説明

ガス燃焼機器の安全装置

【課題】ガス供給装置のガス遮断故障を検出し、使用者に知らしめてガス元栓を閉めるなどの適切な処置を促す安全装置の提供を目的とする。
【解決手段】バーナ2の近傍に熱電対7を設け、機器の燃焼動作が停止し電磁弁6aと比例弁6bを閉じてから熱電対がVeを超える起電力を出力してT時間経過したときはガス遮断故障とし、表示部9bとブザー9cとで故障発生を警告することにより、機器の故障を表面化できるので、使用者に適切な処置を促すための注意喚起となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炎検知センサによりガスの流出を検知するガス燃焼機器の安全装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のガス燃焼機器の安全装置は、機器が燃焼動作中において風の流れや酸素供給不足の状態に陥ることなどで消炎したことを炎センサで検出しガス供給装置を停止し、未燃ガスの流出を防止している(特許文献1参照)。
【0003】
前記特許文献1に記載されたガス機器は、炎検知センサである熱電対の起電力値の判定基準を、バーナ着火時の一定期間と、着火初期の一定期間と、その後の定常燃焼との各期間毎に設定し、各々の状況下で着火や消炎の最適な判断ができるように工夫されている。図4は、定常燃焼時にバーナが消炎し熱電対の起電力値が低下して5mV以下を3回連続して入力した時に途中消炎と判定し、安全動作とするためにガスの供給を停止するものである。また、起電力値が安定して5mVを上回る場合は起電力値を監視しながら燃焼動作を継続するものである。
【特許文献1】特開平7−217873号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の構成では、炎判定がされている期間は着火から定常燃焼までの機器が運転している状態に限られている。使用者の意思により機器の運転を停止する場合、ガス供給を遮断しバーナでの燃焼を停止させるのであるが、万が一電磁弁などによるガス供給装置が遮断不良の故障となった場合、ガスが継続して供給され、機器が停止した状態にも関わらず燃焼余裕の大きなバーナでは燃焼が継続する恐れが生じる。しかし、前記従来の構成では、機器が停止した状態においては炎の判定がなされないため、ガスの遮断不良による継続燃焼を検知することができないという課題を有していた。
【0005】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、機器停止時におけるガス供給装置の遮断不良による異常燃焼状態を使用者に知らしめ、機器の異常動作を早急に回避できるようにするガス燃焼機器の安全装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記従来の課題を解決するために、本発明のガス燃焼機器の安全装置は、制御装置が燃焼停止動作を行った以降に炎検知センサが炎を検知すると警告装置により警告を行うことを特徴とするものである。
【0007】
これによって、機器が停止したにも関わらずガス供給装置の遮断不良の故障で生じる異常燃焼状態の継続を炎検知センサで検知し、警告装置が機器の異常状態を警告し、使用者に機器の故障を知らしめ、ガス元栓を閉めるよう喚起することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明のガス燃焼機器の安全装置は、ガス供給装置の燃焼継続となる故障による異常燃焼やガス流出の継続を、使用者の適切な処置のもと回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
第1の発明は、ガス供給装置を介して燃料供給されるバーナと、前記バーナの近傍に設けた炎検知センサと、前記炎検知センサの信号で前記バーナの燃焼動作を制御する制御装置を備え、前記制御装置が燃焼停止動作を行った以降に前記炎検知センサが炎を検知すると警告装置により警告を行うことにより、ガス供給装置の遮断不良により生じる機器停止後のバーナでの燃焼状態を検知し、警告することで使用者に異常状態を知らしめることとなり、使用者のガス供給の停止処置に基づき、異常燃焼やガス流出の継続を回避することができる。
【0010】
第2の発明は、警告装置による警告の状態を通常の運転停止操作では解除不可能としたことにより、異常状態の警告が止ることなく継続することとなり、使用者に処置を促すための強い注意喚起をすることができる。
【0011】
第3の発明は、警告装置による警告が行われたことを不揮発性の記憶素子に記憶し、機器の再通電時に警告を行うことにより、機器の電源が遮断しても異常状態であったことを記憶して、再通電時に異常を警告することが可能となり、電源遮断があっても使用者に繰り返し注意喚起をすることができる。
【0012】
第4の発明は、操作装置を特殊操作することで不揮発性の記憶素子の記憶内容を消去できることにより、ガス供給装置の故障を修復するとともに、不揮発性の記憶素子より異常発生による警告があったことを消去することで、機器を修理して再使用することができる。
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本発明の実施形態によって本発明が限定されるものではない。
【0014】
(実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態におけるガス燃焼機器の安全装置の構成図を示すものである。
【0015】
図1では、ガス燃焼機器の一例としてガス温風暖房機を示しており、燃焼室1はバーナ2を内に設け、バーナ2の下部には送風用のファン3を設けてある。ファン3は駆動用のモータ4に接続してある。バーナ2にはガス導管5が接続されガス供給装置である元電磁弁6aと比例弁6bを介してガスの供給がなされる。元電磁弁6aはガス通路の開閉を、比例弁6bはガス通路の開閉とガス量調節の機能を有する。バーナ2の近傍で火炎10に接する位置に炎センサである熱電対7と点火装置8とを設けてある。熱電対7の検出した情報が制御装置9に入力されるようになされている。制御装置9はモータ4、元電磁弁6a、比例弁6bやその他の部分の動作制御を行う。また、制御装置9は、運転の指示や温度設定などを行う操作スイッチ部9a、温度や燃焼状態を表示する表示部9b、スイッチ操作などを音で知らせるブザー9c、不揮発性の記憶素子であるEEPROM9dを具備している。
【0016】
以上のように構成されたガス燃焼機器の安全装置について、以下その動作、作用を説明する。
【0017】
図2は、本発明の実施の形態におけるガス燃焼機器の安全装置のタイムチャートを示す。
【0018】
操作スイッチ部9aより機器への運転指示がなされると、ファン3の駆動用のモータ4と点火装置8が動作した後、元電磁弁6aと比例弁6bとが開弁してガスが供給される。ガスに引火しバーナ2で燃焼が開始すると熱電対7に起電力が出力され、起電力がVsを超えると着火検出して点火装置8が停止する。以降、燃焼が継続すると起電力は上昇し、ガス量に応じた燃焼量に合わせて安定する。図示はしないが、定常燃焼中に酸欠などにより消炎して起電力が低下しVb以下になると立消えを検出して安全動作となりガスを遮断する。ちなみに、Vsは3mV、Vbは10mV程度となる。
【0019】
次に、定常燃焼中に停止指示がなされると、元電磁弁6aと比例弁6bが閉弁しガスが遮断する。モータ4は機器を冷却するため所定時間ポストパージ動作を継続した後停止する。ガス遮断後、熱電対7の起電力は所定の時定数をもって減少し0mVに安定する(A)。
【0020】
ここで、もしも元電磁弁6aと比例弁6bがともに遮断不良となりガスが供給され続けるような故障となった場合、ガス供給量が最小燃焼時の1/2以下程度のわずかな漏れににおいてもバーナ2での燃焼が継続する可能性がある。その際、起電力の出力はガスの供給量により異なるが、少なくとも0mVに達せず何らかの値を出力することになる(B)。この起電力の挙動より、運転停止後に起電力がVeを超える値をT時間継続するような場合はガスの遮断不良の故障が生じたという判断が可能となる。実験的にではあるがTは5分、Veは0.5mV程度が適しているが、熱電対7の時定数や感度の違いにより最適値は異なると考えるのが良い。
【0021】
図3は、本発明の実施の形態におけるガス燃焼機器の安全装置のフローチャートを示す。
【0022】
図中の電源投入から運転モードまでの動作は後述することとし、まずは、運転モードを説明する。運転モードとは、機器が操作スイッチを受付け通常に運転動作を行える状態のことを言う。操作スイッチ部9aより運転指示がある(ステップS3でY)と、図2に示すように暖房運転を行い(ステップS4)、暖房運転中に停止指示がある(ステップS5でY)と元電磁弁6aと比例弁6bをオフ(ステップS6)とし、いわゆる停止状態となる。停止状態においても起電力を入力判定し、起電力がVeより大きい状態(ステップS7でY)で停止後T時間を経過した時(ステップS8でY)は、ガス弁を閉止しているにも関わらず残火があると判断でき、電磁弁6aおよび比例弁6bにガス遮断故障があったことが判る。ここで、制御装置9はEEPROM9dにガス遮断不良を書込み(ステップS9)、警告モードに移行する。
【0023】
警告モードとは、ガス遮断不良の発生を使用者に報知しガス元栓の閉止などの処置を使用者に促す状態のことを言う。制御装置9は、表示部9bの全ての表示素子を1Hzで点滅(ステップS10)とし、ブザー9cを鳴らし(ステップS11)機器の故障を報知する。警告モードでは、操作スイッチ部9aの特殊操作は判断する(ステップS12)が、操作受付により警告モードが終了することは無く(矢印イ)、電源供給がなくなるまで警告の表示と報知音は維持継続される。
【0024】
次に、電源投入時の動作を説明する。電源投入時、制御電装9はEEPROM9dの記憶データを読込み(ステップS1)、運転モード内で記憶されるガス遮断不良の有無を判定する(ステップS2)。遮断不良が無ければ運転モードに移行し、機器運転が可能となるが、遮断不良が有れば警告モードに移行し、警告を行い機器の運転が禁止される。
【0025】
また、警告モードでは、例えば運転スイッチ(図示せず)を押しながら温度設定スイッチ(図示せず)の上げ下げを規定回数行うなどの通常使用において行わない操作スイッチ部9aを特殊操作した時(ステップS12でY)、EEPROM9dに記憶されたガス遮断不良の記憶を消去する(ステップS13)ようになっている。消去後、電源遮断し再通電した際には、ガス遮断不良なし(ステップS2でN)と判断し、機器が運転可能な状態となる。
【0026】
このような動作はマイクロコンピューター(図示せず)のプログラムにより容易に実現することが可能である。
【0027】
以上のように、本実施の形態においては、機器停止後も熱電対7で炎の状態を監視し、電磁弁6aと比例弁6bを閉弁後も燃焼が継続し炎検知するならばガス弁が遮断不良であると判断でき、故障発生を表示素子とブザー9cで報知することにより、使用者にガス供給装置に関わる故障を視覚や聴覚で認識するように警告することで、使用者にガス元栓を閉めるなどの適切な処置を促すことができる。
【0028】
また、遮断不良を検出したときは表示素子とブザー9cでの報知を継続し解除できないことにより、故障状態を継続して表面化させ、使用者に強い注意喚起を促すことができる。
【0029】
また、遮断不良の発生をEEPROM9dに記憶することにより、電源を遮断されても故障発生したことを保持することができ、機器修理前に再通電され機器を使われようとしても故障状態を繰返し表面化させ、使用者に繰返し注意喚起を促すことができる。
【0030】
また、通常使用時とは異なる操作スイッチ部9aの特殊操作を行い遮断不良の情報を消去することにより、機器の運転が可能な状態にとなり、故障部分の修理がなされれば制御装置9を交換することなく機器を再使用することができる。
【0031】
なお、本実施の形態の炎検知センサである熱電対7をフレームロッドとすることにより、炎検知の応答性のが早まり、故障判定時間が短縮し、より迅速に警告することができる。
【0032】
また、本実施の形態の警告装置である表示素子とブザー9cを液晶パネルによる文字表示や音声ICによる言葉による報知とすることにより、機器の故障状態をより詳しく伝えることができ、使用者の理解が深まり迅速で確実な処置がなされることが期待できる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
以上のように、本発明にかかるガス燃焼機器の安全装置は、使用者の処置のもと、燃料供給装置の故障により生じる異常燃焼の継続を回避することが可能となるので、ガス燃焼機器以外に炎検知センサを有する他燃料を熱源とする燃焼機器などの用途にも適応できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施形態におけるガス燃焼機器の安全装置の構成図
【図2】同ガス燃焼機器の安全装置のタイムチャート
【図3】同ガス燃焼機器の安全装置の動作フローチャート
【図4】従来のガス機器の炎検知センサの判定動作フローチャート
【符号の説明】
【0035】
2 バーナ
6a 電磁弁(ガス供給装置)
6b 比例弁(ガス供給装置)
7 熱電対(炎検知センサ)
9 制御装置
9a 操作スイッチ部(操作装置)
9b 表示部(警告装置)
9c ブザー(警告装置)
9d EEPROM(不揮発性の記憶素子)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス供給装置を介して燃料供給されるバーナと、前記バーナの近傍に設けた炎検知センサと、前記炎検知センサの信号で前記バーナの燃焼動作を制御する制御装置を備え、前記制御装置が燃焼停止動作を行った以降に前記炎検知センサが炎を検知すると警告装置により警告を行うことを特徴とするガス燃焼機器の安全装置。
【請求項2】
警告装置による警告の状態を通常の運転停止操作では解除不可能としたことを特徴とした請求項1記載のガス燃焼機器の安全装置。
【請求項3】
警告装置による警告が行われたことを不揮発性の記憶素子に記憶し、機器の再通電時に警告を行うことを特徴とした請求項1記載のガス燃焼機器の安全装置。
【請求項4】
操作装置を特殊操作することで不揮発性の記憶素子の記憶内容を消去できることを特徴とした請求項3記載のガス燃焼機器の安全装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−57914(P2006−57914A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−240477(P2004−240477)
【出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】