説明

ガス漏洩点検器具

【課題】 ガス配管内の通過ガスの温度とガス配管の周辺における雰囲気の温度との差がないか乃至は小さいか、および/または漏洩ガス量が少なくても、漏洩ガスを検出し、ガス漏洩箇所を検知・点検することができる器具および方法を提供する。
【解決手段】 ガス流検知部およびガス成分検知部が支持具の一端領域に設けられてなることを特徴とする携帯用ガス漏洩点検器具。前記一端領域には、さらにガス温度検知部が設けられてもよい。前記支持具の他端寄りに前記各検知部の検知結果を表示する表示部を備える。前記支持具は、伸縮自在とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス漏洩点検器具、特にはプラントでの日常点検などにおいて用いられる携帯用ガス漏洩点検器具に関する。
【背景技術】
【0002】
プラント内の煙道、ガス配管、ガスタンクおよびガス配管機器などについては、通常、所定の期間ごとガス漏洩の有無について日常点検が行われる。そのための検知器としては、点検対象となるガスの種類や性状に応じて多くの種類が公知となっている。例えば、煙道ガスのように外気温度よりも高温の場合には、当該煙道からのガス漏洩は、赤外線サーモグラフを用いてある程度離れた位置で非接触にて検知でき、漏洩箇所も特定できる。しかし、赤外線サーモグラフは、ガス温度と外気温度との差がほとんどない場合や低温ガスの場合には、ガス漏洩の有無などを特定することは困難である。
【0003】
一方、高圧ガス、配管内流速の大きいガスまたは有害ガスなどでは、これらのガスがガス配管などから漏洩する場合、点検者が視覚、聴覚および臭覚などを用い、経験に基づいて凡その漏洩箇所を特定できるが、例えば、風速計やガス検知器などの検知器を用いることで、より確実に漏洩箇所を特定することが可能である。
【0004】
しかし、風速計やガス検知器を用いて点検を行う場合には、ガス配管などに接近して計測する必要があり、該ガス配管などにむやみに接近することは点検者の安全性の点で問題がある。また、ガス漏洩の有無などを調べる通常の点検において、これらの検知器を各々携行し、個々の配管、機器ごとに切り換えて点検することは非常に煩雑である。
【特許文献1】特開平10−300079号公報
【特許文献2】実開平5−17793号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑み、ガス配管などに存在するガスの種類や性状などが異なる場合でも、1台でガスの漏洩検知に対応可能であり、安全に点検できる携帯用ガス漏洩点検器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、本発明によれば、ガス流検知部およびガス検知部が支持具の一端領域に設けられてなることを特徴とするガス漏洩点検器具が提供される。
【0007】
本発明のガス漏洩点検器具には、その支持具の一端領域に温度検知部が設けられていてもよい。これら各検知部の配置は、これらの形状などを考慮して適宜設定できるが、相互に近接して配置されるのが好ましく、またガス流の有無の検知精度を高めるためには、ガス流検知部を点検対象に最も近接した位置に設けることがより好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明のガス漏洩箇所点検具は、構造が簡単で、携帯可能であり、1台で簡便かつ安全に種々のガスの漏洩の有無を検知し、正確に漏洩箇所を特定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のガス漏洩点検器具は、ガス流検知部およびガス成分検知部、またはこれらとガス温度検知部とが、支持具の一端領域に配置固定された構造を有する。
【0010】
ガス流検知部は、気体の流れを検知することができるものであればいずれの測定方式であってもよく、従来公知の風速計や風向風速計などを使用できる。風速計としては、例えば熱線式、風車型(ビラム型)、ピトー管式およびレーザー式などが挙げられる。また、風向風速計としては、風車型および超音波式などが挙げられる。これらは、外観の形状や支持具との取り付けなどを考慮して、適宜選択すればよい。
【0011】
ガス成分検知部としては、ガス中の特定成分を1種類または2種以上定性的または定量的に検知できるいわゆるガス検知器と呼ばれるものが好適に使用できる。通常、検知可能な一酸化炭素、炭酸ガス、硫化水素、塩素、二硫化硫黄、二酸化窒素、アンモニアおよびシアン化水素などの無機ガス、メタン、イソブタン、ホルムアルデヒド、エチレンオキサイド、ベンゼン、トルエンおよびメタノールなどの有機ガスや蒸気などが挙げられる。このガス検知器には吸引方式およびプローブを備えた接触式方式などがあり、本発明においては両者のいずれをも使用することができる。また、臭気計なども使用できる。漏洩の可能性があるガスが特定できる場合、そのガス成分に対応して上記ガス検知器を選択でき、漏洩の可能性のあるガスが複数成分の混合物である場合や点検場所に異なる種類のガス配管が多数敷設されている場合などには、複数のガス成分を同時に検知できる複合型ガス検知器を使用できる。
【0012】
ガス温度検知部としては、例えば測温抵抗体および熱電対などを挙げることができる。これらは、シース管や保護管内に収納されていてもよい。
【0013】
上記各検知部は、それ自体が表示器を一体に備えていてもよいが、分離可能に装備していてもよい。前者の場合、それぞれの計測結果を外部に信号出力できる機能を有していることが好ましい。上記外部出力機能は、別体として配置される表示器と信号線を介して接続されてもよく、無線によって検知結果が転送可能とされていてもよい。また、後者の場合、有線または無線で検知結果を表示器に転送できるものであることが好ましい。
【0014】
支持具は、一端領域に、他端を点検者が把持できる長軸体であれば特に制限されず、円筒および角筒などの管体、丸棒および角棒など柱体ならびに細長い長方形の板のような細長い板体などのいずれであってもよい。好ましくは、強度や軽量性(携帯性)を考慮して、管体とするのがよく、特に好ましくは、その長さを伸縮自在に変えられるものがよい。具体的には、径の異なる複数の管体からなり、径の小さな管体を径の大きな管体の中にそれぞれ収納し、各管体の一端には内部に収納した管体を引き出して任意の位置で固定する固定手段を備えたものなどが挙げられる。このように支持具を伸縮自在とし、支持具を延ばした状態でガス漏洩の有無および漏洩箇所の特定が可能となり、点検者の安全が確保される。
【0015】
上記ガス流検知部とガス成分検知部、またはこれらとガス温度検知部とは、上記支持具の一端領域に配置固定される。これらの検知部は、公知の固定具を用いて支持具の一端領域にそれぞれ別個に固定してもよく、1個の台座にそれぞれ近接して固定し、当該台座を上記一端領域に固定するようにしてもよい。後者の場合、台座はこれら各検知器を装着した状態で、前後左右に回動可能なように、上記支持具と自在継手などを介して連結されることが好ましい。
【0016】
上記支持具の他端寄りには、各検知器の検知結果を表示可能な表示器を設けることができる。この表示器は、その表面などに表示窓を備え、デジタル表示もしくはアナログ表示、またはこれらがいずれも表示可能なものがよい。また、この表示器は、支持具他端寄りの部分への取り付け位置や固定方法には特に制限なく、上記支持具の断面形状に応じて適宜選択された公知の固定具を用いて該支持具に固定できる。
【0017】
また、上記各検知部は、ガス配管周辺を流れる風による影響を軽減するために、板状または管状の防風装置で覆うことが好ましい。このような防風装置を使用することで、漏洩ガスの風道を形成することができる。防風装置は、公知の固定具及び固定方法を使用することで固定できる。
【0018】
以下、添付図面を参照して本発明をより詳細に説明するが、本発明は図面に示された実施形態に限定されるものではない。なお、以下の各図面では、同一または共通の各部について同一の符号を用いることとする。
【0019】
図1は、本発明のガス漏洩点検器具の実施形態の一例を示す斜視図である。この図において、ガス漏洩点検器具1は、支持具40の一端領域に風車型風速計(ガス流検知部)10、ガス検知器(ガス成分検知部)20および測温抵抗体(ガス温度検知部)30が配置されている。これらの検知器は、支持具40の一端に設けられた台座41に固定され、当該台座41の側面に係合され、上記各検知部を覆うように円筒状の防風装置11が設けられている。この防風装置11としては、透明な耐熱性材料などを好適に使用できる。また、支持具40の他端寄りには、これらの検知器の計測結果を表示する表示窓51,52,53を備えた表示器50が設けられている。
【0020】
風車型風速計10は、その風車の回転面に直接漏洩ガス流を受けられるように他の検知器よりも前面側(図に向かって左側)、すなわち点検対象であるガス配管などの外面に最も近い位置に配置される。ガス検知器20および測温抵抗体30は、図1に示すように、円筒体11内において、風車型風速計20に近接してその直下および後流に配置されている。なお、ガス検知器20および測温抵抗体30については、風車型風速計10に近接して設けられていれば、上記配置に限定されない。
【0021】
支持具40は、径を異にする複数の円筒状のパイプ片42、43、44を順次組み合わせた構成とされ、小径のパイプ片42、43はそれぞれ外管となるパイプ片43,44から摺動させながら引き出し可能とされ、パイプ片43、44の一端には、それぞれパイプ片42、43を引き出した状態で固定可能な固定手段43a、44aが設けられている。パイプ片42はその自由端に自在継手41aを介して台座41が連結され、当該台座41は支持具40の一端領域で前後左右に回動自在とされている。
【0022】
本実施形態に係るガス漏洩点検器具1は、使用に際して支持具40を適度な長さに延ばした状態でガス配管(不図示)の外周面に沿って防風装置11の前方側を近接させた状態で移動させる。ガス配管より内部のガスが漏洩している場合には、ガスの性状や漏洩状態などによってガス流検知部10、ガス成分検知部20およびガス温度検知部30の少なくとも1つがこれを検知して表示器50の表示を変動させる。その結果、作業者の支持具40の表示器側にいながら、防風装置11の前方側に対面する箇所からガスが漏洩していることを察知することができる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明のガス漏洩検知器具は、プラント内に敷設されたガス配管や配管機器などのガス漏洩点検に使用できる。特に、ボイラー設備におけるガス配管などに好適に使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明のガス漏洩点検器具の実施形態の1例を示す図である。
【符号の説明】
【0025】
1 ガス漏洩点検器具
10 ガス流検知器
20 ガス成分検知器
30 ガス温度検知器
40 支持具
50 表示器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス流検知部およびガス成分検知部が支持具の一端領域に設けられてなることを特徴とする携帯用ガス漏洩点検器具。
【請求項2】
前記支持具の一端領域に、さらにガス温度検知部が設けられた請求項1に記載の携帯用ガス漏洩点検器具。
【請求項3】
前記支持具の他端寄りに前記各検知部の検知結果を表示する表示部を備えてなる請求項1または2に記載の携帯用ガス漏洩点検器具。
【請求項4】
前記支持具は、伸縮自在とされてなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の携帯用ガス漏洩点検器具。

【図1】
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【公開番号】特開2009−156739(P2009−156739A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−336115(P2007−336115)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】