説明

ガラスセラミックプレート

【課題】黒色の様相を与え、一緒になって不透明とし、透過率が可視光領域で1%未満であり、熱的負荷に際して色安定性であり、ディスプレイ領域で輪郭鋭く抜き取ることができ、組み合わされて調理面もしくは覗き窓として必要となる他の使用特性を満たす、被覆を有する無色のガラスセラミック調理面を提供する。
【解決手段】ガラスセラミックプレートの製造にあたり、貴金属調製物中の貴金属割合を高め、貴金属調製物の貴金属組成及び金属組成を変更し、ある一定の同時焼成条件を顧慮する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスセラミックプレート、特に調理加熱面(Koch−Aufstellseite)を形成するプレート上面と、該プレート上面の裏側にあるプレート下面とを有する調理コンロ(Kochmulde)用のガラスセラミックプレートであって、前記プレート下面側に、間接的にもしくは直接的に、貴金属を含有する被覆が少なくとも領域的に施与されている形式のガラスセラミックプレートに関する。
【背景技術】
【0002】
目下のところ入手可能な黒色ガラスセラミックプレートは、バルク着色(volumenfaerben)された黒色ガラスセラミックか、黒色の下面被覆を有する無色ガラスセラミックかのいずれかからなる。該調理コンロへと電子ディスプレイを組み込むことが増えているので、バルク着色されたガラスセラミックは、一層不利であると見られている。それというのも、該ガラスセラミックは、赤色光についてのみ十分に透過性であるに過ぎないからである。カラーのディスプレイ表示を有する、例えば種々のLEDから成る又はカラーLCD画面を有するディスプレイ領域の構成は、一般的なバルク着色された半透明のガラスセラミック(例えばCERAN HIGHTRANS(登録商標)及びCERAN SUPREMA(登録商標))では不可能である。
【0003】
情報(加熱ステップ、調理レシピなど)の単色表示もしくは多色表示を色の制限無く可能にするディスプレイ領域の製造は、それに対して、無色もしくはほぼ無色のガラスセラミック(例えばEP1837314号A1によるCERAN CLEARTRANS(登録商標))であってその下面側に透光性の被覆を有するものを用いて、ディスプレイ表示領域での下面被覆の簡単な抜き取り(Aussparen)によって成功している(JP2003−338359号A)。
【0004】
下面被覆は、調理コンロの内部(ケーブル、加熱エレメント、電子部材及び金属構造)の傍観を防ぐために用いられる。要求に応じて、特に熱的耐負荷能力に関する要求に応じて、下面被覆は、1もしくは複数の貴金属層、ゾル・ゲル系、シリコーン塗料などから形成することができる。透明なガラスセラミックからなる黒色調理面の製造のためには、目下、2つの手法が用いられる:
一方では、ガラスセラミックに、ガラスと熱安定性の黒色顔料(例えばCr−Fe−Co−Mn型のスピネル)からなる多孔質層が設けられ、その上に不透明(Blickdichte)になるまで顔料添加されたシリコーン層が設けられる。ディスプレイ領域内で両方の層を抜き取ることによって、任意色のディスプレイを該ガラスセラミックプレートへと組み込むことができる。確かに、この方法は廉価な製造を可能にするが、係るガラスセラミックプレートは持続的な300℃での(又は短時間で500℃を超える)温度負荷のためには適していないという欠点を有している。それというのも、相応する熱的負荷に際して、当該被覆系はシリコーンの分解に基づき灰色もしくは褐色に変色するからである。
【0005】
他方では、下面側に貴金属を基礎とする被覆を有する高価なガラスセラミックプレートが使用される(日本国公告公報H07−17409、例えば貴金属調製物SL−900X−3)。その金属・酸化物性の組成に基づき、黒色の貴金属層は熱に対して極めて安定であるため、500℃を超える多くの時間の負荷であっても色の変化は起こらない。市販されるガラスセラミックプレートの黒色の貴金属層は、主に金、ビスマス及び鉄から構成され、かつ層厚300〜800nmを有する。下面側に黒色の貴金属被覆を有する目下市販されている調理面では、該黒色の貴金属層は、実質的に、高くても20質量%の金、25質量%より多くの酸化ビスマス、25質量%より多くの酸化鉄、及び約1〜10質量%の酸化チタンからなる。知られている組成と層厚では、可視光領域(380〜780nm)において、たった1.5%の透過率(DIN EN 410によるD65光源でのτvis、図1、曲線a)しか得られない。前記文献では、1.7〜2.2%の最小の平均透過率が挙げられている(日本国公告公報H07−17409、US2007/0056961号A1)。それゆえ貴金属層の透光性は、非常に低い(そしてバルク着色された黒色ガラスセラミックの透過率に匹敵する)ので、調理コンロの内部の傍観は一般に十分に食い止められる。冒頭に記載したように、ディスプレイ領域の作製のためには、黒色の貴金属層をディスプレイ表示(LED、LCD)上部で抜き取ることができ、それによって調理面内部で単色もしくは多色の表示が可能となる。
【0006】
しかしながら、目下使用されている黒色の貴金属被膜は、今日では近代的なフード(Dunstabzugshaube)において使用されるようなハロゲンランプで照射された場合には完全に不透明ではない。すなわち強力な照明の場合には完全に調理コンロの内部においてケーブルなどの細部を認識できる。この問題は、JP2003−338359号(A)で既に指摘されている。
【0007】
この理由から、バルク着色されたガラスセラミックからなる高価な調理面では、下面側で不透明になるまで顔料添加されたシリコーン被覆が"散乱光遮蔽"として施与される。その被覆は、可視光領域で透過率を0%にまで低下させるので、そのガラスセラミックプレートは完全に不透明になる(DE03503576号C2、DE04426234号C1)。バルク着色された黒色ガラスセラミックの場合に、500℃を超える熱的負荷では回避できないシリコーン層の色の変化は、利用者の視界(すなわち、調理コンロに取り付けられている場合にガラスセラミックプレートを観察したとき)からは認識できない。
【0008】
下面側に黒色の貴金属被覆を有する無色のガラスセラミックであってその上に不透明になるまで顔料添加されたシリコーン層が施与されたものの場合には、しかしながら、熱的負荷(530℃で1時間)による該シリコーン層の変色は利用者の視界から非常によく認識でき、特に該ガラスセラミックプレートは、利用者の視界から熱負荷された領域(高温領域)で、その周囲の低温領域よりも暗色に見える。その色の変化は、ガラスセラミックプレートが高温領域中で上側に実際のトレンドに相当するようにわずかしか装飾がなされていない場合に、かつガラスセラミックプレートが拡散昼光で観察された場合に、良好に視認できる。無色のガラスセラミック製の調理面(ガラスセラミックプレート)であってその下面側に黒色の貴金属層を有するものの透過率を、該貴金属層上への不透明になるまで顔料添加されたシリコーン層によって熱的負荷に際して色の変化を起こさずに更に低下させることは、従って目下のところ不可能である。
【0009】
黒色の貴金属層の層厚を通常の寸法(300〜800nm)から800nm超にまで高めることによって(例えばスクリーン印刷織物の使用によって)、同様に完全な不透明さを達成することはできなかった。それというのも、黒色の貴金属被覆は、800nmを超える層厚の場合には亀裂を生じ、それにより透過率は低下するどころか増加し、更には調理面自体は不格好になるからであった。該亀裂は、一方で、貴金属層自体における応力を基礎とし、かつ他方で、ガラスセラミックと貴金属被膜との間での両方の系の異なる大きさの熱膨張率に基づく応力を基礎とするものである。
【0010】
より粗いスクリーン印刷織物(例えばスクリーン幅54〜64)の使用によって、更に、輪郭が鋭い縁部を印刷すること(例えばディスプレイ枠の抜き取りに際して)はもはや不可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】EP1837314号A1
【特許文献2】JP2003−338359号A
【特許文献3】日本国公告公報H07−17409
【特許文献4】US2007/0056961号A1
【特許文献5】DE03503576号C2
【特許文献6】DE04426234号C1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明の課題は、被覆を有する、特に下面被覆を有する無色のガラスセラミック−調理面を提供することであり、その際、該下面被覆は、
− ガラスセラミックプレートに黒色の様相を与えることが望ましく、
− ガラスセラミックと一緒になって不透明なガラスセラミックプレートを産することが望ましく、その透過率は可視光領域で1%未満にあることが望ましく(DIN EN 410による光源D65でのτvis≦1%)、
− 持続的な300℃の熱的負荷と短時間での530℃超での熱的負荷に際して色安定性であることが望ましく、
− ディスプレイ表示もしくは表示窓の領域で輪郭鋭く抜き取ることができ、
− ガラスセラミックと組み合わされて、ガラスセラミックプレートを調理面もしくは覗き窓(Sichtscheibe)(例えば暖炉の覗き窓)として使用するために必要となるあらゆる他の使用特性(特に引掻強さ及び接着強さ、接着剤、銀導電ペースト、食品に対する色安定性並びにガラスセラミックプレートの機械的強度の維持)を満たす。
【課題を解決するための手段】
【0013】
所望の特性を有する不透明な下面被覆は、貴金属調製物中の貴金属割合を高めることと、貴金属調製物の貴金属組成及び金属組成を変更することと、ある一定の同時焼成(Einbrand)条件を顧慮することで提供することができる。
【0014】
本発明により被覆されるべきガラスセラミックプレート用の基板材料としては、特にLi2O−Al23−SiO2型のガラスセラミック、例えば、温度範囲30〜500℃で熱膨張率−10・10-7-1ないし+30・10-7-1を有する無色のガラスセラミックが適しており、その公知の組成は、とりわけ以下の第1表に示されるものである:
第1表 好適なガラスセラミック基板の組成
【表1】

【0015】
黒色の貴金属被膜は、少なくとも50質量%までが金及び白金からなり(とりわけ、透過率の低下のため、及び黒の色調の生成のために)、更に酸化クロム及び酸化ビスマス(緻密な被膜の形成のために)並びに酸化ケイ素、酸化ニッケル及び、場合により酸化ホウ素、酸化ジルコニウム、酸化ロジウム又は定着剤(Haftvermittler)としての他の金属酸化物を含有することが望ましい。
【0016】
貴金属割合を50質量%(焼成される貴金属被膜の全組成に対して)以上に高めることによって、例えば細かさ100〜40のスクリーン織物を用いて十分な輪郭の鋭さで貴金属層をガラスセラミック表面に施与することができ、その平均透過率τvis(貴金属層を有するガラスセラミック)は、1%未満、特にたった0.4〜0.6%(750nmでの絶対透過率2%未満)であり(図1、曲線b)、かつその層厚(同時焼成後)は、450nm未満、有利にはたった240〜380nmであるので、亀裂は生じない。
【0017】
焼成された被覆は、40〜60質量%の金及び10〜20質量%の白金と、少なくとも2質量%で多くとも8質量%の酸化クロム、少なくとも5%で多くとも20%の酸化ビスマス、少なくとも10質量%で多くとも20質量%の酸化ケイ素並びに1〜5%の酸化ニッケル及び0〜3%の酸化ジルコニウム、酸化ホウ素又は他の金属酸化物、特に貴金属層での定着剤として知られている金属の金属酸化物とを含有することが望ましい(Landgraf,Guenter著の"ガラス及びセラミクスの装飾における金(Gold in Decoration of Glass and Ceramics)"のチャプター5、"結合と接着(Bonding and Adhesion)",167頁以降: Gold,Progress in Chemistry,Biochemistry and Technology.,Hrsg.:H.Schmidbauer,1999 John Wiley&Sons)。
【0018】
それらの金属は、ペーストインクにおいてスルホ樹脂酸塩として使用でき、金は塩化金(III)溶液としても使用でき、その際、粘度は、他の樹脂及び溶剤の添加によって最適に調整することができる。スクリーン印刷のためには、粘度1000〜2000mPa・s(せん断勾配200s-1の場合)が好ましい。しかし、ガラスセラミックプレートの被覆は、他の方法によって、例えば吹き付け塗布、タンポ印刷もしくはスタンプ法によっても実施できる。原理的には、貴金属被膜をスパッタリングで塗工することも可能である。しかしながら、スパッタリング法もしくは吹き付け塗布法の場合には、ディスプレイ領域で被覆を抜き取るために必要なマスキング技術が製造技術的に費用がかかるため、どちらかといえば不利である。
【0019】
貴金属調製物の同時焼成は、できる限り低い温度で、かつ最大温度での短い保持時間で実施され、それにより均一で黒色の下面被覆が得られることが望ましい。
【0020】
しかしながら、該下面被覆を十分に耐引掻性にするためには、最大温度は少なくとも750℃でなければならない。
【0021】
最大温度は、850℃を超過すべきでない。それというのも、それより高い温度では、ガラスセラミックは軟化し、プレートの大きさに応じて、起伏をもった、多かれ少なかれ歪んだガラスセラミックが得られることになるからである。
【0022】
最大温度での保持時間は、できる限り短く(1〜30分)するべきである。それというのも、さもなくば30cmまでの拡がりを有する明るい灰色の斑が、有利には大きい(80cm×60cm)のガラスセラミック−ガラスセラミックプレートの中央に生ずるからである。その保持時間は、一般に、オーブンの均一性(焼成オーブン中の温度分布)によって決定される。その時間は、プレートのあらゆる場所が少なくとも短時間(例えば1分)で最大温度にまで加熱されるように選択される。"明るい灰色の変色"は、多量の高温石英−混晶がガラスセラミック中に局所的に堆積することを基礎としており、それはガラスセラミックプレート中央での該結晶の増大された形成及び加速された成長に基づくものである。ガラスセラミックのバルク中のガラス質領域直下での前記結晶の加速された成長及び増大された形成のためのトリガは、貴金属層からのビスマスである。ビスマスは750℃を超える温度で貴金属層からガラスセラミックへと拡散し、その際、該ガラスセラミックの約100〜300nm厚のガラス質領域を750℃を超える温度では90〜120分以内で横断する。ガラスセラミックプレートの辺縁部のガラス質領域は中央部よりも厚いので、ビスマスは、そのガラス質領域を横断してガラスセラミックのバルク材料中に突入するやいなや、まずはプレート中央部で、高温石英−混晶の核形成と核成長を促進する。より高温結晶を有する領域では光は変更されていない領域とは異なる屈折を示すので、最終的には"灰色の変色"と呼称する色の違いが生ずる。従って、均一な黒色ガラスセラミックプレートは、最大温度での短縮された保持時間とできる限り低い最大温度とによって、ガラスセラミックのバルク材料中へのビスマスの拡散を防止する場合にのみ得られる。
【0023】
灰色の斑の形成は、上述の貴金属調製物がビスマスを含有しない場合には起こらない(ビスマスを、例えばホウ素によって置き換えることができる)。その際、得られるビスマス不含の貴金属被膜は確かに黒色であるが、不所望に高い多孔性を有する。それによって、例えば今日では通常ガラスセラミックプレートと調理コンロの金属ケーシングとを結合させるために使用される接着剤は、ガラスセラミックプレートの濡らされた領域で、利用者の視界から認識できる暗色の変色をもたらす。同等の変色は、室内温度(20℃)ですでに銀導電ペーストもしくは、例えば食用油などの食品によっても生ずる。係る多孔質の貴金属層をシリコーン塗料(Siliconfarbe)で封止すると、引き続きそのシリコーン層に熱的負荷(530℃で1時間)をかけた場合に、同様に利用者の視界から認識できる暗色の変色がもたらされる。
【0024】
従って、貴金属層中のビスマスは、黒色の緻密な貴金属被膜を作製すべき場合には省くことができない。
【0025】
多孔質のビスマス不含の貴金属被膜に対して、本発明により説明されるビスマス含有の黒色の貴金属被膜をシリコーン塗料で背面印刷(Hinterdruckung)することによって、500℃超までの熱的負荷であっても色安定性であり、食品の作用に対して極めて耐久性でもあるガラスセラミックプレートを得ることができる。
【0026】
該黒色の調理面の食品に対する耐久性は、例えばガス用途の調理面の場合に、特にガスバーナーによって530℃までの温度がガラスセラミック下面に生ずる場合に必要となることがある。ガス用途のガラスセラミックプレートの場合には、ガラスセラミック−調理面内にあるガスバーナーが中央に置かれる開口部を通じて、食品がガラスセラミックプレートの下面に到達し、そこで燃焼することがある。むき出しの黒色の貴金属層は、燃焼した食品により汚れた箇所で、調理コンロを短時間利用したあとですでに損傷されることになり、利用者の視界から汚染領域内に明らかな斑を認識できるものである。
【0027】
しかしながら、該黒色の貴金属層が、シリコーン層(又は他の有機被覆、例えばポリアミド、ポリイミドからなる被覆もしくはゾル・ゲル層も)で背面印刷されていると、食品による同じ負荷の場合に、その有機保護層が500℃超では分解するにもかかわらず斑は生じない。明らかに、分解された保護層自体は、さらに、食品がガラスセラミックプレートの下面に貴金属層を損傷するほど到達できないようにしている。
【0028】
ガラスセラミックプレートの高温(約350〜500℃)での銀導電ペーストに対する耐久性は、例えば誘導加熱分野の用途の調理コンロの場合に、ガラスセラミックプレートの下面側に温度センサが取り付けられるときに不可避となることがある。該黒色の貴金属層上に更なる被覆を設けないと、熱的負荷があった場合に、銀導電ペーストを通じて利用者の視界から認識できるような被覆の色の変化が生じてしまう。しかしながら、黒色の貴金属層上にシリコーン層があることで、銀導電ペーストには色の変化が生じない。それというのも、該シリコーン層は、セパレータのごとく導電ペーストと色を与える貴金属層との間に存在するからである。
【0029】
バルク着色された黒色のガラスセラミックに対して、下面側で黒色に被覆されたガラスセラミックは、係るガラスセラミックプレートの上面装飾が効果顔料を含有する場合に(Pfaff,Peter:ガラス、セラミック及び磁器の装飾のための新たな手法(Neue Moeglichkeiten zur Dekoration von Glas,Keramik und Porzellan),Silikattechnik 42/6,1991,196頁)、更に好ましいことが判明した。それというのも、説明した下面側で黒色に被覆されたガラスセラミックの場合には、上面装飾のメタリック−真珠光沢効果は、黒色にバルク着色されたガラスセラミックの場合よりも強力に発揮されるからである。この場合に、本発明による黒色の貴金属被覆の使用は、ディスプレイ表示用の抜き取りがなくても望ましいことがある。
【0030】
更に構成される効果は、該黒色の貴金属被覆と別の層(例えば銀色、金色もしくは銅色の貴金属層又はほうろう層)との組み合わせによって生じうる。ここで、例えば銀製の貴金属層で、まずドットマトリクスをガラスセラミックプレートの下面側に施与することができ、次いでそれの裏に黒色の貴金属塗料(Edelmetallfarbe)が被覆される。
【0031】
該黒色の貴金属塗料は、ディスプレイ表示用のディスプレイ領域で抜き取られるだけでなく、高温領域でも又は他の照明エレメントのための高温領域付近でも抜き取られることがある。それは、例えばWO2006/072388号A1及びDE19906737号A1に記載されている。
【0032】
更なる一実施形態は、本発明により説明される貴金属調製物の相応の希釈液を、場合により100〜40より細かいスクリーン織物(例えばスクリーン幅140〜31)を用いて複数積み上げて印刷することによって2層もしくは多層からなる黒色の貴金属層を作り上げることにある。いずれかの塗料層を部分的に抜き取ることによって、該層系の同時焼成の後に透明な領域が作製されうる。前記領域は、不透明な領域もしくは僅かに透明な領域とは色合いが異なる(透明な領域はより褐色である)。より透明な領域の平均透過率は、例えばτvis=4〜5%に調整することができる。より透明な係る領域の下方部に、DE102006027739号に記載されるのと同様にして、LEDを配置することができる。その際、それらLEDは、スイッチが入った状態でのみ視認でき、そしてスイッチが切れた状態では貴金属被覆の背後で十分に隠蔽される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は、a) 貴金属調製物を基礎とする黒色の下面被覆を有する無色のガラスセラミックからなる対抗サンプルのスペクトル透過率と、b) 本発明による貴金属調製物GPP 071006(ヘレウス社(ハーナウ在))で下面側に黒色に被覆されたCERAN CLEARTRANS(登録商標)のスペクトル透過率を示すグラフである。
【実施例】
【0034】
実施例1("調理コンロ用の下面側で黒色に被覆された不透明なガラスセラミックプレート")
EP1837314号A1による組成(第1表、右欄)を有する両側が平滑な無色のガラスセラミックプレート(約80cm長、60cm幅、かつ4mm厚)を、DE19721737号C1による装飾塗料(Dekorfarbe)で上面側に被覆し、そしてセラミック化した。
【0035】
引き続き、そのセラミック化されたガラスセラミックプレートの下面側に、本発明による貴金属調製物(GPP 071006、開発名 ヘレウス社(ハーナウ在))をスクリーン印刷(スクリーン幅100〜40)によって施与し、その際、ディスプレイ領域は抜き取られた(未被覆の)ままにした。その被覆を、約1分間にわたり熱気流中で90℃で乾燥させた。次いで、該被覆されたガラスセラミックを、3K/分で800℃に加熱し、800℃で10分間にわたり焼成し、次いで5K/分で20℃に冷却させた。同時焼成の後に、ガラスセラミックプレートの下面側は均一に黒色に被覆されていた。
【0036】
その塗料の金属割合は、12質量%(88質量%の強熱損失)であった。該貴金属被膜は、(質量%において)50%の金、17%の白金、14%の酸化ビスマス、11%の酸化ケイ素、5.0%の酸化クロム、2.3%の酸化ニッケル及び0.7%の酸化ジルコニウムから構成されていた。
【0037】
焼成された貴金属被覆の層厚は、300±40nmであった。
【0038】
完成したガラスセラミックプレートを、調理面として誘導加熱用途のコンロに取り付けた。
【0039】
その不透明さを、取り付けられた調理面を、商慣習のフードに取り付けられているハロゲン放射体で照明して観察することで調査した。調理コンロの内部の構造は、ごく近く(調理面上側と約10cmの距離)からでさえも認識できなかったので、下面被覆は不透明である。下面側で被覆されたガラスセラミック(上面装飾なし)のスペクトル透過率は、可視光領域でわずか0.5%(図1の曲線bによる透過率推移から計算されたDIN EN 410による光源D65でのτvis)であった。
【0040】
接着剤に対する色安定性は、10cm長の接着剤ストランド(Pactan 7076)を該被覆上に載せて、製造元の指示に従って硬化させることで調査した。ガラスセラミックを貫く(利用者の視界からの)観察によっても色の変化は確認されなかった。従って、該被覆は、接着剤に対して十分に密封(versiegelnd)されている。
【0041】
熱的負荷による色安定性は、その被覆されたガラスセラミックプレートを415℃で95時間、引き続き530℃で1時間加熱することで調査した。引き続き、未処理のサンプルと処理済みのサンプルの色調を正視眼(normalsichtige Auge)で比較しても、色の違いは確認できなかった。
【0042】
被覆されたガラスセラミックの色調を、分光光度計(Mercury 2000、データカラー社)で測定した(光源:D65、観察角:10゜)。色値の表記は、CIELAB系(DIN 5033、パート3 "表色値(Farbmasszahlen)")により行う。DIN 6174によれば、色の違いΔE=0.9であった。
【0043】
第2表: 熱的負荷の前後の色値
【表2】

【0044】
該被覆の接着強さも、熱的負荷の後に申し分なかった。該被覆を、"Tesa−テスト"で調査した。その際、下面被覆に透明な接着フィルムのストリップを擦り付け、次いで急激に引き離す(テサフィルム 104型、バイヤスドルフ株式会社)。正視眼で接着ストリップ上に剥離した被覆の小片を確認できなかったので、ガラスセラミックへの該被覆の付着は、熱的負荷の後にも申し分ない。
【0045】
該被覆の引掻強さは、同様に申し分なかった。曲率半径0.5mmを有する丸められた金属先端部で、500gの荷重をかけたことで、調理面の取り付けられた状態で上方から(利用者の視界から)認識できるような亀裂は生じ得なかった。
【0046】
黒色に被覆されたガラスセラミック−調理面の曲げ強さは、調理面で通常の少なくとも110MPa(DIN EN 1288−5に従って測定した平均値)の水準にあった。
【0047】
黒色の下面被覆が抜き取られている領域において、LCDディスプレイを取り付けて駆動させた。そのディスプレイ領域では下面側の被覆が存在せず、かつガラスセラミックは(ほぼ)無色であったので、情報は、任意の色で表示することができた。
【0048】
実施例2("シリコーン保護層を有する調理コンロ用の下面側で黒色に被覆されたガラスセラミックプレート")
ガスバーナー用の開口部を有するガラスセラミックプレートに、実施例1でのように、本発明による黒色の貴金属被覆を設けた。該黒色の貴金属層上に、次いで追加的に、スクリーン印刷(スクリーン織物54〜64)によって下面側に耐熱性の黒色のシリコーン塗料(GSX、大信ペイント株式会社)からなる層を施与した。該シリコーン塗料を180℃で5分間乾燥させ、引き続き400℃で30分間焼成した。
【0049】
完成したガラスセラミックプレートを、ガス用途の調理コンロに取り付けた。燃焼した食品に対する耐久性は、調理面の下側をガスバーナー付近で食品(オイル、醤油)で濡らし(0.1gのオイルもしくは醤油を9cm2に分配)、引き続きその食品を装置の駆動の間に最大出力で燃焼させることで調査した。調理面は、同じ場所に全部で3回、食品で濡らされ、最大出力でそれぞれ1時間駆動させた。
【0050】
引き続き、そのガラスセラミックプレートを上方から(利用者の視界から)、食品が塗布されている領域において正視眼で観察し、そして燃焼された食品によって斑が認識できるかどうかと、温度負荷によって色の変化が認識できるかどうかを評価した。利用者の視界からは損傷又は色の変化は確認できなかったので、その黒色に被覆されたガラスセラミックプレートは、燃焼された食品に対して十分に耐久性である。
【0051】
該層系(シリコーン層で背面印刷された黒色の貴金属層)の色安定性は、加熱された領域(調理面の高温領域)と、加熱されていない領域(調理面の低温領域)との比較によって調査した。正視眼によって、色の違いは確認できなかった。
【0052】
更に、両方の領域の色値を、分光光度計(Mercury 2000、データカラー社)で測定した(光源:D65、観察角:10゜)。色値の表記は、CIELAB系(DIN 5033、パート3 "表色値")により行う。DIN 6174によれば、色の違いΔE=0.3であった。
【0053】
第3表: 熱的負荷の前後の色値
【表3】

【0054】
注釈: 実施例1及び2(第2表及び第3表)からの"作製状態の"両方のサンプルは、僅かに色調の点で異なっている。その色の違いは、ガラスセラミック基板のプロセスに制約される色の違いを基礎としている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低膨張性のガラスセラミックプレートであって、その少なくとも一方のプレート面側に、間接的にもしくは直接的に、貴金属を含有する黒色の被覆が少なくとも領域的に施与されているガラスセラミックプレートであって、前記被覆における貴金属割合が≧50質量%であり、前記被覆における酸化ビスマス割合が多くとも20質量%であり、かつ前記被覆の層厚が少なくとも200nmであることを特徴とするガラスセラミックプレート。
【請求項2】
請求項1に記載のガラスセラミックプレートであって、前記被覆における貴金属割合が、少なくとも65%まで、金及び白金からなることを特徴とするガラスセラミックプレート。
【請求項3】
請求項2に記載のガラスセラミックプレートであって、前記被覆が50〜60質量%の金と、15〜20質量%の白金を含有することを特徴とするガラスセラミックプレート。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項に記載のガラスセラミックプレートであって、前記被覆が酸化クロムを含有することを特徴とするガラスセラミックプレート。
【請求項5】
請求項4に記載のガラスセラミックプレートであって、前記被覆における酸化クロム割合が、少なくとも2質量%で多くとも8質量%であることを特徴とするガラスセラミックプレート。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項に記載のガラスセラミックプレートであって、前記被覆における酸化ビスマス割合が、少なくとも5質量%であることを特徴とするガラスセラミックプレート。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項に記載のガラスセラミックプレートであって、前記被覆が、酸化ケイ素、酸化ニッケル及び/又は酸化ジルコニウム及び/又は酸化ホウ素又は他の金属酸化物を含有することを特徴とするガラスセラミックプレート。
【請求項8】
請求項7に記載のガラスセラミックプレートであって、前記被覆が、少なくとも10質量%で多くとも20質量%の酸化ケイ素割合を有し、かつ/又は少なくとも1質量%で最大で5質量%の酸化ニッケル割合を有し、かつ/又は最大で3質量%の酸化ジルコニウム割合を有することを特徴とするガラスセラミックプレート。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項に記載のガラスセラミックプレートであって、前記被覆の層厚が、450nm未満もしくはそれと同じであることを特徴とするガラスセラミックプレート。
【請求項10】
請求項9に記載のガラスセラミックプレートであって、前記被覆の層厚が、230〜380nmの範囲にあることを特徴とするガラスセラミックプレート。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項に記載のガラスセラミックプレートであって、前記被覆上に、有機層、特にシリコーン含有層、特にシリコーン塗料又はポリアミド含有のもしくはポリイミド含有の層又はゾル・ゲル層が、間接的にもしくは直接的に施与されていることを特徴とするガラスセラミックプレート。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれか1項に記載のガラスセラミックプレートであって、前記被覆上に、少なくとも領域的に、熱伝導性層、特に銀含有ペーストからなる熱伝導性層が施与されていることを特徴とするガラスセラミックプレート。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか1項に記載のガラスセラミックプレートであって、プレート上面側に、少なくとも領域的に、効果顔料を含有する装飾層が施与されていることを特徴とするガラスセラミックプレート。
【請求項14】
請求項1から13までのいずれか1項に記載のガラスセラミックプレートであって、前記被覆と少なくとも一方のプレート面との間に、少なくとも領域的に、中間層が配置されていることを特徴とするガラスセラミックプレート。
【請求項15】
請求項1から14までのいずれか1項に記載のガラスセラミックプレートであって、前記被覆が、2層もしくは多層の積み上げて配置された個々の層から構成されていることを特徴とするガラスセラミックプレート。
【請求項16】
少なくとも一方のプレート面側に貴金属を含有する被覆が施与されたガラスセラミックプレートの製造方法において、
前記被覆を20℃〜150℃で乾燥させ、
その乾燥された層を750℃〜850℃で30分未満の時間にわたって焼成させ、そして
その焼成された被覆が、
− ≧50質量%の貴金属割合を有し、
− 多くとも20質量%の酸化ビスマス割合を有し、かつ
− 少なくとも200nmの層厚を有することを特徴とする製造方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法において、請求項2から15までのいずれか1項を特徴とする方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−263227(P2009−263227A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−106180(P2009−106180)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【出願人】(504299782)ショット アクチエンゲゼルシャフト (346)
【氏名又は名称原語表記】Schott AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr.10,D−55122 Mainz,Germany
【Fターム(参考)】