説明

ガス発生材及びマイクロポンプ

【課題】マイクロポンプに利用でき、ガス発生期間が長いガス発生材を提供する。
【解決手段】複数種類のガス発生剤を含み、複数種類のガス発生剤は光応答性を示し、しかもガスを発生させる波長が相互に異なり、光の照射を開始してからガスの発生量が最大となるまでに要する時間が相互に異なるガス発生材。更に、ガスの発生を開始する温度が相互に異なり、加熱を開始してからガスの発生量が最大となるまでに要する時間が相互に異なる複数種類の熱応答性ガス発生剤をも含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス発生材及びそれを用いたマイクロポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、小型であり、かつ携帯性に優れている分析装置として、マイクロ流体デバイスを用いた分析装置が用いられるようになってきている。このマイクロ流体デバイスを用いた分析装置では、マイクロ流路内においてサンプルの送液、希釈、分析などを行うことができる。
【0003】
例えば、下記の特許文献1には、一方の主面に開口するマイクロ流路が形成されている基板の上記主面を覆うようにガス発生層を設けることにより、マイクロ流体デバイスにポンプ機能を付与することが記載されている。特許文献1には、ガス発生層に含有させるガス発生剤として、種々のアゾ化合物やアジド化合物が例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−107515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のアゾ化合物やアジド化合物をガス発生剤として用いたガス発生材では、単位時間あたりのガス発生量が所定以上の期間であるガス発生期間が短いという問題がある。
【0006】
本発明は、斯かる点に鑑みて成されたものであり、その目的は、ガス発生期間が長いガス発生材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るガス発生材は、複数種類のガス発生剤を含む。
【0008】
本発明に係るガス発生材の他の特定の局面では、複数種類のガス発生剤は、複数種類の光応答性ガス発生剤を含む。
【0009】
本発明に係るガス発生材の別の特定の局面では、複数種類の光応答性ガス発生剤は、ガスを発生させる波長が相互に異なる複数種類の光応答性ガス発生剤を含む。
【0010】
本発明に係るガス発生材のさらに他の特定の局面では、複数種類の光応答性ガス発生剤は、光の照射を開始してからガスの発生量が最大となるまでに要する時間が相互に異なる複数種類の光応答性ガス発生剤を含む。
【0011】
本発明に係るガス発生材のさらに別の特定の局面では、複数種類の光応答性ガス発生剤は、1,1’−(アゾジカルボニル)ジピペリジン、アゾジカルボンアミド、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド及び2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩からなる群から選ばれた少なくともひとつの光応答性ガス発生剤と、2,2’−[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)及び2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]n水和物からなる群から選ばれた少なくともひとつの光応答性ガス発生剤とを含む。
【0012】
本発明に係るガス発生材のまた他の特定の局面では、複数のガス発生剤は、複数種類の熱応答性ガス発生剤を含む。
【0013】
本発明に係るガス発生材のまた別の特定の局面では、複数種類の熱応答性ガス発生剤は、ガスの発生を開始する温度が相互に異なる複数種類の熱応答性ガス発生剤を含む。
【0014】
本発明に係るガス発生材のさらにまた他の特定の局面では、複数種類の熱応答性ガス発生剤は、
(A)2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル、2,2’−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビスー(シクロヘキサンー1−カルボニトリル)、2,2’アゾビス(2メチルN2プロペニルプロパンアミド)2,2’−ビス(2−イミダゾリン−2−イル)[2,2’−アゾビスプロパン]・2塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス−2−アミジノプロパン二塩酸塩、2,2’−アゾビス−2−アミジノプロパン二塩酸塩、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’アゾビス[2[1(2ヒドロキシエチル)2イミダゾリン2イル]プロパン]二塩酸塩、2,2’−ビス(2−イミダゾリン−2−イル)[2,2’−アゾビスプロパン]、2,2’−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリドン−2−メチルプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[N−(2−ヒドロキシエチル)−2−メチルプロパンアミド]及びトリメチルシリルアジドのうちの少なくとも一つと、
(B)1,2−ジデヒドロ−1−(1−シアノ−1−メチルエチル)セミカルバジド、2,2’アゾビス(Nブチル2メチルプロピオンアミド)、2,2’アゾビス(Nシクロヘキシル2メチルプロピオンアミド)及び4−アセチルアミノベンゼンスルフォニルアジドのうちの少なくとも一つと、
(C)炭酸水素ナトリム、4−ドデシルベンゼンスルフォニルアジド、ジフェニルリン酸アジド、1H−テトラゾール、5−メチル−1H−テトラゾール、1−メチル−5−エチル−1H−テトラゾール、1−フェニル−5−メルカプト−1H−テトラゾール、p,p’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド及び2−メトキシ−5−(5−トリフルオロメチル−1H−テトラゾール−1−イル)−ベンズアルデヒドのうちの少なくとも一つと、
(D)ジニトロソペンタメチレンテトラミンや、アジゾカルボンアミド、硝酸アンモニウム、ヒドラジゾカルボンアミド、5−アミノ−1H−テトラゾール、5−フェニル−1H−テトラゾール及び1−(2−ジメチルアミノエチル)−5−メルカプト−1H−テトラゾールのうちの少なくとも一つと、
の(A)〜(D)のうちの少なくとも2つを含む。
【0015】
本発明に係るガス発生材のさらにまた別の特定の局面では、複数種類の熱応答性ガス発生剤は、加熱を開始してからガスの発生量が最大となるまでに要する時間が相互に異なる複数種類の熱応答性ガス発生剤を含む。
【0016】
本発明に係るガス発生材のまたさらに他の特定の局面では、複数種類のガス発生剤は、光応答性ガス発生剤と熱応答性ガス発生剤とを含む。
【0017】
本発明に係るマイクロポンプは、上記本発明に係るガス発生材と、マイクロ流路が形成された基材とを備えている。ガス発生材は、ガス発生材において発生したガスがマイクロ流路に供給されるように配されている。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ガス発生期間が長いガス発生材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1の実施形態に係るマイクロポンプの略図的断面図である。
【図2】第2の実施形態に係るマイクロポンプの略図的断面図である。
【図3】実験例1〜3におけるガス発生量を表すグラフである。
【図4】実験例4〜6におけるガス発生量を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施した好ましい形態の一例について説明する。但し、下記の実施形態は、単なる例示である。本発明は、下記の実施形態に何ら限定されない。
【0021】
また、実施形態等において参照する各図面において、実質的に同一の機能を有する部材は同一の符号で参照することとする。また、実施形態等において参照する図面は、模式的に記載されたものであり、図面に描画された物体の寸法の比率などは、現実の物体の寸法の比率などとは異なる場合がある。図面相互間においても、物体の寸法比率等が異なる場合がある。具体的な物体の寸法比率等は、以下の説明を参酌して判断されるべきである。
【0022】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るマイクロポンプの略図的断面図である。
【0023】
図1に示すように、マイクロポンプ1は、板状の基材10を備えている。基材10は、例えば、樹脂、ガラス、セラミックなどにより形成することができる。基材10の形成に好ましく用いられる樹脂としては、有機シロキサン化合物やポリメタクリレート樹脂などが挙げられる。有機シロキサン化合物の具体例としては、例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)や、ポリメチル水素シロキサンなどが挙げられる。
【0024】
基材10には、主面10aに開口しているマイクロ流路10bが形成されている。
【0025】
ここで、「マイクロ流路」とは、マイクロ流路を流れる液体が、表面張力と毛細管現象との影響を強く受け、通常の寸法の流路を流れる液体とは異なる挙動を示す形状寸法に形成されている流路をいう。具体的には、「マイクロ流路」とは、流路の寸法が10μm〜1000μm、あるいは断面積が100μm〜1000000μm程度のものをいう。
【0026】
主面10aの上には、フィルム状のガス発生材11aが貼付されている。マイクロ流路10bの開口は、このガス発生材11aにより覆われている。このため、ガス発生材11aに光や熱等の外部刺激が加わることによりガス発生材11aから発生したガスは、マイクロ流路10bに導かれる。
【0027】
ガス発生材11aの厚みは、特に限定されないが、例えば、10μm〜200μm程度とすることができる。
【0028】
ガス発生材11aは、ガスバリア層12により覆われている。このガスバリア層12により、ガス発生材11aにおいて発生したガスが主面10aとは反対側に流出することが抑制され、マイクロ流路10bに効率的に供給される。このため、ガスバリア層12は、ガス発生材11aにおいて発生したガスの透過性が低いものであることが好ましい。
【0029】
ガスバリア層12は、例えば、ポリアクリル、ポリオレフィン、ポリカーボネート、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ナイロン樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂及びガラスなどにより形成することができる。
【0030】
なお、ガスバリア層12の厚みは、ガスバリア層12の材質等によって異なるが、例えば、25μm〜100μm程度とすることができる。
【0031】
ガス発生材11aは、熱や光等の外部刺激が加わった際にガスを発生させるガス発生剤を含む。また、ガス発生材11aは、ガス発生剤に加えて、バインダー樹脂及び光増感剤をさらに含む。バインダー樹脂としては、例えば、アクリル樹脂やグリシジルアジドポリマー等が好ましく用いられる。光増感剤としては、ベンゾフェノン、ジエチルチオキサントン、アントラキノン、ベンゾイン、アクリジン誘導体などが好ましく用いられる。光増感剤は、ガス発生剤100重量部に対して、0.01重量部〜50重量部の範囲で含まれていることが好ましい。
【0032】
本実施形態では、ガス発生材11aは、複数種類のガス発生剤を含む。ガス発生材11aは、2種のガス発生剤を含むものであってもよいし、3種以上のガス発生剤を含むものであってもよい。
【0033】
ここで、ガス発生剤は、種類が異なれば、例えば、ガスを発生させるための外部刺激の種類や、ガスの発生プロファイルが異なる。このため、複数種類のガス発生剤をガス発生材11aに含ませることにより、ガス発生期間を長くすることができる。従って、駆動期間の長いマイクロポンプ1を実現することができる。
【0034】
なお、ガス発生材11aにおける複数種類のガス発生剤のそれぞれの含有率は、特に限定されず、使用するガス発生剤の種類等に応じて適宜設定することができる。ガス発生材11aにおける複数種類のガス発生剤のそれぞれの含有率は、例えば、20質量%〜99.99質量%程度とすることができる。
【0035】
具体的には、例えば、ガス発生材11aを、例えば、下記のパターン(1)〜(3)のものとすることができる。
【0036】
(1)複数種類の光応答性ガス発生剤(外部刺激として光を照射したときにガスを発生させるガス発生剤)を含む。
【0037】
(1)−1 ガスを発生させる波長が相互に異なる複数種類の光応答性ガス発生剤を含む。
【0038】
この場合、例えば、照射する光の波長を時間と共に、徐々にまたは段階的に短波長にしていくことによって、ガス発生材11aからのガス発生時間を長くすることができる。
【0039】
例えば、ガスを発生させる波長が250nm〜270nmである光応答性ガス発生剤の具体例としては、例えば、過酸化水素等、キノンジアジドスルホン酸エステル類が挙げられる。
【0040】
例えば、ガスを発生させる波長が360nm〜400nmである光応答性ガス発生剤の具体例としては、例えば、2,2’−[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]n水和物等、1,1’−(アゾジカルボニル)ジピペリジン、アゾジカルボンアミド、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}及び2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)及び2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]n水和物等が挙げられる。
【0041】
例えば、ガスを発生させる波長が400nm〜600nmである光応答性ガス発生剤の具体例としては、例えば、しゅう酸等が挙げられる。
【0042】
(1)−2 光の照射を開始してからガスの発生量が最大となるまでに要する時間が相互に異なる複数種類の光応答性ガス発生剤を含む。
【0043】
この場合、光照射を開始すると、光の照射を開始してからガスの発生量が最大となるまでに要する時間が短い光応答性ガス発生剤から主としてガスが発生し、その後、光の照射を開始してからガスの発生量が最大となるまでに要する時間が長い光応答性ガス発生剤から主としてガスが発生する。従って、ガス発生材11aからのガス発生時間が長くなる。
【0044】
光照射を開始すると、光の照射を開始してからガスの発生量が最大となるまでに要する時間が短い光応答性ガス発生剤の具体例としては、例えば、1,1’−(アゾジカルボニル)ジピペリジン、アゾジカルボンアミド、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩等が挙げられる。
【0045】
光の照射を開始してからガスの発生量が最大となるまでに要する時間が長い光応答性ガス発生剤の具体例としては、例えば、2,2’−[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]n水和物等が挙げられる。
【0046】
このため、パターン(1)−2では、例えば、ガス発生材11aに、1,1’−(アゾジカルボニル)ジピペリジン、アゾジカルボンアミド、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}及び2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩からなる群から選ばれた少なくともひとつの光応答性ガス発生剤と、2,2’−[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)及び2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]n水和物からなる群から選ばれた少なくともひとつの光応答性ガス発生剤とを含ませることが好ましい。
【0047】
(2)複数種類の光応答性ガス発生剤(外部刺激として熱を加えたときにガスを発生させるガス発生剤)を含む。
【0048】
(2)−1 ガスの発生を開始する温度(最低温度)が相互に異なる複数種類の熱応答性ガス発生剤を含む。
【0049】
この場合、ガス発生材11aの温度を徐々にまたは段階的に上昇させていくことによって、ガス発生材11aからのガス発生時間を長くすることができる。
【0050】
例えば、ガスの発生を開始する温度が30℃〜100℃である熱応答性ガス発生剤の具体例としては、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル、2,2’−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビスー(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’アゾビス(2メチルN2プロペニルプロパンアミド)2,2’−ビス(2−イミダゾリン−2−イル)[2,2’−アゾビスプロパン]・2塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス−2−アミジノプロパン二塩酸塩、2,2’−アゾビス−2−アミジノプロパン二塩酸塩、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’アゾビス[2[1(2ヒドロキシエチル)2イミダゾリン2イル]プロパン]二塩酸塩、2,2’−ビス(2−イミダゾリン−2−イル)[2,2’−アゾビスプロパン]、2,2’−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリドン−2−メチルプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[N−(2−ヒドロキシエチル)−2−メチルプロパンアミド]、トリメチルシリルアジド等が挙げられる。
【0051】
例えば、ガスの発生を開始する温度が100℃〜120℃である熱応答性ガス発生剤の具体例としては、1,2−ジデヒドロ−1−(1−シアノ−1−メチルエチル)セミカルバジド、2,2’アゾビス(Nブチル2メチルプロピオンアミド)、2,2’アゾビス(Nシクロヘキシル2メチルプロピオンアミド)、4−アセチルアミノベンゼンスルフォニルアジド等が挙げられる。
【0052】
例えば、ガスの発生を開始する温度が120℃〜200℃である熱応答性ガス発生剤の具体例としては、炭酸水素ナトリム、4−ドデシルベンゼンスルフォニルアジド、ジフェニルリン酸アジド、1H−テトラゾール、5−メチル−1H−テトラゾール、1−メチル−5−エチル−1H−テトラゾール、1−フェニル−5−メルカプト−1H−テトラゾール、p,p’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、2−メトキシ−5−(5−トリフルオロメチル−1H−テトラゾール−1−イル)−ベンズアルデヒド等が挙げられる。
【0053】
例えば、ガスの発生を開始する温度が200℃〜300℃である熱応答性ガス発生剤の具体例としては、ジニトロソペンタメチレンテトラミンや、アジゾカルボンアミド、硝酸アンモニウム、ヒドラジゾカルボンアミド、5−アミノ−1H−テトラゾール、5−フェニル−1H−テトラゾール、1−(2−ジメチルアミノエチル)−5−メルカプト−1H−テトラゾール等が挙げられる。
【0054】
例えば、ガスの発生を開始する温度が300℃〜350℃である熱応答性ガス発生剤の具体例としては、5,5’−ビ−1H−テトラゾール・ジアンモニウム塩等が挙げられる。
【0055】
このため、パターン(2)−1では、例えば、ガス発生材11aに、ジニトロソペンタメチレンテトラミン及びp,p’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドの少なくとも一方と、ジニトロソペンタメチレンテトラミンとを含ませることが好ましい。
【0056】
(2)−2 加熱を開始してからガスの発生量が最大となるまでに要する時間が相互に異なる複数種類の熱応答性ガス発生剤を含む。
【0057】
この場合、加熱を開始すると、加熱を開始してからガスの発生量が最大となるまでに要する時間が短い熱応答性ガス発生剤から主としてガスが発生し、その後、加熱を開始してからガスの発生量が最大となるまでに要する時間が長い熱応答性ガス発生剤から主としてガスが発生する。従って、ガス発生材11aからのガス発生時間が長くなる。
【0058】
加熱を開始してからガスの発生量が最大となるまでに要する時間が短い熱応答性ガス発生剤の具体例としては、例えば、セルマルク(商品名:C−2、C−121,C−1,CE、C−22、C−191,EP−50,AN、172−C,CAP−149,CAP,CAP―500、CAP―250,S,SX,SX−W、MB1023,MB1062,MB1031A,MB1061−7,MB3013,MB2043,MB5035,MB9032:三協化成社製)等が挙げられる。
【0059】
加熱を開始してからガスの発生量が最大となるまでに要する時間が長い熱応答性ガス発生剤の具体例としては、例えば、セルマルク(商品名266,494,306,496,417、MB2022,MB3074,MB3073,MB3072MB5024,MB5022,MB5043,MB5074,MB5053,MB6074、MB6064,MB9053,MB9073,MB9043,MB9082:三協化成社製)等が挙げられる。
【0060】
このため、パターン(2)−2では、例えば、ガス発生材11aに、EP−50,AN、S,SX及びSX−Wからなる群から選ばれた少なくともひとつの熱応答性ガス発生剤と、266,494,306及び496からなる群から選ばれた少なくともひとつの熱応答性ガス発生剤とを含ませることが好ましい。
【0061】
(3)少なくとも一種類の光応答性ガス発生剤と、少なくとも一種類の熱応答性ガス発生剤とを含む。
【0062】
この場合、例えば、光照射及び加熱のうちの少なくとも一方を行った後に、他方を行うことにより、光応答性ガス発生剤からガスが発生するタイミングと、熱応答性ガス発生剤からガスが発生するタイミングとを異ならせることができる。従って、ガス発生材11aからのガス発生時間が長くなる。
【0063】
また、パターン(1)、(2)及び(3)のうちの少なくとも2つを適宜組み合わせて行ってもよい。その場合であっても、ガス発生材11aからのガス発生時間が長くなる。
【0064】
以下、本発明を実施した好ましい形態の一例について説明する。以下の説明において上記第1の実施形態と実質的に同様の機能を有する部材を同様の符号で参照し、説明を省略する。
【0065】
(第2の実施形態)
図2は、第2の実施形態に係るマイクロポンプの略図的断面図である。
【0066】
本実施形態に係るマイクロポンプ2は、ガス発生材の形状と、基材10の形状とにおいて上記第1の実施形態に係るマイクロポンプ1と異なる。
【0067】
本実施形態では、マイクロ流路10bは、基材10内に形成されたポンプ室10cに接続されている。ガス発生材11bは、ブロック状に形成されており、ポンプ室10c内に配されている。
【0068】
本実施形態に係るマイクロポンプ2においても、上記マイクロポンプ1と同様に、長駆動時間を実現することができる。
【0069】
以下、本発明について、具体的な実施例に基づいて、さらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能である。
【0070】
(実験例1)
メタクリル酸メチル54.6重量部と、アクリル酸9.7重量部とのアクリル系共重合体(重量平均分子量30万)を作製した。次に、そのアクリル系共重合体100重量部と、溶剤としてのTHF:エタノール=1:1混合溶液100重量部と、光応答性ガス発生剤である4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)(和光純薬社製)26重量部と、光応答性ガス発生剤である2,2’−アゾビス[2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド(和光純薬社製)26重量部と、光増感剤としてのジエチルチオキサントン(チバスペシャルティケミカルズ社製、DETX−S)3.7重量部とを混合した。
【0071】
次に、得られた混合物を、厚さ1mmのベムコットン(旭化成繊維社製)に染み込ませた後に乾燥させ、5×5cmに切り抜いて、光応答性ガス発生材を作製した。
【0072】
ガス発生定量測定装置のチャンバー内に、上記作製の光応答性ガス発生材を配置した。その後、光応答性ガス発生材に対して380nmの紫外線を照射し、光応答性ガス発生剤1gあたりのガス発生量を測定し、1グラムあたりのガス発生量に換算した。結果を、図3に示す。
【0073】
(実験例2)
4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)(和光純薬社製)26重量部と、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド(和光純薬社製)26重量部とに代えて、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)26重量部を光応答性ガス発生剤としたこと以外は、上記実験例1と同様にして光応答性ガス発生材を作製し、ガス発生量を測定し、1グラムあたりのガス発生量に換算した。結果を、図3に示す。
【0074】
(実験例3)
4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)(和光純薬社製)26重量部と、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド(和光純薬社製)26重量部とに代えて、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド26重量部を光応答性ガス発生剤としたこと以外は、上記実験例1と同様にして光応答性ガス発生材を作製し、ガス発生量を測定し、1グラムあたりのガス発生量に換算した。結果を、図3に示す。
【0075】
図3に示す結果から、一種類の光応答性ガス発生剤を用いた実験例2,3と比べて、二種類の光応答性ガス発生剤を用いた実験例1の方が、所定以上のガス発生量が維持される時間が長かった。
【0076】
(実験例4)
2−エチルへキシルアクリレート96.5重量部と、アクリル酸3重量部と、2−ヒドロキシエチルアクリレート0.5重量部とのアクリル系共重合体(重量平均分子量70万)を作製した。次に、そのアクリル系共重合体100重量部と、溶剤としての酢酸エチル200重量部と、熱応答性ガス発生剤であるジニトロソペンタメチレンテトラミン(三協化成社製、商品名セルマイクA)10重量部と、熱応答性ガス発生剤であるアゾジカルボンアミド(三協化成社製、商品名セルマイクC−2)10重量部とを混合した。
【0077】
得られた混合物を厚さ1mmのベムコットン(旭化成繊維社製)に染み込ませた後に乾燥させ、5×5cmに切り抜いて、熱応答性ガス発生材を作製した。
【0078】
チャンバーに接続された銅製チューブ及びガス発生量測定用のメスピペットを備えるガス発生定量測定装置のチューブの一方から水を流し込み、メスピペットの基準線まで水を満たすと共に、上記作製の熱応答性ガス発生材をチャンバー内に配置した。次に、ガス発生定量測定装置を、ホットプレートを用いて加熱し、ガス発生量を測定した。結果を、図4に示す。なお、ホットプレートの初期温度を170℃とし、5℃/2分の昇温スピードでホットプレートの温度を上昇させた。
【0079】
(実験例5)
ジニトロソペンタメチレンテトラミン(三協化成社製、商品名セルマイクA)10重量部と、アゾジカルボンアミド(三協化成社製、商品名セルマイクC−2)10重量部とに代えて、ジニトロソペンタメチレンテトラミン10重量部を熱応答性ガス発生剤としたこと以外は、上記実験例4と同様にして熱応答性ガス発生材を作製し、ガス発生量を測定し、1グラムあたりのガス発生量に換算した。結果を、図4に示す。
【0080】
(実験例6)
ジニトロソペンタメチレンテトラミン(三協化成社製、商品名セルマイクA)10重量部と、アゾジカルボンアミド(三協化成社製、商品名セルマイクC−2)10重量部とに代えて、アゾジカルボンアミド10重量部を熱応答性ガス発生剤としたこと以外は、上記実験例4と同様にして熱応答性ガス発生材を作製し、ガス発生量を測定し、1グラムあたりのガス発生量に換算した。結果を、図4に示す。
【0081】
図4に示す結果から、一種類の熱応答性ガス発生剤を用いた実験例5,6と比べて、二種類の熱応答性ガス発生剤を用いた実験例4の方が、所定以上のガス発生量が維持される時間が長かった。
【符号の説明】
【0082】
1,2…マイクロポンプ
10…基材
10a…主面
10b…マイクロ流路
10c…ポンプ室
11…マイクロ流路
11a、11b…ガス発生材
12…ガスバリア層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類のガス発生剤を含む、ガス発生材。
【請求項2】
前記複数種類のガス発生剤は、複数種類の光応答性ガス発生剤を含む、請求項1に記載のガス発生材。
【請求項3】
前記複数種類の光応答性ガス発生剤は、ガスを発生させる波長が相互に異なる複数種類の光応答性ガス発生剤を含む、請求項2に記載のガス発生材。
【請求項4】
前記複数種類の光応答性ガス発生剤は、光の照射を開始してからガスの発生量が最大となるまでに要する時間が相互に異なる複数種類の光応答性ガス発生剤を含む、請求項2または3に記載のガス発生材。
【請求項5】
前記複数種類の光応答性ガス発生剤は、
1,1’−(アゾジカルボニル)ジピペリジン、アゾジカルボンアミド、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド及び2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩からなる群から選ばれた少なくともひとつの光応答性ガス発生剤と、
2,2’−[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)及び2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]n水和物からなる群から選ばれた少なくともひとつの光応答性ガス発生剤と、
を含む、請求項4に記載のガス発生材。
【請求項6】
前記複数のガス発生剤は、複数種類の熱応答性ガス発生剤を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載のガス発生材。
【請求項7】
前記複数種類の熱応答性ガス発生剤は、ガスの発生を開始する温度が相互に異なる複数種類の熱応答性ガス発生剤を含む、請求項6に記載のガス発生材。
【請求項8】
前記複数種類の熱応答性ガス発生剤は、
(A)2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル、2,2’−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビスー(シクロヘキサンー1−カルボニトリル)、2,2’アゾビス(2メチルN2プロペニルプロパンアミド)2,2’−ビス(2−イミダゾリン−2−イル)[2,2’−アゾビスプロパン]・2塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス−2−アミジノプロパン二塩酸塩、2,2’−アゾビス−2−アミジノプロパン二塩酸塩、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’アゾビス[2[1(2ヒドロキシエチル)2イミダゾリン2イル]プロパン]二塩酸塩、2,2’−ビス(2−イミダゾリン−2−イル)[2,2’−アゾビスプロパン]、2,2’−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリドン−2−メチルプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[N−(2−ヒドロキシエチル)−2−メチルプロパンアミド]及びトリメチルシリルアジドのうちの少なくとも一つと、
(B)1,2−ジデヒドロ−1−(1−シアノ−1−メチルエチル)セミカルバジド、2,2’アゾビス(Nブチル2メチルプロピオンアミド)、2,2’アゾビス(Nシクロヘキシル2メチルプロピオンアミド)及び4−アセチルアミノベンゼンスルフォニルアジドのうちの少なくとも一つと、
(C)炭酸水素ナトリム、4−ドデシルベンゼンスルフォニルアジド、ジフェニルリン酸アジド、1H−テトラゾール、5−メチル−1H−テトラゾール、1−メチル−5−エチル−1H−テトラゾール、1−フェニル−5−メルカプト−1H−テトラゾール、p,p’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド及び2−メトキシ−5−(5−トリフルオロメチル−1H−テトラゾール−1−イル)−ベンズアルデヒドのうちの少なくとも一つと、
(D)ジニトロソペンタメチレンテトラミンや、アジゾカルボンアミド、硝酸アンモニウム、ヒドラジゾカルボンアミド、5−アミノ−1H−テトラゾール、5−フェニル−1H−テトラゾール及び1−(2−ジメチルアミノエチル)−5−メルカプト−1H−テトラゾールのうちの少なくとも一つと、
の(A)〜(D)のうちの少なくとも2つを含む、請求項7に記載のガス発生材。
【請求項9】
前記複数種類の熱応答性ガス発生剤は、加熱を開始してからガスの発生量が最大となるまでに要する時間が相互に異なる複数種類の熱応答性ガス発生剤を含む、請求項6〜8のいずれか一項に記載のガス発生材。
【請求項10】
前記複数種類のガス発生剤は、光応答性ガス発生剤と熱応答性ガス発生剤とを含む、請求項1に記載のガス発生材。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載のガス発生材と、
マイクロ流路が形成された基材と、
を備え、
前記ガス発生材は、前記ガス発生材において発生したガスが前記マイクロ流路に供給されるように配されている、マイクロポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−184119(P2012−184119A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−46355(P2011−46355)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】