説明

ガス流れ中の硫化水素濃度測定装置及び硫化物イオンの定量方法

【課題】ガス流れ中の硫化水素を連続的に測定可能であると共に、安価で信頼性の高い硫化水素濃度測定装置を提供する。
【解決手段】硫化水素濃度測定装置100は、硫化水素ガスを硫化物イオンとして吸収可能な吸収液1と、ガス流れ7と吸収液1の流れとを膜を介して接触させ、ガス流れ中の硫化水素ガスの少なくとも一部を硫化物イオンとして吸収液1に吸収させる中空糸膜コンタクター4と、中空糸膜コンタクター4に吸収液1を供給する第1チャンネル用ポンプ3Aと、硫化物イオンと発熱反応する酸化剤2と、吸収液1に酸化剤2を供給する第2チャンネル用ポンプ3Bと、吸収液1が吸収した硫化物イオンと酸化剤2とが発熱反応する前に、吸収液1の温度を測定する第1温度測定器5と、吸収液1が吸収した硫化物イオンと酸化剤2とが発熱反応した後に、吸収液1の温度を測定する第2温度測定器6とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス流れ中の硫化水素濃度測定装置及び硫化物イオンの定量方法に関する。
【背景技術】
【0002】
硫化水素(HS)は、有毒で腐食性の強いガスである。HSに被毒する危険は、多くの作業環境に伴っている。人間の鼻は、0.02ppm程度の低いHS濃度から感知し得るが、最大感度は、通常、約5ppmである。より高い濃度のHS(または長時間のHSへの曝露)によって、神経毒の影響で嗅覚神経が麻痺し始めるので、ガスの感知力が低下する(例えば、文献1(P. Patnaik, “A ComprehensiveGuide to the Hazardous Properties of Chemical Substances”, second ed., Wiley,New York, NY, 1999.)、及び、文献2(W. Puacz, W. Szahun, Analyst120, (1995) 939.)参照)。
【0003】
環境(大気)中の全硫黄分に対する硫化水素の寄与は、相対的に限定的である。環境(大気)へのHSの放出は、主として特定の場所に集中した工業地帯(特に石油関連産業)に起因している(例えば、文献3(W.L. Orr, J.S. “SinningheDamste, Geochemistry if sulfur in petroleum systems”, in: W.L. Orr, C.M. White(Eds.), “Geochemistry of Sulfur in Fossil Fuels”, ACS Symposium Series 429,American Chemical Society, Washington, DC, 1990, pp.2-9.)、文献4(A.C. Aplin, M.L. Coleman, “Sour gas and water chemistry ofthe Bridgeport Sands reservoir”, Wytch Farm, UK, in: J.M. Cubitt, W.A. England(Eds.), “The Geochemistry of Reservoirs”, The Geological Society, London, UK,1995, pp. 303-314 Geol Soc. Special Pblication 86.)、及び、文献5(R.D. Kane, R.J. Horvath, M.S. Cayard (Eds.), “Wet H2Scracking of carbon steels and weldments”, NACE International, Houston, 1996.)参照)。硫化水素は、嫌気性条件下にある地下の炭化水素貯層中に、硫酸還元菌と外生硫酸塩との相互作用の結果として、広範囲に存在する(例えば、上記文献3及び4参照)。一般的に、原油の硫黄含有率は、0.3〜0.8wt%の範囲にあり、天然ガスの硫化水素含有率は、0.01〜0.4wt%の範囲にある。天然ガス中の硫化水素濃度については、最高30wt%まで報告されている(例えば、文献6(Dosher, J.R and Carney J.T.,“Sulfur increase seen mostly in heavy fractions of lower-quality crudes” Oil& Gas J., 92, 42-48 (1994).)参照)が、過去数十年、原油および天然ガスの硫黄含有率は、着実に増加が認められており、硫化水素濃度の更なる増加が見込まれている(例えば、文献7(M.R. Carlson, W.B. Cawston,“Obtaining PVT data for very sour retrograde condensate gas and volatile oilreservoirs: A multi-disciplinary approach”, SPE Gas Technology Conference,Calgary, Canada, April-May 1996, SPE 35653.)参照)。
【0004】
さらに、HSは、廃水の回収および処理における生物作用の副産物として放出されている。HSは水にかなり溶解するが、廃棄物処理工程によって引き起こされる悪臭問題の大部分は、HSの一時的な放出に起因する。その上、硫化物は、硫黄含有無機物の微生物による易動化を通じて水圏に放出される(例えば、文献8(B.Meyer, “Sulfur Energy and the Environment”, Elsevier, 1977.)参照)。生態系へのHSまたはS2−の放出については、皮革製品工業(例えば、文献9(J. Font, J. Gutierrez, J. Lalueza, X. Perez, J. Chromatogr. A 740(1996) 125.)参照)と製紙工業(例えば、文献10(D.R. Saloman, J. Romano, J. Chromatogr. 602 (1992) 219.)参照)も大きく寄与している。
【0005】
硫化物陰イオンは反応性が高いため、より古典的な方法から、分光法、クロマトグラフィー法、電気化学的方法およびこれらを組み合わせた方法に及ぶ幾つもの検出方法の開発が可能であった。これらの方法の幾つかを含むレビュー(総説)が報告されている(例えば、文献11(N.S. Lawrence, J. Davis, R.G. Compton, Talanta 52 (2000) 771-784.)、及び、文献12(L. Ferrer, M.Miro, J. M. Estela, V. Cerda, Trends in Analytical Chemistry, 26 (2007)413-422.)参照)。しかし、これまでに開発された方法のほとんどは、溶液中の硫化物陰イオンの測定を目的としており、ガス流れ中のHSを測定するために設計されたものは、ごくわずかしかなかった。ガス流れ中のHSを測定するために設計されたものとしては、固体ガスセンサと、紫外吸収または酢酸鉛テープ法に基づくガス分析計が知られている。半導体を用いた検知器(固体ガスセンサ)としては、例えば、下記特許文献1〜4に開示されているものが知られている。また、フローセル中の紫外吸収測定に基づくHS分析計(紫外吸収に基づくガス分析計)としては、例えば、下記非特許文献1に開示されているものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第3,479,257号明細書
【特許文献2】米国特許第3,901,067号明細書
【特許文献3】米国特許第4,030,340号明細書
【特許文献4】米国特許第3,567,383号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】A.J. Rollo, “Diode ArrayProcess Analyzer - for Sulfur Recovery Applications”, Instrumentation, Systems,and Automation Society, ISA 52nd Analysis Division Symposium, 2007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
半導体を用いた検知器(固体ガスセンサ)は、半導体によって吸着される特定の物質が、半導体の表面近くの薄膜の薄い部分(segment)の伝導度に影響するという事実を利用している。これらの装置は、一般に不活性な基板上に設けられた金属酸化物半導体からなる。伝導度に影響を与えるため、金属酸化物よりも高い又は低い原子価をもつ微量のドーパント即ち不純物が、金属酸化物に加えられる場合がある。さらに、周囲のガス中における反応を促進し、検出を補助するために、半導体の表面に触媒が加えられる場合もある。これらの様々な装置は、例えば、上記特許文献1〜4に開示されている。これらの装置および他の装置は、一つ又は複数の制約を受ける。例えば、このような装置の多くは、十分な寿命を提供できない。他の装置は、検出されるガスを分解することを触媒に頼っている。しかし、触媒は触媒毒の影響を受けやすいため、装置の寿命が限られてしまう。さらに、他の装置は、ガス中の水分(湿度)によって大きな悪影響を受ける。そのため、装置の信頼性を十分に高くすることが困難である。
【0009】
ガス状の流れ中の硫化水素(HS)および全硫黄の検出用の酢酸鉛テープ法は、HSが酢酸鉛と特異的に反応し、褐色の硫化鉛色素を生成するという確立された原理に基づいている。HS濃度は、酢酸鉛テープの着色の変化速度に正比例する。この原理は、多くのASTM(米国材料試験協会)法の基本原理となっている。この分析計は、処理された紙テープを一度に一区画ずつ動かす。試料の濃度によって、テープの色は、試料の流れ中のHS濃度に比例した速度で濃くなり始める。この分析計は、特定の時間ごとに(例えば、3分ごとに)、テープの新しい区画を試料室内の試料に曝す。このテープ分析計は、信頼性が高く、単純な方法と考えられるが、反応速度が遅い反応を利用しているため半連続的な測定にしか適用できない。
【0010】
フローセル中の紫外吸収測定に基づくHS分析計は、ガス流れ中のHSの連続測定ができるが、キセノン・パルス光源、ダイオード・アレイ検出器などのような高価な部品を含むため、かなり高コストでないと入手できない(上記非特許文献1参照)。
【0011】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、ガス流れ中の硫化水素を連続的に測定可能であると共に、安価で信頼性の高い硫化水素濃度測定装置を提供すること、及び、このような硫化水素濃度測定装置に利用可能な液体中の硫化物イオンの定量方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、新規な液体中の硫化物イオンの定量方法を開示する。この定量方法は、ガス流中のHS濃度を連続測定可能な安価で信頼性の高い硫化水素濃度測定装置に応用される。本測定装置は、ガスの連続サンプリング用の拡散スクラバーとして働く市販の中空糸膜コンタクターと、硫化水素の定量に関する新規な熱量測定検出方法を基礎としている。アルカリ・キャリア溶液は、膜コンタクター中のガス流れから硫化水素を吸収し、次に、もう一つの溶液と合流し、反応する。もう一つの溶液とは、一つの実施例では過酸化水素であり、別の実施例では次亜塩素酸塩である。その溶液は、強い発熱反応によって硫化物陰イオンを硫酸塩に酸化する。発熱反応による溶液の温度上昇は測定され、ガス流れ中の硫化水素と比例関係にある分析信号を与える。本発明の利点は、以下の(1)〜(8)を含む。
【0013】
(1)本発明の液体中の硫化物イオンの定量方法は、安価で、単純で、直接的であると共に、適度な選択性を有する。(2)本発明の測定装置は、広い動作範囲、すなわちppmレベルからパーセント・レベルにわたってHS濃度の連続測定が可能である。(3)本発明の測定装置は、液体中の硫化物測定に比べ、ガス中のHSについて、より選択性の高い測定が可能である。(4)本発明の測定装置において、感度レンジは、膜コンタクターとしての膜モジュールにおける硫化物イオンの前濃縮の程度(具体的には、ガス流れ中のHSを硫化物イオンとして膜モジュール内の吸収液中に前濃縮する程度)によって、容易に調整できる。(5)本発明の測定装置は、温度差測定を採用しているため、温度上昇を測定する際のベースラインが安定する。(6)本発明の測定装置においては、試薬の温度の厳密な制御は不要である。(7)本発明の測定装置は、単純な構造を有する。(8)本発明の測定装置の製造コストと運転コストは低くなる。
【0014】
上述の課題を解決するため、本発明に係る測定装置は、ガス流れ中の硫化水素ガスの濃度を測定する測定装置であって、硫化水素ガスを硫化物イオンとして吸収可能な吸収液と、ガス流れと吸収液の流れとを膜を介して接触させ、ガス流れ中の硫化水素ガスの少なくとも一部を硫化物イオンとして吸収液に吸収させる膜コンタクターと、膜コンタクターに吸収液を供給する吸収液供給器と、硫化物イオンと発熱反応する酸化剤と、吸収液に酸化剤を供給する酸化剤供給器と、吸収液が吸収した硫化物イオンと酸化剤とが発熱反応する前に、吸収液の温度を測定する第1温度測定器と、吸収液が吸収した硫化物イオンと酸化剤とが発熱反応した後に、吸収液の温度を測定する第2温度測定器とを備える。
【0015】
本発明の測定装置によれば、吸収液が吸収した測定対象であるガス流れ中の硫化水素ガスに由来する硫化物イオンと、酸化剤との発熱反応の強さを、第1温度測定器と第2温度測定器によって測定することができる。吸収液によるガス流れ中の硫化水素ガスの吸収(即ち、ガス流れ中から吸収液への硫化水素ガスの移動及び吸収液による硫化水素ガスの吸収反応)は、吸収液とガス流れとが膜コンタクターの膜を介して接触してすぐに生じる上、硫化物イオンと酸化剤との発熱反応は、これらが混合されてすぐに生じる。このように、本発明の測定装置は、移動速度の速い物質移動現象及び反応速度の速い反応を利用しているため、ガス流れ中の硫化水素ガスを連続的に測定可能である。
【0016】
また、吸収液による硫化水素ガスの吸収反応及び硫化物イオンと酸化剤との発熱反応においては、触媒は不要である。そして、ガス流れ中に水分が含まれていても、膜コンタクターの膜を利用してガス流れ中のHSを選択的に吸収液に吸収させるため、ガス流れ中の水分の測定値に与える影響はほとんどない。また、本発明の測定装置では、従来の測定装置のように装置の寿命を制限してしまうような構成要素は不要である。これらの理由により、本発明の測定装置の信頼性は高くなる。さらに、硫化物イオンと酸化剤とを発熱反応させるため、及び、この発熱反応の強さを測定するために、複雑な構成要素や高価な構成要素は不要である。そのため、本発明の測定装置は構成が単純で安価となる。
【0017】
さらに、本発明に係る測定装置において、吸収液は、アルカリ溶液であることが好ましい。これにより、吸収液は、効率良くガス流れ中の硫化水素ガスを硫化物イオンとして吸収することができる。
【0018】
さらに、本発明に係る測定装置において、酸化剤は、過酸化水素、又は、次亜塩素酸塩であることができる。これにより、吸収液と酸化剤との発熱反応の効率を高くすることができる。
【0019】
さらに、本発明に係る測定装置は、吸収液を貯蔵する第1容器と、酸化剤を貯蔵する第2容器とをさらに備えることができる。
【0020】
さらに、本発明に係る測定装置において、酸化剤供給器は、吸収液が硫化水素ガスの少なくとも一部を吸収した後に、吸収液に酸化剤を供給することができる。これにより、酸化剤として膜コンタクターを劣化させるような材料を用いることもできるため、酸化剤及び膜コンタクターとして用いる材料の選択の幅が広がる。その上、温度が上昇すると硫化水素ガスの吸収効率が低下するような吸収液を用いた場合であっても、硫化物イオンと酸化剤とが反応して吸収液の温度が上昇する前に硫化水素ガスを吸収液に吸収させることができるため、温度上昇に起因する吸収液による硫化水素ガスの吸収効率の低下を抑制することができる。
【0021】
さらに、本発明に係る測定装置において、酸化剤供給器は、膜コンタクターの液体導出端の近傍領域において、吸収液に前記酸化剤を供給することができる。
【0022】
また、本発明に係る測定装置において、酸化剤供給器は、吸収液が硫化水素ガスの少なくとも一部を吸収する前に、吸収液に酸化剤を供給することができる。これにより、硫化物イオンと酸化剤との発熱反応によって温度が上昇した吸収液がガス流れ中の硫化水素ガスを吸収することになるため、吸収液による硫化水素ガスの吸収反応の反応速度を向上させることができる。
【0023】
さらに、本発明に係る測定装置において酸化剤供給器は、膜コンタクターの液体導入端の近傍領域において、吸収液に酸化剤を供給することができる。
【0024】
また、本発明に係る測定装置は、吸収液と酸化剤との混合液を貯蔵する第3容器をさらに備えることができる。これにより、吸収液の貯蔵容器と酸化剤の貯蔵容器を共通化すること、及び、吸収液の供給器と酸化剤の供給器を共通化することができるため、測定装置の構造が簡略化されると共に、さらに安価な測定装置とすることができる。
【0025】
また、上述の課題を解決するため、本発明に係る定量方法は、液体中の硫化物イオンの定量方法であって、液体中の硫化物イオンを酸化剤と発熱反応させる発熱反応工程と、発熱反応工程前の液体の温度と、発熱反応工程後の液体の温度との差異に基づいて、硫化物イオンの定量値を算出する算出工程とを備える。
【0026】
本発明の定量方法によれば、定量対象である液体中の硫化物イオンと、酸化剤との発熱反応の強さを、発熱反応が生じる前後の液体の温度差から算出することができる。硫化物イオンと酸化剤との発熱反応は、これらが混合されてすぐに生じる。このように、本発明の定量方法は、反応速度の速い反応を利用しているため、液体が流れていても、液体の流れ中の硫化物イオンを連続的に定量することができる。
【0027】
さらに、硫化物イオンと酸化剤との発熱反応においては、触媒は不要である。そのため、定量の信頼性が高くなる。さらに、硫化物イオンと酸化剤とを発熱反応させるため、及び、この発熱反応の強さを測定するために、複雑な構成要素や高価な構成要素は不要である。これにより、本発明の定量方法は、簡単な構成の安価な装置で実施可能である。そのため、本発明の定量方法は、上述のような硫化水素濃度測定装置に利用可能である。
【0028】
さらに、本発明の定量方法において、酸化剤は、過酸化水素、又は、次亜塩素酸塩であることが好ましい。これにより、液体と酸化剤との発熱反応の効率を高くすることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、ガス流れ中の硫化水素を連続的に測定可能であると共に、安価で信頼性の高い硫化水素濃度測定装置が提供され、また、このような硫化水素濃度測定装置に利用可能な液体中の硫化物イオンの定量方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】容積15mLのポリエチレン製熱量計における1.5mol/Lの濃度のH水溶液中の硫化物イオンに対する熱量測定の応答を示す図である。
【図2】容積150mLの発泡プラスチック製熱量計における1.5mol/LのH水溶液中の硫化物イオンに対する熱量測定の応答を示す図である。
【図3】実施形態の硫化水素濃度測定装置の構成を示す模式図である。
【図4】図4(A)は、硫化水素濃度測定装置の液体導出端の近傍領域付近の構成を示す模式図である。図4(B)は、硫化水素濃度測定装置の液体導入端の近傍領域付近の構成を示す模式図である。
【図5】入口側フローセル及び出口側フローセルにPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製のものとPE(ポリエチレン)製のものを用いた場合のHSに対する硫化水素濃度測定装置の温度応答の比較を示す図である。
【図6】実施形態の変形例に係る硫化水素濃度測定装置の構成を示す模式図である。
【図7】低濃度領域におけるガス流れ中のHS濃度の段階的変化に対する温度応答を示す図である。
【図8】本発明の温度差測定の優位性を実証する例を示す図である。
【図9】ゼロガスとガス流れ中の種々のHS濃度間の段階的変化に対する測定装置の応答の再現性を示す図である。
【図10】感度を高めるのに適した条件における温度測定の応答性を示す図である。
【図11】HSが存在しない場合のガス流れ中のCOに対する温度測定の応答性を示す図である。
【図12】COが存在する場合のHS濃度測定装置の選択性を示す一連の段階的変化を示す図である。
【図13】HSに対する温度測定の応答特性の選択性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、実施の形態に係る硫化水素濃度測定装置及び硫化物イオンの定量方法について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図面において、可能な場合には同一要素には同一符号を用いる。また、図面中の構成要素内及び構成要素間の寸法比は、図面の見易さのため、それぞれ任意となっている。
【0032】
本実施形態の硫化物イオンの定量方法は、式1に示すように、アルカリ水溶液中での過酸化水素による硫化物イオンの酸化反応から発する熱の新規な利用に基づいている。
式1 S2−(aq)+4H(aq)=SO2−(aq)+4HO(l)+熱
【0033】
この発熱反応には、以下の3つの重要な利点が認められ、本実施形態の硫化水素濃度測定装置及び硫化物イオンの定量方法に寄与している。
(1)通常の硫化物の酸化反応とは異なり、この発熱反応の生成物は、不溶性の元素(単体)硫黄ではなく、溶解性の硫酸塩である。
(2)この発熱反応は、アルカリ媒体中で発熱量が大きく、ガス流れからの効率的なHS吸収だけでなく、液体中への硫化物イオンの固定に非常に適している。
(3)この発熱反応における発熱量は大きいため、生じた温度変化は、硫化物イオンの定量用に適した分析信号として利用できる。
【0034】
興味深いことに、弱酸性媒体中における式2に示す反応においては、上記の利点は生じない。
式2 8HS(g)+8H(aq)=S(s)+16HO(l)
【0035】
図1は、容積15mLのポリエチレン製熱量計における1.5mol/Lの濃度のH水溶液中の硫化物イオンに対する熱量測定の応答を示す図である。図1の(A)は、温度−時間曲線を示す図であり、時間ゼロは、硫化物イオンを添加した瞬間を意味し、添加した硫化物イオンのモル濃度ごとにプロットしている。図1の(B)は、図1の(A)に対応する検量線を示す図であり、図1の(A)の硫化物イオンのモル濃度ごとの曲線における最高温度に基づいてプロットしている。図2は、容積150mLの発泡プラスチック製熱量計における1.5mol/LのH水溶液中の硫化物イオンに対する熱量測定の応答を示す図である。図2の(A)は、温度−時間曲線を示す図であり、時間ゼロは、硫化物イオンを添加した瞬間を意味し、添加した硫化物イオンのモル濃度ごとにプロットしている。図2の(B)は、図2の(A)に対応する検量線を示す図であり、図2の(A)の硫化物イオンのモル濃度ごとの曲線における最高温度に基づいてプロットしている。
【0036】
水溶液中の硫化物イオンの定量用に開示した熱量測定(温度測定)法の分析実行可能性は、それぞれポリエチレン製と発泡プラスチック製の熱量計で得られた結果を示す図1および図2で明らかになっている。観察された温度変化(ΔT)は、式3で与えられる。
式3 ΔT=K×C×ΔH
ここで、Kは系全体の熱容量に関連した定数であり、Cは硫化物イオン濃度(酸化剤が過剰に与えられた場合)であり、ΔHは反応熱である。
【0037】
測定した分析信号(即ち、ΔT)は、反応熱(ΔH)に正比例するので、幾つかの可能性のある酸化剤をテストし、次亜塩素酸塩溶液が過酸化水素と同様に硫化物と反応することを立証したが、次亜塩素酸塩溶液を酸化剤として用いた場合のΔHの大きさは、過酸化水素を酸化剤として用いた場合のΔHの大きさの約60%であった。
【0038】
図3は、本実施形態の硫化水素濃度測定装置の構成を示す模式図である。図4(A)は、硫化水素濃度測定装置の液体導出端の近傍領域付近の構成を示す模式図である。図4(B)は、硫化水素濃度測定装置の液体導入端の近傍領域付近の構成を示す模式図である。図3に示すように、本実施形態の硫化水素濃度測定装置100は、吸収液1と、吸収液1を貯蔵する第1容器1Aと、硫化物イオンと発熱反応する酸化剤2と、酸化剤2を貯蔵する第2容器2Aと、吸収液供給器及び酸化剤供給器としての2チャンネルのポンプユニット3と、膜コンタクターとしての中空糸膜コンタクター4と、第1温度測定器5と、第2温度測定器6と、を備える。
【0039】
本実施形態の硫化物イオンの定量方法は、図3に示す硫化水素濃度測定装置100に利用されている。
【0040】
図3及び図4(A)(B)に示すように、中空糸膜コンタクター4は、1本又は複数本の中空糸4aを有する。中空糸膜コンタクター4は、中空糸膜コンタクター4のシェル側4F(各中空糸4aの外側)に存在するガス中の硫化水素ガスを、選択的に中空糸膜コンタクター4のチューブ側4E(各中空糸4aの内側、即ち各中空糸4aの中空部分)に通過させる機能を有する。
【0041】
中空糸膜コンタクター4のチューブ側4Eの入口である液体導入端4Aの近傍領域4ANには、近傍領域4ANを規定する入口側フローセル4Rが設けられている。入口側フローセル4Rには、液体導入端4Aに連通する導入開口4Xが形成されている。中空糸膜コンタクター4のチューブ側4Eの出口である液体導出端4Bの近傍領域4BNには、近傍領域4BNを規定する出口側フローセル4Sが設けられている。出口側フローセル4Sには、液体導出端4Bに連通する導出開口4Yが形成されている。
【0042】
ポンプユニット3は、本実施形態では2チャンネルのポンプである。具体的には、ポンプユニット3は、第1チャンネル用ポンプ3Aと第2チャンネル用ポンプ3Bを有している。第1チャンネル用ポンプ3Aは、配管11によって第1容器1Aと接続され、配管12によって中空糸膜コンタクター4の導入開口4Xに接続されている。第1チャンネル用ポンプ3Aは、吸収液供給器として機能する。具体的には、第1チャンネル用ポンプ3Aは、吸収液1を配管11、配管12、及び、導入開口4Xを経由させて液体導入端4Aの近傍領域4ANに供給することによって、吸収液1を液体導入端4Aから中空糸膜コンタクター4のチューブ側4Eに連続的に供給する。第1温度測定器5は、中空糸膜コンタクター4の近傍領域4ANに設けられており、中空糸膜コンタクター4に供給される吸収液1の温度を連続的に測定する。
【0043】
ガス流れ7は、硫化水素ガスを含むガスの流れである。ガス流れ7は、中空糸膜コンタクター4のシェル側4Fの入口近傍に設けられたプラスチックチューブ等からなる配管4Pを通して中空糸膜コンタクター4のシェル側4Fに入る。中空糸膜コンタクター4のシェル側4Fに入ったガス流れ7は、中空糸膜コンタクター4の各中空糸4aを介して中空糸膜コンタクター4のチューブ側4Eに供給された吸収液1と接触する。これにより、吸収液1は、ガス流れ7中の硫化水素ガス31の少なくとも一部を硫化物イオン32として吸収する。その後、ガス流れ7は、中空糸膜コンタクター4のシェル側4Fの出口近傍に設けられた減圧配管等の配管4Qを介して排ガス8として外部に排出される。排ガス8は、アルカリトラップ等の除害装置を通してから外部に排出することが好ましい。
【0044】
ガス流れ7中の硫化水素ガスの少なくとも一部を硫化物イオンとして吸収した吸収液1は、中空糸膜コンタクター4の液体導出端4Bから出て近傍領域4BNを経由して導出開口4Yから廃液10として外部に排出される。
【0045】
第2チャンネル用ポンプ3Bは、配管13によって第2容器2Aと接続され、配管14によって中空糸膜コンタクター4の液体導出端4Bと連通する導入開口4Zと接続されている。第2チャンネル用ポンプ3Bは、酸化剤供給器として機能する。具体的には、第2チャンネル用ポンプ3Bは、酸化剤2を配管13、配管14、及び、導入開口4Zを経由させて液体導出端4Bの近傍領域4BNに連続的に供給することによって、吸収液1に酸化剤2を供給する。これにより、吸収液1中の硫化物イオンを酸化剤2と発熱反応させる(発熱反応工程)。
【0046】
第1チャンネル用ポンプ3A及び第2チャンネル用ポンプ3Bとしては、例えば、ぜん動ポンプ、回転ポンプ、又は、往復動ポンプ等のポンプを用いることができる。第1チャンネル用ポンプ3Aや第2チャンネル用ポンプ3Bとしてぜん動ポンプを用いることは、ポンプが安価である点及び脈動が少ない点において好ましい。
【0047】
なお、本実施形態においては、吸収液供給器と酸化剤供給器は一体化されている、具体的には、第1チャンネル用ポンプ3A及び第2チャンネル用ポンプ3Bはポンプユニット3として一体化されているが、吸収液供給器と酸化剤供給器は、別体であってもよい。例えば、硫化水素濃度測定装置100は、ポンプユニット3に代えて、互いに別体の2台のポンプを有していてもよい。この場合、硫化水素濃度測定装置100は、ポンプユニット3に代えて、吸収液供給器としての第1のポンプと、酸化剤供給器としての第2のポンプを有する。
【0048】
酸化剤2は、硫化物イオンと発熱反応する材料である。具体的には、酸化剤2として例えば、過酸化水素、次亜塩素酸塩、過マンガン酸塩、又は、ペルオキソ二硫酸塩を用いることができる。
【0049】
液体導出端4Bの近傍領域4BNでは、吸収液1と酸化剤2が混合されたことにより、上記式1に示されるような発熱反応が起こる。この発熱反応後の吸収液1の温度は、液体導出端4Bの近傍領域4BNに設けられた第2温度測定器6によって連続的に測定される。そして、第1温度測定器5と第2温度測定器6による温度測定値9に基づき、発熱反応工程前の吸収液1の温度と、発熱反応工程後の吸収液1の温度との温度差ΔTを求める。そして、この温度差ΔTに基づいて、吸収液1中の硫化物イオン32の定量値を算出する(算出工程)。この温度差ΔTは、硫化物イオンの定量方法の新規で信頼性の高い基本原理の基となる。第2温度測定器6によって測定した吸収液1の温度ではなく、第2温度測定器6と第1温度測定器5とでそれぞれ測定した吸収液1の温度の温度差を基に、吸収液1中の硫化物イオン32の定量値を算出しているため、吸収液1の温度が硫化物イオン32と酸化剤2との発熱反応以外の要因で変動しても、算出される硫化物イオン32の定量値の誤差を抑制することができる。そして、このように算出した吸収液1中の硫化物イオン32の定量値から、ガス流れ7中の硫化水素ガス31の濃度を算出する。
【0050】
中空糸膜コンタクター4のシェル側4Fにおけるガス流れ7の進行方向は、中空糸膜コンタクター4のチューブ側4Eにおける吸収液1の流れの方向と逆方向とすることが好ましい。中空糸膜コンタクター4のシェル側4Fにおけるガス流れ7の進行方向を中空糸膜コンタクター4のチューブ側4Eにおける吸収液1の流れの方向と同方向とした場合と比較して、中空糸膜コンタクター4の液体導出端4B付近において、ガス流れ7中のHS濃度と吸収液1中の硫化物イオン32の濃度との差が大きくなるため、吸収液1による硫化物イオン32の吸収効率が向上するためである。
【0051】
中空糸膜コンタクター4は、例えば、微孔質のポリプロピレン(PP)中空糸を基にした市販の小型モジュール(例えば、米国Membrana社G543)である。ポリプロピレン製中空糸は、他の可能性のあるシリコンゴム(SR)製中空糸よりも適している。なぜなら、非多孔性のシリコンゴム製中空糸に比べ、アルカリ溶液への耐性が優れ、微孔質中空糸を通るガス流束がより高いと予想されるからである。
【0052】
吸収液1は、第一のキャリア液体として用いられ、HSの吸収効率を高める観点からアルカリ溶液であることが好ましい。吸収液1によるHSの吸収効率が高まると、中空糸膜コンタクター4における前濃縮効率が高まり、最終的に硫化水素濃度測定装置100によるHS濃度測定の感度が高まる。吸収液1としては、例えば水酸化ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、又は、水酸化カリウム溶液等を用いることができる。吸収液1としてアルカリ溶液を用いた場合、ガス流れ7中のHSは、吸収液1中の水への物理的な吸収(HOへの溶解)及び吸収液1中のアルカリへの化学的な吸収(HSとアルカリの化学反応、例えば、反応式HS+2NaOH→S2−+2Na+2HOで表される化学反応)によって、吸収液1に吸収される。
【0053】
吸収液1及び酸化剤2の組み合わせとして、混合した場合に不安定になる組み合わせを選択した場合、吸収液1と酸化剤2を予め混合しておき、その混合液を中空糸膜コンタクター4に供給するよりも、本実施形態のように吸収液1と酸化剤2を別々の容器(第1容器1Aと第2容器2A)に貯蔵し、吸収液1を中空糸膜コンタクター4の液体導入端4Aに供給し、酸化剤2を中空糸膜コンタクター4の液体導出端4Bに供給することが好ましい。この場合、硫化物イオンと酸化剤2との発熱反応は、主として液体導出端4Bの近傍領域4BNで起こる。
【0054】
また、酸化剤2を、吸収液1が硫化水素ガスの少なくとも一部を硫化物イオンとして吸収する前に、吸収液1に供給してもよい。これは、例えば、配管14を酸化剤供給器としての第2チャンネル用ポンプ3Bと導入開口4Xの間に設け、第2チャンネル用ポンプ3Bによって酸化剤2を配管13、配管14、導入開口4Xを経由して、液体導入端4Aの近傍領域4ANに供給することにより実現することができる。これにより、硫化物イオン32と酸化剤2との発熱反応によって温度が上昇した吸収液1がガス流れ7中の硫化水素ガス31を吸収することになるため、吸収液1による硫化水素ガス31の吸収反応の反応速度を向上させることができる。
【0055】
ただし、図3に示すように、吸収液1が硫化水素ガスの少なくとも一部を硫化物イオンとして吸収した後に、酸化剤2を吸収液1に供給する場合、酸化剤2及び中空糸膜コンタクター4(特に中空糸4a)として用いる材料の選択の幅が広がるという利点がある。酸化剤2として、中空糸膜コンタクター4、特に、中空糸膜コンタクター4の中空糸4aを劣化させてしまうような材料を選択することも可能となるからである。これにより、例えば、中空糸膜コンタクター4の中空糸4aとして、安価な材料からなる中空糸を選択し易くなる。その上、温度が上昇すると硫化水素ガス31の吸収効率が低下するような吸収液1を用いた場合であっても、硫化物イオン32と酸化剤2とが反応して吸収液1の温度が上昇する前に硫化水素ガス31を吸収液1に吸収させることができるため、温度上昇に起因する吸収液1による硫化水素ガス31の吸収効率の低下を抑制することができる。
【0056】
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)とポリエチレンで様々な寸法と内容積に加工された幾つかの入口側フローセル4R及び出口側フローセル4S(図3及び図4参照)について、応答感度の観点から評価した。全ての場合において、熱容量を最小化するため、フローセルの総重量をできるだけ小さく保ち、壁厚はできるだけ薄く(約1mm)製作した。これにより、測定される温度変化が大きくなり、したがって、測定感度が高くなる。
【0057】
図5は、入口側フローセル及び出口側フローセルにPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製のものとPE(ポリエチレン)製のものを用いた場合のHSに対する硫化水素濃度測定装置の温度応答の比較を示す図である。図5においては、入口側フローセル及び出口側フローセルにPTFE製のものを用いた場合の温度応答を実線Dで示し、入口側フローセル及び出口側フローセルにPE製のものを用いた場合の温度応答を破線Hで示している。中空糸膜コンタクター4としては、Membrana社のポリプロピレン製小型膜モジュールを用いた。ベースラインは、ガス流れ7が純窒素(N)の場合に対応し、温度差の段階的な変化はガス流れ7中のHS濃度を6,250ppmずつ増減した場合の変化に対応している。吸収液1としては、0.3mol/Lの濃度のNaOHを用い、吸収液1の流量は3.5mL/分とした。酸化剤2としては、2mol/Lの濃度のHを用い、酸化剤2の流量は4mL/分とした。
【0058】
フローセルの適切な内容積は、用いる両試薬(即ち、吸収液1と酸化剤2)の流量と切り離して決めることはできない。いずれにせよ、フローセルの最適内容積は、酸化剤2と吸収された硫化物イオンによる発熱反応において最大の温度上昇を生じる十分な滞留(混合)時間と、測定装置の応答と回復時間を短くする最小滞留時間の間の中間値であることが望ましい。
【0059】
一方、両試薬の流量の影響は、次のように合理的に説明される。即ち、吸収液1の流量が少ないと、中空糸膜コンタクター4での滞留時間が長くなり、吸収液1はガス流れ7中の硫化水素をより多く硫化物イオンとして吸収して前濃縮するため、測定装置の感度が高くなる結果となる。ある流量以下では(例えば、Membrana社ポリプロピレン製小型モジュールG543を使用した場合)、吸収された硫化物イオンが高濃度になり、酸化剤2である過酸化水素との混合による酸化が不完全となる結果になり、従って、液体導出端4Bの近傍領域4BNにおける吸収液1中に硫黄の沈殿が観察された。これは、第2温度測定器6における沈殿した硫黄の付着を招く。したがって、所定の望ましい直線範囲において、硫黄形成が、吸収液1であるNaOH流量の下限を設定することになった。
【0060】
望ましい直線範囲をより広くするには、高濃度のHSでの硫黄形成を避けるため、吸収液1の流量は多くし、ガス流れ7のガス流量は少なくすることが望ましい。全ての場合において、直線動作範囲を広げようとすると、よくあるように、感度の低下を伴う。幾つかの試行の結果、酸化剤2である過酸化水素の流量は、吸収液1の流量ほど重要ではないことが示された。さらに、2mol/Lの濃度の過酸化水素溶液が最適であることが見出された。より高濃度の過酸化水素溶液は、かなりの気泡を形成し、測定装置の応答にノイズを生じる結果となった。一方、より希釈した過酸化水素溶液は、高濃度のHSで硫黄を生成する結果となり、感度と直線応答性が悪くなった。
【0061】
図6は、本実施形態の変形例に係る硫化水素濃度測定装置の構成を示す模式図である。図6に示すように、変形例に係る硫化水素濃度測定装置100aは、主として、第1容器1A及び第2容器2Aに変えて第3容器21Aを備える点、吸収液1と酸化剤2は、混合されて混合液21になっている点、第3容器21Aに混合液21が貯蔵されている点、及び、2チャンネルのポンプユニット3の変わりに1チャンネルのポンプユニット23を備えている点において、上述の硫化水素濃度測定装置100と異なる。
【0062】
本実施形態の変形例のポンプユニット23は、ポンプ23Aを有している。ポンプ23Aは、配管25によって第3容器21Aと接続され、配管27によって中空糸膜コンタクター4の導入開口4Xに接続されている。ポンプ23Aは、吸収液供給器及び酸化剤供給器として機能する。具体的には、ポンプ23Aは、混合液21を配管25、配管27、及び、導入開口4Xを経由させて液体導入端4Aの近傍領域4ANに供給することによって、混合液21を液体導入端4Aから中空糸膜コンタクター4のチューブ側に連続的に供給する。この場合、混合液21中の酸化剤2と吸収液1が吸収したガス流れ7中の硫化物イオンとの発熱反応は、液体導出端4Bの近傍領域4BNだけでなく、中空糸膜コンタクター4のチューブ側においても生じる。
【0063】
ポンプ23Aとしては、第1実施形態の第1チャンネル用ポンプ3Aや第2チャンネル用ポンプ3Bと同様のポンプを用いることができる。
【0064】
上述のような本実施形態の変形例の硫化水素濃度測定装置100aによれば、吸収液1の貯蔵容器と酸化剤2の貯蔵容器を第3容器21Aとして共通化すること、及び、吸収液1の供給器と酸化剤2の供給器をポンプ23Aとして共通化することができるため、硫化水素濃度測定装置100aの構造が簡略化されると共に、さらに安価な硫化水素濃度測定装置100aとすることができる。
【0065】
上述のような本実施形態の硫化水素濃度測定装置100(又は硫化水素濃度測定装置100a)によれば、吸収液1が吸収した測定対象であるガス流れ7中の硫化水素ガス31に由来する硫化物イオン32と、酸化剤2との発熱反応の強さを、第1温度測定器5と第2温度測定器6によって測定することができる。吸収液1によるガス流れ7中の硫化水素ガス31の吸収(即ち、ガス流れ7中から吸収液1への硫化水素ガス31の移動及び吸収液1による硫化水素ガス31の吸収反応)は、吸収液1とガス流れ7とが中空糸膜コンタクター4の膜である中空糸4aを介して接触してすぐに生じる上、硫化物イオン32と酸化剤2との発熱反応は、これらが混合されてすぐに生じる。このように、本実施形態の硫化水素濃度測定装置100(又は硫化水素濃度測定装置100a)は、移動速度の速い物質移動現象及び反応速度の速い反応を利用しているため、ガス流れ7中の硫化水素ガス31の濃度を連続的に測定可能であり、ガス流れ7中の硫化水素ガス31の濃度をリアルタイムで測定することも可能となる。
【0066】
また、吸収液1による硫化水素ガス31の吸収反応及び硫化物イオン32と酸化剤2との発熱反応においては、触媒は不要である。そして、ガス流れ7中に水分が含まれていても、中空糸膜コンタクター4の中空糸4aを利用してガス流れ7のHSを選択的に吸収液1に吸収させるためガス流れ7中の水分の測定値に与える影響はほとんどない。また、本実施形態の硫化水素濃度測定装置100(又は硫化水素濃度測定装置100a)では、従来の測定装置のように装置の寿命を制限してしまうような構成要素は不要である。これらの理由により、本実施形態の硫化水素濃度測定装置100(又は硫化水素濃度測定装置100a)の信頼性は高くなる。さらに、硫化物イオン32と酸化剤2とを発熱反応させるため、及び、この発熱反応の強さを測定するために、複雑な構成要素や高価な構成要素は不要である。そのため、硫化水素濃度測定装置100(又は硫化水素濃度測定装置100a)は構成が単純で安価となる。
【0067】
本実施形態の硫化水素濃度測定装置100(又は硫化水素濃度測定装置100a)によれば、ガス流れ7中の硫化水素ガス濃度の広い範囲において、硫化水素ガス31の濃度と、温度差ΔT(発熱反応工程前の吸収液1の温度と、発熱反応工程後の吸収液1の温度との温度差ΔT)とが、正比例するため、ガス流れ7中の硫化水素ガス31の濃度測定において、ppmレベルからパーセント・レベルまで、広範囲な直線関係の動作範囲を得ることができる。
【0068】
また、上述のような本実施形態の硫化物イオンの定量方法によれば、定量対象である吸収液1中の硫化物イオン32と、酸化剤2との発熱反応の強さを、発熱反応が生じる前後の液体の温度差から算出することができる。硫化物イオン32と酸化剤2との発熱反応は、これらが混合されてすぐに生じる。このように、本実施形態の定量方法は、反応速度の速い反応を利用しているため、吸収液1が流れていても、吸収液1の流れ中の硫化物イオン32を連続的に定量することができ、吸収液1中の硫化物イオン32の濃度をリアルタイムで測定することもできる。
【0069】
さらに、硫化物イオン32と酸化剤2との発熱反応においては、触媒は不要である。そのため、定量の信頼性が高くなる。さらに、硫化物イオンと酸化剤2とを発熱反応させるため、及び、この発熱反応の強さを測定するために、複雑な構成要素や高価な構成要素は不要である。これにより、本実施形態の定量方法は、簡単な構成の安価な装置で実施可能である。そのため、本実施形態の定量方法は、上述のような硫化水素濃度測定装置100(又は硫化水素濃度測定装置100a)に利用可能である。
【0070】
また、上述のような本実施形態の硫化物イオンの定量方法によれば、吸収液1中の硫化物イオン32の濃度の広い範囲において、硫化物イオン32の濃度と、温度差ΔT(発熱反応工程前の吸収液1の温度と、発熱反応工程後の吸収液1の温度との温度差ΔT)とが、正比例するため、吸収液1中の硫化物イオン32の濃度測定において、ppmレベルからパーセント・レベルまで、容易に硫化物イオン32の濃度の定量を行うことが可能である。
【0071】
以下、本発明の効果をより一層明らかなものとするため、実施例を用いて説明する。なお、以下の各実施例の実験においては、所定のガス(例えば、HS)を所定の濃度で含む混合ガスを得るために、4台の質量流量調節器を有する4チャンネルのガス混合器を用いた。例えば、HSと窒素ガスの混合ガスを得るために、1台の窒素用質量流量調節器と、調節可能範囲が異なる3台のHS用質量流量調節器とからなるガス混合器を用いた。これらの質量流量調節器によって、所定の割合で混合された窒素及びHSの混合ガスからなるガス流れを正確に調製し、HSと窒素ガスの混合ガスを中空糸膜コンタクター4のシェル側に供給した。調節可能範囲が異なる3台のHS用質量流量調節器を用いることによって、HSの濃度を広範囲(ppmレベルからパーセントレベルまでの範囲)で変化させた複数種類の混合ガスからなる複数種類のガス流れを作成した。
【0072】
(実施例1)
図7は、低濃度領域におけるガス流れ中のHS濃度の段階的変化に対する温度応答を示す図である。中空糸膜コンタクター4としては、Membrana社のポリプロピレン製小型膜モジュールを用いた。温度差の段階的な変化はガス流れ7中のHS濃度を250ppm(0.025%)ずつ増減した場合の変化に対応している。吸収液1としては、0.3mol/Lの濃度のNaOHを用い、吸収液1の流量は2mL/分とした。酸化剤2としては、2mol/Lの濃度のHを用い、酸化剤2の流量は2mL/分とした。図7は、図5に示した結果と比較して、HSのより低濃度範囲における測定装置の温度応答について得られた結果を表している。
【0073】
(実施例2)
図8は、本発明の温度差測定の優位性を実証する例を示す図である。本発明の温度差測定(第2温度測定器6と第1温度測定器5による測定値の差の測定)に基づく結果を実線Dで示し、比較例として第2温度測定器6による測定値と初期入力温度(第1温度測定器5による最初の測定値)の差に基づく結果を破線Cで示す。比較例の場合に第2温度測定器6による測定値と初期入力温度の差を利用しているのは、温度差測定と第2温度測定器6のみの測定を容易に比較できるように、比較例においてゼロ・ベースラインを与えるためである。(最初は、第1温度測定器5の測定値=第2温度測定器6の測定値であり、第2温度測定器6と第1温度測定器5による測定値の差はゼロになる。)
【0074】
図8に示す測定においては、PTFE製セル(7g)を用いた。温度の段階的な変化はガス流れ7中のHS濃度を6,250ppmずつ増減した場合の変化に対応している。吸収液1としては、0.3mol/Lの濃度のNaOHを用い、吸収液1の流量は4mL/分とした。酸化剤2としては、1mol/Lの濃度のHを用い、酸化剤2の流量は4mL/分とした。
【0075】
図8に示されるように、液体導入端4Aの近傍領域4ANにおける吸収液1の温度は時間と共に変化し、第2温度測定器6の測定値だけに基づく信号の再現性に影響を与えた。一方、分析信号を温度差(即ち、第2温度測定器6の測定値−第1温度測定器5の測定値)に基づく信号においては、吸収液1の温度変化に伴う、この不都合な影響は殆ど除去された。
【0076】
(実施例3)
図9(a)〜図9(e)は、ゼロガスとガス流れ中の種々のHS濃度間の段階的変化に対する測定装置の応答の再現性を示す図である。中空糸膜コンタクター4としては、ポリプロピレン製膜モジュール使用した。そして、図9(a)においては、温度差の段階的な変化はガス流れ7中のHS濃度を0ppmと25,000ppmとの間で段階的に増減した場合の変化に対応している。吸収液1としては、0.3mol/Lの濃度のNaOHを用い、吸収液1の流量は4mL/分とした。酸化剤2としては、2mol/Lの濃度のHを用い、酸化剤2の流量は4mL/分とした。ガス流れ7の流量は、200mL/分とした。
【0077】
図9(b)においては、温度差の段階的な変化はガス流れ7中のHS濃度を0ppmと1,250ppmとの間で段階的に増減した場合の変化に対応している。吸収液1としては、0.3mol/Lの濃度のNaOHを用い、吸収液1の流量は4mL/分とした。酸化剤2としては、2mol/Lの濃度のHを用い、酸化剤2の流量は4mL/分とした。ガス流れ7の流量は、200mL/分とした。
【0078】
図9(c)においては、温度差の段階的な変化はガス流れ7中のHS濃度を0ppmと833ppmとの間で段階的に増減した場合の変化に対応している。吸収液1としては、0.3mol/Lの濃度のNaOHを用い、吸収液1の流量は4mL/分とした。酸化剤2としては、2mol/Lの濃度のHを用い、酸化剤2の流量は4mL/分とした。ガス流れ7の流量は、600mL/分とした。
【0079】
図9(d)においては、温度差の段階的な変化はガス流れ7中のHS濃度を0ppmと250ppmとの間で段階的に増減した場合の変化に対応している。吸収液1としては、0.3mol/Lの濃度のNaOHを用い、吸収液1の流量は1.3mL/分とした。酸化剤2としては、2mol/Lの濃度のHを用い、酸化剤2の流量は1.3mL/分とした。ガス流れ7の流量は、200mL/分とした。
【0080】
図9(e)においては、温度差の段階的な変化はガス流れ7中のHS濃度を0ppmと125ppmとの間で段階的に増減した場合の変化に対応している。吸収液1としては、0.3mol/Lの濃度のNaOHを用い、吸収液1の流量は1.25mL/分とした。酸化剤2としては、2mol/Lの濃度のHを用い、酸化剤2の流量は1.25mL/分とした。ガス流れ7の流量は、400mL/分とした。
【0081】
測定装置の応答の再現性は、異なるHS濃度レベルで評価し、得られた結果を図9(a)〜(e)に示した。所定の実験条件下で、ガス流れ7中のHS濃度は、ゼロ(純N)と所定濃度の間で数回、段階的に変化させた。信号の高さが近いことは、信号の再現性の尺度とみなされた。
【0082】
(実施例4)
図10は、感度を高めるのに適した条件における温度測定の応答性を示す図である。中空糸膜コンタクター4としては、ポリプロピレン製膜モジュール使用した。図10においては、温度差の段階的な変化はガス流れ7中のHS濃度を1,250ppmずつ増減した場合の変化に対応している。吸収液1としては、0.3mol/Lの濃度のNaOHを用い、吸収液1の流量は2mL/分とした。酸化剤2としては、2mol/Lの濃度のHを用い、酸化剤2の流量は2mL/分とした。ガス流れ7の流量は、600mL/分とした。
【0083】
広い直線範囲を犠牲にして、高感度が得られる条件で得られた校正曲線を図10に示す。このような条件には、ガス流れ7のガス流量が多く、相対的に吸収液1の液流量が少ない場合が含まれた。直線性が得られた限界(即ち8,000ppm)は、硫黄の沈殿形成によって決定される。これは、ガス流れ7の流量200mL/分、酸化剤2としてのHの流量4mL/分、吸収液1としてのNaOHの流量4mL/分で得られた50,000ppmという直線性の限界(図8に対応する実施例2で得られた直線性の限界)より著しく低い。
【0084】
(実施例5)
図11は、HSが存在しない場合のNとCOとの混合ガスの温度測定の応答性を示す図である。図11においては、N中のCO濃度の段階的な増加はそれぞれ0%、2.5%、5%、7.5%、10%に対応している。吸収液1としては、0.3mol/Lの濃度のNaOHを用い、吸収液1の流量は2mL/分とした。酸化剤2としては、2mol/Lの濃度のHを用い、酸化剤2の流量は2mL/分とした。ガス流れ7の流量は、200mL/分とした。
【0085】
Sに対する温度測定の応答選択性は、天然ガス中で一般にHSと共存するCOの存在下で評価した。COは、吸収液1であるNaOH吸収液との溶解・吸収反応のため、弱い干渉を与えると考えられる。図11は、HSが存在しないNとCOとの混合ガスからなるガス流れ7中のCO濃度の増加に対する応答を示す。得られた結果は、ガス流れ7がN中にHSのみを含む場合に得られた結果より十分小さい応答(N中にHSのみを含む場合の約1.4%)を示した。HSは、弱酸および還元剤の両方として作用し、主として発熱効果の原因となる。この結論は、図12に示すデータで更に確認される。
【0086】
図12は、COが存在する場合の硫化水素濃度測定装置の選択性を示す一連の段階的変化を示す図である。吸収液1としては、0.3mol/Lの濃度のNaOHを用い、吸収液1の流量は2mL/分とした。酸化剤2としては、2mol/Lの濃度のHを用い、酸化剤2の流量は2mL/分とした。図12において、1番目、3番目、5番目の段階において、ガス流れ7は、20mLの5%濃度のHSと180mLのNからなる(即ち、ガス流れ7は、0.5%濃度のHSを含む)。2番目、4番目、6番目の段階において、ガス流れ7は、18mLの5%濃度のHSと、2mLの100%濃度のCOと、180mLのNからなる(即ち、ガス流れ7は、0.45%濃度のHS及び1%濃度のCOを含む)。
【0087】
図12では、左側から1番目、3番目、5番目の段階に比べて2番目、4番目、6番目の段階においては、2mLの5%濃度のHSが、2mLの100%濃度のCOに置き換わった(即ち、20倍)。たとえHSの一部が20倍のCOに置き換わって信号が低下しても、図12は、HSに比べて、COの方が明らかに応答が小さいことを示すものである。
【0088】
図13(a)及び図13(b)は、HSに対する温度測定の応答特性の選択性を示す図である。図13(a)においては、吸収液1としては、0.5mol/Lの濃度のNaOHを用い、吸収液1の流量は2mL/分とした。酸化剤2としては、2mol/Lの濃度のHを用い、酸化剤2の流量は2mL/分とした。ガス流れ7の流量は、200mL/分とした。また、全段階において、ガス流れ7は、HSを0.5%含んでいた。COの量は、左側から1番目の段階において0mL、2番目の段階において5mL、3番目の段階において10mL、4番目の段階において15mL、5番目の段階において20mLであった。1番目の段階〜5番目の段階において、ガス流れ7中のCO濃度は、それぞれ、0%、2.5%、5%、7.5%、10%に対応する。
【0089】
図13(b)においては、吸収液1としては、0.5mol/Lの濃度のNaOHを用い、吸収液1の流量は2mL/分とした。酸化剤2としては、2mol/Lの濃度のHを用い、酸化剤2の流量は2mL/分とした。ガス流れ7の流量は、200mL/分とした。また、全段階において、ガス流れ7は、HSを0.5%含んでいた。左側から1番目の段階及び2番目の段階におけるガス流れ7中のHS濃度及びCO濃度は、図13(a)に示す場合と同様であるが(即ち、ガス流れ7中のHS濃度は両方とも0.5%、CO濃度は、それぞれ0%と2.5%)、3番目の段階においては、HS濃度は0.5%でCO濃度は7.5%、4番目の段階においては、HSは0.5%でCO濃度は0%に相当する(すなわち、1番目の段階と同じ条件)。4番目の段階においては、3番目の段階で7.5%のCOに曝すことによって、その後生じる小さな影響を確認し、第1段階の再現性を確認するためのものであった。
【0090】
図13(a)及び図13(b)に示した結果は、図12から得られた結論を確認するものであった。すなわち、図13(a)の1番目の段階と5番目の段階を比較すると、10%のCOが小さな信号(約1℃)を生じ、1番目の段階から5番目の段階までCO濃度がより高くなっても信号は直線的に増加しなかった。
【符号の説明】
【0091】
1・・・吸収液、2・・・酸化剤、3・・・ポンプユニット、3A・・・第1チャンネル用ポンプ(吸収液供給器)、3B・・・第2チャンネル用ポンプ(酸化剤供給器)、4・・・中空糸膜コンタクター(膜コンタクター、膜モジュール)、4a・・・中空糸、5・・・第1温度測定器、6・・・第2温度測定器、7・・・ガス流れ、100、100a・・・硫化水素濃度測定装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス流れ中の硫化水素ガスの濃度を測定する測定装置であって、
硫化水素ガスを硫化物イオンとして吸収可能な吸収液と、
前記ガス流れと前記吸収液の流れとを膜を介して接触させ、前記ガス流れ中の前記硫化水素ガスの少なくとも一部を硫化物イオンとして前記吸収液に吸収させる膜コンタクターと、
前記膜コンタクターに前記吸収液を供給する吸収液供給器と、
硫化物イオンと発熱反応する酸化剤と、
前記吸収液に前記酸化剤を供給する酸化剤供給器と、
前記吸収液が吸収した前記硫化物イオンと前記酸化剤とが発熱反応する前に、前記吸収液の温度を測定する第1温度測定器と、
前記吸収液が吸収した前記硫化物イオンと前記酸化剤とが発熱反応した後に、前記吸収液の温度を測定する第2温度測定器と、
を備える測定装置。
【請求項2】
前記吸収液は、アルカリ溶液である請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記酸化剤は、過酸化水素、又は、次亜塩素酸塩である請求項1又は2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記吸収液を貯蔵する第1容器と、
前記酸化剤を貯蔵する第2容器と、
をさらに備える請求項1〜3のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項5】
前記酸化剤供給器は、前記吸収液が前記硫化水素ガスの前記少なくとも一部を吸収した後に、前記吸収液に前記酸化剤を供給する請求項1〜4のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項6】
前記酸化剤供給器は、前記膜コンタクターの液体導出端の近傍領域において、前記吸収液に前記酸化剤を供給する請求項5に記載の測定装置。
【請求項7】
前記酸化剤供給器は、前記吸収液が前記硫化水素ガスの前記少なくとも一部を吸収する前に、前記吸収液に前記酸化剤を供給する請求項1〜4のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項8】
前記酸化剤供給器は、前記膜コンタクターの液体導入端の近傍領域において、前記吸収液に前記酸化剤を供給する請求項7に記載の測定装置。
【請求項9】
前記吸収液と前記酸化剤との混合液を貯蔵する第3容器をさらに備える請求項1〜3のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項10】
液体中の硫化物イオンの定量方法であって、
前記液体中の前記硫化物イオンを酸化剤と発熱反応させる発熱反応工程と、
前記発熱反応工程前の前記液体の温度と、前記発熱反応工程後の前記液体の温度との差異に基づいて、前記硫化物イオンの定量値を算出する算出工程と、
を備える定量方法。
【請求項11】
前記酸化剤は、過酸化水素、又は、次亜塩素酸塩である請求項10に記載の定量方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−180017(P2011−180017A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−45429(P2010−45429)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【出願人】(301041531)財団法人 国際石油交流センター (12)
【出願人】(507382821)アラブ首長国連邦大学 (2)
【Fターム(参考)】