説明

ガラスびん

【課題】落下や転倒などでびんに横方向の衝撃が加わった場合でも割れにくく、衝撃に強い広口びんを提供する。
【解決手段】肩部と直胴部の間にテーパ部を設け、テーパ部上端の外径をd2、直胴部の外径をd1としたときに、 0.0017d2≦d1−d2≦0.036d2 口部の外径をd3としたときに、 d3/d1≧0.7 テーパ部の長さをh2、直胴部とテーパ部の合計の長さをh1としたときに、 0.2≦h2/h1≦0.5とすることで、肩部がコンタクトポイントにならず、肩部のガラス強度が劣化せず、割れにくくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬品、化粧品又はジャム製品等に用いて好適な、いわゆる広口のガラスびんに関する。
【背景技術】
【0002】
薬品、化粧品又はジャム製品等に用いるガラスびんはとして、図5に示されるような、広い口部2と、口部2から下方に連続する肩部3と、肩部3から下方に連続する直胴部5と、直胴部5から下方に連続する裾部6を有する形状の、いわゆる広口のガラスびん1’が好まれて使用されている。このような広口びんは、垂直な直胴部を有するので内容物を取り出しやすいうえに、すっきりとしたびん形状を有するからである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
図6は、生産工程ライン上のガラスびん1’の説明図である。同図に示されるように、ガラスびん1’はライン上を互いに接触しながら流れてくるが、この際びんどうしの肩部付近と裾部付近が衝突しやすい(コンタクトポイント)。これにより、びんの肩部付近及び裾部付近に擦り傷が付き、ガラス強度は1/2程度まで劣化する。
【0004】
図7はガラスびん1’が使用中に転倒した場合の説明図であるが、この場合も肩部付近がコンタクトポイントとなり、傷が付きやすい。
【0005】
図8は、ガラスびん1’が垂直に落下した場合の説明図である。びんが垂直に落下し、垂直方法に大きな衝撃力が作用しても、びんの変形は少ないので、びんは割れにくく、大きな強度をもっているといえる。図9はガラスびん1’が横向きで落下した場合の説明図である。この場合、びんの底部付近は変形が少ないのであるが、同図の右側に示すように、口部、肩部付近では変形が大きくなり、その両側で大きな引張応力が発生する。そこで、口部あるいは肩部にコンタクトポイントを有することは好ましくない。図10はガラスびん1’に横方向から衝撃を受けた場合のびんに発生する曲げ応力の説明図で、色の濃い部分ほど大きな曲げ応力が発生していることを表している。同図に示されるように、口部と肩部に曲げ応力が集中している。また、図7に示すように、びんが倒れた場合も、肩部付近に最大負荷が発生する。
【0006】
前記のように、びんの肩部付近と裾部付近のガラス強度は1/2程度まで劣化しているが、びんは大きな応力が発生する肩部で割れやすくなる。この種の広口びんは、口部の径が大きいほど内容物が取り出しやすく、好まれるのであるが、直胴部の外径(d1)に対する口部の外径(d3)が大きくなるほど口部、肩部付近の変形が大きくなり、割れやすくなる。この傾向は、d3/d1が0.7以上になると顕著になる。
【0007】
本発明は、d3/d1が0.7を越える口部の大きな広口びんであって、落下や転倒などでびんに横方向の衝撃が加わった場合でも割れにくく、衝撃に強い新規な形状の広口びんを開発することを課題としてなされたものである。なお、びんが割れるとは、衝撃が加わった部分において、微細なかけらが剥離することも含んでいる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、口部と、該口部から下方に連続する肩部と、該肩部から下方に連続し下方が徐々に拡径するテーパ部と、該テーパ部から下方に連続する直胴部と、直胴部から下方に連続する裾部を有し、
前記テーパ部上端の外径をd2、前記直胴部の外径をd1としたときに、
0.0017d2≦d1−d2≦0.036d2
前記口部の外径をd3としたときに、
d3/d1≧0.7
前記テーパ部の長さをh2、前記直胴部とテーパ部の合計の長さをh1としたときに、
0.2≦h2/h1≦0.5
の関係を有することを特徴とするガラスびんである。
【0009】
本発明において口部の外径とは、口部上端部の外径である。肩部とは、口部から下方に連続して形成され、下方が徐々に拡径し、少なくともその下部が縦断面において外側に凸の曲線となっている部分である。肩部とテーパ部の境目、すなわちテーパ部上端は、縦断面における肩部下部の比較的小さなR(曲率半径)が急激に大きくなる(すなわちテーパ部の部分で、少なくともRが10倍以上、Rが無限大の直線を含む)境目のところである。テーパ部は縦断面において直線でもいいし、緩やかな曲線であってもよい。直胴部は、縦断面において垂直な直線となっている部分である。裾部は直胴部から下方に連続して形成され下方が徐々に縮径して底部に繋がる部分である。
【0010】
d1−d2は0.0017d2〜0.035d2であることが適当である。0.0017d2未満では肩部のガラス強度の劣化を防止する効果が小さく、0.036d2を越えると従来の製品イメージが損なわれ、またびんの外周部にラベルを貼ったときラベルにしわが入るおそれがある。d1−d2の好ましい範囲は0.008d2〜0.035d2、さらに好ましい範囲は0.01d2 ≦d1−d2≦0.018d2である。また、d1−d2の具体的な数値としては、0.0017d2〜0.035d2であるときは0.1〜2.0mm、0.008d2〜0.035d2のときは0.5〜2.0mm、0.01d2 ≦d1−d2≦0.018d2のときは0.6〜1.0mmであることが好ましい。
【0011】
h2/h1は0.2〜0.5が適当である。0.2未満では最大応力位置(肩部)と最大加傷位置(直胴部の最上部)とが接近し、衝撃によってびんが割れやすくなる。0.5を越えると、テーパ部の傾斜角度が小さくなりすぎて肩部が加傷されやすくなり、肩部のガラス強度の劣化を防止する効果が小さくなる。また、h2/h1のさらに好ましい範囲は、0.2〜0.35である。
【0012】
本発明は、d3/d1≧0.7の広口びんを対象としている。d3/d1が0.7に満たないびんは、びんに横方向から衝撃を受けた場合、びん口部には大きな負荷がかかるが、肩部に発生する応力は小さくなり、割れるおそれが小さいからである。また、d3/d1≧0.85であれば、さらに好ましい。
【0013】
図3は本発明のガラスびん1の生産工程ラインの説明図である。同図に示されるように、ガラスびん1はライン上を互いに接触しながら流れてくるが、本発明のガラスびん1は肩部3と直胴部5の間に下方が徐々に拡径するテーパ部4を設けたので、コンタクトポイントは直胴部5の最上部付近となり、肩部はコンタクトポイントとはならない。また、仮に肩部どうしが接触したとしても、テーパ部4で面接触するので、肩部の衝撃は小さくなり、肩部3に傷が付きにくく、肩部のガラス強度が劣化しにくい。したがって、横向き落下などでびんに横方向の衝撃が加わってもびんは割れにくく、衝撃に強いガラスびんとなる。
【0014】
図4は本発明のガラスびん1が使用中に転倒した場合の説明図であるが、この場合もコンタクトポイントは直胴部5の最上部付近となり、肩部3はコンタクトポイントとはならない。また、仮に肩部3が支持面に接触したとしても、テーパ部4で面接触するので、肩部3の衝撃は小さくなり、肩部に傷が付きにくく、肩部のガラス強度が劣化しにくい。また、この場合の最大負荷は直胴部5の最上部付近となるので、びんは更に割れにくく、転倒の衝撃に強いものとなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のガラスびんは、肩部と直胴部の間に下方が徐々に拡径するテーパ部を設けたので、生産ライン上や転倒時に肩部がコンタクトポイントにならず、肩部のガラス強度が劣化しにくく、横向き落下や転倒でびんに横方向の衝撃が加わっても割れにくく、衝撃に強い。
【0016】
また、従来の製品イメージが損なわれることがなく、びんの外周部にラベルを貼ったときラベルにしわが入るおそれもない。
【実施例】
【0017】
図1は実施例のガラスびん1の正面図である。このガラスびん1は、口部2と、口部2から下方に連続する肩部3と、肩部3から下方に連続し下方が徐々に拡径するテーパ部4と、テーパ部4から下方に連続する直胴部5と、直胴部から下方に連続する裾部6と、裾部から連続する底部7を有している。口部2にはキャップを係合するためのねじ山8が設けられている。口部の外径d3は54mm、テーパ部4上端の外径d2は57.9mm、直胴部の外径d1は58.5mmである。
テーパ部4の長さh2は14mm、直胴部4とテーパ部4の合計の長さh1は49mmである。
したがって、d1−d2=0.6mm、d3/d1=0.92、h2/h1=0.29である。
【0018】
図2はガラスびん1および1’の横向き落下試験結果の説明図である。実施例のガラスびん1及び従来のガラスびん1’をラインシミュレータで2分間加傷し、中身(医薬クリーム)を充填した後ガラスびんを小箱に包装し、120cmの高さから単体で横向きに落下させた。その結果、従来のガラスびん1’は30本中25本(83.3%)が破損したのに対し、実施例のガラスびん1は30本中3本(10%)の破損となった。この結果から、本発明のガラスびんは落下・衝撃強度が大幅に向上することが実証された。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例のガラスびん1の正面図である。
【図2】ガラスびんの横向き落下試験結果の説明図である。
【図3】生産工程ライン上のガラスびん1の説明図である。
【図4】転倒したガラスびん1の説明図である。
【図5】従来のガラスびん1’の正面図である。
【図6】生産工程ライン上のガラスびん1’の説明図である。
【図7】転倒したガラスびん1’の説明図である。
【図8】垂直に落下したガラスびん1’の説明図である。
【図9】横向きに落下したガラスびん1’の説明図である。
【図10】横方向から衝撃を受けたガラスびん1’に発生する曲げ応力の説明図である。
【符号の説明】
【0020】
1 ガラスびん
1’ ガラスびん
2 口部
3 肩部
4 テーパ部
5 直胴部
6 裾部
7 底部
8 ねじ山

【特許請求の範囲】
【請求項1】
口部と、該口部から下方に連続する肩部と、該肩部から下方に連続し下方が徐々に拡径するテーパ部と、該テーパ部から下方に連続する直胴部と、直胴部から下方に連続する裾部を有し、
前記テーパ部上端の外径をd2、前記直胴部の外径をd1としたときに、
0.0017d2≦d1−d2≦0.035d2
前記口部の外径をd3としたときに、
d3/d1≧0.7
前記テーパ部の長さをh2、前記直胴部とテーパ部の合計の長さをh1としたときに、
0.2≦h2/h1≦0.5
の関係を有することを特徴とするガラスびん。
【請求項2】
0.1≦d1−d2≦2.0mmである請求項1記載のガラスびん。
【請求項3】
0.008d2 ≦d1−d2≦0.035d2である請求項1記載のガラスびん。
【請求項4】
0.5≦d1−d2≦2.0mmである請求項3記載のガラスびん。

【図2】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−195446(P2008−195446A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−35361(P2007−35361)
【出願日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(000222222)東洋ガラス株式会社 (102)
【出願人】(000149435)株式会社大塚製薬工場 (154)
【出願人】(506146840)大商硝子株式会社 (5)
【Fターム(参考)】