説明

ガス溶解製品の貯蔵および小出し装置

本発明は、包装されたガス溶解製品に関する。本発明による包装されたガス溶解製品は、第1のガスを第1の圧力で溶解させたガス溶解製品と、ガス溶解製品を保持し且つ小出しするための組立体とを有する。組立体は、シールされた剛性の外容器(1)と、ガス不透過性材料で作られ且つ外容器(1)内に気密に配置された、ガス溶解製品を保持するための可撓性内容器(2)と、内容器(2)内に収容されたガス溶解製品と流体連通している製品ディスペンサ(3)とを有する。可撓性内容器(2)と外容器(1)との間には、空間(4)が形成され、空間(4)内には、第2のガスが、第1の圧力よりも高い初期充填圧力で充填される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概略的には、溶解ガスを含有する製品の貯蔵および小出しを行なうための包装方法に関する。更に詳細には、本発明は、製品の溶解ガス濃度を、その製品の処理、貯蔵および小出しの間維持する、剛性容器と可撓性容器との組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
通常の推進剤以外に酸素および二酸化炭素等の溶解ガスを含有するスキンケア配合物および医薬配合物が、近年大きな関心を集めている。例えば、局部的に適用される酸素含有配合物は、血管および新しい皮膚の成長を誘発し、皮膚の代謝を改善し、皮膚の老化を妨げ、有害な環境効果から皮膚を保護することが示唆されている(Oxynoid, O.E.等の論文「細胞、血液物質および不動化(Cells, Blood Subs., and Immob.)」(Biotech.社、1994年、22(4)、1331〜1336頁))。同様に、血液循環を刺激し、つやのない皮膚を改善し、目の下の黒ずんだ隈および不均一な肌の色合いを低減させるために局部的に適用される二酸化炭素含有化粧品配合物がクレームに記載されている(米国特許第6,228,378号明細書)。従って、溶解ガス、特に酸素および二酸化炭素を含有する多数の局部的化粧品配合物および治療薬配合物が開発されている。
【0003】
例えば米国特許第4,366,169号には、火傷、切傷、擦過傷および手術等から生じる虚血性創傷に酸素含有フルオロカーボン(FC)を使用することが開示されている。米国特許第5,885,564号は、植物性物質または酵母の細胞の消化処理生成物を含む酸素含有FCエマルションを教示している。FCと消化剤との間の共働により、エマルション中の酸素含有量をより高くする。米国特許第6,228,378号には、二酸化炭素ガスを含有する粘性化粧品配合物が開示されている。
【0004】
ガス含有製品は、典型的には、含有ガスが外部に漏出することを防止するために、加圧容器内に気密に包装される。加圧容器を用いた小出し装置は良く知られている。このような装置では、小出しすべき製品は容器内に入れられ、容器は開始圧力で充填される。小出し用弁が付勢されると、ディスペンサの内部圧力と大気圧力との間の圧力差により、ガス含有製品が容器から小出しされる(整理番号35,540の米国特許出願)。しかしながら、従来の加圧容器からガス含有製品が小出しされると、液体と置き換わる容器内容積が膨脹ガスで満たされ、容器圧力はボイルの法則に従って比例的に低下する。この結果、ガス含有製品中のガス濃度は、製品容器内の全体圧力損失に比例して低下する。従って、従来の加圧容器は、繰り返し小出しされるガス含有製品中のガス濃度を維持することはできない。従来の殆どの加圧缶すなわちエアロゾル缶は、溶解された揮発性ガスを、治療目的としてではなく、製品の小出しのための推進剤として使用するに過ぎず、この限定は、一般的には、問題にならない。しかしながら、小出し中の製品容器内を高圧を維持することにより、製品中の高い溶解ガスレベルを製品の使用中にわたって確保することが有利である。
【0005】
最近、米国特許第6,228,378号により、外容器と内側バッグとを備えた二重構造の容器内に二酸化炭素含有配合物を包装する技術が提案されている。化粧品配合物中の二酸化炭素ガスの高濃度を達成するため、内バッグはガス透過性材料で作られ、推進剤として二酸化炭素ガスが使用される。この米国特許は、所望のガス濃度レベルを得るために、室温で1週間かけて化粧品配合物を「エージング」又は馴らして、二酸化炭素ガスが内側バッグを透過して化粧品配合物中に入ることができるようにする。この「エージング」工程は、加熱により短縮される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、この方法は化粧品用途および治療薬用途では実際的でない。典型的な化粧品および治療薬の適用例は、頻繁な(例えば毎日の)製品の小出しを要求する。従って、小出しと小出しの間、必要とされる「エージング」を達成するための充分な時間がない。また、このような装置は、製品中のガス濃度を一定に維持することは、不可能ではないにせよ、困難である。上述した「エージング」工程は、透過性膜を横切る二酸化炭素の簡単な拡散移送に基いていると考えられる。この工程は、非常に緩慢であり、小出しされる製品内の二酸化炭素レベル全体にわたって均一な近似制御を行うことは困難である。製品中の一定のガス濃度を達成するためには、「エージング時間」の入念な定量(メータリング)を行うこと、及び、小出しと小出しとの間、製品を一定の周囲条件下に維持することが必要であり、これはどのような場合でも実用的でない。また、ガス濃度が透過性バッグの外部の充填ガス圧力に比例する仕組みであるため、製品が小出しされるとき、ガス圧力および製品のガス濃度は低下する。
【0007】
従って、溶解ガスを含有する製品を包装するために現在利用できる方法は、製品中のガス濃度を維持できないだけでなく、化粧品および治療薬製品への適用を実用化することに技術的欠点を有する。
【0008】
従来技術の上記欠点に鑑みて、本発明の目的は、溶解ガスを含有する製品を、製品中の溶解ガスの濃度を低下させることなく保持し且つ小出しする装置を提供することにある。また、本発明の他の目的は、溶解ガスを含有する製品の貯蔵および小出し中の製品中の溶解ガスの濃度の変化を防止するように溶解ガス含有製品を包装する、簡単で、信頼性があり且つ安価な方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記および他の目的は、本発明において、第1のガスが第1の圧力で溶解された製品を保持し且つ小出しするための新規な組立体を使用することにより達成される。本発明の組立体は、シールされた剛性の外容器と、ガス不透過性材料で作られ且つガスが溶解された製品を保持する可撓性の内容器と、内容器内に収容された製品と流体連通している製品ディスペンサとを有している。内容器は、外容器の内部に気密に配置されている。内容器と外容器との間に形成された空間内には、第2のガスが、製品中に溶解された第1のガスの圧力よりも高い初期充填圧力で充填される。
【0010】
典型的には、最初、内容器と外容器との間の空間を充填ガスで充填する。次に、内容器を、溶解ガスを含有するガス溶解製品で充填する。その結果、内容器をガス溶解製品で充填するとき、内容器と外容器との間の容積が減少することにより、充填ガスの圧力が増大する。ガス溶解製品を内容器2から小出しすると、充填ガスの圧力が低下するが、ガス溶解製品中に溶解された第1のガスの第1の圧力以下に低下することは決してない。従って、本発明は、ガス溶解製品中に溶解されたガスの濃度を、小出しする間、維持することを可能にする。
【0011】
従って、本発明は、他の側面において、貯蔵及び小出し中の、ガス溶解製品中に溶解されたガスの濃度変化を防止するようにガス溶解製品を包装する方法を提供する。本発明の方法は、
(a)第1のガスを第1の圧力で溶解させたガス溶解製品を用意する工程と、
(b)ガス溶解製品の保持し且つ小出しするための組立体を用意する工程と、を有し、この組立体は、シールされた剛性の外容器と、ガス不透過性材料で作られ、外容器内に気密に配置され且つ外容器との間に空間を形成する可撓性内容器と、内容器内に収容されたガス溶解製品と流体連通している製品ディスペンサと、を有し、
(c)更に、第2のガスを外容器と内容器との間の空間内に、第1の圧力よりも高い初期充填圧力で充填する工程と、
(d)ガス溶解製品を内容器内に充填する工程と、を有する。
【0012】
第1のガスと第2のガスとは、同じガスであってもよいし、異なるガスであってもよい。ガス溶解製品の第1のガスは、不飽和であってもよいし、飽和であってもよいし、過飽和であってもよい。
【0013】
溶解ガスを含有する製品は、ミルク、クリーム、ローション、ゲル、ペースト、スプレー、およびエアロゾル発泡体からなるグループから選択される形態をなすのがよい。1つの実施形態では、溶解ガスを含有する製品は、酸素が飽和したフルオロカーボン(FC)エマルションを有する。治療薬および化粧品の利点を達成するためには、エマルション中の酸素濃度は、エマルションの1ml当たり、標準温度および圧力(STP)における少なくとも約0.3mlの酸素であることが好ましい。
【0014】
本発明は、ガス含有製品の貯蔵および小出しを行う従来の包装体および包装方法に勝る多くの経済的および技術的長所を有する。本発明の組立体は、溶解ガス濃度すなわちガス溶解度を変化させることなく製品の頻繁な小出しを可能にするので、製品は、各適用例において一定の溶解ガス濃度を有する。また、本発明では、ガスが制御された状態で包装前に製品の中に混合されるので、溶解ガスの正確な所望の濃度を有するガス飽和製品を容易に作ることができる。最後に、溶解ガスを含有する製品を包装する本発明の方法は、確実で、簡単かつ安価である。
【0015】
溶解ガスを含有する本発明の包装された製品は、酸素および二酸化炭素等のガスの皮膚への局部的な小出しが望まれる適用例に使用するのに良く適している。例えば、溶解された酸素または二酸化炭素を含有する化粧品配合物および治療薬配合物を、本発明の方法に従って包装するのがよい。本発明の包装された化粧品および治療薬製品は、美容室および診療所において、熟練したスキンケア専門家または医療従事者が、または家庭で消費者が便利に使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の上記および他の特徴およびこれらを達成する方法は、添付図面を参照して述べる以下の説明により最も良く理解されよう。これらの図面は、本発明の典型的な実施形態を示すに過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【0017】
本発明の目的から、以下の用語を次のように定義する。
【0018】
ガス溶解製品とは、任意のガスが溶解されたあらゆる配合物をいう。ガスが溶解されているものである限り、使用される配合物の種類に特別な制限はない。例えば、配合物は、溶剤、溶液、エマルション、懸濁液、ゲルまたは他の任意の所望の液体または半固体ガス溶解製品である。配合物は、それが液体であれば、炭化水素または他の非水混和性液体等の水性または非水性配合物である。また、製品の粘度は限定されない。例えば、製品は低粘性溶液であってもよいし、粘性エマルションであってもよいし、ゲルであってもよい。
【0019】
ガス飽和製品とは、溶解ガスが、純粋ガスの等価分圧と熱力学的平衡状態にある製品をいう。ガスの分圧は、ガスの混合物中の1つのガスによって付与される圧力であると定義され、成分ガスの結合分圧は、ガスの混合物の合計圧力と等しくなる。1種類のみのガスが存在する場合には、ガスの分圧は、ガスの合計圧力と等しい。ガス混合物が存在する場合には、成分ガスの分圧は、成分ガスのモル分率に合計圧力を掛けたものになる。従って、溶解ガスが不飽和である製品は、純粋ガスの等価分圧に晒されるとき、より多くのガスを溶解できる能力を有し、溶解ガスが過飽和である製品は、溶液からガスを解放する傾向を有している。
【0020】
フルオロカーボンとは、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたフッ素化炭化水素である。
【0021】
ペルフルオロカーボンとは、必須というわけではないが、一般に、周囲温度および周囲圧力で液体であり、実質的にフッ素化されまたは完全にフッ素化され、酸素および二酸化炭素等のガスに対する高い溶解性を有する材料である。本明細書における「実質的にフッ素化され」とは、化合物の大部分の水素原子がフッ素原子により置換されていることをいい、このため、更なる置換によって化合物のガス溶解性が実質的に増大することはない。このレベルは、少なくとも約80〜90%の水素原子がフッ素原子によって置換されたときに到達する(米国特許第4,569,784号参照)。
【0022】
エマルションとは、安定した(非凝集の)小滴または微小滴の形態をなす第2不混和液中に、乳化剤を用いて(または用いることなく)分散された液体からなる系をいう。
【0023】
連続相とは、流体要素が互いに接触しており隔絶されていないエマルションのキャリヤ相をいう。
【0024】
不連続相とは、流体要素が小滴または微小滴の形態で互いに分離されかつ隔絶され、またはミセル内に収容されているエマルションの相をいう。
【0025】
増粘剤とは、液体混合物中に添加されたときにその粘度または流れ抵抗性を増大させる特性を有する薬剤である。
【0026】
本発明は、その第1の側面において、第1の圧力で第1のガスが溶解された製品と、ガス溶解製品を保持しかつ小出しする組立体と、を有する包装されたガス溶解製品を提供する。第1のガスは、適用例に望まれる任意のガスである。例えば、1つの実施形態では、第1のガスは酸素であり、製品は化粧品または治療薬製品である。他の実施形態では、第1のガスは二酸化炭素であり、製品は化粧品である。製品は、ガスが不飽和であってもよいし、飽和であってもよいし、過飽和であってもよい。製品は、実質的に任意の形態にすることができる。例えば、製品として、ミルク、クリーム、ローション、ゲル、ペースト、液体、溶液、スプレーおよびエアロゾル発泡体からなるグループから選択される形態をなす。
【0027】
図1に示すように、組立体は、シールされた剛性の外容器1と、ガス不透過性材料で作られ且つガス溶解製品を保持する可撓性の内容器2と、この内容器2内に収容されたガス溶解製品と流体連通している製品ディスペンサ3とを有している。内容器2は、外容器1内に気密に配置されており、それにより、内容器2と外容器1との間には空間4が形成されている。この空間4には、初期充填圧力で第2のガスが充填されている。この第2のガスの初期充填圧力は、第1の圧力よりも高い。
【0028】
本発明に使用する剛性の外容器1は、第2のガスの圧力に耐え得る限り、特別な制限は全く課されない。例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、スチールまたはブリキで作られた金属容器、アセタール樹脂またはポリカーボネート樹脂、金属、プラスチックおよび被覆紙からなる積層材料で作られた合成樹脂容器、またはガラス容器を使用できる。同様に、可撓性の内側バッグも、可撓性を有する任意のガス不透過性材料で作ることができる。本発明の目的のために、材料が可撓性であるとは、材料がそれ自体に構造的損傷を受けることなく可逆的に変形できることである。材料がガス不透過性であるとは、材料がそれを通るガスの拡散を実質的に防止することである。本発明の好ましいガス不透過性材料は、50 cc−ミル/m2−24時間−大気圧(cc-mil/m2-24hr-atm)以下のガス透過性を有する。本発明の好ましい実施形態による適当な外容器1を図2に示す。
【0029】
図3に示すように、内容器2に使用される材料の例として、金属、箔、プラスチックフィルム、被覆紙または変性紙があり、単層構造または積層構造にすることができる。材料は、内容器2内の溶解ガスおよび内容器2と外容器1との間の空間内の圧力を維持するのに使用されるガスに対する不透過性を有するものでなくてはならず、且つ、包装の種々の内容物に対する必要な強靱性および化学的抵抗性を有する。積層構造に使用される材料は、単独でまたは組合せにより、内容器に所望の特性を付与するものが選択される。適当な積層構造の一例として、ナイロン、アルミニウムおよびポリプロピレンの積層体がある。この実施形態では、積層体の内層、即ち、内容器2内に収容された製品に直接接触する層は、ポリプロピレンである。この実施形態では、ポリプロピレンにより、内容器2内に収容される製品に対する化学的抵抗性を付与する。この実施形態での積層材料の中間層は、必要なガス不透過性を付与するアルミニウムである。外容器1内の圧力を維持するのに使用され且つガスに直接接触する外層は、ナイロンであり、ナイロンは更に強靱性を付与する。積層構造の他の実施形態は、セロファンの外層と、ポリエチレンの第2層と、接着剤(例えばカゼイン)の第3層と、ポリエチレンの最内層とからなる。
【0030】
製品内に溶解される種々のガス、または、外容器1内の圧力を維持するのに使用される種々のガスに合わせて、異なる材料を使用してもよい。例えば、第1ガスが酸素である場合、不透過性材料は、アクリロニトリル−メタクリレートコポリマー、グラフトされたニトリルゴム、アルミニウム箔、ポリビニリデンおよび塩化物セルロース等のニトリルのポリマーおよびコポリマーからなるグループから選択されるのがよい。
【0031】
1つの実施形態では、整理番号35,540の米国特許出願に詳細に説明されているように、内容器2は、ガセット、即ち、まち付きの底を形成するように1つの縁部に沿って折畳まれ、他の3つの縁部に沿ってシールされる。内容器2に製品が充填されると、内容器2が膨脹し且つガセット部分が外容器1の底に沿って拡大する。もし内バッグが自由空間内に吊下げられると、製品の質量は、外容器1の底に載るのではなく、内容器とディスペンサとの間の接合部によって支持されることになるので、製品が内バッグ内にあるとき、ガセットは、製品ディスペンサ3と内容器2との間のシールに過度の力が作用することを防止するのに役立つ。ガセットは、バッグがより均一にかつより完全に充填されるように、充填作業を制御する。
【0032】
製品ディスペンサ3は、製造時に内容器内に製品を注入しかつ消費者の使用時に製品を小出しするための標準弁組立体を有するのがよい。変形例として、整理番号35,540の米国特許出願に開示されているように、内容器と弁組立体との強化連結箇所を構成するクサビ型コネクタを使用してもよい。弁は、ナイロン、302ステンレス鋼、ブナ−N(登録商標)およびガラス充填ポリプロピレンを含む1以上の材料で作られるのがよい。弁は、所望の製品流量に応じて寸法が変化するオリフィスを有するのがよい。製品を内容器2に充填し且つそれを内容器2から小出しするとき、本発明の組立体に使用される標準型の弁により、製品は、制限オリフィスによって引き起こされる剪断に晒される。使用される他の弁は、内容器2を充填するときに製品が制限オリフィスの周囲を流れることを可能にする一方向バイパス構造を有している。この種類の弁の使用に関連して、次に示す幾つかの利点が得られる。
1.製品が剪断に敏感である場合、製品を使用のために容器から小出しするとき、制限オリフィスを通過するときの高剪断に1回しか晒されない。
2.充填時間および剪断が問題にならないので、より小型でより制限的なオリフィスを使用できる。このことは、より制御された小出しを行うために高圧で取扱われる製品に特に有効である。
3.製品が制限オリフィスを迂回することによって、容器を充填するのに必要な時間を短縮できるため、製造プロセスの効率を向上させる。
【0033】
特に粘性製品の場合、製品の流れを促進させ且つ排出パーセンテージを増大させるフロー装置5を使用するのがよい。フロー装置5は、内容器2のほぼ全長にわたって延びるのがよい。外部から加圧される可撓性容器は、約60%の製品が送出された後、容器の中心の周りでつぶれ始める。粘性材料を使用するか、軽量構造のバッグである場合には、このつぶれ作用により内容器2を閉鎖し、ディスペンサのいちばん上の出口への製品の流れを邪魔する。内容器の出口の真下に位置するフローデバイス5は、内容器2の頂部および底部に捕捉された材料の両方の流れを維持する。フローデバイス5は、整理番号35,540の米国特許出願に開示されているように、多くの形状をとることが可能である。フローデバイス5は、たとえ内容器2がつぶれ始めたときでも、内容器2の底部の製品を、製品ディスペンサ3に導くことを可能にする。
【0034】
内容器2は、外容器1内への挿入を容易にするため、管状に巻かれるのがよい。また、図4に示すように、内容器2が外容器1内に配置されかつ製品がバッグ内に注入されるまで内容器2をつぶれた状態に且つ巻かれた状態に維持するために、整理番号35,540の米国特許出願に開示されているように、解放可能な拘束具6を使用してもよい。
【0035】
内容器と外容器との間の空間を満たす第2のガスは、内容器2の壁を透過することができない任意のガスである。第2のガスは、製品中に含まれる第1のガスと同じガスでもよいし、異なるガスでもよい。第2ガスの例は、限定するわけではないが、液化石油ガス(LPG)、ジメチルエーテル、窒素、二酸化炭素ガス、酸素、及びそれらの任意の組合せを含む。好ましくは、第2のガスは、不活性の非爆発性ガスであり、例えば、窒素、二酸化炭素、又は、ヘリウム又はアルゴン等の希ガスの1つである。第2のガスは、好ましくは、製品を小出しするための非接触推進剤として役立ち、製品の完全な送出、即ち、送出される全充填重量の95%よりも多い送出を可能にする。
【0036】
内容器1を充填した後、外容器1が第2のガスの圧力に絶え得る限り、且つ、第2ガスの充填圧力が、溶解された第1のガスの分圧よも高い限り、第2のガスの圧力は制限されない。1つの実施形態では、第1の圧力は、約15〜250psigであり、第2の圧力は、約50〜300psigである。第2のガスの圧力が第1のガスの分圧よりも高いままであれば、圧力仕様に影響を与えることがある他の考慮すべき事項は、製品の粘度、所望の小出し力および容器寸法である。
【0037】
1つの実施形態では、ガス溶解製品は、フルオロカーボン(FC)エマルションを有し、これは、例えば、係属中の米国特許出願第10/253,572号明細書に開示されているフルオロカーボン(FC)エマルションである。簡単にいえば、FCエマルションは、連続的な水相と、この水相内に小滴として懸濁されているFCを含む不連続相とを有する。この場合、FCエマルションは、更に、乳化剤および安定剤を有し、安定剤は、FC小滴が連続水相内で移動する能力を低下させ、FCエマルションは酸素を搭載している。
【0038】
適当なFCは、限定するわけではないが、線状分岐環状フッ素化炭化水素コンパウンド、およびこの誘導体および混合物を含む。FCは、ペルフッ素化フルオロカーボン(PFC)であってもよい。許容できるPFCの例は、限定するわけではないが、C6−C9ペルフルオロアルカン、ペルフルオロペルヒドロフルオランテン、ペルフルオロペルヒドロフルオラトレン、ペルフルオロデカリン、ペルフルオロペルヒドロフェナントレン、ビス(ペルフルオロ−ヘキシル)−1,2−エテン、ペルフルオロ−1,3−ジメチルシクロヘキサン、ペルフルオロメチルデカリン、ペルフルオロイソプロピルデカリン、ペルフルオロジキシリルメタンとペルフルオロジキシリルエタンとの混合物、ペルフルオロペルヒドロフェナントレンとペルフルオロn−ブチルデカリンとの混合物である。FCエマルションは、約2〜90%(wt/wt)、好ましくは約10〜70%(wt/wt)の量のFCを含有してもよい。しかしながら、これらの範囲を外れた範囲のFC濃度を使用してもよい。
【0039】
FCを分散させることが可能な任意の乳化剤を使用してもよい。しかしながら、環境的関心から、乳化剤は非フッ素化コンパウンドであるのが好ましい。生体適合性のあるかかる非フッ素化コンパウンドの例は、限定するわけではないが、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのブロックコポリマー、リン脂質、および、ソルビタンの脂肪酸エステルのポリオキシエチレン誘導体を含む。1つの実施形態では、水素化リン脂質が使用される。水素化リン脂質は、水素化ホスファチジルコリン、リゾホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファノ脂質、ホスファチジン酸、およびこれらの混合物からなる群から選択されるのがよい。好ましい実施形態では、水素化リン脂質は、水素化ホスファチジルコリンである。一般に、乳化剤は、約1〜15%(wt/wt)の範囲内の量で使用される。
【0040】
安定剤は、FC小滴が連続相内で移動する可能性を低下させるコンパウンドである。安定剤は、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、グリセリルステアリン酸塩、ポリオキシエチル化脂肪酸(PEG−75ステアリン酸塩)、セチルアルコールのポリエチレングリコールエーテル(セテス−20)、ステアリルアルコールのポリエチレングリコールエーテル(ステアレス−20)、水素化ホスホチジルコリン、およびこれらの混合物からなるグループから選択される。一般に、安定剤の量は、約0.05〜20%(wt/wt)の範囲内にある。好ましくは、安定剤の量は、約0.5〜5%(wt/wt)の範囲内にある。1つの実施形態では、水素化ホスホチジルコリンは、安定剤および乳化剤の両方として使用される。
【0041】
1つの実施形態では、ガス溶解製品は、酸素化FCエマルションおよび化粧品添加物を含む化粧品である。本発明の化粧品配合物の意図した用途の種類に応じて、化粧品添加物は、脂肪物質、溶剤、シリコーン、軟化剤、増粘剤、発泡防止剤、加湿剤、栄養剤、ビタミン、ミネラル塩、緩衝剤、保湿剤、増量剤、金属イオン封鎖剤、界面活性剤、ポリマー、推進剤、防腐剤、着色剤、緩衝剤、テクスチャ増強コンパウンド、日焼け止め剤、酸化防止剤、遊離基掃去剤、キレート化剤、香料、および加工助剤からなるグループから選択される。
【0042】
他の実施形態では、ガス溶解製品は、酸素化FCエマルションを含む治療薬製品である。本発明の酸素化治療薬配合物は、前掲の薬剤または店頭処方(over-the-counter:OTC)製品としての用途に良く適している。従って、本発明の酸素化治療薬配合物は、薬剤的な活性成分を更に含有させてもよい。本発明の目的のために、ある成分が開いた傷すなわち皮膚に付けられたとき、検出可能な生物学的効果を生じさせるならば、その成分は薬学的に活性である。かかる薬学的活性成分は、当業者に良く知られている。例えば、薬学的活性成分は、抗菌剤、抗ヒスタミン剤、抗炎症剤、縮瞳薬、散瞳薬、抗緑内障薬、抗ウイルス薬、炭酸脱水酵素阻害薬、抗真菌薬、麻酔薬、免疫抑制剤、ビタミン、栄養剤およびこれらの混合物からなるグループから選択される。
【0043】
本発明の化粧品配合物又は治療薬配合物を酸素で飽和させるように処理して、処理しないときよりも多い酸素を含ませることによって、かかるコンパウンドに酸素が添加される。典型的には、本発明の化粧コンパウンドまたは治療コンパウンド中の酸素濃度は、1大気圧のFCエマルション1ml当たり、標準の温度および圧力(STP)における少なくとも約0.3mlの酸素である。
【0044】
本発明の化粧品配合物又は治療薬配合物は、酸素を過飽和させるのがよい。例えば、1つの実施形態では、化粧品配合物又は治療薬配合物中の酸素濃度は、FCエマルション1ml当たり、少なくとも約1mlの酸素(STP)である。他の実施形態では、化粧品配合物又は治療薬配合物中の酸素濃度は、FCエマルション1ml当たり、少なくとも約2mlの酸素(STP)である。通常、化粧品配合物又は治療薬配合物中の溶解酸素の等価分圧は、少なくとも約760mmHgであり、上述した例では、760mmHgをかなり越えている。
【0045】
典型的な実施形態では、最初、内容器と外容器との間の空間を第2ガスで充填し、シールする。次に、内容器2をガス溶解製品で充填し、組立体をシールする。内容器をガス溶解製品で充填するとき、内容器と外容器との間のシール容積が減少することにより、第2ガスの圧力が増大する。ガス溶解製品を内容器2から小出しし、缶から強制的に放出させると、第2のガスの圧力は、ガス溶解製品が内容器2内に導入される前に付与された一定内部圧力に向かって徐々に低下し、その結果、第2ガスの圧力は、ガス溶解製品中に溶解されたガスの等価分圧以下の圧力に低下することは決してない。従って、本発明は、ガス溶解製品中に溶解されたガスの濃度を、小出しする間、一定に維持することを可能にする。
【0046】
従って、本発明は、他の側面において、貯蔵及び小出し中の、ガス溶解製品中に溶解されたガスの濃度変化を防止するようにガス溶解製品を包装する方法であって、
(a)第1のガスを第1の圧力で溶解させたガス溶解製品を用意する工程と、
(b)ガス溶解製品の保持し且つ小出しするための組立体を用意する工程と、を有し、この組立体は、シールされた剛性の外容器と、ガス不透過性材料で作られ、外容器内に気密に配置され且つ外容器との間に空間を形成する可撓性内容器と、内容器内に収容されたガス溶解製品と流体連通している製品ディスペンサと、を有し、
(c)更に、第2のガスを外容器と内容器との間の空間内に、第1の圧力よりも高い初期充填圧力で充填する工程と、
(d)ガス溶解製品を内容器内に充填する工程と、を有する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の1つの実施形態によるガス溶解製品の保持および小出しを行う組立体を概略的に示す図である。
【図2】外容器の一部を破断した、本発明の1つの実施形態を概略的に示す図である。
【図3】製品小出し手段が取付けられ且つ内容器が非折畳み位置にある、本発明の1つの実施形態を一部破断して示す概略図である。
【図4】本発明の他の実施形態によるガス溶解製品の保持および小出しを行う完全組立体を示す概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装されたガス溶解製品であって、
第1のガスを第1の圧力で溶解させたガス溶解製品と、
前記ガス溶解製品を保持し且つ小出しするための組立体と、を有し、
前記組立体は、シールされた剛性の外容器(1)と、ガス不透過性材料で作られ、前記ガス溶解製品を保持し、前記外容器(1)内に気密に配置され且つ前記外容器(1)との間に空間(4)を形成する可撓性内容器(2)と、前記内容器(2)内に収容された前記ガス溶解製品と流体連通している製品ディスペンサ(3)と、を有し、
前記空間(4)内に、第2のガスが前記第1の圧力よりも高い初期充填圧力で充填されることを特徴とする、包装されたガス溶解製品。
【請求項2】
前記外容器は、金属、プラスチック、ガラス及びこれらの積層体からなるグループから選択された材料で作られ、且つ/又は、前記内容器は、可撓性プラスチック、金属、紙及びこれらの積層体からなるグループから選択された材料で作られる、請求項1に記載の包装されたガス溶解製品。
【請求項3】
前記内容器は、ガセット付きの底を有し、前記内容器の底は、前記外容器の内部キャビティの底に当接する、請求項1又は2に記載の包装されたガス溶解製品。
【請求項4】
前記製品ディスペンサは、更に、前記ガス溶解製品を前記内容器内に注入し且つ前記ガス溶解製品を小出しするための弁組立体を有する、請求項1〜3の何れか1項に記載の包装されたガス溶解製品。
【請求項5】
前記第2のガスは、前記ガス溶解製品を小出しするための非接触推進剤として機能する、請求項1〜4の何れか1項に記載の包装されたガス溶解製品。
【請求項6】
フローデバイスが、前記製品ディスペンサと前記内容器内に収容されたガス溶解製品との間の流体連通部として機能する、請求項1〜5の何れか1項に記載の包装されたガス溶解製品。
【請求項7】
前記第1のガスと前記第2のガスとは同じである、請求項1〜6の何れか1項に記載の包装されたガス溶解製品。
【請求項8】
前記第1のガスと前記第2のガスとは異なる、請求項1〜7の何れか1項に記載の包装されたガス溶解製品。
【請求項9】
前記第1のガスは酸素である、請求項1〜8の何れか1項に記載の包装されたガス溶解製品。
【請求項10】
前記ガス溶解製品は、前記第1のガスが飽和又は過飽和である、請求項1〜9の何れか1項に記載の包装されたガス溶解製品。
【請求項11】
前記ガス溶解製品は、フルオロカーボンエマルションを有する、請求項1〜10の何れか1項に記載の包装されたガス溶解製品。
【請求項12】
前記フルオロカーボンエマルションは、連続水相と、この連続水相中に小滴として懸濁されたフルオロカーボンを含む不連続相と、を有し、フルオロカーボンエマルションは、更に、乳化剤および安定剤を有し、安定剤は、フルオロカーボンの小滴が連続水相中で移動する能力を低下させる、請求項11に記載の包装されたガス溶解製品。
【請求項13】
前記安定剤及び乳化剤は両方とも、水素化リン脂質である、請求項12に記載の包装されたガス溶解製品。
【請求項14】
前記前記ガス溶解製品は、フルオロカーボンエマルションを有する化粧品又は治療薬製品であり、前記第1のガスは酸素である、請求項1〜13の何れか1項に記載の包装されたガス溶解製品。
【請求項15】
前記フルオロカーボンエマルション中の酸素濃度は、フルオロカーボンエマルションの1ml当たり、少なくとも約0.3mlの酸素(STP)であり、且つ/又は、前記ガス溶解製品中の溶解酸素の等価分圧は、少なくとも約760mmHgである、請求項14に記載の包装されたガス溶解製品。
【請求項16】
前記ガス溶解製品は、ミルク、クリーム、ローション、ゲル、ペースト、スプレー、およびエアロゾル発泡体からなるグループから選択される形態をなす、請求項1〜15の何れか1項に記載の包装されたガス溶解製品。
【請求項17】
貯蔵及び小出し中の、ガス溶解製品中に溶解されたガスの濃度変化を防止するようにガス溶解製品を包装する方法であって、
(a)第1のガスを第1の圧力で溶解させたガス溶解製品を用意する工程と、
(b)ガス溶解製品の保持し且つ小出しするための組立体を用意する工程と、を有し、この組立体は、シールされた剛性の外容器と、ガス不透過性材料で作られ、外容器内に気密に配置され且つ外容器との間に空間を形成する可撓性内容器と、内容器内に収容されたガス溶解製品と流体連通している製品ディスペンサと、を有し、
(c)更に、第2のガスを外容器と内容器との間の空間内に、第1の圧力よりも高い初期充填圧力で充填する工程と、
(d)ガス溶解製品を内容器内に充填する工程と、を有する方法。
【請求項18】
前記ガス溶解製品は、フルオロカーボン(FC)エマルションを含有する化粧品又は治療製品であり、前記第1のガスは酸素である、請求項17に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2006−518653(P2006−518653A)
【公表日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−503822(P2006−503822)
【出願日】平成16年2月24日(2004.2.24)
【国際出願番号】PCT/US2004/005360
【国際公開番号】WO2004/076313
【国際公開日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(500558698)シアロックス インコーポレイテッド (6)
【Fターム(参考)】