説明

ガス栓

【課題】せん収容部(30)内にせん(3)が回動自在に収容され、せん収容部(30)の開放端部に連設させる円筒部(33)にせん(3)を回動操作する操作ハンドル(2)を、防水パッキン(10)を介して相対回動可能に取付けたガス栓に関し、操作ハンドル(2)の裏面とせん(3)の頂面(36)と円筒部(33)で囲まれる空間(S3)の防水性を確保し且つ通気性を長期間維持できるようにすること。
【解決手段】操作ハンドル(2)の裏面に円筒部(33)の外周を覆うスカート部(24)を設け、防水パッキン(10)は、円筒部(33)の開放端部外周とスカート部(24)の内周面との間に圧接させ、スカート部(24)で覆った範囲の円筒部(33)の構成壁に貫通孔(11)を貫通させ、貫通孔(11)の少なくとも一部分は防水パッキン(10)の非装着域に開放させ、貫通孔(11)に非通水性の通気部材(1)を充填したこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ガス栓、特に、ガス栓本体と操作ハンドルとの間に防水パッキンを具備させた構成のガス栓に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ガス栓は、図5に示すように、ガス栓本体(31)に挿通するガス流路(31a)の中央部に、図面では上方に開放するせん収容部(30)が形成されていると共に、前記せん収容部(30)内には、操作ハンドル(2)の回動操作により回動可能な円錐台形のせん(3)が収容されている。尚、せん収容部(30)の内周面とせん(3)の外周面は、摺動部(35)を介して相互に摺動し合う関係となっている。
又、前記せん(3)にはガス通過孔(3a)が貫通してあり、同図に示した全開状態から、操作ハンドル(2)の操作によりせん(3)を90度回動させると、ガス流路(31a)とガス通過孔(3a)が直角に交わる全閉状態となる。
【0003】
せん収容部(30)の上端開放部には円筒部(33)が上方へ同軸上に延長形成されてあり、円筒部(33)の開放端部を、操作ハンドル(2)の裏面に設けた環状溝部(23)内に嵌め込むと同時に、操作ハンドル(2)の裏面中央に設けられた凹部(22)内に、せん(3)の頂面(36)の中央に突設されている操作軸(32)を相対回動阻止状態に嵌め込む。これにより、操作ハンドル(2)は、円筒部(33)に対して相対回動可能に装着されると共に、せん(3)は操作ハンドル(2)と共回りし、操作ハンドル(2)を回動させることによって、せん(3)を回動させて、ガス流路(31a)を開閉することができる。
又、ガス栓本体(31)内のせん(3)の前記操作軸(32)の周囲と操作ハンドル(2)の裏面との間には、せん(3)をせん収容部(30)内に押し込むための押えバネ(4)が圧縮状態で介在されてあり、せん(3)は、押えバネ(4)の付勢力によって、せん収容部(30)内に押し込まれた状態で収容される。
【0004】
屋外に設置されるガスメータ用のガス栓や、業務用厨房に設置されているガス栓は、雨水や散水等によって、ガス栓本体(31)内に水が浸入し易い環境下にある。ガス栓本体(31)内に水が浸入することにより、ガス栓本体(31)内で錆びが発生し、摺動部(35)が錆付くと、せん収容部(30)内でせん(3)が固着してしまい、せん(3)の操作ができなくなるといった不都合がある。よって、この種ガス栓では、ガス栓本体(31)内への水の浸入を確実に防止する必要がある。
そのために、同図に示すものでは、環状溝部(23)内に防水パッキン(20)を設け、前記防水パッキン(20)で、前記円筒部(33)の上端と操作ハンドル(2)の裏面との間の防水を確保していると共に、せん(3)とせん収容部(30)との間の摺動部(35)の上端全域に、潤滑・シール用のグリス層(45)を設けている。
【0005】
このように、前記防水パッキン(20)によって、円筒部(33)と操作ハンドル(2)との隙間から、雨水や散水等による外部の水がガス栓本体(31)内に浸入するのを防止していると共に、グリス層(45)によって前記摺動部(35)の錆付きを防止している。これにより、ガス栓本体(31)内での錆の発生を防止でき、錆によるせん(3)の固着やそれに伴う操作ハンドル(2)の操作不良を防止することができる。
上記したように、防水パッキン(20)やグリス層(45)を具備させたガス栓では、円筒部(33)の内周面と、前記せん(3)の頂面(36)と、操作ハンドル(2)の裏面とによって囲まれた空間は、密閉された気密空間(S)となる。
【0006】
このような気密空間(S)を有するガス栓であって、屋外に設置されているガスメータ用のガス栓では外気温度の上昇により、又、厨房にて使用されているガス栓ではガス栓近くでの加熱機器の使用により、ガス栓の周りの温度が上昇すると、前記気密空間(S)内の温度が上昇する。これに伴い、前記気密空間(S)内は加圧されて膨張し、せん(3)の頂面(36)にかかる圧力が大きくなる。この場合、せん(3)にはせん収容部(30)の底部側へ押し下げられる方向の力が作用する。
【0007】
このように、ガス栓の温度の上昇により、せん(3)にかかる圧力が大きくなった場合には、せん(3)が加圧されることから、操作ハンドル(2)でせん(3)を回動させにくくなり、ガス栓のスムーズな操作が困難になる。
【0008】
そこで、上記したような気密空間(S)を生じさせないようにしたものとして、特開2005−195055号に開示の発明がある。
このものでは、図6に示すように、ガス栓本体(31)のせん収容部(30)内のせん(3)と操作ハンドル(2)とはドライブシャフト(40)を介して連結されてあり、ドライブシャフト(40)と操作ハンドル(2)とが、ネジ(41)で相対回動阻止状態にネジ止めされている。
【0009】
操作ハンドル(2)の縦中央には、ネジ(41)が螺合可能なネジ孔(42)が貫通していると共に、ガス栓本体(31)の円筒部(33)の外周面とそれを覆っている操作ハンドル(2)のスカート部(24)との間には、防水パッキン(20)が介在されている。
そして、この従来例のガス栓では、前記ネジ孔(42)の上方開放部に、非通水性の通気部材(44)を充填させている。
【0010】
通気部材(44)は、通水性はないが、通気性のある素材から構成されてあるため、通気部材(44)を介して、操作ハンドル(2)の裏面下方の空間(S2)内に水が浸入することはないが、空気は、前記通気部材(44)、ネジ(41)とネジ孔(42)との隙間、さらに、ドライブシャフト(40)の軸部(43)の周囲を介して外部と連通可能となっている。このように、前記空間(S2)は気密状態に維持されることはないから、操作ハンドル(2)に通気部材(44)を設けた構成のものでは、ガス栓の外部の温度が上昇しても、前記空間(S2)内が加圧されることはなく、せん(3)に下方へ押し下げられる圧力は作用することはない。よって、せん(3)が加圧によってせん収容部(30)内で固着され操作性が悪くなるといった不都合はない。
【特許文献1】特開2005−195055号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記構成のものでは、操作ハンドル(2)のネジ孔(42)の開放端部に通気部材(44)を充填させているため、ガスメータ用のガス栓のように、屋外配管と共にガス栓全体に、防錆のための塗装が施される場合には、通気部材(44)の外表面も塗装部材で覆われてしまい、通気部材(44)の通気性が消失してしまう。又、屋内や厨房に設けられているガス栓の場合では、塵埃や、油、又は洗剤等が通気部材(44) の外表面に付着して、通気部材(44)が目詰まりすることにより、通気性が失われてしまう。
【0012】
よって、上記構成のものでは、せん(3)と操作ハンドル(2)の裏面との間の空間(S2)に長期に渡って通気性を確保させることは困難であり、通気部材(44)が塗料や塵埃等で目詰まりしてしまえば、前記空間(S2)は、図5の場合と同様に、密閉された気密空間(S)となってしまう。このように、図6に示す発明のものでも、ガス栓の周りの温度の変化によってせん(3)にかかる圧力が変動し、場合によっては、せん(3)を回動させにくくなるといった不都合を解消するには不十分である。
【0013】
本発明は、『ガス栓本体の一方に開放するせん収容部内に、ガス流路を開閉するせんが摺動部を介して回動自在に収容されてあり、前記せん収容部の開放端部に円筒部が同軸上に連設されていると共に、前記円筒部に前記せんを回動操作するための操作ハンドルが防水パッキンを介して相対回動可能に取付けられているガス栓』において、前記操作ハンドルの裏面と前記せんの頂面と前記円筒部で囲まれる空間の防水性を確保しながら通気性を長期間維持できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(1)上記課題を解決するために講じた本発明の解決手段は、『前記操作ハンドルの裏面には前記円筒部の外周を覆うスカート部が設けられ、
前記防水パッキンは、前記円筒部の開放端部外周と、前記スカート部の内周面との間に設けられ、
前記円筒部の、前記スカート部で覆われている範囲の所定位置に、前記円筒部の構成壁を貫通する貫通孔が形成され、
前記貫通孔の少なくとも一部分は前記防水パッキンの非装着域に開放していると共に、前記貫通孔には非通水性の通気部材が充填されている』ことである。
上記技術的手段が次のように作用する。
ガス栓本体は、せん収容部の開放端部から円筒部が連設する構成となっており、前記円筒部には、その外周が操作ハンドルのスカート部で覆われる態様で、前記操作ハンドルが相対回動自在に装着される。前記円筒部の開放端部外周とスカート部との間には防水パッキンが設けられているから、前記スカート部と円筒部との隙間から前記円筒部内に水が浸入することはない。よって、ガス栓本体内の防水性は確保される。
又、前記円筒部には貫通孔が形成され、前記貫通孔には非通水性の通気部材が充填されている。前記貫通孔は、円筒部のうち、操作ハンドルのスカート部で覆われている範囲に設けられていると共に、その少なくとも一部分は前記防水パッキンで被覆されないように設定されているから、前記貫通孔全体が前記防水パッキンによって密閉されることはなく、その少なくとも一部分が、前記円筒部と前記スカート部との隙間に開放する態様となる。
よって、前記貫通孔に通気部材を充填させると、前記通気部材は非通水性であることから、前記通気部材から、円筒部内へ水等の液体の浸入は阻止することはできる。又、少なくともその一部分は、前記円筒部と前記スカート部との隙間に開放していることから、前記隙間から通気自在となる。よって、前記操作ハンドルの裏面と前記せんの頂面と前記円筒部で囲まれる空間は、防水機能を具備させたまま通気は確保される。しかも、前記通気部材の外表面は、スカート部で覆われた態様となっており、ガス栓の外方へ露出していない。
【0015】
(2)請求項2に係る発明のガス栓は、請求項1に記載のガス栓において、『前記防水パッキンは、前記円筒部の開放端面に密着する環状フランジ片と、前記円筒部の外周面に密着する周壁部とから断面略逆L字状に形成され、
前記周壁部は、前記貫通孔内の前記通気部材の外表面を、非接触状態で被覆している』もので、貫通孔に充填される通気部材の外表面には、防水パッキンの周壁部の内面が密着せずに被覆しているから、通気部材の通気性を保持しながら、通気部材の外表面は防水パッキンの周壁部によって保護されることとなる。
【0016】
(3)請求項3に係る発明のガス栓は、請求項1又は請求項2に記載のガス栓において、『前記通気部材は、金属製の焼結体から構成されている』もので、前記焼結体を貫通孔の大きさ形状に略一致する断面形状に形成しておき、前記貫通孔に焼結体を強制的に圧入させることにより、前記貫通孔に前記焼結体を充填させることができる。
【0017】
(4)請求項4に係る発明のガス栓は、請求項3に記載のガス栓において、『前記操作ハンドルの裏面に、前記スカート部を外側周壁とする環状溝部が形成され、
前記環状溝部に、前記円筒部の前記貫通孔を含む範囲が回動自在に収納され、
前記環状溝部の内側周壁における前記貫通孔に対応する所定位置に、前記環状溝部内に開放する円周溝部が周方向に形成され、
前記通気部材は、前記貫通孔に圧入されると共に、その先端部は前記円周溝部に差し込まれてその溝幅方向に係合される』もので、操作ハンドルに設けられている環状溝部にガス栓本体の円筒部を収納させ、前記円筒部に設けられている貫通孔を前記環状溝部内の円周溝部に対応させる。そして、通気部材としての金属製の焼結体を貫通孔に圧入すると共に、その先端部を円周溝部内に挿入させる。すると、通気部材の先端部は前記円周溝部に溝幅方向に係合する。
これにより、操作ハンドルは通常の取外し防止構造に加えて、通気部材による取外し防止構造が付加されて、より安全性の高いものとなる。
【0018】
(5)請求項5に係る発明のガス栓は、上記各請求項のいずれかに記載のガス栓において、『前記摺動部に続く前記せんの頂面の周縁にグリス層が設けられ、前記グリス層は環状の保護カバーで被覆されると共に、前記貫通孔は前記保護カバーよりも、前記円筒部の開放端寄りに形成されている』もので、グリス層によって、せんとせん収容部の摺動部の防錆が確実になる。又、グリス層は保護カバーで被覆されているものであるから、ガス栓の向きに関係なく、グリス層が円筒部の開放端寄りに流れてくることはない。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に係る発明によれば、前記操作ハンドルの裏面と前記せんの頂面と前記円筒部で囲まれる空間は、通気部材を介して、外部と通気自在としたから、ガス栓を取り巻く空気の温度が変化しても、前記空間内の圧力が変動しない。これにより、せんの頂面にかかる圧力も変動することはないから、せんが加圧されてせん収容部内で固着され、ガス栓の開閉操作が困難になるといった不都合を防止することができる。
又、通気部材は操作ハンドルのスカート部で覆われる構成としたから、屋外のガスメータ用のガス栓の場合に、配管と共にガス栓全体に塗装が施されても、塗料が前記スカート部よりも内側へ侵入することはない。よって、通気部材の外表面が塗料によって目詰まりする不都合がない。同様に、厨房用のガス栓の場合では、塵埃や、油、又は洗剤等が通気部材の外表面に付着するのを防止することができる。
又、前記空間が密閉された構造のガス栓では、ガス栓の組立て後は、せんの摺動部から前記空間へのガス漏れを外部から検出することができないため、ガス漏れ検査するには、一旦、防水パッキンなしで操作ハンドルを円筒部に組み付けて漏れ検査を実施し、異常がなかった場合には、前記操作ハンドルを取り外し、防水パッキンを取り付けた後、再度、操作ハンドルを円筒部に組み付けていた。このように、前記空間を密閉させていた従来のガス栓では、ガス漏れ検査を実施するために、二度の組み付け工程が要求されていたが、前記空間を通気部材により通気自在とすることにより、ガス栓の組み立て後でもガス漏れ検査を実施することができ、検査後の再組み付け工程が不要となり、ガス漏れ検査の工程を簡略化することができる。
【0020】
請求項2に係る発明によれば、貫通孔に充填させた通気部材の外表面を、防水パッキンの周壁部で被覆させる構成としたから、通気部材の外表面は、操作ハンドルのスカート部と防水パッキンの周壁部とで二重に保護される。よって、塗料や油等の付着による通気部材の目詰まりを一層確実に防止することができる。尚、防水パッキンは通気部材に密着させていないから、通気部材の通気性に支障はない。
【0021】
請求項3に係る発明によれば、通気部材の通気性、撥水性の他に、耐熱性、耐食性、耐候性も期待でき、又、貫通孔の大きさ形状に合わせて通気部材の機械加工も自在である。
【0022】
請求項4に係る発明によれば、請求項3に係る発明の効果に加えて、通気部材を操作ハンドルの抜け止め部材としても利用することができ、ガス栓の安全性を向上させることができる。
【0023】
さらに、請求項5に係る発明によれば、グリス層によって、せんとせん収容部の摺動部の防錆を確実なものとしたから、せんの回動操作を一層確実で且つスムーズなものとなる。又、保護カバーで被覆されているグリス層が円筒部の開放端寄りに流れてくることはないから、前記グリス層が貫通孔に至ることはなく、グリスによる通気部材の目詰まりが発生することはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について添付図面を参照しながら説明する。
図1は、本願発明の第1番目の実施の形態におけるガス栓の断面図であり、図2は、図1のガス栓における防水パッキン(10)及び通気部材(1)の装着部の要部拡大断面図である。
この実施の形態のガス栓本体(31)は、図1に示すように、従来のものと同様、図面において上方に開放し且つ逆円錐台形状のせん(3)を収容するせん収容部(30)と、その開放端部に連続する円筒部(33)とを備えた構成となっており、せん収容部(30)は、ガス栓本体(31)のガス流路(31a)に連通していると共に、せん(3)には、ガス流路(31a)に連通するガス通過孔(3a)が貫通している。
【0025】
せん(3)をせん収容部(30)内に収容させた状態にて、せん収容部(30)の内周面及びせん(3)の外周面はそれぞれ相互に摺動可能な摺動部(35)となっており、ガス通過孔(3a)よりも上方に位置する摺動部(35)の上端に相当するせん(3)の頂面(36)の周縁には、潤滑・シール用のグリスが塗布されてグリス層(45)が形成されて、摺動部(35)への水滴や洗剤や埃等の浸入を確実に防止している。又、前記グリス層(45)の全域は、合成樹脂又はゴム等の弾性材料からなる環状の保護カバー(46)で被覆され、グリス層(45)からグリスが他所へ流出するのを防止している。
【0026】
円筒部(33)の開放端部は、その基端部側よりも薄肉の環状薄肉部(33a)となっており、この環状薄肉部(33a)に操作ハンドル(2)が回動自在に装着される。
尚、この環状薄肉部(33a)の基端部近傍には、図2に示すように、一箇所又は複数個所に、貫通孔(11)が貫通している。貫通孔(11)は、環状薄肉部(33a)の外周面(38)側が大径孔となる段付きに形成されており、前記貫通孔(11)には、通水性はないが通気性はある性質の通気部材(1)が嵌め込まれる。
【0027】
通気部材(1)としては、金属製の焼結体が採用可能であり、特に、良好な通気性と、強い撥水性を有し、さらに、耐食性、耐熱性に優れている点で、ステンレス製の焼結体が好ましい。
通気部材(1)を貫通孔(11)内に環状薄肉部(33a)の外側から圧入させた状態にて、通気部材(1)の大径軸側の外表面(12)は、環状薄肉部(33a)の外周面(38)よりも僅かに奥まって位置するような寸法に設定されてある。
【0028】
貫通孔(11)に通気部材(1)を充填させた状態にて環状薄肉部(33a)に操作ハンドル(2)の環状溝部(23)を嵌め込んで操作ハンドル(2)をガス栓本体(31)に装着させる。
前述の図1に示すように、操作ハンドル(2)の裏面中央に凹部(22)が設けられていると共に、その周囲の複数個所からは、鍔部(26)(26)が外方へ向って突設されている。
この鍔部(26)(26)を、前記環状薄肉部(33a)の基端部から内方へ部分的に張り出させた係合フランジ(34)に下方から係合させると共に、せん(3)の頂面(36)の中央に突設された一対の操作軸(32)を操作ハンドル(2)の裏面中央の前記凹部(22)内に相対回動阻止状態に嵌め込む。これにより、操作ハンドル(2)は、円筒部(33)に対して相対回動可能で且つ抜け止め状態に取り付けられると共に、操作ハンドル(2)を回動させることで、せん(3)が共回りし、ガス流路(31a)を開閉させることができる。尚、操作軸(32)内と操作ハンドル(2)の裏面との間には、せん(3)をせん収容部(30)内に押し込むための押えバネ(4)が介在されている。
【0029】
又、操作ハンドル(2)の裏面の、鍔部(26)(26)のさらに外周側には、環状薄肉部(33a)の外周面(38)を被覆する環状のスカート部(24)が垂下されてあり、前記スカート部(24)の内方に、前記環状薄肉部(33a)が収納可能な環状溝部(23)が形成されている。環状薄肉部(33a)の開放端面(37)から前記外周面(38)を覆うように、防水パッキン(10)が装着されている。
【0030】
防水パッキン(10)は、図2に示すように、前記環状薄肉部(33a)の外周面(38)に密着させる周壁部(18)と、前記周壁部(18)の上端から内方へ延長形成され且つ前記環状薄肉部(33a)の開放端面(37)に密着させる環状フランジ片(17)とから略逆L字状の断面を有する合成ゴム製の薄肉環状体であり、前記環状フランジ片(17)の基端部からは上環状リブ(15)が上方へ突設されており、周壁部(18)の上端近傍からは、外環状リブ(16)が外方斜め下方に向かって突設されている。
【0031】
前記上環状リブ(15)は、前記環状溝部(23)に環状薄肉部(33a)を嵌め込んで、操作ハンドル(2)のガス栓本体(31)への取付けが完了した状態において、環状溝部(23)の天井面(27)に摺動可能に密着し、外環状リブ(16)は、前記スカート部(24)の内周面に摺動可能に密着するように設定されている。これにより、操作ハンドル(2)は、環状薄肉部(33a)と環状溝部(23)との間に、防水パッキン(10)を介在させた状態で、環状薄肉部(33a)に対して相対回動可能に取り付けられることにより、ガス栓本体(31)内の防水は確保される。
【0032】
防水パッキン(10)の周壁部(18)の下端には、環状薄肉部(33a)の貫通孔(11)の下端部が露出する隙間(13)が設けられており、又、通気部材(1)の外表面(12)は、周壁部(18)が密着している外周面(38)よりも奥まって位置させていることから、 円筒部(33)の外部と内部は、前記隙間(13)から通気部材(1)を介して通気可能となる。これにより、せん(3)の頂面(36)と、操作ハンドル(2)の裏面と、円筒部(33)とで囲まれる空間(S3)は密閉されることがなく、通気性を有する空間となる。
尚、通気部材(1)は水を通さない特性があることから、前記隙間(13)から円筒部(33)内に水が浸入することはない。
【0033】
又、円筒部(33)の環状薄肉部(33a)に設けた貫通孔(11)内の通気部材(1)の外表面(12)は、防水パッキン(10)の周壁部(18)と、操作ハンドル(2)のスカート部(24)とで二重に被覆されているから、例えば、ガスメータ用のガス栓の場合で、ガス栓全体に防錆のための塗装が施されるとき、通気部材(1)の外表面(12)に塗料が付着することはない。同様に、厨房に設けられているガス栓の場合では、塵埃や、油、又は洗剤等で通気部材(1)の外表面(12)が目詰まりすることがない。
【0034】
又、ガス栓の組み立て完了後でも、通気部材(1)を利用して、ガス漏れ検査を実施することができるので、ガス漏れ検査のために、分解・再組み付けする手間が省け、ガス漏れ検査が容易となる。
さらに、せん(3)の頂面(36)の周縁に設けられたグリス層(45)によって、摺動部(35)の潤滑性及びシール性は確保されているが、このグリス層(45)は、環状薄肉部(33a)に設けた貫通孔(11)よりも下方に設けられていると共に、保護カバー(46)で被覆されていることから、ガス栓の向きに関係なくグリス層(45)のグリスが貫通孔(11)側に流出することはない。よって、通気部材(1)がグリスによって目詰まりすることもない。
【0035】
図3に示すものは、第2番目の実施の形態のガス栓の縦断面図であり、図4はその要部拡大断面図である。
このものは、第1番目の実施の形態のガス栓と同様に、操作ハンドル(2)の裏面の環状溝部(23)に、円筒部(33)の環状薄肉部(33a)を回動自在に挿入させると共に、操作ハンドル(2)の鍔部(26)をガス栓本体(31)の係合フランジ(34)に係合させることにより、操作ハンドル(2)をガス栓本体(31)の円筒部(33)に回動自在に且つ抜け止め状態に取り付ける構成のものである。
【0036】
円筒部(33)の開放端側の環状薄肉部(33a)の所定位置には、貫通孔(11)を貫通させてあり、鍔部(26)(26)を係合フランジ(34)(34)の非突出域から、円筒部(33)内に嵌め込んだだけの状態(図3の状態)にて、貫通孔(11)に対応する環状溝部(23)の内側周壁(28)に円周溝部(19)を環状溝部(23)に開放するように設けていると共に、円周溝部(19)および貫通孔(11)に対応するスカート部(24)には、差込孔(29)を設けている。
尚、貫通孔(11)は、スカート部(24)側が内側周壁(28)側よりも大径となる段付き孔に形成されてあり、差込孔(29)は、貫通孔(11)の大径に略一致する直径を有する丸孔とし、円周溝部(19)の溝幅は、貫通孔(11)の小径に略一致するように形成されている。
【0037】
すなわち、この実施の形態のガス栓では、上記したように、操作ハンドル(2)の鍔部(26)(26)を係合フランジ(34)(34)の非突出域から、ガス栓本体(31)の円筒部(33)内に嵌め込んだだけの、ガス栓の使用開始前の状態にて、円周溝部(19)と貫通孔(11)と差込孔(29)が一直線上に連通する態様となり、前記差込孔(29)から通気部材(1)を、貫通孔(11)及び円周溝部(19)に連続して差し込む。これにより、通気部材(1)の胴部は貫通孔(11)に圧入し且つその先端部は、円周溝部(19)内にて前記溝幅方向に係合する。
尚、環状溝部(23)内における環状薄肉部(33a)の開放端部外周に密着させる防水パッキン(10)の周壁部(18)は、貫通孔(11)を被覆しない寸法関係に設定されている。
この実施の形態でも、通気部材(1)として、ステンレス製の焼結体を使い、前記段付きの貫通孔(11)に圧入可能な小径軸部と大径軸部を具備する形状に成型されていると共に、前記小径軸部の先端をそのまま延長させて円周溝部(19)に位置させる構成とした。
【0038】
上記焼結体はステンレス製で硬度があるため、貫通孔(11)を通して円周溝部(19)に通気部材(1)の先端部が差し込まれた状態においては、操作ハンドル(2)は、ガス栓本体(31)の円筒部(33)に対して、抜け止め状態となる。
すなわち、この実施の態様のものでは、操作ハンドルは回動規制ピン(39)とガス栓本体の係合凸部(図示せず)の係合により操作範囲が90度に規制されることによって、鍔部(26)(26)と係合フランジ(34)(34)の係合関係が維持され、操作ハンドルを外せない構造となっているが、前記回動規制ピン(39)が外された場合においても、操作ハンドル(2)の円周溝部(19)に通気部材(1)の先端部が係合しているので、操作ハンドル(2)は脱落することがなく、より安全性の高いものとなっている。
【0039】
又、通気部材(1)の通気性によって、前記空間(S3)は外部と通気自在となるから、空間(S3)の圧力は変動することはない。よって、ガス栓の長期間の保管や運搬時に、せん(3)にかかる圧力の変化によって、せん(3)がせん収容部(30)内に固着してしまう不都合を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本願発明の第1番目の実施の形態のガス栓の全体縦断面図。
【図2】図1の要部拡大断面図。
【図3】本願発明の第2番目の実施の形態のガス栓の全体縦断面図。
【図4】図2の要部拡大断面図。
【図5】従来のガス栓の全体縦断面図。
【図6】従来の他のガス栓の全体縦断面図。
【符号の説明】
【0041】
(1) ・・・・・・・通気部材
(10)・・・・・・・防水パッキン
(11)・・・・・・・貫通孔
(2) ・・・・・・・操作ハンドル
(3) ・・・・・・・せん
(3a)・・・・・・・ガス流路
(30)・・・・・・・せん収容部
(31)・・・・・・・ガス栓本体
(35)・・・・・・・操作ハンドル
(36)・・・・・・・頂面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス栓本体の一方に開放するせん収容部内に、ガス流路を開閉するせんが回動自在に収容されてあり、前記せん収容部の開放端部に円筒部が同軸上に連設されていると共に、前記円筒部に前記せんを回動操作するための操作ハンドルが防水パッキンを介して相対回動可能に取付けられているガス栓において、
前記操作ハンドルの裏面には前記円筒部の外周を覆うスカート部が設けられ、
前記防水パッキンは、前記円筒部の開放端部外周と、前記スカート部の内周面との間に設けられ、
前記円筒部の、前記スカート部で覆われている範囲の所定位置に、前記円筒部の構成壁を貫通する貫通孔が形成され、
前記貫通孔の少なくとも一部分は前記防水パッキンの非装着域に開放していると共に、前記貫通孔には非通水性の通気部材が充填されていることを特徴とするガス栓。
【請求項2】
請求項1に記載のガス栓において、前記防水パッキンは、前記円筒部の開放端面に密着する環状フランジ片と、前記円筒部の外周面に密着する周壁部とから断面略逆L字状に形成され、
前記周壁部は、前記貫通孔内の前記通気部材の外表面を、非接触状態で被覆していることを特徴とするガス栓。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のガス栓において、前記通気部材は、金属製の焼結体から構成されていることを特徴とするガス栓。
【請求項4】
請求項3に記載のガス栓において、前記操作ハンドルの裏面に、前記スカート部を外側周壁とする環状溝部が形成され、
前記環状溝部に、前記円筒部の前記貫通孔を含む範囲が収納され、
前記環状溝部の内側周壁における前記貫通孔に対応する所定位置に、前記環状溝部内に開放する円周溝部が周方向に形成され、
前記通気部材は、前記貫通孔に圧入されると共に、その先端部は前記円周溝部に差し込まれてその溝幅方向に係合されることを特徴とするガス栓。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載のガス栓において、前記摺動部に続く前記せんの頂面の周縁にグリス層が設けられ、前記グリス層は環状の保護カバーで被覆されると共に、前記貫通孔は前記保護カバーよりも、前記円筒部の開放端寄りに形成されていることを特徴とするガス栓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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