説明

ガドリニウム化合物及びMRI用造影剤

【課題】T1緩和能が高く、少ない投与量でも高感度に造影可能であり、全身血管及び肝臓の造影に優れ、さらに24時間以内に体外に大部分が排泄される安全性を有する新規なガドリニウム化合物及びそれを含むMRI用造影剤を提供する。
【解決手段】Glu−4Ac−Gd−DTPA、Glu−4−Gd−DTPA−6、Glu−4−Gd−DTPA−3(Gluはグルコース、Acはアセチル、DTPAはジエチレントリアミンペンタ酢酸を示す。)等のガドリニウム錯体及びそれ等を含むMRI用造影剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なガドリニウム化合物及びそれを含有するMRI用造影剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
MRIは生体内の断層画像を得る方法で、病理学的構造が詳細に画像化できるため,画像診断法として幅広く活用されている。MRIのメカニズムは、高磁場中で人体に電波を当てることにより、人体中に含まれる水や脂肪の水素原子を核磁気共鳴させ、組織の違いによる信号を読み取り、画像化するものである。実際、医療の現場ではより鮮明な画像を得るために、ガドリニウム錯体を含有するMRI造影剤を使用する。その中で、Gd(III)−DTPA(ジエチレントリアミンペンタ酢酸のガドリニウム(III)錯体(以下マグネビストと呼称する。)は、ガドリニウム化合物として初めてMRI(核磁気共鳴撮像)用造影剤として1988年に実用化されたものであり、全世界で4500万以上の症例に使用されてきた(例えば、非特許文献1参照)。マグネビストは水溶性で分子量が小さいため、血管から臓器や組織への移行が早く、血管、特に静脈を明確に造影することが困難であった。一方、近年、特定の臓器の微小な疾患(例えば肝臓、膵臓、肺等の転移性癌)の造影が強く求められている。しかしながら、マグネビストには臓器特異性がないため、要望を満たすことが困難である。
【0003】
一方、グルコースラクトンやガラクトースラクトンで末端を修飾したガドリニウム錯体(例えば、非特許文献2、3及び特許文献1参照)が提案されている。これらは、マグネビストと比較して、T1緩和能が高く、少量の投与量で十分な造影効果を得ることができるため、血流の少ない末梢血管の造影が十分に可能である。また、肝臓への集積効果が高いため肝臓の病変を高感度、高解像度で造影することが可能であり、肝臓の微細な転移性癌の早期発見に多いに貢献することが期待される。そこで我々はマグネビストに組織認識部位として糖を4分子し導入した新規ガドリニウム錯体を近年発明した(例えば、非特許文献2参照)。このガドリニウム錯体は血管貯留性が高く、肝臓、腎臓、血管に高い組織選択性が示唆された。さらにGd−DTPAで全く造影できなかった肝細胞がんを鮮明に画像化できた。しかしながら、血管貯留性が高く、24時間経過しても血管から十分に排出されず、体の中に必要以上に留まってしまう欠点を有していた。
【特許文献1】特開2004−307356号公報
【非特許文献1】Chem.Rev.,1999,Vol.99,2293−2352
【非特許文献2】Tetrahedron Lett.,41(2000)8485−8488
【非特許文献3】Gaodeng Xuexiao Huaxue Xuebao,(1997),18(7),1071−1079
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、(1)T1緩和能が高く、少ない投与量でも高感度に造影可能であり、(2)全身血管及び肝臓の造影に優れ、(3)さらに24時間以内に体外に大部分が排泄される安全性を有する新規なガドリニウム化合物及びそれを含むMRI用造影剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の上記課題は、以下の構成により達成される。
1.下記一般式(1)で表されることを特徴とするガドリニウム化合物。
【0006】
【化1】

【0007】
(式中、波線はアクシャルまたはエカトリアルの立体配置であることを表す。)
2.下記一般式(2)で表されることを特徴とするガドリニウム化合物。
【0008】
【化2】

【0009】
(式中、Gは糖ラクトンとアミノ基が反応した残基を表す。nは3から8の整数を表す。)
3.前記糖ラクトンの糖が、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、ギュロース、イドース、ガラクトース、タロース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、エリトロース、トレオース、セロビオース、マルトース、ラクトースまたはマルトリオロースから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする前記2に記載のガドリニウム化合物。
4.前記糖ラクトンの糖がグルコースであることを特徴とする前記3に記載のガドリニウム化合物。
5.下記一般式(3)で表されることを特徴とするガドリニウム化合物。
【0010】
【化3】

【0011】
(式中、Gは糖ラクトンとアミノ基が反応した残基を表す。)
6.前記糖ラクトンの糖が、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、ギュロース、イドース、ガラクトース、タロース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、エリトロース、トレオース、セロビオース、マルトース、ラクトースまたはマルトリオロースから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする前記5に記載のガドリニウム化合物。
7.前記糖ラクトンの糖がグルコースであることを特徴とする前記6に記載のガドリニウム化合物。
8.前記1〜7のいずれか1項に記載のガドリニウム化合物の少なくとも1種を含有することを特徴とするMRI用造影剤。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、(1)T1緩和能が高く、少ない投与量でも高感度に造影可能であり、(2)全身血管及び肝臓の造影に優れ、(3)さらに24時間以内に体外に大部分が排泄される安全性を有する新規なガドリニウム化合物及びそれを含むMRI用造影剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討の結果、前記一般式(1)で表される特定構造のガドリニウム化合物は、(1)T1緩和能が高く、少ない投与量でも高感度に造影可能であり、(2)全身血管及び肝臓の造影に優れ、(3)さらに24時間以内に体外に大部分が排泄される安全性を有する新規なガドリニウム化合物であり、これを含むMRI用造影剤(以下、造影剤ともいう)は優れた造影剤であることを見出した。
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0015】
《一般式(1)〜(3)で表されるガドリニウム化合物》
一般式(1)において、波線はアクシャルまたはエカトリアルの立体配置であることを表すが、一般式(1)の合成原料であるパーアセチル糖ラクトンのアセトキシル基の立体配置を反映したものであることが好ましい。
【0016】
パーアセチル糖ラクトンの糖としては、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、ギュロース、イドースまたはガラクトースであることが好ましく、特に好ましくはグルコースである。
【0017】
一般式(2)及び(3)において、G1及びG3は糖ラクトンとアミノ基が反応した残基を表す。糖ラクトンの糖は、単糖、二糖、三糖、多糖の全てのアルドペントース、アルドヘキソースを表すが、糖としてはアロース、アルトロース、グルコース、マンノース、ギュロース、イドース、ガラクトース、タロース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、エリトロース、トレオース、セロビオース、フコース、マルトース、イソマルトース、ラクトースまたはマルトリオロースが挙げられる。好ましくは、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、ギュロース、イドース、ガラクトース、タロース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、エリトロース、トレオース、セロビオース、マルトース、ラクトースまたはマルトリオロースであり、より好ましくはグルコース、ガラクトースまたはマンノースである。特に好ましくはグルコースである。
【0018】
一般式(2)において、nは3から8の整数を表すが、好ましくは3から6の整数である。
【0019】
次に、本発明の一般式(1)〜(3)で表されるガドリニウム化合物の具体例を示す。しかし本発明はこれらに限定されない。
【0020】
【化4】

【0021】
【化5】

【0022】
【化6】

【0023】
【化7】

【0024】
【化8】

【0025】
【化9】

【0026】
【化10】

【0027】
【化11】

【0028】
【化12】

【0029】
【化13】

【0030】
【化14】

【0031】
【化15】

【0032】
【化16】

【0033】
【化17】

【0034】
【化18】

【0035】
【化19】

【0036】
【化20】

【0037】
【化21】

【0038】
【化22】

【0039】
【化23】

【0040】
【化24】

【0041】
これらの例示化合物の合成方法は実施例に示す。
【0042】
《造影剤》
次に、本発明のガドリニウム化合物を含有するMRI用造影剤について詳述する。
【0043】
本発明の造影剤は、本発明のガドリニウム化合物の少なくとも1種を含有する。ガドリニウム化合物は2種以上を併用してもよいが、好ましくは1種のみの化合物を含有することである。
【0044】
本発明のガドリニウム化合物は良好な水溶性を有する。好ましくは、室温において少なくとも1.0mM、好ましくは10mM、そしてより好ましくは100mMの濃度まで水に溶解する。注射のために製剤化された本発明の造影剤は、迅速で簡便な注射を可能にするよう適度な粘度のみを有するべきである。粘度は、10.20×10−4kgf・s/m(10mPa・s、10cP)未満、または好ましくは5.10×10−4kgf・s/m(5mPa・s、5cP)未満、またはより好ましくは2.04×10−4kgf・s/m(2mPa・s、2cP)未満である。また、注射のために製剤化された本発明の造影剤は過度の浸透圧を有するべきではない。なぜなら、これは毒性を増加させ得るからである。浸透圧は、3000ミリオスモル/kg未満、または好ましくは2500ミリオスモル/kg未満、または最も好ましくは900ミリオスモル/kg未満である。
【0045】
本発明の造影剤は、無機または有機の酸及び塩基から誘導される塩を含有することができる。塩の具体例としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、ショウノウ酸塩、ショウノウスルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パモエート、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩、ウンデカン酸塩、アンモニウム塩、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム及びカリウム塩)、アルカリ土類金属塩(例えば、カルシウム、マグネシウム及び亜鉛塩)、有機塩基を有する塩(例えば、ジシクロヘキシルアミン塩、N−メチル−D−グルカミン)、及びアミノ酸(例えば、アルギニン、リジン)を有する塩等を包含する。また、塩基性窒素含有基は、低級アルキルハライド(例えば、メチル、エチル、プロピル及びブチルクロライド、ブロマイド及びヨージド)、ジアルキル硫酸(例えば、ジメチル、ジエチル、ジブチル及びジアミル硫酸)、長鎖ハライド(例えば、デシル、ラウリル、ミリスチル及びステアリルクロライド、ブロマイド及びヨージド)、アラルキルハライド(例えば、ベンジル及びフェネチルブロマイド)ならびにその他のような薬剤で4級化され得る。それによって、水溶性または油溶性あるいは水分散性または油分散性の生成物が得られる。本発明の好ましい塩は、N−メチル−D−グルカミン、カルシウム及びナトリウム塩である。
【0046】
本発明の造影剤は、任意のキャリア、アジュバントもしくはビヒクルを含有することができる。本発明の造影剤に使用され得るキャリア、アジュバント及びビヒクルは、イオン交換物質、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン)、緩衝性物質(例えば、ホスフェート)、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、TRIS(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)、植物性飽和脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質(例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩)、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースベースの物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、ポリエチレングリコール及びラノリンを包含するが、これらに限定されない。
【0047】
本発明の造影剤は、注射可能な無菌の調合薬の形態(例えば、注射可能な無菌の水性または油性の懸濁液)であり得る。この懸濁液は、当該分野で公知の技術に従い、適切な分散剤または湿潤剤及び懸濁剤を用いて製剤され得る。注射可能な無菌の調合薬はまた、無毒性の非経口で受容可能な希釈剤または溶媒中における、無菌の注射可能な溶液または懸濁液(例えば、1,3−ブタンジオール中の溶液として)であってもよい。用いられ得る受容可能なビヒクル及び溶媒は、水、リンガー溶液及び等張食塩水である。さらに、無菌の不揮発油が溶媒または懸濁媒体として使用される。この目的のために、合成のモノ−またはジ−グリセリドを含む任意の刺激のない不揮発油が使用され得る。脂肪酸(例えば、オレイン酸及びそのグリセリド誘導体)は、天然の薬学的に受容可能なオイル(例えば、オリーブオイルまたはヒマシ油)と同様に、注射可能物の調製、特にこれらのポリオキシエチル化した変形物において有用である。これらのオイル溶液または懸濁液はまた、長鎖アルコールの希釈剤または分散剤(例えば、Ph.Helvまたは類似のアルコール)を含み得る。
【0048】
本発明の造影剤は、経口投与、非経口投与、吸入スプレーによる投与、局所投与、直腸投与、鼻腔投与、頬投与、膣投与または従来の無毒性の薬学的に受容可能なキャリア、アジュバント及びビヒクルを含有する投薬製剤中に埋め込まれたリザーバを介して投与され得る。本明細書に使用されるように用語「非経口」は、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑液包内、胸骨内、くも膜下、肝臓内、病変内及び頭蓋内注射または点滴技術を含む。
【0049】
経口投与される場合、本発明の造影剤を含む薬学的組成物は、任意の経口的に受容可能な投薬形態(カプセル、錠剤、水性の懸濁液または溶液が挙げられるがこれらに限定されない)で投与され得る。錠剤を経口使用する場合、一般的に使用されるキャリアには、ラクトース及びコーンスターチが挙げられる。代表的には、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤もまた添加される。カプセル形態の経口投与に対して、有用な希釈剤としては、ラクトース及び乾燥コーンスターチが挙げられる。経口使用に水性懸濁液を必要とする場合、活性成分は乳化剤及び懸濁剤と配合される。所望の場合、特定の甘味料、香味料または着色料もまた添加してもよい。あるいは、直腸投与のために座薬形態で投与される場合には、本発明の造影剤は、室温で固体であるが直腸温で液体である適切な非刺激性の賦形剤を混合して調製され得、その結果直腸内で溶け薬剤を放出する。このような物質として、ココアバター、ビーズワックス及びポリエチレングリコールが挙げられる。
【0050】
また、前述のように、特に、処置標的が局所施用によって容易に接近可能な領域または器官(目、皮膚または下部腸道(lower intestinal tract)を含む)を含む場合に、本発明の造影剤は局所投与され得る。適切な局所製剤は、これらの各領域または器官用に容易に調製される。
【0051】
下部腸道に対する局所施用は、直腸用座薬製剤または適切な浣腸製剤でなされ得る。局所−経皮性パッチもまた使用してよい。局所施用に対して、本発明の造影剤は、1つ以上のキャリア中に懸濁または溶解される活性成分を含有する、適切な軟膏に製剤され得る。
【0052】
本発明の造影剤の局所投与のためのキャリアは、鉱油、液体ペトロラタム、白色ペトロラタム、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化ワックス及び水を包含するが、それらに限定されない。あるいは、本発明の造影剤は、1つ以上のキャリア中に懸濁または溶解された活性成分を含有する、適切なローションまたはクリームに製剤されてもよい。適切なキャリアは、鉱油、ソルビタンモノステアレート、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリールアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコール及び水を包含するが、それらに限定されない。
【0053】
眼使用に対して、本発明の造影剤は防腐剤(例えば、ベンジルアルコニウムクロライド)を含有してもしなくてもよい。pH調節された等張の無菌生理食塩水中に微小化された懸濁液として、または好ましくはpH調節された等張の無菌生理食塩水中の溶液として製剤され得る。あるいは、眼使用に対して本発明の造影剤は、ペトロラタムのような軟膏に製剤され得る。
【0054】
鼻腔エーロゾルまたは吸入による投与に対して、本発明の造影剤は、製薬的製剤の分野で周知の技術に従って調製され、そしてベンジルアルコールもしくは他の適切な防腐剤、生体利用性を増大させる吸収促進剤、フルオロカーボン、及び/または他の従来の可溶化剤もしくは分散剤を使用し、生理食塩水中の溶液として調製され得る。
【0055】
投薬は、診断用画像化機器の感度、ならびに造影剤の組成に依存する。例えば、MRI画像化に対して、本発明のガドリニウム化合物を含有する造影剤は、一般的に、より低い磁気モーメントを有する常磁性物質、例えば、鉄(III)を含有する造影剤より、より低い投薬を必要とする。好ましくは、投薬は、1日当たり約0.001〜1mmol/kg体重の活性金属−リガンド錯体の範囲である。より好ましくは、投薬は、1日当たり約0.005〜0.05mmol/kg体重の範囲である。
【0056】
しかし、任意の特定の患者に対する特定の投薬処方もまた、種々の因子(年齢、体重、健康状態、性別、治療食、投与時間、排泄速度、薬物の組み合わせ及び処置する内科医の判断を含む)に依存することが理解されるべきである。
【0057】
本発明では造影剤の適切な投薬の投与に続いて、MRI画像化が行われる。パルス系列(反転回復(IR);スピンエコー(SE);エコー断層(EPI);飛行時間(TOF);ターボフラッシュ;グラディエントエコー(GE))及び画像化パラメーターの値(エコー時間(TE);反転時間(TI);繰り返し時間(TR);フリップ角等)の選択は、要求される診断情報に支配される。一般的には、T1−加重された画像を得ることが望まれる場合、TEはT1−加重を最大とするために30ミリ秒未満(または最小値)であるべきである。逆に、T2の測定が所望される場合、TEは競合するT1効果を最小にするために30ミリ秒より大きくあるべきである。TI及びTRは、T1−及びT2−加重された画像の両方に対して、ほぼ同じに保たれる。一般的に、TI及びTRは、それぞれ、約5〜1000ミリ秒及び2〜1000ミリ秒のオーダーである。
【実施例】
【0058】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、特に断りない限り、実施例中の「%」は「質量%」を表す。
【0059】
(実験方法)
機器
元素分析:Perkin−Elmer−240
FT−IR:JASCO FT/IR−410赤外分光計
NMR:JEOL JNM−AL300核磁気共鳴分光計
重溶媒としては重クロロホルム(chloroform−d)、重水(DO)、重ジメチルスルホキシド(DMSO−d)を使用し、内部標準としてはTMSを使用した。
MALDI−TOF−MS:GL Science社製Voyager−DE porimerix
マトリクスとしてα−CHCAを使用した。
示差熱・熱重量測定:島津製作所 DTG60A/60AH
薄層クロマトグラフィー:和光純薬工業のクロマトシートを用いた。スポットの呈色にはヨウ素蒸気を利用した。
複合TEM;元素分析装置付き高圧透過型電子顕微鏡
日本電子製JEM200CX型
元素分析装置部(KEVEX 7025 J型エネルギー分散形)
緩和速度測定:1.5T 超伝導MR撮影装置Magnetom SP(Siemens社製、Erlangen)に送受信knee−coilを併用して計測を行なった。撮像pulse sequenceはspin echo系列 TR1(ms)=3000、TR2(ms)=60、TE(ms)=15、matrix=256x192、FOV(cm)=16、NEX=2である。
【0060】
試薬
全ての試薬類及び溶媒類は、和光純薬工業株式会社・シグマ アルドリッチ・東京化成工業株式会社・関東化学株式会社からの市販品を使用した。
【0061】
〔合成例1:Glu−4Ac−Gd−DTPAの合成〕
下記反応スキームにより、例示化合物Glu−4Ac−Gd−DTPAを合成した。
【0062】
【化25】

【0063】
(第1工程)
アルゴン雰囲気下、ナスフラスコに2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−d(+)−グルコノ−1,5−ラクトン1を入れ、ピリジンに溶解し、氷水浴中で撹拌しながらジエチレントリアミンをゆっくり滴下した。減圧下で溶媒を除去し、クロロホルムに溶解し、有機相を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(5ml)、飽和塩化ナトリウム水溶液(5ml)の順で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過、濃縮後、目的化合物である黄色結晶2(2.06g、2.59mmol)を粗収率90%で得た。
分子式:C324920;M.W.:795.74
MALDI−TOF−MS(+):796.44[M+H]
m.p.:225℃
IR(KBr)
ν(cm−1):3463(O−H)、1743(C=O of ester)、1658(C=O of amide)、1542(N−H of amide)、1234(C−O of ester)
HNMR(CDCl
σ(ppm):2.07,2.14,2.19,2.23(s×4,24H,CHC=O×8)、2.74−3.70(m,10H,OH×2,CHNH×2,CHNHC=O×2)、3.98−4.45(m,6H,CH×2,CH×2(sugar hydrogens))、4.97−5.55(m,6H,CH×6(sugar hydrogens ))
(第2工程)
アルゴン雰囲気下、ナスフラスコにDTPA二無水物3(0.483g、1.35mmol)と化合物2(2.15g、2.70mmolを入れ、DMF(10ml)に溶解し、50℃で24時間撹拌した。減圧下で溶媒を除去し、粗生成物を再結晶(イソプロパノール)にて単離精製し、白色結晶4(1.95g、1.00mmol)を収率74%で得た。
分子式:C7811748;M.W.:1948.80
MALDI−TOF−MS(−):1945.61[M−3H]
m.p.:180℃
IR(KBr)
ν(cm−1):3440(O−H)、1743(C=O of ester)、1658(C=O of amide)、1542(N−H of amide)、1226(C−O of ester)
HNMR(CDCl
σ(ppm):1.97,2.00,2.10,2.13(s×4,48H,CHC=O×16)、3.00−3.84(m,38H,OH×4,CHNC=O×4,CHNHC=O×4,CHN×4,NCHC=O)、3.92−4.34(m,12H,CH×2,CH×2(sugar hydrogens))、4.78−5.53(m,6H,CH×6(sugar hydrogens))
(第3工程)
ナスフラスコに4(0.150g、0.0676mmol)とGdCl・6HO(0.300g、0.0811mmol)を入れ、水(3 ml)に溶解し、60℃で1時間撹拌した。反応終了後水溶液をエーテル(3ml×3)で洗浄した。減圧下で溶媒を除去し、白色結晶の目的物Glu−4Ac−Gd−DTPAを81mg得た。(収率50%)
分子式:C7812552;M.W.:2116.94
IR(KBr)
ν(cm−1):3460(O−H)
MALDI−TOF−MS(+):2098 [M−HO]
〔合成例2:Glu−4−Gd−DTPA−6の合成〕
下記反応スキームにより、例示化合物Glu−4−Gd−DTPA−6を合成した。
【0064】
【化26】

【0065】
(第1工程)
アルゴン雰囲気下、ナスフラスコにD−(+)−Glucono−1,5−lactone(3.001g、16.8mmol)を入れ、DMF(30ml)に溶解し、室温で撹拌しながらBis(hexamethylene)triamine(1.829g、8.49mmol)を少しずつ加えた。8時間70℃で撹拌した後、30分間氷水浴し、析出した結晶を減圧ろ過し、乾燥して白色結晶のジグルコシルアミン(C6)5を収率81.2%で得た。
MALDI−TOF−MS(+),572[M+H]
HNMR(DMSO−d
δ(ppm):1.25−1.40(m,16H;CH×8(Branch hydrogens))、2.42−2.49(m,4H;NHCH×2)、3.01−3.34(m,4H;O=CNHCH×2)、3.34−3.89(m,8H;CH×8(Sugar hydrogens))、3.89−4.38(m,4H;CH×2(Sugar hydrogens))、4.38−4.53,5.35(bm,10H;OH×10)、7.59(t,2H,O=CNH×2)
(第2工程)
アルゴン雰囲気下、ナスフラスコに化合物5(1.025g、1.79mmol)と化合物3(0.378g、1.58mmol)を入れ、DMSO(12ml)に溶解し、Pyridine(0.28ml)を加え、60℃で1日撹拌した。反応終了後、超純水(1ml)を加え1時間撹拌した。その後、2−Propanol(25ml)を加えると白色結晶が析出した。その結晶をろ過し、乾燥することにより化合物6を収率85.8%で得た。
【0066】
ここでの収率は6が1当量に対してDTPAが0.2当量存在しているとし、その質量パーセントの収率とした。
MALDI−TOF−MS(+),1499[M+H]
HNMR(DMSO−d
δ(ppm):1.24−1.42(db,32H;CH×16(Branch hydrogens))、2.93−3.62(m,56H;NHCH×4,N(CHN×2,CHCOOH×3,O=CNHCH×4,CH×16(Sugar hydrogens),OH×10)、3.90−3.98(bd,8H;CH×4(Sugar hydrogens))、7.62−7.68(m,4H;O=CNH×2)
(第3工程)
ナスフラスコに化合物6とDTPAとの混合物(0.516g[6;0.430g、0.29mmol、DTPA;0.861g、0.24mmol]と仮定)とGdCl・6HO(0.106g、0.28mmol)とPyridine(0.08ml)を超純水(4.0ml)に溶解し、40℃で12時間撹拌した。反応終了後2−Propanol(25ml)を加えると無色結晶が析出した。さらにこの結晶をMethanolでリフラックス3回洗浄することによって、未反応のGdCl・6HOと反応副生成物であるGd−DTPAを除去し、減圧ろ過を行い、真空により乾燥した。その後、結晶を再び超純水(10ml)に溶解し、溶液を10μl採取し、100μlの超純水で希釈したものと、超純水のみを110μl入れたマイクロピペットを用意した。それぞれにPyridine(10μl)、酢酸緩衝溶液(10μl)を加え撹拌し、その溶液にキシレノールオレンジ(10μl)を加え、呈色した色を比較した。結晶を溶解したものが青色に呈色した場合、Chilexを加え、2時間撹拌し、再び呈色させた。コントロールと同じ色になるまでこの作業を繰り返した。その後、イオン交換樹脂を濾別し、溶液を真空乾燥することで、白色結晶の目的物Glu−4−Gd−DTPA−6を収率98.9%で得た。
MALDI−TOF−MS(+),1653[M−HO]
〔合成例3:Glu−4−Gd−DTPA−3の合成〕
下記反応スキームにより、例示化合物Glu−4−Gd−DTPA−3を合成した。
【0067】
【化27】

【0068】
(第1工程)
アルゴン雰囲気下、ナスフラスコにD−(+)−Glucono−1,5−lactone(7.042g、39.5mmol)を入れ、DMF(50ml)に溶解し、室温で撹拌しながらDipropylenetriamine(2.75ml、19.6mmol)を少しずつ加えた。5時間55℃で撹拌した後、30分間氷水浴し、析出した結晶を減圧ろ過し、乾燥して白色結晶の7を収率83.6%で得た。
MALDI−TOF−MS(+),488[M+H]
HNMR(DMSO−d
δ(ppm):1.54(m,4H;CH×2(Branch hydrogens))、2.45−2.54(m,4H;NHCH×2)、3.12−3.14(m,4H;O=CNHCH×2)、3.34−3.98(m,12H;CH×2,CH×8(Sugar hydrogens))、4.42(bs,10H;OH×10)、7.62(t,2H,O=CNH×2)
(第2工程)
アルゴン雰囲気下、ナスフラスコに化合物7(2.008g、4.12mmol)と化合物3(0.881g、2.47mmol)を入れ、DMSO(15ml)に溶解し、Pyridine(0.47ml)を加え、60℃で1日撹拌した。反応終了後、超純水(1.0ml)を加え1時間撹拌した。その後、Methanol(50ml)を加えると白色結晶が析出した。その結晶をろ過し、乾燥することにより化合物8を収率91.8%で得た。
【0069】
ここでの収率は化合物8が1当量に対してDTPAが0.2当量存在しているとし、その質量パーセントの収率とした。
MALDI−TOF−MS(+),1330[M+H],1352[M+Na]
HNMR(DMSO−d
δ(ppm):1.59−1.67(m,8H;CH×4(Branch hydrogens))、2.86−3.59(m,56H;NHCH×4,N(CHN×2,CHCOOH×3,O=CNHCH×4,CH×16(Sugar hydrogens)、OH×10)、3.91−4.03(m,8H;CH×4(Sugar hydrogens))、7.74−7.93(m,4H;O=CNH×2)
(第3工程)
ナスフラスコに化合物8とDTPAとの混合物(1.007g[8;0.835g、0.63mmol、DTPA;0.167g、0.47mmol]と仮定)とGdCl・6HO(0.225g、0.61mmol)とPyridine(0.019ml)を超純水(4.0ml)に溶解し、40℃で12時間撹拌した。反応終了後Methanol(25ml)を加えると無色結晶が析出した。さらにこの結晶をMethanolでリフラックス3回洗浄することによって未反応のGdCl・6HOと反応副生成物であるGd−DTPAを除去し、減圧ろ過を行い、真空により乾燥した。その後、結晶を再び超純水(10ml)に溶解し、溶液を10μl採取し、100μlの超純水で希釈したものと、超純水のみを110μl入れたマイクロピペットを用意した。それぞれにPyridine(10μl)、酢酸緩衝溶液(10μl)を加え撹拌し、その溶液にキシレノールオレンジ(10μl)を加え、呈色した色を比較した。結晶を溶解したものが青色に呈色した場合、Chilexを加え、2時間撹拌し、再び呈色させた。コントロールと同じ色になるまでこの作業を繰り返した。その後、イオン交換樹脂を濾別し、溶液を真空乾燥することで、白色結晶の目的物Glu−4−Gd−DTPA−3を収率79.0%で得た。
MALDI−TOF−MS(+), 1485[M−HO]
〔合成例4:Glu−6As−Gd−DTPAの合成〕
下記反応スキームにより、例示化合物Glu−6As−Gd−DTPAを合成した。
【0070】
【化28】

【0071】
【化29】

【0072】
(第1工程)
文献(C.Sun,P.Wirsching and K.D. Janda,Bioorg. Med. Chem.,11(2003)1761−1768)に従い合成した中間体A(21.1g,0.0501mol)とトリエチルアミン(13.9ml,0.100mol)をTHF(150ml)に溶かし、二炭酸ジ−t−ブチル(10.9g,0.0501mol)のTHF溶液(30ml)を氷水浴中で滴下した。1日撹拌した後、減圧下で溶媒を除去した。それから残渣に水(100ml)を加えて溶かし、ジクロロメタン(150ml)で3回抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過した後、減圧下で溶媒を除去した。そして、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒へキサン:酢酸エチル=4:1)によって単離精製し、無色透明のBoc化合物9(16.2g,0.0311mol)を収率60%で得た。
H−NMR (CDCl
δ(ppm):1.26(t,9H,JHCH=7.11Hz;CHCH×3)、1.42(s,9H;(CHC)、2.54(t,6H,JHCH=6.49Hz;CHCOEt×3)、3.64(s,6H;OCHCNHBoc×3)、3.70(t,6H,JHCH=6.62Hz;OCHCHCOEt×3)、4.15(q,6H,JHCH=7.10Hz;COCHCH×3)
13C−NMR(CDCl
δ(ppm):14.2(CHCH)、28.3((CHC)、35.1(CHCOEt)、58.4(BocNHC)、60.4(CHCH)、66.8,69.5(OCHCHCOEt)、69.5(OCHCNHBoc)、78.9((CHCOC=O)、154.8((CHCOC=O)、171.4(COEt)
(第2工程)
化合物10(2.00g、2.27mmol)、化合物9(0.321g、0.733mmol)及び1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT、0.396g、2.93mmol)を乾燥THF(15ml)とジクロロメタン(5ml)の混合溶媒に加え、アルゴン雰囲気下で0℃に冷却し撹拌しながら乾燥THF(5ml)に溶かしたジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、0.605g、2.93mmol)を加えた。その後、室温で1日間撹拌した。反応終了後析出したN,N′−ジシクロヘキシル尿素を濾別し、濾液を減圧濃縮した。残渣を酢酸エチル(30ml)に溶かし、飽和炭酸水素ナトリウム(15ml)で洗浄し、次に水(15ml)で洗浄した。それから有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、減圧濃縮した。最後にシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒クロロホルム:メタノール=20:1)により単離精製し、無色結晶であるデンドリマーウェッジ11(1.87g、0.616mmol)を収率84%で得た。
IR(KBr)
ν(cm−1):1752(O=CO)、1673,1533(O=CNH)、1673(O=CN)
H−NMR(CDCl
δ(ppm):1.42(s,9H;(CHC)、2.10−2.23(s×6,90H;CHC=O×30)、2.55(bs,6H;OCHCHC=O×3)、3.34−3.67(m,36H;O=CNHCH×6O=CNCH×6,OCHCNHBoc×3,CHCHC=O×3)、4.10−4.34(m,12H;CH×6(sugar hydrogens))、4.98−5.63(m,24H;CH×24(sugar hydrogens))、7.33(bs,7H;O=CNH×7)
13C−NMR (CDCl
δ(ppm):20.4,20.7(CHC=O)、25.0(OCHCHC=O)、33.3,39.2(O=CNHCH,O=CNCH)、45.7,48.2(OCHCNH,OCHCHC=O)、61.7(CH(sugar carbons))、68.9,69.8,70.1,71.6(CH(sugar carbons))、155.4((CHCOC=O)、167.2,167.3,169.4,169.6,169.8,169.9,170.0,170.6,170.7,173.3(O=CNH,O=CN,CHC=O)
(第3工程)
デンドリマーウェッジ11(1.38g、0.455mmol)をジクロロメタン(5ml)に溶かし、溶液を撹拌しながらトリフルオロ酢酸(TFA、5ml、67.3mmol)を少しずつ加え、その後室温で1時間30分撹拌した。反応終了後、減圧下で溶媒を除去し、残渣を酢酸エチル(40ml)に溶かし、その溶液を飽和炭酸水素ナトリウム(20ml)で洗浄し、次に水(20ml)で洗浄した。最後に無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過した後、減圧下で溶媒を除去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒クロロホルム:メタノール=15:1)で単離精製することで無色結晶のデンドリマーウェッジ12(1.20g、0.410mmol)を収率90%で得た。
IR (KBr)
ν(cm−1):3326(NH)、1749(O=CO)、1675,1542(O=CNH)、1675 (O=CN)
H−NMR (CDCl
δ(ppm):2.05,2.08,2.10,2.20,2.25(s×5,90H;CHC=O×30)、2.67(bs,6H;OCHCHC=O×3)、3.25−3.81(m,36H;O=CNHCH×6O=CNCH×6,OCHCNH×3,OCHCHC=O×3)、4.00−4.40(m,12H;CH×6(sugar hydrogens))、5.00−5.80(m,24H;CH×24(sugar hydrogens))、7.50(bs,6H;O=CNH×6)
NHのピークはプロトン数が少ないため観測されなかった。
13C−NMR(CDCl
δ(ppm):20.0,20.4,20.6,21.2,21.5(CHC=O)、25.2(OCHCHC=O)、33.2,39.3(O=CNHCH,O=CNCH)、46.0,47.8(OCHCNH,OCHCHC=O)、61.6(CH(sugar carbons))、68.9,69.6,69.8,71.7(CH(sugar carbons))、167.1,167.3,169.4,169.5,169.8,169.9,170.0,170.5,170.6,173.4(O=CNH,O=CN,CHC=O)
分子内に等価な炭素がないOCHCNHのピークは観測されなかった。
【0073】
(第4工程)
デンドリマーウェッジ12(0.26g,0.078mmol)を室温下イオン交換水(4.0ml)に攪拌下に溶解し、GdCl・6HO(29mg、0.078mmol)を添加した。その後、反応混合物を95℃で加熱した。反応終了後、室温まで冷却し、固体をろ別した。ジエチルエーテル(10ml)を用いて洗浄し、乾燥することでGd錯体0.26g(95%)を得た。これにイオン交換水(5ml)及び1M NaOH(4ml)を加えて溶解し、室温で1〜2時間攪拌した。次に、陽イオン交換樹脂DOWEX 50W−X8(H form 100−200、1.2g)を加えた。イオン交換反応が終了した後、樹脂をろ過により除き、ろ液を減圧下に留去し、目的物Glu−6As−Gd−DTPAを黄色結晶として0.16g(96%)得た。
IR(KBr)
ν(cm−1):3355(OH)、1589(O=CNH,O=CN)
実施例1
本発明及び下記比較のガドリニウム化合物の0.05mM生理食塩水溶液を調製し、下記のように緩和時間の測定を行った。
【0074】
(緩和時間の測定)
1.5T超伝導NMR撮影装置(Magnetom SP、Siemens社製)に送受信knee−coilを併用してスピン−格子緩和時間(T1)を計測した。撮像条件は、spin echo系列TR1(ms)=3000、TR2(ms)=60、TE(ms)=15、matrix=256×192、FOV(cm)=16、NEX=2である。測定結果を表1に示す。
【0075】
【表1】

【0076】
表1から、本発明のガドリニウム化合物は、比較化合物に対してT1値がより高率に短縮することが分かった。これは造影剤として信号増強効果が高いことを意味し、少ない投与量でも高感度に造影可能であることを示唆している。
【0077】
実施例2
実施例1に用いた本発明及び比較のガドリニウム化合物を生理食塩水に溶解し、体重30gのマウス一匹当たり0.3mlで、0.10mmol/kgの投与量となるMRI用造影剤を調製した。
【0078】
この造影剤をddyマウスの尾静脈より投与することにより、造影剤の組織内分布を評価した。投入後、5分、30分、2時間、24時間後の肝臓及び血液内のガドリニウムの濃度を、誘導結合プラズマ発光分析装置(SPS3000、セイコーインスツルメンツ社製)にて測定した。検体数を20として得られた結果の平均値を表2に示す。
【0079】
【表2】

【0080】
表2より、本発明の造影剤は、比較の造影剤に対し、全身血管及び肝臓の造影に優れ、さらに24時間以内に体外に大部分が排泄される安全性を有することが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されることを特徴とするガドリニウム化合物。
【化1】

(式中、波線はアクシャルまたはエカトリアルの立体配置であることを表す。)
【請求項2】
下記一般式(2)で表されることを特徴とするガドリニウム化合物。
【化2】

(式中、Gは糖ラクトンとアミノ基が反応した残基を表す。nは3から8の整数を表す。)
【請求項3】
前記糖ラクトンの糖が、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、ギュロース、イドース、ガラクトース、タロース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、エリトロース、トレオース、セロビオース、マルトース、ラクトースまたはマルトリオロースから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項2に記載のガドリニウム化合物。
【請求項4】
前記糖ラクトンの糖がグルコースであることを特徴とする請求項3に記載のガドリニウム化合物。
【請求項5】
下記一般式(3)で表されることを特徴とするガドリニウム化合物。
【化3】

(式中、Gは糖ラクトンとアミノ基が反応した残基を表す。)
【請求項6】
前記糖ラクトンの糖が、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、ギュロース、イドース、ガラクトース、タロース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、エリトロース、トレオース、セロビオース、マルトース、ラクトースまたはマルトリオロースから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項5に記載のガドリニウム化合物。
【請求項7】
前記糖ラクトンの糖がグルコースであることを特徴とする請求項6に記載のガドリニウム化合物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のガドリニウム化合物の少なくとも1種を含有することを特徴とするMRI用造影剤。

【公開番号】特開2009−280540(P2009−280540A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−136139(P2008−136139)
【出願日】平成20年5月26日(2008.5.26)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【出願人】(304023318)国立大学法人静岡大学 (416)
【出願人】(504300181)国立大学法人浜松医科大学 (96)
【Fターム(参考)】