説明

ガス遮断器

【課題】 コンパクトな構成で大電流遮断時に発生する熱ガスを効率よく十分に冷却可能とすることにより、地絡や相間短絡を防止しかつガスタンクの大形化を抑制する。
【解決手段】 大電流遮断時に発生する熱ガスを冷却する排気構造部100は、略円筒状の第一排気筒101と、第一排気筒の外径より大きな内径を有する略円筒上の本体部分と底板部分を有する略円筒状の第二排気筒102とで構成される。第一排気筒は、消弧室3の固定部3bの終端に取り付けられ、第二排気筒は、本体部分が間隙部を介して第一排気筒の外周を包囲し、底板部分が第一排気筒の終端に接しない位置関係となるように第一排気筒と略同心配置される。2つの排気筒間の間隙部の断面積は、第一排気筒の内部断面積よりも大きくされる。金属製支持構造物103は、第一排気筒に対して第二排気筒を同電位で支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送配電系統において電流を遮断するガス遮断器に関するものであり、特に、大電流遮断時に発生する排気熱ガスに起因する絶縁性能低下による地絡および相間短絡を防止したガス遮断器に関する。
【背景技術】
【0002】
送配電系統においては、大電流を遮断するガス遮断器として、従来からパッファ式ガス遮断器が採用されている。パッファ式ガス遮断器は、大電流遮断時に発生する熱ガスを冷却するための排気筒を備えている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
図18および図19は、この種のパッファ式ガス遮断器の閉路状態および開路状態をそれぞれ示す模式的断面図である。図18および図19に示すタンク形パッファ式ガス遮断器は、ガスタンク1内に、絶縁ガス2と消弧室3を密閉封入して構成されている。ガスタンク1は、消弧室3を略同軸方向に収納する主胴部分とその一端を閉塞する平板部分を有する。消弧室3は、対向配置された可動部3aと固定部3b、および、可動部3aと固定部3bを絶縁支持する極間支持絶縁筒3cから構成されている。各部の詳細は次の通りである。
【0004】
消弧室3の可動部3aは、パッファシリンダ11とそれに固定されたノズル12、可動側アーク接触子13、および可動側主接触子14からなる可動接点部3dと、可動接点部3dを駆動する操作ロッド15と、パッファシリンダ11と摺動接触するパッファピストン21と、パッファピストン21を支持する可動サポート22とで構成されている。可動サポート22は、可動接点部3dを摺動支持すると同時に可動接点部3dと電気的に直列に接続する。
【0005】
消弧室3の固定部3bは、固定側アーク接触子31と固定側主接触子32、これらを支持する固定サポート33とで構成されており、固定部3bの終端(可動部3aと反対側の端部)には、大電流遮断時に消弧室3で発生する熱ガスを冷却してガスタンク1内に排出する排気筒34が略同軸方向に取り付けられている。
【0006】
さらに、ガスタンク1には少なくとも2箇所の導体口出し部4が設けられており、各導体口出し部4から、可動部3aを外部回路と電気的に接続する図示しない可動側接続導体、および固定部3bを外部回路と電気的に接続する固定側接続導体5がそれぞれ取り出されるようになっている。
【0007】
上記のような図18および図19に示すガス遮断器は、図18に示すような閉路状態から遮断動作を行い、図19に示すような開路状態に至る。大電流遮断時には、パッファシリンダ11からノズル12を通じて吹き付ける絶縁ガス2が、可動側アーク接触子13および固定側アーク接触子31の間に発生するアークにより加熱されて熱ガスとなり、その熱ガスは固定部3bに配置された排気筒34内である程度冷却されてからガスタンク1中に排気される。
【0008】
【特許文献1】特開2002−298709
【特許文献2】特開2003−157753
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、遮断時に発生する熱ガスは、通常時と比べて絶縁性能が極端に低下する。その熱ガスが高温のままガスタンク中に放出されると、地絡の原因となる。また、遮断器の固定側の導体口出し部がガスタンクの終端平板上に配置されるような場合には、熱ガスの排気される方向とガスタンク表面の電界強度が高くなる導体口出し部の方向が一致するため、地絡の可能性が一層高くなる。
【0010】
また、三相分の消弧室が絶縁ガスとともにガスタンク中に密閉封入される三相一括タンク形ガス遮断器においては、熱ガスが十分に冷却されないままガスタンク中に放出されると、地絡のみならず相間短絡を発生する危険性がある。それらの地絡や相間短絡を避けるためには、熱ガスを十分に冷却し絶縁性能を回復してからガスタンク中に放出する必要がある。そのため、排気筒を長くしたり、排気筒内での冷却が不十分でも地絡や相間短絡が発生しないようにガスタンク中の熱ガスが放出される部分の容積を十分に大きくとる必要があり、ガスタンクの大形化の原因となっていた。
【0011】
本発明は、上記のような従来技術の課題を解決するために提案されたものであり、その目的は、コンパクトな構成で大電流遮断時に発生する熱ガスを効率よく十分に冷却可能とすることにより、地絡や相間短絡を防止しかつガスタンクの大形化を抑制可能なガス遮断器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記のような目的を達成するために、大電流遮断時に発生する熱ガスを冷却する排気構造部を、略同心配置した第一と第二の排気筒から構成することにより、第一排気筒の内部から第一、第二排気筒間の間隙部に至る排気流路を形成して、排気構造部を一直線状に長くすることなしに、両排気筒の長さを加えた長さの排気筒と同等の高い冷却能力を実現したものである。
【0013】
本発明のガス遮断器は、絶縁性ガスを封入した容器内部に、固定部と可動部を対向配置した消弧室と、大電流遮断時に消弧室で発生する熱ガスを冷却して容器内に排出する排気構造部を備え、容器の一部に配置された固定側の導体口出し部から消弧室の固定部を外部回路と接続する固定側接続導体が取り出されるガス遮断器において、排気構造部を次のような第一、第二の排気筒から構成したことを特徴としている。
【0014】
すなわち、消弧室の固定部のうち、可動部と対向する側の端部を先端、反対側の端部を終端と定義した場合に、排気構造部は、略円筒状の第一排気筒と、当該第一排気筒の外径より大きな内径を有する略円筒状の本体部分とその一端を閉塞する底板部分を有する第二排気筒から構成される。第一排気筒は、消弧室の固定部終端に略同軸方向に取り付けられる。第二排気筒は、本体部分が間隙部を介して第一排気筒の外周を包囲し、かつ、底板部分が第一排気筒の終端と接触しない位置関係となるように第一排気筒と略同心配置される。第一排気筒と第二排気筒は、当該2つの排気筒の軸方向と直交する軸直交断面上における間隙部の断面積が、第一排気筒の内部断面積より大きくなるような寸法関係とされる。
【0015】
以上のような特徴を有する本発明によれば、ガス遮断器の大電流遮断時に発生する熱ガスは、排気構造部内部の圧力勾配により、第一排気筒内部と、第一排気筒と第二排気筒の間隙部を通り、ガスタンク中に放出される。この場合、熱ガスの排気流路長は、第一排気筒と第二排気筒の長さを加えた距離と略等価であるため、排気筒の冷却能力は、第一排気筒と第二排気筒の長さを加えた長さの排気筒と同等となる。
【0016】
したがって、排気構造部を一直線状に長くすることなしに、熱ガスを効率よく十分に冷却することができ、熱ガスの絶縁性能を回復してからガスタンク中に放出することができる。さらに、第二排気筒と第一排気筒の間隙部の断面積を第一排気筒の内部断面積よりも大きくしたことにより、排気構造部内での熱ガスの閉塞は発生しない。
【0017】
このように、本発明によれば、排気構造部の構成の特徴により、大電流遮断時に発生する熱ガスを効率よく十分に冷却し、絶縁性能を回復させ地絡を防止することができ、かつ、排気構造部の長さを必要最小限に抑制できるため、ガスタンクの大きさを必要最小限に抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、コンパクトな構成で大電流遮断時に発生する熱ガスを効率よく十分に冷却可能とすることにより、地絡や相間短絡を防止しかつガスタンクの大形化を抑制可能なガス遮断器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
[第1の実施形態]
図1は、本発明を適用した第1の実施形態に係るガス遮断器を示す模式的断面図である。なお、図18および図19に示した従来技術と同一部分には同一符号を付し、説明を省略する。
【0020】
本実施形態において、図1に示すように、固定側の導体口出し部4がガスタンク1の主胴部分側面に配置される場合に、消弧室3の固定部3bを外部回路と接続する固定側接続導体5が固定サポート33に取り付けられている点は、図18および図19に示した従来技術と同様である。本実施形態の特徴は、大電流遮断時に消弧室3で発生する熱ガスを冷却してガスタンク1内に排出する排気構造部100が、単体の排気筒ではなく、略円筒状の第一排気筒101と、第一排気筒101の外径より大きな内径を有する略円筒上の本体部分とその一端を閉塞する底板部分を有する略円筒状の第二排気筒102とで構成されている点である。これらの第一、第二排気筒101,102の詳細は次の通りである。
【0021】
第一排気筒101は、消弧室3の固定部3bの終端(可動部3aと反対側の端部)に取り付けられている。第二排気筒102は、その略円筒状の本体部分が間隙部を介して第一排気筒101の外周を包囲し、かつ、その底板部分が第一排気筒101の終端に接しない位置関係となるように第一排気筒101と略同心配置されている。さらに、第一排気筒101と第二排気筒102は、これら2つの排気筒101,102の軸方向と直交する軸直交断面上における排気筒101,102間の環状間隙部の断面積が、第一排気筒101の内部断面積よりも大きくなるような寸法関係とされている。
【0022】
また、第二排気筒102を第一排気筒101に対して支持する金属製支持構造物103が設けられており、この金属製支持構造物103により、第一排気筒101と第二排気筒102は同電位とされている。
【0023】
以上のような構成を有する第1の実施形態のガス遮断器において、大電流遮断時に発生する熱ガスは、排気構造部100内部の圧力勾配により、第一排気筒101内部と、第一排気筒101と第二排気筒102間の環状間隙部を通り、ガスタンク1中に放出される。この場合、熱ガスの排気流路長は、第一排気筒101と第二排気筒102の長さを加えた距離と略等価であるため、排気筒の冷却能力は、第一排気筒101と第二排気筒102の長さを加えた長さの排気筒と同等となる。
【0024】
したがって、排気構造部100を一直線状に長くすることなしに、熱ガスを効率よく十分に冷却することができ、熱ガスの絶縁性能を回復してからガスタンク1中に放出することができる。さらに、第二排気筒102と第一排気筒101間の環状間隙部の断面積を第一排気筒101の内部断面積よりも大きくしたことにより、排気構造部100内での熱ガスの閉塞は発生しない。
【0025】
このように、第1の実施形態によれば、排気構造部の構成により、大電流遮断時に発生する熱ガスを効率よく十分に冷却し、絶縁性能を回復させ地絡を防止することができ、かつ、排気構造部の長さを必要最小限に抑制できるため、ガスタンクの大きさを必要最小限に抑制することができる。
【0026】
[第2の実施形態]
図2は、本発明を適用した第2の実施形態に係るガス遮断器を示す模式的断面図である。また、図3は、図2中のA−A線断面を示す模式的断面図であり、排気筒101,102とガスタンク1の固定側の導体口出し部4との位置関係を示す図である。
【0027】
本実施形態は、図3に示すように、第1の実施形態のガス遮断器における構成の一部を次のように変更したものである。すなわち、第二排気筒102の軸方向と直交する軸直交断面上における第二排気筒102の本体部分の内面と外面の断面形状のうち、少なくとも内面の断面形状は、一箇所ないし複数箇所に、第一排気筒101との間の間隙部を狭める内側突出部102aを有する。図中では、一例として、第二排気筒102の本体部分に一箇所の内側突出部102aのみが設けられている場合を示している。
【0028】
そして、第二排気筒102は、その本体部分に設けられた内側突出部102aの一つの方向が、ガスタンク1の主胴部分側面に配置された固定側の導体口出し部4の方向と略一致するように配置されている。なお、他の部分の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0029】
以上のような構成を有する第2の実施形態のガス遮断器において、ガスタンク1表面のうち、固定側の導体口出し部4の方向は、電界強度が大きくなるが、第二排気筒102における同方向の排気流路が狭められており、大電流遮断時に発生する熱ガスは、同方向にはほとんど排出されないため、第1の実施形態のガス遮断器よりもさらに地絡の可能性を低くすることができる。
【0030】
[第3の実施形態]
図4は、本発明を適用した第3の実施形態に係るガス遮断器を示す模式的断面図である。また、図5は、図4中のA−A線断面を示す模式的断面図であり、排気筒101,102とガスタンク1の固定側の導体口出し部4との位置関係を示す図である。
【0031】
本実施形態は、図5に示すように、第1の実施形態のガス遮断器における構成の一部を次のように変更したものである。すなわち、略円筒状の第二排気筒102の軸方向と直交する軸直交断面上における第二排気筒102の本体部分の内面と外面の断面形状のうち、少なくとも内面の断面形状は、略楕円形状とされている。そして、第二排気筒102は、その内面の略楕円形状の短軸方向が、ガスタンク1の主胴部分側面に配置された固定側の導体口出し部4の方向と略一致するように配置されている。なお、他の部分の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0032】
以上のような構成を有する第3の実施形態のガス遮断器においては、ガスタンク1表面の電界強度の大きくなる導体口出し部4の方向に対して、第二排気筒102における同方向の排気流路が狭められており、大電流遮断時に発生する熱ガスは、同方向にはほとんど排出されないため、第2の実施形態と同様に、第1の実施形態のガス遮断器よりもさらに地絡の可能性を低くすることができる。
【0033】
[第4の実施形態]
図6は、本発明を適用した第4の実施形態に係るガス遮断器を示す模式的断面図である。
【0034】
本実施形態は、図6に示すように、第1の実施形態のガス遮断器における構成の一部を次のように変更したものである。すなわち、第一排気筒101、第二排気筒102、およびそれらを支持する金属製支持構造物103は、ガス遮断器の定格電流を通電するために充分な肉厚を持つように構成されている。そして、固定部3bを外部回路と接続する固定側接続導体5は、第二排気筒102外面に取り付けられている。
【0035】
また、第二排気筒102は、その略円筒状の本体部分がガスタンク1の固定側の導体口出し部4と重なり、かつ、本体部分の開口端部が固定側の導体口出し部4と重ならないように配置されている。すなわち、ガスタンク1の固定側の導体口出し部4が、第二排気筒102の排気流路出口の上流側に位置するような構成とされている。なお、他の部分の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0036】
以上のような構成を有する第4の実施形態のガス遮断器においては、第一、第二排気筒101,102と、固定側の導体口出し部4,固定側接続導体5の配置関係を工夫することにより、大電流遮断時に発生する熱ガスは、ガスタンク1表面の電界強度の大きくなる導体口出し部4の方向にはほとんど排出されないため、第2、第3の実施形態と同様に、第1の実施形態のガス遮断器よりもさらに地絡の可能性を低くすることができる。したがって、第二排気筒102の形状を複雑な形状にすることなく、第2、第3の実施形態と同等の効果を得ることができる。
【0037】
[第5の実施形態]
図7は、本発明を適用した第5の実施形態に係るガス遮断器を示す模式的断面図である。
【0038】
本実施形態は、図7に示すように、第1の実施形態のガス遮断器における構成の一部を次のように変更したものである。すなわち、第二排気筒102は、第一排気筒101に対して金属製支持構造物103で同電位に支持されるのではなく、ガスタンク1の平板部分に対して絶縁支持構造物104により絶縁支持されており、第一排気筒101と第二排気筒102は電気的に切り離されている。なお、他の部分の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0039】
以上のような構成を有する第5の実施形態のガス遮断器においては、第二排気筒102が電気的に浮いた状態となり、接地電位と固定部3bの電位の略中間の電位となるため、第二排気筒102とガスタンク1との間の電位差が緩和される。したがって、第1の実施形態のガス遮断器よりもさらに地絡の可能性を低くすることができる。
【0040】
[第6の実施形態]
図8は、本発明を適用した第6の実施形態に係るガス遮断器を示す模式的断面図である。
【0041】
本実施形態は、図8に示すように、第1の実施形態のガス遮断器における構成の一部を次のように変更したものである。すなわち、固定側の導体口出し部4が、ガスタンク1の一端を閉塞する平板部分に配置される場合に、第一排気筒101と第二排気筒102とそれらを支持する金属製支持構造物103は、ガス遮断器の定格電流を通電するために充分な肉厚を持つように構成されている。さらに、固定部3bを外部回路と接続する固定側接続導体5は、第二排気筒102の底板部分に取り付けられている。なお、他の部分の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0042】
以上のような構成を有する第6の実施形態のガス遮断器においては、大電流遮断時に発生する熱ガスは、ガスタンク1表面の電界強度の大きくなる導体口出し部4の方向にはほとんど排出されないため、第4の実施形態と同様に、第二排気筒102の形状を複雑な形状にすることなく、第1の実施形態のガス遮断器よりもさらに地絡の可能性を低くすることができる。したがって、固定側の導体口出し部4がガスタンク1の主胴部分側面ではなく平板部分に配置される場合に、第4の実施形態と同等の効果を得ることができる。
【0043】
[第7の実施形態]
図9は、本発明を適用した第7の実施形態に係る三相一括タンク形ガス遮断器を示す模式的断面図である。また、図10は、図9中のA−A線断面を示す模式的断面図であり、三相分の排気筒101,102とガスタンク1の主胴部分との位置関係を示す図である。
【0044】
本実施形態は、図9に示すように、三相分の消弧室3を一つのガスタンク1に絶縁ガス2とともに密閉封入した三相一括タンク形ガス遮断器のうち、特に、固定側の導体口出し部4がガスタンク1の主胴部分側面に配置される場合に、各相の消弧室3の排気構造部を、いずれも、第1の実施形態と同様の、第一、第二の排気筒101,102からなる排気構造部100としたものである。
【0045】
本実施形態において、各相の消弧室3の固定部3bを外部回路と接続する固定側接続導体5は、いずれも、各相の消弧室3の固定サポート33に取り付けられ、ガスタンク1の主胴部分側面に配置された固定側の導体口出し部4から取り出されている。
【0046】
以上のような構成を有する第7の実施形態の三相一括タンク形ガス遮断器においては、各相の排気構造部を、第1の実施形態と同様の、第一、第二排気筒からなる構成としたことにより、大電流遮断時に発生する熱ガスを効率よく十分に冷却し、絶縁性能を回復させ地絡および相間短絡を防止することができ、かつ、排気構造部の長さを必要最小限に抑制できるため、ガスタンクの大きさを必要最小限に抑制することができる。
【0047】
[第8の実施形態]
図11は、本発明を適用した第8の実施形態に係る三相一括タンク形ガス遮断器を示す模式的断面図である。
【0048】
本実施形態は、図11に示すように、第7の実施形態の三相一括タンク形ガス遮断器における構成の一部を次のように変更したものである。すなわち、各相の排気構造部100において、第一排気筒101、第二排気筒102、およびそれらを支持する金属製支持構造物103は、ガス遮断器の定格電流を通電するために充分な肉厚を持つように構成されている。そして、各相の消弧室3の固定部3bを外部回路と接続する固定側接続導体5は、各相の第二排気筒102外面に取り付けられている。
【0049】
また、各相の排気構造部100を構成する第二排気筒102は、その略円筒状の本体部分がガスタンク1の固定側の導体口出し部4と重なり、かつ、本体部分の開口端部が固定側の導体口出し部4と重ならないように配置されている。すなわち、ガスタンク1の固定側の導体口出し部4が、第二排気筒102の排気流路出口の上流側に位置するような構成とされている。なお、他の部分の構成は、第7の実施形態と同様である。
【0050】
以上のような構成を有する第8の実施形態の三相一括タンク形ガス遮断器においては、大電流遮断時に発生する熱ガスは、ガスタンク1表面の電界強度の大きくなる導体口出し部4の方向にはほとんど排出されないため、第7の実施形態の三相一括タンク形ガス遮断器よりもさらに地絡の可能性を低くすることができる。
【0051】
[第9の実施形態]
図12は、本発明を適用した第9の実施形態に係る三相一括タンク形ガス遮断器を示す模式的断面図である。
【0052】
本実施形態は、図12に示すように、第7の実施形態の三相一括タンク形ガス遮断器における構成の一部を次のように変更したものである。すなわち、各相の排気構造部100において、第二排気筒102は、第一排気筒101に対して金属製支持構造物103で同電位に支持されるのではなく、ガスタンク1の平板部分に対して絶縁支持構造物104により絶縁支持されており、第一排気筒101と第二排気筒102は電気的に切り離されている。なお、他の部分の構成は、第7の実施形態と同様である。
【0053】
以上のような構成を有する第9の実施形態のガス遮断器においては、各相の排気構造部100を構成する第二排気筒102が電気的に浮いた状態となり、接地電位と固定部3bの電位の略中間の電位となるため、第二排気筒102とガスタンク1との間の電位差および異相の第二排気筒102間の電位差が緩和される。したがって、第7の実施形態の三相一括タンク形ガス遮断器よりもさらに地絡および相間短絡の可能性を低くすることができる。
【0054】
[第10の実施形態]
図13は、本発明を適用した第10の実施形態に係る三相一括タンク形ガス遮断器を示す模式的断面図である。
【0055】
本実施形態は、図13に示すように、第7の実施形態の三相一括タンク形ガス遮断器における構成の一部を次のように変更したものである。すなわち、三相分の固定側接続導体5を取り出す固定側の導体口出し部4が、ガスタンク1の一端を閉塞する平板部分に配置される場合に、各相の排気構造部100において、第一排気筒101と第二排気筒102とそれらを支持する金属製支持構造物103は、ガス遮断器の定格電流を通電するために充分な肉厚を持つように構成されている。さらに、各相の消弧室3の固定部3bを外部回路と接続する固定側接続導体5は、各相の第二排気筒102の底板部分にそれぞれ取り付けられている。なお、他の部分の構成は、第7の実施形態と同様である。
【0056】
以上のような構成を有する第10の実施形態の三相一括タンク形ガス遮断器においては、大電流遮断時に発生する熱ガスは、ガスタンク1表面の電界強度の大きくなる導体口出し部4の方向はほとんど排出されないため、第8の実施形態と同様に、第7の実施形態の三相一括タンク形ガス遮断器よりもさらに地絡の可能性を低くすることができる。したがって、固定側の導体口出し部4がガスタンク1の主胴部分側面ではなく平板部分に配置される場合に、第8の実施形態と同等の効果を得ることができる。
【0057】
[第11の実施形態]
図14は、本発明を適用した第11の実施形態に係る三相一括タンク形ガス遮断器を示す模式的断面図である。また、図15は、図14中のA−A線断面を示す模式的断面図であり、三相分の排気筒101,102とガスタンク1の主胴部分との位置関係を示す図である。
【0058】
本実施形態は、図15に示すように、第7の実施形態の三相一括タンク形ガス遮断器における構成の一部を次のように変更したものである。すなわち、各相の排気構造部100において、第二排気筒102の軸方向と直交する軸直交断面上における第二排気筒102の本体部分の内面と外面の断面形状のうち、少なくとも内面の断面形状は、略楕円形状とされている。そして、第二排気筒102は、その内面の略楕円形状の短軸方向が、当該軸直交断面上で当該相の消弧室3の中心軸とガスタンク1の中心軸を結ぶ直線方向と略一致するように配置されている。なお、他の部分の構成は、第7の実施形態と同様である。
【0059】
以上のような構成を有する第11の実施形態の三相一括タンク形ガス遮断器においては、大電流遮断時に発生する熱ガスは、ガスタンク1と各相の消弧室3間、および異相消弧室3間の電界強度が最も高くなる部分にはほとんど排出されないため、第7の実施形態の三相一括タンク形ガス遮断器よりもさらに地絡および相間短絡の防止効果を大きくすることができ、排気構造部の長さおよびガスタンクの大きさをさらに抑制することができる。
【0060】
[第12の実施形態]
図16は、本発明を適用した第12の実施形態に係る三相一括タンク形ガス遮断器を示す模式的断面図である。本実施形態は、第8、第11の実施形態を組み合わせた変形例である。
【0061】
すなわち、各相の排気構造部100において、第一排気筒101、第二排気筒102、金属製支持構造物103が、ガス遮断器の定格電流を通電するように構成される点、各相の固定側接続導体5が、各相の第二排気筒102外面に取り付けられる点、および、ガスタンク1の固定側の導体口出し部4が、第二排気筒102の排気流路出口の上流側に配置されている点は、第8の実施形態と同様である。
【0062】
また、第二排気筒102の内面の断面形状が、略楕円形状とされている点、およびその短軸方向が、当該相の消弧室3の中心軸とガスタンク1の中心軸を結ぶ直線方向と略一致するように配置されている点は、第11の実施形態と同様である。すなわち、図16中のA−A線断面は、図15と同様である。
【0063】
以上のような構成を有する第12の実施形態の三相一括タンク形ガス遮断器によれば、第8、第11の実施形態の効果が相乗的に得られる。
【0064】
[第13の実施形態]
図17は、本発明を適用した第13の実施形態に係る三相一括タンク形ガス遮断器を示す模式的断面図である。本実施形態は、第10、第11の実施形態を組み合わせた変形例である。
【0065】
すなわち、三相分の固定側接続導体5を取り出す固定側の導体口出し部4が、ガスタンク1の一端を閉塞する平板部分に配置される場合に、各相の排気構造部100において、第一排気筒101、第二排気筒102、金属製支持構造物103が、ガス遮断器の定格電流を通電するように構成されている点、および、各相の固定側接続導体5が、各相の第二排気筒102の底板部分に取り付けられている点は、第10の実施形態と同様である。
【0066】
また、第二排気筒102の内面の断面形状が、略楕円形状とされている点、およびその短軸方向が、当該相の消弧室3の中心軸とガスタンク1の中心軸を結ぶ直線方向と略一致するように配置されている点は、第11の実施形態と同様である。すなわち、図16中のA−A線断面は、図15と同様である。
【0067】
以上のような構成を有する第13の実施形態の三相一括タンク形ガス遮断器によれば、固定側の導体口出し部4がガスタンク1の主胴部分側面ではなく平板部分に配置される場合に、第10、第11の実施形態の効果が相乗的に得られる。
【0068】
[他の実施形態]
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で他にも多種多様な変形例が実施可能である。例えば、第二排気筒の具体的な断面形状は、自由に変更可能であり、第二排気筒と第一排気筒の具体的な寸法比率は自由に選択可能である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明を適用した第1の実施形態に係るガス遮断器を示す模式的断面図。
【図2】本発明を適用した第2の実施形態に係るガス遮断器を示す模式的断面図。
【図3】図2中のA−A線断面を示す模式的断面図。
【図4】本発明を適用した第3の実施形態に係るガス遮断器を示す模式的断面図。
【図5】図4中のA−A線断面を示す模式的断面図。
【図6】本発明を適用した第4の実施形態に係るガス遮断器を示す模式的断面図。
【図7】本発明を適用した第5の実施形態に係るガス遮断器を示す模式的断面図。
【図8】本発明を適用した第6の実施形態に係るガス遮断器を示す模式的断面図。
【図9】本発明を適用した第7の実施形態に係るガス遮断器を示す模式的断面図。
【図10】図9中のA−A線断面を示す模式的断面図。
【図11】本発明を適用した第8の実施形態に係るガス遮断器を示す模式的断面図。
【図12】本発明を適用した第9の実施形態に係るガス遮断器を示す模式的断面図。
【図13】本発明を適用した第10の実施形態に係るガス遮断器を示す模式的断面図。
【図14】本発明を適用した第11の実施形態に係るガス遮断器を示す模式的断面図。
【図15】図14中のA−A線断面を示す模式的断面図。
【図16】本発明を適用した第12の実施形態に係るガス遮断器を示す模式的断面図。
【図17】本発明を適用した第13の実施形態に係るガス遮断器を示す模式的断面図。
【図18】従来のガス遮断器の閉路状態を示す模式的断面図。
【図19】図18のガス遮断器の開路状態を示す模式的断面図。
【符号の説明】
【0070】
1…ガスタンク
2…絶縁ガス
3…消弧室
3a…可動部
3b…固定部
3c…極間支持絶縁筒
3d…可動接点部
4…導体口出し部
5…固定側接続導体
11…パッファシリンダ
12…ノズル
13…可動側アーク接触子
14…可動側主接触子
15…操作ロッド
21…パッファピストン
22…可動サポート
31…固定側アーク接触子
32…固定側主接触子
33…固定サポート
34…排気筒
100…排気構造部
101…第一排気筒
102…第二排気筒
102a…内側突出部
103…金属製支持構造物
104…絶縁支持構造物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性ガスを封入した容器内部に、固定部と可動部を対向配置した消弧室と、大電流遮断時に消弧室で発生する熱ガスを冷却して容器内に排出する排気構造部を備え、容器の一部に配置された固定側の導体口出し部から消弧室の固定部を外部回路と接続する固定側接続導体が取り出されるガス遮断器において、
前記消弧室の前記固定部のうち、前記可動部と対向する側の端部を先端、反対側の端部を終端と定義した場合に、
前記排気構造部は、略円筒状の第一排気筒と、当該第一排気筒の外径より大きな内径を有する略円筒状の本体部分とその一端を閉塞する底板部分を有する第二排気筒から構成され、
前記第一排気筒は、前記消弧室の前記固定部終端に略同軸方向に取り付けられ、
前記第二排気筒は、前記本体部分が間隙部を介して前記第一排気筒の外周を包囲し、かつ、前記底板部分が前記第一排気筒の終端と接触しない位置関係となるように第一排気筒と略同心配置され、
前記第一排気筒と前記第二排気筒は、当該2つの排気筒の軸方向と直交する軸直交断面上における前記間隙部の断面積が、第一排気筒の内部断面積より大きくなるような寸法関係とされる
ことを特徴とするガス遮断器。
【請求項2】
前記容器は、前記消弧室を略同軸方向に収納する主胴部分を有し、
前記固定側の導体口出し部は、前記容器の前記主胴部分の側面に配置され、
前記第二排気筒の軸方向と直交する軸直交断面上における当該第二排気筒の前記本体部分内面の断面形状は、少なくとも一箇所に前記第一排気筒との間の間隙部を狭める内側突出部を備え、当該第二排気筒は、当該内側突出部の一つの方向が前記固定側の導体口出し部の方向と略一致するように配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載のガス遮断器。
【請求項3】
前記容器は、前記消弧室を略同軸方向に収納する主胴部分を有し、
前記固定側の導体口出し部は、前記容器の前記主胴部分の側面に配置され、
前記第二排気筒の軸方向と直交する軸直交断面上における当該第二排気筒の前記本体部分内面の断面形状は略楕円形状とされ、当該第二排気筒は、当該略楕円形状の短軸方向が前記固定側の導体口出し部の方向と略一致するように配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載のガス遮断器。
【請求項4】
前記第二排気筒を前記第一排気筒に対して同電位で支持する金属製支持構造物を備え、
前記第一排気筒、前記第二排気筒、および前記金属製支持構造物は、ガス遮断器の定格電流を通電するために充分な肉厚を持つように構成され、
前記容器は、前記消弧室を略同軸方向に収納する主胴部分を有し、
前記固定側の導体口出し部は、前記容器の前記主胴部分の側面に配置され、
前記第二排気筒は、前記本体部分が前記固定側の導体口出し部と重なり、かつ、当該本体部分の開口端部が当該導体口出し部と重ならないように配置され、
前記固定側接続導体は、前記第二排気筒の前記略円筒状本体部分の外面に取り付けられている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のガス遮断器。
【請求項5】
前記第二排気筒を前記第一排気筒に対して同電位で支持する金属製支持構造物を備え、
前記第一排気筒、前記第二排気筒、および前記金属製支持構造物は、ガス遮断器の定格電流を通電するために充分な肉厚を持つように構成され、
前記容器は、前記消弧室を略同軸方向に収納する主胴部分とその一端を閉塞する平板部分を有し、
前記固定側の導体口出し部は、前記容器の前記平板部分に配置され、
前記固定側接続胴体は、前記第二排気筒の前記底板部分の外面に取り付けられている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のガス遮断器。
【請求項6】
前記第二排気筒を前記容器に対して絶縁支持する絶縁支持構造物を備え、
前記第一排気筒と前記第二排気筒は、電気的に切り離されている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のガス遮断器。
【請求項7】
前記容器内に、三相分の各相の前記消弧室と三相分の各相の前記排気構造部を備え、前記固定側の導体口出し部から三相分の各相の前記固定側接続導体が取り出される三相一括形のガス遮断器であり、
前記各相の排気構造部は、前記第一排気筒と前記第二排気筒から構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のガス遮断器。
【請求項8】
前記各相の排気構造部を構成する前記第二排気筒において、当該第二排気筒の軸方向と直交する軸直交断面上における当該第二排気筒の前記本体部分内面の断面形状は略楕円形状とされ、当該第二排気筒は、当該略楕円形状の短軸方向が、当該軸直交断面上で当該相の消弧室の中心軸と前記容器の中心軸を結ぶ直線方向と略一致するように配置されている
ことを特徴とする請求項7に記載のガス遮断器。
【請求項9】
前記各相の排気構造部は、前記第二排気筒を前記第一排気筒に対して同電位で支持する金属製支持構造物を備え、
前記各相の排気構造部を構成する前記第一排気筒、前記第二排気筒、および前記金属製支持構造物は、ガス遮断器の定格電流を通電するために充分な肉厚を持つように構成され、
前記容器は、前記各相の消弧室を略同軸方向に収納する主胴部分を有し、
前記固定側の導体口出し部は、前記容器の前記主胴部分の側面に配置され、
前記各相の排気構造部を構成する前記第二排気筒は、前記本体部分が前記固定側の導体口出し部と重なり、かつ、当該本体部分の開口端部が当該導体口出し部と重ならないように配置され、
前記各相の固定側接続導体は、前記各相の排気構造部を構成する前記第二排気筒の前記略円筒状本体部分の外面に取り付けられている
ことを特徴とする請求項7または請求項8に記載のガス遮断器。
【請求項10】
前記各相の排気構造部は、前記第二排気筒を前記第一排気筒に対して同電位で支持する金属製支持構造物を備え、
前記各相の排気構造部を構成する前記第一排気筒、前記第二排気筒、および前記金属製支持構造物は、ガス遮断器の定格電流を通電するために充分な肉厚を持つように構成され、
前記容器は、前記各相の消弧室を略同軸方向に収納する主胴部分とその一端を閉塞する平板部分を有し、
前記固定側の導体口出し部は、前記容器の前記平板部分に配置され、
前記各相の固定側接続導体は、前記各相の排気構造部を構成する前記第二排気筒の前記底板部分の外面に取り付けられている
ことを特徴とする請求項7または請求項8に記載のガス遮断器。
【請求項11】
前記各相の排気構造部は、前記第二排気筒を前記容器に対して絶縁支持する絶縁支持構造物を備え、
前記各相の排気構造部を構成する前記第一排気筒と前記第二排気筒は、電気的に切り離されている
ことを特徴とする請求項7または請求項8に記載のガス遮断器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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