説明

ガス検出装置

【課題】温度上昇に伴って検出素子2の白金コイルRs及び比較素子3の白金コイルRsの発熱量が上昇することなく、周囲温度による影響をキャンセルしたセンサ出力vsenを出力することができるガス検出装置を提供する。
【解決手段】定電圧源cv1が、検出素子2及び比較素子3に対して定電圧を供給する。センサ回路4が、検出素子2の両端電圧Vsから比較素子3の両端電圧Vrを差し引いた差分(Vs−Vr)をセンサ出力vsenとして出力する。固定抵抗Rcsが、検出素子2及び比較素子3に流れるセンサ電流iが流れるように検出素子2及び比較素子3に直列接続されている。温度補正回路5が、固定抵抗Rcsの両端電圧Vcsに応じた温度補正電圧vc1を生成して、その生成した温度補正電圧vc1をセンサ出力Vsenに加算してセンサ出力Vsenの周囲温度の増減に応じた変動分を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上述した従来のガス検出装置1として、例えば図8に示されたものが一般的に知られている。同図に示すように、ガス検出装置1は、検出素子2と比較素子3とを有している。検出素子2は、可燃ガスとの接触燃焼を促進する触媒が担持されたアルミナ担体から構成された触媒担持体21と、この触媒担持体21に覆われた第1測温抵抗体としての白金コイルRsと、から構成されている。比較素子3は、可燃ガスに対して不感となる材料であるアルミナ担体のみから構成された触媒非担持体31と、この触媒非担持体31に覆われた第2測温抵抗体としての白金コイルRrと、から構成されている。
【0003】
上記検出素子2の白金コイルRsと、比較素子3の白金コイルRrとは、可燃ガスのない空気中(エアベース)では等しい抵抗値になるように設けられている。上述した検出素子2及び比較素子3は、固定抵抗R1、R2と共にブリッジ回路Bを構成している。このブリッジ回路Bの端子aと端子bとの間には、駆動電圧E0が供給されている。この駆動電圧E0を供給すると、検出素子2が加熱されて可燃対象ガスと接触燃焼する。
【0004】
以上の構成によれば、ブリッジ回路Bは可燃ガスのない空気中では平衡状態となり、端子cと端子dとの電位が等しくなる。これに対して、可燃ガスを含む空気中では可燃ガスとの燃焼熱により検出素子2の温度が上昇し、これに伴って検出素子2の白金コイルRsの抵抗値が増加する。一方、比較素子3は可燃ガスと接触燃焼しないため、検出素子2の温度より低くなる。このため、ブリッジ回路Bは不平衡状態となり、端子cと端子dとの間に電位差が生じる。この電位差が、周囲温度による白金コイルRsの抵抗値の変動分を相殺した可燃ガスの濃度に応じたセンサ出力vsenとなる。
【0005】
しかしながら、上述した従来のガス検出装置1では、検出素子2と比較素子3との構造、材料等の違いにより、素子の温度特性にばらつきがあり、完全な温度補償が難しい、という問題があった。特に、周囲温度が+25℃〜+225℃のΔ200℃のような、広範囲の周囲温度変化では、検出誤差が大きくなる。そこで、ブリッジ回路Bに定電流を流して比較素子3の定電流による電圧降下の変化に応じてセンサ出力vsenを補正するものが考えられている。
【0006】
ところで、周囲温度が上昇すると白金コイルRs、Rrは抵抗値が上昇する。しかしながら、上述したガス検出装置では、周囲温度が上昇しても定電流が供給されるため、周囲温度が上昇すると白金コイルRs、Rrの発熱量が上昇してますます周囲温度が上昇してしまう、という悪循環が発生する恐れがあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、温度上昇に伴って第1測温抵抗体及び第2測温抵抗体の発熱量が上昇することなく、周囲温度による影響をキャンセルしたセンサ出力を出力することができるガス検出装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の発明は、可燃ガスとの接触燃焼を促進する触媒を担持した触媒担持体、及び、前記触媒担持体に覆われた第1測温抵抗体、から構成される検出素子と、前記可燃ガスに対して不感となる材料から構成された触媒非担持体、及び、前記触媒非担持体に覆われた第2測温抵抗体、から構成される比較素子と、を備え、前記検出素子及び前記比較素子が互いに直列に接続されたガス検出装置において、前記検出素子及び前記比較素子に対して定電圧を供給する定電圧源と、前記検出素子の両端電圧から前記比較素子の両端電圧を差し引いた差分を可燃ガスに応じたセンサ出力として出力するセンサ回路と、前記検出素子及び前記比較素子に流れるセンサ電流が流れるように前記検出素子及び前記比較素子に直列接続された固定抵抗と、前記固定抵抗の両端電圧に応じた温度補正電圧を生成して、その生成した前記温度補正電圧を前記センサ出力に加算して前記センサ出力の周囲温度の増減に応じた変動分を補正する温度補正回路と、を備えたことを特徴とするガス検出装置に存する。
【0009】
請求項2記載の発明は、前記温度補正回路が、前記固定抵抗の両端電圧を出力する差動増幅回路と、前記差動増幅回路から出力される前記固定抵抗の両端電圧に加算して、製品毎に発生する前記第1測温抵抗及び/又は前記第2測温抵抗の抵抗値のばらつきに起因する基底温度における前記固定抵抗の両端電圧のオフセット分を補正するための第1補正電圧を生成する第1補正電圧源と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載のガス検出装置に存する。
【0010】
請求項3記載の発明は、前記センサ回路から出力される前記センサ出力に加算して、製品毎に発生する前記第1測温抵抗及び/又は前記第2測温抵抗の抵抗値のばらつきに起因する基底温度における前記センサ出力のオフセット分を補正するための第2補正電圧を生成する第2補正電圧源を、備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載のガス検出装置に存する。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように請求項1記載の発明によれば、検出素子及び比較素子に定電圧を供給して温度補正を行っているので、温度が上昇して検出素子の第1測温抵抗体及び比較素子の第2測温抵抗体の抵抗値が増加すると、検出素子及び比較素子に流れるセンサ電流が小さくなる。よって、温度上昇に伴って第1測温抵抗体及び第2測温抵抗体の発熱量が上昇することなく、周囲温度による影響をキャンセルしたセンサ出力を出力することができる。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、第1補正電圧源を設けることにより、製品毎に生じる第1測温抵抗及び/又は第2測温抵抗の抵抗値のばらつきに起因する基底温度における固定抵抗の両端電圧のオフセット分(期待値からのズレ分)を補正することができる。
【0013】
請求項3記載の発明によれば、第2補正電圧源を設けることにより、製品毎に生じる第1測温抵抗及び/又は第2測温抵抗の抵抗値のばらつきに起因する基底温度におけるセンサ出力のオフセット分(期待値からのズレ分)を補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1実施形態における本発明のガス検出装置の一実施形態を示す概略回路図である。
【図2】(A)は25℃、エアベースにおける検出素子及び比較素子の白金コイルの抵抗値を示す図であり、(B)は225℃、エアベースにおける検出素子及び比較素子の白金コイルの抵抗値を示す図である。
【図3】第2実施形態における本発明のガス検出装置の一実施形態を示す概略回路図である。
【図4】第3実施形態における本発明のガス検出装置の一実施の携帯を示す概略回路図である。
【図5】(A)は25℃、エアベース、Rs=Rr=3.75Ω(標準値)のときのセンサ出力Vsenを示す回路図であり、(B)は25℃、エアベース、Rs=3.75Ω+10%、Rr=3.75Ω−10%のときのセンサ出力Vsenを示す回路図であり、(C)は補正電圧va2によってセンサ出力vsenから製品毎に生じる白金コイルRr、Rsのばらつきをキャンセルするための抵抗r32の設定を示す回路図である。
【図6】(A)は25℃、エアベース、センサ電流i=180mA(標準値)のときの出力v1を示す回路図であり、(B)は25℃、エアベース、センサ電流i=198mAのときの出力v1を示す回路図であり、(C)は25℃、エアベース、センサ電流i=162mAのときの出力v1を示す回路図であり、(D)は補正電圧va1によって出力v1から製品毎に生じる白金コイルRs、Rrのばらつきに起因するセンサ電流iのばらつきをキャンセルするための抵抗r9の設定を示す回路図である。
【図7】温度補正電圧vc1によってセンサ出力vsenから周囲温度の増減に応じた変動分をキャンセルするための抵抗r13の設定を説明するための回路図である。
【図8】従来のガス検出装置の一例を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
第1実施形態
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。図1に示すように、ガス検出装置1は、検出素子2と、比較素子3と、定電圧源cv1と、センサ回路4と、定電圧源cv2と、固定抵抗Rcsと、温度補正回路5と、を備えている。検出素子2は、触媒担持体21と、第1測温抵抗体としての白金コイルRsと、から構成されている。触媒担持体21は、可燃ガスとの接触燃焼を促進する触媒が担持されたアルミナ担体から構成されている。白金コイルRsは、上記触媒担持体21に覆われていて、検出素子2の温度に応じて抵抗値が変化する。
【0016】
比較素子3は、触媒非担持体31と、第2測温抵抗体としての白金コイルRrと、を備えている。触媒非担持体31は、可燃ガスに対して不感となる材料であるアルミナ担体のみから構成されている。白金コイルRrは、上記触媒非担持体31に覆われていて、比較素子3の温度に応じて抵抗値が変化する。上記検出素子2及び比較素子3は、後述する定電圧源cv1とグランドとの間に互いに直列に接続されている。定電圧源cv1は、上記検出素子2及び比較素子3に対して定電圧を供給する。
【0017】
次に、上記センサ回路4と、定電圧源cv1と、固定抵抗Rcsと、温度補正回路5と、の構成を説明する前に、図2を参照して周囲温度の変化に応じた白金コイルRs及びRrの抵抗値変化を具体的な数値を当てはめて説明する。一般的に測温抵抗体において、例えば、25℃を基底温度とし、抵抗値温度係数をK、25℃の抵抗値をR25、任意の温度をn℃、任意の温度における抵抗値をRnとすると、Rnは下記の式(1)で表すことができる。
Rn=R25×(1+K×(n−25)) …(1)
【0018】
今、25℃で白金コイルRsと白金コイルRrとの抵抗値が3.75Ωで等しくなるように検出素子2、比較素子3を設けたとする。そして、定電圧源cv1が供給する定電圧=1.35vとすると、25℃、エアベースにおいて白金コイルRs及び白金コイルRrに流れるセンサ電流iは下記の式(2)で表すことができる。
i=1.35V/(3.75Ω+3.75Ω)=180mA …(2)
【0019】
よって、図2(A)に示すように、エアベースにおいて検出素子2の両端電圧Vs及び比較素子3の両端電圧Vrは下記の式(3)及び(4)に示す値となる。
Vs=3.75Ω×180mA=0.675V …(3)
Vr=3.75Ω×180mA=0.675V …(4)
故に、25℃、エアベースにおいて検出素子2と比較素子3との両端電圧Vsから比較素子3の両端電圧Vrを差し引いた差分Vs−Vrを0にすることができる。
【0020】
しかしながら、検出素子2及び比較素子3は、上述した背景技術でも説明したように構成の違い、材料の違いに起因して抵抗値温度係数が異なる。よって、図2(A)に示すように、25℃で白金コイルRsと白金コイルRrとの抵抗値が等しくなるように比較素子3及び検出素子2を設けても、25℃から例えば+200℃など大きく周囲温度が変化すると白金コイルRsと白金コイルRrとの抵抗値の差が大きくなり、検出素子2の両端電圧Vsから比較素子3の両端電圧Vrを差し引いても検出素子2の両端電圧Vsの周囲温度の増減による変動分をキャンセルすることができない。
【0021】
例えば、検出素子2に用いられる白金コイルRsの抵抗値温度係数Ks=0.0033、比較素子3に用いられる白金コイルRrの抵抗値温度係数Kr=0.0027のばらつきがあった場合、周囲温度が25℃から200℃上昇した225℃、エアベースにおける白金コイルRs及び白金コイルRrの抵抗値は下記の式(5)及び(6)に示すように大きくばらつく。
Rs=3.75×(1+0.0033×Δ200)
=3.75×1.66
=6.225Ω …(5)
Rr=3.75×(1+0.0027×Δ200)
=3.75×1.54
=5.775Ω …(6)
【0022】
また、225℃、エアベースにおける白金コイルRs及び白金コイルRrに流れるセンサ電流iは下記の式(7)で表すことができる。
i=1.35V/(6.225Ω+5.775Ω)=112.5mA …(7)
よって、図2(B)に示すように、225℃、エアベースにおいて検出素子2の両端電圧Vs及び比較素子3の両端電圧Vrは下記の式(8)及び(9)に示す値となる。
Vs=6.225Ω×112.5mA=0.700V …(8)
Vr=5.775Ω×112.5mA=0.650V …(9)
故に、225℃、エアベースにおいて検出素子2の両端電圧Vsから比較素子3の両端電圧Vrを差し引いた差分Vs−Vrが0.05Vとなる。よって、検出素子2のセンサ感度がΔ10mV/Δ1000ppmであるとすると、50mV/(10mV/1000ppm)=5000ppm相当のエアベース誤差となってしまう。このエアベース誤差を本実施形態のガス検出装置1はキャンセルするのが目的である。
【0023】
話をガス検出装置1の構成に戻すと、図1に示すように、上記センサ回路4は、検出素子2の両端電圧Vsから比較素子3の両端電圧Vrを差し引いた差分(Vs−Vr)に応じた値を可燃ガス濃度に応じたセンサ出力vsenとして出力する回路である。具体的には、センサ回路4は、3つの差動増幅回路を構成するOPアンプA2〜A4から構成されている。OPアンプA2には、比較素子3の定電圧源cv1側の一端の電圧v21が抵抗を介して+入力に供給され、比較素子3のグランド側の他端の電圧v22が抵抗を介して−入力に供給されている。よって、OPアンプA2は、電圧v21から電圧v22を差し引いた電圧、即ち比較素子3の両端電圧Vrが出力される。
【0024】
OPアンプA3には、検出素子2の定電圧源cv1側の一端の電圧v31が抵抗を介して+入力に供給され、検出素子2のグランド側の他端の電圧v32が抵抗を介して−入力に供給されている。よって、OPアンプA3は、電圧v31から電圧v32を差し引いた電圧、即ち検出素子2の両端電圧Vsが出力される。OPアンプA4には、OPアンプA3から出力される検出素子2の両端電圧Vrが抵抗を介して−入力に供給され、OPアンプA2から出力される比較素子3の両端電圧Vrが抵抗を介して+入力に供給されている。よって、OPアンプA4は、検出素子2の両端電圧Vsから比較素子3の両端電圧Vrを差し引いた差分(Vs−Vr)をセンサ出力vsenとして出力する。
【0025】
上記定電圧源cv2は、定電圧源cv1より高い定電圧を供給する電源である。例えば、定電圧源cv1が上述したように1.35Vの定電圧を供給する場合、定電圧源cv2としては3Vの定電圧を供給するように設ける。上記固定抵抗Rcsは、上記検出素子2及び比較素子3に直列に接続されている。固定抵抗Rcsは、定電圧源cv1と定電圧源cv2との間に設けられている。よって、固定抵抗Rcsには、検出素子2及び比較素子3に流れるセンサ電流iが流れる。
【0026】
上記白金コイルRs及びRrは、周囲温度が上昇すると抵抗値が増大する。検出素子2及び比較素子3には定電圧が供給されているので、センサ電流iは周囲温度の増加に応じて減少する。図2に示す数値例では、25℃におけるセンサ電流iが180mAであったのに対して、225℃におけるセンサ電流iが180mAの37%低い112.5mAに減少している。また、固定抵抗Rcsの抵抗値は、温度変動の影響を受けず一定である。よって、固定抵抗Rcsの両端電圧Vcsは、周囲温度の増加に応じて減少する電圧となる。そこで、上記温度補正回路5は、固定抵抗Rcsの両端電圧Vcsに応じた第1補正電圧としての温度補正電圧vc1を生成する。この温度補正電圧vc1も、固定抵抗Rcsの両端電圧Vcsと同様に周囲温度の増加に応じて減少する電圧である。
【0027】
温度補正回路5は、生成した温度補正電圧vc1をセンサ出力vsenに加算してセンサ出力vsenの周囲温度の増減に応じた変動分を補正する回路である。即ち、エアベースにおいて、例えば周囲温度が低く、上述したようにエアベースでのセンサ出力vsenが小さいときには大きな温度補正電圧vc1がセンサ出力vsenに加算される。これに対して、周囲温度が高くなりエアベースでのセンサ出力vsenが大きくなるに従って加算される温度補正電圧vc1が小さくなる。このため、周囲温度が変化してもセンサ出力vsenを一定に補正することができる。
【0028】
次に、上記温度補正回路5の具体的な構成について説明する。上記温度補正回路5は、OPアンプA1と、増幅器51と、補正係数調整部52と、を備えている。OPアンプA1は、差動増幅回路を構成している。OPアンプA1には、固定抵抗Rcsの定電圧源cv1側の電圧v12が−入力に供給され、固定抵抗Rcsの定電圧源cv2側の電圧v11が+入力に供給されている。よって、OPアンプA1は、電圧v11から電圧v12を差し引いた差分v11−v12、即ち固定抵抗Rcsの両端電圧Vcsを出力する。
【0029】
OPアンプA1からの出力Vcsは、増幅器51で温度補正を行うのに十分な大きさに増幅された後、補正係数調整部52に応じた補正係数l/mが乗算されて温度補正電圧vc1として電流加算される。なお、補正係数調整部52は、例えばエアベースにおいて25℃のセンサ出力vsenと225℃のセンサ出力vsenとが等しくなるような補正係数l/mが可変抵抗により予め調整されている。
【0030】
上述したガス検出装置1によれば、温度補正回路5が、固定抵抗Rcsの両端電圧Vcsに応じた温度補正電圧vc1を生成して、その生成した温度補正電圧vc1をセンサ出力vsenに加算してセンサ出力vsenの周囲温度の増減に応じた変動分を補正する。よって、検出素子2及び比較素子3に定電圧を供給して温度補正を行っているので、温度が上昇して検出素子2の白金コイルRs及び比較素子3の白金コイルRrの抵抗値が増加すると、検出素子2及び比較素子3に流れるセンサ電流iが小さくなる。よって、温度上昇に伴って白金コイルRs及び白金コイルRrの発熱量が上昇することなく、周囲温度による影響をキャンセルしたセンサ出力vsenを出力することができる。
【0031】
第2実施形態
次に、第2実施形態のガス検出装置1について説明する。第1実施形態に示すガス検出装置1は、あくまでも原理図であり、図1中のOPアンプA3は必要ない。第2実施形態のガス検出装置1は、このあたりを現実的な回路としている。また、第1実施形態では、アナログ演算の基準電圧が0であったが、第2実施形態ではアナログ演算の基準電圧をVrefとしている。なお、図3において図1について上述した第1実施形態で既に説明した部分と同等な部分には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0032】
図3に示すように、ガス検出装置1は、検出素子2と、比較素子3と、定電圧源cv1と、センサ回路4と、定電圧源cv2と、固定抵抗Rcsと、温度補正回路5と、を備えている。上記検出素子2、比較素子3、定電圧源cv1、定電圧源cv2、及び、固定抵抗Rcs、については、上述した第1実施形態と同様であるためここでは詳細な説明を省略する。
【0033】
上記センサ回路4は、検出素子2の両端電圧Vsから比較素子3の両端電圧Vrを差し引いた差分Vs−Vrであるセンサ出力vsenを基準電圧Vrefだけシフトアップした値を出力する回路である。具体的には、センサ回路4は、2つの差動増幅回路を構成するOPアンプA2及びA4から構成されている。OPアンプA2には、比較素子3の定電圧源cv1側の一端の電圧が抵抗を介して+入力に供給され、比較素子3のグランド側の他端の電圧が抵抗を介して−入力に供給されている。よって、OPアンプA2は、比較素子3の両端電圧Vrを出力する。
【0034】
上記OPアンプA4は、検出素子2の両端電圧Vsが抵抗を介して+入力に供給されると共に基準電圧Vrefが抵抗を介して+入力に供給される。OPアンプA4は、OPアンプA2から出力される比較素子3の両端電圧Vrが抵抗を介して−入力に供給される。よって、OPアンプA4は、センサ出力vsen=Vs−Vrを基準電圧Vrefだけシフトアップしたシフトセンサ出力Vsen=Vref+vsenを出力する。
【0035】
上記温度補正回路5は、第1実施形態と同様に、固定抵抗Rcsの両端電圧Vcsに応じた温度補正電圧vc1をセンサ出力vsenに加算してセンサ出力vsenの周囲温度の増減に応じた変動分を補正する回路である。上記温度補正回路5は、OPアンプA1と、オフセット補正・レベルシフト回路53と、補正係数調整部52と、を備えている。OPアンプA1は、差動増幅回路を構成している。OPアンプA1には、第1実施形態と同様に、固定抵抗Rcsの定電圧源cv1側の一端電圧が抵抗を介して−入力に供給され、固定抵抗Rcsの定電圧源cv2側の他端電圧が抵抗を介して+入力に供給されている。よって、OPアンプA1は、n1で増幅した固定抵抗Rcsの両端電圧Vcsを出力する。
【0036】
オフセット補正・レベルシフト回路53は、OPアンプA1の出力である固定抵抗Rcsの両端電圧Vcsに補正電圧va1(第1補正電圧)を加算した温度補正電圧vc1を出力する。上記補正電圧va1は、白金コイルRs、Rrの製品毎のばらつきに起因する25℃(基底温度)における固定抵抗Rcsの両端電圧Vcsのオフセット分を補正するように予め調整された値である。さらに、オフセット補正・レベルシフト回路53は、上記温度補正電圧vc1を基準電圧Vrefだけシフトアップした下記の式(10)に示すシフト温度補正信号VC1を出力する。
VC1=Vref+vc1 …(10)
【0037】
上記温度補正信号vc1は、第1実施形態と同様に、補正係数調整部52によって例えばエアベースにおいて25℃のセンサ出力vsenと225℃のセンサ出力vsenとが等しくなるように可変抵抗により予め調整されている。
【0038】
第3実施形態
上記概略回路図で説明した第2実施形態におけるガス検出装置1をさらに具体化した第3実施形態について図4を参照して以下説明する。同図に示すように、ガス検出装置1は、検出素子2と、比較素子3と、定電圧源cv1と、センサ回路4と、第2補正電圧源としての補正用電源回路6と、定電圧源cv2と、固定抵抗Rcsと、温度補正回路5と、を備えている。上記検出素子2、比較素子3、定電圧源cv1、定電圧源cv2、及び、固定抵抗Rcs、については、上記概略で既に説明しているのでここでは詳細な説明を省略する。
【0039】
センサ回路4は、上述した概略で説明したようにOPアンプA2及びA4から構成されている。OPアンプA2は、その+入力が抵抗r21を介して比較素子3の定電圧源cv1側の一端に接続されると共に抵抗r22を介してグランドに接続される。また、OPアンプA2は、その−入力が抵抗r23を介して比較素子3のグランド側の他端に接続される。さらに、OPアンプA2は、出力と−入力とが抵抗r24を介して接続される。よって、r21=r22=r23=r24であれば、第2実施形態で説明したように、OPアンプA2からは比較素子3の両端電圧Vrが出力される。
【0040】
上記OPアンプA4は、その+入力が抵抗r25を介して検出素子2の定電圧源cv1側に一端が接続されると共に抵抗r26を介して基準電圧Vrefが接続される。また、OPアンプA4は、その−入力が抵抗r27を介してOPアンプA2の出力に接続される。さらに、OPアンプA4は、出力と−入力とが抵抗r28を介して接続される。よって、r25=r26=r27=r28であれば、第2実施形態で説明したように、OPアンプA4からは、下記の式(11)に示すように、センサ出力vsen(=Vs−Vr)を基準電圧Vrefだけシフトアップした電圧がシフトセンサ出力Vsenとして出力される。
Vsen=Vref+(Vs−Vr)
=Vref+vsen …(11)
【0041】
補正用電源回路6は、シフトセンサ出力Vsenに加算するための第2補正電圧としての補正電圧VA2を出力する電源である。この補正電圧VA2は、後述する可変抵抗rv3によって基準電圧Vrefを中心として増減両方向に調整することができる。即ち、補正電圧VA2から基準電圧Vrefを差し引いた値をΔva2とすると、補正電圧VA2は下記の式(12)で表すことができる。
VA2=Vref+Δva2 …(12)
上記白金コイルRs、Rrは、基底温度25℃、エアベースにおいてセンサ出力vsen=Vs−Vr=0となるように設けられている。しかしながら、白金コイルRs、Rrは、抵抗値を揃えるのが難しく、製品毎に±10%程度ばらつく。よって、上記シフトセンサ出力Vsenは、上述した白金コイルRs、Rrの抵抗値のばらつきに起因して製品毎にばらつき、基準電圧Vrefからズレてしまう。上記補正電圧VA2は、基底温度25℃、エアベースでの上記シフトセンサ出力Vsenが基準電圧Vrefからズレている分をキャンセルするように調整されている。
【0042】
補正用電源回路6は、電圧Vaddとグランドとの間に互いに直列接続された抵抗r31、r30及び可変抵抗rv3と、OPアンプA9と、を備えている。OPアンプA9は、+入力が可変抵抗rv3に接続され、−入力が出力に接続されるバッファを構成している。よって、可変抵抗rv3の抵抗値の調整によって、OPアンプA9の出力を調整することができる。そして、このOPアンプA9から上記補正電圧VA2が出力される。
【0043】
上記温度補正回路5は、OPアンプA1と、第1補正電圧源としての補正用電源回路54と、第1加算回路55と、第2加算回路56と、可変抵抗rv2と、OPアンプA8と、第3加算回路57と、増幅回路58と、から構成されている。OPアンプA1は、その+入力が抵抗r2を介して固定抵抗Rcsの定電圧源cv2側の一端に接続されると共に抵抗r3を介してグランド(0V)に接続されている。また、OPアンプA1は、その−入力が抵抗r4を介して固定抵抗Rcsの定電圧源cv1側の他端に接続される。よって、OPアンプA1からは、固定抵抗Rcsの両端電圧Vcsをn1(=(r3=r5)/(r2=r4))で増幅した値Vcs・n1が出力v1として出力される。
【0044】
今、基底温度25℃、エアベースにおける固定抵抗Rcsの両端電圧をVcs(25℃)、任意時点の固定抵抗Rcsの両端電圧をVcs、そして、VcsとVcs(25℃)との差をΔVcs{=Vcs−Vcs(25℃)}、とすると、OPアンプA1の出力v1は下記の式(13)で表すことができる。
v1=n1×{Vcs(25℃)+ΔVcs} …(13)
【0045】
ところで上述したように、基底温度25℃、エアベースにおいてVs−Vr=0となる。これに対して、基底温度25℃、エアベースにおいても固定抵抗Rcsにセンサ電流iが流れるため、固定抵抗Rcsの両端電圧Vcsは0にならない。例えば、センサ電流i=180mAであれば固定抵抗Rcsの抵抗値を1Ωとしても、Vcs=180mVとなる。そこで、OPアンプA1の増幅率n1は、基底温度25℃、エアベースにおいてその出力v1が基準電圧Vrefと等しくなるように設定されている。即ち、n1×Vcs(25℃)=Vrefとなるように設定されている。これを式(13)に代入すると、下記の式(14)が得ることができる。
v1=Vref+n1×ΔVcs …(14)
【0046】
上記補正用電源回路54は、OPアンプA1の出力v1に加算するための第1補正電圧としての補正電圧VA1を出力する電源である。この補正電圧VA1は、後述する可変抵抗rv1によって基準電圧Vrefを中心として増減両方向に調整することができる。即ち、補正電圧VA1から基準電圧Vrefを差し引いた値をΔva1とすると、補正電圧VA1は下記の式(15)で表すことができる。
VA1=Vref+Δva1 …(15)
白金コイルRs、Rrは、抵抗値を揃えるのが難しく、製品毎に±10%程度ばらつく。よって、センサ電流iは、上述した白金コイルRs、Rrの抵抗値のばらつきに起因して製品毎にばらつきが生じ、基底温度25℃、エアベースにおけるOPアンプA1の出力v1を基準電圧Vrefにすることができない。このため、上述した白金コイルRs、Rrの抵抗値のばらつきに起因して製品毎にばらつきが生じる。
【0047】
また、たとえ白金コイルRs、Rrの抵抗値を標準値に設定できたとし、センサ電流i=180mAの標準値ぴったりであったとしても、例えば基準電圧Vref=1Vを出力するためのOPアンプA1の増幅率n1を計算すると下記のようになる。
(180mA×1Ω)×n1=1.00
n1=5.5555…
電子回路設計における常用抵抗値系列である24系列の組み合わせでOPアンプA1の増幅率n1=5.555とするのは困難を伴う。よって、Vref=1.000Vとする正確さをこのやり方で追求するよりは、本実施形態のようにもろもろの個体差を補正用電源回路54で吸収するのが懸命である。上記補正電圧VA1は、OPアンプA1の出力v1に加算して上述した製品毎の基底温度(25℃)での固定抵抗Rcsの両端電圧Vcsのばらつきをキャンセルするような値に予め調整されている。即ち、上記補正電圧VA1は、基底温度25℃、エアベースでの出力v1が基準電圧Vrefからズレている分をキャンセルするように調整されている。詳しくは、基底温度25℃、エアベースでの出力v1の基準電圧VrefからのズレをΔv1とすると、このΔv1により抵抗r6に発生する電流ir6=Δv1/r6を抵抗r9に流れる電流でキャンセルするように、補正電圧VA1を設定する。即ち、Δv1/r6=Δva1/r9となるように補正電圧VA1が調整される。
【0048】
補正用電源回路54は、電圧Vaddとグラントの間に互いに直列接続された抵抗r7、r8及び可変抵抗rv1と、OPアンプA5と、を備えている。OPアンプA5は、+入力が可変抵抗rv1に接続され、−入力が出力に接続されるバッファを構成している。よって、可変抵抗rv1の抵抗値の調整によって、OPアンプA5の出力を調整することができる。そして、このOPアンプA5の出力が補正電圧VA1として出力される。
【0049】
上記第1加算回路55は、抵抗r6、r9、r10と、OPアンプA6と、から構成されている。上記OPアンプA6は、+入力に基準電圧Vrefが供給されている。また、OPアンプA6は、−入力が抵抗r6を介してOPアンプA1の出力v1が供給されると共に抵抗r9を介してシフト補正電圧VA1が供給されている。さらに、OPアンプA6は、−入力と出力とが抵抗r10を介して接続されている。よって、OPアンプA6の出力vt1は、下記の式(16)に示す値となる。
Vt1=Vref−[{(v1−Vref)/r6}+{(VA1−Vref)/r9}]×r10
r6=r10より
Vt1=Vref−[(v1−Vref)+(VA1−Vref)×(r10/r9)]
式(14)のv1=Vref+n1×ΔVcs、式(15)のVA1=Vref+Δva1より
Vt1=Vref−[(Vref+n1×ΔVcs−Vref)+(Vref+Δva1−Vref)×(r10/r9)]
=Vref−{n1×ΔVcs+Δva1×(r10/r9)} …(16)
なお、基底温度25℃、エアベースでの出力v1が基準電圧Vrefと等しいときは、Δva1=0に設定され、これを式(16)に代入すると下記の式(17)が得られる。
Vt1=Vref−n1×ΔVcs …(17)
【0050】
上記第2加算回路55は、抵抗r11、r12と、OPアンプA7と、から構成されている。OPアンプA7は、+入力に基準電圧Vrefが供給されている。また、OPアンプA7は、−入力が抵抗r11を介してOPアンプA6の出力が接続されている。よって、OPアンプA7の出力Vt2は、r11=r12とすると下記の式(18)に示す値となる。
Vt2=2Vref−Vt1
式(17)を代入すると、
Vt2=2Vref−(Vref−n1×ΔVcs)
Vt2=Vref+n1×ΔVcs …(18)
【0051】
上記可変抵抗rv2は、一端にOPアンプA6の出力Vt1が供給され、他端にOPアンプA7の出力Vt2が供給されている。可変抵抗rv2は、上記出力Vt1と出力Vt2とを分圧してOPアンプA8の+入力に供給する。OPアンプA8は、−入力が出力に接続されたバッファを構成していて、可変抵抗rv2により供給される電圧を温度補正電圧VC1として出力する。可変抵抗rv2の分圧比をl/mに設定すると、温度補正電圧VC1は下記に示す式(19)で表される。
VC1=(Vt2−Vt1)×l/m+Vt1
上記式(17)、式(18)のVt1=Vref−n1×ΔVcs、Vt2=Vref+n1×ΔVcsを代入すると、
VC1=Vref+ΔVcs×(2×n1×l/m−n1)
この温度補正電圧VC1から基準電圧Vrefを差し引いた値をΔvc1=ΔVcs×(2×n1×l/m−n1)とすると、
VC1=Vref+Δvc1 …(19)
式(19)から明らかなように、温度補正電圧VC1は、固定抵抗Rcsの両端電圧Vcsに応じた値であり、その大きさは可変抵抗rv2によって調整することができる。
【0052】
上記第3加算回路57は、抵抗r13、r29、r32、r33と、OPアンプA10と、から構成されている。上記OPアンプA10は、+入力に基準電圧Vrefが供給されている。また、OPアンプA10の−入力には、抵抗r13を介してOPアンプA8から出力される温度補正電圧VC1、抵抗r29を介してOPアンプA4から出力されるシフトセンサ出力Vsen、抵抗r32を介してOPアンプA9から出力される補正電圧VA2が供給されている。よって、OPアンプA10の出力V10は下記の式(20)に示す値となる。
V10=Vref−{(VC1−Vref)/r13+(Vsen−Vref)/r29+(VA2−Vref)/r32}×r33
これにVC1=Vref+Δvc1、V=Vref+vsen、VA2=Vref+Δva2、r29=r33を代入すると、
V10=Vref−{vsen+Δvc1×(r33/r13)+Δva2×(r33/r32)} …(20)
式(20)に示すように、OPアンプA10からは、センサ出力vsenにΔvc1×(r33/r13)を加算して温度補正し、Δva2×(r33/r32)を加算して白金コイルRs、Rrのばらつきを補正した電圧を基準電圧Vrefから差し引いた電圧が出力される。
【0053】
増幅回路58は、抵抗r34と可変抵抗ra4とOPアンプA11とから構成されている。OPアンプA11は、その+入力に基準電圧Vrefが供給されている。OPアンプA11は、その−入力に抵抗r34を介してOPアンプA10の出力が供給されている。OPアンプA11の出力Voは、下記の式(21)に示す値となる。
Vo=Vref−{(V10−Vref)/r34×ra4} …(21)
上記式(20)を代入すると、式(22)が得られる。
Vo=Vref−[Vref−{vsen+Δvc1×(r33/r13)+Δva2×(r33/r32)}−Vref]/r34×ra4
=Vref+[{vsen+Δvc1×(r33/r13)+Δva2×(r33/r32)}]/r34×ra4 …(22)
式(22)から明らかなように、OPアンプA11からはセンサ出力vsenにΔvc1×(r33/r13)を加算して温度補正しΔva2×(r33/r32)を加算して白金コイルRs、Rrのバラツキを補正した電圧が基準電圧Vrefだけシフトアップされて出力される。また、式(22)から明らかなように、可変抵抗ra4を調整することにより補正後のセンサ出力vsenのゲインを調整することができる。
【0054】
次に、図5を参照して上述した補正電圧va2によってセンサ出力vsenから製品毎に生じる白金コイルRr、Rsのばらつきをキャンセルするための抵抗r32の設定について、具体的な数値を当てはめて説明する。本実施形態では、図5(A)に示すように、定電圧源cv1=1.35V、r21=r22=r23=r24=r25=r26=r27=r28=100kΩ、基準電圧Vref=1Vとし、25℃で白金コイルRs=白金コイルRr=3.75Ωを標準値とする。
【0055】
このように白金コイルRs、Rrの抵抗値が標準値のときの25℃、エアベースにおけるシフトセンサ出力Vsenについて以下求める。Rs=Rr=3.75Ω(標準値)のときは、図5(A)に示すように、検出素子2の両端電圧Vs=比較素子3の両端電圧Vr=0.675Vとなる。上述したように抵抗r21〜r28はの全ての抵抗が同一値であることから、図3について説明したように、OPアンプA2の出力は比較素子3の両端電圧Vrと等しくなり、シフトセンサ出力VsenはVref+Vs−Vr=1V+0.675V−0.675V=1Vとなる。
【0056】
白金コイルRs、Rrは上述した標準値(3.75Ω)に対して±10%内のばらつきが生じるものとする。図5(B)に示すように、例えば、25℃で白金コイルRsの抵抗値が標準値3.75Ωに対して+10%ばらつき、白金コイルRsの抵抗値が標準値3.75Ωの−10%ばらついたとする。このとき、白金コイルRs=3.75Ω×1.1=4.125Ω、白金コイルRr=3.75Ω×0.9=3.375Ωとなる。また、このとき、図5(B)に示すように、検出素子2の両端電圧Vs及び比較素子3の両端電圧Vrは下記の式(23)及び(24)に示す値となる。
Vs=1.35V×4.125Ω/(4.125Ω+3.375Ω)=0.7425V …(23)
Vr=1.35V×3.375Ω/(4.125Ω+3.375Ω)=0.6075V …(24)
【0057】
よって、シフトセンサ出力VsenはVref+Vs−Vr=1V+0.7425V−0.6075V=1.135Vとなり、白金コイルRs=白金コイルRr=3.75Ω(標準値)に比べて0.135V増加している。よって、補正用電源回路6としては、センサ出力vsenを±0.135Vの範囲でキャンセルする必要がある。これを抵抗r29に流れる電流i29に換算すると下記の式(25)に示すようになる。なお、抵抗r29の抵抗値を10kΩとしている。
i29=±0.135v/10k=±13.5μA …(25)
そして、例えばVref=1V、Vadd=2Vであり、補正電圧va2が基準電圧Vrefに対して±1Vの範囲で調整できるものであれば、抵抗r32としては、1/13.5μA=68kΩに設定すれば±10%内の白金コイルRs、Rrの抵抗値のばらつきをキャンセルできるように補正電圧va2を調整することができる。
【0058】
次に、図6を参照して補正電圧va1によってOPアンプA1の出力v1から製品毎に生じる白金コイルRs、Rrのばらつきに起因するセンサ電流iのばらつきをキャンセルするための抵抗r9の設定について、具体的な数値を当てはめて説明する。本実施形態では、Rcs=1Ω、r2=r4=10kΩ、r3=r5=56kΩ、基準電圧Vref=1とし、図5と同様に、25℃で白金コイルRs=白金コイルRr=3.75Ωを標準値とする。このように白金コイルRs、Rrの抵抗値が標準値のときの25℃、エアベースにおけるOPアンプA2の出力である固定抵抗Rcsの抵抗値Vcsについて以下求める。上述した標準値においては、図6(A)に示すように、センサ電流i=1.35V/(3.75Ω+3.75Ω)=180mA(標準値)となる。
【0059】
よって、このときの固定抵抗Rcsの両端電圧Vcs及びOPアンプA1の出力v1は下記の式(26)及び(27)で表すことができる。
Vcs=1Ω×180mA=0.18V …(26)
v1=56k/10k×0.18=1.008≒1V …(27)
【0060】
センサ電流iは、上述した標準値(180mA)に対して±10%内のばらつきが生じるものとする。そして、図6(B)に示すように、白金コイルRs及びRsがばらついて、25℃においてセンサ電流iが標準値180mAの+10%ばらついたとする。このとき、センサ電流i=198mAであり、固定抵抗Rcsの両端電圧Vcs及びOPアンプA1の出力v1は下記の式(28)及び(29)で表す値となる。
Vcs=1Ω×198mA=0.198V …(28)
v1=1V+56k/10k×0.198V=2.1088V …(29)
よって、センサ電流i=180mA(標準値)に比べて約0.1V増加している。
【0061】
また、図6(C)に示すように、白金コイルRs及びRsがばらついて、25℃においてセンサ電流iが標準値180mAの−10%ばらついたとする。このとき、センサ電流i=162mAであり、固定抵抗Rcsの両端電圧Vcs及びOPアンプA1の出力v1は下記の式(30)及び(31)で表す値となる。
Vcs=1Ω×162mA=0.162V …(30)
v1=56k/10k×0.162V=0.9072V …(31)
よって、センサ電流i=180mA(標準値)に比べて約0.1V減少している。
【0062】
よって、補正用電源回路54としては、OPアンプA1の出力v1を±0.1Vの範囲でキャンセルする必要がある。これを抵抗r6に流れる電流ir6に換算すると下記の式(32)に示すようになる。なお、抵抗r6の抵抗値を10kΩとしている。
ir6=±0.1/10k=±10μA …(32)
そして、例えば、Vref=1V、Vadd=2Vであり、補正電圧va1が基準電圧Vrefに対して±1Vの範囲で調整できるものであれば、抵抗r9としては、1/10μA=100kΩに設定すれば±10%のセンサ電流iのばらつきをキャンセルできるように補正電圧va1を調整することができる。
【0063】
次に、図7を参照して上述した温度補正電圧vc1によってセンサ出力vsenから周囲温度の増減に応じた変動分をキャンセルするための抵抗r13の設定について、具体的な数値を当てはめて説明する。本実施形態では、図2を用いて既に説明したように25℃エアベースにおけるセンサ出力vsen(=Vs−Vr)が0Vであるのに対して225℃エアベースにおけるセンサ出力vsenが0.05Vとなる。よって、温度補正電圧vc1としては、225℃のときのセンサ出力vsenを0.05Vキャンセルする必要がある。図7に示すように、これを抵抗r29に流れる電流i29に換算すると下記の式(33)に示すようになる。なお、抵抗r29の抵抗値を10kΩとしている。
Δi29=0.05V/10k=5μA …(33)
【0064】
次に、温度補正電圧vc1の大きさについて求めてみる。図6(A)に示すように、25℃でセンサ電流iが180mA(標準値)のとき、図2(B)に示すように225℃ではセンサ電流iが112.5mAとなる。よって、図7に示すように、OPアンプA6、A7の出力vt1、vt2の225℃のときと25℃のときとの差Δvt1、Δvt2は、(180mA−112.5mA)×5.6=378mVとなる。故に、温度補正電圧vc1は、基準電圧Vrefに対して±378mVの範囲で調整できるものである。よって、抵抗r13としては、±378mA/5μA=75.5kΩに設定すれば、温度の変動分をキャンセルできるように温度補正電圧vc1を調整することができる。
【0065】
また、上述したガス検出装置1によれば、補正用電源回路54を設けることにより、白金コイルRs、Rrのばらつきに起因する基底温度(25℃)における固定抵抗Rcsの両端電圧Vcsの変動分を補正することができる。
【0066】
また、上述したガス検出装置1によれば、補正用電源回路6を設けることにより、白金コイルRs、Rrのばらつきに起因する基底温度(25℃)におけるセンサ出力vsenの変動分を補正することができる。
【0067】
また、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 ガス検出装置
2 検出素子
3 比較素子
4 センサ回路
5 温度補正回路
6 補正用電源回路(第2補正電圧源)
21 触媒担持体
31 触媒非担持体
54 補正用電源回路(第2補正電圧源)
cv1 定電圧源
i センサ電流
Rs 白金コイル(第1測温抵抗体)
Rr 白金コイル(第2測温抵抗体)
Rcs 固定抵抗
A1 OPアンプ(差動増幅回路)
va1 補正電圧(第1補正電圧)
va2 補正電圧(第2補正電圧)
vc1 温度補正電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可燃ガスとの接触燃焼を促進する触媒を担持した触媒担持体、及び、前記触媒担持体に覆われた第1測温抵抗体、から構成される検出素子と、前記可燃ガスに対して不感となる材料から構成された触媒非担持体、及び、前記触媒非担持体に覆われた第2測温抵抗体、から構成される比較素子と、を備え、前記検出素子及び前記比較素子が互いに直列に接続されたガス検出装置において、
前記検出素子及び前記比較素子に対して定電圧を供給する定電圧源と、
前記検出素子の両端電圧から前記比較素子の両端電圧を差し引いた差分を可燃ガスに応じたセンサ出力として出力するセンサ回路と、
前記検出素子及び前記比較素子に流れるセンサ電流が流れるように前記検出素子及び前記比較素子に直列接続された固定抵抗と、
前記固定抵抗の両端電圧に応じた温度補正電圧を生成して、その生成した前記温度補正電圧を前記センサ出力に加算して前記センサ出力の周囲温度の増減に応じた変動分を補正する温度補正回路と、
を備えたことを特徴とするガス検出装置。
【請求項2】
前記温度補正回路が、前記固定抵抗の両端電圧を出力する差動増幅回路と、前記差動増幅回路から出力される前記固定抵抗の両端電圧に加算して、製品毎に発生する前記第1測温抵抗及び/又は前記第2測温抵抗の抵抗値のばらつきに起因する基底温度における前記固定抵抗の両端電圧のオフセット分を補正するための第1補正電圧を生成する第1補正電圧源と、を備えた
ことを特徴とする請求項1に記載のガス検出装置。
【請求項3】
前記センサ回路から出力される前記センサ出力に加算して、製品毎に発生する前記第1測温抵抗及び/又は前記第2測温抵抗の抵抗値のばらつきに起因する基底温度における前記センサ出力のオフセット分を補正するための第2補正電圧を生成する第2補正電圧源を、
備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載のガス検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−164405(P2010−164405A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−6512(P2009−6512)
【出願日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】