説明

ガス調理器

【課題】加熱庫に出し入れ自在に収納される調理容器で食材を加熱調理するガス調理器において、前記調理容器で高品質のケーキやパン等の焼物が調理できるようにする。
【解決手段】加熱庫内の上火バーナと下火バーナの燃焼を開始させる点火手段と、前記燃焼を開始させた後の加熱時間を計測する加熱タイマと、加熱調理時間を手入力で設定する調理時間設定手段と、前記調理時間設定手段で設定された前記加熱調理時間に基づいて、該加熱調理時間より短い初期加熱時間を演算する初期加熱時間演算手段と、前記加熱タイマが計測した加熱時間が前記初期加熱時間演算手段で演算された初期加熱時間に到達した場合に前記上火バーナを消火させる加熱量切替手段と、前記加熱タイマが計測した前記加熱時間が前記調理時間設定手段で設定された加熱調理時間に到達した場合に前記下火バーナを消火させる消火手段と、を具備すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス調理器、特に、調理容器を加熱庫内に収納して加熱調理する形式のガス調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のガス調理器として、特許文献1に開示されたものが知られている。
このものでは、前方開口が開閉扉で覆われた加熱庫内には上火バーナと下火バーナが配設されていると共に、該加熱庫には、蓋付きの調理容器が出し入れ自在に収納されるようになっている。
【0003】
加熱調理の際には、食材を入れた調理容器を加熱庫に収納して上火バーナと下火バーナを燃焼させると、調理容器内の食材が上火バーナと下火バーナで上下から加熱されて調理が進行する。そして、料理が出来上がる頃に、加熱庫の開閉扉を開放して調理容器を引き出すと共に、該調理容器の蓋体を開けて料理の出来具合を確認し、料理が出来上がっている場合は、上火バーナと下火バーナを消火させて調理容器を加熱庫から取り出す。
このものでは、加熱庫で加熱される調理容器を利用することにより、煮物や蒸し物、更には、ケーキ・パン等の種々の調理が行なえる。
【特許文献1】特開2005−237464号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のものでは、加熱庫から引き出した調理容器の蓋体を開けて料理の出来具合を何回か確認する必要があり、加熱調理の進捗状況を経験に基づいて感覚的に判断しているから、加熱調理に手間が掛かるという問題がある。
【0005】
そこで、上記問題を解決するため、加熱庫に温度センサを設けると共に、該温度センサの検知温度に基づいて前記上火バーナや下火バーナの燃焼を制御することも考えられる。ところが、かかるものでは、温度センサの検知温度、即ち、温度センサの配設部の温度と、調理容器内の温度とのズレがあることから、精緻な制御が困難である。特に、表面の焼き加減と生地内の湿り度合いの両者が相俟って食味や食感等の品質が決まるパンやケーキを適正に焼き上げるのは難しい。又、上火バーナを調理完了時まで燃焼させると、加熱庫内の下部空間に比べて温度が高い上部空間が上火バーナで加熱されて一層高温になることから、調理容器の底部より上部が高温になって均一加熱できず、高品質のパンやケーキを焼き上げることが難しい。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みて成されたもので、
『前方開口が開閉扉で閉塞される加熱庫と、
前記加熱庫に出し入れ自在に収納される調理容器と、
前記調理容器の上部を加熱する上火バーナと、
前記調理容器の下部を加熱する下火バーナと、を具備し、
前記調理容器に食材を入れて加熱調理するガス調理器』において、前記調理容器で高品質のケーキやパン等の焼物が調理できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[請求項1に係る発明]
上記課題を解決するための請求項1に係る発明の解決手段は、
『前記上火バーナと下火バーナの燃焼を開始させる点火手段と、
前記燃焼を開始させた後の加熱時間を計測する加熱タイマと、
加熱調理時間を手入力で設定する調理時間設定手段と、
前記調理時間設定手段で設定された前記加熱調理時間に基づいて、該加熱調理時間より短い初期加熱時間を演算する、初期加熱時間演算手段と、
前記加熱タイマが計測した加熱時間が前記初期加熱時間演算手段で演算された初期加熱時間に到達した場合に前記上火バーナを消火させる加熱量切替手段と、
前記加熱タイマが計測した前記加熱時間が前記調理時間設定手段で設定された加熱調理時間に到達した場合に前記下火バーナを消火させる消火手段と、を具備する』ことである。
【0008】
上記解決手段は次のように作用する。
ケーキやパンを焼くときは、先ず、調理容器にケーキ等の生地を入れる。
次に、調理時間設定手段で加熱調理時間を手入力により設定する。
この状態で、前記調理容器を加熱庫に収納して調理を開始させると、点火手段が作動して上火バーナと下火バーナが燃焼し、これにより、加熱庫全体の温度が上昇し始めると共に、調理容器が加熱され始める。そして、前記燃焼の開始後の加熱時間が加熱タイマで計測される。
【0009】
一方、初期加熱時間演算手段は、前記調理時間設定手段で設定された加熱調理時間に基づいて、該加熱調理時間より短い初期加熱時間を演算する。
前記加熱タイマで計測された加熱時間(上下バーナの燃焼時間)が、前記初期加熱時間に到達する頃には、加熱庫内全体が温度上昇して加熱調理に適した温度になる。
やがて、前記加熱タイマで計測された加熱時間が前記初期加熱時間に到達すると、加熱庫内の下部空間に比べて温度が高い上部空間を加熱する上火バーナのみが、加熱量切替手段によって消火され、これにより、温度の高い前記上部空間の温度上昇が抑えられて加熱庫の温度分布が均一化される。
【0010】
これにより、調理容器が均一温度分布の雰囲気中に置かれた状態になり、この状態で、調理容器内の食材が加熱調理される。そして、加熱タイマで計測された加熱時間が調理時間設定手段で設定された加熱調理時間に到達すると、消火手段によって下火バーナが消火されて調理が完了する。
このものでは、調理容器及び加熱庫の全体が調理に適した温度に昇温した頃に上火バーナのみを消火させることにより、調理容器が均一温度分布の雰囲気中に置かれた状態で加熱調理されるようにしたから、高品質のケーキやパン等の焼物が調理できる。
【0011】
[請求項2に係る発明]
請求項1に係る発明に於いて、
『食材の加熱度合いを手入力で設定する加熱レベル設定手段と、
前記加熱レベル設定手段で設定された加熱度合いが低い場合は、高い場合に比べて、前記初期加熱時間を短縮する第1補正手段を具備する』ものでは、加熱レベル設定手段に手入力で設定された食材の加熱度合いが低くなるに従って初期加熱時間(上火バーナを燃焼させる時間)が短縮される(第1補正手段)。よって、加熱レベル設定手段で設定された加熱度合いに応じて、初期加熱時間の経過時に於ける加熱庫の温度が変化するから、種々の焼き加減のケーキやパンが焼き上げられる。
【0012】
[請求項3に係る発明]
請求項1、2に係る発明に於いて、
『前記加熱量切替手段は、前記上火バーナを消火させる際に前記下火バーナを強火から弱火に切替える機能を備えている』ものとすることができる。
このものでは、加熱庫内全体が調理に適した温度に昇温した頃に上火バーナを消火させると共に、下火バーナを弱火に切替えるから、調理容器の下部の過熱が一層抑えられる。従って、調理容器内の料理の上部と下部の焼きムラが一層少なくなり、更に高品質のケーキやパン等を焼き上げることができる。
【0013】
[請求項4に係る発明]
請求項1〜3に係る発明に於いて、
『調理開始時の加熱庫内の温度である調理開始温度が高い場合は、低い場合に比べて、前記初期加熱時間を短縮する第2補正手段を具備する』ものとすることができる。
加熱調理が繰り返して行なわれる場合、加熱庫が冷めている初回の加熱調理時に比べ、2回目以降の調理開始温度は高い。従って、2回目以降の加熱調理時には、第2補正手段によって初期加熱時間を短縮化し、これにより、上火バーナの燃焼時間を短くして加熱庫の上部空間の過剰昇温を防止し、調理容器を早期に均一温度分布の雰囲気中に置くことができる。
従って、ケーキやパン等を繰り返して焼く場合でも、適正な焼き加減が担保できる。
【0014】
[請求項5に係る発明]
請求項1〜4に係る発明に於いて、
『前記上火バーナを消火させる為の加熱量切替温度を設定する切替温度設定手段が設けられ、
前記加熱量切替手段は、前記加熱タイマが計測した加熱時間が前記初期加熱時間演算手段で演算された初期加熱時間に到達する前であっても、前記加熱庫の温度が前記切替温度設定手段で設定された前記加熱量切替温度に昇温した場合は前記上火バーナを消火させる』ものでは、加熱タイマが計測した加熱時間が前記初期加熱時間に到達する前であっても、前記加熱庫の温度が所定の加熱量切替温度に昇温した場合は前記上火バーナが消火される(加熱量切替手段)。
従って、ケーキやパン等の焼き過ぎが防止され、焼物の適正な焼き加減が担保できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は次の特有の効果を有する。
請求項1に係る発明によれば、調理容器及び加熱庫の全体が調理に適した温度に昇温した頃に上火バーナのみを消火させることにより、調理容器が均一温度分布の雰囲気中に置かれた状態で加熱調理されるようにしたから、高品質のケーキやパン等の焼物が調理できる。
【0016】
請求項2に係る発明によれば、加熱レベル設定手段で設定された加熱度合いに応じて、初期加熱時間(上火バーナを燃焼させる時間)の経過時に於ける加熱庫の温度が変化するから、種々の焼き加減のケーキやパンが焼き上げられる。
【0017】
請求項3に係る発明によれば、前述のように、調理容器の下部の過熱が一層抑えられるから、調理容器内の料理の上部と下部の焼きムラが一層少なくなり、更に高品質のケーキやパン等を焼き上げることができる。
【0018】
請求項4に係る発明では、調理開始時の加熱庫内の温度である調理開始温度が高い場合は初期加熱時間が短縮されるから、ケーキやパン等を繰り返して焼く場合でも、適正な焼き加減が担保できる。
【0019】
請求項5に係る発明では、加熱調理時間が経過する前であっても、初期加熱時間に達する前であっても、加熱庫の温度が加熱量切替温度に昇温した場合は上火バーナを消火するから、ケーキやパン等の焼き過ぎが防止され、これら焼物の適正な焼き加減が担保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について添付図面を参照しながら説明する。
図1は、システムキッチンのカウンタートップ(K)に開設された開口(K1)に落とし込み状態に装着されるドロップインコンロの斜視図である。
コンロ本体(3)の天板(30)には五徳(33)(34)(35)とガスバーナ(31)(32)(36)が位置していると共に、コンロ本体(3)の正面中央にはオーブン(2)の開閉扉(21)が配設されている。
【0021】
前記開閉扉(21)の右側に位置するコンロ操作部(23)にはガスバーナ(31)(32)(36)の点・消火と火力調節機能を兼備した操作摘み(24)(25)(28)が配設されており、該操作摘み(24)(25)(28)は、後述するグリル用摘み(37)と同様に、押し込み操作の繰り返しによってコンロ操作部(23)から突出した使用状態と、コンロ操作部(23)と面一になった不使用状態との2状態に変化するようになっている。又、操作摘み(24)(25)(28)の下方には、コンロ部の種々の機能をセットする引き出し式操作部(39)が設けられている。該引出し式操作部(39)は、後述するグリル用の引き出し式操作部(38)と同様にコンロ本体(3)に対して、引き出し・押し込み自在に装着されている。
【0022】
一方、オーブン(2)の開閉扉(21)の左側に形成されたグリル用操作部(22)にはオーブン(2)用の上下バーナ(56)(55)の点・消火と火力設定機能を兼備したグリル用摘み(37)と、その下方の引き出し式操作部(38)が設けられている。
前記グリル用の引き出し式操作部(38)は、コンロ本体(3)に対して引出し・押し込み自在に装着されており、不使用時には該引出し式操作部(38)をコンロ本体(3)に対して押し込んだ収納状態にできるようになっている。
【0023】
図1に示すように、グリル用の引き出し式操作部(38)をコンロ本体(3)から引き出すと、該引出し式操作部(38)の内部に設けられたタッチパネル式操作部(380)が現れる。このタッチパネル式操作部(380)には、オーブンスイッチ(41)と、ケーキパンスイッチ(40)と、加熱レベルを「強」「中」「弱」で表示する加熱レベル表示部(44)と、子供の悪戯等による誤操作を防止する為のロックスイッチ(45)と、加熱調理時間を表示するタイマ表示部(43)と、調理時間設定部(42)が配設されている。調理時間設定部(42)は、前記加熱調理時間を増加させるアップキー(42a)と、減少させるダウンキー(42b)を備えており、該調理時間設定部(42)は、請求項1の発明の「調理時間設定手段」に対応している。
【0024】
図2、図4に示すように、オーブン(2)は、加熱庫(10)とこれに装填された引き出し部(20)を備えている。引き出し部(20)は、加熱庫(10)の前方開口(100)を開閉する開閉扉(21)から後方に突出する左右一対の支持アーム(26)(26)にトレー(27)が載置された構成で、トレー(27)には、図3、図4に示すように、容器固定網(50)が載置収納されている。容器固定網(50)には、容器本体(51)とその上端開口を閉塞する蓋体(52)からなる金属製の調理容器(53)が着脱自在に載置されるようになっている。
【0025】
図2、図3に示すように、加熱庫(10)に於ける下部の左右側壁の近傍にはパイプ状の下火バーナ(55)(55)が配設されていると共に、その炎孔(556)(556)は加熱庫(10)の中央向きに開口している。
【0026】
一方、加熱庫(10)の天井には、上火バーナ(56)が配設されていると共に、加熱庫(10)の奥端には排気ダクト(17)が連設されており、該排気ダクト(17)の上流端近傍の底壁には第1温度センサ(14)が配設されている。又、加熱庫(10)の上部の奥壁(101)には、第2温度センサ(15)が配設されている。
【0027】
図5に示すように、前記上火バーナ(56)へのガス回路(560)には、元弁(561)とその下流側の火力切替弁(562)が配設されていると共に、火力切替弁(562)のバイパス回路(563)にはオリフィス(564)が設けられている。従って、火力切替弁(562)が閉弁するとバイパス回路(563)のみから上火バーナ(56)にガス供給されて、該上火バーナ(56)が弱火燃焼する一方、火力切替弁(562)が開弁すると、該火力切替弁(562)側のガス回路とバイパス回路(563)の両方から上火バーナ(56)にガス供給されてこれが強火燃焼する。又、これと同様に、下火バーナ(55)へのガス回路(550)には、元弁(551)とその下流側の火力切替弁(552)が配設されていると共に、火力切替弁(552)のバイパス回路(553)にはオリフィス(554)が設けられている。従って、火力切替弁(552)が閉弁するとバイパス回路(553)のみから下火バーナ(55)にガス供給されて、該下火バーナ(55)が弱火燃焼する一方、火力切替弁(552)が開弁すると、該火力切替弁(552)側のガス回路とバイパス回路(553)の両方から下火バーナ(55)にガス供給されてこれが強火燃焼する。
【0028】
上記ガス回路(550)(560)に配設された元弁(551)(561)や火力切替弁(552)(562)は、制御装置(6)で制御されると共に、該制御装置(6)には、上記第1、第2温度センサ(14)(15)、グリル用摘み(37)、オーブンスイッチ(41)、ケーキパンスイッチ(40)、及び調理時間設定部(42)の出力が印加されている。調理時間設定部(42)は、アップキー(42a)の操作でカウントアップ動作する一方、ダウンキー(42b)の操作でカウントダウン動作するカウンタ(420)を具備しており、該カウンタ(420)の出力が制御装置(6)に印加されている。ケーキパンスイッチ(40)の操作回数は3進カウンタ(400)でカウントされると共に、該3進カウンタ(400)の出力によって、加熱レベル表示部(44)の強加熱ランプ(44a)と中加熱ランプ(44b)と更に弱加熱ランプ(44c)が択一的に点灯されるようになっている。又、3進カウンタ(400)の出力は制御装置(6)に印加されており、該3進カウンタ(400)の出力によって、調理時の加熱度合いが、強加熱、中加熱、弱加熱の何れであるか判断されるようになっている。従って、本実施の形態では、ケーキパンスイッチ(40)と、これの操作回数をカウントするカウンタ(400)の集合が、請求項2の発明の「加熱レベル設定手段」に対応する。
【0029】
オーブン(2)を制御する前記制御装置(6)には、図6〜9のフローチャートで示す内容の制御プログラムが格納されたマイクロコンピュータが組み込まれている。以下、ケーキやパンを焼く場合の調理の実際を、図6〜9のフローチャートに従って説明する。
先ず予め、調理容器(53)にケーキやパンの生地を入れておく。
【0030】
次に、図示しない電源スイッチを投入すると、制御装置(6)のマイクロコンピュータが作動し、図6の制御を実行する。
ステップ(ST1)では、第1温度センサ(14)の検知温度Th1が90℃未満か否かを判断する。そして、90℃以上の場合は、ステップ(ST2)を実行し、ケーキパンスイッチ(40)やオーブンスイッチ(41)の操作による調理モードの選択の受け付けを禁止したうえで、ステップ(ST1)に制御を戻す。90℃を超える高温で調理を開始すると、調理開始温度が高すぎるために適正調理が行なえないからである。
【0031】
一方、前記ステップ(ST1)で第1温度センサ(14)の検知温度Th1が90℃未満と判断されると、ステップ(ST3)に移行し、調理のモード選択を受け付ける制御が実行される。このモード選択では、オーブンスイッチ(41)がON操作されていればオーブンモードが選択され、ケーキパンスイッチ(40)がON操作されていればケーキパンモードが選択される。又、オーブンスイッチ(41)とケーキパンスイッチ(40)の何れもON操作されていない場合、及び、オーブンモードが選択されている状態でオーブンスイッチ(41)がON操作された場合はグリルモードが選択される。従って、ケーキやパンを焼く場合は、ケーキパンスイッチ(40)をON操作すればよい。
【0032】
次に、ステップ(ST4)を実行し、調理時間設定部(42)で設定された加熱調理時間Kを読み込んで、該加熱調理時間Kを加熱タイマTの初期値にセットする。加熱タイマTは、カウントダウンタイマで構成されており、該加熱タイマTがタイムアップした時点で加熱調理時間Kが経過するようになっている。
続いて、ステップ(ST5)を実行し、グリル用摘み(37)で点火操作がされたか否かを判断し、点火操作がされていない場合は、ステップ(ST1)に制御を戻す。
【0033】
一方、ステップ(ST5)で点火操作がされたと判断すると、ステップ(ST6)で、第1温度センサ(14)が検知する検知温度Th1を調理開始温度T0として記憶すると共に、上下バーナ(56)(55)に点火する。上下バーナ(56)(55)への点火は、図示しない点火電極から上下バーナ(56)(55)に火花放電をさせると共に、ガス回路(560)(550)に設けられた元弁(561)(551)及び火力切替弁(562)(552)を開弁させ、これにより、上下バーナ(56)(55)を強火燃焼させる。従って、本実施の形態では、ステップ(ST6)を実行するマイクロコンピュータの機能部が、請求項1の「点火手段」に対応する。
【0034】
次に、ステップ(ST7)で調理開始温度T0が90℃以上と判断されると、既述したステップ(ST2)に制御が移される一方、90℃未満と判断されると、ステップ(ST8)で点火タイマAをスタートさせると共に、加熱タイマTをスタートさせてカウントダウン動作を開始させる。
【0035】
ステップ(ST9)で、調理のモード選択を受け付ける制御(ステップ(ST3)と同様の制御)が実行された後、ステップ(ST10)に於いて、調理時間設定部(42)で設定された加熱調理時間Kを読み込んでこれを加熱タイマT(カウントダウンタイマ)の初期値にセットする制御(ステップ(ST4)と同様の制御)が実行される。その後、ステップ(ST11)で加熱タイマTを再びスタートさせてカウントダウン動作を再開させる。そして、上記ステップ(ST9)〜(ST11)の制御を、点火タイマAが20秒を計測するまで繰り返す(ステップ(ST12))。従って、点火タイマAが20秒を計測するまでの間(ステップ(ST9)〜(ST11)が繰り返されている間)では、パンケーキスイッチ(40)やオーブンスイッチ(41)を再操作することで、調理のモード変更が可能になると共に、調理時間設定部(42)での調理時間Kの変更も可能になる。
【0036】
次に、ステップ(ST13)で、調理モードに応じた制御への分岐が行なわれる。具体的には、ステップ(ST3)(ST9)で受け付けられた調理モードがグリルモードであれば、ステップ(ST14)のグリル調理の制御に移され、オーブンモードであれば、ステップ(ST15)のオーブン調理の制御に移される。尚、グリル調理やオーブン調理の具体的な制御は省略する。
【0037】
一方、ケーキパンモードが選択されている場合(ケーキパンスイッチ(40)が操作されている場合)は、ステップ(ST16)を実行し、加熱度合いが、強加熱、中加熱、弱加熱の何れに設定されているかを、3進カウンタ(400)の出力から判断する。強加熱に設定されていると図7の「ケーキパンモードの強加熱」の制御に分岐し、中加熱に設定されていると図8の「ケーキパンモードの中加熱」の制御に分岐し、弱加熱に設定されていると図9の「ケーキパンモードの弱加熱」の制御に分岐する。
【0038】
図7の「ケーキパンモードの強加熱」の制御に分岐すると、先ず、ステップ(ST20)を実行し、既述ステップ(ST8)でスタートさせた点火タイマAが30秒を計測したか否かを判断し、経過していなければ、既述のステップ(ST10)に制御が戻される。即ち、調理時間設定部(42)で設定された加熱調理時間Kを再び読み込んでこれを加熱タイマT(カウントダウンタイマ)の初期値にセットする制御が実行され、これにより、図6のステップ(ST12)で点火タイマAの計測時間が20秒を超えたことを確認した後の10秒間(ステップ(ST12)の20秒と図7のステップ(ST20)の30秒の時間差)だけ、調理時間設定部(42)による加熱調理時間Kの変更を受け付ける。
【0039】
次に、図7のステップ(ST20)から(ST21)に進んで、加熱調理が繰り返して行なわれる場合の初回の加熱調理か、又は2回目以降の加熱調理かの判断が行なわれる。この場合、加熱庫(10)が冷めている初回に比べ、2回目以降の調理開始温度T0は高い。そこで、該調理開始温度T0が50℃より低温である初回の加熱調理であるか否かをステップ(ST21)で判断し、初回の加熱調理であると判断されると、ステップ(ST22)で第1温度センサ(14)の検知温度Th1が188℃以上か否かを判断し、更に、ステップ(ST23)で第2温度センサ(15)の検知温度Th2が310℃以上か否かを判断する。そして、検知温度Th1が188℃未満で、然も、第2温度センサ(15)の検知温度Th2が310℃未満である場合は、図6のステップ(ST11)でスタートさせた加熱タイマTの計測時間が、調理時間設定部(42)で設定された加熱調理時間Kの50%の時間たる「初期加熱時間」が経過したか否かをステップ(ST24)で判断する。尚、本実施の形態では、ステップ(ST24)を実行する際に、前記加熱調理時間の50%の時間を演算するマイクロコンピュータの機能部が請求項1の発明の「初期加熱時間演算手段」に対応する。
【0040】
そして、ステップ(ST24)で、加熱タイマTの計測時間が前記初期加熱時間(加熱調理時間の50%)に到達したことが確認できると、この頃には、調理容器(53)及び加熱庫(10)の全体が高温で調理に適した温度になっている。そこで、ステップ(ST25)で上火バーナ(56)を消火させる(ガス回路(560)の元弁(561)を閉弁させる)と共に、下火バーナ(55)を弱火に切替える(ガス回路(550)の火力切替弁(552)を閉弁させる)。これにより、加熱庫(10)の温度が高い上部空間の温度上昇が抑えられ、加熱庫(10)の温度分布の均一化が図れる。その結果、調理容器(53)が均一温度分布の雰囲気中に置かれた状態になり、この状態で調理容器(53)内のケーキやパン生地が加熱調理される。従って、本実施の形態では、ステップ(ST25)の制御を実行するマイクロコンピュータの機能部が、請求項1の発明の「加熱量切替手段」に対応している。そして、加熱タイマTの計測した加熱時間が調理時間設定部(42)で設定された加熱調理時間Kに到達した(加熱タイマTがタイムアップした場合)ことがステップ(ST26)で確認できると、ステップ(ST27)で下火バーナ(55)の元弁(551)を閉弁させ(請求項1の発明の「消火手段」)、これにより、下火バーナ(55)を消火させてケーキやパンを焼き上げる調理を完了させる。
【0041】
このものでは、調理容器(53)及び加熱庫(10)の全体が高温で調理に適した温度になった頃に上火バーナ(56)を消火させることにより、調理容器(53)が均一温度分布の雰囲気中に置かれた状態で加熱調理されるようにしたから、高品質のケーキやパン等の焼物が調理できる。
【0042】
一方、既述ステップ(ST22)(ST23)を実行したときに、検知温度Th1が188℃以上であるか、又は、第2温度センサ(15)の検知温度Th2が310℃以上であることが確認できると、ステップ(ST25)で上火バーナ(56)を消火させると共に下火バーナ(55)を弱火に切替える制御を実行する。尚、上記188℃及び310℃は、請求項5の発明の「加熱量切替温度」に対応している。これにより、加熱タイマTの計測時間が前記初期加熱時間(加熱調理時間の50%)に到達する前であっても、第1温度センサ(14)や第2温度センサ(15)の検知温度Th1,Th2が加熱量切替温度(188℃、310℃)に昇温すると上火バーナ(56)が消火されるから、ケーキやパンの生地の過剰過熱が防止され、適正な焼き加減が担保できる。従って、制御装置(6)に組み込まれたマイクロコンピュータに於いて、188℃や310℃の加熱量切替温度を記憶するメモリーが請求項5の発明の「切替温度設定手段」に対応する。
【0043】
一方、既述したステップ(ST21)の実行時に、加熱調理が繰り返して行なわれた場合の2回目以降の加熱調理であると判断された場合、即ち、調理開始温度T0が50℃を超えていると判断された場合は、ステップ(ST28)〜(ST30)が実行される。ステップ(ST28)(ST29)は、既述したステップ(ST22)(ST23)と同じ制御である。
【0044】
ステップ(ST30)は、図6のステップ(ST11)でスタートさせた加熱タイマTの計測時間が、調理時間設定部(42)で設定された加熱調理時間Kの45%の時間たる「初期加熱時間」が経過したか否かを判断するステップであり、「45%」であるか否かを判断する点で、「50%」であるか否かを判断するステップ(ST24)と相違している。そして、本実施の形態では、前記加熱調理時間の「50%」を「45%」に変更するマイクロコンピュータの機能部(ステップ(ST30)の制御を実行する機能部)が、請求項4の発明の「第2補正手段」に対応している。これにより、ケーキやパン等を繰り返して焼く場合でも、適正な焼き加減が担保できる。
【0045】
次に、図6のステップ(ST16)の説明に戻る。
ステップ(ST16)で、「ケーキパンモードの中加熱」に分岐すると、図8の制御が実行される。この図8の制御では、ステップ(STA)と(STB)が図7のステップ(ST24)と(ST30)に夫々対応しているが、ステップ(STA)で加熱調理時間K(調理時間設定部(42)で設定された時間)の17%を初期加熱時間として演算する点が、加熱調理時間Kの50%を初期加熱時間として演算するステップ(ST24)と相違する。又、ステップ(STB)で加熱調理時間K(調理時間設定部(42)で設定された時間)の13%を初期加熱時間として演算する点が、加熱調理時間Kの45%を初期加熱時間として演算するステップ(ST30)と相違する。これ以外の制御は、図7と同様である。
【0046】
「ケーキパンモードの中加熱」の制御を示す図8のフローチャートでは、ステップ(STA)で設定される初期加熱時間(調理時間設定部(42)で設定された加熱調理時間Kの17%)及び、ステップ(STB)で設定される初期加熱時間(調理時間設定部(42)で設定された加熱調理時間Kの13%)が図7の「ケーキパンモードの強加熱」の場合より短いから、その分、上火バーナ(56)の燃焼時間と、下火バーナ(55)の強燃焼時間が短くなる。従って、「ケーキパンモードの強加熱」の場合に比べて、ケーキやパンの焼き加減が抑えられ、使用者の嗜好に適合したケーキやパンが焼き上げられる。
【0047】
一方、図6のステップ(ST16)から、「ケーキパンモードの弱加熱」に分岐すると、図9の制御が実行される。この図9の制御では、ステップ(STC)と(STD)が図8のステップ(STA)と(STB)に夫々対応しているが、ステップ(STC)で加熱調理時間K(調理時間設定部(42)で設定された時間)の1%を初期加熱時間として演算する点が、加熱調理時間Kの17%を初期加熱時間として演算するステップ(STA)と相違する。又、ステップ(STD)で加熱調理時間K(調理時間設定部(42)で設定された時間)の1%を初期加熱時間として演算する点が、加熱調理時間Kの13%を初期加熱時間として演算するステップ(STB)と相違する。これ以外の制御は、図8と同様である。
【0048】
「ケーキパンモードの弱加熱」の制御を示す図9のフローチャートでは、ステップ(STC)で設定される初期加熱時間(調理時間設定部(42)で設定された加熱調理時間Kの1%)及び、ステップ(STD)で設定される初期加熱時間(調理時間設定部(42)で設定された加熱調理時間Kの1%)が図8の「ケーキパンモードの中加熱」の場合より短いから、その分、上火バーナ(56)の燃焼時間と、下火バーナ(55)の強燃焼時間が短くなる。従って、「ケーキパンモードの中加熱」の場合に比べて、ケーキやパンの焼き加減が更に抑えられる。
【0049】
本実施の形態では、図7のステップ(ST24)で初期加熱時間の演算に使用する「50%」の値を、図8のステップ(STA)で「17%」に変更し、更に図9のステップ(STC)で「1%」するマイクロコンピュータの機能部が、請求項2の発明の「第1補正手段」に対応する。又、図7のステップ(ST30)で初期加熱時間の演算に使用する「45%」の値を、図8のステップ(STB)で「13%」し、更に図9のステップ(STD)で「1%」するマイクロコンピュータの機能部に変更するマイクロコンピュータの機能部も、請求項2の発明の「第1補正手段」に対応する。
尚、上記実施の形態では、下火バーナ(55)と上火バーナ(56)に各別に対応する元弁(551)(561)を設けたが、下火バーナ(55)と上火バーナ(56)に共通の元弁を設けると共に、上火バーナ(56)だけ独立して消火させる為の開閉弁を更に設ける構成にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施の形態を説明するドロップインコンロの斜視図
【図2】図1のドロップインコンロの縦断面図
【図3】図1のドロップインコンロのオーブン(2)部分の断面図
【図4】図1のドロップインコンロのオーブン(2)の引き出し部(20)を引き出した状態の斜視図
【図5】オーブン(2)の制御回路の概略図
【図6】オーブン(2)の制御フローチャート
【図7】オーブン(2)の「ケーキパンモードの強加熱」の制御フローチャート
【図8】オーブン(2)の「ケーキパンモードの中加熱」の制御フローチャート
【図9】オーブン(2)の「ケーキパンモードの弱加熱」の制御フローチャート
【符号の説明】
【0051】
(10)・・・加熱庫
(53)・・・調理容器
(55)・・・下火バーナ
(56)・・・上火バーナ
(21)・・・開閉扉
(100)・・・前方開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方開口が開閉扉で閉塞される加熱庫と、
前記加熱庫に出し入れ自在に収納される調理容器と、
前記調理容器の上部を加熱する上火バーナと、
前記調理容器の下部を加熱する下火バーナと、を具備し、
前記調理容器に食材を入れて加熱調理するガス調理器において、
前記上火バーナと下火バーナの燃焼を開始させる点火手段と、
前記燃焼を開始させた後の加熱時間を計測する加熱タイマと、
加熱調理時間を手入力で設定する調理時間設定手段と、
前記調理時間設定手段で設定された前記加熱調理時間に基づいて、該加熱調理時間より短い初期加熱時間を演算する、初期加熱時間演算手段と、
前記加熱タイマが計測した加熱時間が前記初期加熱時間演算手段で演算された初期加熱時間に到達した場合に前記上火バーナを消火させる加熱量切替手段と、
前記加熱タイマが計測した前記加熱時間が前記調理時間設定手段で設定された加熱調理時間に到達した場合に前記下火バーナを消火させる消火手段と、を具備する、ガス調理器。
【請求項2】
請求項1に記載のガス調理器に於いて、
食材の加熱度合いを手入力で設定する加熱レベル設定手段と、
前記加熱レベル設定手段で設定された加熱度合いが低い場合は、高い場合に比べて、前記初期加熱時間を短縮する第1補正手段を具備する、ガス調理器。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のガス調理器に於いて、
前記加熱量切替手段は、前記上火バーナを消火させる際に前記下火バーナを強火から弱火に切替える機能を備えている、ガス調理器。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れかに記載のガス調理器に於いて、
調理開始時の加熱庫内の温度である調理開始温度が高い場合は、低い場合に比べて、前記初期加熱時間を短縮する第2補正手段を具備する、ガス調理器。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れかに記載のガス調理器に於いて、
前記上火バーナを消火させる為の加熱量切替温度を設定する切替温度設定手段が設けられ、
前記加熱量切替手段は、前記加熱タイマが計測した加熱時間が前記初期加熱時間演算手段で演算された初期加熱時間に到達する前であっても、前記加熱庫の温度が前記切替温度設定手段で設定された前記加熱量切替温度に昇温した場合は前記上火バーナを消火させる、ガス調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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