説明

ガス遮断器

【課題】絶縁ノズル内でアークによって閉塞現象を生じても効果的に吹き付けガスに旋回成分を与えて大電流遮断性能を向上したガス遮断器を提供する。
【解決手段】固定アーク接触子1と可動アーク接触子2の接触部を包囲して配置すると共に、吹き付けガス流を両アーク接触子間のアークに作用させるように案内する絶縁ノズル4のスロート部12に、複数の旋回成分溝13a〜13nを周方向にほぼ等間隔で形成し、これらの旋回成分溝13a〜13nは、吹き付けガス流の基本的な流れ方向に対して傾きを有し形成することにより、同部を流れる吹き付けガス流に対して積極的な旋回成分を与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮断動作時に圧縮した消弧性ガスを絶縁ノズルにより案内して吹き付け消弧を行うガス遮断器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のガス遮断器として、対を成す固定アーク接触子と可動アーク接触子間の開離動作に関連して消弧性ガスを圧縮し、両アーク接触子間の開離によって発生したアークに対してこの圧縮したガスを絶縁ノズルによって案内しながら吹き付けて消弧を行う構成が知られており、アークに対して効果的に吹き付けガス流を作用させて遮断性能を向上するための改良が行われている。例えば、従来のガス遮断器として、絶縁ノズルにおけるスロート部よりも吹き付けガス流の上流側または下流側に位置する部分に、ガス流を整流する整流格子を形成して、ガス流の停滞発生および低圧力領域の発生を防止して進み小電流遮断性能を向上しようとしたもの(例えば、特許文献1を参照)や、開離動作に関連して消弧性ガスを圧縮する圧縮装置から絶縁ノズル内に吹き付けガス流を導く流通路に、吹き付けガス流に円周方向に回転する流れ成分を与え、固定アーク接触子の先端部におけるガス流の乱れや停滞を防止して遮断性能を向上しようとしたもの(例えば、特許文献2を参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−98025号公報
【特許文献2】特開平9−92102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のガス遮断器では、固定アーク接触子と可動アーク接触子間の開離距離が小さい時点で消弧が完了する小電流遮断に対しては吹き付けガス流の改善が望めるが、固定アーク接触子が絶縁ノズルのスロート部から抜け出てから消弧が完了する近距離遮断(SLF)のような大電流遮断性能との兼ね合いについては十分な考慮が払われていなかった。つまり、特許文献1に記載されたガス遮断器では、小電流遮断について考慮した構成であり、固定アーク接触子が絶縁ノズルのスロート部から抜け出た後に消弧が行われる大電流遮断時、絶縁ノズル内部全体にアークによる圧力上昇で閉塞現象が生じると、アークから離れて形成されている整流格子はガス流の整流に対して殆ど影響を与えなくなってしまう。また特許文献2に記載されたガス遮断器では、固定アーク接触子が絶縁ノズルのスロート部から抜け出た後に消弧が行われる大電流遮断時、吹き付けガス流に旋回成分を与えることは効果的であるが、固定アーク接触子が絶縁ノズルのスロート部から抜け出るまでは、アークによって絶縁ノズル内の圧力が上昇し、絶縁ノズル内では吹き付けガス流の停滞する閉塞現象が生じると、吹き付けガス流に与えようとしている旋回成分は全く発生せず、大電流遮断性能を向上することは殆ど期待できない。
【0005】
本発明の目的は、絶縁ノズル内でアークによって閉塞現象を生じても効果的に吹き付けガスに旋回成分を与えて大電流遮断性能を向上したガス遮断器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成するために、開離可能な対を成す固定アーク接触子および可動アーク接触子と、遮断動作時に消弧性ガスを圧縮する圧縮装置と、そのスロート部を通して挿入した前記固定アーク接触子と前記可動アーク接触子の接触部を包囲して設け前記圧縮装置で圧縮した消弧性ガスを前記固定アーク接触子と可動アーク接触子間の開離によって発生したアークに吹き付けるように案内する絶縁ノズルとを備えたガス遮断器において、前記絶縁ノズルの前記スロート部に、前記スロートを通過する吹き付けガス流に旋回成分を与える旋回成分溝を形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のガス遮断器によれば、固定アーク接触子が絶縁ノズルのスロート部を抜け出ると、このスロート部を通しての吹き付けガス流が形成されることになるが、スロート部を通過するとき旋回成分溝によって円周方向または固定アーク接触子の中心軸に向かうような旋回成分が積極的に与えられ、アークの全周部から全体的にほぼ均等な吹き付け作用および冷却作用などを与えて、大電流遮断性能を向上することができる。また、この旋回成分溝の形成位置はスロート部であるから、大電流遮断時におけるアークによって生じる圧力上昇による閉塞現象で効果が損なわれることはなく、固定アーク接触子が絶縁ノズルのスロート部を抜け出る時点では常に有効に作用する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は本発明に一実施の形態によるガス遮断器の遮断途中状態を示す断面図である。
【図2】図2は図1に示したガス遮断器の要部である絶縁ノズルの部分断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、図1は本発明に一実施の形態によるガス遮断器の遮断部を示す断面図である。
遮断部は消弧性ガスを封入した密閉容器内に構成しており、対を成す固定アーク接触子1と可動アーク接触子2が接離可能に対向配置し、固定アーク接触子1は図示しない手段によって図示の位置に固定しているのに対して、可動アーク接触子2は図示しない操作器によって駆動軸3を介してその軸線上を開閉動作するように構成している。接触状態の固定アーク接触子1と可動アーク接触子2の接触部を包囲して配置した絶縁ノズル4は、可動アーク接触子2と、この可動アーク接触子2の外周部を包囲して配置した絶縁筒5と共にパッファシリンダ6に取り付けている。固定アーク接触子1の外周部には同様に支持した固定主接触子7を配置し、この固定主接触子7は絶縁ノズル4の外周部でパッファシリンダ6に取り付けた可動主接触子8に対して接離可能に対向配置している。
【0010】
駆動軸3に中心軸9を介して連結したパッファシリンダ6は、ピストン10と可摺動的に関係で配置し、パッファシリンダ6とピストン10により遮断動作に関連してパッファ室11内の消弧性ガスを圧縮する圧縮装置を構成している。上述した絶縁ノズル4は圧縮装置からの消弧性ガスをその内面に沿って案内し、固定アーク接触子1と可動アーク接触子2間に発生したアークに対して効果的に作用させるために最狭部であるスロート部12を有し、この最狭部12に詳細を後述する旋回成分溝13を有している。
【0011】
投入状態で、可動主接触子8は固定主接触子7と接触し、固定アーク接触子1は絶縁ノズル4のスロート部12内に挿入されて可動アーク接触子2と接触している。定格電流は主に可動主接触子8と固定主接触子7を流れている。遮断動作は図示しない操作器によって駆動軸3を図示の下方の遮断方向に駆動して行い、先ず、固定主接触子7から可動主接触子8を開離し、その後、可動アーク接触子2を固定アーク接触子1から開離する。従って、両アーク接触子1,2間の開離に伴ってアークが発生することになるが、この遮断動作に関連して圧縮装置を構成するパッファ室11内で消弧性ガスを圧縮し、この圧縮した吹き付けガスを絶縁筒5と絶縁ノズル4の対向面に沿って案内してアークに作用させて消弧を行う。SLF遮断のような大電流遮断時は、固定アーク接触子1が図示のように絶縁ノズル4のスロート部12を抜け出た後、スロート部12を通る主要な吹き付けガス流が形成されてから消弧が行われる。
【0012】
この大電流遮断時の吹き付けガス流について、さらに説明する。
吹き付けガス流は、基本的にはパッファ室11内で圧縮した消弧性ガスを絶縁ノズル4内に供給して形成されるが、固定アーク接触子1が絶縁ノズル4のスロート部12を抜け出るまでは、両アーク接触子1,2間に発生したアークの影響を受けて絶縁ノズル4内の圧力が急速に上昇し、閉塞状態となりガス流は停滞する。しかし、固定アーク接触子1が絶縁ノズル4のスロート部12を抜け出ると、このスロート部12を通しての吹き付けガス流が形成される。このときの吹き付けガス流は、圧縮装置によるパッファ作用の他に、絶縁ノズル4内でのアークによる上昇圧力や、絶縁ノズル4の内面や、旋回成分溝13の影響を受けて形成される。
【0013】
図2は、絶縁ノズル4のスロート部12のみを拡大して示す斜視図である。
ここでは右方が圧縮装置からの吹き付けガス流の上流側であり、左方が同吹き付けガス流の下流側である。スロート部12にはライフリング加工によって複数の旋回成分溝13a〜13nを周方向にほぼ等間隔で形成しており、これらの旋回成分溝13a〜13nは、吹き付けガス流の基本的な流れ方向、つまり固定アーク接触子1の軸線に対して傾きを有し、斜めの直線またはスパイラル状に形成している。この旋回成分溝13a〜13nは、同部を流れる吹き付けガス流に対して積極的な旋回成分を与えることになる。
【0014】
この旋回成分溝13a〜13nが絶縁ノズル4のスロート部12に形成しているため、固定アーク接触子1が絶縁ノズル4のスロート部12を抜け出る前でも絶縁ノズル4内が旋回成分溝13a〜13nを介して連通するが、これが悪影響を与えることはない。つまり、固定アーク接触子1がスロート部12を抜け出る前の大電流遮断時の遮断動作初期において、固定アーク接触子1と可動アーク接触子2間に発生したアークの温度や、アークに曝されて絶縁ノズル4から発生したガスなどの影響を受けて、絶縁ノズル4内は急激な圧力上昇を示し閉塞状態となり、絶縁ノズル4内の圧力上昇は保持され、その後のアークへの吹き付けに利用することができる。
【0015】
しかも、旋回成分溝13a〜13nが絶縁ノズル4のスロート部12に形成しているため、固定アーク接触子1がスロート部12を抜け出るまで絶縁ノズル4内の圧力上昇を保持することができる。
【0016】
しかしながら、遮断動作が進んで固定アーク接触子1が絶縁ノズル4のスロート部12を抜け出ると、このスロート部12を通しての吹き付けガス流が形成されることになるが、スロート部12を通過するとき外周部の吹き付けガス流には旋回成分溝13a〜13nによって円周方向または固定アーク接触子1の中心軸に向かうような旋回成分が積極的に与えられ、他の部分の吹き付けガス流にも影響を与える。このため、図1に示すように吹き付けガス流は、固定アーク接触子1の中心軸を中心として螺旋状に回転しながらアークに作用して流れ、アークの全周部から全体的にほぼ均等な吹き付け作用および冷却作用などを与えることができる。また固定アーク接触子1の先端部にも同様の作用を与えることができ、こうして大電流遮断性能を向上することができる。
【0017】
上述の説明から分かるように本実施の形態のガス遮断器は、、絶縁ノズル4のスロート部12に旋回成分溝13a〜13nを形成しているために、大電流遮断時の動作初期に絶縁ノズル4内で閉塞現象が生じても影響を受けず、遮断動作が進んで固定アーク接触子1が絶縁ノズル4のスロート部12を抜け出るときに旋回成分溝13a〜13nが吹き付けガス流に作用する構成である。従来のようにスロート部よりも吹き付けガス流の上流側に形成した手段によって遮断動作初期から旋回流を形成するものでは、この遮断動作初期の閉塞現象によって効果を損なうが、そのような不都合は全く生じることがなく、常に、安定した効果を期待することができる。
【0018】
上述した旋回成分溝13a〜13nは、吹き付けガス流の基本的な流れ方向に対する傾きや本数や深さを任意に設定することができ、いずれの場合も円周方向にほぼ均等な間隔で形成するのが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明によるガス遮断器は、図1に示した構成に限らず、その他の構成のものにも適用することができる。
【符号の説明】
【0020】
1 固定アーク接触子
2 可動アーク接触子
3 駆動軸
4 絶縁ノズル
5 絶縁筒
6 パッファシリンダ
7 固定主接触子
8 可動主接触子
9 中心軸
10 ピストン
11 パッファ室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開離可能な対を成す固定アーク接触子および可動アーク接触子と、遮断動作時に消弧性ガスを圧縮する圧縮装置と、そのスロート部を通して挿入した前記固定アーク接触子と前記可動アーク接触子の接触部を包囲して設け前記圧縮装置で圧縮した消弧性ガスを前記固定アーク接触子と可動アーク接触子間の開離によって発生したアークに吹き付けるように案内する絶縁ノズルとを備えたガス遮断器において、前記絶縁ノズルの前記スロート部に、前記スロートを通過する吹き付けガス流に旋回成分を与える旋回成分溝を形成したことを特徴とするガス遮断器。

【図1】
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【図2】
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