説明

ガス絶縁開閉装置

【課題】密閉容器に絶縁ガスを給排出するためのガス配管の施工を容易にする。密閉容器とガス配管との間で発生するループ状のシース電流を低減する。
【解決手段】密閉容器1a〜3bに接続するガス配管6a,6bとして、高柔軟性の塗料を塗布されたオーステナイト系ステンレス製の金属ベローズから成る可撓配管7を使用する。可撓配管7は、その両端に回動自在にフランジ7bを設ける。このフランジ7bを使用して、ガス配管を密閉容器のガスポート8に接続する。ステンレス製の可撓配管は銅製の配管に比較して抵抗値が高く、シース電流を低減できる。可撓配管の外周に、高柔軟性の塗料を塗布する。塗装後であっても、可撓配管の曲げ加工が可能になり、耐候性も向上する。ガス配管の支持間隔を1m以上とする。商用電力系統の周波数によってガス配管が共振することがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密閉容器内に対するガス配管の構成に改良を施したガス絶縁開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属製の接地密閉容器内に高電圧導体やその遮断部などの機器を配置し、これらの高電圧機器と密閉容器間の絶縁をSF6ガスなどで絶縁したガス絶縁開閉装置は従来から知られている。このガス絶縁開閉装置には、密閉容器内に絶縁ガスを吸排気するために、ガス配管が設けられている。このようなガス配管は、特許文献1の図1に示すようにガス区分された隣接する密閉容器間を接続したり、図2に示すように各密閉容器とガス供給装置との間を接続するものである。特許文献2も同様なガス配管に関する技術であって、特に、ガス配管上にシース電流が流れることを防止するための絶縁部材を使用したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−40963公報
【特許文献2】特開2000−134734公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、特許文献1,2に記載されたようなガス配管を備えたガス絶縁開閉装置において、ガス配管としては一般に銅製の配管が使用されていた。また、特許文献2に示すように、ガス配管上にシース電流が流れることを防止するために、ガス配管に絶縁継手などの絶縁部材を配置することも知られていた。しかし、絶縁部材を配置すると、ガス配管の施設工事に手間が掛かる上に、その部分からのガス漏れの可能性も高くなる欠点があった。
【0005】
特に、ガス配管に絶縁部材を設けることは、部品点数が増えることや絶縁部材に過大な荷重が加わらないように配慮が必要であったり、絶縁部材が外部大気への露出する部分の防水対策が必要であった。また、ガス絶縁開閉装置は複数の機器の集合体であることから最終仕向け地まで分割する形で輸送し、現地で据付時に組立調整する場合があるが、この場合には配管施工についても銅配管のロー付けや曲げ施工を据付状態にあわせて現地で調整をする必要があり、不良が発生しないように細心の注意を払う必要があった。
【0006】
その上、従来の銅製の配管は、配管の直線部分には適していても銅管自体が屈曲し難いために、管路の屈曲部分に使用する場合に特殊な治具あるいは工具が必要であり、配管の設置現場での施工が困難であった。これについて、屈曲可能な銅製のベローズ(可撓性のある蛇腹状の管)を使用することも考えられるが、ガス配管は長期にわたって風雨にさらされることから、屈曲して配管した後に防錆用の塗装が必要であり、施工が面倒であった。
【0007】
本発明は前記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものであって、その目的は、絶縁部材を使用することなく配管にシース電流が流れることを防止すると共に、ガス配管の施工が容易なガス絶縁開閉装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために、本発明は、電気導体または電気接続した機器を密閉容器内に収納し、密閉容器内に絶縁性ガスを封入したガス絶縁開閉装置において、前記密閉容器に接続するガス配管として、非磁性のオーステナイト系ステンレス製金属ベローズ製の可撓配管を使用したことを特徴とする。また、可撓配管の端部にフランジを設け、このフランジを前記金属ベローズ部分と着脱可能に構成したこと、前記可撓配管の金属ベローズ部に高柔軟性硬化剤を使用した塗料を塗布もしくは電着塗装したことも、本発明の一態様である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ガス配管の管部をステンレス製金属ベローズで構成される可撓配管(Flexible tube)として、高抵抗とすることでシース電流の流れ込みを抑制して、絶縁部材を不要とすることができる。また、自由度の高い可撓配管を使用することにより、機器の組立調整結果に合わせて現地でロー付け作業をする必要がなくなり、曲げ作業のみでガス配管を設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例1の構成を示す斜視図。
【図2】実施例1における可撓配管の一例を示す断面図。
【図3】実施例2におけるガス配管設置例を示す図であって、(A)は正面図、(B)は側面図、(C)は平面図、(D)はガスゲージ部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0011】
[実施例1の構成]
以下、本発明の実施例1を図1及び図2に従って具体的に説明する。図1は、隣接する密閉容器間に配置したガス配管の位置例を示す斜視図である。図中、符号1a,1b,2a,2b,3a,3bは、それぞれその内部に電気導体または電気接続した機器を収納した3相分の密閉容器である。密閉容器1a,1b,2a,2b,3a,3b内には、SF6ガスなどの絶縁ガスが封入されている。各相の密閉容器1aと1b、2aと2b、3aと3bがフランジ部4を介して接続されている。各相の密閉容器はその境界部であるフランジ部4においてガス区分され、隣接する同相の密閉容器間で直接のガスの移動は行われない。各密閉容器
【0012】
密閉容器の外周には、各相の密閉容器1aと2aと3a又は1bと2bと3bを結び付けるように、密閉容器の軸方向と直交する方向に伸びる導電性部材5,5が固定されている。この導電性部材5,5は、各相の密閉容器間を通電可能に接続するものであるため、相間シャントと呼ばれる。
【0013】
隣接する密閉容器間には、ガス配管6a,6bが設けられている。このうち、ガス配管6aは、同相の隣接する密閉容器1a,1b間を接続するものであり、ガス配管6bは異なる相の隣接する密閉容器1b,2b,3bを接続するものである。なお、図には現れていないが、同相の隣接する密閉容器2a,2b間や3a,3b間を接続するガス配管も存在する。これにより、すべての密閉容器に対してガス配管が接続され、ガスの供給・排出が可能となる。
【0014】
本実施例において、各密閉容器を接続するガス配管6a,6bは、図2に示すような構成を有する可撓配管7によって構成されている。即ち、この可撓配管7は、その外周に高柔軟性の塗料を塗布したオーステナイト系ステンレス製の金属ベローズ7aの両端に、接続用フランジ7bを回転自在に装着したものである。この接続用フランジ7bを、各密閉容器側に設けたガス配管接続用のガスポート8に対して、図示しない気密ガスケットを介して密着固定することにより、可撓配管7から構成されたガス配管6a,6bが密閉容器に接続される。
【0015】
なお、この接続用フランジ7bを金属ベローズ7aの両端に取り付けるには、接続用フランジ7bの中心部に設けられた挿入孔内に予め金属ベローズ7aを挿入しておき、金属ベローズ7aの端部に口金7cを溶接、圧入、ねじ込みによって固定するか、金属ベローズ7aの端部をプレスで広げるなどの手段による。ただし、これらの手段に限定されるものではない。なお、7dは、フランジ7bに設けられたガスポート接続用ボルト孔である。
【0016】
高柔軟性の塗料は、前記のような塗布以外に、電着塗装によって可撓配管7に外周に施しても良い。また、高柔軟性の塗料とては、硬化後に柔軟性を有する1液反応硬化型水性ウレタン塗料や1液型特殊変性ポリエステル樹脂、柔軟性硬化剤を使用した2液反応型ウレタン塗料が使用できる。
【0017】
前記ガス配管6a,6bの支持間隔は、1m以上に設定されている。即ち、図1のガス配管6bのように直接密閉容器によって支持されている場合には密閉容器のガスポート8間の間隔、図1のガス配管6aのように管路の一部が別途設けた支持部材9によって支持されている場合には、ガスポート8と支持部材の間隔或いは支持部材9同士の間隔が、1m以上に設定されている。
【0018】
[実施例1の作用]
(1)シース電流の低減
図1の太線で示すように、各相の密閉容器1a〜3bと相間シャントである導電部材5,5によって形成された電路には、ループ状にシース電流10が流れる。実施例1のようにガス配管6a,6bと密閉容器1a〜3bが併設されている場合には、それぞれの抵抗分とインダクタンス分の比率で流れるシース電流10の量が決まる。密閉容器1a〜3bのループ長の方が大きい場合には、ガス配管6a,6bのループの方にもシース電流10が流れる可能性がある。本実施例によれば、ガス配管としてステンレス製金属ベローズを用いているので銅配管に比して高抵抗になるため、主回路から誘起されるシース電流10も小さくなり、銅配管を利用して接続したときのように大きな電流が流れて発熱することがない。
【0019】
この点を、下記(A) (B) に示す銅製の管とステンレス製ベローズを例に挙げて、具体的に説明する。
(A)外径が2cm、厚さ1mmの銅製の管
(B)外径が2cm、厚さ0.3mmのステンレス製ベローズ
【0020】
銅の固有抵抗は常温で1.78μΩcm、ステンレス鋼の固有抵抗は常温で72μΩcm程度である。また抵抗値は面積に反比例するので(A)と(B)の抵抗値RA、RBの比率は以下のように、
RB/RA=72/1.78*0.60/0.19≒128
と2桁のオーダーで大きくなる。
【0021】
配管の抵抗値が2桁オーダーで大きくなると、配管に分流するシース電流も相間シャントに比べると2桁オーダーで小さくなるので、主回路電流が2000Aの場合、配管に流れる電流は20A程度となる。一方、配管の許容温度上昇を30Kとすると、無風状態の20℃の大気中に水平に設置された外径2cm程度のステンレス丸導体の放熱量Qは以下の計算で概算できる。(実際には可撓波管形状なので単純円管よりも放熱面積は大きくなるので下記以上になる。)
【数1】

【0022】
また、上記配管の抵抗値Rはステンレスの抵抗値温度係数0.0057を用いると、次の通りである。
【数2】

【0023】
許容電流値をIとすると、発熱量と放熱量が等しい場合、Q=I2Rとなるので、上記の計算値を代入して計算するとI=√(Q/R)=√(26.5/0.045)=24Aになる。この値は、シース電流値と同等なので配管部に絶縁部を設ける必要はなくなる。
【0024】
(2)支持部の間隔を1m以上
ガス配管3の太さは通常ガスの給排気の作業性と曲げ施工性を考慮すると1cmから2cm程度の外径サイズを選択することが一般的である。一様断面でまっすぐな棒状の配管の一次固有振動数 は一般的に次式で計算できる。
【数3】

【0025】
仮に銅製で外径が2cmで1mm厚さの管(A)を想定すると、上記の計算により固有振動数は、下記の表1に示す通り、約84Hzの値が得られる。一方、2cmの径で0.3mm厚さのステンレス製ベローズ(B)とすると、下記の表2に示す通り、約121Hzの値が得られる。一般に、商用交流電力の周波数は50/60Hzであり、共振を回避するには倍周期の120Hz以下とすることが望ましい。
【表1】

【表2】

【0026】
よって、固有振動数を120Hz以下とするには支持間隔を1mより大きくすることが必要である。すなわち、上記計算例では101cm以上とすると120Hz以下となる。なお、上記の例では2cmの管径で計算したが、径が大きくなれば相対的に固有振動数は大きくなるので、少なくとも1m以上の間隔で支持すれば共振を回避することは可能である。
【0027】
(3)柔軟性
本実施例では、ステンレス製の可撓配管7の使用により、ベローの可撓性を活かして配管路にあわせて自在に管を曲げて施工することが可能である。特に、金属ベローズの材料として耐食性の良いステンレスを使用しているが、その上、本実施例では、可撓配管7の表面に高柔軟性の塗装を施して、外気の直接的な接触を防止しているため、海浜近隣地区などの腐食環境下でも応力腐食割れの危険性がなく、耐候性に優れている。
【実施例2】
【0028】
本発明の実施例2を、図3により説明する。この実施例2のガス絶縁開閉装置30は、遮断器31を介して、2本の主母線を1本の給電回線用の母線に接続するものである。すなわち、ガス絶縁開閉装置30は、3相分の遮断器31、各相の遮断器31の一端に接続された給電回線用の母線32、遮断器31の他端に垂直に接続されたT型接続母線33、T型接続母線33の上部の一端に設けられた第1の主母線用断路器34a、T型接続母線33の上部の他端に設けられた第2の主母線用断路器34bを備えている。ガス絶縁開閉装置30を構成するこれらの機器は、前記実施例1と同様に、密閉容器とその内部に配設された高電圧機器とから構成され、密閉容器内部に封入された絶縁ガスによってその絶縁が確保されている。
【0029】
実施例2において、3相の各機器は、図3(C)の平面図に示すように、相間シャントである導電部材35により、連結されている。また、各構成機器に絶縁ガスを吸排気するために、各密閉容器に設けられたガスポート8を接続するようにガス配管36が設けられている。このガス配管36の一部には、圧力監視用のガスゲージ37が設けられている。このガスゲージ37は、ガス絶縁開閉装置30の保守または運転時に目視確認が必要であるため、保守または運転時に人が接近できる位置に設けられている。
【0030】
前記ガス配管36及びガスゲージ37の取り付け用の配管は、前記実施例1と同様に、高柔軟性の塗料を塗布されたオーステナイト系ステンレス製の金属ベローズの両端に接続用フランジを設けた可撓配管が使用されている。また、配管の長尺の部分は支持部材38により密閉容器に指示されているが、その場合、配管部は少なくとも1m以上の間隔で機器本体に支持されている点も実施例1と同様である。
【0031】
このような構成を有する実施例2においても、前記実施例1と同様に、ガス配管36としてステンレス製の可撓配管を使用したため、ガス配管にループ状にシース電流が流れることを防止できる。また、配管部を1m以上の間隔で支持することにより、商用電力系統の周波数との共振に起因する振動を防止できる。更に、高柔軟性の塗料を可撓配管の外周に塗布しておくことにより、配管屈曲後における塗装の施工が不要になると共に、配管の耐候性の向上が可能になる。
【0032】
[他の実施例]
本発明は、前記の実施例に限定されるものではなく、次のような他の実施例も包含する。(1) 可撓配管7を金属繊維ブレード(braid)で保護することにより、外部からの衝撃による破損防止を図る。
【0033】
(2) 銅もしくは真鍮製の直線状の配管とステンレス製の可撓配管7を併用することにより、配管路の長い直線部のような単純形状部は真直ぐな管状の配管で施工し、途中に高抵抗で施工自由度の高いステンレス製の可撓配管7を組み込むことで、全てを可撓配管7で構成することなく施工性の向上と絶縁部材の省略を可能とする。この場合、ガスゲージ37の接続周辺部は計器が集中するので、可撓性の高い配管を用いることにより施工性が向上する。
【符号の説明】
【0034】
1a〜3b…密閉容器
4…フランジ部
5…導電性部材
6a,6b…ガス配管
7…可撓配管
8…ガスポート
9…支持部材
10…シース電流
30…ガス絶縁開閉装置
31…遮断器
32…給電回線用の母線
33…T型接続母線33
34a,34b…主母線用断路器
35…導電部材
36…ガス配管
37…ガスゲージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気導体または電気接続した機器を密閉容器内に収納し、密閉容器内に絶縁性ガスを封入したガス絶縁開閉装置において、
前記密閉容器間もしくは密閉容器とガスゲージ間を非磁性のオーステナイト系ステンレス製金属ベローズ製の可撓配管で接続したことを特徴とするガス絶縁開閉装置。
【請求項2】
請求項1に記載のガス絶縁開閉装置おいて、前記可撓配管の端部にフランジを設け、かつこのフランジを前記金属ベローズ部分と着脱可能に構成し、このフランジを介して密閉容器に可撓配管を接続したたことを特徴とするガス絶縁開閉装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のガス絶縁開閉装置において、
可撓配管の支持部材の間隔を1m以上としたことを特徴とするガス絶縁開閉装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のガス絶縁開閉装置において、
前記可撓配管の金属ベローズ部に高柔軟性塗料を塗布もしくは電着塗装によって施したことを特徴とするガス絶縁開閉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−15490(P2011−15490A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−155568(P2009−155568)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】