説明

ガス発生剤成形体の製造方法

【課題】 製造時の取り扱い性が良く、燃焼性能も良いガス発生剤成形体が得られる製造方法の提供。
【解決手段】 燃料及び酸化剤を含む原料成分を供給し、水分の存在下で攪拌して混合する第1工程、前工程で得られた混合物をシート状に圧伸成形して、シート状物を得る第2工程、前工程で得られたシート状物の片面又は両面に凹凸を形成する第3工程、前工程で得られた表面に凹凸を有するシート状物を所望形状に打ち抜く第4工程、前工程で打ち抜いたものを予備乾燥する第5工程、前工程で予備乾燥したものを保存容器内に入れた後、本乾燥する第6工程、を有するガス発生剤成形体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアバッグ装置用インフレータで使用するガス発生剤成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス発生剤成形体は、原料に水を添加して捏和混合した後、混合物を圧伸したものを裁断して円柱状にする製造方法が知られているが(例えば、特許文献1)、その他、シート状に成形したものを打ち抜く製造方法も知られている。
【0003】
特許文献2には、原料に水を添加して捏和混合した後、混合物を圧延したシート状物を2重ね合わせたものを円形に打ち抜き、乾燥して、ガス発生剤成形体を得る方法が記載されている。前記ガス発生剤成形体は、外表面から燃焼が始まり、内部表面に燃焼が到達すると、2枚の接触面の存在により、一気に燃焼表面積を増加させることができるため、望ましいガス発生状態のものとなる(図3参照)。
【特許文献1】特開2001−342091号公報
【特許文献2】特開2000−219590号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2の発明では、2枚に重ね合わせる工程が必要であること、重ね合わせがうまくいかないと無駄になる部分が多くなること、乾燥前に打ち抜くため、打ち抜いたものの重ね合わせ部分が密着してしまうおそれがあること等で改善の余地がある。
【0005】
本発明は、製造時の取り扱い性が良く、製造原料の無駄もなくなり、燃焼性能の良い成形体が得られる、ガス発生剤成形体の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、
燃料及び酸化剤を含む原料成分を供給し、水分の存在下で攪拌して混合する第1工程、
前工程で得られた混合物をシート状に圧伸成形して、シート状物を得る第2工程、
前工程で得られたシート状物の片面又は両面に凹凸を形成する第3工程、
前工程で得られた表面に凹凸を有するシート状物を所望形状に打ち抜く第4工程、
前工程で打ち抜いたものを予備乾燥する第5工程、
前工程で予備乾燥したものを保存容器内に入れた後、本乾燥する第6工程、
を有するガス発生剤成形体の製造方法を提供する。
【0007】
請求項2の発明は、第4工程で打ち抜かれた後の残りを回収して、再度、第1工程又は第2工程に送る、請求項1記載のガス発生剤成形体の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の製造方法によれば、製造工程も簡単で、連続的に製造することができる。また、原料の無駄もなく、取り扱い性が良いので製造時の作業性が良く、得られたガス発生剤成形体の燃焼性能も良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明のガス発生剤成形体の製造方法を工程ごとに説明するが、各工程は、必要に応じて、2以上の工程を1つの工程にしてもよいし、1つの工程を2以上の工程に分けてもよい。
【0010】
<第1工程>
第1工程は、燃料及び酸化剤を含む原料成分を供給し、水分の存在下で攪拌して混合する工程であり、特許文献1、2に記載されている混合方法と同様にすることができる。
【0011】
第1工程の処理においては、2種以上の原料成分と水分の供給方法として下記の各方法を適宜選択することができる。なお、第1工程における「水分」は、2種以上の原料成分中に当初から存在する水分と、原料に対して供給する水分の両方を意味する。
【0012】
(i)2種以上の原料成分ごとに所要量の水分を供給した後、混合する方法;
(ii)2種以上の原料成分の供給と所要量の水分の供給を同時に行った後、混合する方法;
(iii)2種以上の原料成分を混合しながら、所要量の水分を供給する方法;
(iv)2種以上の原料成分を予備混合した後、所要量の水分を供給し、更に混合する方法;
(v)上記の(i)〜(iv)の方法において、所要量の水分を噴霧して供給する方法。
【0013】
第1工程においては、供給する水分として、水溶液、水、水蒸気及びこれらの2種又は3種の混合物を使用することができる。ここで水溶液とは、2種以上の原料成分中の可溶成分、例えば水溶性バインダの水溶液である。
【0014】
これらの水溶液、水、水蒸気は、金属イオン、例えばNa、K、Li等のアルカリ金属のイオン、Mg、Ca等のアルカリ土類金属のイオン、その他の金属イオンを含まないものが好ましく、イオン交換水及び/又は蒸留水がより好ましい。
【0015】
第1工程における2種以上の原料成分と水分との混合条件は、混合温度が好ましくは20〜100℃、より好ましくは40〜80℃で、混合時間は、バッチ式の場合が好ましくは10〜120分、より好ましくは30〜60分であり、連続式の場合が好ましくは1〜10分である。
【0016】
本発明の製造法をバッチ式で行う場合、第1工程においては、更に混合しながら水分の一部を揮発除去させる処理を行うことができ、混合が終了した後に水分の一部を揮発除去することもできる。
【0017】
このような水分の一部を揮発除去させる際には、混合時の温度よりも好ましくは0〜80℃、より好ましくは10〜30℃温度を高めて水分を揮発除去することができる。更に、後工程における処理を円滑に行うため、このように水分の一部を揮発除去させる場合、ガス発生剤中の水分量(wet base値)が、好ましくは10〜30重量%、より好ましくは15〜20重量%になるように調整する。
【0018】
この水分を一部揮発除去させる方法は、第1工程において2種以上の原料と水分を混合機で行った場合、混合機のベント口から、必要に応じて吸引しながら脱気する方法を適用できる。
【0019】
また本発明の製造法をバッチ式で行う場合、上記したとおり、混合しながら水分の一部を揮発除去した後、後工程(熟成処理)における取り扱いを容易にするため、冷却処理を付加することができる。この冷却処理は、冷却後の混合物の温度が、好ましくは30〜65℃、より好ましくは30〜50℃になるように冷却する。
【0020】
冷却方法は特に限定されないが、第1工程における2種以上の原料と水分との混合を混合機で行った場合、攪拌方向を逆転及び/又は正転させる操作を適宜組み合わせる方法を適用できる。ここで「逆転」又は「正転」とは、攪拌機が一つの場合には攪拌方向(回転方向)を異ならせることを意味するが、攪拌機が2つの場合は、「逆転」とは隣接する2つの攪拌機の一方(左側とする)を時計回りに回転させ、他方(右側とする)を反時計回りに回転させることを意味し、「正転」とは左側の攪拌機を反時計回りに回転させ、右側の攪拌機を時計回りに回転させることを意味する。
【0021】
本発明の製造法をバッチ式で行う場合、第1工程と第2工程の間に、混合物に温度ムラ、水分ムラが生じることを防止し、更に圧伸成形しやすい温度に調温するための混合物の熟成工程を設けることができる。
【0022】
熟成処理は、好ましくは30〜50℃、より好ましくは35〜45℃で、好ましくは8時間以上、より好ましくは16時間以上保持することにより行う。
【0023】
熟成処理は、第1工程で使用した混合機内で行うこともできるし、混合物を所定条件で保持できる別の容器に移し替えて行うこともできる。
【0024】
本工程で使用する燃料、酸化剤等のガス発生剤の成分は特に限定されず、公知のものを使用することができ、例えば、特開2001−342091号公報に記載の燃料、酸化剤、添加物を用いることができる。
【0025】
<第2工程>
第2工程は、第1工程で得られた混合物をシート状に圧伸成形して、シート状物を得る工程である。本工程では、長尺状になるように連続的に圧伸成形してもよいし、正方形や長方形等の所望形状の1枚ずつのシートごとに圧伸成形してもよい。なお、シート状に圧伸する工程と並行して凹凸を形成してもよい。この場合には、第3工程は不要になる。
【0026】
シート状に圧伸成形する方法は特に限定されず、1段で成形する方法、予備成形を含む2段以上に分けて行う方法を適用できる。1段で行う場合は、成形圧力が好ましくは70MPa以下、より好ましくは60MPa以下であり、2段で行う場合は、成形圧力が好ましくは70MPa以下、より好ましくは60MPa以下で予備成形し、更に成形圧力が好ましくは70MPa以下、より好ましくは60MPa以下で成形する。
【0027】
圧伸成形後のシート状物の厚みは特に限定されず、約1〜10mmの厚みにすることができる。
【0028】
<第3工程>
第3工程は、第2工程で得られたシート状物の片面又は両面に凹凸を形成する工程である。このように凹凸を形成することにより、ガス発生剤成形体を重ねたとき、個々の成形体の間に隙間が形成されるため、インフレータ内に収容したときの燃焼性能が高められる。
【0029】
凹凸の形成は、一方又は両方の表面に凹凸を有する2本のローラーの間にシート状物を通して形成する。凹凸の程度は、凹部の底面と凸部の頂面との間隔が約0.1〜3mmになるくらいでよい。
【0030】
<第4工程>
第4工程は、第3程で得られた表面に凹凸を有するシート状物を所望形状に打ち抜く工程である。打ち抜きは、例えば、金属製の筒状の打ち抜き型を用いて行うことができる。
【0031】
打ち抜いたものの形状や大きさは、インフレータ用のガス発生剤成形体として適用できるものであれば特に限定されないが、円形、多角形(例えば、六角形、八角形)等にすることができ、必要に応じて、1又は2以上の貫通孔を形成してもよい。
【0032】
本工程にて、円形や多角形に打ち抜いたあと、使用できない残りの部分が生じるが、その残りの部分は、第1工程又は第2工程に返送して、原料として再利用することができる。なお、打ち抜いた後の残りの部分は、第5工程と第6工程の間又は第6工程の後で回収し、第1工程又は第2工程に返送してもよい。
【0033】
<第5工程>
第5工程は、第4工程で打ち抜いたものを予備乾燥する工程である。本工程は、少なくとも打ち抜いた成形体の表面を乾燥することにより、次工程の作業時に成形体が変形したり、破損したりすることにより、ガス発生剤成形体のガス発生器への充填量にバラツキが生じ、ガス発生器の性能が変動することを防止できる。また、ディスク状のガス発生剤成形体は、互いに積み重ねてガス発生器に充填するが、その際にディスクに反りがあると所定の枚数を充填することができなくなるが、本発明の第5工程により、これらの不都合が生じることを防止できる。
【0034】
乾燥方法は、例えば、ベトロコンベア上に打ち抜いた成形体(又は所望形状に打ち抜いた状態の長尺状シート状物)を置いた状態で連続的に乾燥機内に通し、温風、マイクロ波、赤外線等を使用して乾燥する方法を適用できる。
【0035】
<第6工程>
第6工程は、第5工程で予備乾燥した打ち抜いた成形体(又は所望形状に打ち抜いた状態の長尺状シート状物から打ち抜き部分を取り出したもの)を保存容器内に入れた後、本乾燥する工程である。乾燥温度は、約80〜120℃、好ましくは約90〜110℃である。
【実施例】
【0036】
実施例1
<第1工程>
製造原料は、硝酸グアニジン40.7質量%、塩基性硝酸銅49.3質量%、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩5.0質量%、水酸化アルミニウム5.0質量%、前記各成分の合計100質量部に対して14.7質量部のイオン交換水(電気伝導度1μS/cm)を捏和機に投入後、温度60℃で、60分間混合した。
【0037】
その後、捏和機内で攪拌しながら混合物の温度を45℃まで低下させた。次に、捏和機から混合物を取り出し、温度管理ができる熟成器に移し、40℃で15時間保持して、熟成させた。
【0038】
<第2工程>
次に、熟成後の混合物を圧伸機に連続的に供給し、成形圧力35MPaで成形し、幅20mm、厚さ3mmの長尺状のシート状物を連続的に送り出した。
【0039】
<第3工程>
2本のローラー(一方のローラー表面のみに凹凸が形成されている)間(間隔2.5mm)に、圧伸機から連続的に送り出される長尺状のシート状物を連続的に通して、片面のみに凹凸(凹部の底面と凸部の頂面との間隔0.5mm)を形成した。
【0040】
<第4工程>
第3工程で得られた表面に凹凸を有する長尺状のシート状物に対して、筒状の打ち抜き型を用い、円形に連続的に打ち抜いた。
【0041】
<第5工程>
第4工程で長尺状のシート状物を円形に打ち抜いたものを、長尺状のシート状物のまま乾燥機内に連続的に通し、約80℃の温風を吹き付けて、予備乾燥した。
【0042】
<第6工程>
第5工程で予備乾燥した長尺状のシート状物から円形の打ち抜き部分のみを取り出し、保存容器(ステンレス製の有底筒状容器で蓋を有するもの)内に入れた後、約110℃で3日間、本乾燥して、外周が50mm、厚みが2mmの円形の表面に凹凸を有するガス発生剤成形体を得た。なお、打ち抜き部分の残りを回収し、第2工程に返送して、再利用した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料及び酸化剤を含む原料成分を供給し、水分の存在下で攪拌して混合する第1工程、
前工程で得られた混合物をシート状に圧伸成形して、シート状物を得る第2工程、
前工程で得られたシート状物の片面又は両面に凹凸を形成する第3工程、
前工程で得られた表面に凹凸を有するシート状物を所望形状に打ち抜く第4工程、
前工程で打ち抜いたものを予備乾燥する第5工程、
前工程で予備乾燥したものを保存容器内に入れた後、本乾燥する第6工程、
を有するガス発生剤成形体の製造方法。
【請求項2】
第4工程で打ち抜かれた後の残りを回収して、再度、第1工程又は第2工程に送る、請求項1記載のガス発生剤成形体の製造方法。

【公開番号】特開2009−137814(P2009−137814A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−318226(P2007−318226)
【出願日】平成19年12月10日(2007.12.10)
【出願人】(000002901)ダイセル化学工業株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】