ガス純度維持装置を備える回転電機
【課題】掃気された冷却媒体ガスを送通する配管に沿って密封油のミストが下流へ運ばれることを抑制する回転電機を提供する。
【解決手段】回転電機1は、回転子11と、固定子12と、フレーム13と、軸封装置141と、ガス純度維持装置15とを備える。このガス純度維持装置15は、拡大槽21と、第1のミスト回収区間31と、バルブユニット32と、ドレンポット33と、計器盤34とを備える。第1のミスト回収区間31は、拡大槽21中の冷却媒体ガスGを排気するために拡大槽21から延びる掃気管3の途中に設けられ、下流の方が高くなっている。
【解決手段】回転電機1は、回転子11と、固定子12と、フレーム13と、軸封装置141と、ガス純度維持装置15とを備える。このガス純度維持装置15は、拡大槽21と、第1のミスト回収区間31と、バルブユニット32と、ドレンポット33と、計器盤34とを備える。第1のミスト回収区間31は、拡大槽21中の冷却媒体ガスGを排気するために拡大槽21から延びる掃気管3の途中に設けられ、下流の方が高くなっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、フレーム内に封入した冷却媒体ガスの純度を維持する構成を有するガス純度維持装置を備える回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機は、回転子、固定子、軸受、およびフレームを有し、内部に冷却媒体ガスとして水素ガスを密封している。冷却媒体ガスが軸受から漏れないように軸受には軸封装置が設けられている。軸封装置は、回転電機の内部の圧力よりも高い圧力で密封油供給ラインから密封油が供給される。また、軸封装置から排出された密封油は、回収され、密封油供給ラインに戻される。軸封装置から軸受の空気側に流れ排出された密封油は、空気等のガスが混入しているので、そのまま密封油供給ラインへ循環させると、密封油からガスが溶出し、フレーム内の水素ガスの純度を徐々に低下させてしまう。
【0003】
密封油供給ラインに設けて水素ガスの純度を維持する装置として、2つの方式が知られている。一つは、軸封装置に供給される密封油を真空処理装置を用いて脱気する真空処理方式であり、もう一つは、真空処理装置を設けずに回転電機内の水素ガス純度を維持するための設備を配した連続掃気方式である。
【0004】
連続掃気方式を採用するガス純度維持装置では、真空処理が成されていない密封油が軸封装置に供給され、回転電機内の水素ガスの純度が序々に低下するが、一定量のガスを連続して掃気しながら、高純度の新たな水素ガスを自動補給することで純度の維持を図る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭61−202161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
回転電機内の冷却媒体ガスである水素ガスの純度を維持するために、連続掃気方式により密封油処理系統から冷却媒体ガスを掃気すると、密封油の一部が粒度の細かいミストとなって、掃気した冷却媒体ガスの中に混入してしまう。掃気した冷却媒体ガスに密封油のミストが混入していると、このガスを送通する配管の途中で密封油のミストが付着して液状に戻り、油が配管内に溜まってしまう。冷却媒体ガスを掃気する配管の途中には、掃気流量や圧力を調整するためのニードル弁や、掃気流量を計測するための流量計および掃気されるガスである水素ガスの純度を計測する純度計などのゲージが設置された計器盤が接続されている。
【0007】
特にニードル弁や計器盤のゲージにミストが浸入すると、その構造上、密封油が液状になって溜まりやすい。その結果、ニードル弁で制御する流量に誤差が生じたり、計器類の表示に誤差が生じたりする。ニードル弁による流量制御に誤差が生じると、冷却媒体ガスの掃気流量が低下し、冷却媒体ガスの水素ガスの純度が低下する。また、計器類の表示に誤差が含まれると、正常な監視を行なえないため、適正な連続掃気の運転ができなくなる。
【0008】
そこで、本発明に係る一実施形態は、掃気された冷却媒体ガスを送通する配管に沿って密封油のミストが下流へ運ばれることを抑制する回転電機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態の回転電機は、回転子と、固定子と、フレームと、軸封装置と、ガス純度維持装置とを備える。フレームは、回転子および固定子を収納し、内部を冷却媒体ガスで満たされる。軸封装置は、回転子の軸の外周に装着され、冷却媒体ガスの圧力よりも高い圧力の密封油が供給される。ガス純度維持装置は、軸封装置から排出された密封油を軸封装置へ循環させる密封油供給ラインに接続され、冷却媒体ガスの純度を一定以上に維持する。このガス純度維持装置は、拡大槽と、第1のミスト回収区間と、バルブユニットと、ドレンポットと、計器盤とを備える。拡大槽は、軸封装置から軸受の水素側に流れ排出される密封油とともに冷却媒体ガスの一部を回収し、密封油に混入している冷却媒体ガスの一部を分離させ抽出する。第1のミスト回収区間は、拡大槽中の冷却媒体ガスを排気するために拡大槽から延びる掃気管の途中に設けられ、下流の方が高くなっている。バルブユニットは、第1のミスト回収区間の下流に配置され、冷却媒体ガスの流量を調整する。ドレンポットは、バルブユニットの下流に配置される。計器盤は、ドレンポットの下流に配置され、冷却媒体ガスの流量計および純度計を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態の回転電機を模式的に示す図。
【図2】第2の実施形態の回転電機の拡大槽および第1のミスト回収区間を示す図。
【図3】第3の実施形態の回転電機の拡大槽からバルブユニットまでを示す図。
【図4】第4の実施形態の回転電機の拡大槽からドレンポットまでを示す図。
【図5】第5の実施形態の回転電機の拡大槽からバルブユニットまでを示す図。
【図6】第6の実施形態の回転電機の拡大槽からバルブユニットまでを示す図。
【図7】第7の実施形態の回転電機の拡大槽からバルブユニットまでを示す図。
【図8】第8の実施形態の回転電機を模式的に示す図。
【図9】第9の実施形態の回転電機の拡大槽の断面を模式的に示す図。
【図10】図9中のF10−F10線に沿う拡大槽の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
第1の実施形態の回転電機1について、図1を参照して説明する。図1に示す回転電機1は、回転子11と、固定子12と、フレーム13と、軸受14と、ガス純度維持装置15とを備える。回転子11および固定子12は、フレーム13に収納されている。フレーム13の内部は、冷却媒体ガスGとして用いられる水素ガスで満たされている。軸受14は、回転子11の軸111を支持するとともに、軸111の外周に装着されて冷却媒体ガスGを封止する軸封装置141を内蔵している。
【0012】
軸封装置141は、冷却媒体ガスGの圧力よりも高い圧力で密封油供給ライン2から密封油Lが供給される。軸封装置141は、回転子11の軸111の外面に沿ってフレーム13の内部および外部の両側に密封油Lを流出させることで、回転子11の軸111とフレーム13との間を密封する。
【0013】
ガス純度維持装置15は、拡大槽21と、第1のミスト回収区間31と、バルブユニット32と、ドレンポット33と、計器盤34と、を備える。ガス純度維持装置15は、軸封装置141から排出された密封油Lを軸封装置141へ循環させる密封油供給ライン2に接続され、冷却媒体ガスGの純度を一定以上に維持する。
【0014】
拡大槽21は、軸封装置141よりも低い位置に設置され、内部の液面よりも高い位置に流入口211を有している。排油管22は、この流入口211に接続されている。拡大槽21は、軸封装置141から軸受14の水素側に流れた密封油Lを排油管22で回収する。拡大槽21では、密封油Lに混入している冷却媒体ガスGの一部を分離させ抽出する。また、拡大槽21および排油管22は、密封油Lを回収するとともに、冷却媒体ガスGの一部を掃気ガスとして掃気する経路となる。
【0015】
拡大槽21は、流入口211から離れた上部に排気口212を備えている。排気口212には、掃気管3が接続されている。掃気管3は、第1のミスト回収区間31とバルブユニット32とドレンポット33とを通って計器盤34まで接続される。第1のミスト回収区間31は、拡大槽21の排気口212から上方へ鉛直に延びた掃気管3に取り付けられたベローズ弁301の下流に接続されている。この第1のミスト回収区間31は、下流の方が高くなるように設置されている。第1の実施形態において第1のミスト回収区間31は、下流に向かうに従って相対位置が高くなるように上り勾配をつけて設置された傾斜配管である。
【0016】
バルブユニット32は、第1のミスト回収区間31よりも下流に配置され、冷却媒体ガスGの掃気流量を調整する。バルブユニット32は、流量調整をするためのニードル弁321と、その上流および下流に1つずつ設置される封止弁322,323とを備えている。本実施形態では、封止弁322,323としてベローズ弁が採用されている。ドレンポット33は、バルブユニット32の下流に配置され、冷却媒体ガスG中の密封油Lのミストや蒸気が除去される。ドレンポット33を通過した冷却媒体ガスGは、計器盤34に送られる。
【0017】
計器盤34は、掃気管3を流れる冷却媒体ガスGの流量を計測する流量計341、および掃気される冷却媒体ガスGの水素ガスの純度を計測する純度計342を有する。回転電機1は、冷却媒体ガスGの管理装置を有しており、計器盤34において計測された流量および純度を基に、純度計342の値からフレーム13中の冷却媒体ガスGとしての水素ガスの純度を監視し、掃気する冷却媒体ガスGの流量と、フレーム13に供給する高純度の水素ガスの流量とを制御する。
【0018】
計器盤34を通過した冷却媒体ガスGは、大気放出管35から放出される。大気放出管35と計器盤34とが接続された位置から分岐して下方に延びるドレン経路41をさらに備える。このドレン経路41は、排液溜331に通じるドレンポット33の排液経路332の途中に接続されている。
【0019】
回転電機1は、軸封装置141のそれぞれに対応して、拡大槽21から計器盤34まで、冷却媒体ガスGを掃気する経路を同じように有していてもよいし、途中で合流させてもよい。
【0020】
以上のように構成された回転電機1は、拡大槽21から掃気される冷却媒体ガスG中に混在している密封油Lのミストが第1のミスト回収区間31の内壁に付着して液状になっても、第1のミスト回収区間31の上流へ流れ、拡大槽21に戻される。したがって、密封油Lのミストがバルブユニット32や計器盤34に運ばれることを防止することができる。その結果、バルブユニット32に設置される流量調整弁として採用されるニードル弁321や、計器盤34の流量計341および純度計342に密封油Lが溜まることに起因する誤作動が防止される。
【0021】
以下、第2から第9の実施形態の回転電機1について、各図面を参照して説明する。このとき、第1の実施形態の回転電機1と同じ機能を有する構成は、各図中に第1の実施形態の回転電機1の構成と同じ符号を付し、その説明は第1の実施形態の記載を参酌する。また、各実施形態および各図に示されていない構成は、第1の実施形態と同じであるものとし、図1およびその記載を参酌するものとする。
【0022】
第2の実施形態の回転電機1について、図2を参照して説明する。図2に示すように、第2の実施形態の回転電機1は、第1のミスト回収区間31の形状が異なる。この第1のミスト回収区間31は、拡大槽21から上方に延びる上流側の掃気管3と、バルブユニット32に通じる下流側の掃気管3との間を鉛直に接続する上行配管である。
【0023】
第1の実施形態と同様に、拡大槽21から流出した密封油Lのミストがこの第1のミスト回収区間31において内壁に付着して液状になっても、密封油Lは、拡大槽21側へ戻り、下流に有るバルブユニット32側へ流れない。また、第1のミスト回収区間31の上流端は、掃気管3と鉛直に接続する。接続部で冷却媒体ガスGの流れの向きが略直角に曲げられることによって、冷却媒体ガスG中の密封油Lのミストが壁面に衝突して、回収されやすくなる。
【0024】
第3の実施形態の回転電機1について、図3を参照して説明する。図3に示すように、第3の実施形態の回転電機1における第1のミスト回収区間31は、第1の実施形態と同じである。バルブユニット32は、並列に2つ設けられている。なお、掃気する冷却媒体ガスGの流量などの条件により、バルブユニット32を並列に3つ以上設けてもよい。
【0025】
この回転電機1において、バルブユニット32は、上流および下流に配置された封止弁322,323を閉じることによってニードル弁321を隔離し取り外すことができる。第3の実施形態の場合、バルブユニット32は、並列に2つ設けられているので、回転電機1が運転中であっても、バルブユニット32のうち1つをメンテナンスおよびクリーニングのために取り外すことができる。つまり回転電機1を止めなくてもよい。
【0026】
第4の実施形態の回転電機1について、図4を参照して説明する。図4に示すように、第4の実施形態の回転電機1においてガス純度維持装置15は、第1のミスト回収区間31の下流からバルブユニット32までの間の地点から分岐されて下方に向かって延びるブロー配管42をさらに備える。ブロー配管42は、サイトグラス421と封止弁422とを備える。このブロー配管42の下流は、ドレン経路41と同じく、ドレンポット33の排液経路332の途中に接続されている。封止弁422にはベローズ弁が採用される。また、第3の実施形態と同様にバルブユニット32を並列に2つ有している。
【0027】
第1のミスト回収区間31を通過した冷却媒体ガスG中の密封油Lのミストは、第1のミスト回収区間31から下方に下る掃気管3の内面に付着して液状になることで、下方に延びるブロー配管42中に溜まっていく。ブロー配管42は、サイトグラス421を有しているので、密封油Lがどの程度溜まっているか確認でき、溜まった密封油Lの排出時期を把握することが容易である。
【0028】
ブロー配管42に溜まった密封油Lを定期的に除去するブロー清掃を行なう場合、バルブユニット32の上流の封止弁322を閉じ、ブロー配管42の封止弁422を数回繰り返し開閉する。フレーム13の内側から掃気される冷却媒体ガスGによって、第1のミスト回収区間31の下流の掃気管3およびブロー配管42の内面に付着している密封油Lも合わせて吹き流す。
【0029】
このように第4の実施形態の回転電機1は、ブロー配管42を備えていることで、サイトグラス421によって密封油Lのミストがどの程度下流へ流れているか確認できるので、メンテナンスで定期的にブローさせる以外に、状況に応じて適宜ブローさせる時期を判断しやすい。したがって、バルブユニット32の動作不良や、計器盤34の流量計341および純度計342の指示不良を未然に防ぐことができる。
【0030】
第5の実施形態の回転電機1について、図5を参照して説明する。図5に示すように、第5の実施形態の回転電機1においてガス純度維持装置15は、ブロー配管42が分岐された位置からバルブユニット32までの間の掃気管3に、第2のミスト回収区間36を有する。第2のミスト回収区間36は、下流の方が相対位置が高くなるように設けられている。第5の実施形態における第2のミスト回収区間36は、下流に向かうにしたがって上り勾配となるように設定された傾斜配管である。また、バルブユニット32は、第3の実施形態と同様に、並列に2つ用意されている。
【0031】
第2のミスト回収区間36の内壁に付着した密封油Lのミストは、ブロー配管42に流れ込み溜まる。ブロー配管42に溜まった密封油Lは、第4の実施形態と同様に排出される。第2のミスト回収区間36を有していることによって、バルブユニット32までの掃気管3の内壁に付着して液状になった密封油Lを効果的に回収し、排出することができる。
【0032】
第6の実施形態の回転電機1について、図6を参照して説明する。図6に示すように、第6の実施形態の回転電機1における第2のミスト回収区間36は、上流側の掃気管3と下流側の掃気管3とを鉛直に接続する上行配管である点が第5の実施形態の回転電機1と異なっている。なお、第1のミスト回収区間31は、図6において傾斜配管であるが、第2の実施形態のように上行配管であってもよい。
【0033】
第2のミスト回収区間36を備えていることで、第5の実施形態と同様に、バルブユニット32までの間の掃気管3の内壁に付着して液状になった密封油Lを効果的に回収することができる。
【0034】
第7の実施形態の回転電機1について、図7を参照して説明する。図7に示すように、第7の実施形態の回転電機1においてガス純度維持装置15は、ブロー配管42が分岐された位置から第2のミスト回収区間36までの間にミストトラップ37を有している。このミストトラップ37は、密封油Lと同じ成分の油370が貯留された溶器371と、上流側の掃気管3に接続されて油370の中に差し込まれた流入口372と、油370の液面よりも上から下流側の掃気管3に接続される流出口373とを備える。
【0035】
また、ブロー配管42の分岐された位置とミストトラップ37との間に、封止弁374を設置している。この封止弁374には、ベローズ弁が採用される。ブロー配管42に溜まった密封油Lを排出する場合、ミストトラップ37上流の封止弁374を閉鎖し、ブロー配管42の封止弁422を開放する。
【0036】
ミストトラップ37を備えていることによって、第1のミスト回収区間31を通過した冷却媒体ガスG中に含まれる密封油Lのミストをミストトラップ37で分離することができる。ミストトラップ37は、バルブユニット32、ドレンポット33および計器盤34の上流に設置されるので、これらの機器に密封油Lのミストが送られることを防止できる。バルブユニット32やドレンポット33を通過するオイルミストの量が減るので、バルブユニット32やドレンポット33をメンテナンスやクリーニングする回数を減らすことができる。また、計器盤34に到達するオイルミストの量が減ることによって、流量計341や純度計342など計測器が指示不良を生じる確率が極めて小さくなる。
【0037】
第8の実施形態の回転電機について、図8を参照して説明する。図8に示すように、第7の実施形態の回転電機1におけるガス純度維持装置15は、第7の実施形態におけるガス純度維持装置15が備えるミストトラップ37と同じものを、ドレンポット33と計器盤34との間の掃気管3にも設置している。ミストトラップ37の上流には、封止弁375が設置され、メンテナンスなどの際に閉鎖され、ミストトラップ37内の油370が掃気管3に逆流するのを防止する。
【0038】
ドレンポット33と計器盤34の間にもミストトラップ37が設置されることによって、計器盤34に到達する密封油のミストが極めて少なくなる。
【0039】
第9の実施形態の回転電機1について、図9および図10を参照して説明する。第9の実施形態の回転電機1は、図9および図10に示すようにガス純度維持装置15の拡大槽21の内部構造が第1から第8の実施形態の拡大槽21と異なっている。この拡大槽21は、図9に示すように、流入口211から排気口212までの間において、少なくとも油面から上側の部分、すなわち冷却媒体ガスGが充満している部分を仕切るミスト捕集器213を備えている。
【0040】
具体的には、ミスト捕集器213の下縁213aは、拡大槽21の内部に溜まっている密封油Lを密封油供給ライン20に戻す油回収路23の孔口231よりも低い位置まで延びており、したがって、密封油Lに沈んでいる。ミスト捕集器213は、油面よりも高い位置に通気フィルタ214を有している。
【0041】
通気フィルタ214の目が細かすぎると、冷却媒体ガスGの通気抵抗となるし、密封油Lが目に詰まったり、詰まった密封油Lが弾けて新たなミストを下流側に生じたりする。したがって、通気フィルタ214は、密封油Lの表面張力によって簡単に塞がらない程度の粗さのメッシュを採用する。
【0042】
このような通気フィルタ214は、密封油Lが拡大槽21に流入したときに跳ね上がった油滴や、冷却媒体ガスGに含まれるミスト状の密封油Lのうち粒度の大きいものを捕集し、冷却媒体ガスGを通過させる。通気フィルタ214に捕集された密封油Lは、ミスト捕集器213を伝って拡大槽21に溜まる。拡大槽21の中にミスト捕集器213を設置し、粒度の大きいミストを捕集することによって、拡大槽21の下流へ流れる密封油Lのミストの絶対量が減る。
【0043】
なお、通気フィルタ214の代わりに、迷路のように入り組んだ流路をベーンなどで形成し、そこに密封油Lのミストを含んだ冷却媒体ガスGを通過させ、ミストを補修するようにしたミスト捕集器を採用してもよい。または、密封油Lが絶縁性であれば電気集塵機と同じように静電気による電場を発生させてミストを引き付けるミスト捕集器を設置してもよい。または、旋回流を発生させてミストを遠心分離するサイクロン式のミスト捕集器を排気口212の手前に設置してもよい。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0045】
1…回転電機、11…回転子、111…軸、12…固定子、13…フレーム、141…軸封装置、15…ガス純度維持装置、21…拡大槽、211…流入口、212…排気口、213…ミスト捕集器、214…通気フィルタ、3…掃気管、31…第1のミスト回収区間、32…バルブユニット、321…ニードル弁、322,323…(バルブユニットの)封止弁、33…ドレンポット、34…計器盤、341…流量計、342…純度計、36…第2のミスト回収区間、37…ミストトラップ、42…ブロー配管、421…サイトグラス、422…封止弁、G…冷却媒体ガス、L…密封油。
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、フレーム内に封入した冷却媒体ガスの純度を維持する構成を有するガス純度維持装置を備える回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機は、回転子、固定子、軸受、およびフレームを有し、内部に冷却媒体ガスとして水素ガスを密封している。冷却媒体ガスが軸受から漏れないように軸受には軸封装置が設けられている。軸封装置は、回転電機の内部の圧力よりも高い圧力で密封油供給ラインから密封油が供給される。また、軸封装置から排出された密封油は、回収され、密封油供給ラインに戻される。軸封装置から軸受の空気側に流れ排出された密封油は、空気等のガスが混入しているので、そのまま密封油供給ラインへ循環させると、密封油からガスが溶出し、フレーム内の水素ガスの純度を徐々に低下させてしまう。
【0003】
密封油供給ラインに設けて水素ガスの純度を維持する装置として、2つの方式が知られている。一つは、軸封装置に供給される密封油を真空処理装置を用いて脱気する真空処理方式であり、もう一つは、真空処理装置を設けずに回転電機内の水素ガス純度を維持するための設備を配した連続掃気方式である。
【0004】
連続掃気方式を採用するガス純度維持装置では、真空処理が成されていない密封油が軸封装置に供給され、回転電機内の水素ガスの純度が序々に低下するが、一定量のガスを連続して掃気しながら、高純度の新たな水素ガスを自動補給することで純度の維持を図る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭61−202161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
回転電機内の冷却媒体ガスである水素ガスの純度を維持するために、連続掃気方式により密封油処理系統から冷却媒体ガスを掃気すると、密封油の一部が粒度の細かいミストとなって、掃気した冷却媒体ガスの中に混入してしまう。掃気した冷却媒体ガスに密封油のミストが混入していると、このガスを送通する配管の途中で密封油のミストが付着して液状に戻り、油が配管内に溜まってしまう。冷却媒体ガスを掃気する配管の途中には、掃気流量や圧力を調整するためのニードル弁や、掃気流量を計測するための流量計および掃気されるガスである水素ガスの純度を計測する純度計などのゲージが設置された計器盤が接続されている。
【0007】
特にニードル弁や計器盤のゲージにミストが浸入すると、その構造上、密封油が液状になって溜まりやすい。その結果、ニードル弁で制御する流量に誤差が生じたり、計器類の表示に誤差が生じたりする。ニードル弁による流量制御に誤差が生じると、冷却媒体ガスの掃気流量が低下し、冷却媒体ガスの水素ガスの純度が低下する。また、計器類の表示に誤差が含まれると、正常な監視を行なえないため、適正な連続掃気の運転ができなくなる。
【0008】
そこで、本発明に係る一実施形態は、掃気された冷却媒体ガスを送通する配管に沿って密封油のミストが下流へ運ばれることを抑制する回転電機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態の回転電機は、回転子と、固定子と、フレームと、軸封装置と、ガス純度維持装置とを備える。フレームは、回転子および固定子を収納し、内部を冷却媒体ガスで満たされる。軸封装置は、回転子の軸の外周に装着され、冷却媒体ガスの圧力よりも高い圧力の密封油が供給される。ガス純度維持装置は、軸封装置から排出された密封油を軸封装置へ循環させる密封油供給ラインに接続され、冷却媒体ガスの純度を一定以上に維持する。このガス純度維持装置は、拡大槽と、第1のミスト回収区間と、バルブユニットと、ドレンポットと、計器盤とを備える。拡大槽は、軸封装置から軸受の水素側に流れ排出される密封油とともに冷却媒体ガスの一部を回収し、密封油に混入している冷却媒体ガスの一部を分離させ抽出する。第1のミスト回収区間は、拡大槽中の冷却媒体ガスを排気するために拡大槽から延びる掃気管の途中に設けられ、下流の方が高くなっている。バルブユニットは、第1のミスト回収区間の下流に配置され、冷却媒体ガスの流量を調整する。ドレンポットは、バルブユニットの下流に配置される。計器盤は、ドレンポットの下流に配置され、冷却媒体ガスの流量計および純度計を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態の回転電機を模式的に示す図。
【図2】第2の実施形態の回転電機の拡大槽および第1のミスト回収区間を示す図。
【図3】第3の実施形態の回転電機の拡大槽からバルブユニットまでを示す図。
【図4】第4の実施形態の回転電機の拡大槽からドレンポットまでを示す図。
【図5】第5の実施形態の回転電機の拡大槽からバルブユニットまでを示す図。
【図6】第6の実施形態の回転電機の拡大槽からバルブユニットまでを示す図。
【図7】第7の実施形態の回転電機の拡大槽からバルブユニットまでを示す図。
【図8】第8の実施形態の回転電機を模式的に示す図。
【図9】第9の実施形態の回転電機の拡大槽の断面を模式的に示す図。
【図10】図9中のF10−F10線に沿う拡大槽の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
第1の実施形態の回転電機1について、図1を参照して説明する。図1に示す回転電機1は、回転子11と、固定子12と、フレーム13と、軸受14と、ガス純度維持装置15とを備える。回転子11および固定子12は、フレーム13に収納されている。フレーム13の内部は、冷却媒体ガスGとして用いられる水素ガスで満たされている。軸受14は、回転子11の軸111を支持するとともに、軸111の外周に装着されて冷却媒体ガスGを封止する軸封装置141を内蔵している。
【0012】
軸封装置141は、冷却媒体ガスGの圧力よりも高い圧力で密封油供給ライン2から密封油Lが供給される。軸封装置141は、回転子11の軸111の外面に沿ってフレーム13の内部および外部の両側に密封油Lを流出させることで、回転子11の軸111とフレーム13との間を密封する。
【0013】
ガス純度維持装置15は、拡大槽21と、第1のミスト回収区間31と、バルブユニット32と、ドレンポット33と、計器盤34と、を備える。ガス純度維持装置15は、軸封装置141から排出された密封油Lを軸封装置141へ循環させる密封油供給ライン2に接続され、冷却媒体ガスGの純度を一定以上に維持する。
【0014】
拡大槽21は、軸封装置141よりも低い位置に設置され、内部の液面よりも高い位置に流入口211を有している。排油管22は、この流入口211に接続されている。拡大槽21は、軸封装置141から軸受14の水素側に流れた密封油Lを排油管22で回収する。拡大槽21では、密封油Lに混入している冷却媒体ガスGの一部を分離させ抽出する。また、拡大槽21および排油管22は、密封油Lを回収するとともに、冷却媒体ガスGの一部を掃気ガスとして掃気する経路となる。
【0015】
拡大槽21は、流入口211から離れた上部に排気口212を備えている。排気口212には、掃気管3が接続されている。掃気管3は、第1のミスト回収区間31とバルブユニット32とドレンポット33とを通って計器盤34まで接続される。第1のミスト回収区間31は、拡大槽21の排気口212から上方へ鉛直に延びた掃気管3に取り付けられたベローズ弁301の下流に接続されている。この第1のミスト回収区間31は、下流の方が高くなるように設置されている。第1の実施形態において第1のミスト回収区間31は、下流に向かうに従って相対位置が高くなるように上り勾配をつけて設置された傾斜配管である。
【0016】
バルブユニット32は、第1のミスト回収区間31よりも下流に配置され、冷却媒体ガスGの掃気流量を調整する。バルブユニット32は、流量調整をするためのニードル弁321と、その上流および下流に1つずつ設置される封止弁322,323とを備えている。本実施形態では、封止弁322,323としてベローズ弁が採用されている。ドレンポット33は、バルブユニット32の下流に配置され、冷却媒体ガスG中の密封油Lのミストや蒸気が除去される。ドレンポット33を通過した冷却媒体ガスGは、計器盤34に送られる。
【0017】
計器盤34は、掃気管3を流れる冷却媒体ガスGの流量を計測する流量計341、および掃気される冷却媒体ガスGの水素ガスの純度を計測する純度計342を有する。回転電機1は、冷却媒体ガスGの管理装置を有しており、計器盤34において計測された流量および純度を基に、純度計342の値からフレーム13中の冷却媒体ガスGとしての水素ガスの純度を監視し、掃気する冷却媒体ガスGの流量と、フレーム13に供給する高純度の水素ガスの流量とを制御する。
【0018】
計器盤34を通過した冷却媒体ガスGは、大気放出管35から放出される。大気放出管35と計器盤34とが接続された位置から分岐して下方に延びるドレン経路41をさらに備える。このドレン経路41は、排液溜331に通じるドレンポット33の排液経路332の途中に接続されている。
【0019】
回転電機1は、軸封装置141のそれぞれに対応して、拡大槽21から計器盤34まで、冷却媒体ガスGを掃気する経路を同じように有していてもよいし、途中で合流させてもよい。
【0020】
以上のように構成された回転電機1は、拡大槽21から掃気される冷却媒体ガスG中に混在している密封油Lのミストが第1のミスト回収区間31の内壁に付着して液状になっても、第1のミスト回収区間31の上流へ流れ、拡大槽21に戻される。したがって、密封油Lのミストがバルブユニット32や計器盤34に運ばれることを防止することができる。その結果、バルブユニット32に設置される流量調整弁として採用されるニードル弁321や、計器盤34の流量計341および純度計342に密封油Lが溜まることに起因する誤作動が防止される。
【0021】
以下、第2から第9の実施形態の回転電機1について、各図面を参照して説明する。このとき、第1の実施形態の回転電機1と同じ機能を有する構成は、各図中に第1の実施形態の回転電機1の構成と同じ符号を付し、その説明は第1の実施形態の記載を参酌する。また、各実施形態および各図に示されていない構成は、第1の実施形態と同じであるものとし、図1およびその記載を参酌するものとする。
【0022】
第2の実施形態の回転電機1について、図2を参照して説明する。図2に示すように、第2の実施形態の回転電機1は、第1のミスト回収区間31の形状が異なる。この第1のミスト回収区間31は、拡大槽21から上方に延びる上流側の掃気管3と、バルブユニット32に通じる下流側の掃気管3との間を鉛直に接続する上行配管である。
【0023】
第1の実施形態と同様に、拡大槽21から流出した密封油Lのミストがこの第1のミスト回収区間31において内壁に付着して液状になっても、密封油Lは、拡大槽21側へ戻り、下流に有るバルブユニット32側へ流れない。また、第1のミスト回収区間31の上流端は、掃気管3と鉛直に接続する。接続部で冷却媒体ガスGの流れの向きが略直角に曲げられることによって、冷却媒体ガスG中の密封油Lのミストが壁面に衝突して、回収されやすくなる。
【0024】
第3の実施形態の回転電機1について、図3を参照して説明する。図3に示すように、第3の実施形態の回転電機1における第1のミスト回収区間31は、第1の実施形態と同じである。バルブユニット32は、並列に2つ設けられている。なお、掃気する冷却媒体ガスGの流量などの条件により、バルブユニット32を並列に3つ以上設けてもよい。
【0025】
この回転電機1において、バルブユニット32は、上流および下流に配置された封止弁322,323を閉じることによってニードル弁321を隔離し取り外すことができる。第3の実施形態の場合、バルブユニット32は、並列に2つ設けられているので、回転電機1が運転中であっても、バルブユニット32のうち1つをメンテナンスおよびクリーニングのために取り外すことができる。つまり回転電機1を止めなくてもよい。
【0026】
第4の実施形態の回転電機1について、図4を参照して説明する。図4に示すように、第4の実施形態の回転電機1においてガス純度維持装置15は、第1のミスト回収区間31の下流からバルブユニット32までの間の地点から分岐されて下方に向かって延びるブロー配管42をさらに備える。ブロー配管42は、サイトグラス421と封止弁422とを備える。このブロー配管42の下流は、ドレン経路41と同じく、ドレンポット33の排液経路332の途中に接続されている。封止弁422にはベローズ弁が採用される。また、第3の実施形態と同様にバルブユニット32を並列に2つ有している。
【0027】
第1のミスト回収区間31を通過した冷却媒体ガスG中の密封油Lのミストは、第1のミスト回収区間31から下方に下る掃気管3の内面に付着して液状になることで、下方に延びるブロー配管42中に溜まっていく。ブロー配管42は、サイトグラス421を有しているので、密封油Lがどの程度溜まっているか確認でき、溜まった密封油Lの排出時期を把握することが容易である。
【0028】
ブロー配管42に溜まった密封油Lを定期的に除去するブロー清掃を行なう場合、バルブユニット32の上流の封止弁322を閉じ、ブロー配管42の封止弁422を数回繰り返し開閉する。フレーム13の内側から掃気される冷却媒体ガスGによって、第1のミスト回収区間31の下流の掃気管3およびブロー配管42の内面に付着している密封油Lも合わせて吹き流す。
【0029】
このように第4の実施形態の回転電機1は、ブロー配管42を備えていることで、サイトグラス421によって密封油Lのミストがどの程度下流へ流れているか確認できるので、メンテナンスで定期的にブローさせる以外に、状況に応じて適宜ブローさせる時期を判断しやすい。したがって、バルブユニット32の動作不良や、計器盤34の流量計341および純度計342の指示不良を未然に防ぐことができる。
【0030】
第5の実施形態の回転電機1について、図5を参照して説明する。図5に示すように、第5の実施形態の回転電機1においてガス純度維持装置15は、ブロー配管42が分岐された位置からバルブユニット32までの間の掃気管3に、第2のミスト回収区間36を有する。第2のミスト回収区間36は、下流の方が相対位置が高くなるように設けられている。第5の実施形態における第2のミスト回収区間36は、下流に向かうにしたがって上り勾配となるように設定された傾斜配管である。また、バルブユニット32は、第3の実施形態と同様に、並列に2つ用意されている。
【0031】
第2のミスト回収区間36の内壁に付着した密封油Lのミストは、ブロー配管42に流れ込み溜まる。ブロー配管42に溜まった密封油Lは、第4の実施形態と同様に排出される。第2のミスト回収区間36を有していることによって、バルブユニット32までの掃気管3の内壁に付着して液状になった密封油Lを効果的に回収し、排出することができる。
【0032】
第6の実施形態の回転電機1について、図6を参照して説明する。図6に示すように、第6の実施形態の回転電機1における第2のミスト回収区間36は、上流側の掃気管3と下流側の掃気管3とを鉛直に接続する上行配管である点が第5の実施形態の回転電機1と異なっている。なお、第1のミスト回収区間31は、図6において傾斜配管であるが、第2の実施形態のように上行配管であってもよい。
【0033】
第2のミスト回収区間36を備えていることで、第5の実施形態と同様に、バルブユニット32までの間の掃気管3の内壁に付着して液状になった密封油Lを効果的に回収することができる。
【0034】
第7の実施形態の回転電機1について、図7を参照して説明する。図7に示すように、第7の実施形態の回転電機1においてガス純度維持装置15は、ブロー配管42が分岐された位置から第2のミスト回収区間36までの間にミストトラップ37を有している。このミストトラップ37は、密封油Lと同じ成分の油370が貯留された溶器371と、上流側の掃気管3に接続されて油370の中に差し込まれた流入口372と、油370の液面よりも上から下流側の掃気管3に接続される流出口373とを備える。
【0035】
また、ブロー配管42の分岐された位置とミストトラップ37との間に、封止弁374を設置している。この封止弁374には、ベローズ弁が採用される。ブロー配管42に溜まった密封油Lを排出する場合、ミストトラップ37上流の封止弁374を閉鎖し、ブロー配管42の封止弁422を開放する。
【0036】
ミストトラップ37を備えていることによって、第1のミスト回収区間31を通過した冷却媒体ガスG中に含まれる密封油Lのミストをミストトラップ37で分離することができる。ミストトラップ37は、バルブユニット32、ドレンポット33および計器盤34の上流に設置されるので、これらの機器に密封油Lのミストが送られることを防止できる。バルブユニット32やドレンポット33を通過するオイルミストの量が減るので、バルブユニット32やドレンポット33をメンテナンスやクリーニングする回数を減らすことができる。また、計器盤34に到達するオイルミストの量が減ることによって、流量計341や純度計342など計測器が指示不良を生じる確率が極めて小さくなる。
【0037】
第8の実施形態の回転電機について、図8を参照して説明する。図8に示すように、第7の実施形態の回転電機1におけるガス純度維持装置15は、第7の実施形態におけるガス純度維持装置15が備えるミストトラップ37と同じものを、ドレンポット33と計器盤34との間の掃気管3にも設置している。ミストトラップ37の上流には、封止弁375が設置され、メンテナンスなどの際に閉鎖され、ミストトラップ37内の油370が掃気管3に逆流するのを防止する。
【0038】
ドレンポット33と計器盤34の間にもミストトラップ37が設置されることによって、計器盤34に到達する密封油のミストが極めて少なくなる。
【0039】
第9の実施形態の回転電機1について、図9および図10を参照して説明する。第9の実施形態の回転電機1は、図9および図10に示すようにガス純度維持装置15の拡大槽21の内部構造が第1から第8の実施形態の拡大槽21と異なっている。この拡大槽21は、図9に示すように、流入口211から排気口212までの間において、少なくとも油面から上側の部分、すなわち冷却媒体ガスGが充満している部分を仕切るミスト捕集器213を備えている。
【0040】
具体的には、ミスト捕集器213の下縁213aは、拡大槽21の内部に溜まっている密封油Lを密封油供給ライン20に戻す油回収路23の孔口231よりも低い位置まで延びており、したがって、密封油Lに沈んでいる。ミスト捕集器213は、油面よりも高い位置に通気フィルタ214を有している。
【0041】
通気フィルタ214の目が細かすぎると、冷却媒体ガスGの通気抵抗となるし、密封油Lが目に詰まったり、詰まった密封油Lが弾けて新たなミストを下流側に生じたりする。したがって、通気フィルタ214は、密封油Lの表面張力によって簡単に塞がらない程度の粗さのメッシュを採用する。
【0042】
このような通気フィルタ214は、密封油Lが拡大槽21に流入したときに跳ね上がった油滴や、冷却媒体ガスGに含まれるミスト状の密封油Lのうち粒度の大きいものを捕集し、冷却媒体ガスGを通過させる。通気フィルタ214に捕集された密封油Lは、ミスト捕集器213を伝って拡大槽21に溜まる。拡大槽21の中にミスト捕集器213を設置し、粒度の大きいミストを捕集することによって、拡大槽21の下流へ流れる密封油Lのミストの絶対量が減る。
【0043】
なお、通気フィルタ214の代わりに、迷路のように入り組んだ流路をベーンなどで形成し、そこに密封油Lのミストを含んだ冷却媒体ガスGを通過させ、ミストを補修するようにしたミスト捕集器を採用してもよい。または、密封油Lが絶縁性であれば電気集塵機と同じように静電気による電場を発生させてミストを引き付けるミスト捕集器を設置してもよい。または、旋回流を発生させてミストを遠心分離するサイクロン式のミスト捕集器を排気口212の手前に設置してもよい。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0045】
1…回転電機、11…回転子、111…軸、12…固定子、13…フレーム、141…軸封装置、15…ガス純度維持装置、21…拡大槽、211…流入口、212…排気口、213…ミスト捕集器、214…通気フィルタ、3…掃気管、31…第1のミスト回収区間、32…バルブユニット、321…ニードル弁、322,323…(バルブユニットの)封止弁、33…ドレンポット、34…計器盤、341…流量計、342…純度計、36…第2のミスト回収区間、37…ミストトラップ、42…ブロー配管、421…サイトグラス、422…封止弁、G…冷却媒体ガス、L…密封油。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転子と、
固定子と、
前記回転子および前記固定子を収納し内部を冷却媒体ガスで満たされるフレームと、
前記回転子の軸の外周に装着されて前記冷却媒体ガスの圧力よりも高い圧力の密封油が供給される軸封装置と、
前記軸封装置から排出された前記密封油を前記軸封装置へ循環させる密封油供給ラインに接続され前記冷却媒体ガスの純度を一定以上に維持するガス純度維持装置と、
を備える回転電機であって、前記ガス純度維持装置は、
前記軸封装置から前記フレームの内側に流出する前記密封油とともに前記冷却媒体ガスの一部を回収し前記密封油に混入している前記冷却媒体ガスを分離させ抽出する拡大槽と、
前記拡大槽中の前記冷却媒体ガスを掃気するために前記拡大槽から延びる掃気管の途中に設けられ下流の方が高くなった第1のミスト回収区間と、
前記第1のミスト回収区間の下流に配置されて前記冷却媒体ガスの流量を調整するバルブユニットと、
前記バルブユニットの下流に配置されるドレンポットと、
前記ドレンポットの下流に配置され前記冷却媒体ガスの流量計および純度計を有する計器盤と
を備えることを特徴とする回転電機。
【請求項2】
前記第1のミスト回収区間は、下流に向かって上り勾配の傾斜配管である
ことを特徴とする請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記第1のミスト回収区間は、その上流と下流とを鉛直に接続する上行配管である
ことを特徴とする請求項1に記載の回転電機。
【請求項4】
前記バルブユニットは、流量調整をするニードル弁とその上流および下流に1つずつ設置される封止弁とを備え、並列に少なくとも2つ設けられる
ことを特徴とする請求項1に記載の回転電機。
【請求項5】
前記ガス純度維持装置は、前記第1のミスト回収区間の下流から前記バルブユニットまでの間の地点から分岐されて下方に向かって延びるブロー配管をさらに備える
ことを特徴とする請求項1に記載の回転電機。
【請求項6】
前記ガス純度維持装置は、前記ブロー配管が分岐された位置から前記バルブユニットまでの間に配置され下流の方が高くなった第2のミスト回収区間を設ける
ことを特徴とする請求項5に記載の回転電機。
【請求項7】
前記第2のミスト回収区間は、下流に向かって上り勾配の傾斜配管である
ことを特徴とする請求項6に記載の回転電機。
【請求項8】
前記第2のミスト回収区間は、その上流と下流とを鉛直に接続する上行配管である
ことを特徴とする請求項6に記載の回転電機。
【請求項9】
前記ブロー配管の下流は、前記ドレンポットの排液側に接続される
ことを特徴とする請求項5に記載の回転電機。
【請求項10】
前記ブロー配管は、サイトグラスと、この下流に設置される封止弁とを備える
ことを特徴とする請求項5に記載の回転電機。
【請求項11】
前記ガス純度維持装置は、前記ブロー配管が分岐された位置から前記第2のミスト回収区間までの間にミストトラップを設置する
ことを特徴とする請求項6に記載の回転電機。
【請求項12】
前記ガス純度維持装置は、前記ドレンポットから前記計器盤までの間にミストトラップを設置する
ことを特徴とする請求項6に記載の回転電機。
【請求項13】
前記拡大槽は、少なくとも油面から上側を、前記フレームの内側から回収された前記密封油および前記冷却媒体ガスが流れ込む流入口から前記冷却媒体ガスを掃気する排気口までの間で仕切るミスト捕集器を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の回転電機。
【請求項14】
前記ミスト捕集器は、前記密封油のミストを捕集し前記冷却媒体ガスを通過させる通気フィルタである
ことを特徴とする請求項13に記載の回転電機。
【請求項1】
回転子と、
固定子と、
前記回転子および前記固定子を収納し内部を冷却媒体ガスで満たされるフレームと、
前記回転子の軸の外周に装着されて前記冷却媒体ガスの圧力よりも高い圧力の密封油が供給される軸封装置と、
前記軸封装置から排出された前記密封油を前記軸封装置へ循環させる密封油供給ラインに接続され前記冷却媒体ガスの純度を一定以上に維持するガス純度維持装置と、
を備える回転電機であって、前記ガス純度維持装置は、
前記軸封装置から前記フレームの内側に流出する前記密封油とともに前記冷却媒体ガスの一部を回収し前記密封油に混入している前記冷却媒体ガスを分離させ抽出する拡大槽と、
前記拡大槽中の前記冷却媒体ガスを掃気するために前記拡大槽から延びる掃気管の途中に設けられ下流の方が高くなった第1のミスト回収区間と、
前記第1のミスト回収区間の下流に配置されて前記冷却媒体ガスの流量を調整するバルブユニットと、
前記バルブユニットの下流に配置されるドレンポットと、
前記ドレンポットの下流に配置され前記冷却媒体ガスの流量計および純度計を有する計器盤と
を備えることを特徴とする回転電機。
【請求項2】
前記第1のミスト回収区間は、下流に向かって上り勾配の傾斜配管である
ことを特徴とする請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記第1のミスト回収区間は、その上流と下流とを鉛直に接続する上行配管である
ことを特徴とする請求項1に記載の回転電機。
【請求項4】
前記バルブユニットは、流量調整をするニードル弁とその上流および下流に1つずつ設置される封止弁とを備え、並列に少なくとも2つ設けられる
ことを特徴とする請求項1に記載の回転電機。
【請求項5】
前記ガス純度維持装置は、前記第1のミスト回収区間の下流から前記バルブユニットまでの間の地点から分岐されて下方に向かって延びるブロー配管をさらに備える
ことを特徴とする請求項1に記載の回転電機。
【請求項6】
前記ガス純度維持装置は、前記ブロー配管が分岐された位置から前記バルブユニットまでの間に配置され下流の方が高くなった第2のミスト回収区間を設ける
ことを特徴とする請求項5に記載の回転電機。
【請求項7】
前記第2のミスト回収区間は、下流に向かって上り勾配の傾斜配管である
ことを特徴とする請求項6に記載の回転電機。
【請求項8】
前記第2のミスト回収区間は、その上流と下流とを鉛直に接続する上行配管である
ことを特徴とする請求項6に記載の回転電機。
【請求項9】
前記ブロー配管の下流は、前記ドレンポットの排液側に接続される
ことを特徴とする請求項5に記載の回転電機。
【請求項10】
前記ブロー配管は、サイトグラスと、この下流に設置される封止弁とを備える
ことを特徴とする請求項5に記載の回転電機。
【請求項11】
前記ガス純度維持装置は、前記ブロー配管が分岐された位置から前記第2のミスト回収区間までの間にミストトラップを設置する
ことを特徴とする請求項6に記載の回転電機。
【請求項12】
前記ガス純度維持装置は、前記ドレンポットから前記計器盤までの間にミストトラップを設置する
ことを特徴とする請求項6に記載の回転電機。
【請求項13】
前記拡大槽は、少なくとも油面から上側を、前記フレームの内側から回収された前記密封油および前記冷却媒体ガスが流れ込む流入口から前記冷却媒体ガスを掃気する排気口までの間で仕切るミスト捕集器を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の回転電機。
【請求項14】
前記ミスト捕集器は、前記密封油のミストを捕集し前記冷却媒体ガスを通過させる通気フィルタである
ことを特徴とする請求項13に記載の回転電機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2013−62932(P2013−62932A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199275(P2011−199275)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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