上側に位置させて使用されるか、回動軸線Lを水平方向に向けて使用される。いずれの姿勢で使用される場合であっても、雨水が空気通路10を介して弁収容部21内に入り込むことを防止することができる。
【0031】
まず、前者の姿勢で使用される場合には、図5に示すように、第2通路孔17,18の一端面4bにおける開口部が下方を向いているので、雨水は床面や地面にぶつかり、そこで反射して第2通路17,18にその下端開口部から入り込む。そして、雨水は、第2通路孔17,18から第2環状空間12内に入り込む。第2環状空間12内に入り込んだ雨水は、環状間隙13の回動軸線L方向における幅が狭いので、環状間隙13を通って直ちに第1環状空間11内に入り込むことがなく、毛細管現象によって環状間隙13全体を満たす。すると、第1環状空間11と第2環状空間12との間が環状間隙13内を満たす雨水によって蓋をされた状況を呈する。したがって、雨水が第1環状空間11内に入り込むことがほとんどない。よって、弁収容部21に雨水が入り込むことを防止することができる。
【0032】
また、仮に第1環状空間11内に雨水が入り込んだとしても、第1環状空間11と収容空間14との間には、第2環状間隙16が介在しており、第2環状間隙16は環状間隙13と同様に機能する。したがって、第1環状空間11内に入り込んだ雨水が、収容空間14内に入り込むことを防止することができる。しかも、第2環状間隙16は、第1環状空間11の上端部に配置されているので、雨水は第1環状空間11内を満たすまでは収容空間14内に入り込むことができない。これにより、雨水が収容空間14内に入り込むことをより一層確実に防止することができる。
【0033】
さらに、収容空間14内に雨水が入り込んだとしても、第1通路孔15の収容空間14内における開口部が収容空間14の上端部に配置されているので、収容空間14内に雨水が充満するまでは、雨水が第1通路孔15に入り込むことがない。よって、回動軸線Lを上下方向に向けた状態でガス栓1が使用される場合には、雨水が空気通路10を通って弁収容部21内に入り込むことをほとんど確実に防止することができる。
【0034】
また、ガス栓1が、回動軸線Lを水平方向に向けた状態で使用される場合であっても、雨水が弁収容部21に空気通路10を通って入り込むことを防止することができる。すなわち、図16に示すように、回動軸線Lを水平方向に向けた状態において、ハンドル4が閉位置に位置している場合には、図6及び図7に示すように、第2通路孔17が第2通路孔18より上側に位置する。したがって、雨水は上側の第2通路孔17から入り込み、下側の第2通路孔18から流出する。上側の第2通路孔17から入り込んだ雨水は、まず第2環状空間12内に流入する。第2環状空間12内に流入した雨水は、環状間隙13を通って第1環状空間11内に入り込もうとする。このとき、環状間隙13の毛細管現象により、雨水が第2環状空間12から第1環状空間11内に入り込むことが阻止される。この結果、第2環状空間12内に入り込んだ雨水は、第2環状空間12の下部に溜まる。そして、下側の第2通路孔18から流出する。したがって、雨水が空気通路10を通って弁収容部21内に入り込むことを防止することができる。仮に、第1環状空間11内に雨水が入り込んだとしても、第1環状空間11と収容空間14との間には、第2環状間隙16が介在するので、雨水が収容空間14内に入り込むことがない。よって、雨水が弁収容部21内に入り込むことをより一層確実に防止することができる。
【0035】
図17に示すように、回動軸線Lが水平方向を向いた状態において、ハンドル4が開位置に位置している場合には、図18及び図19に示すように、第2通路孔17が第2通路孔18より上側に位置する。したがって、この場合も、ハンドル4が閉位置に位置している場合と同様にして、雨水が空気通路10を通って弁収容部21内に入り込むことを防止することができる。
【0036】
図20及び図21は、この発明の第2実施の形態を示す。この実施の形態のガス栓1′においては、ハンドル4がボルトBによって第1連結部材6Aに固定され、第1連結部材6Aが第2連結部材6Bに回動不能に連結され、さらに第2連結部材6Bが球弁3に回動不能に連結されている。ボルトBは、第1通路孔15に挿入されているが、第1通路孔15の内周面とボルトBとの間には、空気通路を構成することができるだけの隙間が形成されている。したがって、第1通路孔15がボルトBによって塞がれることがなく、第1通路孔15は上記実施の形態と同様に弁収容部21の上端部と収容空間14とを連通させている。このガス栓1′においては、係止軸が用いられていないので、ハンドル4には、孔4aが形成されておらず、板材4C及びシール板4Dが用いられていない。その他の構成は、上記実施の形態と同様であるので、その説明は省略する。
【0037】
なお、この発明は、上記実施の形態に限定されるものでなく、その要旨を逸脱しない半において適宜変更可能である。
例えば、上記の実施の形態においては、ガス流入孔22とガス流出孔23とが一直線上に並んで配置されているが、互いに直交する線上に配置してもよい。
また、上記の実施の形態においては、弁体として球弁3が用いられているが、球弁3に代えてテーパ状の弁体を用いてもよい。その場合には、弁収容部21に弁体を回動可能に収容するテーパ孔部が形成される。
また、上記の実施の形態においては、二つの第2通路孔17,18が形成されているが、ガス栓1,1′がガス流入孔22及びガス流出孔23の長手方向を水平方向に向けた状態でだけ使用されるのであれば、第2通路孔17,18のうちのいずれか一方だけを形成してもよい。
さらに、上記の実施の形態においては、第1環状空間11、第2環状空間12、環状間隙13、収容空間14及び第2環状間隙16を長方形状に形成しているが、その形状は任意であり、例えば正方形状又は円形状にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】この発明の第1実施の形態を、ハンドルを閉位置に回動させた状態で示す斜視図である。
【図2】同実施の形態を、ハンドルの回動軸線を上下方向に向け、かつハンドルを開位置に回動させた状態で示す斜視図である。
【図3】同実施の形態を、ハンドルの回動軸線を上下方向に向け、かつハンドルを閉位置に回動させた状態で示す平面図である。
【図4】図3のX−X線に沿う断面図である。
【図5】図3のY−Y線に沿う断面図である。
【図6】図5のX−X線に沿う拡大断面図である。
【図7】図5のY−Y線に沿う拡大断面図である。
【図8】同実施の形態において用いられているハンドルの分解斜視図である。
【図9】同ハンドルの蓋部を示す斜視図である。
【図10】同ハンドルの本体部を示す平面図である。
【図11】図10のX−X線に沿う断面図である。
【図12】図11のX−X線に沿う断面図である。
【図13】図11のY−Y線に沿う断面図である。
【図14】図10のY−Y線に沿う断面図である。
【図15】同本体部の底面図である。
【図16】同実施の形態を、ハンドルの回動軸線を水平方向に向け、かつハンドルを閉位置に回動させた状態で示す断面図である。
【図17】同実施の形態を、ハンドルの回動軸線を水平方向に向け、かつハンドルを開位置に回動させた状態で示す断面図である。
【図18】図17のX−X線に沿う拡大断面図である。
【図19】図17のY−Y線に沿う拡大断面図である。
【図20】この発明の第2実施の形態を示す図4と同様の断面図である。
【図21】同実施の形態を示す図5と同様の断面図である。
【符号の説明】
【0039】
L 回動軸線
1 ガス栓
1′ ガス栓
2 栓本体
3 球弁(弁体)
4 ハンドル
4b 一端面
10 空気通路
21 弁収容部
22 ガス流入孔
23 ガス流出孔
24 包囲壁部
31 貫通孔
11 第1環状空間
12 第2環状空間
13 環状間隙
14 収容空間
15 第1通路孔
16 第2環状間隙
17 第2通路孔
18 第2通路孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に、一端部が外面に開口する弁収容部、この弁収容部の内面に開口するガス流入孔及びガス流出孔が形成された栓本体と、上記弁収容部にその開口部の中央部を通る回動軸線を中心として閉位置と開位置との間を回動可能に設けられた弁体と、上記弁収容部の一端部が開口する上記栓本体の外部に配置され、上記弁体に回動不能に連結されることにより、上記栓本体に対して上記弁体と一体に回動するハンドルとを備え、上記栓本体には上記弁収容部の一端部開口部を包囲する円環状の包囲壁部がその軸線を上記弁体の回動軸線と一致させて形成され、上記ハンドルの上記栓本体側に位置する一端部には、上記包囲壁部が挿入される挿入孔が形成され、この挿入孔の内周面と上記包囲壁部の外周面との間がシール部材によって封止されたガス栓において、
上記ハンドルには、一端が上記弁収容部の一端部に臨む内面に開口し、他端が上記ハンドルの一端面に開口する空気通路が形成されており、
上記空気通路が、上記弁収容孔に臨む上記ハンドルの内面から上記ハンドルの他端側に向って延びる第1通路孔と、上記ハンドルの上記一端面から上記ハンドルの他端側へ向って延びる第2通路孔と、上記ハンドルの他端側の内部に形成され、上記第1通路孔の他端部が開口する収容空間と、上記第1通路孔を囲むようにして環状に形成され、上記第1空間に連通した第1環状空間と、この第1環状空間の外側に環状に形成され、上記第1通路孔の他端部に連通した第2環状空間と、上記第1及び第2環状空間に沿って環状に延びて上記第1環状空間と第2環状空間とを全周にわたって連通させる環状間隙とを有し、上記弁体の回動軸線方向における上記環状間隙の幅が、上記第1及び第2環状空間の上記回転軸線方向及びこれと直交する方向における各寸法より狭く設定されていることを特徴とするガス栓。
【請求項2】
上記第2通路孔が二つ形成され、この二つの第2通路孔は、上記回動軸線を水平方向に向けたとき、上記二つの第2通路孔の一方が上記第1通路孔より上側に位置し、他方の第2通路孔が上記第1通路孔より下側に位置するように配置されていることを特徴とする請求項1に記載のガス栓。
【請求項3】
上記環状間隙が、上記回動軸線方向において上記第1通路孔の他端開口部より上記ハンドルの一端側に位置するように配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のガス栓。
【請求項4】
上記第1環状空間が上記収容空間を囲むように配置され、上記第1環状空間と上記収容空間との間には、上記第1環状空間に沿って環状に延びて上記第1環状空間と上記収容空間とを全周にわたって連通させる第2環状間隙が形成され、上記回転軸線方向における上記第2環状間隙の幅が、上記第1環状空間及び上記収容空間の上記回転軸線方向及びこれと直交する方向における各寸法より狭く設定されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のガス栓。
【請求項5】
上記第2環状間隙が、上記回転軸線方向において上記環状間隙より上記ハンドルの他端側に位置し、かつ上記第2通路孔の他端開口部より上記ハンドルの一端側に位置するように配置されていることを特徴とする請求項4に記載のガス栓。
【請求項6】
上記収容空間を区画する壁面のうち上記ハンドルの一端側に位置する部分には、上記ハンドルの一端側から他端側へ向かって突出する突起が形成され、この突起の先端面に上記第1通路孔の他端部が開口させられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のガス栓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2009−257452(P2009−257452A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−106548(P2008−106548)
【出願日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【出願人】(000167325)光陽産業株式会社 (69)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】