説明

ガラスの曇りを防ぐための方法

本発明は、薬学的組成物を凍結乾燥する間のガラスの曇りを防止するための、約10°を超える接触角を有するガラス容器の使用に関する。薬学的組成物は、治療薬及び界面活性剤を含む。それぞれのガラス容器及び薬学的組成物を凍結乾燥するための方法もまた開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬学的組成物を凍結乾燥する間のガラスの曇りを防止するための、10°を超える接触角を有するガラス容器の使用に関する。その薬学的組成物は、治療薬及び界面活性剤を含む。それぞれのガラス容器及び薬学的組成物を凍結乾燥するための方法もまた開示される。
【0002】
潜在的な安定性の問題が原因で、液体形態の薬学的組成物を貯蔵することは多くの場合に望ましくない。液体製剤の中には低温で貯蔵しなければならないものがある。液体形態で貯蔵中に劣化するものもある。これらの問題を克服する一つの可能性は、その薬学的組成物を凍結乾燥することである。薬学的組成物は乾燥形態で輸送及び貯蔵され、次にそれを使用前に元に戻さ(還元し)なければならない。
【0003】
しかし特に活性薬剤がタンパク質の場合、凍結乾燥工程自体が、薬学的組成物の性質の劣化を招くおそれがある。薬学的組成物の活性低下を防ぐために、界面活性剤と同様にある種の糖のような凍結保護剤が、一般に薬学的組成物に添加される。
【0004】
本発明者らは、界面活性剤を含有する薬学的組成物が、場合によっては充填後のバイアルの壁を這い上がるおそれがあることを観察した。そのような薬学的組成物を凍結乾燥すると、薬学的組成物がバイアルの壁に残留し、バイアルに「曇った」外観を与える。そのようなバイアル2個を図1に示す。実際の充填レベルを明確に認めることができる。ガラスバイアル内面の「曇った」領域は、薬学的組成物がこの充填レベルを超えて這い上がり、バイアルの肩に達したことを示す。続いてバイアルが凍結乾燥工程を経たとき、薬学的組成物は乾燥し、バイアルの内面に白色残渣が残った。たとえそのような残渣が見かけ上の欠陥とみなされるだけであっても、それがバイアルの目視検査に影響するおそれがあり、バイアルの悪い外観が患者及び医師によって等しく問題にされるおそれがあることから、依然として望ましくない。
【0005】
したがって、ガラスの曇りを防ぐことのできる、薬学的組成物を凍結乾燥するための方法を提供することが、本発明の目的である。
【0006】
本発明の一態様においては、
薬学的組成物を含むガラス容器であって、
前記薬学的組成物が、
(i)治療薬;及び
ii)界面活性剤
を含み、
ガラス容器が、約10°を超える接触角を有するガラス容器に関する。
【0007】
さらなる本発明の一態様においては、薬学的組成物を凍結乾燥するための方法であって、
(a)約10°を超える接触角を有するガラス容器を提供する段階;
(b)
(i)治療薬;及び
(ii)界面活性剤
を含む薬学的組成物をそのガラス容器に導入する段階;並びに
(c)凍結乾燥を行う段階
を含む方法に言及する。
【0008】
ガラスの曇りを防止又は低減するための方法であって、
(a)約10°を超える接触角を有するガラス容器を提供する段階;
(b)
(i)治療薬;及び
(ii)界面活性剤
を含む薬学的組成物をそのガラス容器に導入する段階;並びに
(c)凍結乾燥を行う段階
を含む方法もまた提供される。
【0009】
本発明のなお別の一態様においては、
薬学的組成物を凍結乾燥する間のガラスの曇りを防止又は低減するための、約10°を超える接触角を有するガラス容器の使用であって、
前記薬学的組成物が
(i)治療薬;及び
(ii)界面活性剤
を含むガラス容器の使用を目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】ガラスの曇りを示している2個のバイアルの写真である。
【図2】ガラスバイアルの壁を這い上がっている液体の写真である。1枚目の写真は液体の充填を開始した20秒後に、2枚目の写真は32秒後に、3枚目の写真は54秒後に撮影した。
【図3】接触角の略図である。
【図4】バイアルの肩まで典型的なガラスの曇りを示しているロット070820Gのバイアルである。
【図5】ガラスの曇りを示していないロット050530Vのバイアルである。
【図6】ガラスの曇りを示していないロット7819のバイアルである。
【0011】
治療薬及び界面活性剤を含む薬学的組成物を液体形態でガラス容器に充填する場合、薬学的組成物がガラス容器の内壁を這い上がることにより、薬学的組成物の充填高さよりも高い高さでガラス容器の内壁に存在することがある。続いて、ガラス容器の内容物を凍結乾燥に供する場合、薬学的組成物の残渣が充填高さよりも高い高さでガラス容器の壁に残留するおそれがある。この効果は、本出願において「ガラスの曇り」と呼ばれる。理論に縛られることを望むわけではないが、この効果は毛管力によって引き起こされうると考えられる。
【0012】
本発明において「充填高さ」は、薬学的組成物がその体積を基にガラス容器中で達すると予想される高さを表す。
【0013】
本発明者らは、驚くことに約10°を超える、好ましくは少なくとも約15°、さらに好ましくは少なくとも約20°、最も好ましくは少なくとも約25°の接触角を有するガラス容器が採用される場合に、ガラスの曇りを防止又は低減できることを見出した。接触角は、蒸留水を使用してDIN EN ISO/IEC17025によって測定される。接触角θは、気液界面が固体表面に接する角として定義される。接触角を図3に概略的に図解する。
【0014】
容器のガラス材料は、それが約10°を超える接触角を有する限り、特に限定されない。典型的にはガラスは、ISO719によりクラスHGB1の耐加水分解性ガラスとして分類されるタイプIのガラスである。望ましくはそのガラスは、DIN12116によるクラスS1の耐酸性も有する。耐アルカリ性は、好ましくはISO695によるクラスA2又はクラスA1のいずれかである。
【0015】
適切なガラスの1種類はホウケイ酸ガラスである。それは、約3〜約8重量%の、酸化ナトリウム(NaO)及び酸化カリウム(KO)などのアルカリ金属酸化物、約1〜約7重量%の酸化アルミニウム(Al)、最大約5重量%のアルカリ土類金属酸化物、約70〜約85重量%のシリカ(SiO)、及び約7〜約15重量%の酸化ホウ素(B)を含みうる。そのガラスは、典型的にはISO7991による平均線膨張係数(α(20℃、300℃))を約3〜約6・10−6−1の範囲で有する。ガラス転移温度Tgは、好ましくは約510〜約600℃の範囲である。ガラスの密度は、普通、25℃で約2.1〜約2.4g/cm3の範囲である。
【0016】
ホウケイ酸ガラスは、Duran(登録商標)、Pyrex(登録商標)、Ilmabor(登録商標)、Simax(登録商標)、Fiolax(登録商標)及びBORO-8330(商標)の商品名で市販されている。好ましくはFiolax(登録商標)、BORO-8330(商標)及びDuran(登録商標)ガラスが採用される。
【0017】
ガラスの表面は、場合により改質することができる。例えば、様々な供給業者から入手可能なシリコナイジングされたホウケイ酸ガラスを採用することが可能である。物理処理(例えば焼戻し)又は化学処理(例えばフッ素−又はシラン−ベースのコーティング)などの、約10°を超える接触角を有する表面を生じる表面改質の任意の他の方法もまた可能である。
【0018】
ガラス容器は、薬学的組成物を中に入れるためであるので、通常の医療規格に適合しなければならない。したがって、薬学的組成物を充填する前に、規定された方法によりガラス容器を洗浄し、発熱物質を除去(depyrogenize)しなければならない。そのような方法には、EU及びUSの優良医薬品製造基準が挙げられる。
【0019】
本発明者らは、ガラス容器の接触角が、ガラスの組成、ガラスが容器に形成される方法、洗浄及び発熱物質除去の方法に加えてコーティングなどのいくつかのパラメーターによって影響されうると判定した。たとえガラスの組成が同じであっても、例えばガラス容器が異なる形成処理又は異なる発熱物質除去手順に供されるならば、2個の容器の接触角が異なる可能性がある。したがって、ガラスの曇り易さは、洗浄され発熱物質が除去されたガラス容器が、薬学的組成物で充填された状態を基に評価しなければならない。
【0020】
薬学的組成物は、少なくとも1種類の治療薬及び少なくとも1種類の界面活性剤を含む。
【0021】
凍結乾燥することのできる任意の治療薬を本発明に採用することができる。典型的には治療薬は、タンパク質、ペプチド及び/又は核酸を含むが、本発明はそれに限定されない。
【0022】
本発明の意味の中で「タンパク質」は、三次及び/又は四次構造を示す任意のアミノ酸配列である。典型的にはタンパク質は、少なくとも約5kD、好ましくは少なくとも約50kDの分子量を有する。タンパク質には、1本鎖タンパク質だけでなく、複合体並びに結合した抗体重鎖及び軽鎖のような結合タンパク質及び結合ペプチドが含まれる。タンパク質の例には、リポタンパク質、酵素(活性化因子及び阻害因子を含む)、ホルモン、レセプター、リガンド、抗体(モノクローナル及びポリクローナル抗体、多重特異性(例えば二重特異性)抗体、抗体の融合タンパク質、抗体フラグメント又は当技術分野で公知の共有結合性修飾又は同時発現のいずれかによって産生された他のタンパク質を含む)、サイトカイン、リンホカイン、調節タンパク質、ワクチン、シグナル伝達分子、シャペロン、及び生物学的活性フラグメント又は上記の変異体が挙げられる。
【0023】
好ましいタンパク質は、抗体、特にモノクローナル抗体である。「抗体」という用語は、本発明において最も広い意味で使用され、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ダイアボディー(diabody)、ヒト化抗体、CDR−グラフト抗体、1本鎖抗体、二重特異性ハイブリッド抗体のような多重特異性抗体、完全ヒト抗体に加えて、Fabフラグメント、個別のCDR領域などの抗体フラグメントに及ぶ。
【0024】
「抗体」という用語は、本明細書において「抗体分子」という用語と同義的に使用され、本発明の文脈で完全な免疫グロブリン分子のような抗体分子、例えばIgM、IgD、IgE、IgA、又はIgGl、IgG2、IgG2b、IgG3若しくはIgG4のようなIgGに加えて、Fab−フラグメント、Fab’−フラグメント、F(ab)−フラグメント、キメラF(ab)若しくはキメラFab’フラグメント、キメラFab−フラグメント又は単離されたVH−若しくはCDR−領域(前記単離されたVH−若しくはCDR−領域は、例えば対応する「フレームワーク」に組込み又は操作されるべきものである)のような、そのような免疫グロブリン分子の部分を含む。したがって、「抗体」という用語は、1本鎖抗体又は1本鎖Fvフラグメント(scAB/scFv)又は二重特異性抗体構築物のような、免疫グロブリンの公知のアイソフォーム及び改変物も含む。そのようなアイソフォーム又は改変物の具体例は、VH−VL又はVL−VH5形式のsc(1本鎖)抗体でありうる。例えばVH−VL−VH−VL、VL−VH−VH−VL、VH−VL−VL−VHの形式の二重特異性scFvも予想される。「抗体」という用語には、ダイアボディー及び少なくとも1個の抗原結合部分/ペプチドに結合したビヒクルとして抗体のFcドメインを含む分子、例えば国際公開公報第00/24782号記載のペプチボディー(peptibody)も含まれる。抗体/抗体分子の混合物もまた採用できることは、明らかである。
【0025】
「抗体フラグメント」は、それ自体がエフエクター機能(ADCC/CDC)を提供することができないが、適切な抗体定常ドメインと組み合わせた後に本発明による方法でこの機能を提供するフラグメントも含む。薬学的組成物に含まれうる抗体は、リコンビナント産生された抗体であってもよい。これらは、哺乳動物細胞培養系、例えばCHO細胞において産生させることができる。抗体分子は、一連のクロマトグラフィー段階及び濾過段階によりさらに精製することができる。
【0026】
本明細書に使用される「モノクローナル抗体」という用語は、単一のアミノ酸組成の抗体分子調製物を表す。したがって、「ヒトモノクローナル抗体」という用語は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列由来の可変領域及び定常領域を有する、単一の結合特異性を示す抗体を表す。一態様では、ヒトモノクローナル抗体は、ヒト重鎖導入遺伝子及び軽鎖ヒト導入遺伝子を含むゲノムを有するトランスジェニック非ヒト動物、例えばトランスジェニックマウスから得られたB細胞が不死化細胞と融合されたものを含むハイブリドーマによって産生される。
【0027】
「キメラ抗体」という用語は、ある起源又は種からの可変領域、すなわち結合領域、及び別の起源又は種由来の定常領域の少なくとも一部分を含むモノクローナル抗体であって、通常はリコンビナントDNA技法によって調製されたモノクローナル抗体を表す。マウス可変領域及びヒト定常領域を含むキメラ抗体が特に好ましい。そのようなマウス/ヒトキメラ抗体は、マウス免疫グロブリン可変領域をコードするDNAセグメント及びヒト免疫グロブリン定常領域をコードするDNAセグメントを含む、発現した免疫グロブリン遺伝子の産物である。本発明によって包含される他の形態の「キメラ抗体」は、クラス又はサブクラスが本来の抗体から改変または変更されたものである。そのような「キメラ」抗体は、「クラススイッチ抗体」とも呼ばれる。キメラ抗体を産生させるための方法は、現在、当技術分野において周知の、従来のリコンビナントDNA技法及び遺伝子トランスフェクション技法、例えばMorrison, S. L. et al., Proc. Natl. Acad Sci. USA 81 (1984) 6851-6855;米国特許第5,202,238号及び同第5,204,244号を含む。
【0028】
「ヒト化抗体」という用語は、フレームワーク領域又は「相補性決定領域」(CDR)が、親免疫グロブリンの特異性と異なる特異性の免疫グロブリンのCDRを含むように改変された抗体を表す。好ましい態様では、マウスCDRをヒト抗体のフレームワーク領域にグラフトして「ヒト化抗体」が調製される(例えば、Riechmann, L. et al., Nature 332 (1988) 323-327;及びNeuberger, M.S. et al., Nature 314 (1985) 268-270)。特に好ましいCDRは、キメラ抗体及び二機能性抗体について上に言及された抗原認識配列を示すCDRに相当する。
【0029】
本明細書において使用される「ヒト抗体」という用語は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列由来の可変領域及び定常領域を有する抗体を含むことが意図される。
【0030】
本明細書において使用される「リコンビナントヒト抗体」という用語は、SP2−0、NSO若しくはCHO細胞(CHO Klなど)のようなホスト細胞若しくはヒト免疫グロブリン遺伝子に関してトランスジェニックな動物(例えばマウス)から単離された抗体、又はホスト細胞にトランスフェクションされたリコンビナント発現ベクターを使用して発現された抗体などの、リコンビナント手段によって調製、発現、創出又は単離された全てのヒト抗体を含むことが意図される。そのようなリコンビナントヒト抗体は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列由来の可変領域及び定常領域を再編成された形で有する。リコンビナントヒト抗体は、インビボ体細胞超変異に供されることがある。したがって、リコンビナント抗体のVH及びVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖細胞系VH及びVL配列に由来しそれに関係するものの、インビボでヒト抗体生殖細胞系レパートリーの中に自然には存在しないことがある配列である。
【0031】
様々な態様において、抗体は、ヒュミラ(アダリムマブ)、シナジス(パリビズマブ)、AMG714(抗IL15抗体)、ベクティビックス(パニツムマブ)、リツキサン(リツキシマブ)、ゼヴァリン(イブリツモマブチウキセタン)、抗CD80モノクローナル抗体(mAb)(ガリキシマブ)、抗CD23mAb(ルミリキシマブ)、M200(ボロシキシマブ(volociximab))、抗Cripto mAb、抗BR3 mAb、抗IGFIR mAb、Tysabri(ナタリズマブ)、ダクリズマブ、ヒト化抗CD20 mAb(オクレリズマブ)、可溶性BAFFアンタゴニスト(BR3−Fc)、抗CD40L mAb、抗TWEAK mAb、抗IL5レセプターmAb、抗ガングリオシドGM2 mAb、抗FGF8 mAb、抗VEGFR/Flt−1 mAb、抗ガングリオシドGD2 mAb、Actilyse(登録商標)(アルテプラーゼ)、Metalyse(登録商標)(テネクテプラーゼ)、CAT−3888及びCAT−8015(抗CD22 dsFv−PE38コンジュゲート)、CAT−354(抗IL13 mAb)、CAT−5001(抗メソテリンdsFv−PE38コンジュゲート)、GC−1008(抗TGF−[β] mAb)、CAM−3001(抗GM−CSFレセプターmAb)、ABT−874(抗IL12 mAb)、Lymphostat B(ベリムマブ(Belimumab);抗BlyS mAb)、HGS−ETRl(マパツムマブ(mapatumumab);ヒト抗TRAILレセプター−1 mAb)、HGS−ETR2(ヒト抗TRAILレセプター−2 mAb)、ABthrax(商標)(ヒト、抗防御抗原(B. anthracis由来)mAb)、MYO−029(ヒト抗GDF−8 mAb)、CAT−213(抗エオタキシンl mAb)、Erbitux(セツキシマブ)、エピラツズマブ、レミケード(インフリキシマブ;抗TNF mAb)、ハーセプチン(トラスツズマブ(traztusumab))、マイロターグ(ゲムツズマブオゾガマイシン)、ベクティビックス(パニツムマブ(panatumamab))、ReoPro(アブシキシマブ)、アクテムラ(抗IL6レセプターmAb)、HuMax-CD4(ザノリムマブ)、HuMax-CD20(オファツムマブ)、HuMax-EGFr(ザルツムマブ)、HuMax-Inflam、R1507(抗IGF−lR mAb)、HuMax HepC、HuMax CD38、HuMax-TAC(抗IL2Ra又は抗CD25 mAb)、HuMax-ZP3(抗ZP3 mAb)、Bexxar(トシツモマブ)、オルソクローンOKT3(ムロモナブ−CD3)、MDX−010(イピリムマブ)、抗CTLA4、CNTO148(ゴリムマブ;抗TNF[α]性炎症mAb)、CNTO1275(抗IL12/IL23 mAb)、HuMax-CD4(ザノリムマブ)、HuMax-CD20(オファツムマブ)、HuMax-EGFR(ザルツムマブ)、MDX−066(CDA−I)及びMDX−1388(抗C difficile毒素A及び毒素B C mAbs)、MDX−060(抗CD30 mAb)、MDX−018、CNTO95(抗インテグリンレセプターmAb)、MDX−1307(抗マンノースレセプター/hCG[β] mAb)、MDX−1100(抗IPIO潰瘍性大腸炎mAb)、MDX−1303(Valortim(商標))、抗B. anthracis炭疽、MEDI−545(MDX−1103、抗IFN[α])、MDX−1106(ONO−4538;抗PDl)、NVS抗体#1、NVS抗体#2、FG−3019(抗CTGF特発性肺線維症第I相試験、Fibrogen)、LLY抗体、BMS−66513、NI−0401(抗CD3 mAb)、IMC−18F1(VEGFR−I)、IMC−3G3(抗PDGFR[α])、MDX−1401(抗CD30)、MDX−1333(抗IFNAR)、シナジス(パリビズマブ;抗RSV mAb)、Campath(アレムツズマブ)、ベルケイド(ボルテゾミブ)、MLN0002(抗α4β7 mAb)、MLN1202(抗CCR2ケモカインレセプターmAb)、シムレクト(バシリキシマブ)、prexige(ルミラコキシブ)、ゾレア(オマリズマブ)、ETI211(抗MRSA mAb)、Zenapax(ダクリズマブ)、アバスチン(ベバシズマブ)、MabTheraRA(リツキシマブ)、ゼヴァリン(イブリツモマブチウキセタン)、ゼチーア(エゼチミブ)、Zyttorin(エゼチミブ及びシンバスタチン)、NI−0401(ヒト抗CD3)、アデカツムマブ、ゴリムマブ(抗TNF[α]mAb)、エピラツズマブ、ゲムツズマブ、Raptiva(エファリズマブ)、Cimzia(セルトリズマブペゴル、CDP870)、(ソリリス)エクリズマブ、ペキセリズマブ(抗C5補体)、MEDI−524(Numax)、ルセンティス(ラニビズマブ)、17−IA(パノレックス(Panorex))、Trabio(レルデリムマブ(lerdelimumab))、TheraCim hR3(ニモツズマブ(Nimotuzumab))、Omnitarg(ペルツズマブ)、Osidem(IDM−I)、OvaRex(B43.13)、Nuvion(ビジリズマブ)、抗CD40L mAb(IDEC−131)、Xanelim(ヒト化抗CD1 Ia)及びカンツズマブ(Cantuzamab)から成る群より選択される。
【0032】
薬学的組成物中の治療薬の濃度は、その治療薬及びそれの意図される使用に依存する。典型的には、その濃度は、約0.01〜約200mg/mlの範囲、好ましくは約1〜約200mg/mlの範囲である。
【0033】
薬学的組成物は、界面活性剤もまた含む。本明細書に使用される「界面活性剤」という用語は、撹拌及び剪断のような機械的ストレスに対してタンパク質製剤を保護するために使用される、薬学的に許容されうる賦形剤を意味する。界面活性剤は、陰イオン型、非イオン型又は陽イオン型でありうる。特に非イオン型界面活性剤がガラスの曇りを招くおそれがあるので、好ましくはこれらの非イオン型界面活性剤が本発明に採用される。薬学的に許容されうる界面活性剤の例には、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(Tween、ポリソルベート)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(Brij)、アルキルフェニルポリオキシエチレンエーテル(Triton-X)、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー(Poloxamer、Pluronic)、及びドデシル硫酸ナトリウム(SDS)が挙げられる。ガラスの曇りを最も引き起こすおそれのある界面活性剤は、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルである。好ましい例は、10〜30個のポリオキシエチレン基を有する。脂肪酸は、好ましくは10〜22個の炭素原子を有する。例には、ポリソルベート20(Tween 20(商標)の商標で販売されているポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート)及びポリソルベート80(Tween 80(商標)の商標で販売されているポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート)が挙げられる。好ましいポリエチレン−ポリプロピレンコポリマーは、Pluronic(登録商標)F68又はPoloxamer 188(商標)の名前で販売されているものである。好ましいポリオキシエチレンアルキルエーテルは、Brij(商標)の商標で販売されているものである。好ましいアルキルフェノールポリオキシエチレンエステルは、Triton-Xの商品名で販売されている。界面活性剤は、一般的に約0.001〜約1%、好ましくは約0.005〜約0.1%、さらに好ましくは約0.01%〜約0.04%(重量/体積)の濃度範囲で使用される。
【0034】
薬学的組成物は、また、治療薬及び界面活性剤に加えて任意の他の薬学的に許容されうる成分を含有することがある。例には、緩衝剤、担体、賦形剤、溶媒及び共存溶媒、抗酸化剤、キレート剤、安定化剤、張性(浸透圧)調節剤(tonicity agent)、保存料、湿潤剤、乳化剤、分散剤などが挙げられる。これらの成分は、例えばRemington's Pharmaceutical Sciences、17th editionに記載されている。
【0035】
薬学的組成物は、液体の形態で、典型的には水溶液の形態でガラス容器中に提供される。
【0036】
治療薬の性質に応じて、治療薬が安定な範囲に薬学的組成物のpHを調整することが必要なことがある。例えばタンパク質は、多くの場合に狭いpH範囲で安定なことから、物理及び/又は化学分解を避けるために、pHをしかるべく適合させるべきである。必要に応じて、緩衝化剤を採用してもよい。本明細書において使用される「緩衝剤」という用語は、薬学的製剤のpHを安定化する、薬学的に許容されうる賦形剤を意味する。適切な緩衝剤は、当技術分野において周知であり、文献に記載されている。好ましい薬学的に許容されうる緩衝剤は、非限定的に、ヒスチジン緩衝剤、クエン酸緩衝剤、コハク酸緩衝剤、酢酸緩衝剤及びリン酸緩衝剤を含む。さらに好ましい緩衝剤は、L−ヒスチジン又はL−ヒスチジン混合物及びL−ヒスチジン塩酸塩を含み、当技術分野において公知の酸又は塩基でpHが調整される。上記緩衝剤は、存在する場合、一般的に約1mM〜約100mM、好ましくは約5mM〜約50mM、さらに好ましくは約10〜約20mMの量で使用される。使用される緩衝剤とは無関係に、当技術分野において公知の酸又は塩基で、例えば塩酸、酢酸、リン酸、硫酸、クエン酸、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムで、pHを約4.0〜約7.0、好ましくは約5.0〜約6.5、さらに好ましくは約5.5〜約6.0の値に調整することができる。
【0037】
一連の化合物を安定化剤として使用することができる。「安定化剤」という用語は、製造、貯蔵及び適用の間に化学及び/又は物理分解から治療薬及び/又は製剤を保護する、薬学的に許容されうる賦形剤を意味する。医薬品の化学及び物理分解経路は、Cleland et al. (1993), Crit. Rev. Ther. Drug Carrier Syst. 10(4):307-77、Wang (1999) Int. J. Pharm. 185(2):129-88、Wang (2000) Int. J. Pharm. 203(l-2):l-60及びChi et al. (2003) Pharm. Res. 20(9):1325-36によって総説されている。安定化剤には、非限定的に、糖、アミノ酸、ポリオール、シクロデキストリン、例えばヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、スルホブチルエチル−β−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、ポリエチレングリコール、例えばPEG3000、PEG3350、PEG4000、PEG6000、アルブミン、ヒト血清アルブミン(HSA)、ウシ血清アルブミン(BSA)、塩、例えば塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、及びキレート剤、例えばEDTAが挙げられる。安定化剤は、製剤中に約1〜約500mMの量で、好ましくは約10〜約300mMの量で、さらに好ましくは約100mM〜約300mMの量で存在しうる。
【0038】
本明細書において使用される「糖」という用語は、モノサッカリド又はオリゴ糖を意味する。モノサッカリドは、単糖及びそれらの誘導体、例えばアミノ糖を含めた、酸によって加水分解可能でない単量体性糖質である。モノサッカリドの例には、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、ソルボース、リボース、デオキシリボース及びノイラミン酸が挙げられる。オリゴ糖は、一つを超える単量体性糖ユニットがグリコシド結合により分岐して又は鎖状のいずれかで繋がったものから成る糖質である。オリゴ糖中の単量体性糖ユニットは、同一であっても異なっていてもよい。単量体性糖ユニットの数に応じて、オリゴ糖は、二、三、四、五糖などである。多糖とは対照的に、単糖及びオリゴ糖は水溶性である。オリゴ糖の例には、スクロース、トレハロース、ラクトース、マルトース及びラフィノースが挙げられる。好ましい糖は、スクロース及びトレハロースであり、最も好ましいのはトレハロースである。
【0039】
本明細書において使用される「アミノ酸」という用語は、カルボキシル基に対してα−位に位置するアミノ部分を有する、薬学的に許容されうる有機分子を意味する。アミノ酸の例には、アルギニン、グリシン、オルニチン、リシン、ヒスチジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、イソロイシン、ロイシン、アラニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、メチオニン、セリン及びプロリンが挙げられる。アミノ酸は、一般的に約10〜約500mMの量で、好ましくは約10〜約300mMの量で、さらに好ましくは約100〜約300mMの量で使用される。
【0040】
本明細書において使用される「ポリオール」という用語は、1個を超えるヒドロキシ基を有する薬学的に許容されうるアルコールを意味する。適切なポリオールは、非限定的に、マンニトール、ソルビトール、グリセリン、デキストラン、グリセロール、アラビトール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、及びその組み合わせを含む。ポリオールは、約10mM〜約500mMの量で、好ましくは約10〜約300mMの量で、さらに好ましくは約100〜約300mMの量で使用することができる。
【0041】
凍結保護剤は、安定化剤の中の一サブグループである。「凍結保護剤」という用語は、不安定な活性成分(例えばタンパク質)を凍結乾燥工程、その後の貯蔵及び元に戻す(還元する)間の不安定化条件から保護する、薬学的に許容されうる賦形剤を意味する。凍結保護剤は、非限定的に、糖、ポリオール(例えば糖アルコール)及びアミノ酸から成る群を含む。好ましい凍結保護剤は、糖(スクロース、トレハロース、ラクトース、グルコース、マンノース、マルトース、ガラクトース、フルクトース、ソルボース、ラフィノース、及びノイラミン酸)、アミノ糖(グルコサミン、ガラクトサミン、及びN−メチルグルコサミン(「メグルミン」)など)、ポリオール(マンニトール及びソルビトールなど)、及びアミノ酸(アルギニン及びグリシンなど)から成る群より選択することができる。凍結保護剤は、一般的に約10〜約500mMの量で、好ましくは約10〜約300mMの量で、さらに好ましくは約100〜約300mMの量で使用される。
【0042】
抗酸化剤は、安定化剤の中の一サブグループである。「抗酸化剤」という用語は、活性な薬学的成分の酸化を防止する薬学的に許容されうる賦形剤を意味する。抗酸化剤は、非限定的に、アスコルビン酸、グルタジオン(glutadione)、システイン、メチオニン、クエン酸、及びEDTAを含む。抗酸化剤は、約1〜約100mMの量で、好ましくは約5〜約50mMの量で、さらに好ましくは約5〜約20mMの量で使用することができる。
【0043】
本明細書において使用される「張性調節剤」という用語は、薬学的に許容されうる張性(浸透圧性)調節剤を意味する。張性調節剤は、製剤の張性を調整(モデュレーション)するために使用される。一般に等張性(等浸透圧性)は、比較上の溶液に対する浸透圧に関する。本発明による製剤は、低張性(低浸透圧性)、等張性又は高張性(高浸透圧性)でありうるが、好ましくは等張性である。等張性製剤は、液体、又は固体形態から、例えば凍結乾燥された形態から元に戻(還元)された液体であり、生理食塩水又は血清などの比較される何か他の溶液と同じ張性(浸透圧性)を有する溶液を意味する。適切な張性調節剤は、非限定的に、塩化ナトリウム、塩化カリウム、グリセリン及びアミノ酸又は糖の群からの任意の成分を含む。張性調節剤は、一般的に約5mM〜約500mMの量で使用される。好ましい薬学的組成物において、張性調節剤の量は、約50mM〜約300mMの範囲である。
【0044】
安定化剤及び張性調節剤の中に、両者の方式で機能しうる一群の化合物があり、言い換えればそれらの化合物は、同時に安定化剤であって張性調節剤である。その例は、糖、アミノ酸、ポリオール、シクロデキストリン、ポリエチレングリコール及び塩の群から見出すことができる。同時に安定化剤であって張性調節剤でありうる糖の一例は、トレハロースである。
【0045】
組成物は、また、保存料、湿潤剤、乳化剤及び分散剤などの佐剤(補助剤)を含有することがある。微生物の存在防除は、滅菌手順と、様々な抗細菌剤及び抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などの組み入れとの両方によって確実にすることができる。保存料は、一般的に約0.001〜約2%(w/v)の量で使用される。保存料は、非限定的に、エタノール、ベンジルアルコール、フェノール、m−クレゾール、p−クロル−m−クレゾール、メチルパラベン又はプロピルパラベン、及び塩化ベンザルコニウムを含む。
【0046】
好ましい薬学的組成物は:
約0.01〜約200mg/mlのタンパク質;
0〜約100mMの緩衝剤;
約0.001〜約1%の界面活性剤;並びに
約1〜約500mMの安定化剤及び/又は約5〜約500mMの張性調節剤
を含む。
【0047】
さらに好ましい態様では、薬学的組成物は:
約1〜約200mg/mlの抗体;
0〜約100mMの緩衝剤;
約0.001〜約1%の界面活性剤;並びに
約1〜約500mMの安定化剤及び/又は約5〜約500mMの張性調節剤
を含む。
【0048】
これらの製剤のpHは、好ましくは約4.0〜約7.0である。
【0049】
明確にする理由で、本明細書に示される濃度は、凍結乾燥前にガラス容器に充填される液体の濃度に関することを強調する。したがって、凍結乾燥された製剤は、結果として生じる元に戻(還元)された製剤が本明細書に記載される濃度で各成分を含むような方法で、凍結乾燥物から元に戻す(還元する)ことができる。しかしながら、結果として生じる、元に戻(還元)された製剤の濃度がより高いまたは低くなるような量の元に戻す(還元)媒質を使用して凍結乾燥物を元に戻す(還元する)ことができることも、技術者にとって明らかである。
【0050】
薬学的組成物に関連して本明細書において使用される「液体」という用語は、大気圧下で少なくとも約2〜約8℃の温度で液体である組成物を意味する。
【0051】
薬学的組成物に関連して本明細書において使用される「凍結乾燥物」という用語は、それ自体が当技術分野において公知の凍結乾燥法によって製造された組成物を意味する。溶媒(例えば水)は、凍結に続く真空下の昇華及び高温での残留水の脱着によって除去される。凍結乾燥物は、通常は約0.1〜約5%(w/w)の残留水分含量を有し、粉末又は物理的に安定なケークとして存在する。凍結乾燥物は、元に戻す(還元)媒質の添加後に迅速に溶解するという特徴をもつ。
【0052】
薬学的組成物に関連して本明細書において使用される「元に戻(還元)された製剤」という用語は、凍結乾燥され、元に戻す(還元)媒質の添加によって再溶解された組成物を意味する。元に戻す(還元)媒質は、非限定的に注射用水(WFI)、注射用静菌水(BWFI)、塩化ナトリウム溶液(例えば約0.9%(w/v) NaCl)、グルコース溶液(例えば約5%グルコース)、界面活性剤含有溶液(例えば約0.01%ポリソルベート20)、及びpH緩衝溶液(例えばリン酸緩衝溶液)を含みうる。
【0053】
凍結乾燥は上記液体薬学的組成物をガラス容器に充填すること、及び当技術分野において周知の従来技法により凍結乾燥を行うことによって実施される。凍結乾燥は、通常は3段階、すなわち凍結、一次乾燥及び二次乾燥で行われる。
【0054】
凍結段階の間に液体薬学的組成物は、通常は共融点未満である温度まで冷却される。この段階の間の温度は、典型的には約−10℃〜約−80℃、好ましくは約−20℃〜約−60℃である。この段階の間に、典型的には大気圧が採用される。
【0055】
一次乾燥段階では、溶媒を昇華させるために、温度を一般的に上昇させ、圧力を低下させる。温度は、好ましくは約−40℃〜約+50℃、好ましくは約−30℃〜約+40℃である。圧力は、約3Pa〜約80Pa、好ましくは約5Pa〜約60Paである。一次乾燥段階は、通常は、溶媒の少なくとも約90%が除去されるまで行われる。
【0056】
二次乾燥段階の間に、温度をさらに例えば約10℃〜約50℃、好ましくは約20℃〜約40℃に上昇させることによってより多くの溶媒を除去する。圧力は、約3Pa〜約40Pa、好ましくは約5Pa〜約30Paである。二次乾燥段階が完了すると、凍結乾燥物の水分含量は、通常は最大約5%である。
【0057】
場合により、凍結段階の前に、温度を約2℃〜約10℃に低下させる予冷段階がある。
【0058】
ガラス容器の壁の疎水性により、約10°未満の接触角を有する従来のガラス容器を使用した凍結乾燥に比べてガラスの曇りを防止又は顕著に低減することができる。したがって本発明は、患者及び医師にとって等しく高度に許容されうる外観を有する、凍結乾燥された薬学的組成物を調製するための簡便で好都合な方法を提供する。
【0059】
本発明を以下の実施例により例示するが、それらの実施例を限定するものとみなしてはならない。本明細書にわたり特に示さない限り、全てのパーセントは重量パーセントである。
【0060】
実施例
約25mg/mlの抗IGF−1Rヒトモノクローナル抗体、20mMのL−ヒスチジン、250mMのトレハロース、及び0.01%のポリソルベート20をpH5.5で含有する薬学的組成物に0.22μmのフィルターを通過させてそれを濾過滅菌し、ガラス容器に無菌充填する。次に、ETFE(エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体)コーティングしたゴム栓でバイアルにある程度まで栓をし、表1に記録した凍結乾燥サイクルを利用して凍結乾燥した。
【0061】
(「抗IGF−1Rヒトモノクローナル抗体」又は「huMAb IGF−IR」という用語には、国際公開公報第2005/005635号に記載されたような抗体が含まれる。)
【0062】
【表1】

【0063】
薬学的組成物をまず室温から約5℃まで冷却し(予冷)、それに続いて約1℃/minのプレート冷却速度で−40℃の凍結段階を行い、続いて−40℃で約2時間の保持段階を行った。最初の乾燥段階は、約−25℃のプレート温度及び約80μbarのチャンバー圧で約76時間行った。続いて、−25℃から25℃まで0.2℃/minの温度上昇速度で第二の乾燥段階を開始し、続いて約80μbarのチャンバー圧で25℃で少なくとも5時間の保持段階を行った。
【0064】
凍結乾燥は、LyoStar II凍結乾燥機(FTS Systems, Stone Ridge, NY, USA)又はUsifroid SMH-200凍結乾燥機(Usifroid, Maurepas, France)で実施した。次に、凍結乾燥されたバイアルをガラスの曇りについて目視検査した。
【0065】
本実施例で以下のバイアルを採用した。
【0066】
【表2】

【0067】
熱膨張率は、10−6−1の単位で示す。
【0068】
実施例1:LyoStar II凍結乾燥機で行った研究
LyoStar II凍結乾燥機で行った研究において、接触角によって説明されるような異なる濡れ性を有する、異なるロットのバイアルに、薬学的組成物を充填した。バイアルが13本だけ入手可能であったロット071001V以外のバイアルの各ロットについて、40本のバイアルに充填し、ある程度まで栓をし、上記サイクルにより凍結乾燥した。凍結乾燥後に、ガラスの曇りについてバイアルを目視検査した。
【0069】
【表3】


【0070】
ロット番号070820Gの全てのバイアルでガラスの曇りが見出されたが、残りのロットのバイアルはガラスの曇りを示さなかった。小さな接触角によって説明されるように、ロット番号070820Gのバイアルは、ガラスの曇りを招く高度の濡れを有した。
【0071】
図4は、バイアルの肩まで典型的なガラスの曇りを示しているロット070820Gのバイアルを示す。ガラスの曇りを示さないロット050530Vのバイアル及びロット7819のバイアルをそれぞれ図5及び6に示す。
【0072】
実施例2:Usifroid SMH-200凍結乾燥機で行った研究
Usifroid SMH-200凍結乾燥機で行った研究について、接触角によって説明されるような異なる濡れ性を有する、異なる3ロットのバイアル(表4参照)を、Bosch RUR L02バイアル洗浄機で洗浄し、Bosch TSQ U03発熱物質除去トンネル中で発熱物質を除去してから、それに薬学的組成物を充填した。充填後に20mLのバイアルにある程度まで栓をし、上記凍結乾燥サイクルにより凍結乾燥した。凍結乾燥後に、ガラスの曇りについてバイアルを目視検査した。
【0073】
【表4】


【0074】
ロット番号080229Gの全てのバイアルではガラスの曇りが見出されたが、残りのロットのバイアルはガラスの曇りを示さなかった。小さな接触角によって説明されるように、ロット番号080229Gのバイアルは、ガラスの曇りを招く高度の濡れを有した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬学的組成物を含むガラス容器であって、
前記薬学的組成物が、
(i)治療薬;及び
(ii)界面活性剤
を含み、
前記ガラス容器が、約10°を超える接触角を有する。
【請求項2】
前記薬学的組成物が、水溶性の組成物の形態である、請求項1記載のガラス容器。
【請求項3】
前記薬学的組成物が、凍結乾燥された形態である、請求項1記載のガラス容器。
【請求項4】
前記治療薬が、タンパク質である、請求項1〜3のいずれか一項記載のガラス容器。
【請求項5】
前記治療薬が、抗体である、請求項4記載のガラス容器。
【請求項6】
前記界面活性剤が、非イオン型界面活性剤である、請求項1〜5のいずれか一項記載のガラス容器。
【請求項7】
前記界面活性剤が、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルである、請求項6記載のガラス容器。
【請求項8】
前記薬学的組成物が:
約0.01〜約200mg/mlのタンパク質;
0〜約100mMの緩衝剤;
約0.001〜約1%の界面活性剤;並びに
約1〜約500mMの安定化剤及び/又は約5〜約500mMの張性調節剤
を含む、請求項1〜7のいずれか一項記載のガラス容器。
【請求項9】
前記薬学的組成物が:
約1〜約200mg/mlの抗体;
0〜約100mMの緩衝剤;
約0.001〜約1%の界面活性剤;並びに
約1〜約500mMの安定化剤及び/又は約5〜約500mMの張性調節剤
を含む、請求項1〜7のいずれか一項記載のガラス容器。
【請求項10】
薬学的組成物を凍結乾燥するための方法であって、
(a)約10°を超える接触角を有するガラス容器を提供する段階;
(b)
(i)治療薬;及び
(ii)界面活性剤
を含む薬学的組成物を前記ガラス容器に導入する段階;並びに
(c)凍結乾燥を行う段階
を含む方法。
【請求項11】
ガラスの曇りを防止又は低減するための方法であって、
(a)約10°を超える接触角を有するガラス容器を提供する段階;
(b)
(i)治療薬;及び
(ii)界面活性剤
を含む薬学的組成物を前記ガラス容器に導入する段階;並びに
(c)凍結乾燥を行う段階
を含む方法。
【請求項12】
薬学的組成物を凍結乾燥する間のガラスの曇りを防止又は低減するための、約10°を超える接触角を有するガラス容器の使用であって、
前記薬学的組成物が
(i)治療薬;及び
(ii)界面活性剤
を含むガラス容器の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−520098(P2012−520098A)
【公表日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−553478(P2011−553478)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【国際出願番号】PCT/EP2010/053974
【国際公開番号】WO2010/115728
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】