説明

ガス除去用難燃性濾材

【課題】 難燃性を有しながら、1つの濾材で、オゾンの分解機能とVOCの吸着機能の両方の機能を有するガス除去用難燃性濾材を提供する。
【解決手段】 難燃剤を含有し、かつ布帛からなるカバー材に、炭酸カリウム及び/又は炭酸水素カリウムを活性炭粒子に添着した添着活性炭粒子を担持してなるガス除去用難燃性濾材であって、前記炭酸カリウム及び/又は炭酸水素カリウムの添着量M(%)が1質量%以上であり、前記添着量M(%)と前記活性炭粒子のBET法による比表面積S(m/g)が下記の式(1)を満たすことを特徴とするガス除去用難燃性濾材。
S≧200M+550 (1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザープリンターを始めとする電子機器や、種々の空調機器などに組み込んでオゾンや揮発性有機化合物などの有害ガスを除去するための濾材に関するものであり、特に、難燃性を有しながら、1つの濾材で、オゾンの分解機能と揮発性有機化合物の吸着機能の両方の機能を必要とする用途に好適な、ガス除去用難燃性濾材に関するものである。また、特には、シート状形態を有した当該ガス除去用難燃性濾材の厚さ方向に、ガスが通過する用途の濾材として好適なガス除去用難燃性濾材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子機器の使用に際して、機器内の放電現象等に伴って発生するオゾンが人体に対して悪影響を及ぼすことが問題視されており、このような発生したオゾンを電子機器内で分解し、排出することが求められている。このようなオゾンを分解する技術としては、例えば特許文献1が提案されている。
【0003】
特許文献1によれば、印刷業界ではトナー像を記録材に加熱定着するプリンタ、複写機、ファクシミリ等の画像形成装置において、インクを使用した印刷機と同様に、高精細なドットの細かい画像や忠実なカラーの再現性が求められるようになってきており、このような要求を満たすため、上質紙の表面を化学物質でコートし、グロス調やマット調に仕上げたコート紙の利用が上記画像形成装置にも拡大するようになってきている。しかし、例えば上述したトナー像を上記のコート紙に180℃程度の加熱で定着しようとすると、コート紙から揮発性有機化合物(以下、VOC[Volatile Organic Compound]と称することがある)が発生するという問題が生じ、前述したオゾンの発生と共にVOCが発生することになり、当該装置の使用環境の更なる悪化を招いていた。
【0004】
そこで、特許文献1では、この問題を解決するため、画像形成装置本体内の空気を外部に排出する排気排出路と、この排気排出路に設けられ、排出する空気中の化合物を吸着によって除去し得る吸着フィルタと、上記排気排出路に設けられ、排出する空気中の化合物を触媒により分解して除去する触媒フィルタと、を備え、この排気方向に沿っての上流側に上記吸着フィルタを配置し、下流側に上述の触媒フィルタを配置したことを要旨とする排気装置、並びに、当該排気装置を備える画像形成装置が提案されている。また、これらフィルタを構成する素材として、活性炭を織布、不織布、薄板に担持した物理的除去作用を利用したもの、或いは、白金、パラジウム等の貴金属系、又は、マンガン、鉄等の卑金属系の酸化触媒を織布、不織布、薄板などの基材で担持した化学的除去作用を利用したものが開示されている。しかし、特許文献1では、排気方向に沿って2種類のフィルタを配置する必要があるので、排気のための通気抵抗が高くなり、排気量が少なくなるという問題や、排風機に負担がかかり、消費電力が大きくなりエネルギーロスが大きくなるという問題があった。また、製造コストも高くなるという問題があり、1種類のフィルタ又は濾材によってオゾンとVOCを同時に除去できるフィルタ又は濾材が求められていた。
【0005】
そこで、まずオゾンの除去に注目すると、このような画像形成装置で発生するオゾンを除去するための濾材として特許文献2が知られている。この特許文献2には、シート基材の両面に、ガス吸着層を形成してなるガス吸着用シートであって、前記ガス吸着層が、活性炭と、アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物の少なくとも一方と、難溶性難燃剤とを含んでなるガス吸着用シートが開示されており、このガス吸着用シートはオゾンの除去機能と共に難燃性を有することが示されている。
【0006】
ところで、この特許文献2が指摘する従来技術の問題点を説明すると、活性炭によるオゾン除去性能を向上させるために活性炭にカリウム化合物とナトリウム化合物とを混合した活性炭成形体、或いは、特定の活性炭にアルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物を添着、熱処理した活性炭を用いた従来技術があるものの、前述の画像形成装置を始めとする事務用機器においては、UL(Underwriters Laboratories Inc.)の発行する燃焼性試験に関する規格『UL 94:Standard for Safety Tests for Flammability of Plastic Materials for Parts in Devices and Appliances』(以下、非特許文献1)を満足する必要がある。ところが、オゾン分解機能を補助するために活性炭に添着されたアルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属は、活性炭の燃焼性を促進してしまい、当該UL規格を満足することは事実上不可能であると指摘している。さらに難燃性の点でも、従来技術として、特定の細孔径を有する活性炭と水溶性無機系化合物を含有するガス吸着用活性炭素紙が提案されているものの、当該無機系化合物とアルカリ金属とが反応し、活性炭上のオゾン分解活性点が被覆されて、オゾン分解能が低下すると指摘している。
【0007】
そこで、特許文献2では、前述のガス吸着用シートによって、これらの問題を解決しており、具体的には、活性炭と、アルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物の少なくとも一方と、難溶性難燃剤を接着剤及び必要により増粘剤と共に混合しペースト状とした後、コーター法、グラビア法などによってシート基材上に塗布しガス吸着層を形成することが開示されている。そして、これら金属化合物の添加量は、ガス吸着層中の活性炭に対して10〜100wt%が好適であることが開示されている。
【0008】
しかし、特許文献2では、アルカリ土類金属化合物以外に難燃剤を含む必要があり、このため難燃剤の微粒子によって、ガス吸着用シートの通気抵抗が高くなり、排気量が少なくなるという問題や、排風機に負担がかかり、消費電力が大きくなりエネルギーロスが大きくなるという問題があった。また、難燃剤の微粒子を活性炭に付着するための増粘剤が活性炭表面を覆ってしまうという問題や、活性炭表面と多数の難燃剤の微粒子が接触することになるので、活性炭表面において処理空気との接触面積が減じてしまい、オゾン除去機能が十分に働かないという問題があった。
【0009】
なお、活性炭などの脱臭粉粒体を用いた脱臭技術としては、例えば、本出願人による特許文献3がある。この特許文献3によれば、複数の積層単位で構成され、この積層単位がホットメルト樹脂からなる連結部と樹脂凝集部とで構成されたウエブの一方の表面に、前記樹脂凝集部を介して脱臭粉粒体を固着して成り、かつ相異なる2種類以上の脱臭粉粒体を担持してなる積層型濾材であって、脱臭粉粒体を被覆してしまうバインダーを用いずに、1つの積層単位に1種類の脱臭粉粒体のみを担持して成る積層型脱臭濾材を提案している。この特許文献3では、例えば酸性臭気とアルカリ性臭気とに分類される臭気物質を、その荷電状態を利用して捕捉する化学的作用、即ち、電気的に中和することで脱臭を図る、互いに異なる2種類以上の脱臭粉粒体を具えた脱臭濾材に関し、夫々の脱臭粉粒体同士が接触することで失活を来しやすいことに着目したものである。そして、このような技術に用いる好適な酸性臭気用粉粒体として、例えば活性炭やゼオライトなどの物理的吸着作用を持つ粉粒体の表面に、アルカリ金属炭酸塩やアミン化合物などの化学脱臭剤を付着させた、所謂、添着炭などが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−119313号公報
【特許文献2】特開2000−157827号公報
【特許文献3】特開平11−57467号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】UL 94(国際標準図書番号:ISBN1−55989−150−5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記の問題を解決し、難燃性を有しながら、1つの濾材で、オゾンの分解機能とVOCの吸着機能の両方の機能を有するガス除去用難燃性濾材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本出願にかかる発明者は、上記課題に対して鋭意検討した結果、難燃性を有していないと従来考えられていたアルカリ金属化合物を添着した活性炭であっても、驚くべきことに特定のアルカリ金属化合物と特定の活性炭を用いることで、難燃性を有しながらオゾンの分解機能と揮発性有機化合物の吸着機能の両方の機能を有することを見出し、本発明を完成することができた。
【0014】
上記課題を解決するための手段は、請求項1に係る発明では、難燃剤を含有し、かつ布帛からなるカバー材に、炭酸カリウム及び/又は炭酸水素カリウムを活性炭粒子に添着した添着活性炭粒子を担持してなるガス除去用難燃性濾材であって、前記炭酸カリウム及び/又は炭酸水素カリウムの添着量M(%)が1質量%以上であり、前記添着量M(%)と前記活性炭粒子のBET法による比表面積S(m/g)が下記の式(1)を満たすことを特徴とするガス除去用難燃性濾材。
S≧200M+550 (1)
尚、ここに言う「添着量」とは、次式(2)で示される添着活性炭粒子質量に対する炭酸カリウム及び/又は炭酸水素カリウムの割合を百分率とした値を表す。
添着量M(%)=炭酸カリウム及び/又は炭酸水素カリウムの添加質量(g)/添着活性炭粒子質量(g)×100 (2)
請求項1に係る発明により、難燃性を有しながら、1つの濾材で、オゾンの分解機能とVOCの吸着機能の両方の機能を有するガス除去用難燃性濾材を提供することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によって、難燃性を有しながら、1つの濾材で、オゾンの分解機能とVOCの吸着機能の両方の機能を有するガス除去用難燃性濾材を提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】は本発明のガス除去用難燃性濾材の一例を示す断面模式図である。
【図2】は本発明のガス除去用難燃性濾材の別の一例を示す断面模式図である。
【図3】は本発明のガス除去用難燃性濾材の別の一例を示す断面模式図である。
【図4】は本発明のガス除去用難燃性濾材の別の一例を示す断面模式図である。
【図5】は本発明のガス除去エレメントの一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るガス除去用難燃性濾材の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0018】
本発明のガス除去用難燃性濾材の形態としては、例えば図1に例示するように、難燃剤を含有し、かつ布帛からなるカバー材5の表面に、炭酸カリウム及び/又は炭酸水素カリウムを活性炭粒子に添着した添着活性炭粒子を担持してなるガス除去用難燃性濾材13がある。この例では、添着活性炭粒子3が熱接着性の繊維からなる連結樹脂10’によって連結してシート状になったガス除去シート4又は活性炭粒子層8の片面または両面に連結樹脂10によってカバー材5が貼り合されている。このような形態であれば、シート状形態を有した当該ガス除去用難燃性濾材の厚さ方向にガスが通過する用途の濾材として好適なガス除去用難燃性濾材といえる。
【0019】
このような構造の活性炭粒子層8を得るには、例えば、通気性を有し且つ熱接着性を有する樹脂成分からなるシート状物に添着活性炭粒子3を保持しておき、その後、好ましくは加熱処理によって添着活性炭粒子3を連結する方法によって得ることができる。このような通気性を有するシート状物としては、不織布、織物、膜、ろ紙、スポンジなどの多孔質体などが挙げられ、なかでも不織布は通気性が高いので好ましい。不織布の場合は、低融点を有する成分が一成分からなる接着性繊維、或いは低融点成分を有する二成分以上からなる接着性複合繊維などを含む不織布を適用することができる。なお、本発明では上記シート状物を添着活性炭粒子を連結する連結樹脂としている。
【0020】
ガス除去用難燃性濾材の別の形態としては、例えば前記カバー材と前記活性炭粒子とが、ホットメルト樹脂からなる樹脂凝集部を介して接着されている形態がある。このような形態であれば、活性炭の表面を有効に利用できるのでオゾンの分解機能とVOCの吸着機能が効率よく行なわれるという利点がある。また、通風時の圧力損失も少なく、且つプリーツ折り加工も容易であるという利点がある。具体的には、例えば図2又は図3に例示するように、添着活性炭粒子3と、前記添着活性炭粒子3を連結する連結樹脂1、1’、10、又は10’とからなる活性炭粒子層8の少なくとも片面に、布帛からなるカバー材5が積層一体化されているガス除去用難燃性濾材13がある。この例では、添着活性炭粒子3が連結樹脂1、1’、10、又は10’によって連結してシート状になったガス除去シート4に、カバー材5が積層一体化されている。より具体的には、ホットメルト樹脂からなる連結部1と樹脂凝集部2とで構成されたウエブの一方の表面に、樹脂凝集部2を介して添着活性炭粒子3が固着されている。このように図3では、2枚のカバー材5及び5’の間に添着活性炭粒子が挟持される構造となっている。また、図2又は図3に示す構造であれば、添着活性炭粒子の面密度が大きいにもかかわらず通気性に優れ、且つプリーツ加工性に優れるので、シート状形態を有した当該ガス除去用難燃性濾材の厚さ方向にガスが通過する用途の濾材として好適なガス除去用難燃性濾材といえる。
【0021】
ガス除去用難燃性濾材のさらに別の形態としては、例えば図4に例示するように、添着活性炭粒子3と、前記添着活性炭粒子3を連結する連結樹脂1、1’、10、又は10’とからなる活性炭粒子層8の少なくとも片面に、布帛からなるカバー材5及び5’が積層一体化されているガス除去用難燃性濾材13がある。この例では、添着活性炭粒子3及び3’が連結樹脂1、1’、10、又は10’によって連結してシート状になったガス除去シート4と4’とが積層されており、さらにこの積層物に、カバー材5及び5’が連結樹脂1、1’、10、又は10’によって積層一体化されている。より具体的には、複数の積層単位4で構成され、積層単位4がホットメルト樹脂から成る連結部1と樹脂凝集部2とで構成されたウエブの一方の表面に、樹脂凝集部2を介して添着活性炭粒子3を固着してなり、該ウエブの他方の表面と、他の積層単位4’を構成する添着活性炭粒子3’とが樹脂凝集部2”を介して固着している。このように図4では、2枚のカバー材5及び5’の間に添着活性炭粒子が挟持される構造となっている。また、このような構造であれば、添着活性炭粒子の面密度が大きいにもかかわらず通気性に優れ、且つプリーツ加工性に優れるので、シート状形態を有した当該ガス除去用難燃性濾材の厚さ方向にガスが通過する用途の濾材として更に好適なガス除去用難燃性濾材といえる。
【0022】
また、このような構造のガス除去用難燃性濾材を得る方法としては、例えば、図4に示すように積層単位4が2層以上である場合は、ホットメルト不織布10の表面に添着活性炭粒子3を配した後、加熱処理によって該ホットメルト不織布と該活性炭粒子とが接する部分に樹脂凝集部2を形成し、かつ樹脂凝集部2とホットメルト樹脂からなる連結部1とからなるウエブを形成する第一の工程と、該活性炭粒子のうち、該ウエブに固着された添着活性炭粒子のみを残存せしめて積層単位4を形成する第二の工程と、積層単位4の添着活性炭粒子3に接してホットメルト不織布10”を積層し、続いて、ホットメルト不織布10”の表面に添着活性炭粒子3’を配した後、前記第一の工程と前記第二の工程とを順次行う方法がある。この方法によれば、ホットメルト不織布10の表面に添着活性炭粒子3を配した後、この状態の積層物を乾熱若しくは湿熱による加熱を行うことによって、ホットメルト樹脂が可塑化し、その一部は繊維形態を残したまま連結部1となり、原材料であるホットメルト不織布を構成していた比較的細い繊維成分は溶融切断されて、添着活性炭粒子3との接触部分に凝集して樹脂凝集部2を構成することとなる。なお、ホットメルト不織布10のかわりに、布帛5及び5’にホットメルト不織布を付着させたシートを用いることにより、カバー材5及び5’を積層一体化したガス除去用難燃性濾材13とすることができる。
【0023】
ガス除去用難燃性濾材のさらに別の形態としては、例えば添着活性炭粒子が熱融着性の連結樹脂で互いに接合されてシート状となった活性炭粒子層の少なくとも片面に、布帛からなるカバー材が積層一体化されているガス除去用難燃性濾材がある。このような構造の活性炭粒子層を得るには、例えば、添着活性炭粒子と熱融着性の樹脂粉末とを混合した後、カバー材に挟持して、加熱処理によってガス除去用難燃性濾材とする方法がある。
【0024】
上述の、図2〜図4に示す、カバー材と前記添着活性炭粒子とが、ホットメルト樹脂からなる樹脂凝集部を介して接着されている形態であれば、特に活性炭の表面を有効に利用できるのでオゾンの分解機能とVOCの吸着機能が効率よく行なわれるという利点がある。また、通風時の圧力損失も少なく、且つプリーツ折り加工がし易く、濾材又はフィルターの枠体に設置してユニット化する場合、ユニット加工も容易であるという利点がある。
【0025】
本発明に適用される活性炭粒子としては、例えば石油ピッチ系活性炭、椰子殻活性炭、石炭系活性炭、木質系活性炭などを挙げることができるが、オゾンとの接触効率やVOCの吸着効率の点から、比表面積の高い椰子殻活性炭や石油ピッチ系活性炭が好適である。また、その形状についても、破砕状、粉末状、ペレット状、球状、楕円球状など特に限定されないが、濾材に加工した際の圧力損失の低減や吸着剤の付着量の確保及びオゾンやVOCとの接触効率や吸着効率を高めるといった点から球状、又は破砕状のものが好適に使用できる。
【0026】
本発明では、前記添着活性炭粒子は原料となる活性炭粒子に炭酸カリウム及び/又は炭酸水素カリウムが添着してなる添着活性炭粒子である。炭酸カリウム及び/又は炭酸水素カリウムが添着していることによって、オゾンの分解機能が生じてオゾンを除去することができると共にVOCを吸着してVOCを除去することができる。また、炭酸カリウム及び/又は炭酸水素カリウムの添着量は添着活性炭粒子の質量に対して1質量%以上であることが必要であり、3質量%以上であることが好ましい。添着量が3質量%以上であることにより、特にオゾンの分解機能とVOCの吸着機能の両方の機能に優れるという利点がある。添着量が1質量%未満であるとオゾンの分解能が低下するという問題がある。また、添着量の上限は特に限定されないが、10質量%未満であることが望ましく、10質量%以上であると難燃性が低下する場合がある。
【0027】
また、本発明のガス除去用難燃性濾材は、前記添着量M(%)と前記活性炭粒子のBET法による比表面積S(m/g)が下記の式(1)を満たすことを必要としている。
S≧200M+550 (1)
本発明のガス除去用難燃性濾材は、実験から求めた実験式である上記の式(1)を満たすことによって、難燃性を有しながら、1つの濾材で、オゾンの分解機能とVOCの吸着機能の両方の機能を有することが可能となる。すなわち、仮に比表面積S(m/g)が、200M(%)+550の値未満の値である場合には、オゾンの分解機能とVOCの吸着機能の両方の機能は優れるものの、難燃性が劣るという問題が生じる。本発明のガス除去用難燃性濾材が上記の式(1)を満たす比表面積を有することによって、難燃性を有するという原因は定かには分からないが、炭酸カリウム及び/又は炭酸水素カリウムの添着量に対して比較的比表面積が大きいことによって、同じ比表面積を有する活性炭粒子に対して添着量を少なくした場合と同様の効果が生じ、その結果燃焼作用が抑制されて難燃性が生じるのではないかと考えられる。
【0028】
なお、前記活性炭粒子の比表面積としては、BET法による測定で700m/g以上が好ましく、1000m/g以上がより好ましく、オゾンとの接触効率やVOCの吸着効率及び難燃性の点から、1350m/g以上が更に好ましい。比表面積が1350m/g以上であることにより、特に難燃性に優れると共にオゾンの分解機能とVOCの吸着機能の両方の機能にも優れるという利点がある。なお、上限としてはできる限り値が高いことが好ましいが、活性炭粒子の強度の点で2000m/g程度までが望ましい。このBET法による測定は「JIS Z8830 気体吸着による粉体(固体)の比表面積測定方法」に規定される容量法を適用することができる。
【0029】
また、前記活性炭粒子の充填密度は0.65g/cm以下であることが好ましく、0.6g/cm以下であることがより好ましく、0.55g/cm以下であることが更に好ましい。充填密度が0.65g/cmを超えると比表面積が低下して難燃性が劣る場合がある。また、充填密度の下限は特に限定されないが、活性炭粒子の形状保持性の点から0.3g/cm以上であることが好ましく、0.35g/cm以上であることがより好ましい。ここで、充填密度は「JIS K1474 活性炭試験方法 6.7充てん密度」に規定される方法で測定して求めることができる。
【0030】
また、前記活性炭粒子の粒径としては、難燃性とオゾン及びVOCガスの高効率な除去性能と低圧損とを共に実現するために平均粒径を0.147mm(100メッシュ)以上1.65mm(10メッシュ)以下とすることが好ましく、平均粒径を0.29mm(50メッシュ)以上0.84mm(20メッシュ)以下とすることがより好ましい。平均粒径が0.147mm(100メッシュ)よりも細かい平均粒径の活性炭粒子を用いると、初期のオゾン又はVOC除去効率を高く採れる反面、圧力損失が大きくなってしまうという問題が生じる場合がある。本発明では活性炭粒子に難燃剤が付着などにより含まれていることが可能であるが、オゾン又はVOC除去機能を有効に働かすことを考慮すると難燃剤が含まれていないことが好ましい。
【0031】
また、本発明で用いる前記添着活性炭粒子の質量は、80〜700g/mであることが好ましく、100〜450g/mであることがより好ましく、200〜410g/mであることが更に好ましい。質量が80g/m未満であると、オゾンの分解機能とVOCの吸着機能が効率よく行なわれない場合があり、700g/mを超えると、圧力損失が高くなり過ぎてオゾンの分解機能とVOCの吸着機能が効率よく行なわれない場合がある。
【0032】
本発明においては、カバー材に前記添着活性炭粒子が担持されているが、このような形態として、前述のようにホットメルト樹脂などの連結樹脂によって前記添着活性炭粒子が連結されると共にカバー材と前記添着活性炭粒子とが接着されている形態であることが好ましい。このように、添着活性炭粒子が連結樹脂によって連結してなる活性炭粒子層8が形成されている場合、前記活性炭粒子層8は、添着活性炭粒子が60〜95質量%と、添着活性炭粒子を連結する連結樹脂が40〜5質量%とからなることが好ましく、添着活性炭粒子が70〜92質量%と、添着活性炭粒子を連結する連結樹脂が30〜8質量%とからなることがより好ましく、添着活性炭粒子が80〜90質量%と、添着活性炭粒子を連結する連結樹脂が20〜10質量%とからなることが更に好ましい。添着活性炭粒子が60質量%未満であると、オゾン又はVOC除去効率が低下する場合がある。また、難燃性が低下する場合がある。また、連結樹脂が5質量%未満であると、添着活性炭粒子を充分に連結することができずに、添着活性炭粒子が脱落する場合がある。このように、本発明では、活性炭粒子層において添着活性炭粒子の質量比率が比較的高くなっていることが望ましい。
【0033】
また、前記活性炭粒子層の厚さや質量などは特に限定されるものではないが、形状がシート状となっているものが好ましく、質量は120〜750g/mであることが好ましく、140〜500g/mであることがより好ましく、250〜460g/mであることが更に好ましい。質量が120g/m未満であると、オゾンの分解機能とVOCの吸着機能が効率よく行なわれない場合があり、750g/mを超えると、圧力損失が高くなり過ぎてオゾンの分解機能とVOCの吸着機能が効率よく行なわれない場合がある。また、厚さは、0.3〜5mmが好ましく、0.5〜3mmが更に好ましい。厚さが0.3mmより少ないと、オゾン又はVOC除去性能が低下する場合があり、厚さが5mmより多いと、カバー材が破損する場合がある。
【0034】
本発明に適用されるカバー材としては、難燃剤を含有し、かつ前記添着活性炭粒子を担持するカバー材である限り特に限定されず、例えば図1〜図4のガス除去用難燃性濾材13に例示するように、活性炭粒子層8の片面に積層一体化されるカバー材5がある。また、例えば、添着活性炭粒子が熱融着性の樹脂で互いに接合されてシート状となった活性炭粒子層の少なくとも片面に積層一体化されるカバー材がある。
【0035】
前記カバー材は布帛からなるが、このような布帛としては、例えば不織布、織物、編物などの通気性を有するシート状物などが挙げられ、なかでも不織布は通気性が高いので好ましい。このような通気性を有するシート状物であれば、シート状物の厚さ方向にガスが通過する用途の濾材として好適なガス除去用難燃性濾材となる。また、このような不織布としては、有機質繊維などからなる不織布であれば特に好ましく、例えば繊維長15〜100mmの、捲縮数5〜30個/インチを有する通常ステープル繊維と呼ばれる繊維をカード機などを使用して、繊維ウエブに形成した後、繊維同士を接着や交絡などによって結合する、一般的に乾式法と呼ばれる製法によって得られる不織布がある。また、乾式法に限らずに任意の不織布製法により、例えば湿式法又はスパンボンド法などによって形成される不織布を適用することができる。
【0036】
前記布帛を構成する繊維としては、有機質繊維であることが好ましく、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系繊維、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド系繊維、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン系繊維、ポリアクリロニトリルなどのアクリル系繊維、ポリビニルアルコール繊維および合成パルプなどの合成繊維に限らず、レーヨンなどの半合成繊維、あるいは綿およびパルプ繊維などの天然繊維を挙げることができる。また、前記有機質繊維の中でも燃焼によって溶融して吸熱効果をもたらす繊維であることがより好ましく、このような有機質繊維としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系繊維、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド系繊維、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン系繊維、ポリアクリロニトリルなどのアクリル系繊維、ポリビニルアルコール繊維および合成パルプなどの合成繊維などを挙げることができる。また、前記有機質繊維は合成繊維に難燃剤を練り込んだ繊維であることも好ましい。また、前記有機質繊維は実質的にハロゲン元素を含有しない重合体から形成された繊維であることも環境に配慮するという点から好ましい。
【0037】
前記カバー材は、添着活性炭粒子を担持し且つプリーツ加工が可能な活性炭粒子層の上流側に貼り合せて使用するカバー材であることが好ましく、この場合通風時の添着活性炭粒子の脱落や折り曲げによる添着活性炭粒子の脱落を防ぐと共に活性炭粒子層のオゾン又はVOC除去効率を維持しながら、通気抵抗を少なくすることが好ましい。このため、前記カバー材の面密度は10g/m以上であることが好ましく、より好ましくは、15〜60g/mであり、更に好ましくは15〜40g/mである。面密度が10g/m未満であると、添着活性炭粒子の脱落を防ぐことができなくなる場合がある。また、面密度が60g/mを超えると通気抵抗が高くなったり、カバー材と活性炭粒子層とを貼り合わせたガス除去用難燃性濾材をプリーツ状に折り曲げてガス除去エレメントを形成しようとしたときに、プリーツの折り山のRを小さくして鋭角にすることができなくなる場合がある。
【0038】
また、前記カバー材は面風速0.5m/秒における圧力損失が30Pa以下であることが好ましく、より好ましくは、20Pa以下であり、更に好ましくは15Pa以下である。圧力損失が30Paを超えると、カバー材と活性炭粒子層とを貼り合わせたガス除去用難燃性濾材の圧力損失が高くなりすぎて、目的とするオゾン又はVOC除去性能を得ることができないばかりか、埃によって目詰まりして目的とするオゾン又はVOC除去性能を得ることができなくなる場合がある。
【0039】
また、前記カバー材の厚さは0.1〜1.0mmが好ましく、0.1〜0.5mmがより好ましい。厚さが0.1mm未満であると、カバー材の繊維組織が密となり、そのため表面濾過となり、カバー材による粗塵の粉塵保持容量が少なくなり、ガス除去エレメントの目的とするオゾン又はVOC除去性能を得ることができなくなる場合がある。また、厚さが0.5mmを超えると、カバー材の濾過効率が低下して、添着活性炭粒子の層に多くの粗塵が堆積するので、オゾン又はVOC除去性能が低下する場合がある。尚、厚さはJIS L1913−1998一般短繊維不織布試験方法6.1A法に準じて測定した値である。
【0040】
本発明では、前記カバー材に難燃剤が含まれていることを必要とする。カバー材に難燃剤が含まれることによって、カバー自体を難燃性にする効果のみならずカバー材に担持されている添着活性炭粒子の難燃性の向上にも寄与する効果がある。従来技術にあるように活性炭粒子に難燃剤が直接付与されるか接触する場合は活性炭粒子のもつVOC除去性能を減ずる悪作用をもたらすこととなるが、本発明では添着活性炭粒子と難燃剤が直接に接することが実質上生じないので、VOC除去性能を減ずるという問題を生ずることがない。
【0041】
カバー材に含有される難燃剤としては、特に限定されることなく、無機系の難燃剤及び有機系の難燃剤のいずれも適用可能であり、例えば有機ハロゲン系の難燃剤なども適用できるが、環境に与える影響から考慮して非ハロゲン系難燃剤が好ましい。非ハロゲン系難燃剤としては、無機系の難燃剤及び有機系の難燃剤のいずれも適用可能である。
【0042】
無機系の非ハロゲン系難燃剤としては、例えば水和金属化合物、水和シリケート化合物、リン系化合物、窒素系化合物、硼素系化合物、アンチモン系化合物等を適用することができる。水和金属化合物には、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、アルミン酸カルシウム等があり、リン系化合物には赤リン、メタリン酸アルミニウム、リン酸メラミン、リン酸マグネシウム、縮合リン酸アミドがあり、窒素系化合物にはリン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、モリブデン酸アンモニウムがあり、硼素系化合物にはホウ酸亜鉛があり、アンチモン系化合物には酸化アンチモンがあり、その他各種金属酸化物には水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムがあり、その他各種金属硝酸塩、各種金属錯体等を適用することができる。これらのうち特に、難溶性のメタリン酸アルミニウム、リン酸メラミン、リン酸マグネシウム、縮合リン酸アミドなどのリン系難燃剤、あるいは難溶性の水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどが好適である。
【0043】
また、有機系の非ハロゲン系難燃剤としては、例えばNメチロールジメチルホスホノプロピオンアミド、ポリリン酸カルバメート、グアニジン誘導体リン酸塩、環状ホスホン酸エステル、リン酸メラミンなどのリン系難燃剤を適用することができる。
【0044】
本発明では、前記難燃剤がカバー材を構成する布帛に含まれているが、このような態様としては、例えば前記難燃剤がカバー材を構成する繊維自体に、例えば繊維の紡糸時に練り込みによって含まれていることが可能であり、また不織布などの布帛を結合しているバインダー中に含まれていることも可能であり、あるいは布帛の後加工によって、例えば難燃剤をバインダーなどによって布帛に付着することによって含まれていることも可能である。また、これらの態様が組合わされた態様をとることも可能である。これらの態様のうち、特に不織布などの布帛の後加工による態様が、多品種のガス除去用難燃性濾材を製造する上で効率的であり好ましい。
【0045】
前記カバー材には前記難燃剤が、カバー材の質量100%に対して、好ましくは、5〜50質量%含まれている。より好ましくは、前記難燃剤が10〜40質量%含まれており、さらに好ましくは、15〜35質量%含まれている。5質量%未満では、ガス除去用難燃性濾材全体としての難燃性が不十分となる場合があり、50質量%を超えると、難燃剤を不織布などの布帛に固定することが困難となり、難燃剤が脱落したり、圧力損失が上昇するなどの問題を生じる場合がある。
【0046】
不織布などの布帛を結合しているバインダー、あるいは不織布などの布帛の後加工により付着しているバインダーとしては、アクリル酸エステル系接着剤、SBR系接着剤、NBR系接着剤、尿素樹脂系接着剤、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどを挙げることができるが、実質的にハロゲン元素を含まない、アクリル酸エステル系接着剤、SBR系接着剤、NBR系接着剤、尿素樹脂系接着剤などが好ましい。また、これらの接着剤に難燃剤を含有させることが可能である。
【0047】
具体的には、例えばバインダー樹脂液として、粉末状の非ハロゲン系難燃剤を液体中に懸濁させたスラリーと、実質的にハロゲン元素を含有しない接着剤溶液とを混合したバインダー樹脂液を準備する。スラリーは、一般的に、非ハロゲン系難燃剤20〜80質量%と水80〜20質量%とを混合し、分散安定剤を用いて、非ハロゲン系難燃剤を分散させることによって得ることができる。あるいは、液体状の非ハロゲン系難燃剤を液体中に分散させた難燃剤液と実質的にハロゲン元素を含有しない接着剤溶液とを混合したバインダー樹脂液を準備する。これらの場合、非ハロゲン系難燃剤の固形分の比率がバインダー樹脂液の固形分に対して50〜85質量%であることが好ましい。なお、バインダー樹脂液に抗菌剤、抗黴剤または撥水剤などが含まれるようにすることも可能である。
【0048】
次に、バインダー樹脂液は繊維ウエブ、あるいは不織布などの布帛に、従来公知の浸漬法、スプレー法、泡含浸法などによって付与することができる。その後、熱風乾燥機や赤外線乾燥機等の乾燥機で乾燥することによって、前記カバー材の構成繊維に被着したバインダーに難燃剤が含有されたカバー材を得ることができる。すなわちバインダー樹脂で構成繊維相互間が結合された不織布などの布帛よりなるカバー材、あるいはバインダー樹脂が付着加工されたカバー材が得られるのである。このように、カバー材の構成繊維に被着したバインダーに難燃剤が含有されていることにより、カバー材に斑なく難燃加工が施されているので、安定した難燃性を示すという利点がある。なお、バインダー樹脂液の付与量は、バインダー樹脂液中の固形分が15〜60質量%で、ウエブ又は不織布などの布帛が75〜40質量%程度になるようにするのが好ましい。
【0049】
また、本発明では、前記カバー材の構成繊維に被着したバインダーに金属酸化物からなるオゾン分解触媒粒子が担持されてなることも好ましい。このような態様のカバー材としては、例えば前述のバインダー樹脂液に金属酸化物からなるオゾン分解触媒粒子を含有させてから、このバインダー樹脂液を繊維ウエブ、あるいは不織布などの布帛に、従来公知の浸漬法、スプレー法、泡含浸法などによって付与して、その後熱風乾燥機や赤外線乾燥機等の乾燥機で乾燥することによって得られる態様があり、前記カバー材の構成繊維に被着したバインダーに難燃剤及び金属酸化物からなるオゾン分解触媒粒子が含有されたカバー材である。このように、前記カバー材の構成繊維に被着したバインダーに金属酸化物からなるオゾン分解触媒粒子が担持されてなるガス除去用難燃性濾材は、特にオゾンの分解機能に優れるという利点がある。
【0050】
また、前記カバー材の構成繊維に被着したバインダーに金属酸化物からなるオゾン分解触媒粒子が担持されてなるカバー材の別例としては、熱可塑性のバインダー樹脂液を繊維ウエブ、あるいは不織布などの布帛に、従来公知の浸漬法、スプレー法、泡含浸法などによって付与して、その後熱風乾燥機や赤外線乾燥機等の乾燥機で乾燥させることにより、カバー材を構成する布帛に難燃剤を含有させた布帛を形成しておき、この布帛に対して、特開2004−3070号公報に開示される技術「少なくとも表面が熱可塑性樹脂から主としてなる繊維の表面に、この熱可塑性樹脂の融点より高い温度に維持された状態の加熱固体粒子を接触させ、そして固体粒子融着繊維を冷却することによって、当該固体粒子を繊維表面に固着させる固体粒子担持繊維の製造方法。」を適用することによって得られるカバー材がある。すなわち金属酸化物からなるオゾン分解触媒粒子を加熱状態で、上記熱可塑性樹脂からなる表面を有する布帛に接触させることによって、当該オゾン分解触媒粒子が担持された状態のカバー材5を作製することができる。尚、このようにして得られたカバー材はオゾン分解触媒粒子を担持しているが、当該触媒粒子は、本願発明に必須の構成成分である炭酸カリウム及び/又は炭酸水素カリウムが添着された添着活性炭粒子のオゾン分解機能を補助するという効果を奏する。
【0051】
前記オゾン分解触媒粒子としては、例えば白金、パラジウム等の貴金属系、または、マンガン、銅、コバルト、ニッケル、鉄、チタンなどの卑金属系の酸化触媒、或いはこれらの一種以上を選択して複合させた複合酸化物などを一種以上選択して適用できるが、当該触媒粒子自体として難燃性を有し、しかも、オゾン分解能に優れた金属酸化物からなるものが好ましく、特に、その比表面積が大きい二酸化マンガンからなるものが好適である。
【0052】
本発明では、前記カバー材は活性炭粒子層の上流側に例えば貼り合せることにより積層一体化が可能であるが、前記カバー材に熱接着性樹脂が付着していると、積層一体化工程でのトラブルが少なくなるので好ましい。このような熱接着性樹脂の付着形態としては、例えばペースト状の熱可塑性樹脂をドット状にプリントしたもの、熱可塑性樹脂のパウダーを散布したもの、或いは熱可塑性樹脂を溶融紡糸して蜘蛛の巣状のホットメルト不織布としたものなどがある。このような熱接着性樹脂の付着量は、面密度で5〜60g/mが好ましく、10〜40g/mが更に好ましい。
【0053】
カバー材を積層一体化する方法としては、例えば接着剤を用いる方法や、ホットメルト不織布又はホットメルト樹脂粒子などのホットメルト樹脂を用いて積層一体化する方法などがある。具体的には、例えば、カバー材や活性炭粒子層の一方に接着剤やホットメルト樹脂を塗布した後、カバー材と活性炭粒子層とを積層して積層シートとし、この積層シートを加熱加工などにより積層一体化する方法や、予め熱接着性樹脂やホットメルト樹脂が付着したカバー材を作製しておいて、このカバー材と活性炭粒子層とを積層して積層シートとし、この積層シートを加熱加工などにより積層一体化する方法などがある。後者の予め熱接着性樹脂が付着したカバー材を作製しておく方法によれば、生産工程でのトラブルが少なくなる利点があり好ましい。
【0054】
積層一体化に用いる前記熱可塑性樹脂としては、熱可塑性ポリアミド系樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、またはポリオレフィン変性樹脂などを、各々、単独または混合して用いることができる。ここで云うポリオレフィン変性樹脂としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体の鹸化物、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−マレイン酸共重合体、アイオノマー樹脂 (エチレン−メタクリル酸共重合体に金属を付加した感熱性樹脂)などがあげられる。また、前記ホットメルト不織布に利用できるホットメルト樹脂としては、MIが50以上500以下のものを選択するのが好ましい。この好適範囲よりも低いMIの樹脂は、加熱処理時に流動性が低く、熱処理時に、添着活性炭粒子の固着が不完全となることがある。更に、上記範囲よりも高い樹脂では、加熱処理時の流動性が高く、添着活性炭粒子の固着が不完全となることがある。なお、前記熱可塑性樹脂に難燃剤が含まれることも可能であるが、優れた接着性を得るためには難燃剤が含まれていないことが好ましい。
【0055】
本発明のガス除去用難燃性濾材の全体の質量は、160〜800g/mであることが好ましく、180〜550g/mであることがより好ましく、300〜510g/mであることが更に好ましい。質量が160g/m未満であると、オゾンの分解機能とVOCの吸着機能が効率よく行なわれない場合があり、800g/mを超えると、圧力損失が高くなり過ぎてオゾンの分解機能とVOCの吸着機能が効率よく行なわれない場合がある。また、厚さは0.4〜5mmが好ましく、0.5〜3mmが更に好ましい。厚さが0.4mmより少ないと、オゾン又はVOC除去性能が低下する場合があり、厚さが5mmより多いと、プリーツ加工が困難になる場合がある。また、ガス除去用難燃性濾材の圧力損失は、面風速0.5m/秒における圧力損失が300Pa以下であることが好ましく、より好ましくは、200Pa以下であり、更に好ましくは150Pa以下である。圧力損失が300Paを超えると、圧力損失が高くなりすぎて、目的とするオゾン又はVOC除去性能を得ることができないばかりか、埃によって目詰まりして目的とするオゾン又はVOC除去性能を得ることができなくなる場合がある。
【0056】
また、本発明では難燃剤が少なくともカバー材を構成する布帛に含まれているが、ガス除去用難燃性濾材の全体の質量に対する難燃剤の質量比率は、1.5〜12%であることが好ましく、2〜10%であることがより好ましく、2〜7%であることが更に好ましく、2〜3%であることが最も好ましい。難燃剤の質量比率が1.5%未満であると、ガス除去用難燃性濾材全体としての難燃性が不十分となる場合があり、12%を超えると難燃剤をカバー材を構成する布帛に固定することが困難となり、難燃剤が脱落したり、圧力損失が上昇するなどの問題を生じる場合がある。
【0057】
本発明のガス除去用難燃性濾材を用いて形成されるガス除去エレメントは、前記ガス除去用難燃性濾材をプリーツ加工し、該ガス除去用難燃性濾材を枠体に装着することによって得ることができる。このようなガス除去エレメントは、図5に例示するように、ガス除去用難燃性濾材21に、所定のピッチでプリーツ加工を施し、設計に応じた山間隔を保持するために、種々の合成樹脂、紙、または金属材料など周知の材料からなる枠材22a、22bを接着固定して、ガス除去エレメント20を得ることができる。また、ガス除去エレメント20は、プリーツ加工を施したガス除去用難燃性濾材21をインサートした射出成型によって得ることもできる。尚、同図及び後述の実施例では、ガス除去エレメントの最も一般的な形状を示したに過ぎず、濾過面を構成する形状は、例示した矩形に代えて、円形、三角形、楕円形など、ガス除去エレメントを装着する機器に応じた形状とすることができる。なお、前記枠材にカバー材に含まれる難燃剤と同様の難燃剤を含ませて、ガス除去エレメント全体としての難燃性を向上させることも好ましい。
【0058】
前記ガス除去エレメントは、例えば電子機器用途や自動車用途に用いる場合は、ガス除去エレメントの寸法は、高さhは50〜300mmが好ましく、幅wは50〜300mmが好ましく、プリーツ深さdは15〜50mmが好ましい。また、このガス除去エレメントの面風速3.0m/秒における圧力損失は200Pa以下が好ましく、150Pa以下が更に好ましい。
【0059】
本発明のガス除去用難燃性濾材は、難燃剤を含有し、かつ布帛からなるカバー材に、炭酸カリウム及び/又は炭酸水素カリウムを活性炭粒子に添着した添着活性炭粒子を担持してなるガス除去用難燃性濾材であって、前記炭酸カリウム及び/又は炭酸水素カリウムの添着量M(%)が1質量%以上であり、前記添着量M(%)と前記活性炭粒子のBET法による比表面積S(m/g)が下記の式(1)を満たす。
S≧200M+550 (1)
このため、難燃性を有しながら、1つの濾材で、オゾンの分解機能とVOCの吸着機能の両方の機能を有している。
【0060】
また、その難燃性の度合いとしては、前述のカバー材5の厚さ方向にオゾンを含む処理空気が通過する様に濾材が配置されるような場合は、好適な難燃性の指標として、前述の非特許文献1に記載されている発泡材料水平燃焼試験(Horizontal Burning Foamed Material Test:以下、水平燃焼試験と略記すると共に、具体的な試験法については後段で詳述)に準ずる評価が「94HF−1」の基準条件を満たすことが望ましい。94HF−1に適合する難燃性であれば、機器用の濾材又はフィルタ等として好適に使用することが可能である。
【0061】
以下、本発明の実施例につき説明するが、これは発明の理解を容易とするための好適例に過ぎず、本願発明はこれら実施例の内容に限定されるものではない。
【実施例】
【0062】
(難燃性の試験評価方法)
先に述べたとおり、本発明に係る濾材は、その厚さ方向に処理すべき空気を通過させることで使用するのが好ましいことから、非特許文献1に規定された水平燃焼試験により評価を実施した。この水平燃焼試験では、所定の高さに試験片を配置しておくことができる支持用金網を用い、この金網の下方に175±25mmの距離で脱脂綿(標識綿と称される)を配置しておく。この金網に、長さ150±1mm、幅50±1mmの短冊状に裁断され、しかも長さ方向の一方の端部から、25mm、60mm及び125mmの各位置に合計3つの標線を予め書き込んだ試験片を載置する。燃焼試験は、試験片を水平に載置した状態で上述した端部に金網の下方から炎を60±1秒間当てたのち、炎を試験片から離す。この時点から計時し、
[a]炎が消えた(残炎)時間
[b]炎と赤熱が消えた(残じん)時間
[c]炎又は赤熱の前線が125mm標線に達した時間、若しくは試験片が125mm標線の手前で燃焼又は赤熱が止まった時間
の3種類の時間を記録する。このような評価試験を5回実施した結果に応じて、夫々の難燃性基準条件は、下記の表1に示すような「94HF−1」、「94HF−2」若しくは「94HBF」の3つに分類評価される。
【0063】
(表1)

【0064】
(オゾン分解の性能評価方法)
試験する濾材を30mmφの円盤状に裁断し、円筒状ガラス製測定ホルダーにセットした。この測定ホルダーに対して、市販のオゾン発生機でオゾン濃度2.7ppm、セットされた濾材表面での面風速17cm/秒、相対湿度35%の条件によりオゾン雰囲気を連続8時間流し、ホルダーの流出側のオゾン濃度を経時的に測定した。この際、オゾン濃度の測定には、『MODEL1200』(ダイレック(株)製,商品名)を用い、オゾン分解性能は、下記の式(3)からオゾン除去率(%)として算出した。尚、試験開始後10分でのオゾン除去率を初期効率とした。
【0065】
式(3)

【0066】
(VOC除去の性能評価方法)
ガス吸着フィルタ試験法として「DIN 71460−II」に準拠し、VOCをトルエンとした性能評価を実施した。この性能評価では、試験する濾材を折高さ60mmのプリーツ濾材とし、周知の枠材によって間口面積;縦56mm×横112mm×高さ60mm、濾材面積;940cmの寸法条件でガス除去エレメントを作製し、風速2.0m/秒、流入側トルエン濃度80ppm一定の条件下でトルエンガスを流し続け、経時的にエレメントの流出側のトルエン濃度を脱臭フィルタ用ガス除去性能測定装置にて測定した。このVOC除去の性能評価は、流出側におけるトルエンの濃度が流入側の95%になった破過点(効率としては5%にまで低下した時点)までのトルエン吸着容量を間口面積当たりの値として(g/m)の単位で求めた。さらに、この試験においては、試験開始後、1分後の測定値を初期効率として算出した。
【0067】
(添着活性炭粒子の準備1)
BET法による比表面積が1100m/gであり、充填密度が0.5g/cmである市販の活性炭粒子(A)『クラレコール GW20/40』(クラレケミカル(株)製,商品名;粒径範囲0.35〜0.85mm)を準備した。また比表面積が1500m/gであり、充填密度が0.42g/cmである市販の活性炭粒子(B)『クラレコール GW−H24/42』(クラレケミカル(株)製,商品名;粒径範囲0.35〜0.85mm)を準備した。
【0068】
(添着活性炭粒子の準備2)
炭酸カリウムを水に溶解して、3%、8%及び12%、の水溶液とした。次いで、この水溶液を活性炭粒子(A)に散布した後、活性炭粒子を乾燥させて、炭酸カリウムの付着割合が異なる3種類の添着活性炭粒子(A1)、(A2)及び(A3)を得た。なお、これら添着活性炭粒子(A1)、(A2)及び(A3)には、添着活性炭粒子全体の質量に対して、それぞれ炭酸カリウムが1質量%、2.5質量%及び3.5質量%の割合で付着するようにして散布した。
【0069】
(添着活性炭粒子の準備3)
炭酸カリウムを水に溶解して、7%、8%及び11%、の水溶液とした。次いで、この水溶液を活性炭粒子(B)に散布した後、活性炭粒子を乾燥させて、炭酸カリウムの付着割合が異なる3種類の添着活性炭粒子(B3)、(B4)及び(B5)を得た。なお、これら添着活性炭粒子(B3)、(B4)及び(B5)には、添着活性炭粒子全体の質量に対して、それぞれ炭酸カリウムが3.5質量%、4.5質量%、及び6質量%の割合で付着するようにして散布した。
【0070】
(添着活性炭粒子の準備4)
炭酸水素カリウムを水に溶解して、8%の水溶液とした。次いで、この水溶液を活性炭粒子(A)に散布した後、活性炭粒子を乾燥させて添着活性炭粒子(C2)を得た。なお、この添着活性炭粒子(C2)には、添着活性炭粒子全体の質量に対して、炭酸水素カリウムが2.5質量%の割合で付着するようにして散布した。
【0071】
(バインダー樹脂液の準備1)
リン系難燃剤液(難溶性のポリリン酸アンモニウムが水に分散した難燃剤液:分散液濃度42%)51.3部と、アクリル系エマルジョン型接着剤(分散液濃度45%)11.0部と、増粘剤0.2部と、水37.5部とからなるバインダー樹脂液(A1)を準備した。この樹脂液の濃度は26.65%であり、この樹脂液が乾燥してなる樹脂中に含まれるリン系難燃剤の質量比率は81%である。
【0072】
(バインダー樹脂液の準備2)
リン系難燃剤液(難溶性のポリリン酸アンモニウムが水に分散した難燃剤液:分散液濃度42%)88.8部と、アクリル系エマルジョン型接着剤(分散液濃度45%)11.0部と、増粘剤0.2部とからなるバインダー樹脂液(A3)を準備した。この樹脂液の濃度は42.45%であり、この樹脂液が乾燥してなる樹脂中に含まれるリン系難燃剤の質量比率は88%である。
【0073】
(カバー材の準備1−1)
面密度20g/mのポリエステル繊維からなるスパンボンド不織布(A)に、前記バインダー樹脂液(A1)を含浸した後、乾燥させ面密度27g/mのカバー材(A1)を得た。このカバー材(A1)は、布帛であるスパンボンド不織布の繊維表面に、リン系難燃剤がアクリル系樹脂によって固定されたカバー材であり、カバー材(A1)には21質量%(面密度5.7g/m)のリン系難燃剤が含まれていた。
【0074】
(カバー材の準備1−2)
面密度20g/mのポリエステル繊維からなるスパンボンド不織布(A)に、前記バインダー樹脂液(A1)を含浸した後、乾燥させ面密度25g/mのカバー材(A2)を得た。このカバー材(A2)は、布帛であるスパンボンド不織布の繊維表面に、リン系難燃剤がアクリル系樹脂によって固定されたカバー材であり、カバー材(A2)には20質量%(面密度4.05g/m)のリン系難燃剤が含まれていた。
【0075】
(カバー材の準備1−3)
面密度20g/mのポリエステル繊維からなるスパンボンド不織布(A)に、前記バインダー樹脂液(A3)を含浸した後、乾燥させ面密度33g/mのカバー材(A3)を得た。このカバー材(A3)は、布帛であるスパンボンド不織布の繊維表面に、リン系難燃剤がアクリル系樹脂によって固定されたカバー材であり、このカバー材(A3)には34.5質量%(面密度11.4g/m)のリン系難燃剤が含まれていた。
【0076】
(カバー材の準備2)
面密度20g/mのポリオレフィン繊維からなる湿式不織布に、前記バインダー樹脂液(A1)を含浸した後、乾燥させ面密度30g/mのカバー材を得た。このカバー材は、布帛である湿式不織布の繊維表面に被着されたバインダーに由来する熱可塑性樹脂成分中に、27質量%のリン系難燃剤を固形分として含有するものであった。ついで、上述した状態のカバー材に、市販の二酸化マンガン『CMD−K200』(中央電気工業(株)製,商品名;比表面積250g/m,平均粒子径4.8μm)を前述した特開2004−3070号公報の技術によって担持した。すなわち、上記二酸化マンガンを加熱状態で、上記熱可塑性樹脂からなる表面を有する湿式不織布に接触させることによって、二酸化マンガン粒子を担持し、最終的に34g/mのカバー材(B)を用意した。
【0077】
(カバー材の準備3)
熱可塑性ポリアミド系樹脂(190℃におけるメルトインデックス:80)を溶融紡糸して、面密度15g/mの蜘蛛の巣状のホットメルト不織布を形成した後、直ちに前記カバー材(A1)、(A2)、(A3)又は(B)の上に積層した。ホットメルト不織布は冷却されると同時にそれぞれのカバー材に付着して、ホットメルト不織布が付着したそれぞれ面密度42g/m、40g/m、48g/m又は49g/mのカバー材(A1)、(A2)、(A3)又は(B1)を得た。
【0078】
(実施例1)
図4に例示するように、カバー材の準備3で準備したホットメルト不織布が付着した面密度42g/mのカバー材(A1)である5のホットメルト不織布10の表面に、添着活性炭粒子の準備2で準備した添着活性炭粒子(A1)である3を面密度130g/mとなるようにして散布する。続いて、約5Kg/cmの水蒸気処理をカバー材5側(ホットメルト不織布10側)から約7秒間行い、ホットメルト不織布10を可塑化溶融して、ホットメルト樹脂からなる連結部1と樹脂凝集部2とで構成されたウエブに、樹脂凝集部2を介して添着活性炭粒子3を固着させた。続いて、固着した添着活性炭粒子以外を除去することにより、添着活性炭粒子3が、各々の粒径に応じて固着され、しかもカバー材5と接着された1層目の積層単位4を得た。さらに、この状態の積層単位4に面密度20g/mのホットメルト不織布10”を積層し、面密度170g/mとなるようにして添着活性炭粒子3’散布、水蒸気処理、並びに固着されていない添着活性炭粒子の除去を経て2層目の積層単位4’を形成した。
次にカバー材の準備3で準備したホットメルト不織布が付着した面密度42g/mのカバー材(A1)である5’を、ホットメルト不織布10’側が積層単位4’に接するようにして積層単位4’の上に積層し、約5Kg/cmの水蒸気処理をカバー材5’側(ホットメルト不織布10’側)から約7秒間行い、ホットメルト不織布10’を可塑化溶融して、ホットメルト樹脂からなる連結部1’と樹脂凝集部2’とで構成されたウエブに、樹脂凝集部2’を介して添着活性炭粒子3’を固着させてガス除去用難燃性濾材を得た。
このガス除去用難燃性濾材の厚さは1.0mmであり、面密度は404g/mであり、面風速0.5m/秒における圧力損失は75Paであった。また、活性炭粒子層の構成は添着活性炭粒子が300g/m(85.7質量%)と、添着活性炭粒子を連結する連結樹脂が50g/m(14.3質量%)とからなるものであった。次に、このガス除去用難燃性濾材について、UL94の燃焼性試験規格HF−1に適合するか否かの評価を行った。この実施例の評価結果を表2に示す。
【0079】
(実施例2)
実施例1において、添着活性炭粒子(A1)の替わりに、添着活性炭粒子(A2)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、厚さが1.0mmであり、面密度は404g/mであり、面風速0.5m/秒における圧力損失は75Paである、それぞれ実施例2のガス除去用難燃性濾材を得た。この実施例の評価結果を表2に示す。
【0080】
(比較例1〜2)
実施例1において、添着活性炭粒子(A1)の替わりに、添着活性炭粒子の準備1で準備した活性炭粒子(A)、又は添着活性炭粒子の準備2で準備した添着活性炭粒子(A3)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、厚さが1.0mmであり、面密度は404g/mであり、面風速0.5m/秒における圧力損失は75Paである、それぞれ比較例1および2のガス除去濾材を得た。これらの比較例の評価結果を表2に示す。
【0081】
(比較例3)
実施例1において、カバー材(A1)の替わりに、カバー材の準備1で準備した面密度20g/mのポリエステル繊維からなるスパンボンド不織布(A)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、厚さが1.0mmであり、面密度は390g/mであり、面風速0.5m/秒における圧力損失は75Paである、比較例3のガス除去濾材を得た。この比較例の評価結果を表2に示す。
【0082】
(実施例3〜4)
実施例1において、添着活性炭粒子(A1)の替わりに、添着活性炭粒子の準備3で準備した添着活性炭粒子(B3)又は(B4)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、厚さが1.0mmであり、面密度は404g/mであり、面風速0.5m/秒における圧力損失は75Paである、それぞれ実施例3〜4のガス除去用難燃性濾材を得た。これらの実施例の評価結果を表3に示す。
【0083】
(比較例4)
実施例1において、添着活性炭粒子(A1)の替わりに、添着活性炭粒子の準備3で準備した添着活性炭粒子(B5)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、厚さが1.0mmであり、面密度は404g/mであり、面風速0.5m/秒における圧力損失は75Paである、比較例4のガス除去濾材を得た。この比較例の評価結果を表3に示す。
【0084】
(比較例5)
実施例3において、カバー材(A1)の替わりに、カバー材の準備1で準備した面密度20g/mのポリエステル繊維からなるスパンボンド不織布(A)を用いたこと以外は実施例3と同様にして、厚さが1.0mmであり、面密度は390g/mであり、面風速0.5m/秒における圧力損失は75Paである、比較例5のガス除去濾材を得た。この比較例の評価結果を表3に示す。
【0085】
(実施例5)
実施例1において、カバー材の準備3で準備したホットメルト不織布が付着した面密度42g/mのカバー材(A1)の替わりに、ホットメルト不織布が付着した面密度49g/mのカバー材(B1)を用いたこと、および添着活性炭粒子(A1)の替わりに、添着活性炭粒子(A2)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、厚さが1.0mmであり、面密度は418g/mであり、面風速0.5m/秒における圧力損失は75Paである、実施例5のガス除去用難燃性濾材を得た。これらの実施例の評価結果を表4に示す。
【0086】
(実施例6)
実施例1において、添着活性炭粒子(A1)の替わりに、添着活性炭粒子の準備4で準備した添着活性炭粒子(C2)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、厚さが1.0mmであり、面密度は404g/mであり、面風速0.5m/秒における圧力損失は75Paである、実施例6のガス除去用難燃性濾材を得た。これらの実施例の評価結果を表4に示す。
【0087】
(実施例7)
実施例1において、添着活性炭粒子(A1)を最初に面密度130g/mとなるようにして散布して、次に面密度170g/mとなるようにして散布した替わりに、添着活性炭粒子の準備3で準備した添着活性炭粒子(B3)を最初に面密度170g/mとなるようにして散布して、次に面密度230g/mとなるようにして散布したこと以外は実施例1と同様にして、厚さが1.3mmであり、面密度は504g/mであり、面風速0.5m/秒における圧力損失は103Paである、実施例7のガス除去用難燃性濾材を得た。これらの実施例の評価結果を表5に示す。
【0088】
(実施例8)
図3に例示するように、カバー材の準備3で準備したホットメルト不織布が付着した面密度42g/mのカバー材(A1)である5のホットメルト不織布10の表面に、添着活性炭粒子の準備3で準備した添着活性炭粒子(B3)である3を面密度100g/mとなるようにして散布する。続いて、約5Kg/cmの水蒸気処理をカバー材5側(ホットメルト不織布10側)から約7秒間行い、ホットメルト不織布10を可塑化溶融して、ホットメルト樹脂からなる連結部1と樹脂凝集部2とで構成されたウエブに、樹脂凝集部2を介して添着活性炭粒子3を固着させた。続いて、固着した添着活性炭粒子以外を除去することにより、添着活性炭粒子3が、各々の粒径に応じて固着され、しかもカバー材5と接着された1層目の積層単位4を得た。
次にカバー材の準備3で準備したホットメルト不織布が付着した面密度42g/mのカバー材(A1)である5’を、ホットメルト不織布10’側が積層単位4’に接するようにして積層単位4’の上に積層し、約5Kg/cmの水蒸気処理をカバー材5’側(ホットメルト不織布10’側)から約7秒間行い、ホットメルト不織布10’を可塑化溶融して、ホットメルト樹脂からなる連結部1’と樹脂凝集部2’とで構成されたウエブに、樹脂凝集部2’を介して添着活性炭粒子3’を固着させてガス除去用難燃性濾材を得た。
このガス除去用難燃性濾材の厚さは0.7mmであり、面密度は184g/mであり、面風速0.5m/秒における圧力損失は58Paであった。また、活性炭粒子層の構成は添着活性炭粒子が100g/m(77質量%)と、添着活性炭粒子を連結する連結樹脂が30g/m(23質量%)とからなるものであった。この実施例の評価結果を表4に示す。
【0089】
(実施例9)
実施例1において、添着活性炭粒子(A1)の替わりに添着活性炭粒子の準備3で準備した添着活性炭粒子(B3)を用いたこと、及びカバー材の準備3で準備したホットメルト不織布が付着した面密度42g/mのカバー材(A1)の替わりに、ホットメルト不織布が付着した面密度40g/mのカバー材(A2)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、厚さが1.0mmであり、面密度は400g/mであり、面風速0.5m/秒における圧力損失が73Paである、実施例9のガス除去用難燃性濾材を得た。この実施例の評価結果を表5に示す。
【0090】
(実施例10)
実施例8において、カバー材の準備3で準備したホットメルト不織布が付着した面密度42g/mのカバー材(A1)の替わりに、ホットメルト不織布が付着した面密度48g/mのカバー材(A3)を用いたこと以外は実施例8と同様にして、厚さが0.7mmであり、面密度は196g/mであり、面風速0.5m/秒における圧力損失が61Paである、実施例10のガス除去用難燃性濾材を得た。この実施例の評価結果を表5に示す。
【0091】
(表2)

【0092】
(表3)

【0093】
(表4)

【0094】
(表5)

【0095】
表2〜表5から明らかなように、S≧200M+550で表せる前述の式(1)を満たす実施例1〜10のガス除去用難燃性濾材は、UL94の燃焼性試験規格94HF−1に適合する難燃性を有しながら、1つの濾材で、オゾンの分解機能とVOCの吸着機能の両方の機能をも有しており、機器用の濾材又はフィルタ等として好適な濾材であった。これに対して、添着活性炭粒子を担持していない比較例1はオゾン除去率に劣り、また前述の式(1)を満たさない比較例2及び4は、UL94の燃焼性試験規格94HF−1に適合する難燃性を有しておらず、機器用の濾材又はフィルタ等として不適な濾材であった。また、カバー材に難燃剤を有しない比較例3及び5も、UL94の燃焼性試験規格94HF−1に適合する難燃性を有しておらず、機器用の濾材又はフィルタ等として不適な濾材であった。
【符号の説明】
【0096】
1,1’,1” 連結部
2,2’ 樹脂凝集部
3,3’ 添着活性炭粒子
4,4’ 積層単位
5,5’ カバー材
8 活性炭粒子層
10,10’,10” ホットメルト樹脂(ホットメルト不織布)
13 ガス除去用難燃性濾材
20 ガス除去エレメント
21 ガス除去用難燃性濾材
22a、22b 枠材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
難燃剤を含有し、かつ布帛からなるカバー材に、炭酸カリウム及び/又は炭酸水素カリウムを活性炭粒子に添着した添着活性炭粒子を担持してなるガス除去用難燃性濾材であって、前記炭酸カリウム及び/又は炭酸水素カリウムの添着量M(%)が1質量%以上であり、前記添着量M(%)と前記活性炭粒子のBET法による比表面積S(m/g)が下記の式(1)を満たすことを特徴とするガス除去用難燃性濾材。
S≧200M+550 (1)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−202150(P2009−202150A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−16809(P2009−16809)
【出願日】平成21年1月28日(2009.1.28)
【出願人】(000229542)日本バイリーン株式会社 (378)
【Fターム(参考)】