説明

ガス遮断器

【課題】ガス遮断器の遮断過程において、効率的に熱ガスをパッファ室に取り込むとともに、電流零点付近でアークに対してガスを効率よく吹き付けることが可能で、熱利用効率の高い、高性能で小形のガス遮断器を提供する。
【解決手段】ガス遮断器は、可動アーク接触子3の中空部Sであって操作ロッド7との接続部分近傍、または可動アーク接触子3の端部に接続された操作ロッド7の中空部Sに、可動アーク接触子3の中空部Sとパッファ室9とを弁の開閉動作により連通させる逆止弁が設けられている。この逆止弁8は、操作ロッド7の中空部Sからパッファ室9に向かう方向にのみ開放され、逆方向にはガスを封止する機能を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス絶縁開閉装置に用いるガス遮断器に係り、特に、熱利用効率の高い、高性能で小形のガス遮断器の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス絶縁開閉装置は、SF6 ガスなどの絶縁性及び消弧性に優れた媒体を充填した容器内に、遮断器及び断路器等の機器や母線を収納することによって構成されている。このガス絶縁開閉装置は、気中絶縁方式の開閉装置に比べて、著しく小形に構成することが可能である。近年では、地価高騰による用地取得の困難性から、小形化が可能なガス絶縁開閉装置が多くの電気開閉所において採用され設置されている。
【0003】
従来より、このようなガス絶縁開閉装置に用いられるガス遮断器では、遮断時に可動接触子と固定接触子との間で発生するアークに対して、消弧性ガスを吹き付け、効率よく消弧して遮断動作を完了するための工夫がなされてきた(特許文献1〜3参照)。
【0004】
このようなガス遮断器の一例を、図6の模式図に示す。図6(a)は、ガス遮断器の遮断過程の前半の状態を示し、図6(b)は、ガス遮断器の遮断過程の後半の状態を示す。この図に示すガス遮断器は、消弧性ガスが充填された接地タンク内(図示せず)に、可動通電接触子1及び可動アーク接触子3と、固定通電接触子2及び固定アーク接触子4とを対向配置して収納してなり、可動アーク接触子3と固定アーク接触子4の外周には、可動側に設けられたパッファシリンダ6に固定された絶縁ノズル5が設けられている。また、パッファシリンダ6及び操作ロッド7は、図示しない絶縁ロッドを介して操作機構と接続されている。このパッファシリンダ6と操作ロッド7とでパッファ室9という空間を形成される。そして、可動アーク接触子3と、操作ロッド7との接続部分近傍に、可動アーク接触子3又は操作ロッド7に設けられた中空部Sとパッファ室9とを連通する連通穴17が設けられている。
【0005】
上述のガス遮断器において、投入状態から開極動作を始めると、可動部1aは、操作機構側である図6で右方向に移動する。このような開極過程において、まず図6(a)に示すように、遮断過程前半では、固定アーク接触子4と可動アーク接触子3との間にアーク10が点弧する。
【0006】
このアーク10は高温であるため、アーク10から高温のガスが発生するとともに加熱された周りの消弧性ガスも高温となる。このように発生した高温ガス(又は「熱ガス」という。)は、図中に矢印で示すように、絶縁ノズル5と可動アーク接触子3とで形成される空間を通ってパッファ室9内に流入するとともに、可動アーク接触子3及び操作ロッド7の中空部S内を通った後、連通穴17を通じてパッファ室9内に流れ込む。この流れ込んだ高温ガスによってパッファ室9内のガス圧力は高められる。
【0007】
その後、図6(b)に示すような遮断過程後半では、電流零点に向けてアーク10が小さくなり、高圧力となったパッファ室9からガスがアーク10に吹き付けられて消弧され、電流遮断が完了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−282695号公報
【特許文献2】特開2001−155595号公報
【特許文献3】特願平6−102707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のように、ガス遮断器の遮断過程においては、効率的に熱ガスをパッファ室に取り込むとともに、電流零点付近でアークに対してガスを効率よく吹き付ける必要がある。
【0010】
しかしながら、上述した従来のガス遮断器の構成では、図6(b)に示すような遮断過程後半において、連通穴を通じて操作ロッドの中空部及び可動アーク接触子の内側にもガスが流出してこの空間を充気することにもガスが費やされるため、アークへの吹き付け効率が低下する可能性があった。
【0011】
また、消弧ガスのアークへの吹き付けが、連通穴を通じて操作ロッドの中空部及び可動アーク接触子の内側からの流路と、絶縁ノズルと可動アーク接触子とで形成される流路との2方向からなるため、吹き付け効率が低下する可能性があった。
【0012】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものであり、その目的は、ガス遮断器の遮断過程において、効率的に熱ガスをパッファ室に取り込むとともに、電流零点付近でアークに対してガスを効率よく吹き付けることが可能で、熱利用効率の高い、高性能で小形のガス遮断器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明は、消弧性ガスが充填された接地タンク内に、可動通電接触子及び可動アーク接触子と、固定通電接触子及び固定アーク接触子とを対向配置して収納し、前記可動アーク接触子と前記固定アーク接触子の外周には、可動側に設けられたパッファシリンダに固定された絶縁ノズルが設けられ、前記パッファシリンダ及び前記操作ロッドは、絶縁ロッドを介して操作機構と接続され、前記パッファシリンダと前記操作ロッドとでパッファ室が形成され、前記操作ロッドの摺動により、可動側を構成する前記可動通電接触子と可動アーク接触子と絶縁ノズル及びパッファシリンダが移動して前記可動アーク接触子と前記固定アーク接触子との開閉動作を行なうガス遮断器において、前記操作ロッドは、前記可動アーク接触子の先端から連通する中空の空間である中空部を備え、前記操作ロッドの中空部には、弁の開閉動作により前記パッファ室と連通させる逆止弁が設けられ、この逆止弁は、操作ロッドの中空部からパッファ室に向かうガスに対して開放し、逆方向にはガスを封止するように構成されたことを特徴とする。
【0014】
以上のような本発明のガス遮断器によれば、操作ロッドの中空部とパッファ室とは、中空部に設けられた逆止弁による弁の開閉動作により連通するようになっており、この逆止弁を、操作ロッドの中空部からパッファ室に向かう方向にのみ開放し、逆方向にはガスを封止するように構成した。これにより、アークから発生した高温ガス又は加熱された周りの消弧性ガスをパッファ室に取り込む際に、逆止弁が開放状態となるので、消弧性ガスを操作ロッドの中空部内に通過させることができる。これにより、ガスを、絶縁ノズルと可動アーク接触子とで形成される空間と、操作ロッドの中空部内との2つの流路により、パッファ室に流入させることが可能となり、パッファ室内の圧力を効率的に上昇させることができる。一方、電流零点付近においては、逆止弁は閉止するため、アークに対して絶縁ノズルと可動アーク接触子とで形成される空間からのみガスが吹き付けられる。これにより、効率的に電流を遮断することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ガス遮断器の遮断過程において、効率的に熱ガスをパッファ室に取り込むとともに、電流零点付近でアークに対してガスを効率よく吹き付けることが可能で、熱利用効率の高い、高性能で小形のガス遮断器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るガス遮断器の構成を示す断面図(a)及び(b)。
【図2】本発明の第2の実施形態に係るガス遮断器の構成を示す断面図(a)及び(b)。
【図3】本発明の第3の実施形態に係るガス遮断器の構成を示す断面図。
【図4】本発明の第4の実施形態に係るガス遮断器の構成を示す断面図。
【図5】本発明の第5の実施形態に係るガス遮断器の構成を示す断面図。
【図6】従来のガス遮断器の構成を示す断面図(a)及び(b)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための代表的な形態(以下、「実施形態」という。)について、図1〜図3を参照して具体的に説明する。なお、従来技術と同様の構成には同様の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0018】
[1.第1の実施形態]
[1−1.構成]
本発明の第1の実施形態に係るガス遮断器について、図1を用いて説明する。図1(a)は、遮断器の遮断過程の前半の状態を示す図であり、図1(b)は、遮断過程の後半の状態を示す図である。
【0019】
本実施形態のガス遮断器の大まかな構成は、従来と同様であり、消弧性ガスが充填された接地タンク内(図示せず)に、可動通電接触子1及び可動アーク接触子3と、固定通電接触子2及び固定アーク接触子4とを対向配置して収納してなり、可動アーク接触子3と固定アーク接触子4の外周には、可動側に設けられたパッファシリンダ6に固定された絶縁ノズル5が設けられている。また、パッファシリンダ6及び操作ロッド7は、図示しない絶縁ロッドを介して操作機構と接続されている。このパッファシリンダ6と操作ロッド7とでパッファ室9という空間が形成される。
【0020】
操作ロッド7は、操作ロッド7の軸方向である図中左右方向に摺動するように構成されており、操作ロッド7の摺動により、可動側を構成する要素である、可動通電接触子1、可動アーク接触子3、絶縁ノズル5及びパッファシリンダ6が左右方向に移動するようになっている。
【0021】
本実施形態のガス遮断器は、また、操作ロッド7に、可動アーク接触子3の先端から、連通する中空の空間である中空部Sが設けられ、この操作ロッド7の中空部Sに、この中空部Sとパッファ室9とを弁の開閉動作により連通させる逆止弁8が設けられている。この逆止弁8は、操作ロッド7の中空部Sからパッファ室9に向かう方向にのみ開放され、逆方向にはガスを封止する機能を有する。
【0022】
[1−2.作用]
以上のような構成からなる本実施形態のガス遮断器においては、遮断器が投入状態から開極動作を始めると、可動部1aは、操作機構側である図1(a)における右方向に移動する。図1(a)の遮断過程前半では、固定アーク接触子4と可動アーク接触子3との間にアーク10が点弧する。このアーク10は高温であるため、アーク10から高温のガスが発生するとともに加熱された周りの消弧性ガスも高温となる。
【0023】
このように発生した高温ガスは、絶縁ノズル5と可動アーク接触子3とで形成される空間を通ってパッファ室9内に流入するとともに、可動アーク接触子3から操作ロッド7の中空部S内を通った後、開放状態となった逆止弁8を介してパッファ室9内に流れ込む。このような2つの流路からパッファ室9に流れ込んだ熱ガスによって、パッファ室9内のガス圧力は高められる。
【0024】
その後、図1(b)に示すような遮断過程後半では、電流零点に向けてアーク10が小さくなる。このアーク10に対して、高圧力となったガスは、パッファ室9から絶縁ノズル5と可動アーク接触子3との間を流れて吹き付けられ、アーク10は消弧され、電流遮断が完了する。このとき逆止弁8は閉止状態となっているので、可動アーク接触子3から操作ロッド7の中空部S内を流路としてガスが流れることはない。
【0025】
[1−3.効果]
以上のような本実施形態のガス遮断器によれば、操作ロッド7の中空部Sとパッファ室とは、中空部Sに設けられた逆止弁8による弁の開閉動作により連通するようになっており、この逆止弁8を、操作ロッド7の中空部Sからパッファ室9に向かう方向にのみ開放し、逆方向にはガスを封止するように構成したことにより次のような効果を奏する。
【0026】
すなわち、アーク10から高温のガスが発生するとともに加熱された周りの消弧性ガスをパッファ室9に取り込む際には、逆止弁8が開放状態となるので、熱ガスを操作ロッド7の中空部S内に通過させることができる。これにより、熱ガスを、絶縁ノズル5と可動アーク接触子3とで形成される空間と、操作ロッド7の中空部S内との2つの流路により、パッファ室9に流入させることが可能となり、パッファ室9内の圧力を効率的に上昇させることができる。
【0027】
一方、電流零点付近においては、逆止弁8は閉止する。そのため、アーク10に対して、絶縁ノズル5と可動アーク接触子3とで形成される空間からのみガスが吹き付けられ、効率的に電流を遮断することができる。
【0028】
以上のような本実施形態によれば、熱利用効率の高い、高性能で小形のガス遮断器を提供することが可能となる。
【0029】
[2.第2の実施形態]
[2−1.構成]
本発明の第2の実施形態に係るガス遮断器について、図2を用いて説明する。図2(a)は、遮断器の遮断過程の前半の状態を示す図であり、図2(b)は、遮断過程の後半の状態を示す図である。なお、第1の実施形態と同様の構成には、同様の符号を付し、説明を省略する。
【0030】
本実施形態におけるガス遮断器では、第1の実施形態のガス遮断器の可動アーク接触子3及び操作ロッド7の構成に改良を加えたものである。具体的には、図2(a)及び(b)に示すように、可動アーク接触子3と操作ロッド7との接続部分近傍または可動アーク接触子3の端部に接続された操作ロッド7の中空部Sを、操作ロッドの操作機構側であって、パッファ室9より操作機構側まで延伸し、この中空部Sの端部近傍に、排気穴11を設けるとともに、図示しない固定部に固定され、この操作ロッド7の外周を覆って摺動させる円筒13に、可動アーク接触子3が遮断過程後半の電流零点近傍に達した際に、この排気穴11と連通する放圧穴12を設けたものである。
【0031】
[2−2.作用効果]
以上のような本実施形態のガス遮断器の構成によれば、第1の実施形態のガス遮断器における作用に加え、次のように作用する。図2(a)の遮断過程の前半では、排気穴11は固定部に固定された円筒13によって塞がれているために熱ガスは排気されない。図2(b)の遮断過程の後半の電流零点付近において、排気穴11が円筒13に設けられた放圧穴12と連通する位置に移動する。これにより、操作ロッド7の中空部Sとその外部とが連通する。
【0032】
これにより、遮断過程の後半において、パッファ室9に溜められ、高圧力となった熱ガスは、パッファ室9から絶縁ノズル5と可動アーク接触子3との間を流れて、アーク10に吹き付けられる。この吹き付けられたガスは、図2(b)に矢印で示すように、絶縁ノズル5から、固定通電接触子2側へ流れるとともに、中空部Sに入り、操作ロッド7の中空部Sとその外部とが連通した排気穴11及び放圧穴12を介して外部に排気される。
【0033】
以上のような本実施形態によれば、操作ロッドの操作機構側に延伸した中空部Sの端部近傍に、排気穴11を設け、円筒13に、可動アーク接触子3が遮断過程後半の電流零点の位置に達した際に、この排気穴11と連通する放圧穴12を設けたことにより、遮断過程の後半において、排気穴11と放圧穴12とが連通する。このため、パッファ室9からアーク10に吹き付けられたガスは、絶縁ノズル5から、固定通電接触子2側へ流れるとともに、中空部Sに入り、操作ロッド7の中空部Sとその外部とが連通した排気穴11及び放圧穴12を介して外部に排気されることとなる。
【0034】
したがって、パッファ室9内からアーク10に吹き付けられたガスを、効率よく外部に排気することができるようになり、ガス流路を流れよく形成することができるので、第1の実施形態の作用効果と合わせて、全体として、パッファ室9内のガスを有効にアーク10に吹き付けることができるようになる。
【0035】
[3.第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態に係るガス遮断器について、図3を用いて説明する。なお、第1及び第2の実施形態と同様の構成には、同様の符号を付し、説明を省略する。
【0036】
本実施形態に係るガス遮断器は、第2の実施形態におけるガス遮断器に改良を施したものであり、図3に示すように、上記実施形態において、逆止弁8を設けた位置の絶縁ノズル5側である可動アーク接触子3と固定アーク接触子4の接点側に、パッファ室9に向って突出した小壁面を形成するフローガイド14を設けたものである。
【0037】
ここで、このフローガイド14によって形成される壁面は、絶縁ノズル5と可動アーク接触子3とで形成される空間を通ってパッファ室9内に流入するガスの流れと、逆止弁8からパッファ室9内に流入するガスの流れとが、混濁することで逆止弁8からパッファ室9内に流入するガスの流れを妨げないような最低限の高さが確保されていれば良い。
【0038】
このようなフローガイド14によれば、遮断過程前半において、中空部Sを通過して、逆止弁8から流れ込んできたガスを、このフローガイド14により、パッファ室9側へガイドすることによってパッファ室9の外周方向に効率よく噴出させることができる。また、このフローガイド14により、絶縁ノズル5と可動アーク接触子3とで形成される空間を通過してパッファ室9に流入してくるガスの、逆止弁8への流入を妨げ、中空部Sから逆止弁8へ流れ込んでくるガスの流れを乱すのを防ぐことができる。このような本実施形態によれば、パッファ室9への効率的なガス流入を実現し、ひいては、パッファ室9内のガスを有効にアーク10に吹き付けることができるようになる。
【0039】
[4.第4の実施形態]
本発明の第4の実施形態に係るガス遮断器について、図4を用いて説明する。なお、第1、第2及び第3の実施形態と同様の構成には、同様の符号を付し、説明を省略する。
【0040】
本実施形態に係るガス遮断器は、第3の実施形態におけるガス遮断器に改良を施したものであり、図4に示すように、第3の実施形態におけるフローガイド15を外周方向に延伸し、さらに、その先端を絶縁ノズル5の方向に曲げて構成したものである。すなわち、フローガイド15の径を、パッファ室9の径に近づけ、さらに、全体として、絶縁ノズル5側に面を向けた盆状となるように構成し、この盆状のフローガイド15の立ち上がり面とパッファ室9内周面とにより、逆止弁8からパッファ室9内に流入したガスが、絶縁ノズル5側に流れるためのガス流路を形成したものである。
【0041】
以上のような本実施形態では、中空部Sから逆止弁8へ流れ込んできたガスをパッファ室9の内周面近傍までガイドしながら、パッファ室9内部に噴出させる。同時に、絶縁ノズル5と可動アーク接触子3とで形成される空間を通過してパッファ室9に流入してくるガスは、フローガイド15の絶縁ノズル5側の盆状に沿って外周方向に流れていく。この両者の流れはパッファ室9内でフローガイド15の外周部分で合流し、ひとつの流れとなる。このような本実施形態によれば、第4の実施形態の効果に加え、さらにパッファ室9への効率的なガス流入を実現するとともに、パッファ室9内にガスをスムーズに拡散することができるようになる。
【0042】
[5.第5の実施形態]
本発明の第5の実施形態に係るガス遮断器について、図5を用いて説明する。なお、第1、第2、第3及び第4の実施形態と同様の構成には、同様の符号を付し、説明を省略する。
【0043】
本実施形態のガス遮断器は、図5に示すように、可動アーク接触子3及び操作ロッド7の周囲を覆うように絶縁ガイド16を設け、絶縁ガイド16と、可動アーク接触子3とで形成される流路と、パッファ室9とが連通する位置に逆止弁8を設け、さらに、この逆止弁8を設けた位置の絶縁ノズル5側である接点側に、パッファ室9に向って突出した壁面を形成するフローガイド15を設けたものである。
【0044】
なお、ここではフローガイド15として、第4の実施形態において説明した態様のものを示しているが、本実施形態においては、第1又は第2の実施形態のように、フローガイドを用いない構成においても実現可能であるし、第3の実施形態に示したようなフローガイドを用いて構成することも可能である。
【0045】
以上のような本実施形態のガス遮断器では、絶縁ガイド16と可動アーク接触子3との間からも、熱ガスをパッファ室9へ流入させることができるようになる。これにより、パッファ室9への効率的なガス流入を実現し、ひいては、パッファ室9内のガスを有効にアーク10に吹き付けることができるようになる。
【0046】
[6.他の実施形態]
本発明は、上記の実施形態において開示した内容に限定されるものではなく、例えば、次のような態様も包含する。すなわち、第1〜第4の実施形態におけるガス遮断器において、パッファ室9内面の全部または一部に昇華性の材料を塗布または固形物を設置する構成も本発明の一態様である。さらに、第3又は第4の実施形態においては、フローガイドの表面の全部または一部に昇華性の材料を塗布することも可能である。
【0047】
このような態様では、絶縁ノズル5側及び逆止弁8から流入してくる熱ガスが昇華性材料に触れると、昇華性材料が昇華する。このように、昇華性材料がパッファ室9内で昇華すると、パッファ室9内のガス圧力がより上昇し、高性能のガス遮断器を実現すること可能となる。
【0048】
第5の実施形態におけるガス遮断器において、可動アーク接触子3の周囲を覆うように絶縁ガイド16を設け、絶縁ガイド16と、可動アーク接触子3とで形成される流路とパッファ室9とを連通する位置に逆止弁8を設け、さらに、絶縁ガイド16と可動アーク接触子3とで形成される流路と操作ロッド7の中空部Sとを、逆止弁で連通させる構成とすることも可能である。このような構成では、絶縁ガイド16と可動アーク接触子3との間からだけでなく、中空部Sからも、熱ガスをパッファ室9に流入させることができ、パッファ室9への効率的なガス流入を実現し、ひいては、パッファ室9内のガスを有効にアーク10に吹き付けることが可能となる。
【符号の説明】
【0049】
1…可動通電接触子
1a…可動部
2…固定通電接触子
3…可動アーク接触子
4…固定アーク接触子
5…絶縁ノズル
6…パッファシリンダ
7…操作ロッド
8…逆止弁
9…パッファ室
10…アーク
11…排気穴
12…放圧穴
13…円筒
14,15…フローガイド
16…絶縁ガイド
17…連通穴
S…中空部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
消弧性ガスが充填された接地タンク内に、可動通電接触子及び可動アーク接触子と、固定通電接触子及び固定アーク接触子とを対向配置して収納し、前記可動アーク接触子と前記固定アーク接触子の外周には、可動側に設けられたパッファシリンダに固定された絶縁ノズルが設けられ、前記パッファシリンダ及び前記操作ロッドは、絶縁ロッドを介して操作機構と接続され、前記パッファシリンダと前記操作ロッドとでパッファ室が形成され、前記操作ロッドの摺動により、可動側を構成する前記可動通電接触子と可動アーク接触子と絶縁ノズル及びパッファシリンダが移動して前記可動アーク接触子と前記固定アーク接触子との開閉動作を行なうガス遮断器において、
前記操作ロッドは、前記可動アーク接触子の先端から連通する中空の空間である中空部を備え、
前記操作ロッドの中空部には、弁の開閉動作により前記パッファ室と連通させる逆止弁が設けられ、この逆止弁は、操作ロッドの中空部からパッファ室に向かうガスに対して開放し、逆方向にはガスを封止するように構成されたことを特徴とするガス遮断器。
【請求項2】
前記可動アーク接触子及び前記操作ロッドの周囲を覆うように絶縁ガイドを設け、
前記絶縁ガイドと前記可動アーク接触子間にガス流路が形成され、このガス流路が形成された前記絶縁ガイドには、弁の開閉動作により前記パッファ室と連通させる逆止弁が設けられ、この逆止弁は、操作ロッドの中空部からパッファ室に向かうガスに対して開放し、逆方向にはガスを封止するように構成されたことを特徴とする請求項1記載のガス遮断器。
【請求項3】
前記中空部は、前記操作ロッドの操作機構側であって、前記パッファ室より操作機構側まで延伸して設けられ、延伸した前記中空部の操作機構側端部近傍には、排気穴が設けられ、
前記操作ロッドの外周には、前記操作ロッド及び前記排気穴を覆う円筒が設けられ、この円筒には、前記可動アーク接触子が遮断過程後半の電流零点近傍に達した際に、前記排気穴の相当する位置に、外部と連通する放圧穴が設けられたことを特徴とする請求項1又は2記載のガス遮断器。
【請求項4】
前記操作ロッドの逆止弁を設けた位置であって、前記可動アーク接触子と前記固定アーク接触子の接点側に、前記操作ロッドからパッファ室に向って突出した壁面を形成するフローガイドを設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のガス遮断器。
【請求項5】
前記フローガイドは、その先端が、前記パッファ室内の外周方向に延伸して設けられ、先端を前記接点側に曲げて盆状に形成され、
前記盆状のフローガイドの立ち上がり面と、前記パッファ室内周面とにより、前記逆止弁から前記パッファ室内に流入する消弧性ガスの流路を形成することを特徴とする請求項4に記載のガス遮断器。
【請求項6】
前記パッファ室内面の少なくとも一部に、昇華性の材料又は固形物を塗布又は設置したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のガス遮断器。
【請求項7】
前記フローガイド表面の少なくとも一部に、昇華性の材料又は固形物を塗布又は設置したことを特徴とする請求項4又は5に記載のガス遮断器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−231898(P2010−231898A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−75054(P2009−75054)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】